説明

ランナー搬送装置

【課題】省スペースでの設置が可能であり、短時間間隔で連続してランナー80を搬送することが可能であり、また低コストのランナー搬送装置1を提供する。
【解決手段】射出成形機から排出されたランナー80を搬送するランナー搬送装置1であって、水平方向に対して交差する方向に延在するパイプ10と、パイプ10の軸方向下側から軸方向上側に向かってパイプ10の内側に空気を噴射するノズル30と、を備え、ノズル30は、パイプ10の下端から軸方向下側に所定距離を置いて配置され、ノズル30の軸方向上側にランナー80を導入するランナー導入部12を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機から排出されたランナーを搬送する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱溶融させた樹脂材料を金型内に射出注入し、冷却硬化させることで所望形状の樹脂製品を得る射出成形機が利用されている。樹脂材料はスプルーから金型内に入り、サブランナーおよびゲートを経てキャビティに注入される。キャビティ内で樹脂材料が冷却硬化して樹脂製品が成形される。射出成形後の金型から、キャビティ内で成形された樹脂製品を取り出すとともに、金型内のキャビティ以外の空間で樹脂材料が冷却硬化して成形されたランナーを排出する。排出されたランナーは粉砕機によって細かく粉砕され、粉砕材をペレットに配合して再利用される。
【0003】
射出成形機は、重力を利用しランナーを下方に落下させて排出する。また粉砕機は、重力を利用し粉砕材を下方に落下させて収集する。そのため、射出成形機の下方に配置されたランナー出口から、粉砕機の上方に配置されたランナー入口まで、ランナーを搬送する必要がある。
特許文献1には、ベルトコンベアによって粉砕機のランナー入口までランナーを搬送する技術が記載されている。
【0004】
また特許文献2には、ロボットによってランナーを搬送する技術が記載されている。
特に特許文献3には、取出ロボットが昇降動作および水平移動動作を行って金型間からスプール・ランナーを取り出し、さらに取出ロボットが水平移動、揺動および伸縮を行ってスプール・ランナーを粉砕機へ投入する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−314113号公報
【特許文献2】特開2002−18915号公報
【特許文献3】特開平7−304038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにベルトコンベアを利用する場合には以下の問題がある。一般にベルトコンベアは大きな傾斜角度で設置することができない。そのため小さな傾斜角度で設置すると、射出成形機と粉砕機との距離が長くなり、広い設置スペースが必要になる。また射出成形機の故障時に、金型から脱落した金属部品や金型から漏出した熱媒体が、ランナー出口から排出される場合がある。この場合にベルトコンベアは、金属部品や熱媒体等の異物を粉砕機に搬送してしまう。金属部品は粉砕機内のカッターを破損させる原因となり、熱媒体は粉砕材を変質させる原因となる。
【0007】
一方、特許文献2および3のようにロボットを利用する場合には以下の問題がある。一般にロボットは動作スピードが遅いので、短時間間隔で連続してランナーを搬送するのが困難である。そのため、射出成形機の高速ショットに対応できず、生産効率の向上に限界がある。また、一般にロボットは高コストである。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、省スペースでの設置が可能であり、短時間間隔で連続してランナーを搬送することが可能であり、また低コストのランナー搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明のランナー搬送装置は、射出成形機から排出されたランナーを搬送する装置であって、水平方向に対して交差する方向に延在するパイプと、前記パイプの上端部に形成されたランナー排出口と、前記パイプの軸方向下側から前記軸方向上側に向かって前記パイプの内側に空気を噴射するノズルと、を備え、前記ノズルは、前記パイプの下端から前記軸方向下側に所定距離を置いて配置され、前記ノズルの前記軸方向上側に前記ランナーを導入するランナー導入部を備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、パイプの下端から軸方向下側に所定距離を置いてノズルが配置されているので、ノズルからの噴射流は、パイプの外側から空気を引き込み、パイプの内側へ入り込む外気流を発生させる。これにより、パイプの内側における径方向および周方向の全領域に、軸方向下側から軸方向上側に向かう空気流を発生させることができる。したがって、パイプの軸方向下側から上端部のランナー排出口に向かって、ランナーを確実に搬送することができる。
特に、パイプを鉛直に近い傾斜角度で配置した場合でも、ランナーを確実に搬送できるので、省スペースでの設置が可能である。また、ノズルから噴射した空気により、短時間間隔で連続してランナーを搬送することができる。さらに、ランナー搬送装置の構造を簡略化できるので、低コストのランナー搬送装置を提供することができる。
【0011】
また、前記パイプ下端の開口部を覆うメッシュ部材を備えていることが望ましい。
この構成によれば、仮にパイプ内側の空気流に乱れが生じて、ランナーが軸方向下側に落下した場合でも、落下したランナーをメッシュ部材で捕捉することができる。
【0012】
また前記メッシュ部材は、前記パイプ下端の開口縁部から前記ノズルに向かって先細り形状に形成されていることが望ましい。
この構成によれば、仮にパイプ内側の空気流に乱れが生じて、ランナーが軸方向下側に落下した場合でも、落下したランナーはノズルの目前でメッシュ部材に捕捉される。そのため、次にノズルが空気を噴射したときには、噴射された空気が捕捉されたランナーに対して確実に当たり、ランナーを軸方向上側に搬送することができる。
【0013】
また複数の前記ノズルが、前記パイプとの同心円上に、周方向等間隔で配置されていることが望ましい。
この構成によれば、パイプの内側における径方向および周方向の全領域にムラなく、軸方向下側から軸方向上側に向かう空気流を発生させることができる。したがって、ランナーを確実に搬送することができる。
【0014】
また前記パイプは、透明材料で形成されていることが望ましい。
この構成によれば、パイプの内側におけるランナーの搬送状態を確認することができる。
【0015】
また前記パイプ上端に、前記ランナーの搬送方向を変換する案内部材を備えていてもよく、前記ランナー排出口は、前記案内部材に設けられていてもよい。
この構成によれば、ランナー搬送装置から粉砕機に向かってランナーの搬送方向を変換することで、粉砕機に対して確実にランナーを排出することができる。
【0016】
前記案内部材には、前記ランナー排出口の他に、前記案内部材の内側を流通する空気を外側に放出する吹き抜け穴が形成されていることが望ましい。
この構成によれば、パイプから案内部材に流入し、案内部材で反射した空気は、吹き抜け穴から外側に放出されるので、パイプに逆流しない。したがって、ランナーの搬送を妨害することなく、ランナーを確実に搬送することができる。
【0017】
また、前記ランナー導入部に前記ランナーが導入されることを検出するセンサと、前記センサにより前記ランナーの導入を検出したときに、前記ノズルに空気を噴射させる制御部と、を備えることが望ましい。
この構成によれば、ランナーの搬送時のみノズルから空気を噴射することができる。したがって、騒音を抑制することができ、また消費エネルギーを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のランナー搬送装置によれば、パイプの下端から軸方向下側に所定距離を置いてノズルが配置されているので、ノズルからの噴射流は、パイプの外側から空気を引き込み、パイプの内側へ入り込む外気流を発生させる。これにより、パイプの内側における径方向および周方向の全領域に、軸方向下側から軸方向上側に向かう空気流を発生させることができる。したがって、パイプの軸方向下側から上端部のランナー排出口に向かって、ランナーを確実に搬送することができる。
特に、パイプを鉛直に近い傾斜角度で配置した場合でも、ランナーを確実に搬送できるので、省スペースでの設置が可能である。また、ノズルから噴射した空気により、短時間間隔で連続してランナーを搬送することができる。さらに、ランナー搬送装置の構造を簡略化することが可能であり、低コストのランナー搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ランナー搬送装置の側面図である。
【図2】パイプの下端部周辺の拡大図であり、図3のB−B線における側面断面図である。
【図3】図2のA−A線における平面断面図である。
【図4】案内部材の変形例の説明図であり、図3のB−B線に相当する部分における側面断面図である。
【図5】ランナーおよび時計用歯車の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、ランナー搬送装置の側面図である。ランナー搬送装置1は、射出成形機2と粉砕機6との間に配置されている。
【0021】
(射出成形機)
本実施形態では、樹脂材料により時計用歯車90(図5参照)を成形する射出成形機2を例にして説明する。図1に示す射出成形機2は、金型を備えている。金型の表面には、加熱溶融した樹脂材料を注入するスプルーが形成されている。金型の内部には、時計用歯車形状の複数のキャビティが形成されている。各キャビティに対応して、加熱溶融した樹脂材料を一時貯留するサブキャビティが形成されている。そして、サブキャビティからキャビティに樹脂材料を注入するゲートが形成されている。一方、スプルーからサブキャビティまで樹脂材料を導くサブランナーが形成されている。なお金型の内部には、金型の温度を調節するための熱媒体(温水)が流通する熱媒体流路が形成されている。
【0022】
射出成形を行うには、加熱溶融した熱可塑性樹脂材料を、スプルーから金型内に注入する。樹脂材料は、サブランナー、サブキャビティおよびゲートを通り、キャビティ内に注入される。金型は、熱媒体流路を流通する熱媒体によって、熱可塑性樹脂の硬化温度以下の温度に保持されている。そのため、樹脂材料がキャビティ内で冷却硬化し、時計用歯車が成形される。成形後には金型を開いて、キャビティ内で成形された時計用歯車を取出すとともに、金型内のキャビティ以外の空間で樹脂材料が冷却硬化して成形されたランナーを排出する。射出成形機2では、重力を利用しランナーを落下させて排出する。そのため、射出成形機2の下方にランナー出口4が設けられている
【0023】
図5は、ランナーおよび時計用歯車の斜視図である。本願では、金型内の各空間で成形された物体の名称を、金型内の各空間の名称に一致させて使用する。そして、スプルー82、サブランナー84、サブキャビティ86およびゲート88の全体を、ランナー80と称する。ランナー80は、中央のスプルー82から2本の第1サブランナー84aが枝分かれし、さらに各第1サブランナーの先端が2本の第2サブランナー84bに枝分かれしている。これにより、サブランナー84はH字状に形成されている。そして、各第2サブランナー84bの先端にサブキャビティ86が形成され、各サブキャビティ86から3本のゲート88が延設されている。この3本のゲート88の先端において、時計用歯車90が成形される。
【0024】
図5に示すように、微小部品である時計用歯車90に比べて、ランナー80は非常に大きく、樹脂材料の利用効率が低い。そのため、ランナー80の樹脂材料を粉砕機にかけて再利用する。
【0025】
(粉砕機)
図1に戻り、粉砕機6は、上方に配置された投入部と、下方に配置された本体部とを備えている。投入部は漏斗状に形成され、上端開口部がランナー入口となっている。本体部の内側には、ロータリーカッター等の粉砕手段が設けられている。粉砕手段の下方には、粉砕材の収集部が設けられている。
ランナー入口から投入されたランナーは、投入部の内側を落下して本体部のロータリーカッターに案内される。ロータリーカッターは、ランナーを粉砕して粉砕材を生成する。生成された粉砕材は収集部に落下する。この粉砕材は、樹脂材料のペレットに配合されて再利用される。
【0026】
図1に示すように、射出成形機2の下方にランナー出口4が配置され、粉砕機6の上方にランナー入口8が配置されている。そのため、ランナー搬送装置1を利用して、ランナー出口4からランナー入口8までランナーを搬送する。
【0027】
(ランナー搬送装置)
図1に示すように、本実施形態に係るランナー搬送装置1は、水平方向に対して交差する方向に延在するパイプ10と、パイプ10の上端部に配置されランナーの搬送方向を変換する案内部材16と、パイプ10の軸方向下側から軸方向上側に向かってパイプ10の内側に空気を噴射するノズル30と、ノズル30の前記軸方向上側にランナーを導入するランナー導入部12と、を備えている。本実施形態では、特に断わらない限り、パイプ10の軸方向を単に「軸方向」と呼び、パイプ10の径方向を単に「径方向」と呼び、パイプ10の周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0028】
ランナー搬送装置1は、支持部材50によって支持されている。支持部材50は、フロア上に配置されるベース板52と、ベース板52から立設された一対の支柱54と、を備えている、一対の支柱54の間にパイプ10が配置され、一対の支柱54の上端にパイプ支持部56が形成されている。パイプ支持部56は、パイプ10の軸方向中央部を支持している。このパイプ支持部56を中心に、パイプ10の傾斜角度を変更することができる。
【0029】
パイプ10は、アクリル樹脂等の透明材料により、円筒状に形成されている。パイプ10の内径は、ランナーの外形より大きく形成されている。パイプ10の長さは、射出成形機2のランナー出口4から粉砕機6のランナー入口8までの高さより長くなっている。パイプ10は、水平方向に対して交差する方向に延在している。本実施形態のパイプ10は、例えば80°程度の大きな傾斜角度で配置されているが、パイプ10は鉛直方向に延在していてもよい。
【0030】
案内部材16は、円筒をU字状に湾曲させた形状に形成されている。湾曲部分の曲率半径を大きくすることで、案内部材16の中心軸に沿ってランナーを円滑に案内することができる。案内部材16の一方の開口部は、パイプ10の上端開口部に対して外挿等により連結されている。案内部材16の他方の開口部はランナー排出口18になっている。
案内部材16は、ランナーの搬送方向を、軸方向から、軸方向に対して交差する方向に変換するものである。本実施形態の案内部材16は、ランナーの搬送方向を、軸方向である斜め上方から、粉砕機6のランナー入口8に向かう斜め下方に変換している。
【0031】
図2はパイプの下端部周辺の拡大図であり、図3のB−B線における側面断面図である。
図2に示すように、ノズル30は、圧縮空気を噴射するエアノズルである。ノズル30は、バルブ31を介して、高圧空気配管に接続されている。一般に工場内には高圧空気配管が張り巡らされているので、その高圧空気配管に接続することで圧縮空気を安価に得ることができる。なお、ノズル30は空気圧縮機(エアコンプレッサ)に接続されていてもよい。ノズル30は軸方向下側に軸方向に沿って配置され、その噴射口はパイプ10の内側を向いている。これによりノズル30は、パイプ10の軸方向下側から軸方向上側に向かって、パイプ10の内側に空気を噴射する。
【0032】
本実施形態のランナー搬送装置は、複数のノズル30を備えている。
図3は、図2のA−A線における平面断面図である。
図3に示すように、複数のノズル30は、パイプ10との同心円C上に、周方向等間隔で配置されている。本実施形態では、パイプ10の中心軸上(半径がゼロの同心円上)に1個のノズル30が配置されるとともに、同心円C上に4個のノズル30が90°の等間隔で配置されている。すなわち、複数のノズル30が+字状に配置されている。
【0033】
図2に戻り、パイプ10の下端部には、ノズル固定機構が設けられている。具体的には、パイプ10の下端開口部の外周に、第1リング部材22が固定されている。第1リング部材22の軸方向下側に、第2リング部材24が配置されている。パイプ10の直径方向の一方端部では、第1リング部材22および第2リング部材24がヒンジ23により結合されている。直径方向の他方端部には、第2リング部材24を第1リング部材22に係止する係止爪26が設けられている。
【0034】
第2リング部材24から軸方向下側に離間して、ノズル支持板32が配置されている。ノズル支持板32には、上述した複数のノズル30が固定されている。ノズル支持板32は、所定高さのカラー34を挟んで、第2リング部材24に固定されている。これにより、本実施形態のノズル30は、パイプ10の下端から軸方向下側に所定距離を置いて配置されている。
【0035】
本実施形態のランナー搬送装置は、パイプ10の下端開口部を覆うメッシュ部材20を備えている。メッシュ部材20は金網等で構成され、網目の大きさは、搬送物であるランナーの外形よりも小さくなっている。メッシュ部材20は、パイプ10の下端開口縁部からノズル30に向かって先細り形状に形成されている。すなわちメッシュ部材20は、半長球状や半球状、半扁球状、円錐状等に形成されている。メッシュ部材の基端開口縁部は、パイプ10の下端開口縁部と連続するように、第2リング部材24に固定されている。メッシュ部材20の先端部には、上述したノズル30が配置されている。ノズル30の先端は、メッシュ部材20を貫通してメッシュ部材20の内側に配置されている。
【0036】
ランナー導入部12は、パイプ10の側壁に開口した窓部13と、射出成形機のランナー出口4から排出されたランナーを窓部13に案内するガイド部14と、を備えている。
窓部13は、パイプ10の下端より軸方向上側の位置に開口している。軸方向に沿った窓部13の高さおよび周方向に沿った窓部13の幅は、ともにランナー80の外形より大きくなっている。
【0037】
ガイド部14は、窓部13の下縁部から開口方向外側に伸びる第1舌片部14aと、窓部13の側縁部から開口方向外側に伸びる第2舌片部14bと、を備えている。第1舌片部14aの先端は、射出成形機のランナー出口4に向けて屈曲している。図3に示すように、第1舌片部14aは一定幅で形成されている。第1舌片部14aと、その幅方向両側に配置された第2舌片部14bとは、隙間なく連結されている。
【0038】
図2に示すように、射出成形機のランナー出口4には、ランナー80の通過を検出して検出信号を出力するセンサ5が配置されている。センサ5として、光電センサ等を採用することができる。センサ5は、ランナー80の通過を検出することで、ランナー出口4からランナー80が排出され、ランナー導入部12にランナー80が導入されることを検知するものである。なお、センサ5はランナー導入部12に配置してもよい。
【0039】
センサ5およびバルブ31は、制御部38に接続されている。制御部38は、センサ5から検出信号が入力されると、バルブ31に開弁信号を出力する。また制御部38は、開弁信号の出力開始から所定時間の経過後に、開弁信号の出力を停止(または閉弁信号を出力)する。この所定時間は、ランナー80の搬送に要する時間を少し上回る時間に設定されている。
【0040】
(ランナー搬送装置の使用方法)
次に、上述したランナー搬送装置の使用方法につき、図2を用いて説明する。
射出成形機で射出成形が行われた後、ランナー出口4からランナー80が排出される。ランナー80は、射出成形機のランナー出口4からランナー搬送装置1のランナー導入部12に受け渡され、両者の傾斜面上を矢印80aに沿って落下する。そして、窓部13を通ってパイプ10の内側に進入する。
【0041】
センサ5は、ランナー導入部12にランナー80が導入されることを検出して、制御部38に検出信号を出力する。制御部38は、センサ5から検出信号が入力されると、バルブ31に開弁信号を出力する。バルブ31は、制御部38から開弁信号が入力されると開弁する。これにより、高圧空気配管からノズル30に圧縮空気が供給され、ノズル30は圧縮空気を噴射する。すなわち制御部38は、センサ5によりランナー80の導入を検出したときに、ノズル30に空気を噴射させる。一方、ノズル30の噴射開始から所定時間が経過し、ランナー80の搬送が終了した後に、制御部38は開弁信号の出力を停止する。バルブ31は開弁信号の入力が停止すると閉弁し、ノズル30は圧縮空気の噴射を停止する。このように、ランナー80の搬送時のみにノズル30から空気を噴射するので、騒音を抑制することができ、また消費エネルギーを低減することができる。
【0042】
ノズル30は、矢印40で示すように、軸方向下側から軸方向上側に向かって、パイプ10の内側に空気を噴射する。特に本実施形態では、複数のノズル30がパイプ10との同心円上に周方向等間隔で配置されているので、パイプ10の内側における径方向および周方向の広い領域に、軸方向下側から軸方向上側に向かう空気流を発生させることができる。ここで、ノズル30はパイプ10の下端から軸方向下側に所定距離を置いて配置されている。そのため、ノズル30からの噴射流40は、パイプ10の外側の空気を引き込み、パイプ10の内側に入り込む外気流42を発生させる。また、パイプ10の下端開口部を覆うメッシュ部材20は空気を透過するので、噴射流40とともに外気流42がパイプ10の内側に流入する。これにより、パイプ10の内側における径方向および周方向の全領域にムラなく、軸方向下側から軸方向上側に向かう空気流を発生させることができる。
【0043】
本願の発明者は、当初パイプ10の下端と同じ位置に複数のノズル30を配置したランナー搬送装置を試作した。このランナー搬送装置でランナー搬送試験を行ったところ、軸方向上側に浮上せず軸方向下側に落下するランナーが多く発生した。このランナー搬送装置では、ノズル30がパイプ10の内部において空気を噴射するため、ノズル30からの噴射流40は、パイプ10の外側の空気を引き込むことができず、パイプ10の外側から内側に入り込む外気流42が発生しない。そのため、パイプ10の内側における径方向および周方向に空気流のムラが発生して、ランナーの搬送に失敗したものと考えられる。これに対して、本実施形態のランナー搬送装置では、噴射流40とともに外気流42がパイプ10の内側に流入する。これにより、パイプ10の内側における径方向および周方向の全領域に、ムラのない空気流を発生させることができる。したがって、ランナーを確実に搬送することができる。
【0044】
パイプ10の内側に進入したランナー80は、軸方向下側から軸方向上側に向かう空気流を受ける。比重が小さい樹脂材料からなるランナー80は軽いので、空気流によって軸方向上側に搬送される。なお、パイプ10は透明材料で形成されているので、パイプ10の内側におけるランナー80の搬送状態を確認することができる。
仮に、パイプ10の内側の空気流に乱れが生じて、ランナー80が軸方向下側に落下した場合でも、ランナー80はパイプ10の下端開口部を覆うメッシュ部材20に捕捉される。特に、メッシュ部材20はノズル30に向かって先細り形状に形成されているので、落下したランナー80はノズル30の目前でメッシュ部材20に捕捉される。そのため、次にノズル30が圧縮空気を噴射したときには、捕捉されたランナー80に対して噴射流40が確実に当たり、ランナー80を軸方向上側に搬送することができる。
【0045】
ところで、射出成形機の故障時に、金型から脱落した金属部品や金型から漏出した熱媒体が、ランナー出口から排出され、ランナー搬送装置に導入される場合がある。本実施形態のランナー搬送装置では、比重が大きい材料からなる金属部品や熱媒体は、空気流によって軸方向上側に搬送されず、軸方向下側に落下する。そして、金属部品はメッシュ部材20に捕捉され、熱媒体はメッシュ部材20からパイプ10の外側に排出される。したがって、金属部品や熱媒体等の異物が粉砕機に投入されるのを防止することができる。
なお、ノズル固定機構の係止爪26を開けば、ヒンジ23を支点にして第2リング部材24が回動し、メッシュ部材20の内側が露出する。この状態で、メッシュ部材20に捕捉された金属部品を回収することができる。
【0046】
図1に示すように、空気流によって軸方向上側に搬送されたランナーは、パイプ10の上端に装着された案内部材16に進入する。案内部材16により、ランナーの搬送方向が、軸方向(斜め上方)から、粉砕機6のランナー入口8の方向(斜め下方)に変換される。そしてランナーは、案内部材16のランナー排出口18から排出され、粉砕機6のランナー入口8に投入される。
【0047】
図4は案内部材の変形例の説明図であり、図3のB−B線に相当する部分における側面断面図である。
図1に示す案内部材16は、円筒をU字状に湾曲させた形状に形成されていたが、図4に示す案内部材60は、平板を組み合わせて形成されている点で異なっている。
【0048】
案内部材60は、パイプ10の軸方向上側に反射板61を備えている。案内部材60は、ランナーの搬送方向を、パイプ10の軸方向上側(斜め上方)に対して約90°の方向(斜め下方)に変換する。そのため、反射板61は軸方向に対して約45°の角度で交差するように配置されている。反射板61とパイプ10の上端開口部との間には吹き抜け穴64が設けられている。吹き抜け穴64は、案内部材60の内側を流通する空気を外側に放出するものである。なお吹き抜け穴64は、案内部材60の他の部分に設けられていてもよい。
【0049】
パイプ10から案内部材60に進入した空気流70が反射板61に当たると、空気流70の大半の第1分流72はランナー排出口62に向かって反射するが、残りの第2分流はランナー排出口62の逆方向に回り込む。第2分流78がパイプ10に逆流すると、パイプ10におけるランナーの搬送を妨害することになる。これに対して、案内部材60は吹き抜け穴64を備えているので、第2分流74は吹き抜け穴64から外部に放出され、パイプ10に逆流しない。したがって、ランナーを確実に搬送することができる。
【0050】
以上に詳述したように、図2に示す本実施形態のランナー搬送装置1は、水平方向に対して交差する方向に延在するパイプ10と、パイプ10の軸方向下側から軸方向上側に向かってパイプ10の内側に空気を噴射するノズル30と、を備え、ノズル30は、パイプ10の下端から軸方向下側に所定距離を置いて配置され、ノズル30の軸方向上側にランナー80を導入するランナー導入部12を備えている構成とした。
【0051】
この構成によれば、パイプ10の下端から軸方向下側に所定距離を置いてノズル30が配置されているので、ノズル30からの噴射流40は、パイプ10の外側から空気を引き込み、パイプ10の内側へ入り込む外気流42を発生させる。これにより、パイプ10の内側における径方向および周方向の全領域に、軸方向下側から軸方向上側に向かう空気流を発生させることができる。したがって、パイプ10の軸方向下側から上端部のランナー排出口18に向かって、ランナー80を確実に搬送することができる。
【0052】
特に、パイプ10を鉛直に近い傾斜角度で配置した場合でも、ランナー80を確実に搬送できるので、省スペースでの設置が可能である。また、ノズル30から噴射した空気により、短時間間隔で連続してランナー80を搬送することができる。そのため、射出成形機で高速ショットを行う場合でも、短時間間隔で連続して排出されるランナー80を搬送することが可能であり、生産効率の向上に寄与することができる。さらに、ランナー搬送装置1の構造を簡略化できるので、低コストのランナー搬送装置1を提供することができる。
【0053】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、実施形態ではパイプ10の側壁に窓部13を設けてパイプ10の内側にランナーを導入したが、メッシュ部材20に窓部を設けてパイプ10とノズル30との間にランナーを導入してもよい。
【0054】
また、実施形態ではパイプ10の側壁に1個の窓部13を設けたが、周方向に等間隔で複数の窓部13を設けてもよい。これにより、窓部13からパイプ10の内側に流入する外気流を、周方向に均等に発生させることができる。したがって、パイプ10の内側における空気流を、径方向および周方向に均一化することができる。
また、実施形態の窓部13は常に開かれていたが、ランナー導入時のみ開くようにしてもよい。この場合には、窓部13からの外気流の流入が少なくなるので、パイプ10の内側における空気流を、径方向および周方向に均一化することができる。
【0055】
また、実施形態ではパイプ10の傾斜角度が変更可能であったが、これに加えてパイプ10の長さを変更可能とすることが望ましい。これにより、射出成形機および粉砕機のあらゆるレイアウトに対応することが可能であり、汎用性を高めることができる。
なおパイプ10の中心軸を含む面でパイプ10を分割できるようにするか、または開閉可能な複数の窓部を軸方向に並べて配置することが望ましい。これにより、パイプ10のメンテナンス性が向上し、仮にパイプ10の内側にランナー80がつまった場合でも、ランナー80を簡単に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0056】
C…同心円 1…ランナー搬送装置 2…射出成形機 5…センサ 10…パイプ 12…ランナー導入部 16…案内部材 18…ランナー排出口 20…メッシュ部材 30…ノズル 38…制御部 60…案内部材 62…ランナー排出口 64…吹き抜け穴 80…ランナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機から排出されたランナーを搬送する装置であって、
水平方向に対して交差する方向に延在するパイプと、
前記パイプの上端部に形成されたランナー排出口と、
前記パイプの軸方向下側から前記軸方向上側に向かって前記パイプの内側に空気を噴射するノズルと、を備え、
前記ノズルは、前記パイプの下端から前記軸方向下側に所定距離を置いて配置され、
前記ノズルの前記軸方向上側に前記ランナーを導入するランナー導入部を備えていることを特徴とするランナー搬送装置。
【請求項2】
前記パイプ下端の開口部を覆うメッシュ部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のランナー搬送装置。
【請求項3】
前記メッシュ部材は、前記パイプ下端の開口縁部から前記ノズルに向かって先細り形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のランナー搬送装置。
【請求項4】
複数の前記ノズルが、前記パイプとの同心円上に、周方向等間隔で配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のランナー搬送装置。
【請求項5】
前記パイプは、透明材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のランナー搬送装置。
【請求項6】
前記パイプ上端に、前記ランナーの搬送方向を変換する案内部材を備え、
前記ランナー排出口は、前記案内部材に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のランナー搬送装置。
【請求項7】
前記案内部材には、前記ランナー排出口の他に、前記案内部材の内側を流通する空気を外側に放出する吹き抜け穴が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のランナー搬送装置。
【請求項8】
前記ランナー導入部に前記ランナーが導入されることを検出するセンサと、
前記センサにより前記ランナーの導入を検出したときに、前記ノズルに空気を噴射させる制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のランナー搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171235(P2012−171235A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36000(P2011−36000)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(305018823)盛岡セイコー工業株式会社 (51)
【Fターム(参考)】