説明

ラック搬送装置およびそれを備える体外診断用分析装置

【課題】本発明は、サンプルラックの形状に制限されることがない汎用性の高いサンプルラック搬送装置であって、かつ、サンプルラックの搬送中に、サンプルラックに他からの外力が加わったとしても、脱調や損傷が生じることなく安定して搬送することが可能なサンプルラック搬送装置およびそれを備える体外診断用分析装置を提供する。
【解決手段】搬送路12の側壁20から突出した突起部91を用いてサンプルラック2を搬送方向に後から押すことにより、サンプルラック2を搬送路12に沿って搬送する。搬送路12からサンプルラック排出部13へのサンプルラック2の搬出は、板状の突起部102を用いてサンプルラック2を搬出方向に後から押すことにより行う。また、搬送路12へのサンプルラック2の搬入は、2つの突出部33を用いてサンプルラック2を搬送方向に後方から押すことにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック搬送装置およびそれを備える体外診断用分析装置に関するものであって、特に、ラックの形状が制限されることのない汎用性の高いラック搬送装置およびそれを備える体外診断用分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臨床検査分野、生化学分野や化学分野等では、一度に多数の試料を取り扱うことが多い。そのような場合、容器を列状に保持することが可能なサンプルラックを用いて、試料を入れた試料容器の保管や移送が行われる。また、このような多数の試料を分析したり、処理したりする場合には、各種の自動分析装置が用いられる。このような自動分析装置には、サンプルラック搬送装置が付設されることが多い。上記サンプルラック搬送装置は、試料を入れた試料容器が保持されたサンプルラックを所定の位置に載置すると、自動的に当該サンプルラックを搬送する。通常の場合、この搬送の途中で、分析など様々な処理が、試料に対して施される。このようなサンプルラック搬送装置を備えることにより、試料の処理能力を向上させることができる。さらに、省力化を図ることができる。
【0003】
上記サンプルラック搬送装置としては、例えば、特許文献1に記載の検体架台の供給装置が挙げられる。具体的には、上記装置では、第1のストッカ内の架台が、第1の移送装置により検査部に向けて移送される。当該架台が検査部に移送されると、そこで、検体について所定の検査が行われる。検体の検査が終わると、検体検査ずみの架台が、第2の搬送装置によって、第2のストッカに送り込まれる。
【0004】
上記装置では、検査部内での架台の移送は、順送り装置により行われる。上記順送り装置について具体的に説明すると、上記順送り装置は、架台Kを所定の方向に移動させるための駆動部Yを備えている。上記駆動部Yは、架台Kを所定の方向に1試料容器分だけ動かすため架台底部の凹部3に当てるためのレバー50を備えている。また、移動される架台Kは、底面に移動のためのレバー50が当る凹部3を各試料容器位置ごとに1つずつ有している。上記構成によれば、レバー50が回転して上に向くと、レバー50が架台Kの凹部3に入り込む。さらに、レバー50が回転すると、架台Kが一定距離だけ移動した上で、レバー50が架台Kから離れる。さらにレバー50が回転して、再びレバー50が上に向くと、先の凹部3の隣にある凹部3にレバー50が入って架台Kを一定距離だけ移動させる。上記装置では、この一連の動作を繰り返す。こうして、上記装置では、間欠的に架台Kを搬送することができるようにして架台Kが停止中に生体試料への処理が行われる。
【0005】
また、別の上記サンプルラック搬送装置としては、特許文献2に記載の検知ラック横搬送装置が挙げられる。具体的には、特許文献2には、複数の検体容器を列状に並べて保持する検体ラックをラック搬送開始部から検体容器が並ぶ列方向である横方向に向けて搬送して処理部に送り、さらに処理部から検体ラックの搬送を終了するラック搬送終了部まで搬送する検体ラック横搬送装置が開示されている。
【0006】
上記検体ラック横搬送装置は、ラック搬送開始部と処理部とラック搬送終了部とを結ぶ搬送路と搬送路上にあるサンプルラックを搬送する横搬送機構とからなる。上記搬送路は、検体ラックが設置可能な平らなテーブルと、搬送方向が検体ラック上の検体容器が並ぶ列方向と一致する直線方向となるように案内する側壁とからなる。上記テーブルには搬送路に沿って切り欠きが形成されている。さらに、上記横搬送機構は、テーブル下にあって搬送路に沿って移動可能なスライダと、このスライダを搬送路に沿って前進後進駆動させるための搬送駆動部とからなる。上記スライダにはテーブル上のサンプルラックと当接可能となるように前記切り欠きからテーブル上に突出した状態とサンプルラックとの当接状態が解除されるようにテーブル下に埋没した状態との2つの状態を取りうる突起部が取り付けられる。上記突起部にはサンプルラック搬送方向以外の外力が加わらないときに突出状態となるように付勢するとともにサンプルラック搬送方向以外の外力が加わった状態で埋没状態となるようにするための付勢部材が取り付けられている。
【0007】
また、上記検体ラック横搬送装置は、検体ラック送り出し機構を備えており、これにより、検体ラックをラック搬送終了部からエンドストッカに搬出する。より具体的には、上記検体ラック送り出し機構は、検体ラックをエンドストッカに押し出すための一対のレバーを備えている。上記一対のレバーの回転により検体ラックがラック搬送終了部から押し出されてエンドストッカに搬出される。
【特許文献1】実開昭60−154834号公報(昭和60(1990)年12月27日公開)
【特許文献2】特開2003−222632号公報(平成15(2003)年8月8日公開、特許第3708054号(平成17(2005)年8月12日登録))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の検体架台の供給装置では、架台に保持する試料数に応じた数の凹部が、当該架台に形成されている必要がある。そのため、上記装置で使用できる架台には制限があり、上記装置は、汎用性にかけるという問題がある。
【0009】
また、レバーが凹部に入った状態のときに他の架台が搬送路に入る等の理由でレバーと係合している架台に外力が加わると、レバーが脱調したり損傷したりする可能性がある。
【0010】
一方、特許文献2に記載の検知ラック横搬送装置では、検体ラックの底面の凹部に突出部が入り込んで横搬送する時は、検体ラック底部を突出部が突き上げる形となる。そのため、検体ラックがバランスを崩し転倒する可能性がある。また、検体ラックが転倒はしなくても、突出部が検体ラックを突き上げた振動により、検体容器が飛び出し、試料がテーブル上に流出する可能性がある。そのような場合、上記装置のテーブルには搬送路に沿って切り欠きが設けられているため、試料が液体であると、試料が装置内部に流れ込むことになる。その結果、電気回路のショートなどを引き起こし、装置自体が破壊されてしまう可能性がある。
【0011】
また、特許文献2に記載の装置では、搬送終了部からエンドストッカへの搬出は、ワイパー形式にて行われる。そのため、搬送路に対して、垂直方向に搬送すべき検体ラックに回転モーメントが働く。その結果、検体ラックが、搬送路に対して斜めに搬出され、検体ラックがひっかかり転倒する可能性がある。このようなラックの転倒は、処理効率を低下させる。さらに、転倒により流出した試料が、搬送路に沿って形成されている切り欠きから浸出し、上記のように、装置自体が破壊されてしまう可能性がある。
【0012】
さらに、特許文献2の装置では、検体ラックを搬送する際、検体ラックの中央部から外れた部分を押してしまうと、搬送路に対して、検体ラックを斜めに押し込んでしまうことになる。そのような場合、検体ラックが詰まったり、脱調する可能性があるという問題がある。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ラックの形状に制限されることがない汎用性の高いサンプルラック搬送装置であって、かつ、サンプルラックの搬送中に、サンプルラックに他からの外力が加わったとしても、脱調や損傷が生じることなく安定して搬送することが可能なサンプルラック搬送装置およびそれを備える体外診断用分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明にかかる搬送装置は、上記課題を解決するために、直線上に配置された搬送開始部、処理部、および搬送終了部が、この順で接続されてなる搬送路と、上記搬送路上に載置されたラックを移動させるための第1搬送手段とを少なくとも備え、上記搬送路は、上記搬送開始部から上記搬送終了部までつながった第1側壁を備え、上記搬送開始部および処理部の上記第1側壁には、第1切り欠きが形成され、上記第1搬送手段は、第1突起部を有する第1スライダと、当該第1スライダを前進後進駆動させる第1駆動手段とを備え、上記第1突起部は、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出しており、上記第1突起部が上記ラックの搬送方向に対して後方の側面に当接し、上記第1駆動手段を用いて当該側面を押すことにより、上記ラックを上記搬送開始部から、上記処理部を通過して、上記搬送終了部まで搬送することを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、搬送路は、搬送開始部、処理部、および搬送終了部が直列に接続されることにより形成される。また、上記搬送路は、上記搬送開始部から上記搬送終了部までつながった第1側壁を備えている。これにより、上記搬送開始部に載置されたラックを、上記搬送路に沿って、上記第1側壁伝いに、上記搬送終了部まで搬送することが可能となる。
【0016】
また、上記構成によれば、上記ラックの搬送開始部から搬送終了部までの搬送は、上記第1搬送手段によって行われる。上記第1搬送手段は、第1突起部を有する第1スライダと、当該第1スライダを前進後進駆動させる第1駆動手段とを備えている。そのため、上記第1駆動手段により、上記第1スライダが前進後進すると、上記第1スライダに設けられた第1突起部も前進後進することができる。
【0017】
一方、上記搬送路の搬送開始部および処理部の上記第1側壁には、第1切り欠きが形成されている。そして、上記第1突起部が、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出するように配置されている。したがって、上記第1突起部は、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出した状態で、搬送路内を上記搬送開始部から上記搬送終了部の方向に移動(前進)したり、上記搬送終了部から上記搬送開始部の方向に移動(後進)したりすることができる。
【0018】
上記第1突起部は、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出しているため、上記搬送開始部に載置されたラックに当接する。より具体的には、上記ラックの搬送方向(上記搬送開始部から上記搬送終了部への方向)に対して後方の側面に当接する。このように、上記ラックの搬送方向に対して後方の側面に上記第1突起部が当接した状態で、上記第1駆動手段が作動し、上記第1突起部が上記搬送開始部から上記搬送終了部の方向に移動すると、上記ラックの上記側面は、上記第1突起部により押され、上記搬送開始部から上記搬送終了部の方向に移動する。これにより、上記ラックを、上記搬送開始部から上記搬送終了部まで搬送することができる。また、上記ラックは搬送方向の後方から押され、移動されるため、ラックの形状に依存することなく、ラックを搬送することができる。さらに、搬送するラックを、搬送方向の後方から押すため、ラックが転倒することなく、安定して搬送することができる。
【0019】
また、上記構成では、上記ラックを押す第1突起部は、当該ラックの側方の第1側壁から搬送路内に突出しているため、仮にラックが搬送中などに転倒し、溶液状の試料がテーブル上に漏出したとしても、装置内部に漏洩することがない。つまり、上記構成によれば、安定してラックを搬送できることに加えて、仮に試料が漏洩した場合であっても、装置の制御系等に溶液が入り込んで、装置自体に損傷を与えることを防ぐことができる。
【0020】
さらに、上記構成では、上記第1突起部が、上記第1側壁の第1切り欠きから突出しているため、ラック搬送の直線性を容易に保つことができる。
【0021】
上記搬送装置は、上記課題を解決するために、上記搬送終了部に搬送されたラックを、上記搬送終了部から搬出するための第2搬送手段と、上記第2搬送手段により上記搬送終了部から搬出されたラックを載置可能なラック排出部とをさらに備え、上記ラック排出部は、上記搬送路とL字状に接続され、かつ、上記ラック搬送終了部と直列に接続されており、上記搬送終了部の上記第1側壁には、第2切り欠きが形成され、上記第2搬送手段は、板状の第2突起部を有する第2スライダと、当該第2スライダを前進後進駆動させる第2駆動手段とを備え、上記第2突起部は、上記第2切り欠きから上記搬送路内に突出した状態と、上記搬送路内に埋没した状態との2つの状態をとることが可能であって、上記第2突起部が、上記第2駆動手段を用いて上記ラックの搬出方向に対して後方の側面を押すことにより、上記ラックを上記搬送終了部から上記ラック排出部に排出することが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、上記搬送路には、上記第2搬送手段により上記搬送終了部から搬出されたラックを載置可能なラック排出部が、L字をなすように接続されている。また、上記搬送路の搬送終了部は、上記ラック排出部と直列に接続されている。そのため、上記搬送開始部から処理部を経て、上記搬送終了部まで搬送されてきたラックは、移動方向を90°転換して、上記搬送終了部から上記ラック排出部に向けて搬出されることが可能となる。
【0023】
また、上記構成によれば、搬送終了部からラック排出部へのラックの搬出は、第2搬送手段により行われる。上記第2搬送手段は、第2突起部を有する第2スライダと、当該第2スライダを前進後進駆動させる第2駆動手段とを備えている。そのため、上記第2駆動手段により、上記第2スライダが前進後進すると、上記第2スライダに設けられた第2突起部も前進後進することができる。
【0024】
一方、上記搬送路の搬送終了部の上記第1側壁には、第2切り欠きが形成されている。そして、上記第2突起部が、上記第2切り欠きから上記搬送路内、より詳しくは、上記搬送終了部内に突出可能に配置されている。より具体的には、上記第2スライダが上記搬送終了部から上記ラック排出部の方向に移動(前進)すると、上記第2突起部は、上記搬送終了部内に突出する。逆に、上記ラック排出部から上記搬送終了部の方向に移動(後進)すると、上記第2突起部は、上記搬送路内、より詳しくは上記搬送終了部の第1側壁内に埋没する。また、上記構成では、上記第2突起部は板状の形状をしている。したがって、上記搬送終了部にラックが載置されているときに、上記第2駆動手段が作動し、上記第2スライダが前進すると、第2突起部が、上記ラックの側面に当接し、さらに、当該側面を搬送終了部からラック排出部の方向に押す。これにより、上記搬送終了部に載置されたラックをラック排出部に搬出することができる。
【0025】
また、上記の構成によれば、上記第2突起部が上記ラックを搬送方向の後方から押すことにより、上記ラックを搬出するため、ラックを安定して搬出することができる。すなわち、上記ラックが搬出中に転倒したり、上記ラックが搬送終了部やラック排出部に詰まったりすることを防ぐことができる。
【0026】
上記搬送装置は、上記課題を解決するために、ラックを載置可能なラック供給部と、上記ラック供給部に載置されたラックを搬送開始部に搬入するための第3搬送手段とをさらに備え、上記ラック供給部は、上記搬送路とL字状に接続され、かつ、上記搬送開始部と直列に接続され、さらに、上記ラック供給部と、上記搬送路と、上記ラック排出部とは、コの字状に接続されており、上記ラック供給部は、上記ラックの搬送方向の両側に第2側壁および第3側壁を備え、上記第2側壁および第3側壁には、それぞれ、第3切り欠きおよび第4切り欠きが形成され、上記第3搬送手段は、第3突起部を有する第3スライダと、第4突起部を有する第4スライダと、当該第3スライダを前進後進駆動させる第3駆動手段と、当該第4スライダを前進後進駆動させる第4駆動手段とを備え、上記第3突起部および第4突起部が、上記ラックの搬送方向に対して後方の側面に当接し、上記第3駆動手段および第4駆動手段を用いて当該側面を押すことにより、上記ラックを上記ラック供給部から上記搬送開始部に搬送することが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、上記搬送路には、ラックを載置可能なラック供給部が、L字をなすように接続されている。また、上記搬送路の搬送開始部は、上記ラック供給部と直列に接続されている。そのため、上記ラック供給部から搬送開始部にラックを搬送させ、上記搬送開始部で、搬送方向を90°転換して、上記搬送開始部から上記搬送終了部に向けて搬送されることが可能となる。
【0028】
さらに、上記ラック供給部と、上記搬送路と、上記ラック排出部とは、コの字を形成するように接続されている。そのため、上記ラック供給部に載置されたラックは、搬送路、より具体的には、上記搬送開始部、処理部、および搬送終了部を経て、上記ラック排出部まで、コの字を描くように、搬送されることが可能となる。
【0029】
また、上記構成によれば、ラック供給部から搬送開始部へのラックの搬送は、第3搬送手段により行われる。上記第3搬送手段は、第3突起部を有する第3スライダと、当該第3スライダを前進後進駆動させる第3駆動手段と、第4突起部を有する第4スライダと、当該第4スライダを前進後進駆動させる第4駆動手段とを備えている。そのため、上記第3駆動手段により、上記第3スライダが前進後進すると、上記第3スライダに設けられた第3突起部も前進後進することができる。同様に、上記第4駆動手段により、上記第4スライダが前進後進すると、上記第4スライダに設けられた第4突起部も前進後進することができる。
【0030】
一方、上記ラック供給部の第2側壁および第3側壁には、それぞれ、第3切り欠きおよび第4切り欠きが形成されている。そして、上記第3突起部が、上記第3切り欠きから上記ラック供給部内に突出するように、配置されている。同様に、上記第4突起部が、上記第4切り欠きから上記ラック供給部内に突出するように、配置されている。したがって、上記第3突起部は上記第3切り欠きから上記ラック供給部内に突出した状態で、また、上記第4突起部は上記第4切り欠きから上記ラック供給部内に突出した状態で、ラック供給部内を上記ラック供給部から上記搬送開始部の方向に移動(前進)したり、上記搬送開始部から上記ラック供給部の方向に移動(後進)したりすることができる。
【0031】
また、上記第3突起部および第4突起部は、それぞれ、上記第3切り欠きおよび第4切り欠きから上記ラック供給部内に突出しているため、上記ラック供給部に載置されたラックに当接する。より具体的には、上記ラックの搬送方向(上記ラック供給部から上記搬送開始部への方向)に対して後方の側面に当接する。このように、上記ラックの搬送方向に対して後方の側面に上記第3突起部および第4突起部が当接した状態で、上記第3駆動手段および第4駆動手段が作動し、上記第3突起部および第4突起部が上記ラック供給部から上記搬送開始部の方向に移動すると、上記ラックは、上記第3突起部および第4突起部により後から押され、上記ラック供給部から上記搬送開始部の方向に移動する。これにより、上記ラックを、上記ラック供給部から上記搬送開始部まで搬送することができる。
【0032】
上記搬送装置においては、上記課題を解決するために、上記第1突起部は、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出した状態と、上記搬送路内に埋没した状態との2つの状態をとることが可能であって、上記第1突起部には、上記第1突起部の先端から、上記搬送路内におけるラックの搬送方向とは反対方向に向けて傾斜面が形成されており、また、上記第1突起部は、付勢部材と接続されており、上記付勢部材は、上記第1突起部を付勢することにより、上記第1突起部を上記第1切り欠きから突出した状態とし、上記第1側壁に対して垂直方向の力が上記第1突起部に対して印加されたときに、上記第1突起部が上記付勢部材に抗して、上記第1切り欠きから突出した状態から、上記第1切り欠きに埋没した状態に遷移することが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、第1突起部は付勢部材と接続されている。そして、上記第1突起部は、付勢部材の付勢力により、上記搬送路内に第1切り欠きから突出した状態となる。この状態では、上記第1突起部は、上記搬送路に平行に位置することになる。そのため、上記第1突起部は、上記ラックの搬送方向後方の側面を押すことが可能となる。
【0034】
また、上記構成によれば、第1突起部には、上記第1突起部の先端から、上記搬送路内におけるラックの搬送方向とは反対方向に向けて傾斜面が形成されている。そのため、上記第1側壁に対して垂直方向から外力が加わると、付勢力に抗して第1突起部が第1切り欠き内に埋没する。それゆえ、第1側壁に対して垂直な方向から、上記搬送開始部に入ってきたラック等の物体が上記第1突起部に接触しても、上記第1突起部は、第1切り欠き内に埋没するので、第1突起部を含め装置に損傷を与えることがない。
【0035】
上記搬送装置においては、上記課題を解決するために、上記第1突起部は、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出した状態と、上記搬送路内に埋没した状態との2つの状態をとることが可能であって、上記第1突起部には、上記第1突起部の先端から、上記搬送路内におけるラックの搬送方向とは反対方向に向けて傾斜面が形成されており、また、上記第1突起部は、付勢部材と接続されており、上記付勢部材は、上記第1突起部を付勢することにより、上記第1突起部を上記第1切り欠きから突出した状態とし、上記搬送開始部から搬送終了部に向かう方向の力が上記第1突起部に対して印加されたときに、上記第1突起部が上記付勢部材に抗して、上記第1切り欠きから突出した状態から、上記第1切り欠きに埋没した状態に遷移することが好ましい。
【0036】
上記構成によれば、第1突起部は付勢部材と接続されている。そして、上記第1突起部は、付勢部材の付勢力により、上記搬送路内に第1切り欠きから突き出た状態となる。この状態では、上記第1突起部は、上記搬送路に平行に位置することになる。そのため、上記第1突起部は、上記ラックの搬送方向後方の側面を押すことが可能となる。
【0037】
また、上記構成によれば、第1突起部には、上記第1突起部の先端から、上記搬送路内におけるラックの搬送方向とは反対方向に向けて傾斜面が形成されている。そのため、上記搬送開始部から搬送終了部に向かう方向から外力が加わると、付勢力に抗して第1突起部が第1切り欠き内に埋没する。つまり、上記傾斜面に対して外力が印加されると、上記第1突起部は、上記第1切り欠き内に埋没する。それゆえ、上記第1突起部が、ラックを上記搬送開始部から上記搬送終了部まで搬送した後に、次のラックを搬送するために搬送開始部に復帰する際に、上記搬送路に存在するラックと接触しても、上記第1突起部は、上記付勢部材に抗して突出状態から埋没状態に遷移し、第1突起部を含め、装置に損傷を与えることがない。また、ラックが転倒して、試料が流出し、装置を汚染したり、破壊したりするのを防ぐことができる。
【0038】
本発明にかかる体外診断用分析装置は、上記課題を解決するために、本発明にかかる搬送装置を1構成部材として備えることを特徴としている。
【0039】
上記構成によれば、上記ラック供給部に載置したラックを自動的に上記処理部に搬送される。すなわち、上記ラックに、試料を入れた複数の容器を保持させておくことにより、各容器を順番に、自動的に上記処理部に搬送される。上記処理部において、上記試料に対して、各種処理を行うことにより、複数の試料を連続して、自動的に処理することが可能となる。なお、上記「処理」とは、特に限定されるものではなく、例えば、試料の分析、試料の観察、試料の採取、試料容器への試料の添加など、あらゆる処理が挙げられる。
【発明の効果】
【0040】
本発明にかかる搬送装置は、以上のように、搬送するラックの側方から突出した突起部を用いて、当該ラックを搬送方向の後方から押すことにより、ラックを搬送する。それゆえ、サンプルラックの形状に左右されることなく、確実にサンプルラックを搬送することができるという効果を奏する。また、サンプルラックを搬送中に他の外力が加わったとしても脱調や損傷が生じにくいという効果を奏する。さらに、サンプルラックが搬送中に転倒し、試料がテーブル上に流出したとしても、当該試料が装置内部に入り込んで、装置を破壊することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の一実施形態について図1〜図11に基づいて説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
〔実施の形態1〕
本実施形態にかかるラック搬送装置10は、図1に示すように、サンプルラック供給部11(ラック供給部)と、サンプルラック横搬送開始部12A(搬送開始部)、処理部12B、およびサンプルラック横搬送終了部12C(搬送終了部)からなる搬送路12と、サンプルラック排出部13(ラック排出部)とを備えている。サンプルラック供給部11と搬送路12とは、略直角をなすように、サンプルラック横搬送開始部12Aを介して連結されている。換言すれば、上記サンプルラック供給部11と搬送路12とは、L字状に接続されている。また、搬送路12とサンプルラック排出部13とは、略直角をなすように、サンプルラック横搬送終了部12Cを介して、連結されている。換言すれば、上記搬送路12とサンプルラック排出部13とは、L字状に接続されている。その結果、サンプルラック供給部11と、搬送路12と、サンプルラック排出部13とは、「コの字」状に接続されている(図2を参照)。なお、「略直角」とは、直角または実質的に直角であることを意味するものである。
【0043】
サンプルラック供給部11、搬送路12、およびサンプルラック排出部13は、サンプルラック2を滑らせながら搬送できるように連続した平らなテーブル8面上に形成されている。
【0044】
また、本実施形態にかかるラック搬送装置10は、図3に示すように、サンプルラック供給部11に載置されたサンプルラック2(ラック)を搬送路12に搬入するためのサンプルラック送り込み機構30(第3搬送手段)と、搬送路12に載置されたサンプルラック2を搬送するための横搬送機構50(第1搬送手段)と、サンプルラック横搬送終了部12Cに載置されたサンプルラック2をサンプルラック排出部13に搬出するためのサンプルラック排出機構100(第2搬送手段)とを備えている。
【0045】
本実施形態にかかるラック搬送装置10では、サンプルラック2がサンプルラック供給部11に載置される。このとき、サンプルラック2は、長尺方向、言い換えれば、当該差プルラック2に保持された容器4が並んでいる列方向、が搬送路12と実質的に平行となるように載置される。このように載置されたサンプルラック2は、サンプルラック送り込み機構30によって、サンプルラック2の長尺方向に対して実質的に垂直な方向に、サンプルラック横搬送開始部12Aに向かって搬送される。
【0046】
サンプルラック横搬送開始部12Aまで搬送されたサンプルラック2は、横搬送機構50によって、サンプルラック2の長尺方向に、搬送路12に沿って、サンプルラック横搬送終了部12Cまで搬送される。
【0047】
サンプルラック横搬送終了部12Cまで搬送されたサンプルラック2は、サンプルラック排出機構100によって、サンプルラック2の長尺方向に対して実質的に垂直な方向に押され、サンプルラック排出部13に搬出される。
【0048】
このようにして、サンプルラック2は、サンプルラック供給部11から搬送路12へ、搬送路12からサンプルラック排出部13へと、「コの字」を描くように搬送される。
【0049】
さらに、本実施形態にかかるラック搬送装置10では、サンプルラック2が搬送路12の処理部12Bに位置するときに、サンプルラック2に保持された試料に対して、様々な処理を行うことができる。上記処理は、特に限定されるものではなく、例えば、試料の分析、試料の観察、試料の採取、試料容器への試料の添加など、あらゆる処理が挙げられる。より具体的には、本実施形態にかかるラック搬送装置10を、分析装置と組み合わせて用いる場合には、処理部12Bで、試料の採取や試料の測定などを行えばよい。また、前処理装置と組み合わせて用いる場合には、処理部12Bにおいて前処理を行えばよい。さらに、検査装置と組み合わせて用いる場合には、処理部12Bにおいて検査を行えばよく、また、調製装置と組み合わせて用いる場合には、処理部12Bにおいて調製を行えばよい。また、処理部12Bで行う処理は、これらの例示したような処理を1種類行うことに限定されるものではない。さらに、複数の処理を連続的に実行する構成とすることもできる。
【0050】
また、本実施形態にかかるラック搬送装置10では、上記サンプルラック横搬送開始部12Aからサンプルラック横搬送終了部12Cまでのサンプルラック2の搬送は、等速で行われてもよいし、変速しながら行われてもよい。また、搬送の途中で、搬送を停止してもよい。特に処理部12Bでは、処理の種類の応じて、速度を変更したり、搬送を一旦停止したりして、上記処理が円滑に行えるようにすることが好ましい。
【0051】
詳細については後述するが、本実施形態にかかるラック搬送装置10では、横搬送機構50によりサンプルラック2を後方から押して搬送する。そのため、サンプルラック2の形状に関係なく、搬送することができる。このことは、処理部12B内をサンプルラック2を搬送している間に、サンプルラック2の搬送を制御する上でも、有利である。具体的には、処理部12B内を搬送中にサンプルラック2の搬送を停止させたり、搬送速度を変更したりする場合、その停止位置や、搬送速度を変更する位置を所望に設定することができる。
【0052】
本実施形態におけるサンプルラック2は、図4に示すように、直方体状の形状をしている。サンプルラック2の上面には、複数の穴3が列状に形成されている。それぞれの穴3に、試料を入れた容器4を挿入することによって、当該サンプルラックは、試料を保持することができる。また、サンプルラック2の長尺方向の側面には、貫通孔5が形成されている。また、貫通孔5は、穴3とつながっており、サンプルラック2に保持されている容器4の側面を、貫通孔5を通して、見ることができる。つまり、貫通孔5から、試料に光を照射し、透過させることが可能となる。したがって、このような構成とすることにより、貫通孔5を通過するように測定光を試料に対して照射することにより光学的測定を行うことができる。
【0053】
なお、ここでは、サンプルラック2として、図4に示すサンプルラックを用いる実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、容器4を保持できるものであれば、あらゆるサンプルラックを用いることができる。特に、複数の容器を並列保持することが可能なラックであることが好ましい。
【0054】
また、図4に示すサンプルラックは、サンプルラックの底面部に1つの凹部を備えているが、この凹部の数は1つに限られず、複数の凹部を備えていてもよい。また、底面部に凹部を全く備えないサンプルラックであってもよい。さらに、貫通孔5を備えないサンプルラックであってもよい。また、貫通孔5の形状も図4に限定されるものではなく、貫通孔5の利用形態に応じて、適宜変更することが可能である。また、穴3の形状についても、図4では、円筒状の穴であるが、容器4の形状に応じて、適宜変更することが可能である。
【0055】
さらに、容器4についても、特に限定されるものではなく、ガラス製容器、各種樹脂製容器、石英製容器、および金属製容器等、あらゆる材質の容器を用いることができる。これら容器は、中に入れるサンプルの種類に応じて適宜選択すればよい。
【0056】
また、容器4に入れるサンプルも特に限定されるものではない。例えば、あらゆる生物試料、生体試料、化学試料などを挙げることができる。
【0057】
以下、本実施形態にかかるラック搬送装置10の、各構成部材(サンプルラック供給部11、搬送路12、サンプルラック排出部13、サンプルラック送り込み機構30、横搬送機構50、およびサンプルラック排出機構100)について詳細に説明する。
【0058】
まず、サンプルラック供給部11およびサンプルラック送り込み機構30について説明する。
【0059】
サンプルラック供給部11は、図1に示すように、側壁22(第2側壁)および側壁23(第3側壁)を備えている。側壁22と側壁23とは、略平行に対向している。なお、「略平行」とは、平行または実質的に平行であることを意味する。また、側壁22と側壁23との間隔(幅)は、サンプルラック2の長尺方向の長さに合わせて設定される。具体的には、サンプルラック2を長尺方向に側壁22と側壁23との間に載置でき、かつ、当該サンプルラック2が長尺方向に対して略垂直な方向に移動できるように、設定される。なお、「略垂直」とは、垂直または、実質的に垂直であることを意味する。上記構成によれば、サンプルラック2を縦方向にストックできる。
【0060】
また、側壁22および側壁23のそれぞれの幅は、サンプルラック2を載置(ストック)したい数に応じて、設定すればよい。これにより、サンプルラック供給部11には、処理前のサンプルラック2を並列に並べて、複数個ストックすることが可能となる。
【0061】
また、側壁22および側壁23には、それぞれ、切り欠き15(第3切り欠き、第4きり欠き)が形成されている。当該切り欠き15からは、サンプルラック送り込み機構30の突出部33(第3突起部)が、サンプルラック供給部11内に突出している(図1および図3を参照)。
【0062】
サンプルラック供給部11に載置されたサンプルラック2は、この2つの突出部33によって搬送方向(図2において紙面上方向)の後方の側面の両端を押される形で、サンプルラック横搬送開始部12Aまで搬送される。また、サンプルラック供給部11に複数のサンプルラック2が載置されている場合には、最も後方に載置されたサンプルラック2の搬送方向の後方側面の両端を、2つの突出部33が押すことにより、サンプルラック供給部11に載置された全てのサンプルラック2が、サンプルラック2の長尺方向とは略垂直な方向(図2において紙面上方向)に移動する。
【0063】
また、処理部12Bの側壁23には、凸部が設けられていてもよい。そのような構成とすれば、上記凸部と噛み合う凹部をサンプルラック2に設けておくと、上記凸部と凹部とが噛み合った状態でサンプルサック2は搬送される。それゆえ、より安定した搬送が可能となる。
【0064】
ここで、サンプルラック供給部11に載置されたサンプルラック2を移動させるための駆動機構であるサンプルラック送り込み機構30について、説明する。
【0065】
サンプルラック送り込み機構30は、サンプルラック供給部11に載置されたサンプルラック2をサンプルラック横搬送開始部12Aに搬入するための駆動機構である。
【0066】
サンプルラック送り込み機構30は、図5に示すように、対をなす2つのレール31と、各レール31の上を前進後退することができる2つのステージ32と、当該2つのステージ32を駆動する搬送駆動部35(第3駆動手段)とを備えている。さらに、各ステージ32の上には、各切り欠き15(図1を参照)からサンプルラック供給部11内に突出するように取り付けられる2つの突出部33が固定されている。
【0067】
また、上記搬送駆動部35は、主プーリ36と副プーリ37、主プーリ36と副プーリ37との間を接続するタイミングベルト38、タイミングベルト38とステージ32とを連結するための連結金具39、および主プーリ36の回転軸に直結するモータ34を2つずつ備えている。これにより、各ステージ32に各モータ34の駆動力を伝達し、各ステージ32を駆動させることができる。
【0068】
より詳しく説明すると、モータ34が回転すると、その回転駆動力は、タイミングベルト38に伝達される。また、タイミングベルト38の一部は、連結金具39を介して、ステージ32と連結されている。そのため、タイミングベルト38に伝達された回転駆動力は、ステージ32に伝達される。また、2つのモータ34は、同期して動作する。これにより、2つのステージ32は、同期して前進後退することができる。本実施形態にかかるラック搬送装置10では、2つのステージ32のそれぞれに設けられた突出部33がサンプルラック2の進行方向後方の側面の両端を同時に、等しい力で押すことができるように、2つのステージ32は前進する。
【0069】
2つのステージ32が前進すると、2つの突出部33は、サンプルラック供給部11内にストックされているサンプルラック2の進行方向後方の側面の両端を同時に均等な力で押す。それゆえ、サンプルラック2を長尺方向に略垂直な方向(図2において紙面上方向)に、サンプルラック横搬送開始部12Aに向けて移動させることができる。なお、ここでは、モータ34の回転駆動力を、プーリとタイミングベルトとで伝達する機構について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。具体的には、モータ34の回転駆動力の伝達機構としては、上記の機構以外にも、従来公知の多種多様な動力伝達機構を用いることが可能である。
【0070】
また、本実施形態にかかるラック搬送装置10は、サンプルラック横搬送開始部12Aにサンプルラック2が位置するとき、サンプルラック送り込み機構30、具体的にはモータ34は、停止する。このようなステージ32の動きは、駆動機構選択部110によりモータ34の動作を制御することにより、制御することができる。なお、サンプルラック送り込み機構30の駆動制御については、後述するので、ここでは詳細について述べない。
【0071】
次に、搬送路12および横搬送機構50について説明する。なお、横搬送機構50と搬送路12とからなる構成でサンプルラック横搬送装置と称することもできる。
【0072】
搬送路12は、図2に示すように、直線上に配置されたサンプルラック横搬送開始部12A、処理部12B、およびサンプルラック横搬送終了部12Cが、この順で接続されてなる。換言すれば、サンプルラック横搬送開始部12A、処理部12B、およびサンプルラック横搬送終了部12Cがこの順で直列に連結されることにより、搬送路12は形成されている。
【0073】
サンプルラック横搬送開始部12Aはサンプルラック供給部11と直列に連結されている。また、サンプルラック供給部11に備えられている側壁23は、サンプルラック横搬送開始部12Aを構成するものでもある。言い換えれば、サンプルラック横搬送開始部12Aは、側壁23を介して、サンプルラック供給部11と直接に連結されているということもできる。これにより、サンプルラック供給部11から搬送されてきたサンプルラック2がサンプルラック横搬送開始部12Aに載置される。
【0074】
また、サンプルラック横搬送開始部12Aには、図1に示すように、第1センサ112が取り付けられている。第1センサ112は、サンプルラック横搬送開始部12A上に、サンプルラック2が載置されているか否かを検知する。そして、その検知した情報を、駆動機構選択部110に伝達する。第1センサ112は、特に限定されるものではなく、サンプルラック横搬送開始部12A上に、サンプルラック2が載置されているか否かを検知できるものであればよい。例えば、レーザー光反射を用いたセンサや、サンプルラック横搬送開始部12Aに負荷された力、換言すれば、サンプルラック2の重量を検知するセンサなどを用いることができる。
【0075】
また、図1では、第1センサ112は、サンプルラック横搬送開始部12Aの側壁20(第1側壁)上に備えられているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、サンプルラック横搬送開始部12Aの底面のテーブル8上に設置したり、サンプルラック横搬送開始部12Aの側壁23に設置したりすることもできる。
【0076】
一方、サンプルラック横搬送終了部12Cはサンプルラック排出部13と直列に連結されている。また、サンプルラック排出部13に備えられる側壁24は、サンプルラック横搬送終了部12Cを構成するものでもある。すなわち、サンプルラック横搬送終了部12Cは、側壁24を介して、サンプルラック排出部13と直列に連結されているということもできる。これにより、横搬送機構50により搬送され、サンプルラック横搬送終了部12Cに載置されたサンプルラック2がサンプルラック排出部13に搬出される。
【0077】
また、サンプルラック横搬送終了部12Cには、図1に示すように、第2センサ114が取り付けられている。第2センサ114は、サンプルラック横搬送終了部12C上に、サンプルラック2が載置されているか否かを検知する。そして、その検知した情報を、駆動機構選択部110に伝達する。第2センサ114は、特に限定されるものではなく、サンプルラック横搬送終了部12C上に、サンプルラック2が載置されているか否かを検知できるものであればよい。例えば、レーザー光反射を用いたセンサや、サンプルラック横搬送終了部12Cに負荷された力、換言すれば、サンプルラック2の重量を検知するセンサなどを用いることができる。
【0078】
また、図1では、第2センサ114は、サンプルラック横搬送終了部12Cの側壁24に備えられているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、サンプルラック横搬送終了部12Cの底面のテーブル8上に設置することもできる。
【0079】
さらに、サンプルラック横搬送終了部12Cの側壁20(第1側壁)には、切り欠き17(第2切り欠き)が形成されている。この切り欠き17からは、後述するサンプルラック排出機構100の板状の突起部102(第2突起部)が突出できるようになっている。サンプルラック横搬送終了部12Cに載置されたサンプルラック2は、この突起部102に押されることにより、サンプルラック横搬送終了部12Cから、サンプルラック排出部13に搬出される。なお、サンプルラック排出機構100およびサンプルラック排出部13については後述するので、ここでは詳細は説明しない。
【0080】
処理部12Bは、サンプルラック横搬送開始部12Aとサンプルラック横搬送終了部12Cとの間に位置する。処理部12B上をサンプルラック2が搬送されている間に、サンプルラック2に保持された容器4または容器4に入れられた試料に対して、様々な処理が行われる。当該処理は、特に限定されるものではなく、上述した通りである。
【0081】
処理部12Bには、側壁20および側壁21が設けられている。側壁20と側壁21とは、略平行に対向している。また、側壁20と側壁21との間隔(幅)は、サンプルラック2の縦方向(短尺方向)の長さに合わせて設定される。具体的には、サンプルラック2を縦方向に、側壁20と側壁21との間に載置でき、かつ、当該サンプルラック2が横方向(サンプルラックの長尺方向)に移動できるように、設定される。これにより、サンプルラック2を、サンプルラック横方向(サンプルラックの長尺方向、図1において左方向)に沿って、搬送することができる。なお、側壁20は、処理部12Bを構成するだけでなく、サンプルラック横搬送開始部12Aおよびサンプルラック横搬送終了部12Cを構成する。すなわち、サンプルラック横搬送開始部12A、処理部12B、およびサンプルラック横搬送終了部12Cは、側壁20を介して、連結されているということもできる。
【0082】
処理部12Bの幅、すなわち、側壁20と側壁21との間隔は、サンプルラック2の短尺方向の長さに合わせて設定される。具体的には、サンプルラック2を短尺方向に側壁20と側壁21との間に載置でき、かつ、当該サンプルラック2が長尺方向に移動できるように、設定される。
【0083】
また、処理部12Bの長さは、特に限定されるものではなく、サンプルラック2の長尺方向の長さや、ラック搬送装置10の利用用途などに応じて適宜設定すればよい。具体的には、サンプルラック2に保持される容器4の幅(直径)以上であればよい。例えば、処理部12Bにサンプルラック2を長尺方向に1つ配置できる長さとすればよい。
【0084】
さらに、処理部12Bには、バーコードリーダー18(図示せず)を取り付けてもよい。これにより、容器4に貼付されているバーコードを読み取り、その情報を取り出すことが可能となる。これは、容器4に入っている試料の識別等の目的に利用することができる。バーコードリーダー18の設置位置は、特に限定されるものではない。例えば、処理部12Bの側壁20または側壁21に設置することができる。
【0085】
サンプルラック横搬送開始部12Aおよび処理部12Bにある側壁20には、切り欠き16(第1切り欠き)が搬送路12に沿って形成されている。当該切り欠き16からは、横搬送機構50の突起部91(第1突起部)が、搬送路12内に突出するようになっている(図1を参照)。
【0086】
サンプルラック横搬送開始部12Aに載置されたサンプルラック2は、横搬送機構50が駆動すると、突起部91によって搬送方向の後方の側面7が押され、搬送路12上を、サンプルラック横搬送終了部12Cに向かって、サンプルラック2の長尺方向(図2において紙面左方向)に移動する。これにより、サンプルラック2は、サンプルラック横搬送開始部12Aからサンプルラック横搬送終了部12Cまで搬送される。
【0087】
また、側壁20には、凸部が設けられていてもよい。そのような構成とすれば、上記凸部と噛み合う凹部をサンプルラック2に設けておくと、上記凸部と凹部とが噛み合った状態でサンプルサック2は搬送される。それゆえ、より安定した搬送が可能となる。
【0088】
ここで、横搬送機構50について図6〜図8を用いて、詳細に説明する。なお、図6は横搬送機構50の全体構造を示す正面図である。また、図7は、図6は横搬送機構50の右側面図である。図8は部材53を上方から見た図である。
【0089】
サンプルラック2は、上述したサンプルラック送り込み機構30によって、サンプルラック2の長尺方向に対して略垂直方向(図2において紙面上方向)に移動され、サンプルラック横搬送開始部12Aに搬送される。サンプルラック2がサンプルラック横搬送開始部12Aに載置されると、モータ34は停止し、横搬送機構50が作動する。なお、これらサンプルラック送り込み機構30および横搬送機構50の動作制御は、駆動機構選択部110によって行われるが、その詳細については、後述するので、ここでは説明しない。
【0090】
横搬送機構50は、サンプルラック横搬送開始部12Aからサンプルラック横搬送終了部12Cまでサンプルラック2を搬送するためのものであり、スライダ51と、スライダ51を駆動する搬送駆動部52(第1駆動手段)とを備えている。さらに、スライダ51には突起部91を備える部材53が設けられている。上述したように、突起部91は、搬送路12の側壁20に設けられた切り欠き16(図1参照)から突出するように取り付けられている。より詳しく説明すると、図8に示すように、突起部91が弾性体80(付勢部材)の付勢力によりストッパ84に当接して切り欠き16(図1参照)から搬送路12内に突き出た状態では、搬送路と平行に位置しており、サンプルラック2の側面7(図4参照)を押すことができるようになっている。
【0091】
一方、突起部91の突起部上面(言い換えれば、突起部91の先端)から反進行方向側(言い換えれば、搬送路12内におけるサンプルラック2の搬送方向とは反対方向)に向けて傾斜面が形成されており、図8の矢印86方向(換言すれば、上記搬送開始部から搬送終了部に向かう方向)から外力が加わると付勢力に抗して突起部91が支軸77を軸に回転(図8においては時計回転方向)して切り欠き16内に埋没することができるようになっている。また、突起部91は、サンプルラック横搬送開始部12Aの側壁23に埋没できるようになっている。
【0092】
また、突起部91の大きさは特に限定されるものではなく、サンプルラック2の短尺方向の長さに応じて適宜設定されるものである。具体的には、突起部91の側壁20から突出している部分の長さが、サンプルラック2の短尺方向の長さの50〜100%であることが好ましい。上記範囲内であれば、安定してサンプルラック2を搬送することができる。一方、上記範囲よりも短いと、突起部91がサンプルラック2の搬送方向に移動するとき、サンプルラック2の側壁20に対向する面の隙間などに突起部91が入り込み、サンプルラック2が回転するといった問題が起こる可能性がある。逆に、上記範囲よりも長いと、サンプルラック2の搬送方向とは逆方向に突起部91が移動しているときに、後方にあるサンプルラック2(次に搬送されてくるサンプルラック2)に接触しても、突起部91が側壁20に押し込まれない可能性がある。
【0093】
スライダ51は、搬送駆動部52の作用により移動することができる。具体的には、スライダ51が図2の紙面左方向に移動すると、スライダ51に取り付けられた部材53に備えられた突起部91が、サンプルラック2の側面7を、図2の紙面左方向に後から押すことになる。その結果、搬送路12上にあるサンプルラック2をサンプルラック横搬送開始部12Aからサンプルラック横搬送終了部12Cまで搬送することができる。
【0094】
搬送駆動部52は、主プーリ60と副プーリ61、主プーリ60と副プーリ61との間を接続するタイミングベルト62、タイミングベルト62とスライダ51とを連結するための連結金具63、および主プーリ60の回転軸に直結するモータ64を備えている。
【0095】
上記構成によれば、モータ64が回転することにより、主プーリ60と副プーリ61との間に張られたベルト62が動く。その結果、タイミングベルト62に固定された連結金具63を介してスライダ51も同時に動く。それゆえ、上述したように、サンプルラック2を長尺方向(図2において紙面左方向)に移動させることができる。
【0096】
本実施形態では、横搬送機構50について、部材53、換言すれば突起部91を1つ備える実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、複数の部材53を備え、切り欠き16から複数の突起部91が順々に突出する構成とすることもできる。このような構成では、1つの突起部91は、1つのサンプルラック2を後ろから押し、連続的に搬送されてくるサンプルラック2を次々と搬送することができる。
【0097】
次に、サンプルラック排出部13およびサンプルラック排出機構100について説明する。
【0098】
サンプルラック排出部13は、側壁24および側壁25を備えている。側壁24と側壁25とは、略平行に対向している。また、側壁24と側壁25との間隔(幅)は、サンプルラック2の長尺方向の長さに合わせて設定される。具体的には、側壁24と側壁25との間に、サンプルラック2を長尺方向に載置でき、かつ、当該サンプルラック2が長尺方向に対して略垂直な方向(図2において紙面下方向)に移動できるように、設定される。上記構成によれば、サンプルラック横搬送終了部12Cから搬出されたサンプルラック2を縦方向にストックすることができる。
【0099】
また、側壁24および側壁25のそれぞれの幅は、サンプルラック2を載置(ストック)したい数に応じて、設定すればよい。これにより、サンプルラック排出部13には、処理後のサンプルラック2を並列に並べて、複数個ストックすることが可能となる。
【0100】
サンプルラック横搬送終了部12Cからサンプルラック排出部13へのサンプルラック2の搬出は、サンプルラック排出機構100によって行われる。具体的には、サンプルラック排出機構100が駆動すると、サンプルラック横搬送終了部12Cの側壁20の切り欠き17から突出した突起部102が、サンプルラック2の搬出方向に対して後方の側面換言すれば、側壁20に隣接しているサンプルラック2の側面を、当該側面に対して略垂直方向に押す。これにより、サンプルラック2を図2の紙面下方向に移動させ、サンプルラック横搬送終了部12Cからサンプルラック排出部13に搬出する。
【0101】
また、側壁25には、凸部が設けられていてもよい。そのような構成とすれば、上記凸部と噛み合う凹部をサンプルラック2に設けておくと、上記凸部と凹部とが噛み合った状態でサンプルサック2は搬送される。それゆえ、より安定した搬出が可能となる。
【0102】
ここで、サンプルラック横搬送終了部12Cに載置されたサンプルラック2を移動させるための駆動機構であるサンプルラック排出機構100について、図9に基づき、詳細に説明する。図9はサンプルラック排出機構100の全体構造を示す右側面図である。
【0103】
サンプルラック排出機構100は、サンプルラック横搬送終了部12Cの側壁20(図1参照)の裏に取り付けられている。サンプルラック排出機構100は、スライダ104と、スライダ104を駆動する搬送駆動部65(第2駆動手段)とを備えている。さらに、スライダ104には、サンプルラック2をサンプルラック排出部13に押し出すための板状の突起部102が設けられている。突起部102は、サンプルラック横搬送終了部12Cの側壁20の切り欠き17から突出できるように配置されている。なお、突起部102は、板状であるが、サンプルラック2の側面を押す面の形状は、特に限定されるものではない。例えば、平面でもよいが、その他サンプルラック2の側面を押すことが可能な形状とすることも可能である。
【0104】
また、突起部102の大きさは特に限定されるものではないが、サンプルラック2の押す面の2/3程度の面積を押すことが可能な大きさであることが好ましい。また、上記突起部102は、サンプルラック2の側面を後から押すとき、サンプルラック2の重心位置よりも下方の側面を押すことが好ましい。これにより、安定してサンプルラック2を搬出することができる。
【0105】
また、上記搬送駆動部65は、主プーリ40と副プーリ41、主プーリ40と副プーリ41との間を接続するタイミングベルト42、およびタイミングベルト42とスライダ104とを連結するための連結金具43、および主プーリ40の回転軸に直結するモータ44備えている。そのため、モータ44が回転すると、その回転駆動力は、タイミングベルト42に伝達される。また、タイミングベルト42の一部は、連結金具43を介して、スライダ104と連結されている。そのため、タイミングベルト42に伝達された回転駆動力は、スライダ104に伝達される。その結果、スライダ104は、前進後退することが可能となる。なお、ここでは、モータ44の回転駆動力を、プーリとタイミングベルトとで伝達する機構について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。具体的には、モータ44の回転駆動力の伝達機構としては、上記の機構以外にも、従来公知の多種多様な動力伝達機構を用いることが可能である。
【0106】
本実施形態にかかるラック搬送装置10は、上述した構成を備えることにより、サンプルラック2を、サンプルラック供給部11から、搬送路12を経て、サンプルラック排出部13まで搬送することができる。上述したように、本実施形態にかかるラック搬送装置10では、サンプルラック送り込み機構30、横搬送機構50、およびサンプルラック排出機構100の動作は、駆動機構選択部110によって、制御される。
【0107】
ここで、駆動機構選択部110について、詳細に説明する。
【0108】
図10に示すように、駆動機構選択部110は、第1通信部120と、第2通信部121と、制御部111と、第3通信部122と、第4通信部123と、第5通信部124とを備えている。第1通信部120および第2通信部121は、それぞれ、駆動機構選択部110が第1センサ112および第2センサ114と通信するためのインターフェースである。また、第3通信部122、第4通信部123、および第5通信部124は、それぞれ、駆動機構選択部110がサンプルラック送り込み機構30、横搬送機構50、およびサンプルラック排出機構100と通信するためのインターフェースである。その結果、第1センサ112および第2センサ114は、それぞれ、第1通信部120および第2通信部121を介して、制御部111と接続されている。また、サンプルラック送り込み機構30、横搬送機構50、およびサンプルラック排出機構100は、それぞれ、第3通信部122、第4通信部123、および第5通信部124を介して、制御部111と接続されている。
【0109】
上記構成により、駆動機構選択部110は、第1センサ112および第2センサ114からのサンプルラック2の有無の検知信号を、第1通信部120および第2通信部121を介して受信し、制御部111に送ることができる。
【0110】
第1センサ112は、サンプルラック横搬送開始部12A上に載置されたサンプルラック2を検知する機器である。また、第2センサ114は、サンプルラック横搬送終了部12C上に載置されたサンプルラック2を検知する機器である。
【0111】
第1センサ112および第2センサ114は、それぞれ、図10に示すように、検知部115、センサ制御部116、およびセンサ通信部117を備えている。
【0112】
検知部115は、サンプルラック横搬送開始部12Aまたはサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されているか否かの情報を検知するものである。検知部115にて検知した情報は、センサ制御部116へと送信される。
【0113】
センサ制御部116は、検知部115にて検知した情報を受信すると、検知部115が検知した情報が、サンプルラック横搬送開始部12Aまたはサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されていることを示すものであるのか、もしくは、サンプルラック横搬送開始部12Aまたはサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されていないことを示すものであるのかの判断を行う。
【0114】
センサ制御部116には、予め、検知部115にて検知した情報が、サンプルラック横搬送開始部12Aまたはサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されていることを示すものであるか、もしくは、サンプルラック横搬送開始部12Aまたはサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されていないことを示すものであるのかを判定するための基準が記憶されている。このため、センサ制御部116は、検知部115から送信された変化情報を上記基準に照らし合わせることにより、サンプルラック横搬送開始部12Aまたはサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されているか否かを判定する。センサ制御部116は、その判定結果を駆動機構選択部110に送信する。センサ制御部116からの上記判定結果の通知はセンサ通信部117を介して行われる。
【0115】
センサ通信部117は、第1センサ112または第2センサ114が駆動機構選択部110と通信を行うためのインターフェースである。センサ制御部116からの上記判定結果の通知は、センサ通信部117から駆動機構選択部110へと送信される。
【0116】
第1センサ112および第2センサ114と駆動機構選択部110との通信は、第1センサ112および第2センサ114から駆動機構選択部110への単方向通信であってもよいし、双方向通信であってもよい。また、第1センサ112および第2センサ114の各部材を駆動させるための電源部については、図示していないが、本実施形態にかかるラック搬送装置10の電源から、電力が供給されることが好ましい。
【0117】
上記のように、第1センサ112および第2センサ114は、それぞれサンプルラック横搬送開始部12Aおよびサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されているか否かの情報を検知する。さらに、上記情報が、サンプルラック横搬送開始部12Aまたはサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されている状態を示すのか、もしくは、載置されていない状態を示すのかを判断し、その判断した状態を、駆動機構選択部110の第1通信部120または第2通信部121を介して、制御部111に通知する。
【0118】
制御部111は、サンプルラック横搬送開始部12Aに備えられる第1センサ112、およびサンプルラック横搬送終了部12Cに備えられる第2センサ114から伝送された信号に基づいて、サンプルラック送り込み機構30、横搬送機構50、およびサンプルラック排出機構100の動作を制御するものである。具体的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)等から構成される。制御部111は、情報解析部113と、第1指令部130と、第2指令部131と、第3指令部132とを備えている。情報解析部113は、第1センサ112、および第2センサ114から伝送された信号に基づいて、サンプルラック送り込み機構30、横搬送機構50、およびサンプルラック排出機構100のいずれの駆動機構を作動させるかを判断し、その結果を、信号として、第1指令部130、第2指令部131、および第3指令部132に通知する。第1指令部130は、情報解析部113からの信号に基づき、サンプルラック送り込み機構30を駆動させたり、停止させたりするための信号を生成し、第3通信部122を介して、その信号をサンプルラック送り込み機構30に伝送する。第2指令部131は、情報解析部113からの信号に基づき、横搬送機構50を駆動させたり、停止させたりするための信号を生成し、第4通信部123を介して、その信号を横搬送機構50に伝送する。第3指令部132は、情報解析部113からの信号に基づき、サンプルラック排出機構100を駆動させたり、停止させたりするための信号を生成し、第5通信部124を介して、その信号をサンプルラック排出機構100に伝送する。なお、これらの各部は、CPUが予めメモリに記憶されたプログラムを実行することによって実現される機能ブロックである。
【0119】
以下、本実施形態にかかるラック搬送装置10の動作について詳細に説明する。
【0120】
本実施形態にかかるラック搬送装置10では、図11に示すように、まず、ステップ1において、第1センサ112および第2センサ114が、それぞれ、検知部115によって、サンプルラック横搬送開始部12Aおよびサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されているか否かの情報を検知する。そして、第1センサ112および第2センサ114は、それぞれ、検知部115が検知した情報が、サンプルラック横搬送開始部12Aおよびサンプルラック横搬送終了部12C上にサンプルラック2が載置されていることを示すものであるのか、それとも、載置されていないことを示すものであるのかを、センサ制御部116で判定する。そして、第1センサ112および第2センサ114は、センサ通信部117を介して、その判定結果を駆動機構選択部110に通知する。
【0121】
ステップ2では、駆動機構選択部110は、第1センサ112および第2センサ114から通知された上記判定結果が、サンプルラック横搬送開始部12Aおよびサンプルラック横搬送終了部12Cの少なくとも一方にサンプルラック2が載置されていることを示すものであるのか否かを、制御部111において判断する。
【0122】
ここで、サンプルラック横搬送開始部12Aおよびサンプルラック横搬送終了部12Cのいずれにもサンプルラック2が載置されていないと判断されると、ステップ7で、駆動機構選択部110は、第3通信部122を介して、信号を発信し、サンプルラック送り込み機構30を駆動させる。
【0123】
一方、ステップ2において、サンプルラック横搬送開始部12Aおよびサンプルラック横搬送終了部12Cの少なくとも一方にサンプルラック2が載置されていると判断されると、ステップ3において、駆動機構選択部110は、サンプルラック2がサンプルラック横搬送開始部12A上にあるのか否かを判断する。
【0124】
ここで、サンプルラック横搬送開始部12A上にサンプルラック2が載置されていないと判断されると、駆動機構選択部110は、サンプルラック2がサンプルラック横搬送終了部12C上にのみ載置されているとみなす。そして、駆動機構選択部110は、ステップ6およびステップ7を実行する。具体的には、ステップ6では、駆動機構選択部110は、第5通信部124を介して、信号を発信し、サンプルラック排出機構100を駆動させる。また、ステップ7では、駆動機構選択部110は、第3通信部122を介して、信号を発信し、サンプルラック送り込み機構30を駆動させる。なお、ここでは、ステップ3において、サンプルラック横搬送開始部12A上にサンプルラック2が載置されていないと判断されると、駆動機構選択部110は、ステップ6およびステップ7を実行する実施形態について説明したが、ステップ6のみを実行する構成とすることもできる。
【0125】
一方、ステップ3において、サンプルラック横搬送開始部12Aにサンプルラック2が載置されていると判断されると、ステップ4で、駆動機構選択部110は、サンプルラック2がさらにサンプルラック横搬送終了部12C上にも載置されているか否かを判断する。
【0126】
ここで、サンプルラック横搬送終了部12C上にはサンプルラック2が載置されていないと判断されると、ステップ5において、駆動機構選択部110は、第4通信部123を介して、信号を発信し、横搬送機構50を駆動させる。
【0127】
一方、ステップ4において、サンプルラック横搬送終了部12Cにもサンプルラック2が載置されていると判断されると、駆動機構選択部110は、ステップ5および6を共に実行する。具体的には、ステップ5で、駆動機構選択部110は、第4通信部123を介して、信号を発信し、横搬送機構50を駆動させる。また、ステップ6で、駆動機構選択部110は、第5通信部124を介して、信号を発信し、サンプルラック排出機構100を駆動させる。
【0128】
このように、第1センサ112および第2センサ114により、サンプルラック横搬送開始部12Aおよびサンプルラック横搬送終了部12Cに載置されたサンプルラック2を検知し、駆動機構選択部110が駆動させる駆動機構を制御することによって、サンプルラック2を転倒させることなく、サンプルラック供給部11から搬送路12を経てサンプルラック排出部13まで安定して、サンプルラック2を搬送することができる。
【0129】
本実施形態にかかるラック搬送装置10は、以上説明した構成を備えることにより、サンプルラックの形状に全く左右されることなく、あらゆるタイプのサンプルラックを確実に搬送することができる。また、サンプルラックを搬送中に他の外力が加わったとしても脱調や損傷が生じにくい。したがって、本実施形態にかかるラック搬送装置は、安全性や操作性に優れる。
【0130】
そのため、本実施形態にかかるラック搬送装置10は、自動化にサンプルラックの搬送を必要とするあらゆる装置、例えば、各種の分析装置、診断装置、前処理装置、検査装置、調整装置、製造装置等と組み合わせて好適に用いることができる。つまり、生体試料容器を列状に保持するサンプルラックを用いて生体試料の前処理、調製、測定等の各種処理工程を行う際に、サンプルラックを搬送するサンプルラック搬送装置として用いることができる。上記分析装置には、尿中有形成分分析装置のような体外診断用分析装置も含まれる。
【0131】
また、本実施形態にかかるラック搬送装置10と、上記例示したような各種装置とを一体化させた装置構成とすることもできる。さらに、上記例示したような各種装置を構成する一部の部材のみを、本実施形態にかかるラック搬送装置10に取り付け、残りの部材を備える各種分析装置、診断装置、製造装置等と、当該ラック搬送装置10とを接続する構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上のように、本発明では、搬送路の側壁から突出した突出部を用いて、ラックを後方から押すことにより、ラックを搬送する。そのため、ラックの形状に関係なく、安定してラックを搬送することができる。また、ラックに保持される試料が液体であり、搬送中にテーブル上に流出するような事態においても、装置内部に入り込むことはなく、装置の損傷を防ぐことができる。そのため、本発明は、ラック搬送装置としての利用のみならず、ラック搬送装置を備える各種分析装置、体外診断用分析装置に利用することができる。さらには、試料の自動搬送が求められる各種産業に幅広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の一実施形態にかかるサンプルラック搬送装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるサンプルラック搬送装置を上から見た上面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるサンプルラック搬送装置の搬送機構の構成を示す横断面である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる搬送装置で搬送可能なサンプルラックの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる搬送装置のサンプルラック送り込み機構の構成を示す上面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる搬送装置の横搬送機構の構成を示す正面図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる搬送装置の横搬送機構の構成を示す右側面図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる搬送装置の横搬送機構の突起部の上面図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる搬送装置のサンプルラック排出機構の全体構造を示す右側面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる搬送装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0134】
2 サンプルラック(ラック)
4 容器
7 側面
8 テーブル
10 搬送装置
11 サンプルラック供給部(ラック供給部)
12 搬送路
12A サンプルラック横搬送開始部(搬送開始部)
12B 処理部
12C サンプルラック横搬送終了部(搬送終了部)
13 サンプルラック排出部(ラック排出部)
15 切り欠き(第3切り欠き、第4切り欠き)
16 切り欠き(第1切り欠き)
17 切り欠き(第2切り欠き)
18 バーコードリーダー
20 側壁(第1側壁)
21 側壁
22 側壁
23 側壁
24 側壁(第2側壁)
25 側壁(第3側壁)
30 サンプルラック送り込み機構(第3搬送手段)
33 突出部(第3突起部、第4突起部)
35 搬送駆動部(第3駆動手段)
50 横搬送機構(第1搬送手段)
52 搬送駆動部(第1駆動手段)
65 搬送駆動部(第2駆動手段)
77 支軸
80 弾性体(付勢部材)
91 突起部(第1突起部)
100 サンプルラック排出機構(第2搬送手段)
102 突起部(第2突起部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線上に配置された搬送開始部、処理部、および搬送終了部が、この順で接続されてなる搬送路と、
上記搬送路上に載置されたラックを移動させるための第1搬送手段とを少なくとも備え、
上記搬送路は、上記搬送開始部から上記搬送終了部までつながった第1側壁を備え、
上記搬送開始部および処理部の上記第1側壁には、第1切り欠きが形成され、
上記第1搬送手段は、第1突起部を有する第1スライダと、当該第1スライダを前進後進駆動させる第1駆動手段とを備え、
上記第1突起部は、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出しており、
上記第1突起部が上記ラックの搬送方向に対して後方の側面に当接し、上記第1駆動手段を用いて当該側面を押すことにより、上記ラックを上記搬送開始部から、上記処理部を通過して、上記搬送終了部まで搬送することを特徴とするラック搬送装置。
【請求項2】
上記搬送終了部に載置されたラックを、上記搬送終了部から搬出するための第2搬送手段と、
上記第2搬送手段により上記搬送終了部から搬出されたラックを載置可能なラック排出部とをさらに備え、
上記ラック排出部は、上記搬送路とL字状に接続され、かつ、上記ラック搬送終了部と直列に接続されており、
上記搬送終了部の上記第1側壁には、第2切り欠きが形成され、
上記第2搬送手段は、板状の第2突起部を有する第2スライダと、当該第2スライダを前進後進駆動させる第2駆動手段とを備え、
上記第2突起部は、上記第2切り欠きから上記搬送路内に突出した状態と、上記搬送路内に埋没した状態との2つの状態をとることが可能であって、
上記第2突起部が、上記第2駆動手段を用いて上記ラックの搬出方向に対して後方の側面を押すことにより、上記ラックを上記搬送終了部から上記ラック排出部に搬出することを特徴とする請求項1に記載のラック搬送装置。
【請求項3】
ラックを載置可能なラック供給部と、上記ラック供給部に載置されたラックを搬送開始部に搬入するための第3搬送手段とをさらに備え、
上記ラック供給部は、上記搬送路とL字状に接続され、かつ、上記搬送開始部と直列に接続され、
さらに、上記ラック供給部と、上記搬送路と、上記ラック排出部とは、コの字状に接続されており、
上記ラック供給部は、上記ラックの搬送方向の両側に第2側壁および第3側壁を備え、上記第2側壁および第3側壁には、それぞれ、第3切り欠きおよび第4切り欠きが形成され、
上記第3搬送手段は、第3突起部を有する第3スライダと、第4突起部を有する第4スライダと、当該第3スライダを前進後進駆動させる第3駆動手段と、当該第4スライダを前進後進駆動させる第4駆動手段とを備え、
上記第3突起部および第4突起部が、上記ラックの搬送方向に対して後方の側面に当接し、上記第3駆動手段および第4駆動手段を用いて当該側面を押すことにより、上記ラックを上記ラック供給部から上記搬送開始部に搬送することを特徴とする請求項2に記載のラック搬送装置。
【請求項4】
上記第1突起部は、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出した状態と、上記搬送路内に埋没した状態との2つの状態をとることが可能であって、
上記第1突起部には、上記第1突起部の先端から、上記搬送路内におけるラックの搬送方向とは反対方向に向けて傾斜面が形成されており、
また、上記第1突起部は、付勢部材と接続されており、
上記付勢部材は、上記第1突起部を付勢することにより、上記第1突起部を上記第1切り欠きから突出した状態とし、
上記第1側壁に対して垂直方向の力が上記第1突起部に対して印加されたときに、上記第1突起部が上記付勢部材に抗して、上記第1切り欠きから突出した状態から、上記第1切り欠きに埋没した状態に遷移することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のラック搬送装置。
【請求項5】
上記第1突起部は、上記第1切り欠きから上記搬送路内に突出した状態と、上記搬送路内に埋没した状態との2つの状態をとることが可能であって、
上記第1突起部には、上記第1突起部の先端から、上記搬送路内におけるラックの搬送方向とは反対方向に向けて傾斜面が形成されており、
また、上記第1突起部は、付勢部材と接続されており、
上記付勢部材は、上記第1突起部を付勢することにより、上記第1突起部を上記第1切り欠きから突出した状態とし、
上記搬送開始部から搬送終了部に向かう方向の力が上記第1突起部に対して印加されたときに、上記第1突起部が上記付勢部材に抗して、上記第1切り欠きから突出した状態から、上記第1切り欠きに埋没した状態に遷移することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のラック搬送装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のラック搬送装置を、1構成部材として備えることを特徴とする体外診断用分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−20194(P2008−20194A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189472(P2006−189472)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】