説明

ラミネート電池

【課題】引出したリードの位置のズレを発生せず、電池容量の劣化や漏液などの信頼性を損なうことのないラミネート電池を提供すること。
【解決手段】外装体20内に位置する引出リードに曲げ加工に追従し、引出リードを接続した電極板に曲げ加工による応力を伝えにくくした曲げ加工追従部24を設けたことにより、電池要素および電池要素のリード引出し位置で電極板の配置を乱さず、引出リードを曲げることによる電極板への応力を抑制し活物質を剥離させるなどの電池容量の劣化を抑制し、引出リードの曲げ形状を安定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される引出リードの表面に絶縁層を設けたラミネート電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルビデオカメラなどのポータブル電子機器の小型・軽量化に伴って、これらのポータブル電子機器の電源として軽く、薄く、高容量な二次電池が求められている。
しかし、ラミネートフィルムを使用した電池においては、引出リードの曲げ部が電極群を変形させ対向配置した電極板内で内部短絡が生じやすいという問題がある。加えて、近年の携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータの消費電力の大幅な上昇により、高容量のラミネート電池で短絡による安全性を確保することは、以前にも増して重要な課題となってきている。
【0003】
そこで、図8(a)に示すように、電池の容器内で露出する延出した1対の引出リード40、41に絶縁皮膜42を被着させ、図8(b)のように外装体45と絶縁皮膜42を熱溶着して構成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図9に示すように、外装体45の収容部46内に電池要素47を収容し、絶縁皮膜42を端子部付近に形成し、外装体45が被せて延出した1対の引出リード40,41は、外装体45の1辺部の周縁部48,49同士の貼り合せ面を通って外部に引き出すが、その際、図10(a)の引出リード部の外観から示した断面図を図10(b)に示すように、この絶縁皮膜42のうち、外装体45の外端縁に沿う部分に、1対の引出リード40,41の幅方向に延在する凹部50を設けることで外装体外での引出リードの引出し方向を容易にし、曲げ安くすることが提案されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、図11に示すように、正極板と負極板とが多孔質絶縁体からなるセパレータを介して直接的に接触しないよう巻回もしくは積層してなる電極群を外装体に収納した二次電池において、引出リードに曲げ部を設けることにより外装体の形状に対する体積容量をより小さくすることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−332229号公報
【特許文献2】特開2001−256960号公報
【特許文献3】特開2010−157510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の従来技術における扁平形ラミネート電池では、絶縁皮膜を被着させ厚みの増加した引出リードは、電極板と接続した引出リードを折り曲げて曲げ部を設ける際に、電極板に応力をかけるとともにその反力から構成途中で引出リードの位置のズレを発生しやすく、電池容量の劣化や構成上のバラつきを発生する恐れがある。
【0008】
また、特許文献2の従来技術におけるラミネート電池では、絶縁皮膜を端子部付近に形成した電池要素の引出リードは、端子部付近の電極板に応力がかかり活物質を剥離させ電池容量の劣化をともなう恐れがある。その際、絶縁皮膜の外装体との外端縁に沿う部分に
、引出リードの幅方向に延在する切目又は凹部を設けても、電極板と接続した引出リードを曲げて曲げ部を設ける際に、電極板に応力がかかり、応力による電池容量の劣化の抑制には無関係と考えられる。
【0009】
さらに、特許文献3の従来技術におけるラミネート電池では、電極板と接続した引出リードを曲げて曲げ部を設ける際に、電極板に応力がかかり活物質を剥離させ電池容量の劣化をともなう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明のラミネート電池は、多孔質絶縁体を介して対向配置した正極板と負極板からそれぞれ引出リードを引出し、この引出リードの表面に絶縁層を設けたものを電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体内に封入したラミネートフィルム電池において、前記引出リードは曲げ部を有し、前記外装体内に位置する引出リードに曲げ加工に追従し、引出リードを接続した電極板に曲げ加工による応力を伝えにくくした曲げ加工追従部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のラミネート電池によると、外装体内に位置する引出リードに曲げ加工に追従し、引出リードを接続した電極板に曲げ加工による応力を伝えにくくした曲げ加工追従部を設けたことにより、引出リードを曲げることによる電極板への応力を抑制し活物質を剥離させるなどの電池容量の劣化を抑制し、引出リードの曲げ形状を安定させることで外装体の1辺部の周縁部同士の貼り合せ面の組立の精度を向上させ漏液不良を減少し、水分透過による保存特性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1におけるラミネート電池の封止前の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1におけるラミネート電池の一部拡大図
【図3】本発明の実施の形態1におけるラミネート電池の断面図
【図4】(a)本発明の他の実施の形態におけるラミネート電池の上面図(b)本発明の他の実施の形態におけるラミネート電池の断面図
【図5】本発明の他の実施の形態におけるラミネート電池の断面図
【図6】本発明の他の実施の形態におけるラミネート電池の断面図
【図7】本発明の他の実施の形態におけるラミネート電池の断面図
【図8】(a)従来のラミネート電池の電極群を示す概略図(b)従来のラミネート電池の外装体と絶縁皮膜を熱溶着した図
【図9】従来のラミネート電池の分解斜視図
【図10】(a)従来のラミネート電池のリードの拡大図(b)従来のラミネート電池のリードの断面図
【図11】従来のラミネート電池の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の発明においては、多孔質絶縁体を介して対向配置した正極板と負極板からそれぞれ引出リードを引出し、この引出リードの表面に絶縁層を設けたものを電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体内に封入したラミネートフィルム電池において、前記引出リードは曲げ部を有し、前記外装体内に位置する引出リードに曲げ加工に追従し、引出リードを接続した電極板に曲げ加工による応力を伝えにくくした曲げ加工追従部を設けたことにより、引出リードを曲げることによる電極板への応力を抑制し活物質を剥離させるなどの電池容量の劣化を抑制し、引出リードの曲げ形状を安定させることで外装体の1辺部の周縁部同士の貼り合せ面の組立の精度を向上させ漏液不良を減少し、水分透過による保存特性を飛躍的に向上させることができる。
【0014】
本発明の第2の発明においては、引出リードは、前記の曲げ加工追従部として、厚み方向の少なくとも片面に薄肉部を形成して構成したことにより、曲げられた周囲のそりが抑制され電極板の配置を乱さず、外装体の1辺部の周縁部同士の貼り合せ面の組立の精度を向上させ密封性の高い封止をすることができ漏液不良を減少させることができる。
本発明の第3の発明においては、引出リードは、前記曲げ加工追従部として、幅方向の少なくとも片面に切込部を形成して構成したことにより、曲げられた周囲のそりが抑制され電極板の配置を乱さず、絶縁層を厚くでき、一定のままの加工であるため引出リードの切断部からのバリによる短絡を防止することができる。
【0015】
本発明の第4の発明においては、引出リードは、多層構造で構成されており、前記曲げ加工追従部は厚み方向の構成層を少なくして構成したことにより、曲げられた周囲の応力が多層により分散されそりを抑制し、外装体の1辺部の周縁部同士の貼り合せ面の組立の精度を向上させ密封性の高い均一な密度の絶縁層で封止をすることができ水分透過による保存特性を向上させることができる。
【0016】
本発明の第5の発明においては、引出リードは、前記曲げ加工追従部として、交互に逆方向に湾曲する波形部を有する構成したことにより、電池外部からの応力に対して反発力を要した引出リードの構造をもつため形状を維持しやすく、引出リードがラミネートの金属部分への接触する外部短絡を防止することができる。
【0017】
本発明の第6の発明においては、引出リードは、前記曲げ加工追従部として、部分的に熱処理を施した焼きなまし部を有することにより、曲げられた周囲の応力が引き出しリードの部分的な柔軟性により分散されそりを抑制し、絶縁層を厚くでき、一定の厚みの加工であるため引出リードの切断部からのバリによる短絡を防止することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるラミネート電池の封止前の斜視図を示すものである。図2は、本発明の第1の実施の形態におけるラミネート電池の一部拡大図を示すものである。図3は、本発明の実施の形態1におけるラミネート電池の断面図を示すものである。
【0019】
図1に示したように正極集電体10の両面に正極活物質11を形成した正極板12と負極集電体13の両面に負極活物質14を形成した負極板15の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを介して渦巻状に巻回して構成した電極群17になるように加圧し、この電極群17から正極引出リード18および負極引出リード19を導出した後にラミネートフィルムからなる外装体20に所定量の電解液とともに収容し、外装体20の四方を熱溶着して封止することでラミネート電池21を構成している。このラミネート電池21において正極引出リード18と負極引出リード19はそれぞれ正極板12と負極板15に接続され、外装体20により封止されることで密閉性が確保されおり、正極引出リード18と負極引出リード19の先端部が外装体20の外部に突出し、外部端子としての機能を果たしている。
【0020】
正極引出リード18および負極引出リード19のそれぞれには、図2に示すように、外装体20に沿うように折り曲げられた2つの曲げ部22が設けられている。このときの正極引出リード18と負極引出リード19の表面には、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、変性ポリプロピレン、不織布のフィルムを積層し貼り合わせた絶縁皮膜23が全面あるいは部分的に正極引出リード18と負極引出リード19に被着されることにより構成
されている。正極引出リード18の材質はアルミニウムあるいはアルミニウム合金で、負極引出リード19はニッケルあるいはニッケル合金または銅あるいは銅合金の表面にニッケルを構成したクラッド材を用いる。
【0021】
外装体20は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔、ポリエチレンフィルムを積層し貼り合わせたアルミニウムラミネートフィルムにより構成されている。
このときの電解液は、電解質塩としてLiPFおよびLiBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。また、正極板12または負極板15の上に良好な被膜を形成させるためおよび過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)、並びにその変性体を用いるのが好ましい。
【0022】
図2、図3に示すように、正極引出リード18と負極引出リード19は曲げ部22を設け、前記外装体20内に位置する引出リードに、曲げ加工に追従し、引出リードを接続した電極板に曲げ加工による応力を伝えにくくした曲げ加工追従部24を設けて曲げることによって外装体20の合わせ面に溶着位置を配置している。正極引出リード18と負極引出リード19の曲げ加工追従部24として、正極引出リード18と負極引出リード19に薄肉部が設けられている。薄肉部は、ロール加工による加圧加工やプレス加工、刃物による研削などが好ましく、IHやレーザ照射等により加熱しながら加工しても良い。また、外装体20の寸法精度及び位置精度が高いため予め設けられているほうが良い。
【0023】
以上のように構成したラミネート電池21は、引出リード18、19を曲げることによる電極板への応力を抑制し活物質を剥離させるなどの電池容量の劣化を抑制し、引出リードの曲げ形状を安定させることで外装体20の1辺部の周縁部同士の貼り合せ面の組立の精度を向上させ漏液不良を減少し、水分透過による保存特性を飛躍的に向上させることができる。
【0024】
また、他の実施の形態を図4(a)(b)に示す。図4(a)(b)はラミネート電池21の正極引出リード18と負極引出リード19の幅方向に、曲げ加工追従部24として切込部を形成している。切込部をロール加工によるせん断加工やプレスによる抜き加工、刃物による研削、レーザ加工による溶射などで加工したもので、正極引出リード18と負極引出リード19の平面方向に曲げの起点となる体積変化を施したものである。
以上の構成により、曲げられた周囲のそりが抑制され電極板の配置を乱さず、外装体20の1辺部の周縁部同士の貼り合せ面の組立の精度を向上させ密封性の高い封止をすることができ漏液不良を減少させることができる。
【0025】
また、他の実施の形態を図5に示す。図5に示すように、はラミネート電池21の引出リード18、19が多層構造の引出リード18、19で、曲げ加工追従部24として厚み方向の構成層を少なくして形成している。蒸着やスパッタ工法などによって構成した多層構造からなる正極引出リード18と負極引出リード19の層の数を減らすことによって周辺部との厚みに変化を与え曲げの起点となる除去加工を施したものである。
【0026】
以上の構成により、曲げられた周囲の応力が多層により分散されそりを抑制し、外装体の1辺部の周縁部同士の貼り合せ面の組立の精度を向上させ密封性の高い均一な密度の絶縁層で封止をすることができ水分透過による保存特性を向上させることができる。
【0027】
また、他の実施の形態を図6に示す。図6に示すように、ラミネート電池21の曲げ加工追従部24として、引出リードが交互に逆方向に湾曲する波形部を形成している。
正極引出リード18と負極引出リード19の曲げ加工追従部24をロール加工による曲げ加工やプレスによる曲げ加工、IHやレーザによって局部的に熱を与えながら加工したもので、正極引出リード18と負極引出リード19に曲げの起点となる曲げ加工を施したものである。
【0028】
以上の構成により、電池外部からの応力に対して反発力を要した引出リードの構造をもつため、形状を維持しやすく、引出リードがラミネートの金属部分への接触する外部短絡を防止することができる。
【0029】
また、他の実施の形態を図7に示す。図7に示すように、ラミネート電池21の曲げ加工追従部24として、ラミネート電池21の正極引出リード18と負極引出リード19の部分的に熱処理を施した焼きなまし部を形成している。引出リードの曲げ加工追従部24をIHやレーザによって局部的に熱処理を施した焼きなまし部を設け、正極引出リード18と負極引出リード19の局部に材質の硬さの変化を起点として曲げ加工を施したものである。曲げられた周囲の応力が引き出しリードの部分的な柔軟性により分散されそりを抑制し、絶縁層を厚くでき、一定の厚みの加工であるため引出リードの切断部からのバリによる短絡を防止することができる。
【0030】
以下、本発明の具体的な実施例について図面を参照しながら、さらに詳しく説明する。(実施例1)
本発明における実施例1として、正極板12と負極板15とを多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを介して対向配置した電極群17の電極板からそれぞれ正極引出リード18と負極引出リード19を引出し、表面に絶縁皮膜23を設けたものを電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体20内に封入し、正極引出リード18と負極引出リード19の先端部分を外方に引出してなるラミネート電池21において、外装体20内に位置する正極引出リード18と負極引出リード19に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24を設け正極引出リード18と負極引出リード19の表面に絶縁皮膜23を設けたラミネート電池21について以下に説明する。
【0031】
正極板12および負極板15の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを介して巻回した電極群17を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体20に封入したラミネート電池21の構成であって、外装体20内に位置する正極引出リード18と負極引出リード19に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24を厚み方向の少なくとも片面に薄肉部9を形成して正極引出リード18と負極引出リード19の表面に絶縁皮膜23を設けて構成した。
【0032】
厚み方向に薄肉部9を形成した正極引出リード18と負極引出リード19をフープ状態から等ピッチで引き出しながらそれぞれロール加工によって加圧した。その際、引出リード1をヒータで120℃に加熱しながら行い絶縁皮膜23へ亀裂などが発生しないように加工し、図1〜図3に示すようなラミネート電池21を製作し実施例1とした。
(実施例2)
正極板12および負極板15の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを介して巻回した電極群17を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体20に封入したラミネート電池21の構成であって、外装体20内に位置する引出リード1に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24を幅方向の少なくとも片面に切込部を形成して引出リード18、19の表面に絶縁皮膜23を設けて構成した。
【0033】
幅方向に切込部を形成した正極引出リード18,負極引出リード19をフープ状態から等ピッチで引き出しながらそれぞれロール加工によって切断した。その際、引出リード18、19をヒータで120℃に加熱しながら行い絶縁皮膜23へ亀裂などが発生しないよ
うに加工し、図4に示すようなラミネート電池21を製作し実施例2とした。
(実施例3)
正極板12および負極板15の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを介して巻回した電極群17を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体20に封入したラミネート電池21の構成であって、外装体20内に位置する引出リード1に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24を多層構造の引出リード1で厚み方向の構成層を少なくした部分とし、引出リード18、19の表面に絶縁皮膜23を設けて構成した。
【0034】
多層構造の引出リード18、19の厚み方向の構成層を少なくした部分を、正極引出リード18はアルミニウムおよびアルミニウム合金を多層構造で張り合わせ真空中で熱処理したものを用い、負極引出リード19は無酸素銅およびニッケルを多層構造で張り合わせ熱処理したものを用い曲げ加工追従部24のみアルミニウムあるいは無酸素銅の単層部で厚みを周囲より薄くなるように構成し、図5に示すようなラミネート電池21を製作し実施例3とした。
(実施例4)
正極板12および負極板15の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを介して巻回した電極群17を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体20に封入したラミネート電池21の構成であって、外装体20内に位置する引出リード1に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24を交互に逆方向に湾曲する波形部で引出リード18、19の表面に絶縁皮膜23を設けて構成した。
【0035】
交互に逆方向に湾曲する波形部の正極引出リード18,負極引出リード19をフープ状態から等ピッチで引き出しながらそれぞれロール加工によって曲げ加工を行った。その際、引出リード18、19をヒータで120℃に加熱しながら行い絶縁皮膜23へ亀裂などが発生しないように加工し、図6に示すようなラミネート電池21を製作し実施例4とした。
(実施例5)
正極板12および負極板15の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを介して巻回した電極群17を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体20に封入したラミネート電池21の構成であって、外装体20内に位置する引出リード18、19に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24として部分的に熱処理を施した焼きなまし部を設け、そして、引出リード1の表面に絶縁皮膜23を設けて構成した。
【0036】
部分的に熱処理を施した焼きなまし部のある引出リード18、19で、正極引出リード18,負極引出リード19をフープ状態から等ピッチで引き出しながらレーザで局部的に熱エネルギを与え焼きなましを行った。正極引出リード18はアルミニウムー銅系の合金を用い曲げ加工追従部24のみ熱エネルギを与えて窒素置換した恒温槽で250℃で120秒間温度を維持し添加合金を固溶状態にし結晶粒を大きくした軟化した金属組織状態を形成した。負極引出リード19は銅−亜鉛系合金およびニッケルを多層構造で張り合わせ窒素置換した恒温槽で280℃で480秒間温度を維持した熱処理を行い熱エネルギを与えて添加合金を固溶状態にし結晶粒を大きくし軟化した金属組織状態を曲げ加工追従部24のみで形成し、図7に示すようなラミネート電池21を製作し実施例5とした。
(比較例1)
正極板12および負極板15の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを介して巻回した電極群17を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体20に封入したラミネート電池21の構成であって、外装体20内に位置する引出リード1に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24のない引出リード1の表面に絶縁皮膜23を設けて構成した。
(比較例2)
正極板12および負極板15の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ16a、16bを
介して巻回した電極群17を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体20に封入したラミネート電池21の構成であって、外装体20内に位置する引出リード1に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24のない引出リード1の表面に絶縁皮膜23を設けないで構成した。
【0037】
上記実施例1〜5および比較例1〜2のラミネート電池21をそれぞれ500個ずつ作製し以下のような評価を行った。
(電池容量測定)出荷充電状態での電池容量を測定し平均値を表示した。
(漏液不良判定)注液後に24Hの室温でのエージングを行った後、容量10%の予備充電を行いラミネートの溶着位置8から漏液がないかを確認した。
(短絡不良判定)出荷充電後に充放電サイクル試験を行い、正極引出リード18と負極引出リード19の間の電圧確認を行い電圧が1V未満の電池を絶縁内部短絡不良として確認した。
(水分透過率測定)PC液を電解液に代用して注液後45℃の恒温槽で30日間保管後、PC液をカールフィッシャー測定にて水分含有率を測定した。
以上の評価結果を(表1)に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
電池容量の測定からは実施例1〜5において規定値1150mAh以上の値を示すのに対し、比較例1〜2では引出リード1が負極板15に応力を与えながら折れ曲がることが断面観察より確認でき、微小領域での反応面積が減少したことによる電池容量の低下が起こったと予想される。漏液不良判定では比較例2で12.4%もの漏液不良を確認した。
【0040】
絶縁皮膜23のない引出リード1を用いたことで引出リード1の周辺の溶着位置8の密着性が悪化したものと考えられる。比較例1においても引出リード1に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24を設けなかったため、周辺にそりが発生し溶着直後の溶着境界面にクラックが発生することがまれに発生し漏液不良を引き起こすことが確認できた。短絡不良判定では、実施例1〜5および比較例1で0.1%以下となったが、比較例2では絶縁皮膜23のない引出リード1が外装体20との溶着位置8で外装体20の中間層のアルミニウム材と接触して短絡不良を多く発生させたことが確認できた。水分透過率では実施例1〜6で電池の膨れ開始基準とした200ppmを下回ることが確認できた。比較例1〜2については引出リード1に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部24を設けなかったため、周辺にそりが発生し溶着直後の溶着境界面にクラックが発生することがまれに発生し密
封性が悪化したと考えられ、特に比較例2では、絶縁皮膜23のない引出リード1を用いることで気密性が保てなかったものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るラミネート電池は、外装体内に位置する引出リード1に曲げ加工に追従する曲げ加工追従部を設けたことにより、両極の電極板への応力を抑制し活物質を剥離させるなどの電池容量の劣化を抑制し、リードの曲げ形状を安定させることで外装体の1辺部の周縁部同士の貼り合せ面の組立の精度を向上させ漏液不良を減少し、水分透過による保存特性を飛躍的に向上させることができることで電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量、高信頼性が望まれているポータブル電子機器の電源などとして有用である。
【符号の説明】
【0042】
10 正極集電体
11 正極活物質
12 正極板
13 負極集電体
14 負極活物質
15 負極板
16a、16b セパレータ
17 電極群
18 正極引出リード
19 負極引出リード
20 外装体
21 ラミネート電池
22 曲げ部
23 絶縁皮膜
24 曲げ加工追従部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質絶縁体を介して対向配置した正極板と負極板からそれぞれ引出リードを引出し、前記引出リードの表面に絶縁層を設けたものを電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体内に封入したラミネート電池において、前記引出リードは曲げ部を有し、前記外装体内に位置する引出リードに、曲げ加工に追従し、引出リードを接続した電極板に曲げ加工による応力を伝えにくくした曲げ加工追従部を設けたことを特徴とするラミネート電池。
【請求項2】
前記引出リードは、前記曲げ加工追従部として、厚み方向の少なくとも片面に薄肉部を形成して構成した請求項1に記載のラミネート電池。
【請求項3】
前記引出リードは、前記曲げ加工追従部として、幅方向の少なくとも片面に切込部を形成して構成した請求項1に記載のラミネート電池。
【請求項4】
前記引出リードは、多層構造で構成されており、前記曲げ加工追従部として、厚み方向の構成層を少なくして構成した請求項1に記載のラミネート電池。
【請求項5】
前記引出リードは、前記曲げ加工追従部として、交互に逆方向に湾曲する波形部を有する請求項1に記載のラミネート電池。
【請求項6】
前記引出リードは、前記曲げ加工追従部として、部分的に熱処理を施した焼きなまし部を有する請求項1に記載のラミネート電池。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−73872(P2013−73872A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213958(P2011−213958)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】