説明

ランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの製造方法

【課題】従来の如く大型の設備が不要であり、また塗料が飛散することがなく而も製造作業が能率良く行え、また色調合わせも不要で、その上剥がれることなく透光性樹脂フィルムがカバー本体の外面に強固に結合することにより、カバーの本体の耐候性や耐衝撃性を向上させることができるようにする。
【解決手段】先ず、成形可能な透光性樹脂フィルムを所定の大きさに切断する。次に透光性樹脂フィルムの表面又は裏面に印刷により所定の着色を施す。次に透光性樹脂フィルムを車輛用有色透光性カバーの本体の外形形状に合わせて立体形状に成形する。次にインサート成形用金型3におけるキャビティー4内に立体形状に成形した透光性樹脂フィルム1をインサートした状態において金型3内に溶融した樹脂を注入し、車輛用有色透光性カバーの本体2を成形すると同時に該溶融した樹脂の溶着作用によって該車輛用有色透光性カバーの本体2の外面に透光性樹脂フィルム1を積層一体化するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輛にはリアコンビネーションランプ等の各種のランプが装備されており、そして各ランプはアウターレンズ等と称される着色されたランプカバーで覆われている。
【0003】
そして、斯かる着色されたランプカバー、特にリアコンビネーションランプの如き多色のランプカバーは、従来にあっては主に次の三通りの方法によって製造されていた。
【0004】
第1の方法は、先ずランプカバーを構成する各色毎のパーツを別々に成形し、各パーツを一体的にくみたてるものである。そして光漏れ等の遮蔽については、一体化したランプカバーの裏面より塗装にて処理するものである。
【0005】
第2の方法は、射出成形用金型のキャビティに所定の色の樹脂を注入してランプカバーの一部のパーツを成形し、次に成形機内を清掃した後、前記と異なるインサート成形用金型のキャビティー内に前記成形したパーツをインサートした状態において、最初とは異なる色の樹脂を注入し、前記第1のパーツと一体化した第2のパーツを成形し、次に該金型のキャビティーを清掃した後、該キャビティー内に前記成形した第1、第2のパーツをインサートした状態において既に成形したものとは異なる色の樹脂を注入し、前記第1、第2のパーツと一体化した第3のパーツを成形し、これらの作業を順次繰り返すことによって所定の色のランプカバーを製造するものである。
【0006】
第3の方法は、ロールTOロール方式により行うものであり、一本の連続した長いフィルムの一方の面に所定の間隔で所定の色のインクを付着させ、該フィルムを送り出しロールから間欠的に巻取りリールに送り出し、両ロール間において所定のタイミングでランプカバー本体の外面に該フィルムに付着させたインクを転着する方法である。
【0007】
しかし、これらの従来の方法による場合には、次の如き問題点がある。即ち第1の方法による場合には、塗装時に塗料が飛散して周囲を汚したり、塗料が無駄になるという問題点がある。また、塗料が剥落し易いという問題点やランプカバーの本体の外面の保護に役立たないといった問題点もある。
【0008】
また、第2の方法によると、色が異なるパーツを作る毎に成形作業が必要であって、製造工程が多いことと、ランプカバーの各パーツを前の成形済みのパーツと順次一体化しつつ成形するが、各パーツ成形毎に成形機内の清掃や金型のキャビティー内を清掃する手間と余分な時間がかかり、作業能率が悪いということと、次のパーツを成形する際に前のパーツを金型のキャビティー内に入れるが、このときにヒビ割れを起こす虞があることと、更に各パーツを順次成形する際に、既に成形済みのパーツの一方の端面に溶融した樹脂を注入して硬化させるが、各パーツの端面は肉が薄いために相互の接合度が弱く、よってこの部分において衝撃に弱く、且つまた各パーツの素材として光透過性の良い樹脂を選択すること等の条件により割れ易い素材を選択せざるを得ないことから、ランプカバーは全体的に高い強度を得られず、もって自動車が追突されたりしたときには全体がバラバラになって道路上に飛散するといった問題が起こる虞があることと、各パーツの接合部分に僅かな隙間が生じる虞があり、この場合には内部に水が浸入するといった問題があることである。そしてまた、このように内部への水の浸入に対処するために、最後にランプカバーの裏面に各パーツの接合部分の隙間を埋めるための材料を塗布する必要があり、そしてこの場合には塗布する材料の必要部分以外への付着を防ぐためにマスキングテープを貼着する等の余分な手間と時間がかかることになる。
【0009】
また、第3の方法によると、長いフィルムを用いるものであるから、ロールも大きくなって設備が大型化することと、フィルムに付着させたインクをランプカバー本体の外面に転着させるときにおいて、色が所定の位置に正確に転着するようにタイミングを合わせなければならず、この作業に手間取るということと、前処理の段階でフィルムにインクを付着させるとき、インクが所定の色になるまで繰り返しインクの調合を変えて色調合わせを行うが、フィルムへのインクの付着は、一本の長いフィルムを送りながら連続してインク壺の中をくぐらせて行われるため、色の具合を確かめる都度相当量のフィルムが無駄になり、またこれに伴なって余分なインクも必要となり、コストがかかるという点である。そしてまた、斯かる第3の方法による場合にも、ランプカバー本体の素材として光透過性の良い材料を選択する必要があることから割れ易い素材を使用せざるを得ず、且つまたランプカバー本体の外面にはインキが転着するだけであって衝撃に対する補強にはならないから、ランプカバーが高い強度を得られず、したがって、自動車が追突されたりしたときには全体がバラバラになって道路上に飛散するといった問題が起こる虞がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、各車輛用有色透光性カバーよりやや大きい大きさにフィルムを切断し、これに印刷によって着色を施すことにより従来のロールTOロール方式の如き大型の設備を不要とし、また、色調合わせについても、色の具合をみるときに各色毎に1〜2枚のフィルムを使用するのみで済むと共に無駄なインクも少なくて済み、また印刷によって着色を施すことにより、従来の成形による場合の如く塗料が飛散することがなく、また従来の如く色数に応じて何回も成形を繰り返すことなく1回のインサート成形のみで済み、また従来の如く各パーツを接合するものではなく、全体を同時に一体成形することにより、強度を高めると共に水の浸入する虞をなくし、加えて、着色し、1個宛立体形状に成形した透光性樹脂フィルムはインサート成形時に金型内でカバー本体と一体化することにより、ロールTOロール方式の如きフィルムのインクをランプカバー本体の所定の位置に正確に合わせるための手間が不要であり、更に透光性樹脂フィルムを、溶融した樹脂の溶着作用によって而もカバーの本体の外面全体にわたってこれと一体的に結合することによって両者の結合力を高め、透光性樹脂フィルムが剥がれることがなく且つカバーの本体の外面全体を保護して耐候性や耐衝撃性を向上させ、更に強い衝撃が加わったときには、カバー本体が割れても透光性樹脂フィルムがこれの飛散を防ぐようになした車輛用有色透光性カバーの製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
而して、本発明に係るランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの製造方法は、次の工程からなるものである。
(1)成形可能な透光性樹脂フィルムを所定の大きさに切断する工程。
(2)切断した透光性樹脂フィルムの表面又は裏面に印刷により所定の着色を施す工程。
(3)印刷により着色した透光性樹脂フィルムを、ランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの本体の外形形状に合わせて立体形状に成形する工程。
(4)インサート成形用金型におけるキャビティー内に上記立体形状に成形した透光性樹脂フィルムをインサートした状態において金型内に溶融した樹脂を注入し、車輛用有色透光性カバーの本体を成形すると同時に該溶融した樹脂の溶着作用によって該車輛用有色透光性カバーの本体の外面に透光性樹脂フィルムを積層一体化する工程。
【0012】
また、上記方法における印刷としては、シルクスクリーン印刷によって行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は各車輛用有色透光性カバーの本体の大きさよりやや大きい大きさにフィルムを切断し、これに印刷によって着色を施すものであるから、従来のロールTOロール方式の如き大型の設備が不要である。また、従来のロールTOロール方式の如く一本の連続した長いフィルムにインクを付着させるものとは異なり、切断した各フィルムに順々に印刷するものであるから、色調合わせについても色の具合をみるときに各色毎にフィルムは1〜2枚で済み、そしてこれに伴いインクの無駄も少なくて済むものである。また印刷によって着色を施すものであるから、従来の塗装による場合の如く塗料が飛散することがなく、而も着色作業も迅速に行うことができるものである。また、従来の如く色数に応じて何回も成形を繰り返すことなく1回のインサート成形のみで済むから、製造作業の能率を向上させることができる。また従来の如く色の異なる各パーツを順次接合して一体化するものではなく、全体を同時に一体成形するものであるから、強度が高まると共に水の浸入する虞もなくなるものである。加えて、着色し、1個宛立体形状に成形した透光性樹脂フィルムはインサート成形時に金型内で自然にカバー本体と一体化されるものであるから、従来のロールTOロール方式の如きフィルムのインクをランプカバー本体の所定の位置に正確に合わせるための手間が不要となる。更に透光性樹脂フィルムを、溶融した樹脂の溶着作用によって而もカバーの本体の外面全体にわたってこれと一体的に結合するものであるから、両者の結合力が高まり、透光性樹脂フィルムが剥がれることがない。且つまた、強固に結合した透光性樹脂フィルムがカバーの本体の外面全体を保護するから、耐候性や耐衝撃性を向上させることができる。更に強い衝撃が加わったときには、カバー本体が割れても透光性樹脂フィルムがこれの飛散を防ぐことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態は、成形可能な透光性樹脂フィルムを所定の大きさに切断する工程、切断した透光性樹脂フィルムの表面又は裏面に印刷により所定の着色を施す工程、印刷により着色した透光性樹脂フィルムを、ランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの本体の外形形状に合わせて立体形状に成形する工程、インサート成形用金型におけるキャビティー内に上記立体形状に成形した透光性樹脂フィルムをインサートした状態において金型内に溶融した樹脂を注入し、車輛用有色透光性カバーの本体を成形すると同時に該溶融した樹脂の溶着作用によって該車輛用有色透光性カバーの本体の外面に透光性樹脂フィルムを積層一体化する工程とからなるものである。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1は本発明のインサート成形時における金型の断面図、図2は着色した透光性樹脂フィルムを車輛用有色透光性カバーの本体の外形形状に合わせて立体形状に成形した状態の斜視図、図3は全工程完了時における製品の斜視図である。
【0016】
先ず、成形可能な透光性樹脂フィルムを所定の大きさに切断する。尚、該透光性樹脂フィルムとしては、本実施例ではPC(ポリカーボネート)フィルムを使用する。
【0017】
次に、切断した上記透光性樹脂フィルムの表面又は裏面に印刷により所定の着色を施す。また、印刷は、シルクスクリーン印刷によることが望ましく、そしてそれに用いるインクとして、本実施例では帝国インキ株式会社製ISSインクを用いている。尚、本実施例においては赤色R、黄色Y、白色Wに着色している。
【0018】
次に、印刷により着色した上記透光性樹脂フィルムを、ランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの本体の外形形状に合わせて立体形状に成形する。図2は成形した状態の透光性樹脂フィルム1を示すものである。
【0019】
次に、図1に示す如く、インサート成形用金型におけるキャビティー内に上記立体形状に成形した透光性樹脂フィルム1をインサートした状態において金型内に溶融した樹脂を注入し、車輛用有色透光性カバーの本体を成形すると同時に該溶融した樹脂の溶着作用によって該車輛用有色透光性カバーの本体の外面に透光性樹脂フィルム1を積層一体化するものである。また、図1において2は車輛用有色透光性カバーの本体、3は固定型3Aと可動型3Bとからなるインサート成形用金型であり、4はそのキャビティーである。また、図3には以上の全工程を完了した状態の製品を示している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のインサート成形時における金型の断面図である。
【図2】着色した透光性樹脂フィルムを車輛用有色透光性カバーの本体の外形形状に合わせて立体形状に成形した状態の斜視図である。
【図3】全工程完了時における製品の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 透光性樹脂フィルム
2 車輛用有色透光性カバーの本体
3 金型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程からなることを特徴とするランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの製造方法。
(1)成形可能な透光性樹脂フィルムを所定の大きさに切断する工程。
(2)切断した透光性樹脂フィルムの表面又は裏面に印刷により所定の着色を施す工程。
(3)印刷により着色した透光性樹脂フィルムを、ランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの本体の外形形状に合わせて立体形状に成形する工程。
(4)インサート成形用金型におけるキャビティー内に上記立体形状に成形した透光性樹脂フィルムをインサートした状態において金型内に溶融した樹脂を注入し、車輛用有色透光性カバーの本体を成形すると同時に該溶融した樹脂の溶着作用によって該車輛用有色透光性カバーの本体の外面に透光性樹脂フィルムを積層一体化する工程。
【請求項2】
印刷がシルクスクリーン印刷である請求項1記載のランプカバー等の車輛用有色透光性カバーの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−297804(P2006−297804A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124542(P2005−124542)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(391047411)土屋工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】