説明

ラベル付き容器の製造方法

【課題】耐熱性を備えたラベル付きカップ状容器を二軸延伸ブロー成形により製造する際に、ラベルを変形あるいは位置ずれなくカップ状容器の胴部に貼り付けること。
【解決手段】ラベル付きカップ状容器1の製造方法では、予備成形品10を加熱して一次ブロー成形型20を用いて一次ブロー成形して最終製品よりも大きな容積の一次ブロー成形品40を製造する。一次ブロー成形品40を収縮させて、筒状胴部形成部分53の高さ寸法Hが最終製品1の筒状胴部3の高さ寸法とほぼ同一となった一次ブロー成形品50を得る。これを、ラベル5が装着されている二次ブロー成形型30に装着して二軸延伸ブロー成形する。筒状胴部形成部分53は高さ方向へは殆ど延伸しないので、ラベル5が高さ方向に変形あるいは位置ずれすることなく筒状胴部3の外周面に貼り付けられたカップ状容器1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ブロー成形によりカップ状容器などの底付きの筒状胴部を備えた容器を製造する方法に関する。さらに詳しくは、容器の筒状胴部の外周面にラベルが貼り付けられているラベル付き容器を、ブロー成形型にラベルを装着した状態でブロー成形を行うことにより製造するラベル付き容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳飲料、アイスクリームの容器などに用いられている樹脂製の容器は、口が広い円錐台または角錐台状をした底付きの筒状胴部と、その開口縁に形成した薄肉の口部フランジとを備えたカップ形状をしている。このような樹脂製のカップ状容器は、圧空成形法、真空成形法によってポリエチレン、ポリスチレン、HIPSなどのポリオレフィン系の樹脂シートから成形されている。カップ状容器を効率良く製造するために、特許文献1においては、二軸延伸ブロー成形法を利用してカップ状容器を製造する方法および装置が提案されている。
【0003】
カップ状容器は一般に、その筒状胴部の外周面にラベルを貼り付けて用いられている。ラベルの貼り付け方法としては、ラベルの貼り付けを二軸延伸ブロー成形と同時に行う方法が知られており、この方法は一般に「インモールドラベル成形」と呼ばれている。特許文献2にはインモールドラベル成形方法が開示されている。
【0004】
また、カップ状容器の内容物としては、85℃〜92℃程度の高温状態で充填される飲料、たとえば、コーヒー乳飲料、お茶などがある。二軸延伸ブロー成形によって得られるPET製などのカップ状容器では70℃程度の耐熱性はあるものの、それ以上の温度では熱により変形してしまう。二軸延伸ブロー成形品に耐熱性を付与するための方法としては、特許文献3、4に記載されているように、二段ブロー成形法あるいはダブルブロー成形法と呼ばれる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2003/008176号のパンフレット
【特許文献2】特開2005−125592号公報
【特許文献3】特開2007−30443号公報
【特許文献4】特公平07−67732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、二軸延伸ブロー成形によって底付きの容器を製造する場合には、ブロー成形型内において予備成形品が縦横の二軸方向に延伸される。したがって、インモールドラベル成形を行う場合には、ブロー成形型のキャビティ内周面に装着されているラベルに対して、予備成形品の部分が摩擦接触しながら、その高さ方向(縦方向)に延伸される。この結果、ブロー成形型内に装着されているラベルが延伸方向、主として高さ方向に変形あるいは移動してしまい、変形あるいは位置ずれした状態で成形品であるカップ状容器の胴部外周面に貼り付けられてしまうことがある。特に、カップ状容器の場合には、カップ状の予備成形品を二軸延伸ブローする際に、ブロー成形型の内周面に装着されているラベルに対して高さ方向に延伸する予備成形品の部分が強く摩擦接触して、ラベルの変形、位置ずれが発生しやすい。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、耐熱性を付与するための2段ブロー成形法あるいはダブルブロー成形法を利用して、変形あるいは位置ずれが発生しないようにインモールドラベル成形を行うことのできる二軸延伸ブロー成形によるラベル付き容器の製造方法を提案することある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、底付きの筒状胴部の外周面にラベルが貼り付けられているラベル付き容器の製造方法において、
一次ブロー成形型を用いて樹脂製の予備成形品を延伸ブロー成形して、前記ラベル付き容器の前記筒状胴部よりも高さ寸法の大きな筒状胴部形成部分を備えた一次ブロー成形品を製造する一次ブロー成形工程と、
前記一次ブロー成形型から取り出した前記一次ブロー成形品を収縮させて、前記筒状胴部形成部分を前記ラベル付き容器の前記筒状胴部と同一の高さ寸法にする一次ブロー成形品収縮工程と、
前記ラベルが装着されている二次ブロー成形型を用いて収縮後の前記一次ブロー成形品をブロー成形して、前記ラベル付き容器を製造する二次ブロー成形工程とを有していることを特徴としている。
【0009】
本発明のラベル付き容器の製造方法では、二次ブロー成形工程においてインモールドラベル成形を行っている。また、二次ブロー成形型に装着される一次ブロー成形品は、その筒状胴部形成部分の高さ寸法が最終製品であるラベル付き容器の筒状胴部の高さ寸法と同一である。したがって、二次ブロー成形型内でのブロー成形においては、筒状胴部形成部分(ラベルが貼り付けられる部分)は高さ方向には実質的に延伸されず、これに直交する横方向にのみ延伸される。この結果、延伸する筒状胴部形成部分は横方向に膨らみ、ラベルを介して二次ブロー成形型の内表面に押圧されるのみであり、当該筒状胴部形成部分がラベルを擦りながら高さ方向に延伸することがない。よって、ラベルが高さ方向に変形あるいは位置ずれした状態で、容器の筒状胴部外周面に貼り付けられてしまうことがない。
【0010】
なお、筒状胴部と筒状胴部形成部分の高さ寸法を同一にする理由は、二次ブロー成形型内におけるブロー成形時において筒状胴部形成部分の延伸によってラベルに変形あるいは位置ずれを発生させないためである。したがって、高さ寸法が同一であるとは、正確に同一である場合と共に、高さ方向のラベルの変形あるいは位置ずれが発生しない程度の誤差を含む実質的に同一である状態も含まれる。
【0011】
ここで、前記一次ブロー成形品収縮工程における前記一次ブロー成形品の収縮量は、たとえば、制御要素(1)〜(4)のうちの一つあるいは複数を調整することにより増減させることができる。勿論、これら以外の制御要素を調整するようにすることも可能である。
【0012】
(1)前記予備成形品の加熱温度
(2)前記一次ブロー成形品の前記筒状胴部形成部分の大きさ
(3)前記一次ブロー成形工程における前記予備成形品の延伸倍率
(4)前記一次ブロー成形型の加熱温度
【0013】
また、最終製品であるラベル付き容器に耐熱性を付与するためには、前記一次ブロー成形品の大きさ(容積)を前記ラベル付き容器よりも大きくして樹脂を縦横に十分に延伸させることが望ましい。
【0014】
さらに、前記一次ブロー成形工程では、前記予備成形品を第1加熱温度の状態でブロー成形し、前記二次ブロー成形工程では、前記中間成形品を前記第1加熱温度よりも低い第2加熱温度の状態でブロー成形することが望ましい。すなわち、予備成形品を通常の二軸延伸ブロー成形に適した温度よりも高い温度に加熱した状態で一次ブロー成形を行うことにより延伸される樹脂に耐熱性を付与することができる。
【0015】
この場合、前記一次ブロー成形工程では、前記一次ブロー成形型も所定温度に加熱した状態でブロー成形を行うことが望ましい。なお、二次ブロー成形工程においても二次ブロー成形型を所定温度に加熱した状態で二次ブロー成形を行うことも可能である。
【0016】
次に、収縮後の一次ブロー成形品の筒状胴部形成部分の高さを最終製品であるラベル付き容器の筒状胴部の高さ寸法に合わせる代わりに、次の方法を採用することもできる。
【0017】
すなわち、本発明は、底付きの筒状胴部の外周面にラベルが貼り付けられているラベル付き容器を製造するラベル付き容器の製造方法において、
一次ブロー成形型を用いて樹脂製の予備成形品を延伸ブロー成形して、前記ラベル付き容器の前記筒状胴部よりも高さ寸法の大きな筒状胴部形成部分を備えた一次ブロー成形品を製造する一次ブロー成形工程と、
前記一次ブロー成形型から取り出した前記一次ブロー成形品を収縮させて、前記筒状胴部形成部分を前記ラベル付き容器の前記筒状胴部よりも低い高さ寸法にする一次ブロー成形品収縮工程と、
前記ラベルが装着されている二次ブロー成形型を用いて収縮後の前記一次ブロー成形品を延伸ブロー成形して、前記ラベル付き容器を製造する二次ブロー成形工程とを有し、
前記二次ブロー成形工程では、前記二次ブロー成形型に装着した前記一次ブロー成形品における前記筒状胴部成形部分が、前記ラベル付き容器の前記筒状胴部と同一高さとなるように延伸ロッドを用いて高さ方向に延伸し、しかる後に、ブローエアを用いてブロー成形することを特徴としている。
【0018】
本発明では、二次ブロー成形工程において、ブローエアによる延伸に先だって、延伸ロッドによって一次ブロー成形品の筒状胴部形成部分を高さ方向に延伸して、最終製品である容器の筒状胴部の高さ寸法に合わせるようにしている。したがって、この後に行われるブローエアによるブロー成形時には、筒状胴部形成部分が二次ブロー成形型に装着したラベルを擦りながら高さ方向に延伸されることがない。よって、ラベルの変形あるいは位置ずれが起きず、適切な状態で筒状胴部外周面にラベルが貼り付けられた状態の容器が得られる。
【0019】
この方法においても、耐熱性の容器を製造するためには、前記一次ブロー成形品の大きさ(容積)は前記ラベル付き容器の容積よりも大きいことが望ましい。また、前記一次ブロー成形工程は前記予備成形品を第1加熱温度の状態で行い、前記二次ブロー成形工程は、前記一次ブロー成形品を前記第1加熱温度よりも低い第2加熱温度の状態で行うことが望ましい。さらに、前記一次ブロー成形工程は前記一次ブロー成形型を所定温度に加熱した状態で行うことが望ましい。
【0020】
本発明によるラベル付き容器の製造方法は、前記筒状胴部と、当該筒状胴部の開口縁から外方に広がっている枠状の口部フランジとを備えたカップ状容器を製造する場合に特に適している。この場合には、前記予備成形品として、延伸されずに前記口部フランジとして残る口部フランジ形成部分と、延伸されて前記筒状胴部になる筒状胴部形成部分とを備えているものを用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、予備成形品を一次ブロー成形工程および二次ブロー成形工程を経てブロー成形し、二次ブロー成形工程においてインモールドラベル成形を行っている。また、二次ブロー成形工程においてはラベルを擦りながら一次ブロー成形品の筒状胴部形成部分が高さ方向に延伸しないようにしている。したがって、本発明によれば、二軸延伸ブローされる樹脂部分によってブロー成形型内に装着したラベルの変形、あるいは位置ずれが発生しないので、適切な位置にラベルが貼り付けられた容器、特に耐熱性を備えたカップ状容器を、インモールドラベル成形によって歩留まり良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した実施の形態1に係るラベル付き容器の製造方法を示す図であり、(a)は予備成形品および最終製品であるカップ状容器を示す説明図、(b)は一次ブロー成形型を示す説明図、(c)は二次ブロー成形型を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係るラベル付き容器の製造方法を示す図であり、(a)は一次ブロー成形工程を示す説明図、(b)は得られた一次ブロー成形品を示す説明図、(c)は収縮後の一次ブロー成形品を示す説明図である。
【図3】実施の形態1に係るラベル付き容器の製造方法を示す図であり、(a)は二次ブロー成形工程を示す説明図、(b)は得られたラベル付き容器を示す説明図である。
【図4】本発明を適用した実施の形態2に係るラベル付き容器の製造方法を示す図であり、(a)は収縮後の一次ブロー成形品を示す説明図、(b)は二次ブロー成形工程における延伸ロッドによる高さ方向への延伸工程を示す説明図、(c)は二次ブロー成形工程におけるブローエアによるブロー工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明を適用したラベル付き容器の製造方法の実施の形態を説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1(a)は最終製品である耐熱性のラベル付きカップ状容器1と、カップ状容器1を二軸延伸ブロー成形により製造するために用いる予備成形品10を示してある。カップ状容器1は、たとえばコーヒー乳飲料容器であり、90℃以上の耐熱性を備えたPET製の容器である。このカップ状容器1は、底2の付いた円錐台状の筒状胴部3と、この筒状胴部3の開口縁から外方に広がる状態に形成されている円環状の口部フランジ4とを備えた広口のカップ状容器である。底2および筒状胴部3は二軸延伸ブロー成形された部分であり、口部フランジ4は延伸されていない部分である。筒状胴部3には、その外周面を取り囲む状態に一定幅のラベル5が貼り付けられている。
【0025】
予備成形品10は、底2および筒状胴部3を形成するための椀状部分11と、この椀状部分11の開口縁から外方に広がる状態に形成されている円環状の口部フランジ形成部分14とを備えている。口部フランジ形成部分14は延伸されずにそのまま口部フランジ4となる部分であり、口部フランジ4と同一形状をしている。椀状部分11は二軸延伸ブロー成形されて筒状胴部3になる筒状胴部形成部分13および底2になる底形成部分12が一体形成されている。
【0026】
図1(b)は予備成形品10を一次ブロー成形するための一次ブロー成形型を示す説明図であり、図1(c)は二次ブロー成形型を示す説明図である。一次ブロー成形型20は、ベース型21と昇降型22とを備えており、昇降型22にはカップ状容器1よりも高さおよび直径が一回り大きな成形用のキャビティ23が形成されている。ベース型21の中心部には開口が形成されており、その下側にはブローエアの吹き込み口24が開口しており、この吹き込み口24を介して、下側から延伸ロッド25が昇降可能である。
【0027】
二次ブロー成形型30も、たとえば、ベース型31、昇降型32、吹き込み口34および延伸ロッド35を備えている。異なる点は、昇降型32にはカップ状容器1に対応した大きさのキャビティ33が形成されていることである。したがって、当該キャビティ33は一次ブロー成形型20のキャビティ23よりも一回り小さい。
【0028】
図2および図3を参照して、ラベル付きカップ状容器1の製造工程を説明する。まず、図1(a)に示す形状の予備成形品10を用意し、ブロー成形可能な温度に加熱する。たとえば100℃〜200℃までの範囲内の温度(第1加熱温度)、たとえば150°に加熱する。予備成形品10は射出成形などの成形方法により製造される。
【0029】
次に、図2(a)に示すように、予備成形品10を一次ブロー成形型20に装着して型締めし、二軸延伸ブロー成形する。この結果、図2(b)に示すように、最終製品であるカップ状容器1よりも一回り大きな(容積の大きな)一次ブロー成形品40が得られる。
【0030】
一次ブロー成形品40を一次ブロー成形型20から取り出す。取り出された一次ブロー成形品40は図2(c)に示すように二軸延伸ブローされた部分が収縮する(一次ブロー成形品収縮工程)。ここで、一次ブロー成形品40の収縮量を制御することにより、収縮後の一次ブロー成形品50の筒状胴部形成部分53の高さ寸法Hを最終製品であるカップ状容器1の筒状胴部3と実質的に同一の高さにすることができる。たとえば、一次ブロー成形品40の収縮量は、次の(1)〜(4)の要素を調整することにより増減させることができる。勿論、これら以外の要素を調整するようにすることも可能である。
【0031】
(1)予備成形品10の加熱温度
(2)一次ブロー成形品の大きさ(容積)
(3)予備成形品の延伸倍率
(4)一次ブロー成形型の加熱温度
【0032】
また、一次ブロー成形工程および一次ブロー成形品収縮工程を経ることにより、一次ブロー成形品50はその結晶方向が揃えられ、延伸ブロー成形による残留歪が除去されて、耐熱性が向上する。
【0033】
この後は、収縮後における所定の温度状態の一次ブロー成形品50、たとえば、80℃程度の加熱状態(第2の加熱温度)の一次ブロー成形品50を二次ブロー成形型30に装着して二次ブロー成形を行う。
【0034】
二次ブロー成形工程においては、図3(a)から分かるように、予め二次ブロー成形型30のキャビティ33における筒状胴部3に対応する内表面部分にはラベル5が装着されている。一次ブロー成形品50の高さ寸法Hはキャビティ33の高さとほぼ同一であるので(最終製品であるカップ状容器1の高さとほぼ同一であるので)、二次ブロー成形時には、一次ブロー成形品50における筒状胴部形成部分53は高さ方向への延伸は殆どなく、横方向にのみ延伸される。したがって、延伸される筒状胴部形成部分53がラベル5を擦りながら高さ方向に移動することがないので、当該筒状胴部形成部分53の延伸によってラベル5が変形し、あるいは高さ方向に位置ずれが発生することがない。よって、図3(b)に示すように、得られたラベル付きカップ状容器1においては、その胴部3における適切な位置に適切な状態にラベル5が貼り付けられ、美称性に優れたカップ状容器1が得られる。
【0035】
たとえば、ラベル付きカップ状容器1がPET製の場合には、予備成形品10を150℃程度に加熱し、一次ブロー成形型20の温度を150℃程度に加熱し、二次ブロー成形型30の温度を90℃程度に加熱することにより、得られたラベル付きカップ状容器1は85℃の熱水を充填しても変形しない耐熱性が備わっていることが確認された。
【0036】
なお、二次ブロー成形型30は必ずしも昇温する必要は無いが、カップ状容器1の耐熱性の向上、ラベル5の筒状胴部3に対する接着性の向上の点から、ある程度加熱することが望ましい。例えば、50℃から100℃までの範囲内の温度に加熱しておくことができる。
【0037】
一方、ラベル5は、二次ブロー成形型30の内表面にブロー成形前に装着することが必要であるが、ブロー成形前におけるラベルの変形、位置ずれを防止するためには、二次ブロー成形型30に部分的にスリットを入れて、外側からラベルをその内表面に吸着させておくことが望ましい。
【0038】
(実施の形態2)
図4は本発明を適用した実施の形態2に係るラベル付きカップ状容器の製造方法を示す説明図である。実施の形態2において使用する予備成形品、一次ブロー成形型および二次ブロー成形型は実施の形態1の場合と同様とすることができる。
【0039】
上記の実施の形態1では、一次ブロー成形工程を経て得られた一次ブロー成形品40が収縮して、その筒状胴部形成部分の高さが最終製品の胴部とほぼ同一の高さになる。これに対して、実施の形態2では、図4(a)に示すように、収縮後の一次ブロー成形品60は、その筒状胴部形成部分63の高さ寸法H1が最終製品の筒状胴部3に比べて小さい。
【0040】
実施の形態2では、この収縮後の一次ブロー成形品60を二次ブロー成形する際に次の手順により行っている。図4(b)に示すように、一次ブロー成形品60を二次ブロー成形型30に装着して型締めした後に、まず、延伸ロッド35を上昇させて、一次ブロー成形品60を高さ方向に延伸させる。この延伸時には、一次ブロー成形品60は横方向へは延伸されないので、一次ブロー成形品60の筒状胴部形成部分63が、二次ブロー成形型30の内表面に装着されているラベル5を擦りながら高さ方向に延伸することがない。よって、ラベル5が高さ方向に変形し、あるいは高さ方向に位置ずれを起こすことが無い。
【0041】
なお、延伸ロッド35による高さ方向への延伸時に、低圧エアを導入しながら行うようにすることも可能である。
【0042】
延伸ロッド35によって一次ブロー成形品60の筒状胴部形成部分63の高さを最終製品の筒状胴部3の高さとほぼ同一になるように延伸させた後は、図4(c)に示すように、ブローエアを吹き込み、高さ方向に延伸した状態の一次ブロー成形品60を横方向にブロー成形して、最終製品であるカップ状容器1を製造する。このブロー成形時には筒状胴部形成部分63は実質的に横方向に延伸して、ラベル5を二次ブロー成形型30の内表面に押圧する。よって、ラベル5は変形あるいは位置ずれすることなく、カップ状容器1の胴部3の外周面部分に貼り付けられた状態が形成される。
【0043】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態1、2は、ラベル付きカップ状容器の製造方法に関するものである。本発明の方法は、カップ状容器以外の形状の容器の胴部外周面にラベルを貼り付ける場合にも適用できる。たとえば、一般的な瓶形状の容器の胴部外周面にラベルを貼り付ける場合にも適用できる。
【0044】
また、上記の実施の形態1、2ではラベル付きカップ状容器に耐熱性を付与しているが、耐熱性を必要とされない容器を二軸延伸ブロー成形により製造する場合においても本発明を適用してその胴部外周面にラベルを貼り付けることができる。
【0045】
さらに、上記の例はPET製のカップ状容器であるが、樹脂素材としては、PETの他、PP、PEN、PE、PS、ABSなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂を多層化したシート素材から成形した予備成形品を用いることもできる。例えば、特開2008−132788号公報に開示されている多層シートを用いて成形した予備成形品を用いることができる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
図1(a)に示す形状の250ミリリットル用の飲料カップについて、表1の条件でテストを行った。
【0047】
【表1】

【0048】
テスト結果
1)一次ブロー成形型の内表面にラベルを貼り付け、二次延伸ブロー成形を行うと、殆どのラベルに、延伸方向(底方向)の位置ずれ、あるいは変形が発生した。
2)実施の形態1、2に従って、二次ブロー成形型にラベルを装着してインモールドラベル成形を行うと、ラベルの位置ずれ、変形は殆ど発生せず、99%以上の良品率で成形可能であることが確認された。
【0049】
(実施例2)
4リットル用のボトルについて表2の条件でテストを行った。
【0050】
【表2】

【0051】
テスト結果
1)一次ブロー成形型の内表面にラベルを貼り付け、二軸延伸ブロー成形を行うと、ほぼ80%以上のラベルに、延伸方向(ボトル底部方向)の位置ずれ、あるいは変形が確認された。
2)実施の形態1、2に従って、二次ブロー成形型にラベルを装着してインモールドラベル成形を行うと、ラベルの位置ずれ、変形が殆ど発生せず、99%以上の良品率で成形可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0052】
1 カップ状容器
2 底
3 筒状胴部
4 口部フランジ
5 ラベル
10 予備成形品
11 椀状部分
12 底形成部分
13 筒状胴部形成部分
14 口部フランジ形成部分
20 一次ブロー成形型
21、31 ベース型
22、32 昇降型
23、33 キャビティ
24、34 吹き込み口
25、35 延伸ロッド
30 二次ブロー成形型
40 一次ブロー成形品
50、60 収縮後の一次ブロー成形品
53、63 筒状胴部形成部分
H、H1 高さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底付きの筒状胴部の外周面にラベルが貼り付けられているラベル付き容器の製造方法であって、
一次ブロー成形型を用いて樹脂製の予備成形品を延伸ブロー成形して、前記ラベル付き容器の前記筒状胴部よりも高さ寸法の大きな筒状胴部形成部分を備えた一次ブロー成形品を製造する一次ブロー成形工程と、
前記一次ブロー成形型から取り出した前記一次ブロー成形品を収縮させて、前記筒状胴部形成部分を前記ラベル付き容器の前記筒状胴部と同一の高さ寸法にする一次ブロー成形品収縮工程と、
前記ラベルが装着されている二次ブロー成形型を用いて収縮後の前記一次ブロー成形品をブロー成形して、前記ラベル付き容器を製造する二次ブロー成形工程とを有していることを特徴とするラベル付き容器の製造方法。
【請求項2】
前記一次ブロー成形品収縮工程における前記一次ブロー成形品の収縮量の調整を、少なくとも次の要素(1)〜(4)のうちの少なくとも一つを制御することにより行うことを特徴とする請求項1に記載のラベル付き容器の製造方法。
(1)前記予備成形品の加熱温度
(2)前記一次ブロー成形品の前記筒状胴部形成部分の大きさ
(3)前記一次ブロー成形工程における前記予備成形品の延伸倍率
(4)前記一次ブロー成形型の加熱温度
【請求項3】
前記一次ブロー成形品の前記筒状胴部形成部分は前記ラベル付き容器の前記筒状胴部よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のラベル付き容器の製造方法。
【請求項4】
前記一次ブロー成形工程では、前記予備成形品を第1加熱温度の状態で延伸ブロー成形し、
前記二次ブロー成形工程では、収縮後の前記一次ブロー成形品を前記第1加熱温度よりも低い第2加熱温度の状態でブロー成形することを特徴とする請求項3に記載のラベル付き容器の製造方法。
【請求項5】
前記一次ブロー成形工程では、前記一次ブロー成形型を所定温度に加熱した状態でブロー成形を行うことを特徴とする請求項4に記載のラベル付き容器の製造方法。
【請求項6】
底付きの筒状胴部の外周面にラベルが貼り付けられているラベル付き容器を製造するラベル付き容器の製造方法であって、
一次ブロー成形型を用いて樹脂製の予備成形品を延伸ブロー成形して、前記ラベル付き容器の前記筒状胴部よりも高さ寸法の大きな筒状胴部形成部分を備えた一次ブロー成形品を製造する一次ブロー成形工程と、
前記一次ブロー成形型から取り出した前記一次ブロー成形品を収縮させて、前記筒状胴部形成部分を前記ラベル付き容器の前記筒状胴部よりも低い高さ寸法にする一次ブロー成形品収縮工程と、
前記ラベルが装着されている二次ブロー成形型を用いて収縮後の前記一次ブロー成形品を延伸ブロー成形して、前記ラベル付き容器を製造する二次ブロー成形工程とを有し、
前記二次ブロー成形工程では、前記二次ブロー成形型に装着した前記一次ブロー成形品における前記筒状胴部成形部分が、前記ラベル付き容器の前記筒状胴部と同一高さとなるように延伸ロッドを用いて高さ方向に延伸し、しかる後に、ブローエアを用いてブロー成形することを特徴とするラベル付き容器の製造方法。
【請求項7】
前記一次ブロー成形品の前記筒状胴部形成部分は前記ラベル付き容器の前記筒状胴部よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載のラベル付き容器の製造方法。
【請求項8】
前記一次ブロー成形工程は、前記予備成形品を第1加熱温度の状態にして行い、
前記二次ブロー成形工程は、収縮後の前記一次ブロー成形品を前記第1加熱温度よりも低い第2加熱温度の状態にして行うことを特徴とする請求項7に記載のラベル付き容器の製造方法。
【請求項9】
前記一次ブロー成形工程は、前記一次ブロー成形型を所定の温度に加熱した状態で行うことを特徴とする請求項8に記載のラベル付き容器の製造方法。
【請求項10】
前記ラベル付き容器は、前記筒状胴部と、当該筒状胴部の開口縁から外方に広がっている口部フランジとを備えたカップ状容器であり、
前記予備成形品は、延伸されずに前記口部フランジとして残る口部フランジ形成部分と、延伸されて前記筒状胴部になる筒状胴部形成部分とを備えていることを特徴とする請求項1ないし9のうちのいずれかの項に記載のラベル付き容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−247371(P2010−247371A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97013(P2009−97013)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【Fターム(参考)】