説明

リウマチ性疾患の遅延放出型グルココルチコイド治療

本発明は、遅延放出型剤形のグルココルチコイドをそれを必要とする被験者に投与することによる、リウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延放出型剤形のグルココルチコイドをそれを必要とする被験者に投与することによる、リウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療に関する。
【0002】
本発明の背景
臨床診療における低用量コルチコイド療法の役割
関節リウマチ(RA)のようなリウマチ性疾患は、滑膜関節内層の炎症と同時に、関節痛と関節硬直を生じて、最終的には骨や関節の破壊、変形、障害、さらには死までも引き起こす、慢性的な自己免疫疾患である。RAは、人口の約1%が罹患しており、男性よりも女性の方が2〜3倍多く発症している(CPMP/EWP/556/95)。早期診断、炎症の抑制、および積極的治療法が、良好な転帰に重要な必要条件であると考えられている(Pincus 2005)。グルココルチコイドは、この疾患の治療に広く使用されており、特に疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などのその他の薬剤と組み合わせて投与されることが多い(Bijlsma 2003)。プレドニゾン、プレドニゾロン、およびメチルプレドニゾロンは、RA治療に最も一般的なグルココルチコイドに含まれる。
【0003】
経口コルチコイドRA療法の使用方法および種類は、部位によって異なり、公表されている推定値も一様でない。ある情報源によれば、2002年にこのような療法を受けた患者は、英国(UK)で約20%であったのに対して、フランス、ドイツ、イタリアおよびスペインでは約40〜50%であった。フランス、イタリアおよびスペインではプレドニゾンが最も多く治療に使用されたコルチコイドであった(それぞれ治療を受けた患者の94%、59%および43%)のに対して、ドイツおよび英国ではプレドニゾロンが最も多く治療に使用された(それぞれ50%および100%)。1999〜2001年の間にある米国の診療所に来院した患者150人を対象とした調査では、144人(96%)の患者がプレドニゾンをDMARDと組み合わせて投与を受けるか(86%)、あるいは単独で(10%)投与を受けたことが明らかになった(Pincus 2005)。
【0004】
グルココルチコイドは、広範囲に及ぶ抗炎症作用や免疫抑制作用を有する。グルココルチコイドは、白血球の移動を阻害し;白血球、繊維芽細胞および内皮細胞の機能を妨害し;インターロイキン−6(IL−6)を含めた炎症性サイトカインの合成および作用を抑制することにより作用する(Buttgereit 2005)。最初に導入した際、グルココルチコイドは、10mg/日を上回るプレドニゾンまたは同等物の高用量で長期間にわたりRA患者に投与されていた。これらの高用量かつ長期に及ぶレジメンは大いに有効であったが、多面発現効果や許容されない副作用を伴っていた。このことが、副作用の発症率を低下させるための低用量レジメンの開発へとつながり、リスク・ベネフィット比が最適化されるに至った(Buttgereit 2005)。現在、高用量のコルチコイド投与は、特別な場合の短期療法(例えば、RAの重度の再熱の治療)にのみ適するとされている。処方されるコルチコイド投与量の減少は、1984年〜1986年(1985年はコホート)または1999年〜2001年(2000年はコホート)にある米国の診療所に来院した患者を対象とした評価によって実証されている(Pincus 2005)。プレドニゾンの平均投与量は、1985年に7.8mg/日であったのに対して2000年には4mg/日となっており、投与量の中央値もそれぞれ5mg/日から4mg/日となっていた。
【0005】
現在、長期低用量コルチコイド療法(1日10mg以下のプレドニゾンまたは同等物の投与量として定義)は、RAの標準的な治療の重要な部分として認識されている(ACR guideline,Conn 2001)。1日10mg未満の投与量は、疾患を制御するのに引き続き有効である最低量に達するまで、徐々に減らしていく必要がある。低用量コルチコイドレジメンは、早朝硬直や疼痛などの症状を即座に緩和するだけでなく、病勢の進行も予防する。1990年代中頃以降に行われたいくつかの無作為試験では、低用量のプレドニゾン(プレドニゾロン)が、初期の活動性RA患者における関節損傷(X線画像により測定)の速度を遅らせることが明らかにされている。二重盲検プラセボ対照試験では、7.5mg/日のプレドニゾロンをその他の標準RA治療薬と組み合わせて2年間投与した場合に、関節破壊が減少した(Kirwan 1995)。しかし、プレドニゾロンの投与を中止すると、関節破壊が対照群と同じレベルまで戻った(Hickling 1998)。より最近になって行われた二重盲検プラセボ対照試験では、プレドニゾン(10mg/日)が、これまでDMARDによる治療を受けてこなかった患者における2年間および5年間の関節損傷の進行を遅らせた(van Everdingen 2002、Jacobs 2005)。また、二重盲検プラセボ対照試験(Wassenberg 2005)および非盲検DMARD対照試験(Svensson 2005)では、それぞれ5mg/日および7.5mg/日の投与量のプレドニゾロンが、DMARDと組み合わせて2年間投与した場合に、X線画像で確認される病勢の進行を減少させた。低用量コルチコイド治療の疾患修飾作用に関する証拠の増加が、この治療レジメンに対する新たな関心や臨床診療における使用の増加に寄与しているのは間違いない。
【0006】
長期低用量コルチコイド治療の安全性
1950年代にグルココルチコイドがRAの治療に導入されからまもなく、高用量の長期使用は、骨粗鬆症、耐糖能異常、感染症、消化性潰瘍および消化管出血、白内障および緑内障、ならびにアテローム動脈硬化症を含めた臨床的に重要な副作用を伴うことが明らかになった。長期低用量コルチコイド療法の安全性プロファイルを評価するために、これまで臨床試験や文献レビューがいくつか行われている。副作用は、それぞれの患者に合わせてできる限り低用量を使用することにより減少させることができることが一般的に認められている。プレドニゾンの投与を受けたRA患者と受けていない患者とを比較したある試験では、5mg/日以上の投与量による長期のプレドニゾンの使用は、特定有害事象の用量依存的な発症を伴うと結論付けている(Saag 1994)。しかし、この試験は、過去の症例を対照とする後ろ向き試験であり、最高で15mg/日のプレドニゾン投与も含まれていた。最近では、リウマチ学者やその他の治療分野の専門家からなる研究グループが、教則本や論稿の一次調査により、低用量(10mg/日以下のプレドニゾロン同等物)の長期グルココルチコイド療法の副作用に関する包括的な文献レビューを行った(da Silva 2006)。このグループのレビューには、プレドニゾロン(5〜10mg/日)をRA患者に2年間投与した4つの前向き無作為対照試験のデータ解析も含まれており(Capell 2004,Kirwan 1995,van Everdingen 2002,Wassenberg 2005)、高用量で多く認められた副作用は、低用量では認められないか、あるいはそれほど多くは認められなかった。この専門家等は、「教則本や論稿で引用されているRAにおけるグルココルチコイドの毒性に関する全体的な懸念は、おそらくより高用量の療法で得られた所見を基に過大評価されたものであると思われる。低用量の療法のリスクとベネフィットの均衡は、中用量や高用量の療法の均衡と異なることは明らかである。・・・」と結論付けている。骨粗鬆症、肥満、高血圧症、糖尿病の家族歴、または緑内障は、より細かな観察を必要とする危険因子として列挙されている。また、骨粗鬆症に加えて、定期検査が必要となる場合がある副作用は、クッシング症候群、コルチコイドの投与中断による副腎クリーゼ、糖尿病の新規発症、糖尿病患者における血糖管理の悪化、白内障、緑内障、(NSAIDとの併用による)消化性潰瘍、および高血圧症と定義されている。
【0007】
調節放出型プレドニゾン錠
活動性RA患者は、関節の硬直、疼痛や腫脹を含めた臨床的兆候および症状に罹患している。患者は、これらの症状(および障害や可動性などの関連因子)をRA治療の重要な転帰であると評価している(Ahlmen et al.2005,Carr et al.2003,Hewlett et al.2005)。臨床症状は1日の間で変動し、午後や夜間よりも起床後の早朝の方が症状が重くなる(Cutolo et al.2003,Cutolo and Masi 2005)。実際に、早朝の硬直はRAの典型的な症状であることから、RAの標準的な診断基準となっている(Arnett et al.1988,ACR Guideline 2002)。
【0008】
RA症状の概日変動の原因となる機序は複雑であり、HPA軸や内因性炎症メディエータを含む。炎症は、炎症性サイトカイン産生の増加を引き起こす。したがって、健常者に比べると、RA患者の方がインターロイキン(IL)(特にIL−6)腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)の血清濃度がより高く、これらのレベルが顕著な概日リズムを示しており、夜間の方が濃度がより高く、午前2時〜6時の間にピークを迎える(Arvidson et al.1994;Crofford 1997;Cutolo 2003,2005)。
【0009】
IL−6レベルの増加は、炎症に反応して引き起こされるが、IL−6はHPA軸の強力な活性因子であり、副腎皮質からのコルチゾールの放出を刺激し、炎症を抑制する(Cutolo 2005,Mastorakos 2000)。RA患者において、炎症を抑制するに当たり、永続的に刺激するHPA軸の応答は不適切であり、内因性コルチゾールレベルでは不十分であると考えられる(Gudbjoernsson 1996)。外因性グルココルチコイドの投与は、(その他の治療効果の中でも)補充療法の役割を果たし、不十分な内因性コルチゾールレベルを補足する(Cutolo 2005)。
【0010】
内因性コルチゾールおよび外因性治療用グルココルチコイドは、IL−6およびその他の炎症性サイトカインの合成を阻害する。そういった意味において、プレドニゾン(プレドニゾロン)とメチルプレドニゾロンは、3〜4時間というその比較的短い半減期から格好の外因性コルチコイドであると言える。通常、低用量の経口プレドニゾン(プレドニゾロン)またはメチルプレドニゾロンは、症状を軽減するために早朝に単回投与され、HPA軸への干渉の可能性を最小限にする。しかし、早朝硬直および関節痛の最適な緩和を提供するためには、予想される夜間のIL−6増加の直前に薬剤を投与する必要があると提案されている。無作為試験では、標準の抗リウマチ薬(主にNSAID)で治療を行っているが、試験3ヶ月前にグルココルチコイドの治療を受けていない活動性RA患者26人に対して午前2時または7時30分に4日間投与した、標準IR(即時放出型)低用量プレドニゾロン(5mg/日または7.5mg/日)の有効性を調査した(Arvidson et al.1997)。午前2時のプレドニゾロンの夜間投与により、早朝硬直、関節痛、ならびにIL−6の血清濃度の抑制において統計的にきわめて有意な改善が見られた(p<0.01)。一方、従来の7時30分の早朝投与後には、早朝硬直およびIL−6濃度に対してのみごくわずかな効果(p<0.05)が認められた。したがって、低用量グルココルチコイドは、IL−6合成および炎症活性の概日的な増大の前に投与した場合に、急性RAの症状を改善すると、この著者等は結論付けた。しかし、患者がより長期間の治療を受けた場合にどのような症状が起こるかについては、依然として不明である。
【0011】
Karatay等は、即時放出型低用量プレドニゾン錠を午前2時と7時30分に6ヶ月間投与する調査を2002年に行った。この調査結果は、早朝硬直における差が認められなかったことから、期待外れのものであった。これに関する1つの説明としては、Arvidsonが認めた短期的な効果が、治療後数日または数週間のうちに消失したということであると考えられる。したがって、グルココルチコイドの長期夜間投与の効果は依然として不明である。
【0012】
さらに、両試験(Arvidson 1997;Karatay 2002)の全患者は、コルチコイドの投与を受けたことがない患者であった。したがって、低用量コルチコイドの投与をすでに受けた患者において夜間の低用量プレドニゾンの投与がどのように作用するか、および患者がより長期間にわたりより高い順守率で夜間投与を受けた場合にどのような作用が生じるかについて、疑問が生じている。
【0013】
午前2時のグルココルチコイド投与は、2つの内の1つの試験で有効性の改善が見られたが、実際のところ、この投与は患者にとって至極不便であり、睡眠および/または服薬順守の質の低下を招く可能性があると考えられる。
【0014】
米国特許第5792476号では、有効成分としてグルココルチコイドを含み、小腸での放出をもたらす、関節リウマチのための経口投与用医薬組成物について記載されている。この組成物は、pH6.8に対して耐性を示す内層と、pH1.0に対して耐性を示す外層とで積層された粒質物である。
【0015】
米国特許第6488960号では、コルチコイドの制御放出用の医薬品剤形について記載されており、米国特許第5792476号に記載の製剤を参照している。
【0016】
国際特許公開第01/08421号では、一層が他層を完全に覆う少なくとも2層でコーティングされる核を有する錠剤について記載されている。前記コーティング層は、スプレーコーティングおよび/または加圧成形により形成することができる。
【0017】
国際特許公開第01/68056号には、核と前記核を取り囲む少なくとも1つの親水性または親油性コーティングとを含み、前記コーティングを、放出媒体に含まれる水を介した別の方法で徐々に膨潤させるか、溶解させるか、浸食させるか、または構造を変化させることによって、前記核または前記核の一部が前記放出媒体に到達できるようになる、時間遅延を伴う放出プロファイルを有する医薬品製剤が開示されている。前記コーティングは、例えば加圧コーティングとして形成される場合がある。
【0018】
国際特許公開第02/072034号には、有効成分としてグルココルチコイドと、遅延放出を生じ、少なくとも1つの天然または合成ゴムを含む材料とを含む核を有する、遅延放出用の医薬品剤形が開示されている。
【0019】
国際特許公開第2004/093843号には、特定の遅延放出様式で有効成分を放出する特定の核形状を有する錠剤が開示されている。
【0020】
国際特許公開第2006/027266号には、活性剤、特にコルチコステロイドの部位および時間が制御された胃腸放出を伴う医薬品剤形が開示されている。この医薬品剤形は、好ましくは、コルチコステロイドおよび膨潤性/分解性アジュバントを含む核と、不活性外部コーティングとを有するコーティング錠である。前記コーティングは、消化管内の所定の部位でコルチコステロイドの放出を生じるように選択された圧力で圧縮される。
【0021】
発明の要旨
本発明の発明者等は、標準即時放出型錠剤と比較した遅延放出型プレドニゾン錠の有効性を試験するために臨床試験を行った。その結果、標準即時放出型プレドニゾン錠による治療に比べて、遅延放出型プレドニゾン錠の長期投与により驚くほど有効性が向上することが明らかになった。
【0022】
したがって、本発明の第一の態様は、リウマチ性疾患および/または変形性関節症の長期治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のコルチコステロイドの使用に関する。
【0023】
本発明のさらなる態様は、以下の患者のリウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用に関する:
(i)重度の疾患に罹患する患者、
(ii)中等度の疾患に罹患する患者、
(iii)軽度の疾患に罹患する患者、
(iv)罹患期間が短い(2年未満)患者
(v)罹患期間が中期(2〜5年)にわたる患者、または
(vi)罹患期間が長期(5年超)にわたる患者。
【0024】
本発明のさらなる態様は、以下の患者のリウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用に関する:
1.長期的な重度の早朝硬直に罹患する患者、
2.中等度の早朝硬直に罹患する患者、
3.軽度の早朝硬直に罹患する患者、
4.長期的な重度の疼痛に罹患する患者、
5.中等度の疼痛に罹患する患者、または
6.軽度の疼痛に罹患する患者。
【0025】
本発明の尚さらなる態様は、以下の患者のリウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用に関する:
(i)インターロイキン6レベルが高い患者、
(ii)インターロイキン6レベルが中等度である患者、または
(iii)インターロイキン6レベルが低い患者。
【0026】
本発明の尚さらなる態様は、以下の患者のリウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用である:
(i)即時放出型剤形のグルココルチコイドによる治療を事前に受けた患者、
(ii)即時放出型剤形のグルココルチコイドによる治療に対して抵抗性を示す患者、または
(iii)グルココルチコイドの投与を受けたことがない患者。
【0027】
本発明の尚さらなる態様は、以下の患者のリウマチ性疾患の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用に関する:
(i)NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、および/または鎮痛剤、あるいはこれらのいずれかの組み合わせなどのその他の医薬品による治療を事前に受けた患者、あるいは
(ii)NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤および/または鎮痛剤などのその他いずれの医薬品による治療も受けたことがない患者。
【0028】
本発明の尚さらなる態様は、NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤および/または鎮痛剤である少なくとも1つのさらなる医薬品と組み合わせてリウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用に関する。
【0029】
本発明の尚さらなる態様は、いずれのさらなる医薬品も使用せずにリウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用である。
【0030】
本発明の尚さらなる態様は、NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤および/または鎮痛剤である、減量した少なくとも1つのさらなる医薬品と組み合わせてリウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用である。
【0031】
本発明の尚さらなる態様は、強直性脊椎炎、リウマチ性多発筋痛および/または変形性関節症の治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用である。
【0032】
本発明の尚さらなる態様は、例えばリウマチ性疾患および/または変形性関節症におけるサイトカイン放出などの、早朝硬直、疼痛および/または炎症パラメータの治療用医薬品を製造するための、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用である。
【0033】
本発明の尚さらなる態様は、基礎となるリウマチ性疾患および/または変形性関節症の兆候および症状に罹患する患者を治療する方法であって、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することを含み、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与される、方法である。
【0034】
本発明の尚さらなる態様は、基礎となるリウマチ性疾患および/または変形性関節症による早朝硬直および疼痛に罹患する患者を治療する方法であって、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することを含み、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与される、方法である。
【0035】
本発明の尚さらなる態様は、基礎となる炎症によるインターロイキン6レベルの概日変動を有する患者を治療する方法であって、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することを含み、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与され、前記治療が、患者のインターロイキン6レベルが日内ピークに達した時点または達する前にグルココルチコイドが放出されるように施される、方法である。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、遅延放出型剤形のグルココルチコイドの使用に関する。有効成分の放出は、摂取から2〜10時間、好ましくは2〜6時間、より好ましくは摂取から3〜5時間遅らせるのが好ましい。有効成分は、腸の上部および/または腸の下部において放出される場合がある。より好ましくは、有効成分は2〜6時間以内に腸の上部から放出される。遅延放出型剤形は、好ましくは就寝時または就寝前に、より好ましくは夜間(例えば、午後9時頃〜午後11時頃、具体的には午後10時前後30分)に患者に投与される。炎症は、睡眠時間中にピークに達する炎症性サイトカイン(例えば、インターロイキン−6)濃度の概日変動を伴うことから、就寝時に投与することで、当該濃度がピークに達する時に含まれる有効成分の濃度を効果的にすることができる。
【0037】
遅延放出型剤形は、好ましくは、例えば、参考として本明細書で援用される国際特許公開第2006/027266号に記載される錠剤である。前記剤形は、好ましくは、以下を含む:
(a)少なくとも1つのグルココルチコイド有効成分を有し、かつ少なくとも1つの膨潤性アジュバントおよび/または崩壊剤を有する核であって、前記核が胃腸液に接触すると剤形から有効成分が即時放出される、核、ならびに
(b)前記核に加圧される不活性、例えば、非可溶性および非膨潤性コーティングであって、前記剤形の摂取から所定の期間にわたって前記有効成分の実質的な放出を防止することができる、コーティング。
【0038】
最初に不活性コーティングが、吸収が生じないように、正確に定義された期間にわたって有効成分または有効成分の組み合わせの放出を防止する。消化管内に含まれる水は、徐々にコーティング内へ浸透し、圧縮圧力によって予め決定された期間が経過した後に核に達する。この時点でコーティング成分が、コーティングの一部の膨潤や希釈を示すことはない。核に達すると、内部へ浸透する水が核の親水性成分によってきわめて急速に吸収されることで、核の容積が急激に増加し、その結果、コーティングが完全に破裂して、有効成分および有効成分の組み合わせのそれぞれがきわめて急速に放出される。
【0039】
この遅延放出型有核錠の特に有利な実施形態は、先に圧縮した核錠を続いて多層錠剤圧縮機で有核錠に圧縮する場合に達成される。
【0040】
通常、錠剤コーティングは、遅延放出プロファイルを達成するために、以下の材料で構成されている:
− アクリル酸、メタクリル酸などのポリマーまたはコポリマー(例えば、EudragitまたはCarbopol)、
− ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、
− ポリビニルアルコール、
− ポリエチレングリコール、
− 高級脂肪酸塩、短鎖、中鎖または長鎖、飽和または不飽和脂肪酸を有する一価または多価アルコールエステル。具体的には、ステアリン酸トリグリセリド(例えば、Dynersan)またはベヘン酸グリセロール(例えば、Compritol)が使用される。
【0041】
さらに、錠剤コーティングを圧縮できるように、さらなるアジュバントもまた、これらの材料に添加する必要がある。通常この場合に使用されるのが、ラクトース、各種デンプン、セルロース、およびリン酸水素カルシウムまたは第二リン酸カルシウムなどの充填剤である。使用する流動促進剤は、通常、ステアリン酸マグネシウムであるが、例外的にはタルクおよびベヘン酸グリセロールも使用される。また、好ましくはポリエチレングリコール、フタル酸ジブチル、クエン酸ジエチルまたはトリアセチンの群からなる可塑剤も、コーティング材に添加されることが多い。
【0042】
最適な放出プロファイルを達成するためには、核錠はまた、特定の役割を果たし、特定の特性を示さなければならない。したがって、誘導期が経過した後、例えば、以下の物質群(セルロース誘導体、デンプン誘導体、架橋ポリビニルピロリドン)から得られる典型的な崩壊剤が内核に添加される場合に、急速放出プロファイルが達成される。例えば弱酸と炭酸塩または重炭酸塩との組み合わせから得られる発泡剤の使用もまた、急速放出を促進する場合がある。通常、核錠は、マトリックスまたは充填成分(例えば、ラクトース、セルロース誘導体、リン酸水素カルシウム、または文献で知られるその他の物質)と、潤滑剤または流動促進剤(通常はステアリン酸マグネシウム、例外的にはタルクおよびベヘン酸グリセロール)とでさらに構成される。
【0043】
核錠のサイズは、好ましくは、直径6mm(好ましくは5mm)を超えてはならず、なぜならこれを超えると、有核錠が大きくなりすぎて好都合に摂取できなくなるためである。その結果、有効成分の投与量は、0.1〜50mg、特に1〜20mgの範囲である。
【0044】
本発明に基づく剤形のin vitroでの放出プロファイルは、好ましくは、有効成分の5%未満しか誘導期に放出されないものである。放出期が開始してから、有効成分の好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上が1時間以内に放出される。より好ましくは、前記遅延放出型剤形は、遅延時間に達してから約2時間以下の溶解時間を有する。in vitro放出は、好ましくは水中でUSP Paddle分解モデルを使用して測定される。
【0045】
使用する有効成分は、グルココルチコイド群から得られ、すべてが同等の物理化学的特性を示す。このような有効成分には、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルオコルトロン、クロプレドノール、デフラザコート、トリアムシノロン、あるいはこれらの対応する薬学的に許容される塩および/またはエステルが含まれる。これは特に、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルオコルトロン、クロプレドノール、およびデフラザコート、あるいはこれらの対応する薬学的に許容される塩および/またはエステルに当てはまる。
【0046】
本発明の遅延放出型錠剤の場合、以下の核材料とコーティング材料の組み合わせが、pHと食物の影響を除いて、時間および部位制御放出の達成に特に適することが明らかになっている。
【0047】
コーティングは、好ましくは以下を含む:
−HLB値が約5未満、好ましくは約2である疎水性油性物質。カルナバワックス、パラフィン、セチルエステルワックスが、好ましくは疎水性油性物質に使用される。
特にベヘン酸グリセロールが適することが明らかになっている。コーティング中で約20〜60%、特に約30〜50%を使用するのがきわめて有利であることが明らかになっている;
−リン酸カルシウム塩(例えば、第二リン酸カルシウム)などの非脂肪疎水性充填材。コーティング中でこれらの充填材を約25〜75%、特に約40〜60%使用するのが、この場合にきわめて有利であることが明らかになっている;
−さらに、錠剤コーティングはまた、好ましくは結合剤(例えば、通常は約4〜12%、特に約7〜10%の濃度のポリビニルピロリドン(PVP))と、流動促進剤(例えば、約0.1〜2%、特定の場合には約0.5〜1.5%の濃度のステアリン酸マグネシウム)とで構成される。例えば、コロイド状二酸化ケイ素は、通常約0.25〜1%の濃度で流量調整剤として使用することができる。さらに、異なる投与量を区別するために、着色剤、好ましくは約0.001〜1%の濃度の酸化鉄顔料を、錠剤コーティングに添加することができる。
【0048】
核錠は、好ましくは以下を含む:
−グルココルチコイド群、好ましくはプレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルオコルトロン、クロプレドノール、デフラザコートおよびトリアムシノロン、ならびにこれらの対応する塩およびエステルからなる、有効成分または有効成分の組み合わせ。有効成分の投与量は、約0.1〜50mg、きわめて特に約1〜20mgである;
−さらに、核錠は、好ましくは、例えば、ラクトース、デンプン誘導体、またはセルロース誘導体などの充填剤を含む。好ましくはラクトースが使用される。充填剤は、通常約50〜90%、特に約60〜80%の濃度で含まれる。さらに崩壊剤も含まれ、通常これは、約10〜20%の濃度の架橋PVPまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。さらに、PVPなどの結合剤も、通常約2〜10%、特に約5.5〜9%の濃度で含まれるほか、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も、約0.1〜2%、特定な場合には約0.5〜1.5%の濃度で含まれることが可能である。通常、コロイド状二酸化ケイ素は、通常約0.25〜1%の濃度で流量調整剤として使用される。さらに、核とコーティングを視覚的に区別することで、着色剤、好ましくは約0.01〜1%の濃度の酸化鉄顔料を添加することも可能である。
【0049】
好ましくは、遅延放出型剤形は、長期治療として、それを必要とする被験者に、疾患および/または疾患症状を低減および/または排除するのに十分な期間にわたり投与される。通常、長期治療は、長期間(例えば、少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間、より好ましくは少なくとも8週間、さらにより好ましくは少なくとも12週間、最も好ましくは少なくとも6ヶ月間または少なくとも12ヶ月間)にわたる医薬品の連日投与を含む。
【0050】
本発明は、リウマチ性疾患および/または変形性関節症に罹患する患者群の新規治療に関する。これらの患者群は、以下から選択される:
(i)5.1を超える疾患活動性スコア(DAS)(Le Loet 2006)および/または医師評価を特徴とする重度の疾患に罹患する患者、
(ii)3.2超〜5.1未満の疾患活動性スコア(DAS)および/または医師評価を特徴とする中等度の疾患に罹患する患者、
(iii)3.2未満の疾患活動性スコア(DAS)および/または医師評価を特徴とする軽度の疾患に罹患する患者、
(iv)罹患期間が2年未満と短い患者、
(v)罹患期間が2〜5年と中期にわたる患者、および
(vi)罹患期間が5年超と長期にわたる患者。
【0051】
さらに患者群は、以下から選択される場合がある:
(i)早朝硬直期間が180分を超える長期的な重度の早朝硬直に罹患する患者、
(ii)早朝硬直期間が100〜180分である中等度の早朝硬直に罹患する患者、
(iii)早朝硬直期間が100分未満である軽度の早朝硬直に罹患する患者、
(iv)70mmを超えるVASスケールを特徴とする長期的な重度の疼痛に罹患する患者、
(v)50mm超〜70mmのVASスケールを特徴とする中等度の疼痛に罹患する患者、および
(vi)50mm未満のVASスケールを特徴とする軽度の疼痛に罹患する患者。
【0052】
さらに患者群は、以下から選択される場合がある:
(i)インターロイキン6レベルが高い(例えば、3000IU/L超)患者、
(ii)の中等度のインターロイキン6レベルが中等度である(例えば、3000〜1000IU/L)患者、および
(iii)インターロイキン6レベルが低い(例えば、1000IU/L未満)患者。
【0053】
さらに患者群は、以下から選択される場合がある:
(i)即時放出型剤形のグルココルチコイドによる治療を事前に受けた患者、
(ii)即時放出型剤形のグルココルチコイドによる治療に対して抵抗性を示す患者、および
(iii)グルココルチコイドの投与を受けたことがない患者。
【0054】
さらに患者群は、以下から選択される場合がある:
(i)NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、および/または鎮痛剤、あるいはこれらのいずれかの組み合わせなどのその他の医薬品による治療を事前に受けた患者、ならびに
(ii)NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、インターロイキン1阻害剤、インターロイキン6阻害剤、および/または鎮痛剤などのその他いずれの医薬品による治療も受けたことがない患者。
【0055】
グルココルチコイドの即時放出型錠剤に比べて、遅延放出型錠剤を投与することにより、グルココルチコイドの1日量が実質的に減少する場合がある。減少した投与量が治療の開始時から投与される場合がある。あるいは、炎症性プロセスを低減および/または抑制するために、より高用量(例えば、約10ng/mgを超えるプレドニゾン、または同等量の別のグルココルチコイド)が治療の開始時に投与される場合もある。適切な期間の後(例えば、2〜4週間後)に、投与量が維持療法の投与量(10mg/日以下のプレドニゾン、または同等量の別のグルココルチコイド)まで滴定される場合がある。したがって、きわめて低用量の有効成分によって疾患阻害効果が得られ、それによって部位効果の発生および/または強度が低減される場合がある。例えば、グルココルチコイドの1日量は、即時放出型錠剤に比べて、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、例えば10〜50%減少させることができる。したがって、徐放型プレドニゾンにおけるプレドニゾン(プレドニゾロン)の減量した1日量は、標準IR錠が6〜10mg/日であるの対して、好ましくは1〜5mg/日である。
【0056】
本剤形は、種々の投与量サイズ(例えば、種々の量の有効成分を含有する錠剤)の組み合わせを含む場合がある。プレドニゾンの場合は、1mg、2mgおよび5mg錠の組み合わせが好ましい。
【0057】
本発明に基づく治療は、いずれのさらなる医薬品も使用しない、リウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療を含む場合がある。これに対して、本発明は、好ましくはNSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤またはこれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つのさらなる医薬品と組み合わせた、リウマチ性疾患および/または変形性関節症の治療を含む場合がある。特に好ましいのは、Tarenflurbilとの組み合わせである。
【0058】
NSAIDは、好ましくは、アリールアルカン酸(ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク)から、2−アリールプロピオン酸(カルプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸)から、N−アリールアントラニル酸(メフェナム酸、メクロフェナム酸)から、オキシカム(ピロキシカム、メロキシカム)から、コキシブ(セレコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ)から、またはこれらの組み合わせから選択される。特に好ましいのは、Tarenflurbilとの組み合わせである。
【0059】
DMARDは、好ましくは、金剤、クロロキン、アザチオプリン、スルファサラジン、シクロホスファミド、ペニシラミン、水酸化クロロキン、メトトレキサート、二酸化トリウム懸濁液、レバミソール、サイクロスポリン、インターフェロン、レフルノマイド、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0060】
TNFα阻害剤およびIL1阻害剤は、好ましくは、エタネルセプト、インフリキシマブ、アナキンラ、アダリムマブなどの抗体または可溶性受容体から、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0061】
IL−6阻害剤は、好ましくは、トシリズマブなどの抗体または可溶性受容体から選択される。
【0062】
鎮痛剤は、好ましくは、サリチル酸塩(アスピリン、サリチル酸メチル、ジフルニサル、Benorylate、Faislamine、Amoxiprin)、ピラゾリジン誘導体(フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン)、またはパラセタモールから、あるいはこれらの組み合わせから選択される。
【0063】
前記少なくとも1つのさらなる医薬品の投与量は、例えば、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、例えば、10〜50%実質的に減少する場合がある。あるいは、TNFα阻害剤またはIL−6阻害剤の最初の使用を後の時点に延期することもできる。
【0064】
本発明は、具体的には、関節リウマチ、強直性脊椎炎、リウマチ性多発筋痛から選択されるリウマチ性疾患の治療に、および/または変形性関節症の治療に関する。本願に記載の臨床試験の結果を基にすれば、遅延放出型剤形のグルココルチコイド、具体的には長期治療が治療上有効であることは明らかである。具体的に、骨関節炎の要素を有する変形性関節症またはリウマチ性疾患の場合、遅延放出型剤形の投与は、望ましくない副作用を有することなく有効である。
【0065】
グルココルチコイドの投与量は、治療過程で変動する場合がある。例えば、患者には、治療開始時に比較的高用量(例えば、約10〜40mg/日以上のプレドニゾン、または同等量の別のグルココルチコイド)が投与され、この投与量を、患者の応答に応じて、長期間(例えば、3〜4週間超)をかけて、約10mg/日以下のプレドニゾンまたは同等量の別のグルココルチコイドの維持療法投与量まで下方に減少させる場合がある。あるいは、患者への投与を比較的低用量で開始し、この投与量を、長期間(例えば、3〜4週超)をかけて、約10mg/日以下のプレドニゾンまたは同等量の別のグルココルチコイドの維持療法投与量まで上方に調整する場合がある。
【0066】
さらに、本発明を、以下の実施例によってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、早朝硬直期間:ITT群における治療1週間当たりのベースラインからの相対的変化率を表すグラフである。
【図2】図2は、早朝硬直期間:ITT群における治療1ヶ月当たりのベースラインからの相対的変化率を表すグラフである。
【図3】図3は、徐放型プレドニゾン錠の治療下におけるIL−6値を表すグラフである。
【0068】
実施例
臨床試験: 遅延放出型プレドニゾン錠「徐放型プレドニゾン」に関する本願を裏付ける臨床開発計画は、3回の第1相試験と1回の第3相試験とで構成されていた。
【0069】
・ 第1相試験:69人の健常男性を対象としたこれらの3回の無作為非盲検交差試験では、それぞれ5mgのプレドニゾンを含有する6つの実験用遅延放出型生薬製剤の相対的バイオアベイラビリティと薬物動態学的特性とを調査した。本試験は、RA患者への夜間投与に適した特性(すなわち、適切な遅延時間、および食物による影響を受けない高いバイオアベイラビリティ)を有する遅延放出型錠剤が選択できるように行った。それぞれの遅延放出型錠剤の1回量を、基準の即時放出型(IR)プレドニゾン錠(Merck KGaAより市販されるDecortin(登録商標)5mg錠)の1回量と比較した。
【0070】
・ 第3相試験:288人の成人RA患者を対象としたこの無作為平行群間二重盲検ダブルダミー試験では、最終的なプレドニゾン遅延放出型錠剤製剤を夜間に12週間投与した。3〜10mgのプレドニゾン1日量は、1mg錠と5mg錠を使用して達成した。得られた有効性と安全性を、早朝投与した基準のIR製品のものと比較した。
【0071】
これらの試験の患者はコルチコイドの投与を受けたことがない患者であったことから、この試験設計は、Arvidson(1997)やKaratay(2002)では使用されていない新規の試験設計である。これらの研究では、標準IRプレドニゾン(プレドニゾロン)錠の午前2時と午前8時の投与を比較した。
【0072】
試験設計および試験方法
試験設計: 本試験は、12週間にわたって夜間投与した徐放型プレドニゾンと、午前8時に早朝投与した標準IRプレドニゾン(Decortin(登録商標)、Merck KGaA)の有効性と安全性を比較するために特別に設計された試験である。徐放型プレドニゾンと基準医薬品はいずれも同じ薬剤(プレドニゾン)を含有しており、唯一異なっていたのは、この薬剤が消化管内で放出される時点のみであった。夜間投与の時期(22時前後30分)は、投与から4時間後にプレドニゾンとその活性代謝物であるプレドニゾロンの血漿濃度が最初に検出され、投与から約6時間後に最大の血漿濃度が検出されることが明らかになった、徐放型プレドニゾンの過去の薬物動態試験で得た結果を基に決定した。午前4時に最大濃度となるこの特定の血漿プロファイルは、既に知られている炎症性サイトカインの早朝増加を抑制し、それによって早朝硬直を軽減することが予想されている。
【0073】
プラセボ群の組み入れは、プレドニゾンの有効性が実証されていることから必要でなく、また職業倫理にもとることもないと判断した。バイアスを回避するため、本試験では盲検が必要不可欠であった。徐放型プレドニゾン錠剤と基準医薬品錠剤は外観が異なることから、治療時の盲検を維持するためにダブルダミー法を使用した。
【0074】
本試験では、最初に1〜2週間のスクリーニング期間が設けられ、その後12週間の二重盲検治療期間があり、2週間後と6週間後に来院が必要であった。この12週間という期間は、主要有効性評価項目と副次有効性評価項目における差を実証するのに十分な期間であると判断した(以下を参照)。12週間の二重盲検試験の終了時に、12週間の二重盲検試験を終了した患者には、9ヶ月間の非盲検追跡試験を継続するように提案し、この追跡試験に、すべての患者が徐放型プレドニゾンによる積極的な治療を受けた。
【0075】
プレドニゾンの投与量: 患者は、試験を開始する前の月に服用したのと同じ安定した低用量のプレドニゾン(または同等物)を継続して服用することとした。試験中、3〜10mg/日のプレドニゾン投与量は、1mgおよび5mgのプレドニゾンを含有する徐放型プレドニゾンまたはIR錠を適切に組み合わせて達成し、2.5mgおよび7.5mgのプレドニゾン1日量は、それぞれ3mgおよび8mgに切り上げた。治療群間の差が投与量の変更によるものとならないように、治療期間を通して一定の低容量のプレドニゾンを投与した。
【0076】
主要目的および主要有効性評価項目: 本試験の主要目的は、新規のプレドニゾン遅延放出型製剤(すなわち、徐放型プレドニゾン)の夜間投与が、標準即時放出型(IR)プレドニゾンの早朝投与よりも、早朝硬直期間を短縮する点において優れているかどうかを明らかにすることであった。患者日誌カードは、関連する時刻(起床、早朝の医薬品摂取、早朝硬直の解消)を分単位で記録するように、適切に設計した。主要評価変数は、「二重盲検治療期間の個々の試験終了時における早朝硬直期間のベースラインからの相対的変化率」であり、したがって、早朝硬直期間は、早朝硬直の解消時刻と起床時刻との差であった。早朝硬直は、プレドニゾンの遅延放出後に夜間のIL−6ピークを阻害することによって直接影響を受けることが予想されたことから、これを主要評価変数に選んだ。
【0077】
副次有効性評価項目: 早朝硬直に加えて、本試験には、規制の推奨事項(CPMP/EWP/556/95 rev1)に基づく一連の包括的な支持的副次評価項目も含まれていた。患者は、睡眠の質、疼痛強度(VAS)、および疾患活動性全般評価(VAS)の評価を受けた。また、鎮痛剤の使用を記録し、健康状態(HAQ)、およびクオリティオブライフ(SF36)に関する実証済みのアンケートを記入した。調査者等は、関節(28関節)の腫脹や圧痛の数を計数し、疾患活動性全般評価(5段階スケール)を評価した。本疾患の炎症状態を調査するために、早朝にできる限り早めに採取した血液試料から試験変数(ESR、CRP、IL−6)を評価した。また、骨代謝の指標としてオステオカルシンも測定した。
【0078】
変数には、疾患活動性スコア(DAS28)とACR20応答者率という2つの実証された複合変数を使用した。DAS28は、関節スコア、ESR、および患者の疾患活動性全般評価から算出した。ACR応答者は、関節圧痛数、関節腫脹数、ならびに以下の5つの変数(疼痛強度、調査者の全般評価、患者の全般評価、HAQ障害指数、またはESR)の内の少なくとも3つがベースライン値の少なくとも20%改善した患者と定義した。
【0079】
組み入れ基準は、安定したコルチコイド医薬品およびDMARDの組み合わせによる治療を行っている一般的なRA群に典型的な活動性RA成人患者(18〜80歳)を登録するように設計した。患者は、RAの病歴が記録されており、疾患の活動性症状(すなわち、45分間の早朝硬直、30mm(VAS)以上の疼痛、3つ以上の関節痛、1つ以上の関節腫脹、ならびにESRおよび/またはCRPの上昇)を示していることが必要であった。
【0080】
患者は、試験開始前に少なくとも3ヶ月間、以下の最新のRA医薬品による治療を受けていることが必要であった。
・DMARD(許容されない場合を除く)
・プレドニゾン(プレドニゾロン)(スクリーニング前の少なくとも1ヶ月間は、2.5〜10mgの低用量で安定したプレドニゾン(または同等物))。
【0081】
患者は、12週間の二重盲検治療期間を通してRA医薬品を同じ投与量で継続して投与することとした。これらの制限は、治療群間の差がプレドニゾンの異なる投与様式によるものであり、コルチコイドまたは併用されるDMARDの投与量変更によるものとならないようにする制限であることから、適切であると考えられる。
【0082】
試験結果
合計288人の無作為患者に治療を行い、その内の144人は徐放型プレドニゾンで治療を行い、残りの144人は基準のIR医薬品で治療した。2つの治療群の以下のベースライン特性は同等であった(以下の括弧内は全治療群の平均値):年齢(55歳)、性別(女性85%)、早朝硬直(173分)、罹患期間(115ヶ月)、DAS28(5.9)、プレドニゾン(プレドニゾロン)の1日量(6.6mg)、スクリーニング前の医薬品(DMARD:94%の患者、非ステロイド性抗炎症剤[NSAID]:80%の患者)。また、両治療群の患者の病歴も同等であった。第1表は、疾患の特性を要約したものである。罹患期間の異なる(短期、中期および長期)患者と、疾患活動性スコアの異なる(DAS:軽度、中等度および重度)患者を組み入れた。
【0083】
第1表 ベースライン時の疾患特性(ITT群)
【表1】

【0084】
有効性結果
主要有効性変数および早朝硬直: 予定通り、本試験の主要有効性解析を、intention−to−treat群(すなわち、無作為化したすべての患者)を対象に、「last observation carried forward」法を使用して行った。
【0085】
第2表 1治療2週間後の早朝硬直期間(intention−to−treat群)
【表2】

【0086】
主要変数は、「二重盲検治療期間の個々の試験終了時における早朝硬直期間のベースラインからの相対的変化率」であり、したがって、早朝硬直期間は、早朝硬直の解消時刻と起床時刻との差であった。12週間の治療期間を通して、早朝硬直期間の減少率は、標準IRプレドニゾン治療下よりも徐放型プレドニゾン治療下の方が高かった。
【0087】
治療1週目の終了時に、2つの治療群間には10%の差が見られた。ベースラインと治療最終週の間の相対的な減少率は、徐放型プレドニゾン群が22.7%、標準プレドニゾン群が0.4%であった。したがって、徐放型プレドニゾンの方が標準プレドニゾンIR錠よりも統計的に有意(p<0.025、片側)に優れていることが明らかになり、試験の主要目的が達成された。
【0088】
2群間の差は、第1週目から見て取ることができるが、治療期間が長くなるほど、徐放型プレドニゾンに有利な差が顕著になる。これを第3表および図1に示す。
【0089】
第3表 1週間当たりの1日の平均早朝硬直期間(intention−to−treat群)
【表3】

【0090】
1日の平均早朝硬直期間を毎週評価したところ、徐放型プレドニゾン群では、治療2週間後からすでに減少、すなわち改善が見られることが明らかとなった。その後も1日の平均早朝硬直期間が着実に減少し続けるのに対して、標準プレドニゾン群では、12週間の治療期間中に明らかな変化の傾向は見られなかった。
【0091】
2002年にKaratayがこのような効果は期待できないと示していることから、この結果は驚くべきものであった。
【0092】
標準プレドニゾンよりも徐放型プレドニゾンの方が優れているため、徐放型プレドニゾン療法下では、早朝硬直に同じ効果を及ぼすことにより、例えば25〜30%の1日量が削減できると考えられる。
【0093】
第3相試験では、新規の遅延放出型錠剤中におけるきわめて低用量のプレドニゾンの方が標準IRプレドニゾンよりも優れていることから、このことが提案された投与量削減の裏付けになることが証明された。
【0094】
第4表は、intention−to−treat(ITT)群内の徐放型プレドニゾン群と標準プレドニゾン群において安定したプレドニゾンの投与量を開始する頻度を示す。両治療群の頻度プロファイルは類似しており、最も多い投与量は5mg(被験者の50%)であり、続いて7mgと10mg(それぞれ約20%)であった。
【0095】
第4表 試験開始時におけるプレドニゾンの安定した投与量の頻度(ITT群)
【表4】

【0096】
ITT群全被験者の1日の平均プレドニゾン投与量の中央値は、5.18mgであった。平均プレドニゾン1日量が5.18mg以下および5.18mg超である被験者の主要有効性変数(すなわち、早朝硬直期間のベースラインからの相対的変化率)について、部分群解析を行った。
【0097】
部分群の比較可能性を調査するため、選択した以下の人口統計学的特性とベースライン特性を解析した:年齢、性別、民族起源、体重、身長、RA期間、HAQ−DI、疼痛強度(VAS)、SF36、およびDAS28。臨床的に最も関連のあるパラメータとして年齢、RA期間、およびDAS28に関する見解を以下に記載する。その他のベースライン変数における部分群間の不均衡は、臨床的に関連がなかった。
【0098】
ベースラインの人口統計および主要有効性変数に関する記述統計は、第5表のITT群の各治療群における5.18mg超および5.18mg以下の平均プレドニゾン1日量について示している。また、治療群間の主要有効性変数の差も示されている(ANOVAによって算出、モデルA)。
【0099】
第5表 平均プレドニゾン1日量が5.18mg以下または5.18mg超である被験者のベースライン人口統計学的変数と主要有効性変数(intention−to−treat群)
【表5】

【0100】
* 5.18mgはITT群全被験者の平均プレドニゾン1日量の中央値。
【0101】
LS=最小二乗、SE=標準誤差
2つの治療群のいずれにおいても、5.18mg以下の平均プレドニゾン1日量を服用した被験者と、5.18mg超の平均1日量を服用した被験者との間で、平均年齢、平均RA期間、または平均DAS28スコアに差は見られなかった。
【0102】
徐放型プレドニゾン群では、いずれの投与部分群でも早朝硬直が減少したが、平均プレドニゾン1日量が5.18mgを超える被験者よりも、1日量が5.18mg以下の被験者の方がより大きく減少した。
【0103】
標準プレドニゾン群では、平均1日量が5.18mg以下の被験者が、早朝硬直期間の増加を示した。平均1日量が5.18mgを超える被験者では、早朝硬直が減少したが、徐放型プレドニゾン投与部分群のいずれよりも減少幅は大きくなかった。
【0104】
日中の硬直再発
両治療群の被験者の約58%において、日中の硬直再発がベースライン時点で報告された。治療2週間後に、その割合は両治療群でわずかに低下し、治療6週間後には、その割合が両治療群で著しく低下して、両治療群の差はほとんどなく、治療12週間後になると、当該被験者の割合は、両治療群の6週目の値よりもさらに著しく低下した。
【0105】
副次有効性変数
第6表 治療12週間後の疼痛強度(VAS)(intention−to−treat群)
【表6】

【0106】
相対的変化率を基にすると、疼痛強度(VAS)は、いずれの治療によっても治療12週後に改善が見られた。ITT群における疼痛強度(VAS)の相対的変化率の群間差は、4.91%(標準偏差8.08%)であると算出した。徐放型プレドニゾンに有利な2群間差が認められているが、これはper−protocol集団でさらに顕著であった(徐放型プレドニゾンで−19%、標準プレドニゾンで−5%)。1週間当たりの鎮痛剤の平均使用日数は、両治療群において治療開始後に著しい変化は見られなかった。治療2週間後、6週間後および12週間後に、2つの治療群の間で差は見られなかったが、徐放型プレドニゾン治療下では疼痛強度が低下したことから、初期RA患者や長期治療中の患者では、鎮痛剤の減少が認められると想定される。
【0107】
以下に列挙するその他いずれの有効性変数においても、差は認められなかった。
【0108】
睡眠の質
いずれの治療群においても、1日の睡眠の質の平均(VAS)に改善は見られなかった。2つの治療群のベースラインと、治療2週間後、6週間後および12週間後の絶対的変化率の平均との間に、著しい差は認められなかった。
【0109】
疾患活動性スコア(DAS28)
疾患活動性スコア(DAS28)は、いずれの治療群も減少した。治療2週間後は、減少が少なかったのに対して、治療6週間後および12週間後は、減少がより顕著であった。絶対的変化率および相対的変化率は、治療2週間後、6週間後および12週間後に2つの治療群間で類似していた。
【0110】
関節の圧痛数および腫脹数
関節の圧痛数および腫脹数は、いずれの治療群も減少した。いずれの治療群においても、治療2週間後に減少は顕著に認められ、治療6週間および12週間後に、さらなる減少が認められた。
【0111】
被験者の疾患活動性全般評価
被験者の疾患活動性全般評価の平均(VAS)は、治療開始後に両治療群で減少し、治療の時点と治療との間に関連する差は認められなかった。
【0112】
健康評価質問票障害指数(HAQ−DI)およびクオリティオブライフ(SF36)
HAQ−DIおよびSF36スコアは、いずれの治療群も、ベースライン時だけでなく治療12週間後においても類似していた。
【0113】
医師の疾患活動性全般評価
いずれの治療群においても、疾患活動が軽度である医師が評価した被験者の数と割合は、治療過程中に増加し、疾患活動が重度であると医師が評価した被験者の数と割合は、減少した。
【0114】
炎症兆候
ベースライン時ならびに治療2週間後、6週間後および12週間後の炎症兆候(CRPおよびIL−6)の平均値と、それぞれの相対的変化率については、第7表に示す。
【0115】
第7表 炎症兆候(CRP、IL−6)(intention−to−treat群)
【表7】

【0116】
いずれの治療群においても、12週間の治療中に、CRPの中央値の顕著な変化は見られなかった。
【0117】
12週間の治療中に、徐放型プレドニゾン治療群では、IL−6値が減少したが、標準プレドニゾン治療群では変化しなかった。中央値は、徐放型プレドニゾン製剤によって半減したと考えられ、治療12週間後の方が範囲全体がきわめて小さかった。変動性は、両群できわめて高かった。しかし、ベースラインから12週間後までの徐放型プレドニゾン治療による変化は、有意に少なかった(p<0.001)。また、12週間後に、2つの治療群の間では統計的に有意な差が見られた。
【0118】
オステオカルシン
オステオカルシンは、骨代謝に対して感度の高い指標である(Heshmati 1998)。ベースライン(スクリーニング)時および治療12週間後のオステオカルシンの平均値、ならびにそれぞれの相対的変化率については、第8表に示す。
【0119】
第8表 オステオカルシン(intention−to−treat群)
【表8】

【0120】
ベースラインと評価項目の間にも、また2つの治療間にも、差は認められなかった。したがって、低用量プレドニゾンの夜間投与は、骨代謝に対して悪影響を及ぼさず、骨粗鬆症の危険性もないと結論付けることができる。
【0121】
9ヶ月間の非盲検追跡試験の有効性の継続
二重盲目治療期間に登録した288人の患者の内、合計249人の被験者が本試験の非盲検追跡試験に登録し、219人の被験者がこの試験を終了した(第9表を参照)。
【0122】
第9表 被験者の分布
【表9】

【0123】
有効性はこの非盲検追跡試験の主要目的ではなかったが、報告の順序は、前述の二重盲検試験の試験報告書における順序と同じに維持した。非盲検追跡試験では、以下の3つの点に焦点を置いて、有効性データの解釈を行った:
・ 前述の徐放型プレドニゾン群の二重盲検試験中に徐放型プレドニゾンによって達成された硬直期間に対する効果の維持。
【0124】
・ 徐放型プレドニゾンによる治療から3ヶ月後に6回目の来院をした時点における、前述の標準プレドニゾン群の被験者と同じ程度までの早朝硬直の減少。
【0125】
・ 6回目の来院から、徐放型プレドニゾンによる治療後9ヶ月目(来院8回目)または12ヶ月目までの、本試験群における早朝硬直のさらなる減少。
【0126】
1日の平均早朝硬直期間
本試験群に関する、二重盲検試験の開始時(来院2回目)、非盲検追跡試験の開始時(来院5回目)、および試験終了時(来院8回目)における1日の平均早朝硬直期間、ならびに相対的変化率については、第10表および図2に示す。
【0127】
第10表 追跡試験9ヶ月目(来院8回目)における1日の平均早朝硬直期間
【表10】

【0128】
* 早期終了も含む。
【0129】
徐放型プレドニゾンによる治療を開始してから、来院5回目の時点では硬直期間がより長かったが、来院8回目から来院5回目まで、または来院8回目から来院2回目までの相対的変化率を算出すると、前述の標準プレドニゾン群は、ほとんど同じ減少を達成した。追跡試験の試験群の全被験者では、11.22%という平均値のさらなる減少(来院8回目と来院5回目の比較)が得られた。来院2回目から来院8回目の長期治療では、全体で49.71%の硬直期間の減少が認められた。
【0130】
徐放型プレドニゾンによる治療開始後の1日の平均早朝硬直期間(来院2回目/来院5回目)
二重盲検試験開始時(来院2回目)、ならびに追跡試験開始時(来院5回目)、ならびに徐放型プレドニゾンによる治療の3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後および12ヶ月後(3ヶ月間隔)における、1日の平均早朝硬直期間(それぞれの相対的変化率を含む)については、第11表に示す。
【0131】
第11表 徐放型プレドニゾンによる治療開始後の1日の平均早朝硬直期間(来院2回目/来院5回目)
【表11】

【0132】
相対的変化率は、太字体で示した値を指す。
【0133】
* 早期終了も含む。
【0134】
第11表において、早朝硬直期間は、来院とは別に、徐放型プレドニゾンによる治療期間として示されている。相対的変化率は、前述の徐放型プレドニゾン群の場合は来院2回目のデータから、そして前述の標準プレドニゾン群の場合は来院5回目のデータから算出した。合計数の結果は、より多くの入手可能なデータを活用して解釈した。
【0135】
徐放型プレドニゾンによる治療を開始する前に、1日の平均早朝硬直期間は153分であった。治療から3ヶ月後に、硬直期間は平均92分に減少し、6ヶ月後にはさらに74分に減少した。徐放型プレドニゾンによる治療の9ヶ月後に、1日の平均早朝硬直期間は78分であった。前述の徐放型プレドニゾン群の被験者については、徐放型プレドニゾンによる治療の12ヶ月後におけるデータも得られた。これらの被験者では、硬直期間が治療6ヶ月後と9ヶ月後の硬直期間(73分)と類似していた。効果の消失離脱は認められなかった。したがって、1日の平均早朝硬直期間は、徐放型プレドニゾンによる治療の6ヶ月後に半減した。
【0136】
炎症兆候
追跡試験時の炎症兆候(CRPおよびIL−6)の中央値(来院5対来院8)、ならびにそれぞれの絶対的変化率については、第12表および図3に示す。
【0137】
第12表 炎症兆候(CRP、IL−6)
【表12】

【0138】
* 解析上、1.0mg/L未満の値は1.0に設定。
【0139】
** 解析上、200IU/L未満の値は200に設定。
【0140】
*** 早期終了を含む。
【0141】
9ヶ月間の徐放型プレドニゾンによる非盲検追跡試験治療中に、CRPの中央値に顕著な変化は見られなかった。但し、前述の標準プレドニゾン群では、来院6回目に、来院5回目と比べてCRP値が最も減少した。
【0142】
IL−6値の変動性は両群とも高かったことから、平均値よりもむしろ中央値を比較に選んだ。前述の標準プレドニゾン群で、IL−6値は1050IU/Lから570IU/Lに顕著に減少した。したがって、前述の標準プレドニゾン群の被験者では、IL−6の濃度が半減した。このIL−6の減少は、二重盲検試験で記載した徐放型プレドニゾン群におけるIL−6の減少と類似していた。前述の徐放型プレドニゾン群の被験者では、これ以上の減少は認められなかった。
【0143】
安全性の概要
関節リウマチ(RA)治療におけるグルココルチコイドの安全性プロファイルは、十分に確立されている。主な副作用は、骨折につながる骨粗鬆症、消化管障害、心臓血管疾患、感染の危険性の増大、高血糖症、HPA軸の抑制、および眼科障害からなる。これらの副作用は、多くが高用量または中用量で認められるが、低用量では認められないことが認められている(Bijlsma et al.2003、Bijlsma et al.2005、Boers 2004、Buttgereit et al 2005、Conn 2001、Da Silva et al.2005、Saag et al.1994)。
【0144】
徐放型プレドニゾンは、低用量(3〜10mg/日)でRAを治療することを目的としたものであり、標準の低用量IR医薬品と同じ活性薬剤成分を含有する。徐放型プレドニゾンは、推奨される投与時刻と、消化管内における薬物放出時点に関してのみ、標準品と異なる。低用量プレドニゾンの安全性プロファイルは十分に確立されており、標準IR医薬品の標示に反映されている。臨床的な有意差は想定されていない。
【0145】
第3相試験での徐放型プレドニゾン治療下における有害事象の概要
本試験では、徐放型プレドニゾン治療群の被験者59人(41.0%)と、標準プレドニゾン治療群の被験者59人(41.0%)が、治療により発生した少なくとも1つの有害事象(AE)を経験した。合計35人(12.2%)の被験者は、プレドニゾンに関連すると調査者が判断するAEを経験した。プレドニゾンの投薬中止を招くAEは、22人の被験者(7.6%)が経験した。
【0146】
標準プレドニゾンの投与を受けていた1人の被験者が、試験中、プレドニゾンの初回投与から18日以内に死亡した。7人(2.4%)の被験者が重篤有害事象(SAE)を経験し、これら7人の内の1人の被験者のSAEは、プレドニゾンに関連するものであると調査者が判断した。
【0147】
第13表は、AEを経験した被験者の数をAEの種類別に要約したものである(MedDRA基本語、治療群の少なくとも1.0%)。
【0148】
第13表 試験003において最も多く発症したAEおよび薬剤関連AE
【表13】

【0149】
最も多く報告された(安全群の被験者の1.0%を超える頻度)、MedDRA基本語に基づくAEは、悪化に関するいくつかの用語(悪化、拡大、増悪、炎症など)を含めた関節リウマチ(24人、8.3%)、上腹部痛(13人、4.5%)、および鼻咽腔炎(12人、4.2%)であった。これらのAEの発症率は、両治療群で類似していた。
【0150】
9ヶ月の非盲検追跡試験では、127人(51.0%)の被験者が、治療によって発生した少なくとも1つの有害事象(AE)を経験した。合計27人(10.8%)の被験者は、徐放型プレドニゾンに関連すると調査者が判断するAEを経験した。徐放型プレドニゾンの投薬中止を招くAEは、13人の被験者(5.2%)が経験し、68人の被験者(27.3%)が、試験終了時に回復するか不明なAEを発症した。
【0151】
第14表は、最も多く発症したAEをAEの種類別に要約したものである(MedDRA基本語、被験者の2%超)。
【0152】
第14表 最も多く発症した有害事象(全体で1.0%を超える頻度)
【表14】

【0153】
最も多く報告されたAE(MedDRA基本語)は、関節リウマチ(36人、14.5%)および紅潮(13人、5.2%)であった。紅潮は、CRH試験に参加した被験者からしか報告されていない。上気道感染症、体重増加、または背部痛は、それほど多く報告されていない(各症例7人(2.8%))。
【0154】
リスクとベネフィットに関する結論
徐放型プレドニゾンは、RAの治療において経口投与される低用量プレドニゾンの有効性を最適化するように開発された、新規の遅延放出型錠剤である。徐放型プレドニゾンは、標準プレドニゾンに比べて、プレドニゾンの投与量を増加させることなく、RA患者における有効性の改善を示した。この改善は、ひとえに徐放型プレドニゾンに独特の放出特性によって得られたものである。徐放型プレドニゾンと標準プレドニゾンの安全性プロファイルは類似しているため、患者はリスクの増大にさらされることはなかった。
【0155】
徐放型プレドニゾンのベネフィットと主な特徴は、以下の通り要約することができる。
【0156】
事前にプレドニゾンとDMARDによる治療を受けた長期のRA患者では、早朝硬直の有意な減少が得られた。ベースラインに比べて10%の減少が、すでに治療2週目で明らかになっていた。治療の継続に伴い、この減少幅は大きくなり、7週目以降には約30%〜40%で横ばいとなった。二重盲検治療期間中に、患者の50%(中央値)では、早朝硬直期間が少なくとも3分の1(33.9%)減少した。9ヶ月の非盲検追跡試験の終了時には、ベースラインに比べて49%の早朝硬直期間の減少が認められた(ベースラインの平均早朝硬直期間は3時間)。早朝硬直は、RA患者にとって最も苦痛を伴う症状の1つであるため、徐放型プレドニゾンにより少なくとも12ヶ月間認められた減少の持続は、臨床的に有意義な改善であると見なされる。
【0157】
二重盲検試験と9ヶ月の非盲検追跡試験のいずれにおいても、早朝硬直の減少には、炎症性サイトカインIL−6の持続的な平行減少が伴うことから、プレドニゾンの投与時期をRAの概日リズムに適応させるための提案された薬理学的根拠の裏付けとなる。
【0158】
こうした結果は、過去の調査(Karatay 2002)では予想し得なかったことから、驚くべきものである。また、12ヶ月以上にわたりIL−6レベルを低下させる徐放型プレドニゾンの長期的な効果も予期せぬことであった。さらに、IL−6の減少と早朝硬直の減少の長期的な相関関係も、過去の調査では予想し得なかった。
【0159】
早朝時間帯のプレドニゾンの最大血漿レベルは、患者が許容できる時刻である22時頃に徐放型プレドニゾンを投与することによって得られる。
【0160】
プレドニゾン遅延放出型錠剤は、重度、中等度または軽度の疾患に罹患する患者に使用することができる。
【0161】
プレドニゾン遅延放出型錠剤は、罹患期間が短期、中期または長期の患者に使用することができる。
【0162】
プレドニゾン遅延放出型錠剤は、コルチコイドによる治療を事前に受けた患者、治療に対して抵抗性を示す患者、またはコルチコイドの投与を受けたことがない患者に使用することができる。
【0163】
プレドニゾン遅延放出型錠剤は、単剤療法として使用することもできれば、それよりもむしろDMARD、NSAID、TNFα阻害剤、および/または鎮痛剤と組み合わせて使用することもできる。
【0164】
プレドニゾン遅延放出型錠剤は、短期、中期または長期治療に使用することができる。
【0165】

【0166】

【0167】

【0168】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎となるリウマチ性疾患および/または変形性関節症の兆候および症状に罹患する患者を治療する方法であって、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することを含み、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与される、方法。
【請求項2】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約4週間投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約8週間投与することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約12週間投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約12ヶ月間投与すること含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グルココルチコイドの投与量が、前記治療の開始時点で、10mg/日のプレドニゾンまたは同等量の別のグルココルチコイドを超えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記グルココルチコイドの投与量が、維持療法のための10mg/日のプレドニゾンまたは同等量の別のグルココルチコイド以下である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記リウマチ性疾患が、関節リウマチ、強直性脊椎炎、および/またはリウマチ性多発筋痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、経口即時放出型グルココルチコイド、および/またはNSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤、もしくはこれらの組み合わせによる治療を事前に受けていない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、経口即時放出型剤形のグルココルチコイド、および/またはNSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、lL−6阻害剤、鎮痛剤、もしくはこれらの組み合わせから選択される薬剤による治療を事前に受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、経口即時放出型剤形のグルココルチコイドによる前記治療に対して抵抗性を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記即時放出型剤形のグルココルチコイドが、前記遅延放出型剤形で代用される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
さらに有効量のNSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤、またはこれらの組み合わせを前記患者に投与することも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記治療が、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することから本質的に構成され、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記遅延放出型剤形が、投与後約2時間〜約6時間の遅延時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記遅延放出型剤形が、投与後約3時間〜約5時間の遅延時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記遅延放出型剤形が、前記遅延時間に達した後2時間以内の溶解時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記遅延放出型剤形が、pHとは無関係の薬剤放出挙動を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記遅延放出型剤形が錠剤またはカプセルである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記遅延放出型剤形が、非可溶性/非膨潤性コーティングと、前記活性剤および崩壊剤ならびに/または膨潤剤を含有する核とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記グルココルチコイドが、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルオコルトロン、クロプレドノール、デフラザコート、トリアムシノロン、ならびにこれらの対応する塩およびエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記グルココルチコイドが、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、クロプレドノールおよびデフラザコート、ならびにこれらの対応する塩およびエステルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記遅延放出型剤形が、即時放出型剤形での前記グルココルチコイドの投与に比べてより低用量のグルココルチコイドで有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が炎症に罹患する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記グルココルチコイドが夜間に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記グルココルチコイドが約午後9時から約午後11時の間に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
基礎となるリウマチ性疾患および/または変形性関節症による早朝硬直および疼痛に罹患する患者を治療する方法であって、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することを含み、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与される、方法。
【請求項28】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約4週間投与することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約8週間投与することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約12週間投与することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約12ヶ月間投与することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記グルココルチコイド投与量が、前記治療の開始時点で、約10mg/日のプレドニゾンまたは同等量の別のグルココルチコイドよりも多い、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記グルココルチコイドの投与量が、維持療法のための約10mg/日以下のプレドニゾンまたは同等量の別のグルココルチコイド以下である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記リウマチ性疾患が、関節リウマチ、強直性脊椎炎および/またはリウマチ性多発筋痛である、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、経口即時放出型グルココルチコイド、NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤、またはこれらの組み合わせによる治療を事前に受けていない、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が、経口即時放出型剤形のグルココルチコイド、NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤、またはこれらの組み合わせから選択される薬剤による治療を事前に受けている、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、経口即時放出型剤形のグルココルチコイドによる前記治療に対して抵抗性を示す、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記即時放出型剤形のグルココルチコイドが、前記遅延放出型剤形で代用される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
さらに有効量のNSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤、またはこれらの組み合わせを前記患者に投与することも含む、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記治療が、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することから本質的に構成され、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
前記遅延放出型剤形が、投与後約2時間〜約6時間の遅延時間を有する、請求項27に記載の方法、
【請求項42】
前記遅延放出型剤形が、投与後約3時間〜約5時間の遅延時間を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項43】
前記遅延放出型剤形が、前記遅延時間に達した後約2時間以内の溶解時間を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記遅延放出型剤形が、pHとは無関係の薬剤放出挙動を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項45】
前記遅延放出型剤形が錠剤またはカプセルである、請求項27に記載の方法。
【請求項46】
前記遅延放出型剤形が、非可溶性/非膨潤性コーティングと、前記活性剤および崩壊剤ならびに/または膨潤剤を含有する核とを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項47】
前記グルココルチコイドが、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルオコルトロン、クロプレドノール、デフラザコート、トリアムシノロン、あるいはこれらの対応する薬学的に許容される塩および/またはエステルである、請求項27に記載の方法。
【請求項48】
前記グルココルチコイドが、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、クロプレドノール、およびデフラザコート、ならびにこれらの対応する薬学的に許容される塩および/またはエステルである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記遅延放出型剤形が、即時放出型剤形での前記グルココルチコイドの投与に比べてより低用量のグルココルチコイドで有効である、請求項27に記載の方法。
【請求項50】
前記患者が炎症に罹患する、請求項27に記載の方法。
【請求項51】
前記グルココルチコイドが夜間に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項52】
前記グルココルチコイドが約午後9時から約午後11時の間に投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
基礎となる炎症によるインターロイキン6レベルの概日変動を有する患者を治療する方法であって、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することを含み、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与され、前記遅延放出型剤形が、前記患者のインターロイキン6レベルが日内ピークに達した時点または達する前に前記グルココルチコイドが放出されるように投与される方法。
【請求項54】
前記インターロイキン6レベルのピークが、午前4時から午前8時の間に生じる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記インターロイキン6レベルの増加が、リウマチ性疾患によって引き起こされる、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記リウマチ性疾患が、関節リウマチ、強直性脊椎炎、リウマチ性多発筋痛、喘息、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約4週間投与することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約8週間投与することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約12週間投与することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記治療が、前記グルココルチコイドを少なくとも約12ヶ月間投与することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
前記グルココルチコイド投与量が、前記治療の開始時点で、約10mg/日のプレドニゾンまたは同等量の別のグルココルチコイドよりも多い、請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記グルココルチコイドの投与量が、維持療法のための約10mg/日以下のプレドニゾンまたは同等量の別のグルココルチコイド以下である、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記患者が、経口即時放出型グルココルチコイド、NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤、またはこれらの組み合わせによる治療を事前に受けていない、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
前記患者が、経口即時放出型剤形のグルココルチコイド、NSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤、またはこれらの組み合わせから選択される薬剤による治療を事前に受けている、請求項53に記載の方法。
【請求項65】
前記患者が、経口即時放出型剤形のグルココルチコイドによる前記治療に対して抵抗性を示す、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記即時放出型剤形のグルココルチコイドが、前記遅延放出型剤形で代用される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
さらに有効量のNSAID、DMARD、TNFα阻害剤、IL−1阻害剤、IL−6阻害剤、鎮痛剤、またはこれらの組み合わせを前記患者に投与することも含む、請求項53に記載の方法。
【請求項68】
前記治療が、遅延放出型剤形に含有される有効量のグルココルチコイドを前記患者に投与することから本質的に構成され、前記治療が1日1回少なくとも約2週間投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項69】
前記遅延放出型剤形が、投与後約2時間〜約6時間の遅延時間を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項70】
前記遅延放出型剤形が、投与後約3時間〜約5時間の遅延時間を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項71】
前記遅延放出型剤形が、前記遅延時間に達した後約2時間以内の溶解時間を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項72】
前記遅延放出型剤形が、pHとは無関係の薬剤放出挙動を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項73】
前記遅延放出型剤形が錠剤またはカプセルである、請求項53に記載の方法。
【請求項74】
前記遅延放出型剤形が、非可溶性/非膨潤性コーティングと、前記活性剤および崩壊剤ならびに/または膨潤剤を含有する核とを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項75】
前記グルココルチコイドが、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルオコルトロン、クロプレドノール、デフラザコート、トリアムシノロン、あるいはこれらの対応する薬学的に許容される塩および/またはエステルである、請求項53に記載の方法。
【請求項76】
前記グルココルチコイドが、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、クロプレドノール、およびデフラザコート、あるいはこれらの対応する薬学的に許容される塩および/またはエステルである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記遅延放出型剤形が、即時放出型剤形での前記グルココルチコイドの投与に比べてより低用量のグルココルチコイドで有効である、請求項53に記載の方法。
【請求項78】
前記グルココルチコイドが夜間に投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項79】
前記グルココルチコイドが約午後9時から約午後11時の間に投与される、請求項78に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−545546(P2009−545546A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522183(P2009−522183)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006894
【国際公開番号】WO2008/015018
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(507077835)ニテック ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】Nitec Pharma AG
【住所又は居所原語表記】Kaegenstrasse 17, CH−4153 Reinach, Switzerland
【Fターム(参考)】