説明

ランダムに分枝したコポリマー、その調製及びコーティング材料中のレベリング剤としてのその使用

(a)直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールの少なくとも1種のアクリル酸エステル10〜98.9モル%(b)少なくとも1種のポリエチレン性不飽和モノマー0.1〜10モル%及び(c)任意に、直鎖、分枝鎖又は環状C1−C22アルキルモノアルコールのアクリル酸エステルと異なり式(I)の化合物とは異なる1種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを(d)H3C−CRac−CH2−CRb=CH2(式I)(式中、Ra及びRbは互いに独立してアリール、CN又はCOOR1、Rc=アルキル、アリール又はアラルキル)の少なくとも1種の化合物1〜10モル%の存在下及び少なくとも1種のフリーラジカル重合開始剤の存在下フリーラジカル重合で反応させ、成分(a)〜(d)の前記モル分率は合計で100モル%で、かつ成分(b)のモル分率は成分(d)のモル分率を超えな

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はランダムに分枝したコポリマー、それらを調製する方法及びコーティング材料中のレベリング剤としてのその使用に関する。本発明はより詳細には、例えばワニスのようなコーティング材料に均一な表面を付与するのに適する、エチレン性不飽和モノマーの、不規則に、即ちランダムに分枝したコポリマーに基づくレベリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料表面は通常は全体に平滑ではなく、寧ろある程度は構造付与された表面を有し、これは波形、あるいはオレンジピール構造と称される。これらの表面は短い波形を有する細かな構造を有し、又は長い波形を有する粗い構造を有し得る。多くの場合において、この波形は望ましくない。構造とコーティング材料のタイプ、例えばこれらのコーティング材料が溶媒を含有するか、あるいは粉末コーティング材料の場合のように無溶媒であるかなどの間には関連性がある。粉末コーティング材料の場合、レベリング剤の添加は必須となるが、その理由はこれらのレベリング剤が無ければ、平滑性を有する表面を得ることはほぼ不可能であるからである。
【0003】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル及びポリシロキサンをコーティングのためのレベリング促進剤として使用できることが知られている。ポリシロキサンは通常、ジメチルポリシロキサン、メチルアルキルポリシロキサン、又はポリエーテル−若しくはポリエステル修飾ジメチル−若しくはメチルアルキルポリシロキサンである。ポリ(メタ)アクリレートに関しては、種々の分子量の、例えばエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又はn−ブチルアクリレートのようなC2−C8のアルキル基鎖長を有するアクリル酸アルキルエステルのポリマー又はコポリマーを用いることが好ましい。場合によっては、用いられる生成物は100000g/molまでの分子量を有する。レベリング促進剤として用いられるこれらのポリ(メタ)アクリレート(コ)ポリマーをそのままで、又は有機溶媒中の溶液として、あるいは例えばシリカに塗布された粉末の形態で用いることができる。これは、粉末コーティングにおける使用の場合に特に慣例的である。このような生成物の使用量は典型的にはコーティング配合物に基づいて0.1%〜2%である。
【0004】
すべてのこれらの生成物の作用は、液体/気体界面における界面活性に由来する。これらの生成物は、コーティング系の実際のバインダーとのある程度の不適合性のために界面に対して配向するためである。この不適合性は、これらポリマーの分子量を増加することにより高めることができる。しかしながら、その際の不都合は、この不適合性はコーティングの一定のヘイズを引き起こす場合があり、またレベリング剤の粘度は、ユーザーにとって容易な取り扱いが不可能ではなくとも困難となるほど高くなる場合があることである。この問題を解決するための1つのアプローチは、(メタ)アクリル酸エステル及び共重合性マクロモノマーから主に構成される櫛型コポリマーの使用である。特許文献1は、レベリング剤としてのこれらの櫛型コポリマーの使用を記載している。これらの櫛型コポリマーの不利点は、不便な多段階の調製方法及び工業的な量で必要なマクロモノマーの入手である。ある場合においては、この結果、レベリング剤を、コーティング材料に対するその極性の面で最適に調整することができず、その結果最適なレベリング効果が達成を得られない。さらに、マクロモノマーの調製には非常に費用がかかり、従って価格の点からも代替品が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1193299号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、解決しようとする課題は、容易に入手できる原材料を用いて、簡単な方法で、かつ広範囲に調製することができるコポリマーを提供することである。コポリマーはコーティング材料中のレベリング剤として用いることができ、非常に滑らかであり及び可能な限りヘイズの無いコーティングを形成することを可能にし、このことは特に粉末コーティングにおいて最も重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、この問題をランダムに分枝したコポリマーを調製する方法であって、ここで成分
(a)直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールの少なくとも1種のアクリル酸エステル10〜98.9モル%、
(b)少なくとも1種のポリエチレン性不飽和モノマー0.1〜10モル%、及び
(c)場合により、直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールのアクリル酸エステルと異なり且つ式(I)の化合物と異なるモノエチレン性不飽和モノマーの1種以上、
を、以下の存在下
(d)式(I)の少なくとも1種の化合物の1〜10モル%
3C−CRac−CH2−CRb=CH2 (I)
(式中、Ra及びRbは互いに独立して、アリール、CN又はCOOR1(R1=H、アルキル、アリール又はアラルキル)であり、Rc=アルキル、アリール又はアラルキルである)、及び
フリーラジカル重合の少なくとも1種の開始剤の存在下で、フリーラジカル重合において反応させることを特徴とし、成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の上記モル分率は合計で100モル%になり、かつ成分(b)のモル分率は成分(d)のモル分率を超えない方法により解決できることを見出した。
【0008】
この方法により得られるランダムに分枝したコポリマーは、コーティング材料、具体的には粉末コーティング材料におけるレベリング剤として使用することができ、これにより非常に滑らかで、可能な限りヘイズの無いコーティングを形成することを可能にする。本調製方法は、容易に入手できる出発物質からの比較的広範囲のコポリマーの複雑でない調製を可能にする簡単な一段階プロセスである。
【0009】
フリーラジカル重合を用いた高度に分枝したコポリマーの調製は、種々の技術文献、例えば論文Progress in Polymer Science 34 (2009),317、又は米国特許第7,423,104号明細書に記載されている。
【0010】
例えば、高度に分枝したコポリマーの調製の1つの変形例は、一般的な重合条件下でフリーラジカル開始剤として作用し、及び鎖が延長する基を有するエチレン性不飽和モノマーであるAB*モノマーを用いた「自己縮合ビニル重合」(SCVP)である。このアプローチは、ニトロキシル媒介重合(NMP)については Chem. Rev. 2001, 101, page 3681 ff に、及び原子移動ラジカル重合(ATRP)については Chem. Rev. 2001, 101, page 2981 ff. に、国際特許出願WO2008/045299に又は米国特許第6,639,032に記載されている。これらの総説は、AB*モノマーの例も記載している。
【0011】
高度に分枝したポリマーについての他の合成方法が、Chem. Rev. 2001, 101, page3643 ff. 及び J. Polym Sci, PartA, 2000, 38, 1764 ff に記載されている。触媒的連鎖移動(CCT)、及び可逆的付加開裂連鎖移動重合において、高度に分枝したポリマーをある環境下で合成することが見出された。分枝の形成は、その場で形成されるマクロモノマーの重合とみなされ得る。これは、主鎖と側鎖を有する櫛型コポリマーを形成せず、代わりに、その場で形成されるマクロモノマーが重合中どの時点においても重合され得るという事実の結果、側鎖が次々と分枝し得る。米国特許第5,767,211号明細書は、二官能又は三官能モノマーと単官能モノマーからの、コバルト触媒の存在下CCTを用いることによる高度に分枝したポリマーの調製を記載している。
【0012】
欧州特許第1694790号明細書は、NMPにより調製されたモノエチレン性又はポリエチレン性不飽和モノマーのコポリマーのレベリング剤としての使用を記載している。
【0013】
特開2000−239334号公報は、α−メチルスチレン2量体及び多官能モノマーを用いた二段階工程における星型コポリマーの調製を記載している。
【0014】
国際特許出願第99/46301号は、分子量を低下させる連鎖移動化合物を用いる、単官能及び多官能エチレン性不飽和モノマーからの分枝ポリマーの調製を記載している。
【0015】
特開2008−247978号公報は、硬化バインダーマトリックス中に架橋させるためにエチレン性不飽和基をなお有する分枝ポリマーへの合成経路を示している。レベリング剤中のエチレン性不飽和基の存在は望ましくない。というのは、硬化バインダー中に架橋される結果として、これらはもはや空気との界面まで上昇できないためである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法において、下記成分:
(a)直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールの少なくとも1種のアクリル酸エステル10〜98.9モル%、
(b)少なくとも1種のポリエチレン性不飽和モノマー0.1〜10モル%、及び
(c)任意に、直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールのアクリル酸エステルと異なり且つ式(I)の化合物と異なるモノエチレン性不飽和モノマー、
を、以下の存在下で
(d)式(I)の少なくとも1種の化合物1〜10モル%:
3C−CRac−CH2−CRb=CH2 (I)
(式中、Ra及びRbは互いに独立して、アリール、CN又はCOOR1(R1=H、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、Rc=アルキル、アリール又はアラルキルである)、及び
少なくとも1種のフリーラジカル重合の開始剤の存在下で、フリーラジカル重合で反応させ、ここで成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の上記モル分率は合計で100モル%であり、及び成分(b)のモル分率は成分(d)のモル分率を超えない。
【0017】
成分(a)のモル分率は各々の場合において、用いられる成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に基づいて、好ましくは25〜98.8モル%、より好ましくは40〜98.8モル%である。
【0018】
成分(b)のモル分率は、用いられる成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に基づいて、好ましくは0.1〜5モル%である。
【0019】
成分(c)は任意にのみ存在し、すなわち、成分(c)のモル分率は、0モル%であってもよい。成分(c)のモル分率は、用いられる成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に基づいて、好ましくは0.1〜50モル%である。
【0020】
成分(d)のモル分率は、用いられる成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に基づいて、好ましくは1〜5モル%である。
【0021】
直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールの少なくとも1種のアクリル酸エステルを用いる。メタクリル酸のエステルを明確に除外する。アクリル酸をエステル化するのに用いられる直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールは、脂肪族、飽和及びモノヒドロキシ官能性であり、並びにヒドロキシル基を除いて、さらなる官能基を有しない。成分(a)の直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールのアクリル酸エステルの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、及びベヘニルアクリレートである。
【0022】
少なくとも1種のポリエチレン性不飽和モノマーを成分(b)として用いる。成分(b)のポリエチレン性不飽和モノマーは、2つ以上のエチレン性不飽和基、好ましくは2つ又は3つのエチレン性不飽和基、より好ましくは2つのエチレン性不飽和基を有する。多価不飽和モノマーの例は、ジビニルベンゼン、N,N’−ビスアクリロイル−1,2−ジアミノエタン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、又はアクリレート基若しくはメタクリレート基で官能基化されたポリジメチルシロキサンである。
【0023】
任意に、直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールのアクリル酸エステルと異なり且つ式(I)の化合物と異なる1種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを、成分(c)として用いる。成分(c)のモノマーの例(ここで「(メタ)アクリレート」という記載は、アクリレート及びメタクリレートを包含する)は以下:
1〜22個のC原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルコールのメタクリル酸エステル、例えば
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチル及びイソブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート;脂環式メタクリレート、例えばシクロヘキシルメタクリレート及びイソボルニルメタクリレート;アラルキル(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート;上記したアルキル,シクロアルキル又はアラルキル基を有するイタコン酸エステル及びマレイン酸エステルである。
【0024】
成分(c)の官能性モノマーとして、例えばヒドロキシ官能性又はカルボキシ官能性モノマーを用いることができ、例としては(メタ)アクリル酸及びカプロラクトンのモノエチレン性不飽和ポリエステルである。得られたヒドロキシ官能性のレベリング剤を、例えばアクリルメラミンホルムアルデヒド樹脂と架橋させるために、これらのヒドロキシ基の一部又は全てがイソシアネートと反応して第2級カルバメート基を形成することもでき、従って、全体の系の架橋において、レベリング剤が界面において自身を配向させ、そこでその効果を高め、そしてある程度の時間の後にメラミンホルムアルデヒド樹脂と反応する十分な時間が残る。
【0025】
成分(c)の官能性モノマーのさらなる例は以下:
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸;
2〜36個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は脂環式のジオールのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオールモノメタクリレート;
5〜80個のC原子を有するエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又は混合ポリエチレン/プロピレングリコールの(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリルメタクリレート、メトキシエトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシプロピルメタクリレート、1−メチル−(2−ビニルオキシ)エチルメタクリレート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、メトキシメトキシエチルメタクリレート、ベンジルオキシメチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、1−エトキシブチルメタクリレート、メトキシメチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート;
グリシドキシプロピルメタクリレート;
220〜1200g/モルの平均分子量を有するカプロラクトン及び/又はバレロラクトン修飾ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであって、ヒドロキシ(メタ)アクリレートが、好ましくは2〜8個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は脂環式のジオールに由来するもの;並びに
共重合に適する他のモノエチレン性不飽和モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、及びビニルエーテル、例えばエチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテルを包含する。
【0026】
コポリマーの表面張力を大幅に低下させるために、共重合において、アクリレート基若しくはメタクリレート基で官能基化されたパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート若しくはポリジメチルシロキサン、又はマレイン酸、無水マレイン酸若しくはフマル酸とのパーフルオロアルキルアルコールの反応生成物を少量含むことが有利である。
【0027】
上記したエチレン性不飽和モノマーは、所望のバインダー適合性に応じて、単独で重合しても組み合わせて重合してもよい。
【0028】
ポリアルコキシル化モノマーと、又は(メタ)アクリル酸と共重合させたポリマーを、水性バインダー系においてレベリング剤として使用することができる。酸性にした生成物の場合は、例えばトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン又はアミノメチルプロパノールのような適切なアミンを用いて使用前にそれらを塩化することが特に望ましい。
【0029】
式(I)の少なくとも1種の化合物を成分(d)として用いる:
3C−CRac−CH2−CRb=CH2 (I)
(式中Ra及びRbは互いに独立して、アリール,CN又はCOOR1(R1=H、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、Rc=アルキル、アリール又はアラルキルである)。
式(I)の化合物の例は、2,4−ジシアノペンタ−1−エン、2,4−ジシアノ−4−メチルペンタ−1−エン、2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン、2−シアノ−4−メチル−4−フェニルペンタ−1−エン、ジメチル2,2−ジメチル−4−メチレンペンタン−1,5−ジオエート及びジブチル2,2−ジメチル−4−メチレンペンタン−1,5−ジオエートである。化合物(d)においては、2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エンを用いることが好ましい。
【0030】
フリーラジカル重合によるランダムに分枝したポリマーの調製は、例えば過酸化物又はアゾ化合物のような少なくとも1種のフリーラジカル重合開始剤の存在下で、当業者に知られる方法で行われる。意図される溶媒は具体的には、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、又は酢酸1−メトキシ−2−プロピルのようなエステル、及び例えばトルエン又はキシレンのような芳香族溶媒、及び例えばメチルイソブチルケトン又はメチルエチルケトンのようなケトンを含む。溶媒又は溶媒混合物の選択は、本発明のポリマーのその後の意図される使用によっても左右される。本発明のポリマーが100%生成物として用いられることになる用途において、例えばUV硬化塗料系又はポリマーにおいて、溶媒の蒸留除去を促進するために、低沸点の溶媒を用いることが好ましい。
【0031】
フリーラジカル重合を、約40℃〜200℃、好ましくは60℃〜180℃、より好ましくは80℃〜160℃の温度で行う。
【0032】
フリーラジカル重合を、例えばバルク重合、溶液重合、沈殿重合、乳化重合又は懸濁重合として行うことができる。
【0033】
成分(a)、(b)、及び任意に(c)のモノマー、少なくとも1種の開始剤、及び成分(d)の化合物を一緒に量り入れるか、又は成分(d)の化合物を初めに仕込み、成分(a)、(b)、及び任意に(c)のモノマーの混合物及び少なくとも1種の開始剤を量り入れる一段階の方法にてポリマーを調製する。これによりランダムな構成を有するコポリマーを生成する。ランダムな構成とは、ブロック構成、グラフト構成、及び交互構成とは異なるモノマー単位の不規則でランダムな配列を特徴とするポリマーの構成を意味する。具体的には、分枝点がコポリマー中でランダムに分布している。従って、ランダムに分枝したコポリマーは一段階の方法にて形成される。
【0034】
本発明はさらに、上記方法により得られるランダムに分枝したコポリマーを提供する。
【0035】
本発明のコポリマーの数平均分子量は1500〜200000g/モル、好ましくは5000〜75000g/モルの範囲、より好ましくは7500〜50000g/モルの範囲にある。コポリマーの数平均分子量は、溶離剤としてテトラヒドロフラン(1mL/分)を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより、ポリスチレン標準物質を用いて測定する。
【0036】
続いてコポリマーを、ポリマー類似反応を用いて修飾することができる。例えば無水マレイン酸との続く反応を通じて、反応性の二重結合及び酸性官能基も取り込むことができる。この酸性官能基を、例えば水溶性向上のためにトリエタノールアミンにより塩化しても良い。本発明のポリマーがワニス中レベリング補助剤として用いられる場合に考えられ得る層間密着問題をより効果的に回避するために、例えば無水酢酸と後に反応させて遊離のOH基をエステル化することも可能である。
【0037】
コーティング材料中のレベリング剤としての上記コポリマーの使用を本発明によりさらに提供する。本発明はさらに、本発明のコポリマーを含むコーティング材料を提供する。本発明はさらに、本発明のコポリマーを含み、コーティング材料への添加を意図されるレベリング剤を提供する。これらの場合において、レベリング促進効果に加えて、レベリング剤はコーティング組成物の他の表面特性にも影響を与えてもよく、例えばコーティング材料の表面を疎水性、親水性、引掻耐性、抗接着性又は防汚性とするか、又はスリップ性(表面平滑性)を高める。
【0038】
コーティング材料は基材に塗布された際に保護性、装飾性及び/又は他の特定の性質を有するコーティングを形成する液体、ペースト又は粉末状生成物である。より具体的には、これらは塗料及びワニスである。コーティング材料の例は、とりわけ着色した及び無着色のワニスであって、有機溶媒及び/又は水を含んでいてもよく、又はこれらを含有しなくてもよい(粉末コーティング材料)。特に好ましくは、コーティング材料は粉末コーティング材料、即ち粉末形態のコーティング材料である。
【0039】
レベリング剤は、基材上でのコーティング材料の流動性を高める物質の溶液、エマルジョン、100%配合物又はその他の配合物である。本発明のレベリング剤は、本発明のコポリマーに加えて、特に有機溶媒、水、無機担体、保存料、及び乳化剤からなる群から選択される1種以上の添加剤も含んでよい。
【0040】
コーティング材料中でのレベリングを向上させるための上記コポリマーの使用に関して、コポリマーを、いずれの場合にも全コーティング材料に基づいて、0.01%〜5重量%、好ましくは0.05%〜2重量%、非常に好ましくは0.1%〜1重量%の比較的少量にてコーティング材料中で用いる。コーティング材料の性質及び塗布方法によって、コポリマーを溶液、エマルジョン、他の配合物又は100%物質であるレベリング剤の形態で用いることができる。溶剤含有ワニスにおいては、ワニス自体のものと同様の溶媒中で希釈されるレベリング剤を用いることが好ましい。放射線硬化系においては、レベリング剤を好ましくは対応するモノマーに希釈する。粉末コーティング材料においては、レベリング剤100%型、又は粉体担体材料に塗布されたレベリング剤の形態が好ましい。これらのレベリング剤を独国特許明細書19522475に従ってワックス溶融物中に取り込むこともでき、そのようにして、本発明のレベリング剤が粘稠で粘着性の樹脂を構成している場合は、自由流れの固体形態にする。粉末コーティングの変形例である水性粉末スラリーにおいては、レベリング剤を水性エマルジョンとして添加してよい。これらのエマルジョンは乳化剤を使用しながら従来技術に従って調製される。
【実施例】
【0041】
本発明のポリマーの調製
【0042】
(実施例1)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに100gのイソブタノールを入れる。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が110℃まで上昇した後、7.6gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、9.3gの2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン、151.6gのn−ブチルアクリレート、28.5gのアクリル酸、及び4.7gのトリプロピレングリコールジアクリレートの混合物を150分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。その後、0.5gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)を30分間隔で3回添加する。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。
その後、用いた溶媒をロータリーエバポレーターにて真空下での蒸留により除去する。固形分>98%である。
【0043】
(実施例2)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに100gのイソブタノールを入れる。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が110℃まで上昇した後、7.6gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、18.6gの2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン、151.6gのn−ブチルアクリレート、28.5gのアクリル酸、及び4.7gのトリプロピレングリコールジアクリレートの混合物を150分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。その後、0.5gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)を30分間隔で3回添加する。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。
その後、用いた溶媒をロータリーエバポレーターにて真空下での蒸留により除去する。固形分>98%である。
【0044】
(実施例3)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに5gの2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン及び41.6gの1−メトキシ−2−プロピルアセテートを入れる。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が120℃まで上昇した後、4gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、51.6gのn−ブチルアクリレート、及び1.6gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレートの混合物を120分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに120分間120℃に維持する。
固形分は60%である。
【0045】
(実施例4)
スターラー、温度計、分留塔、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに5gの2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン及び41.6gの1−メトキシ−2−プロピルアセテートを入れる。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が120℃まで上昇した後、4gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、25.8gのn−ブチルアクリレート、及び1.6gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレートの混合物を120分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに120分間120℃に維持する。
固形分は60%である。
【0046】
(実施例5)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに100gのイソブタノールを投入する。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が110℃まで上昇した後、)1.2gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル、3gの2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン、74.8gの2−エチルヘキシルアクリレート、103gのBISOMER(登録商標)MPEG550MA(数平均分子量628g/モルを有する Cognis から入手できるメタクリル酸のモノメチルポリエチレングリコールエステル)、2.25gのアクリル酸、及び0.6gのトリプロピレングリコールジアクリレートの混合物を180分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。その後、0.5gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)を30分間隔で3回添加する。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。
その後、用いた溶媒をロータリーエバポレーターにて真空下での蒸留により除去する。固形分>98%である。
【0047】
(実施例6)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに5gの2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン及び41.6gの1−メトキシ−2−プロピルアセテートを入れる。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が120℃まで上昇した後、4gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、51.6gのn−ブチルアクリレート、及び10gのジアクリレート官能基を有するポリジメチルシロキサンAB172305(製造元:ABCR、Mn=約1400g/モル)の混合物を120分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに120分間120℃に維持する。
固形分は60%である。
【0048】
比較例ポリマー
【0049】
(比較例1)(成分(b)及び(d)添加せず)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに100gのイソブタノールを投入する。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が110℃まで上昇した後、7.6gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、151.6gのn−ブチルアクリレート、及び28.5gのアクリル酸の混合物を150分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに270分間110℃に維持する。その後、0.5gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)を30分間隔で3回添加する。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。その後、用いた溶媒をロータリーエバポレーターにて真空下での蒸留により除去する。
固形分>98%である。
【0050】
(比較例2)(成分(d)添加、成分(b)添加せず)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに100gのイソブタノールを入れる。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が110℃まで上昇した後、7.6gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、9.3gの2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン、151.6gのn−ブチルアクリレート、及び28.5gのアクリル酸の混合物を150分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに270分間110℃に維持する。その後、0.5gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)を30分間隔で3回添加する。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。その後、用いた溶媒をロータリーエバポレーターにて真空下での蒸留により除去する。
固形分>98%である。
【0051】
(比較例3)(成分(b)及び(d)添加せず)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに119gのイソブタノールを投入する。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が110℃まで上昇した後、1.2gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、74.8gの2−エチルヘキシルアクリレート、103gのBISOMER(登録商標)MPEG550MA、及び2.25gのアクリル酸の混合物を180分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。その後、0.1gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)を30分間隔で3回添加する。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。その後、用いた溶媒をロータリーエバポレーターにて真空下での蒸留より除去する。
固形分>98%である。
【0052】
(比較例4)(成分(d)添加、成分(b)添加せず)
スターラー、温度計、還流コンデンサー、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えたガラスフラスコに118gのイソブタノールを入れる。反応中、内容物上に窒素を通過させる。反応温度が110℃まで上昇した後、1.2gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)、1.5gの2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エン、74.8gの2−エチルヘキシルアクリレート、103gのBISOMER(登録商標)MPEG550MA、及び2.25gのアクリル酸の混合物を180分にわたって均一な速度で計り入れる。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。その後、0.5gの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)を30分間隔で3回添加する。添加終了後、反応温度をさらに120分間110℃に維持する。
その後、使用した溶媒をロータリーエバポレーターにて真空下での蒸留により除去する。固形分>98%である。
【0053】
(比較例5)(直鎖ポリマー):Acronal 4F=ポリ−n−ブチルアクリレート、BASF、Ludwigshafen(DE)
【0054】
(比較例6)(櫛型コポリマー):EP 1 193 299 A2 の実施例10
【0055】
コーティング材料中でのレベリング剤としての使用
【0056】
1.水性ポリウレタン分散ワニス
Liopur 2004-119 34.70g ポリウレタン分散液、製造元:Synthopol
BYK425(水中10%) 0.30g レオロジー調節剤、製造元:Byk
水 6.65g
ブチルグリコール 5.95g
BYK-093 0.40g 消泡剤、製造元:Byk
Liocryl AS-680 52.00g スチレン−アクリレート分散液、
入手元:Synthopol
100.00g
【0057】
ワニスを調製し、レベリング剤(以下の表を参照)を溶解装置(1865rpm)を用いて3分間で取り込んだ。24時間ワニスを保存した後、以下の試験:密封した対比カード(Kontrastkarten)(チャート2813)へのブラシ塗布及び発泡及びレベリングの目視評価を行った。
【0058】
【表1】

【0059】
2.水性ポリアクリレート分散ワニス
【0060】
Joncryl 8226 89.70g 水性ポリアクリレートエマルジョン(BASF)
BYK-425(水中10%) 0.50g
Dowanol PnB 1.80g ブトキシプロパノール、製造元:Dow
Texanol 3.50g 融合助剤、製造元:Eastman
水 4.10g
BYK-028 0.40g 消泡剤、製造元:BykChemie
100.00g
【0061】
ワニスを調製し、レベリング剤(下記表参照)を溶解装置(1865rpm)を用いて3分間配合した。24時間ワニスを保存した後、以下の試験:密封した対比カード(Kontrastkarten)(チャート2813)へのブラシ塗布及び発泡及びレベリングの目視評価を行った。
【0062】
【表2】

【0063】
3.溶剤型
溶媒含有白色ポリエステル/メラミン焼付けワニス
【0064】
ミルベース
Uralac SN 831 16.7g ポリエステルバインダー、製造元:DSM
メトキシプロピルアセテート 5g
Disperbyk 174 0.9g 湿潤分散剤、製造元:Byk
Byk-057 0.5g 消泡剤、製造元:Byk
Aerosil R972 0.3g 溶融シリカ、製造元:Degussa
TI-pure R 960 30g 二酸化チタン、製造元:DuPont
【0065】
分散:Dispermat CV;20分;8000rpm;40°C;
ミルベース:ガラスビーズ1:1
【0066】
添加ワニス
Uralac SN 831 33.3g
Cymel 303 7.5g メラミン誘導体、製造元:Cytec
Dynapol Catalyst 1203 1.9g ブロックスルホン酸誘導体(Evonik)
Solvesso 150 2.1g 溶媒、製造元:ExxonMobil
ブチルジグリコールアセテート 1.8g
以下の表の通りコポリマー/レベリング剤0.3又は0.7g、各々レベリング剤の固形分に対して計算(即ち用いるレベリング剤の量を、0.3又は0.7gのコポリマーをそれぞれ含有するように選択した)。
【0067】
ミルベース及び添加ワニスを5分間混合均質化する。
【0068】
粘度はDIN4カップで100−120秒となるように Solvesso 150 を用いて調節した。
【0069】
24時間後ワニスを、ワイヤードクターを用いてプライマーをコートしたアルミニウムパネルに80μmのウエット膜厚で塗布し、232℃のPMT(ピーク金属温度)で30分間焼付けた。
【0070】
【表3】

【0071】
Byk Gardner 製の「ヘイズ−グロス」測定器を用いてグロスとヘイズを測定した。
【0072】
本発明のランダムに分枝したコポリマーを用いると、直鎖のレベリング剤構造(比較例3)と比べた場合のレベリングが向上するだけでなく、比較例よりも低い値であるヘイズ値で示されるとおり、ワニスとの適合性も向上することが可能であった。
【0073】
4.白色粉末コーティング材料の調製
【0074】
組成:
Uralac P5127 28.5g ポリエステル樹脂、DSM
DER 663 UE 28.5g エポキシ樹脂、Dow
Kronos 2160 28.5g ニ酸化チタン、Kronos
Blanc fixe 14.2g 硫酸バリウム、Sachtleben
ベンゾイン 0.3g DSM
レベリング剤 0.15g 以下の表の通り、各レベリング剤の固形分に対して計算
【0075】
実施例のレベリング剤をUralac P5127 中に10%マスターバッチとして加えた。これをUralac P5127 の初期質量の計算に入れた。すべての成分を一緒に量り、2000rpmで2.5分間高速ミキサー中で予備混合した。次に混合物を120℃で2軸押出し器において押出した。得られた小片を冷却し、破砕し、ピンディスクミル中で粉砕した。得られた粉末を100μmのふるいにかけた。
次に得られた粉末コーティング混合物をアルミパネル(サイズ:152mm×76mm、厚さ0.5mm)に静電塗装し、コーティングされたパネルを11分間190℃で硬化させた。
【0076】
結果:
膜厚: 80〜90μm 60〜70μm
レベリング剤:
比較例3 3 3
実施例3 1 2
実施例4 1 1
【0077】
形成された表面の評価:
1=クレーター無しの表面
2=僅かにクレーターを有する表面
3=一部は基板にまで達する明らかなクレーターを有する表面
【0078】
5.粉末クリアコート物質の調製
【0079】
組成:
Uralac P865 94.1g ポリエステル樹脂、DSM
Primid XL-552 4.9g ヒドロキシアルキルアミド架橋剤、EMS-Chemie
ベンゾイン 0.5g DSM
レベリング剤 0.5g
【0080】
実施例のレベリング剤を粉末コーティング樹脂中に10%マスターバッチとして加えた。これを樹脂の初期質量の計算に入れた。対応する粉末コーティング樹脂を溶融し、これをレベリング剤と混合することによりマスターバッチを作る。冷却後、マスターバッチ混合物を粉砕する。
【0081】
すべての成分を一緒に量り、1500rpmで2.5分間 Mixaco Lab CM3 高速ミキサー中で予備混合した。次に混合物を120℃で Prism TSE16 型2軸押出し器において押出した。得られた樹脂溶融物を冷却し、破砕し、Retsch ZM 100 ピンディスクミル中で粉砕した。得られた粉末を100μmのふるいにかけた。
【0082】
次に得られた粉末コーティング混合物をQ−パネルA−36型アルミパネルに静電塗装し、コーティングされたパネルを14分間180℃で強制エアオーブン中で硬化させた。
【0083】
得られた粉末コーティング表面の評価:
レベリングを、BYK-Gardner から入手したウエーブスキャンDOIを用いて、長波及び短波の測定により測定した。
【0084】
【表4】

【0085】
結果は、レベリング剤として本発明の重合体(実施例5)を用いた場合、より良好な結果が達成されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(a)直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールの少なくとも1種のアクリル酸エステル10〜98.9モル%、
(b)少なくとも1種のポリエチレン性不飽和モノマー0.1〜10モル%、及び
(c)任意に、直鎖、分枝鎖又は環状のC1−C22アルキルモノアルコールのアクリル酸エステルと異なりかつ式(I)の化合物とは異なる1種以上のモノエチレン性不飽和モノマー、
を、
(d)式(I):
3C−CRac−CH2−CRb=CH2 (I)
(式中、Ra及びRbは互いに独立してアリール、CN又はCOOR1(但しR1=H、アルキル、アリール又はアラルキル)、Rc=アルキル、アリール又はアラルキルである)の少なくとも1種の化合物1〜10モル%の存在下、及び少なくとも1種のフリーラジカル重合開始剤の存在下で、フリーラジカル重合において反応させ、ここで成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の前記モル分率は合計で100モル%になり、かつ成分(b)のモル分率は成分(d)のモル分率を超えないことを特徴とするランダムに分枝したコポリマーを調製する方法。
【請求項2】
前記成分(a)のモル分率が040〜98.8モル%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記成分(b)のモル分率が0.1〜5モル%であることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記成分(c)のモル分率が0.1〜50モル%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記成分(d)のモル分率が1〜5モル%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
2,4−ジフェニル−4−メチルペンタ−1−エンを成分(d)に用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法により調製できるランダムに分枝したコポリマー。
【請求項8】
前記コポリマーの数平均分子量が1500〜200000g/モル、好ましくは5000〜75000g/モル、より好ましくは7500〜50000g/モルであることを特徴とする請求項7記載のコポリマー。
【請求項9】
コーティング材料中のレベリング剤としての請求項7及び8のいずれかに記載のコポリマーの使用。
【請求項10】
前記コポリマーを、コーティング材料中、各々の場合において総コーティング材料に基づいて0.01%〜5重量%、好ましくは0.05%〜2重量%、より好ましくは0.1%〜1%重量の割合で用いることを特徴とする請求項9記載の使用。
【請求項11】
前記コーティング材料が粉末コーティング材料であることを特徴とする請求項9及び10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
請求項7及び8のいずれかに記載の少なくとも1種のコポリマーを含むコーティング材料。
【請求項13】
コーティング材料が粉末コーティング材料であることを特徴とする請求項12に記載のコーティング材料。
【請求項14】
請求項7及び8のいずれかに記載の少なくとも1種のコポリマーを含むコーティング材料のためのレベリング剤。

【公表番号】特表2013−502464(P2013−502464A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525058(P2012−525058)
【出願日】平成22年7月17日(2010.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004374
【国際公開番号】WO2011/020533
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】