説明

ランキンサイクルシステム

【課題】ランキンサイクルを効率よく稼動させることを課題とする。
【解決手段】ランキンサイクルシステムは、エンジンにおける廃熱により冷媒を蒸気化し、蒸気化した冷媒を介して廃熱を回収する。ランキンサイクルシステムは、ランキンサイクルの系内の圧力を低下させて、負圧を増大させるバキュームポンプ、エンジンを出力源とする車両動力系の出力をバキュームポンプに供給する動力伝達経路、動力伝達経路の遮断及び接続を行う断続手段、この断続手段の制御部、ランキンサイクルの系内の負圧情報取得手段、前記エンジンの減速燃料カット情報取得手段を備える。制御部は、負圧情報取得手段によって取得された情報に基づいてランキンサイクル内の負圧が低下していると判断すると共に、減速燃料カット情報取得手段によって取得された情報に基づいてエンジンが減速燃料カット制御を行い燃料噴射停止状態であると判断する場合に、断続手段を接続状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ランキンサイクルを利用して内燃機関(エンジン)の稼動に伴う廃熱を回収するランキンサイクルシステム(廃熱回収装置)が種々知られている(例えば、特許文献1)。ランキンサイクルシステムにおいて、廃熱により冷媒を蒸気化させ、この蒸気化された冷媒を介して廃熱を解消する場合、ランキンサイクルの系内の圧力を低下させることによって負圧を作り出せば、冷媒の蒸気化が促進される。このため、特許文献1に開示された廃熱回収装置もバキュームポンプ(V/P)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−133299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バキュームポンプを電動で作動させることとすると、電力を消費するためにランキンサイクルの効率の低下、エンジンの燃費低下の原因となる。
【0005】
そこで、本明細書開示のランキンサイクルシステムは、ランキンサイクルを効率よく稼動させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本明細書開示のランキンサイクルシステムは、エンジンにおける廃熱により冷媒を蒸気化させ、当該蒸気化された冷媒を介して前記廃熱を回収するランキンサイクルを形成するランキンサイクルシステムであって、前記ランキンサイクルの系内の圧力を低下させて、負圧を増大させるバキュームポンプと、前記エンジンを出力源とする車両動力系の出力を前記バキュームポンプに供給する動力伝達経路と、当該動力伝達経路の遮断及び接続を行う断続手段と、前記断続手段の制御部と、前記ランキンサイクルの系内の負圧情報取得手段と、前記エンジンの減速燃料カット情報取得手段と、を備え、前記制御部は、前記負圧情報取得手段によって取得された情報に基づいて前記ランキンサイクル内の負圧が低下していると判断すると共に、前記減速燃料カット情報取得手段によって取得された情報に基づいて前記エンジンが減速燃料カット制御を行い燃料噴射停止状態であると判断する場合に、前記断続手段を接続状態とする。
【0007】
エンジンが減速燃料カット制御中で、燃料噴射停止状態であると判断される場合、すなわち、慣性力によって車両駆動系の各部が作動している状態のときに、車両動力系の出力によってバキュームポンプを駆動することによって、車両動力系の慣性力を利用することができる。車両動力系の慣性力を利用してバキュームポンプを駆動すれば、バキュームポンプを駆動するための電力消費を抑制しつつ、ランキンサイクル内の負圧を維持することができる。このように、エネルギ利用の収支を改善することができる。減速燃料カット制御は、減速時かつエンストの危険性がない場合に、エンジンへの燃料供給を停止することで燃費を改善するものである。このような減速燃料カット制御が行われているタイミング、すなわち、減速時でエンジン出力が不要なタイミングで行うことにより、燃費低下を回避しつつ、ランキンサイクルの効率的な稼動が実現される。
【0008】
ランキンサイクルシステムは、前記ランキンサイクルに接続され、負圧を貯留するサージタンクと、前記サージタンクと前記ランキンサイクルとの連通状態を調整するサージタンク調整弁と、を備え、前記制御部は、前記負圧情報取得手段によって取得された情報に基づいて、前記サージタンク調整弁の開閉制御を行い、前記ランキンサイクル内の負圧を調整する。
【0009】
バキュームポンプの駆動で必要な負圧を確保できない場合に、サージタンク内の負圧を供給することにより、ランキンサイクルの系内の負圧を確保することができる。例えば、車両動力系によるバキュームポンプの駆動では所望の負圧を確保できないときにサージタンク内から負圧を供給することができる。一方、車両動力系によるバキュームポンプの駆動によって系内の十分な負圧が確保されるときは、サージタンク内に負圧を備蓄しておくことができる。これにより、系内の安定した負圧調整を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1のランキンサイクルシステムの概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1のランキンサイクルシステムの制御の一例を示すフロー図である。
【図3】図3は、ランキンサイクルの系内の負圧値減少量とバキュームポンプの必要駆動力との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、他のランキンサイクルシステムの概略構成図である。
【図5】図5は、実施例2のランキンサイクルシステムの概略構成図である。
【図6】図6は、実施例2のランキンサイクルシステムの制御の一例を示すフロー図である。
【図7】図7は、サージタンク調整弁及び車両動力系によるバキュームポンプの駆動状況の一例示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1のランキンサイクルシステム100の概略構成について図1を参照しつつ説明する。ランキンサイクル100は、ランキンサイクル101と、車両動力系50を備える。
【0013】

ランキンサイクルシステム100は、内部で冷媒が沸騰することにより冷却されるエンジン1を備えている。ランキンサイクル101は、このエンジン1の廃熱により冷媒を蒸気化させ、この冷媒を介して廃熱を回収する。ランキンサイクル101には、冷媒供給路3、気液分離器4、冷媒循環路5、過熱器7を備える。さらに、ランキンサイクル101は、発電機9が接続された膨張器8、コンデンサ10、冷却水回収経路13、キャッチタンク14、ウォータポンプ(W/P)を備えている。さらに、ランキンサイクル101の系内の圧力を低下させるバキュームポンプ(V/P)20を備えている。ランキンサイクルシステム101は、制御部としてのECU(Electronic control unit)40を備えている。ECU40は、エンジン1が減速燃料カット制御中であるか否か判定するための減速燃料カット情報取得手段としてのトルク検出部41としての機能も果たす。
【0014】
エンジン1は、シリンダブロック1aとシリンダヘッド1bを備える。シリンダブロック1a及びシリンダヘッド1b内には、それぞれ、ウォータジャケット1a1、1b1が形成されており、このウォータジャケット1a1、1b1内の冷媒が沸騰することによってエンジン1の冷却が行われる。エンジン1は、さらに、ピストン1cと、このピストン1cとクランクシャフトを繋ぐコンロッド1dを備えている。また、エンジン1は、排気管2を備える。エンジン1のシリンダヘッド1bには、冷媒供給路3の一端が接続されている。冷媒供給路3には、エンジン1で温められた冷媒が流入する。
【0015】
気液分離器4は、冷媒供給路3に配設されている。エンジン1側から気液混合状態で気液分離器4に流入した冷媒は、気液分離器4内で気相と液相とに分離される。気液分離器4の下端部には、冷媒循環路5の一端が接続されている。この冷媒循環路5の他端はシリンダブロック1aのウォータジャケット1a1に接続されている。
【0016】
冷媒供給路3の他端は、過熱器7に接続されている。過熱器7には、排気管2が引き込まれている。排気管2の内部を流通する排気ガスは、エンジン1で発生し、気液分離器4を通過した蒸気と熱交換をする熱媒体となる。過熱器7は、エンジン1側から冷媒供給路3を通じて流入する冷媒とエンジン1が排出する排気ガスとの熱交換を行う。これにより、蒸気発生量が増大すると共に、蒸気の過熱度が向上し、廃熱回収効率が向上する。
【0017】
過熱器7の下流には、過熱器7において過熱された蒸気によって駆動される膨張器8が設けられている。膨張器8は、衝動タービンを備えており、高圧となって噴射される蒸気によって駆動される。衝動タービンの回転力は、エンジン1が備えるクランクシャフトの回転を補助したり、発電機の駆動に用いたりすることができる。これにより、廃熱の回収が行われる。衝動タービンは、軸受けを備えるが、耐久性の面でグリス封入タイプの軸受けを採用することができず、オイル潤滑式の軸受けが採用されている。このため、潤滑油の通路と蒸気の通路とを隔てるオイルシールが設けられている。実施例1においては、衝動タービンによって発電機9を駆動することによって廃熱を回収する。
【0018】
過熱器7は、過熱器7内の蒸気の温度を検出する温度センサ7a、過熱器7内の蒸気の圧力を検出する圧力センサ7bを備えている。温度センサ7aと圧力センサ7bによって取得された値からランキンサイクル101の稼動状態を判定することができる。
【0019】
コンデンサ10は、膨張器8の下流側に配設されている。コンデンサ10は、蒸気化している冷媒を冷却して凝縮し、冷媒を液状に戻す。コンデンサ10は、ファン10aを備えており、ECU40の指令によってファン10aを駆動することにより効率的に冷媒を冷却し、蒸気を凝縮することができる。コンデンサ10は、圧力センサ11と、水温センサ12を備えている。圧力センサ11及び水温センサ12は、ランキンサイクル101の系内の負圧情報取得手段に相当する。
【0020】
凝縮器10には、冷却水回収経路13の一端が接続されている。冷却水回収経路13の他端はシリンダブロック1aのウォータジャケット1a1に接続されている。冷却水回収経路13には、キャッチタンク14とウォータポンプ(W/P)15、一方弁16が配設されている。キャッチタンク14は、コンデンサ10で凝縮され、液体に戻された冷媒を一旦貯留する。ウォータポンプ12は、キャッチタンク14内の冷媒を再びウォータジャケット1a1に供給する。一方弁16は、冷媒の流通状態を制御する。
【0021】
凝縮器10には、気体流通管17の一端が接続されており、この気体流通管17の他端には三方弁18が設けられている。この三方弁18の一つの管路には、バキュームポンプ(V/P)20を介して気体流出管19が接続されている。また、三方弁18の別の管路には、気体流入管21が接続されている。気体流入管21は、冷媒(蒸気)とは異なるガス(例えば、外部の空気)を凝縮器10に導入するためのものであり、その一部にはフィルタが設けられている。なお、気体流入管21から凝縮器10に導入されるガスは、空気に限定されるものではなく、例えば、窒素等のガスを導入することもできる。
【0022】
バキュームポンプ20は、エンジン1が搭載される車両のバッテリにより駆動可能であると共に、後に詳述する車両動力系50の出力によっても駆動可能である。
【0023】
ランキンサイクルシステム100は、車両動力系50を備えている。車両動力系50は、コンロッド1dと接続されたクランクシャフトである第1シャフト51、第1シャフト51から動力が伝達されるトルクコンバータ(T/C)52を備えている。また、変速部52、CVT(無段変速機;Continuously Variable Transmission)53を備えている。さらに、第2シャフト56を介してCVT53と接続されるデファレンシャルギア55、デファレンシャルギア55と第3シャフト57を介して接続されるタイヤ58を備えている。
【0024】
第2シャフト56は、動力伝達経路30を介してバキュームポンプ20と接続されている。動力伝達経路30には、動力伝達経路30の遮断及び接続を行う断続手段としての電磁クラッチ31が配設されている。動力伝達経路30により、エンジン1を出力源とする車両動力系50の出力をバキュームポンプ20に供給することができる。
【0025】
ランキンサイクルシステ100は、上述のように制御部に相当するECU40を備えている。ECU40は、温度センサ7a、圧力センサ7b、圧力センサ11、水温センサ12等の各種センサと電気的に接続されている。さらに、ECU40は、これらのセンサにより取得した情報に基づいて動作指令を発する対象となるファン10a、三方弁18、電磁クラッチ31と電気的に接続されている。ECU40は、トルク検出部41を含んでいる。トルク検出部41は、エンジン1のトルクの出方によってエンジン1が減速燃料カット制御により燃料噴射停止状態であるか否かの判断を行う。ここで、エンジン1が燃料噴射停止状態であるときは、車両動力系50が慣性力で作動している状態である。
【0026】
ECU40は、圧力センサ11、水温センサ12によって取得された情報に基づきランキンサイクル101内の負圧が低下していると判断する。そして、トルク検出部41によって取得された情報に基づいてエンジン1が減速燃料カット制御による燃料噴射停止状態であると判断した場合に、電磁クラッチ31を接続状態とする。
【0027】
つぎに、ECU40が行うランキンサイクルシステム100の制御の一例につき、図2に示すフロー図を参照しつつ説明する。制御フローは、繰り返し行われるものとする。また、初期の状態で電磁クラッチ31は、遮断された状態となっているものとする。
【0028】
ECU40は、ステップS1において、ランキンサイクル101が稼動中であるか否かを判断する。ランキンサイクル101が稼動中であるか否かは、過熱器7に設けた温度センサ7a及び圧力センサ7bから得られた情報に基づいて判断する。ステップS1でYESと判断したときは、ステップS2へ進む。一方、ステップS1でNOと判断したときは、処理はリターンとなる。
【0029】
ステップS2において、ECU40は、ランキンシステム101内の負圧値Pを取得する。負圧値Pは、コンデンサ10が備える圧力センサ11から得られる情報に基づいて得られる。なお、圧力センサ7bから得られた情報を採用して負圧値Pを得ることもできる。
【0030】
ステップS2に引き続き行われるステップS3では、ECU40は、ランキンシステム101内の負圧値Pが減少しているか否かを判断する。負圧値Pが減少しているか否かは、繰り返し行われるステップS2の処理で取得した負圧値Pを比較することによって判断する。すなわち、前回取得した負圧値Pと今回取得した負圧値Pとを比較することによって負圧が減少しているか否かの判断を行う。ステップS3においてYESと判断したときは、ステップS4へ進む。一方、ステップS3でNOと判断したときは、処理はリターンとなる。
【0031】
ステップS4では、負圧値Pの減少度合いが大きいか否かの判断を行う。図3は、ランキンサイクル101の系内の負圧値P減少量とバキュームポンプ20の必要駆動力との関係を示すグラフである。バキュームポンプ20の必要駆動力は、負圧値Pの減少量が大きいほど、大きくなる。具体的に、ステップS4では、
負圧値Pの減少量が閾値Xよりも大きいか否かの判断を行う。負圧値Pの減少量が閾値Xよりも大きいと判断したときは、すなわち、YESと判断したときは、ステップS5へ進む。一方、NOと判断したときはステップS6へ進む。ステップS5では、ECU40は、バキュームポンプ20の電気駆動を行う。
【0032】
ステップS6では、ECU40は、エンジン1が減速燃料カット制御中であるか否かを判断する。具体的には、トルク検出部41がエンジン1のトルク発生状態を検出し、減速燃料カット制御が行われている場合、すなわち、YESと判断したときは、ステップS7へ進む。一方、NOと判断したときは、処理はリターンとなる。
【0033】
ステップS7では、ECU40は、電磁クラッチ31を結合し、バキュームポンプ20を車両動力系50により駆動する。これにより、バキュームポンプ20を駆動のための電力消費を抑制しつつ、系内の負圧値Pを所望の値に維持することができ、ランキンサイクルシステム100を効率よく稼動させることができる。また、エンジン側や車両側の車両動力系50の慣性力を利用してバキュームポンプ20を駆動するため、エンジンブレーキが利くようになり、ブレーキシステムの負担を軽減することができるという効果も期待することができる。
【0034】
なお、ランキンサイクルシステム100は、動力伝達経路30に代えて、慣性力で作動する時期がある他の部分に接続された動力伝達経路を備えることができる。例えば、図4に示すように、第1シャフト51に接続される動力伝達経路35とすることもできる。動力伝達経路35には、動力伝達経路30と同様に電磁クラッチ36が配設されている。すなわち、動力伝達経路の接続先は、クランクシャフト等のエンジン側のシャフトであるのか、ドライブシャフト等の車両側のシャフトであるのかは問われない。
【実施例2】
【0035】
つぎに、実施例2につき、図5乃至図7を参照しつつ説明する。
【0036】
実施例2のランキンサイクルシステム200が実施例1のランキンサイクルシステム100と異なる点は、以下の点である。すなわち、ランキンサイクルシステム200は、ランキンサイクル101に接続され、負圧を貯留するサージタンク70と、このサージタンク70とランキンサイクル101との連通状態を調整するサージタンク調整弁72を備えている点である。そして、ECU40が、負圧情報取得手段に相当する圧力センサ11及び水温センサ12によって取得された情報に基づいて、サージタンク調整弁72の開閉制御を行い、ランキンサイクル101内の負圧を調整する点も異なる。
【0037】
具体的には、ランキンサイクルシステム200は、第1負圧制御通路71と第2負圧制御通路73を介して気体流通管17に接続されたサージタンク70を備えている。第1負圧制御通路71には、サージタンク調整弁72が配設されている。第2負圧制御通路には、一方弁74が配設されている。一方弁74は、気体流通管17の圧力がサージタンク70内の圧力よりも所定値以上高くなった場合に開弁状態となり、サージタンク70内の負圧がランキンサイクル101の系内に供給される。
【0038】
なお、他の構成要素は同様であるのである、同一の構成要素には、図面中、同一の参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
つぎに、このようなランキンサイクルシステム200の制御の一例を図6に示すフロー図を参照しつつ説明する。なお、フロー図に登場する負圧閾値P1、P2は、P1>P2の関係を有する。また、初期の状態で電磁クラッチ31は、遮断された状態となっているものとする。
【0040】
ECU40は、ステップS11において、ランキンサイクル101が稼動中であるか否かを判断する。ランキンサイクル101が稼動中であるか否かは、過熱器7に設けた温度センサ7a及び圧力センサ7bから得られた情報に基づいて判断する。ステップS11でYESと判断したときは、ステップS12へ進む。一方、ステップS11でNOと判断したときは、処理はリターンとなる。
【0041】
ステップS12において、ECU40は、ランキンシステム101内の負圧値Pを取得する。負圧値Pは、コンデンサ10が備える圧力センサ11から得られる情報に基づいて得られる。なお、圧力センサ7bから得られた情報を採用して負圧値Pを得ることもできる。
【0042】
ステップS12に引き続き行われるステップS13では、負圧値Pが負圧閾値P1よりも小さいか否かを判断する。ステップS13でNOと判断したときは、ステップS14へ進む。一方、ステップS13でYESと判断したときは、ステップS15へ進む。
【0043】
ステップS14では、サージタンク調整弁72を開状態とする。ステップS13でNOと判断した場合は、負圧値Pが、負圧閾値P1よりも大きい場合である。すなわち、負圧値Pがランキンサイクル101を稼動させるために必要な負圧を上回っているため、この余剰の負圧をサージタンク70へ備蓄する趣旨である。サージタンク調整弁72が開状態とされることにより、第1負圧制御通路71を通じて負圧がサージタンク70内に備蓄される。負圧値Pが負圧閾値P1よりも大きいときは、そもそもバキュームポンプ20の駆動が不要であるため、電磁クラッチ31の遮断状態は維持される。ステップS14の処理が完了した後は、処理は、リターンとなる。
【0044】
ステップS15では、ECU40は、エンジン1が減速燃料カット制御中であるか否かを判断する。具体的には、トルク検出部41がエンジン1のトルク発生状態を検出し、減速燃料カット制御が行われている場合、すなわち、YESと判断したときは、ステップS16へ進む。一方、NOと判断したときは、処理はリターンとなる。
【0045】
ステップS16では、ECU40は、電磁クラッチ31を結合し、バキュームポンプ20を車両動力系50により駆動する。これにより、バキュームポンプ20を駆動のための電力消費を抑制しつつ、系内の負圧値Pを所望の値に維持することができ、ランキンサイクルシステム100を効率よく稼動させることができる。
【0046】
ステップS16に引き続き行われるステップS17では、負圧値Pが負圧閾値P2よりも小さいか否かを判断する。ステップS17でNOと判断したときは、ステップS18へ進む。一方、ステップS17でYESと判断したときは、ステップS19へ進む。
【0047】
ステップS18では、サージタンク調整弁72を開状態とする。ステップS17でNOと判断した場合は、電磁クラッチ31が結合され、車両動力系50によってバキュームポンプ20が駆動されている状態である。バキュームポンプ20が駆動されることにより余剰となった負圧は、サージタンク70へ備蓄される。サージタンク調整弁72が開状態とされることにより、第1負圧制御通路71を通じて負圧がサージタンク70内に備蓄される。ステップS18の処理が完了した後は、処理は、リターンとなる。
【0048】
一方、ステップS19では、サージタンク調整弁72は、閉状態となる。負圧値Pが負圧閾値P2を下回る場合は、備蓄に回すことができるほど、負圧が確保することができていない場合である。この場合、サージタンク調整弁72を閉状態とする。ただし、バキュームポンプ20は、車両動力系50により駆動されているため、系内の必要な負圧は確保されている。
【0049】
このようなランキンサイクルシステム200におけるサージタンク調整弁72と車両動力系50によるバキュームポンプ20の駆動の状態は、図7に示すテーブルにまとめることができる。
【0050】
まず、負圧値Pが負圧閾値P1よりも大きいときは、サージタンク調整弁72は、開状態となり、バキュームポンプ20の車両動力系50による駆動はOFF状態となる。サージタンク70は、負圧を備蓄する。
【0051】
負圧値Pが負圧閾値P1と負圧閾値P2との間にあるときは、サージタンク調整弁72は、開状態となり、バキュームポンプ20の車両動力系50による駆動はON状態となる。サージタンク70は、余剰の負圧を備蓄する。また、場合によっては、サージタンク70内の負圧をランキンサイクル101の系内に導入することもできる。
【0052】
負圧値Pが負圧閾値P2よりも小さいときは、サージタンク調整弁72は、閉状態となり、バキュームポンプ20の車両動力系50による駆動はON状態となる。負圧を備蓄する余裕はないためサージタンク調整弁72は閉じられる。バキュームポンプ20は稼動しているため、系内は、必要な負圧に維持される。
【0053】
なお、気体流通管17の圧力がサージタンク70内の圧力よりも所定値以上高くなった場合は、一方弁74が開き、サージタンク70内の負圧がランキンサイクル101の系内に導入される。すなわち、車両動力系50によって駆動されるバキュームポンプ20とサージタンク70内の負圧により、系内は、必要な負圧に維持される。
【0054】
なお、サージタンク70内の負圧が導入されても所望の負圧値Pが維持されない場合は、バキュームポンプ20を電動駆動することもできる。
【0055】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0056】
1…エンジン 2…排気管
3…冷媒供給路 4…気液分離器
5…冷媒循環路 7…過熱器
7a…温度センサ 7b…圧力センサ
8…膨張器 10…コンデンサ
11…圧力センサ 12…水温センサ
13…冷却水回収経路 14…キャッチタンク
17…気体流通管 18…三方弁(通路切替手段)
19…気体流入管 20…バキュームポンプ(V/P)
21…気体流出管 30、35…動力伝達経路
31、36…電磁クラッチ(断続手段) 40…ECU(制御部)
41…トルク検出部(減速情報取得手段)
50…車両動力系 51…第1シャフト
52…トルココンバータ(T/C) 53…変速部
54…CVT(無段変速機;Continuously Variable Transmission)
55…デファレンシャルギア 56…第2シャフト
57…第3シャフト 58…タイヤ
100、200…ランキンサイクルシステム
101…ランキンサイクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにおける廃熱により冷媒を蒸気化させ、当該蒸気化された冷媒を介して前記廃熱を回収するランキンサイクルを形成するランキンサイクルシステムであって、
前記ランキンサイクルの系内の圧力を低下させて、負圧を増大させるバキュームポンプと、
前記エンジンを出力源とする車両動力系の出力を前記バキュームポンプに供給する動力伝達経路と、
当該動力伝達経路の遮断及び接続を行う断続手段と、
前記断続手段の制御部と、
前記ランキンサイクルの系内の負圧情報取得手段と、
前記エンジンの減速燃料カット情報取得手段と、
を備え、
前記制御部は、前記負圧情報取得手段によって取得された情報に基づいて前記ランキンサイクル内の負圧が低下していると判断すると共に、前記減速燃料カット情報取得手段によって取得された情報に基づいて前記エンジンが減速燃料カット制御を行い燃料噴射停止状態であると判断する場合に、前記断続手段を接続状態とするランキンサイクルシステム。
【請求項2】
前記ランキンサイクルに接続され、負圧を貯留するサージタンクと、
前記サージタンクと前記ランキンサイクルとの連通状態を調整するサージタンク調整弁と、
を備え、
前記制御部は、前記負圧情報取得手段によって取得された情報に基づいて、前記サージタンク調整弁の開閉制御を行い、前記ランキンサイクル内の負圧を調整する請求項1記載のランキンサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−159065(P2012−159065A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21163(P2011−21163)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】