説明

ラミネート型電池用リードタブ、当該リードタブを備えたラミネート型電池、およびラミネート型電池の製造方法

【課題】熱溶着時における、空気の混入を防止できるラミネート型電池用リードタブおよび当該リードタブを備えたラミネート型電池の構成、ならびにラミネート型電池の製造方法を提供する。
【解決手段】ラミネート型電池用リードタブ10は、長方形の平面形状を有し、板状の導電体からなる本体101と、前記本体を、その表裏の主面、およびその長辺と接する両側面を囲んで被覆する被覆部材102とを備える。そして、前記本体101の幅方向の断面において、前記被覆部材は、前記本体の両側面101aより内側から開始して、前記本体の幅方向外側ほど薄くなるテーパー102aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート型電池用リードタブ、当該リードタブを備えたラミネート型電池、およびラミネート型電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積層電極体および電解液を、ラミネート外装体に封入したラミネート型電池が知られている。このようなラミネート型電池において、ラミネート外装体には、内側に熱溶着用の樹脂層が設けられている。そして、ラミネート外装体は、周縁部が熱溶着されて密封されている。
【0003】
一方、ラミネート型電池では、積層電極体の充放電を行うため、ラミネート外装体の内部から外部に、リードタブが引き出されている。ここで、金属製のリードタブと、熱溶着用樹脂との接着性が悪く、封止性能が低下することがあった。
【0004】
特開平11−312514号公報には、熱溶着部(熱溶着用樹脂)よりもリード(リードタブ)に対する接着性が良い熱溶着シール材で被覆された、リチウムイオン二次電池に用いるリードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−312514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなリードタブを間に挟んでラミネート外装材を熱溶着しようとした場合、リードタブの厚みによって段差が生じ、この段差によって空気が混入し、封止性能が低下することがあった。
【0007】
本発明の目的は、熱溶着時における、空気の混入を防止できるラミネート型電池用リードタブおよび当該リードタブを備えたラミネート型電池の構成、ならびにラミネート型電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示するラミネート型電池用リードタブは、長方形の平面形状を有し、板状の導電体からなる本体と、前記本体を、その表裏の主面、およびその長辺と接する両側面を囲んで被覆する被覆部材とを備える。そして、前記本体の幅方向の断面において、前記被覆部材は、前記本体の両側面より内側から開始して、前記本体の幅方向外側ほど薄くなるテーパーを有する(第1の構成)。
【0009】
上記の構成によれば、被覆部材に段差が存在しない。また、被覆部材は、本体の両側面より内側から開始するテーパーを有している。すなわち、本体の両側面より内側において、本体と被覆部材とを含めた全体の厚さがより厚く形成されている。そのため、熱溶着時、被覆部材は、本体の両側面の内側から外側に向かって、順次押圧加熱される。そのため、内部に空気を抱き込みにくく、空気の混入を防止できる。また、テーパーを付けることで、シールバーと溶接部との距離が限りなく均一となり、溶着ムラを抑えることができる。
【0010】
また、この構成によれば、本体と被覆部材とを含めた全体の厚さが厚い中央部分に最も圧力がかかる。そのため、本体の端部に圧力が集中する等による、本体と外装体との短絡を防止できる。
【0011】
ここに開示する他のラミネート型電池用リードタブは、長方形の平面形状を有し、板状の導電体からなる本体と、前記本体を、その表裏の主面、およびその長辺と接する両側面を囲んで被覆する被覆部材とを備える。そして、前記本体の幅方向の断面において、前記被覆部材は、前記本体の厚さ方向の厚さが変化する屈曲部を、前記本体を中心として略対称な位置に4つ有する。前記屈曲部は、前記被覆部材の厚み方向において外側に向かって凸である角部と、前記被覆部材の厚み方向において内側に向かって凸である角部とを、前記本体の幅方向内側から外側に向かって組み合わせたものである。そして、前記外側に向かって凸である角部の曲率半径と前記内側に向かって凸である角部の曲率半径とは、異なっている(第2の構成)。
【0012】
上記の構成によれば、外側に向かって凸である角部の曲率半径と前記内側に向かって凸である角部の曲率半径とは異なっている。これにより、混入した空気は本体の幅方向外側に排出され易くなる。したがって、この屈曲部で空気を抱き込みにくくなり、空気の混入を防止できる。
【0013】
ここに開示するラミネート型電池は、前記第1または第2の構成にかかるラミネート型電池用リードタブと、内側に接着層を有するラミネート外装体とを備える。そして、前記リードタブの、前記被覆部材で被覆されている箇所は、前記本体の厚み方向両側から、前記ラミネート外装体で挟持され封止されている。
【0014】
ここに開示するラミネート型電池の製造方法は、前記第1または第2の構成にかかるラミネート型電池用リードタブを準備する工程と、前記リードタブの、前記被覆部材で被覆されている箇所を、前記本体の厚み方向の両側から、内側に接着層を有するラミネート外装体で挟持し、熱溶着により封止する工程とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱溶着時における、空気の混入を防止できるラミネート型電池用リードタブおよび当該リードタブを備えたラミネート型電池の構成、ならびにラミネート型電池の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態にかかるラミネート型電池用リードタブの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態にかかるラミネート型電池用リードタブを備えたラミネート型電池の概略構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3(b)におけるIV−IV線に沿った断面図であって、リードタブの周りを拡大して示した図である。
【図5A】図5Aは、従来の構成にかかるリードタブの、幅方向の断面図である。
【図5B】図5Bは、従来の構成にかかるリードタブを、ラミネート外装体で挟んで熱溶着した場合の断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図である。
【図7A】図7Aは、本発明の第3の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図である。
【図7B】図7Bは、本発明の第3の実施形態にかかるリードタブの、角部付近を拡大して示した図である。
【図8】図8は、本発明の第4の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図である。
【図9】図9は、本発明の第4の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図であって、屈曲部を拡大して示した図である。
【図10】図10は、本発明の第5の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図である。
【図11】図11は、本発明の第5の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図であって、屈曲部を拡大して示した図である。
【図12】図12は、本発明の第6の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図である。
【図13】図13は、本発明の第6の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図であって、屈曲部を拡大して示した図である。
【図14】図14は、本発明の第7の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図である。
【図15】図15は、本発明の第7の実施形態にかかるリードタブの、幅方向の断面図であって、屈曲部を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるリードタブ10(ラミネート型電池用リードタブ)の概略構成を示す斜視図である。
【0019】
リードタブ10は、長方形の平面形状を有し、板状の本体101と、被覆部材102とを備える。被覆部材102は、本体101の長辺方向の中間において、本体の表裏の主面、およびその長辺と接する両側面を囲んで被覆している。
【0020】
本体101は、導電性に優れたものが好ましく、例えば、アルミニウム、チタン、銅、ニッケル、ステンレス等を用いることができる。また、本体101は、詳しくは後述するが、リートタブ10が使用されるラミネート型電池の正負のシート状電極の集電体と同じ材料で形成されていることが好ましい。
【0021】
被覆部材102は、絶縁性を有するものが好ましく、詳しくは後述するが、例えば変性ポリオレフィン、変性ポリオレフィン/ポリオレフィンの多層構造を有するものを用いることができる。
【0022】
図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【0023】
被覆部材102は、本体101の幅方向(図2における左右方向)外側ほど薄くなるテーパー102aを有している。また、このテーパー102aは、本体101の両側面101aより内側の点102bから開始している。
【0024】
被覆部材は102は、直方体として成型したものを加工して、テーパー102aを設けることで作製できる。テーパー102aは、機械的な加工のほか、エッチングなどの化学処理によって設けてもよい。また、被覆部材102は、射出成型、押出成型、プレス成型等により作製しても良い。
【0025】
リードタブ10は、本体101と被覆部材102とを別々に形成した後、これらを組み合わせて作製しても良いし、本体101の表面に被覆部材102を形成して作製しても良い。
【0026】
次に、このリードタブ10を備えたラミネート型電池1の全体の構成、およびラミネート型電池1の製造方法について説明する。
【0027】
図3は、リードタブ10を備えたラミネート型電池1の概略構成を示す斜視図である。ラミネート型電池1は、図3(a)に示すように、リードタブ10と、ラミネート外装体20と、積層電極体30とを備えている。
【0028】
積層電極体30は、複数の正負のシート状電極を、セパレータを間に挟んで積層させたものである。各シート状電極とリードタブ10の本体101とは、図示しないリード線を介して、または直接に、接続されている。
【0029】
なお、詳しい構成は図示していないが、シート状電極は、シート状の集電体の片面または両面に、活物質を含んだ合剤層を塗布して形成されたものを用いることができる。ここで、集電体の一部に合剤層を塗布しない領域を設けて、集電体を露出させた部分をリードタブ10の本体101とする構成も可能である。
【0030】
正極の集電体としては、アルミニウムやチタン等の箔、平織金網、エキスパンドメタル、ラス網、またはパンチングメタル等を用いることができる。
【0031】
正極の合剤層は、活物質と、導電助剤と、バインダとを有機溶媒中で混合してスラリーを調整し、これを集電体に塗布・乾燥させた後、加圧成型等を施して作製される。正極の活物質としては、マンガン酸リチウム、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、酸化バナジウム、または酸化モリブデン等を用いることができる。正極の導電助剤としては、黒鉛、カーボンブラック、またはアセチレンブラック等を用いることができるが、主成分としてカーボンブラックを用いることが好ましい。正極のバインダとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドバインダ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョン、PTFE粉末、ゴム系バインダ、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を用いることができるが、PVDFを用いることが好ましい。
【0032】
負極の集電体としては、銅・ニッケル・ステンレス等の箔、平織金網、エキスパンドメタル、ラス網、またはパンチングメタル等を用いることができる。
【0033】
負極の合剤層は、活物質と、バインダとを純水中で混合してスラリーを調整し、これを集電体に塗布・乾燥させた後、加圧成型等を施して作製される。負極の活物質としては、天然黒鉛、メソフェーズカーボン、または非晶質カーボン等を使用することができる。負極のバインダとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)・ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のセルロースや、スチレンブタジエンゴム(SBR)・アクリル等のゴムバインダを、単独または混合して用いることができる。
【0034】
セパレータとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリフェニルサルフィド(PPS)等の、微孔性フィルムや不織布を用いることができる。
【0035】
ラミネート型電池1は、次のようにして作製できる。まず、上に例示した方法に従って正負のシート状電極を作製する。そして、複数の正負のシート状電極を、セパレータを間に挟んで、交互に積層し、積層電極体30を作製する。
【0036】
次に、各々のシート状電極の集電体と、リードタブ10の本体101とを、リード線を介して接続する。この接続は、抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、カシメ、または導電性接着剤等を用いることができる。なお、リード線を介さず直接接続しても良い。
【0037】
そして、図3(a)および図3(b)に示すように、積層電極体30を包むように、1枚のフィルム状の外装材を折り曲げて重ね合わせる。そして、図3(c)に示すように、重ね合わせた外装材の周縁部20aを、電解液の注入口を残して熱溶着する。
【0038】
その後、電解液の注入を行う。電解液としては、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた溶液を使用できる。有機溶媒としては、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、およびγーブチロラクトン等から、一種類または2種類以上を混合して用いることができる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、またはLiN(CFSO等を用いることができる。
【0039】
電解液を注入後、再度熱溶着を行って完全に密封する。なお、ラミネート外装体20の外周辺のうち、折りたたまれた辺については、熱溶着を行っても良いし、行わなくても良い。
【0040】
なお、ここでは1枚のフィルム状の外装材を折りたたんでラミネート外装体20を形成する方法を例示した。しかし、2枚のフィルム状の外装材を重ね合わせ、その周縁部を熱溶着して、ラミネート外装体20を形成しても良い。また、ラミネート外装体20をあらかじめ袋状に形成しておき、積層電極体30等を挿入後に開口を熱溶着して、ラミネート型電池1を作製しても良い。
【0041】
リードタブ10の本体101は、ラミネート外装体20の外部に引き出されている。図3では、2つのリードタブ10の本体101は、ラミネート外装体20の同一の辺から引き出されているが、異なる辺から引き出されていても良い。
【0042】
ラミネート外装体20のうち、本体101が引き出されている辺の近傍では、本体101を間に挟んで、ラミネート外装体20の熱溶着が行われる。ここで、本体101のうち、少なくともラミネート外装体20によって挟まれる箇所は、被覆部材102によって被覆されている。換言すれば、本体101は、被覆部材102によって、ラミネート外装体20と直接接触しないようになっている。
【0043】
図4は、図3(b)におけるIV−IV線に沿った断面図であって、リードタブ10の周りを拡大して示した図である。
【0044】
図4に示すように、ラミネート外装体20は、内側から、内側樹脂層201、バリア層203、および外側樹脂層205を含む多層構造となっている。また、各層の間にはこれらをつなぐ接着層202,204が設けられている。
【0045】
内側樹脂層201は、ラミネート外装体20同士を熱溶着により接着するための層である。内側樹脂層201は、ラミネート外装体20の全面に形成されていても良いし、周縁部20aの部分にのみ形成されていても良い。内側樹脂層201としては、熱溶着が可能な樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いることができる。
【0046】
バリア層203は、主に外部からの水分の侵入を防ぐ役割を担っている。バリア層203としては、アルミニウム、ニッケル等の金属、ステンレス等の合金、酸化アルミニウム等の金属酸化物を用いることができる。
【0047】
外側樹脂層205は、外部機器からバリア層203を絶縁する役割を担っている。また、摩擦や薬品等から、バリア層203を保護する役割を担っている。そのため、絶縁性、機械的強度、および耐薬品性に優れたものが好ましい。外側樹脂層205としては例えば、ポリエステル、ポリアミド等を用いることができる。
【0048】
なお、ラミネート外装体20は、さらに多層構造を有していても良い。
【0049】
熱溶着は、好ましくは減圧下で、より好ましくは真空中で行われる。ラミネート外装体20は、その厚さ方向の両側から、シールバー90によって挟持され、加熱下で押圧される。押圧面が平らなほど熱拡散が均一になるため、押圧面はできるだけ平らな面とすることが好ましい。押圧面をできるだけ平らな面とすることで、押圧加熱溶着時の均一な結晶化が可能になる。溶融した内側樹脂層201同士を結合させることによって、ラミネート外装体20を封止する。
【0050】
リードタブ10の被覆部材102は、リードタブ10の本体101およびラミネート外装体20の内側樹脂層201の双方と、接着性の良い材料で形成されていることが好ましい。そのため、被覆部材102としては、例えば変性ポリオレフィン、変性ポリオレフィン/ポリオレフィンの多層構造を有するものを用いることができる。
【0051】
また、被覆部材102は、熱溶着の条件が適切でない場合に、内側樹脂層201を貫通して、本体101とバリア層203とが短絡することを防ぐ役割も担っている。
【0052】
図4に示すように、本実施形態にかかるリードタブ10は、幅方向(図4の左右方向)において被覆部材102に段差が存在しない。また、被覆部材102は、本体101の両側面101aより内側から開始するテーパー102aを有している。このため、本体101の両側面101aより内側において、本体101と被覆部材102とを含めた全体の厚さがより厚く形成されている。そのため、熱溶着時、被覆部材102は、本体101の両側面101aの内側から外側に向かって、順次押圧される。そのため、内部に空気を抱き込みにくく、空気の混入を防止できる。
【0053】
また、この構成によれば、本体101と被覆部材102とを含めた全体の厚さが厚い中央部分に最も圧力がかかる。そのため、本体101の角部101bに圧力が集中する等による、本体101とラミネート外装体20のバリア層203との短絡を防止できる。
【0054】
ここで、比較のため、従来の構成について説明する。図5Aは、従来の構成にかかるリードタブ10’の、幅方向の断面図である。
【0055】
リードタブ10’は、本体101と、被覆部材102’とを備えている。被覆部材102’は、例えば2枚のテープ状の樹脂を、本体101を挟んで両側から張り合わせて形成されている。被覆部材102’は本体101を除いた厚みがほぼ一定となるように形成されている。そのため、本体101の両側面101aより内側と外側において、段差102a’が存在する。
【0056】
図5Bは、従来の構成にかかるリードタブ10’を、ラミネート外装体20で挟んで熱溶着した場合の断面図である。図5Bに示すように、段差102a’により、空気が混入したり、伝熱ムラによる溶着不良を起こすおそれがあった。また、ラミネート外装体20に皺や亀裂を発生させ、外観不良になるとともに封止性能の長期信頼性を損ねていた。
【0057】
また、熱溶着の条件が適切でない場合には、この段差102a’に圧力が集中し、内側樹脂層201のみならず、被覆部材102’までも貫通して、ラミネート外装体20の内側面を傷つけることがあり、それによって図5Bのように、バリア層203を備えたラミネート外装体20の場合には、本体101とバリア層203とが短絡することもあった。
【0058】
本発明の第1の実施形態にかかるリードタブ10によれば、このような段差を生じることがなく、空気の混入を防止できる。また、熱シール機からの伝熱ムラや樹脂の溶着ムラ(結晶化ムラ)の発生を防止し、封止性能の信頼性を向上できる。さらに、ラミネート外装体20の内側面を傷つけるのを防ぎ、本体101とラミネート外装体20のバリア層203との短絡を防止できる。
【0059】
なお、本実施形態では、ラミネート型電池1がリチウムイオン二次電池である場合を例示した。本発明は、ラミネート型電池1がこの種の電池の場合に特に有用である。しかし、これは本発明の用途を限定するものではなく、発明の趣旨の範囲で種々のラミネート型電池に適用可能である。
【0060】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態にかかるリードタブ11の、幅方向の断面図である。リードタブ11は、本体101と、被覆部材112とを備えている。すなわち、リードタブ11は、第1の実施形態にかかるリードタブ10と、被覆部材の形状が異なっている。
【0061】
被覆部材112は、第1の実施形態の被覆部材102と同様に、本体101の幅方向外側ほど薄くなるテーパー112aを有している。一方、被覆部材102と異なり、このテーパー112aは、本体101の幅方向の中央112bから開始している。これにより、被覆部材は全面にわたってテーパーが形成されており、平坦な箇所が存在しない。
【0062】
被覆部材112は、被覆部材102と同様に、直方体として成型したものに、機械的な加工または化学処理を行ってテーパー112aを設けて作製できる。また、被覆部材112は、射出成型、押出成型、プレス成型等により作製しても良い。
【0063】
また、リードタブ11は、リードタブ10と同様に、本体101と被覆部材112とを別々に形成した後、これらを組み合わせて作製しても良いし、本体101の表面に被覆部材112を形成して作製しても良い。
【0064】
この構成によれば、熱溶着時、被覆部材112は、本体101の両側面101aよりも内側の中央部から外側に向かって、順次押圧される。そのため、内部に空気を抱き込みにくく、空気の混入を防止できる。また、伝熱ムラ等の発生を防止して、封止性能の信頼性を向上できる。
【0065】
[第3の実施形態]
図7Aは、本発明の第3の実施形態にかかるリードタブ12の、幅方向の断面図である。リードタブ12は、本体121と、被覆部材102とを備えている。すなわち、リードタブ12は、第1の実施形態にかかるリードタブ10と、本体の形状が異なっている。
【0066】
本体121は、その厚み方向の断面において、4隅の角部121bが面取りされている。なお、図7Aでは、角部121bはR面取り(丸み面取り)されているが、平面で面取りされていても良い。
【0067】
本体121の角部の面取りは、研磨及び切断等の機械加工、放電加工、エッチング等の化学処理等によって行うことができる。また、丸棒素材を圧縮して偏平にすることによっても、角が丸みを帯びた板状の本体121を得る事ができる。
【0068】
図7Bは、リードタブ12の、角部121bの付近を拡大して示した図である。なお、図7Bは断面図であるが、ハッチングを省略している。
【0069】
角部121bが面取りされていることにより、被覆部材102を傷つけにくくなる。また、角部121bと被覆部材102の外表面102cとの距離が、面取りされていない場合の角部121b’と被覆部材102の外表面102cとの距離と比較して、長くなる。これにより、熱溶着の条件が適切でない場合であっても、本体121の角部121bが被覆部材102を貫通して、ラミネート外装体20の内側面を傷つけるのを防ぐことができ、本体121とバリア層203とが短絡するのを防止できる。
【0070】
なお、角部121bは、平面で面取りされているよりも、R面取りされているほうが、被覆部材102をより傷つけにくいため、より好ましい。
【0071】
[第4の実施形態]
図8は、本発明の第4の実施形態にかかるリードタブ13の、幅方向の断面図である。リードタブ13は、本体101と、被覆部材132とを備えている。すなわち、リードタブ13は、第1の実施形態にかかるリードタブ10と、被覆部材の形状が異なっている。
【0072】
被覆部材132は、本体101の厚さ方向の厚さが変化する屈曲部132aを有している。
【0073】
図9は、屈曲部132aを拡大して示した図である。なお、図9は断面図であるが、ハッチングを省略している。
【0074】
図9に示すように、屈曲部132aは、被覆部材132の厚み方向において外側に向かって凸である角部132a1と、被覆部材132の厚み方向において内側に向かって凸である角部132a2とを、本体101の幅方向内側から外側に向かって組み合わせたものである。そして、角部132a1の曲率半径r1は、角部132a2の曲率半径r2よりも小さく形成されている。
【0075】
被覆部材132は、被覆部材102と同様に、直方体として成型したものに、機械的な加工または化学処理を行って屈曲部132aを設けて作製できる。また、被覆部材132は、射出成型、押出成型、プレス成型等により作製しても良い。
【0076】
また、リードタブ13は、リードタブ10と同様に、本体101と被覆部材132とを別々に形成した後、これらを組み合わせて作製しても良いし、本体101の表面に被覆部材132を形成して作製しても良い。
【0077】
この構成によれば、混入した空気は本体101の幅方向外側に排出され易くなる。したがって、屈曲部132aで空気を抱き込みにくくなり、空気の混入を防止できる。また、伝熱ムラ等の発生を防止して、封止性能の信頼性を向上できる。
【0078】
[第5の実施形態]
図10は、本発明の第5の実施形態にかかるリードタブ14の、幅方向の断面図である。リードタブ14は、本体141と、被覆部材132とを備えている。すなわち、リードタブ14は、第4の実施形態にかかるリードタブ13と、本体の形状が異なっている。
【0079】
本体141は、その厚み方向の断面において、4隅の角部141bが面取りされている。なお、図10では、角部141bはR面取り(丸み面取り)されているが、平面で面取りされていても良い。
【0080】
図11は、被覆部材132の屈曲部132aを拡大して示した図である。なお、図11は断面図であるが、ハッチングを省略している。
【0081】
図11に示すように、角部141bの曲率半径r3は、被覆部材132の一方の角部132a1の曲率半径r1以上に形成されている。
【0082】
本体141の角部の面取りは、本体121と同様、研磨及び切断等の機械加工、放電加工、エッチング等の化学処理等によって行うことができる。また、丸棒素材を圧縮して偏平にすることによっても、角が丸みを帯びた板状の本体141を得る事ができる。
【0083】
角部141bが面取りされていることにより、被覆部材132を傷つけにくくなる。また、本体141の角部141bの曲率半径r3が、被覆部材132の角部132a1の曲率半径r1以上に形成されていることにより、角部141bと角部132a1との距離が長くなる。これにより、熱溶着の条件が適切でない場合であっても、本体141の角部141bが被覆部材132を貫通して、ラミネート外装体20の内側面を傷つけるのを防ぐことができ、本体141とバリア層203とが短絡するのを防止できる。
【0084】
なお、角部141bは、平面で面取りされているよりも、R面取りされているほうが、被覆部材132をより傷つけにくいため、より好ましい。
【0085】
[第6の実施形態]
図12は、本発明の第6の実施形態にかかるリードタブ15の、幅方向の断面図である。リードタブ15は、本体141と、被覆部材152とを備えている。すなわち、リードタブ15は、第5の実施形態にかかるリードタブ14と、被覆部材の形状が異なっている。
【0086】
被覆部材152は、被覆部材132と同様に、本体141の厚さ方向の厚さが変化する屈曲部152aを有している。
【0087】
図13は、屈曲部152aを拡大して示した図である。なお、図13は断面図であるがハッチングを省略している。
【0088】
屈曲部152aは、屈曲部132aと同様に、被覆部材152の厚み方向において外側に向かって凸である角部152a1と、被覆部材152の厚み方向において内側に向かって凸である角部152a2とを、本体141の幅方向内側から外側に向かって組み合わせたものである。そして、角部152a1の曲率半径r4は、角部152a2の曲率半径r5よりも小さく形成されている。
【0089】
本実施形態では、本体141の角部141bと、被覆部材152の一方の角部152a1との距離d1は、本体141の幅方向の中心における本体141と被覆部材152の外表面との距離d2よりも長く形成されている。
【0090】
被覆部材152は、被覆部材132と同様にして作製することができる。また、リードタブ15は、リードタブ10と同様に、本体141と被覆部材152とを別々に形成した後、これらを組み合わせて作製しても良いし、本体141の表面に被覆部材152を形成して作製しても良い。
【0091】
この構成により、熱溶着の条件が適切でない場合であっても、本体141の角部141bが被覆部材152を貫通して、ラミネート外装体20の内側面を傷つけるのを防ぐことができ、本体141とバリア層203とが短絡するのを防止できる。
【0092】
[第7の実施形態]
図14は、本発明の第7の実施形態にかかるリードタブ16の、幅方向の断面図である。リードタブ16は、本体101と、被覆部材162とを備えている。すなわち、リードタブ16は、第1の実施形態にかかるリードタブ10と、被覆部材の形状が異なっている。
【0093】
被覆部材162は、本体101の厚さ方向の厚さが変化する屈曲部162aを有している。
【0094】
図15は、屈曲部162aを拡大して示した図である。なお、図15は断面図であるが、ハッチングを省略している。
【0095】
図15に示すように、屈曲部162aは、被覆部材162の厚み方向において外側に向かって凸である角部162a1と、被覆部材162の厚み方向において内側に向かって凸である角部162a2とを、本体101の幅方向内側から外側に向かって組み合わせたものである。そして、角部162a1の曲率半径r6は、角部162a2の曲率半径r7よりも大きく形成されている。
【0096】
被覆部材162は、被覆部材102と同様に、直方体として成型したものに、機械的な加工または化学処理を行って屈曲部162aを設けて作製できる。また、被覆部材162は、射出成型、押出成型、プレス成型等により作製しても良い。
【0097】
また、リードタブ16は、リードタブ10と同様に、本体101と被覆部材162とを別々に形成した後、これらを組み合わせて作製しても良いし、本体101の表面に被覆部材162を形成して作製しても良い。
【0098】
この構成によれば、屈曲部162aにおける段差を滑らかにすることができ、空気を抱き込みにくくなる。したがって、押圧加熱時の空気の混入を防止できる。また、伝熱ムラ等の発生を防止して、封止性能の信頼性を向上できる。
【0099】
また、より一般的には、外側に向かって凸である角部の曲率半径と前記内側に向かって凸である角部の曲率半径とが異なっていれば、空気の混入を防止することができる。
【0100】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更、および組み合わせが可能である。
【0101】
例えば、第7の実施形態において、電池本体101に代えて、角部が面取りされた本体141を用いても良い。さらに、第6の実施形態のように、電池本体141の角部と、被覆部材162の一方の角部162a1との距離を、本体141の幅方向の中心における本体141と被覆部材162の外表面との距離よりも長く形成しても良い。
【0102】
また、ラミネート型電池1は、第1の実施形態にかかるリードタブ10に変えて、第2〜第6の実施形態にかかるリードタブ11〜15のいずれかを備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、ラミネート型電池用リードタブ、当該リードタブを備えたラミネート型電池、およびラミネート型電池の製造方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 ラミネート型電池、10〜16 リードタブ(ラミネート型電池リードタブ)、101,121,141 本体、102,112,132,152,162 被覆部材、102a,112a テーパー、20 ラミネート外装体、201 内側樹脂層、202,204 接着層、203 バリア層、205 外側樹脂層、30 積層電極体、90 シールバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の平面形状を有し、板状の導電体からなる本体と、
前記本体を、その表裏の主面、およびその長辺と接する両側面を囲んで被覆する被覆部材とを備え、
前記本体の幅方向の断面において、前記被覆部材は、前記本体の両側面より内側から開始して、前記本体の幅方向外側ほど薄くなるテーパーを有する、ラミネート型電池用リードタブ。
【請求項2】
請求項1に記載のラミネート型電池用リードタブであって、
前記本体は、該本体の幅方向の断面において、角部が面取りされている、ラミネート型電池用リードタブ。
【請求項3】
長方形の平面形状を有し、板状の導電体からなる本体と、
前記本体を、その表裏の主面、およびその長辺と接する両側面を囲んで被覆する被覆部材とを備え、
前記本体の幅方向の断面において、前記被覆部材は、前記本体の厚さ方向の厚さが変化する屈曲部を、前記本体を中心として略対称な位置に4つ有し、
前記屈曲部は、前記被覆部材の厚み方向において外側に向かって凸である角部と、前記被覆部材の厚み方向において内側に向かって凸である角部とを、前記本体の幅方向内側から外側に向かって組み合わせたものであって、
前記外側に向かって凸である角部の曲率半径と前記内側に向かって凸である角部の曲率半径とは、異なっているラミネート型電池用リードタブ。
【請求項4】
請求項3に記載のラミネート型電池用リードタブであって、
前記外側に向かって凸である角部の曲率半径は、前記内側に向かって凸である角部の曲率半径よりも小さい、ラミネート型電池用リードタブ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のラミネート型電池用リードタブであって、
前記本体は、該本体の幅方向の断面において、角部が面取りされている、ラミネート型電池用リードタブ。
【請求項6】
請求項5に記載のラミネート型電池用リードタブであって、
前記角部の面取りが、R面取りである、ラミネート型電池用リードタブ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のラミネート型電池用リードタブであって、
前記本体の面取りされた角部の曲率半径は、前記外側に向かって凸である角部の曲率半径以上である、ラミネート型電池用リードタブ。
【請求項8】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のラミネート型電池用リードタブであって、
前記本体の幅方向の断面において、前記外側に向かって凸である角部と前記本体の角部との距離が、前記本体の幅方向の中心における前記本体と前記被覆部材外表面との距離よりも長い、ラミネート型電池用リードタブ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のラミネート型電池用リードタブと、
内側に接着層を有するラミネート外装体とを備え、
前記リードタブの、前記被覆部材で被覆されている箇所は、前記本体の厚み方向両側から、前記ラミネート外装体で挟持され封止されている、ラミネート型電池。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のラミネート型電池用リードタブを準備する工程と、
前記リードタブの、前記被覆部材で被覆されている箇所を、前記本体の厚み方向の両側から、内側に接着層を有するラミネート外装体で挟持し、熱溶着により封止する工程とを備える、ラミネート型電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−20758(P2013−20758A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151845(P2011−151845)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】