説明

リクライニング装置

【課題】本発明は、簡単な構成で、低コストで製作でき、しかも、設置面積を小さくできるシートのリクライニング装置の提供を目的とする。
【解決手段】リクライニングレバー5を有する装置本体2と、ウォークインレバー1とを備えている。ウォークインレバー1は、ウォークインレバー操作部12と、リクライニングレバー当接部11bとを備えている。ウォークインレバー操作部12の引上げ操作に伴うウォークインレバー1の回動に際して、リクライニングレバー当接部11bがリクライニングレバー5に当接し押圧操作してリクライニングレバーを連動させてシートバック101を前倒しできるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートのリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車のフロントシートや3列シートにおける前後中央のシートには、リクライニング装置が設けられている。又、リクライニングレバーに加えてウォークインレバーをシートバックの後方側に突出させるように配設し、後部側シートに着座した着座者が着座した状態でウォークインレバーを操作してシートバックを前倒しできるようにしたものが広く知られている。
【0003】
その際、ウォークインレバーを下方側に押し下げ操作することによりシートバックを前倒しできるようにしておくと、例えば後部シートに着座した着座者が不意にウォークインレバーを下方側に踏んでしまうおそれがある。そのため、ウォークインレバーを上方側に引き上げ操作することによりシートバックを前倒しできるようにしておくのが好ましい。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に、ウォークインレバーを上方側に引き上げ操作することによりシートバックを前倒しできるようにしたものが提案されている。この特許文献1に記載のものは、リクライニングレバー(レリーズレバー)の下方側に、回転可能に配置したプーリ部材と、プーリ部材とリクライニングレバーとを連動可能に連結したケーブルとからウォークインレバーを構成している。そして、プーリ部材に連結した操作用のウォークインケーブルを引き上げ操作することにより、プーリ部材を介して力の伝達ロスを少なくしてリクライニングレバーを連動させてシートバックを前倒しできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−50868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものは、プーリ部材とケーブルとからウォークインレバーを構成しているため、部品点数が多くなる。又、プーリ部材を、リクライニングレバーと離れた下方側に配置しているため、設置面積が大きくなってしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は、簡単な構成で、低コストで製作でき、しかも、設置面積を小さくできるシートのリクライニング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、リクライニングレバー及びウォークインレバーを備え、前記リクライニングレバーをシートのシートバックの前方側から可動操作してシートバックを前倒しできるようにするとともに、前記ウォークインレバーをシートバックの後方側から可動操作してシートバックを前倒しできるようにしたシートのリクライニング装置であって、前記ウォークインレバーは、前記リクライニングレバーに対して可動するように配設されているとともに、ウォークインレバー操作部と、リクライニングレバー当接部とを備え、前記ウォークインレバー操作部は、引上げ操作されることにより、このウォークインレバーを可動操作できるように構成され、前記リクライニングレバー当接部は、前記ウォークインレバー操作部の引上げ操作に伴う前記リクライニングレバーの可動に際して、前記リクライニングレバーを連動させてシートバックを前倒しできるように、前記リクライニングレバーに当接して押圧操作することを特徴とするリクライニング装置を提供する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に係るリクライニング装置において、前記リクライニングレバーは、シートに回動自在に取り付けられた板状体からなるリクライニングレバー本体を備え、前記ウォークインレバーは、板状体からなるウォークインレバー本体を備え、前記ウォークインレバー操作部は、前記ウォークインレバー本体の後端部に配設され、前記ウォークインレバー本体は、前記リクライニングレバー本体と厚さ方向に重ね合わされるようにして配設されていることを特徴とするリクライニング装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1によれば、ウォークインレバー当接部は、ウォークインレバー操作部の引上げ操作に伴うウォークインレバーの可動に際して、リクライニングレバーを連動させてシートバックを前倒しできるように、リクライニングレバーに当接して押圧操作する。
【0011】
これにより、ウォークインレバー当接部によって、リクライニングレバーを直接押圧操作できる。従って、1つのウォークインレバーによってリクライニングレバーを連動操作でき、従来のようにリクライニングレバーとウォークインレバーとを連結したケーブル等の部材を不要にできる。よって、簡単な構成で、低コストで製作できる。しかも、ウォークインレバー当接部を、リクライニングレバーに当接させるため、両者を離すことなく設置でき、設置面積の小さいものにできる。
【0012】
前記請求項2によれば、ウォークインレバー本体は、リクライニングレバー本体と厚さ方向に重ね合わされるように配設されている。
【0013】
これにより、ウォークインレバーとウォークインレバーとの設置面積を、より一層、少なくでき、よりコンパクトなものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のリクライニング装置に用いられる一実施の形態のウォークインレバーの側面図である。
【図2】本発明のリクライニング装置を組み付けたフロントシートのシートフレーム構造の一実施の形態の斜視図である。
【図3】本発明のリクライニング装置の分解斜視図である。
【図4】本発明のリクライニング装置の側面図である。
【図5】ウォークインレバーを引き上げ操作した状態のリクライニング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のウォークインレバーの側面図、図2は、本発明のウォークインレバーを有するリクライニング装置を組み付けたフロントシートのシートフレーム構造の一実施形態の斜視図、図3は、ウォークインレバーを有するリクライニング装置の分解斜視図である。
【0016】
本発明のリクライニング装置10は、図2に示すように、例えばフロントシート100のバックフレーム101とクッションフレーム102とを回動自在に連結した連結部に組み付けられる。
【0017】
このリクライニング装置10は、図3に示すように、装置本体2と、ウォークインレバー1とを備えている。
【0018】
装置本体2は、バックフレーム101とクッションフレーム102(図2参照)とを回動自在に連結した連結部材3と、保持部材4と、リクライニングレバー5とを備えている。
【0019】
この実施形態の連結部材3は、円板状の第1連結部材31(符号のみ表示)と、第1連結部材31に重ね合わされるようにして第1連結部材31に対して回転し得るように配設された第2連結部材32とを備えている。
【0020】
第1連結部材31は、バックフレーム101に固定されている。又、これらの第1連結部材31と第2連結部材32との間には、図示しないが、ロック・ロック解除装置が設けられている。そして、このロック・ロック解除装置によって、第1連結部材31と第2連結部材32との回転をロック・ロック解除可能としている。一方、第2連結部材32は、保持部材4に固定されている。
【0021】
この保持部材4は、下部側がクッションフレーム102に固定されている。又、保持部材4の上部側には、軸挿通孔41が設けられており、この軸挿通孔41に、ロック・ロック解除操作用軸71が挿通されている。
【0022】
詳しくは、バックフレーム101に回転自在に保持された軸7の端部に、ロック・ロック解除操作用軸71が設けられている。そして、ロック・ロック解除操作用軸71は、第1連結部材31及び第2連結部材32に明けられた軸挿通孔33に回転可能に通されているとともに、連結部材保持部4の軸挿通孔41に回転可能に通されている。
【0023】
そして、このロック・ロック解除操作用軸71が回転操作されることにより、互いに回転不能にロックした第1連結部材31と第2連結部材32とがロック解除されるようになっている。
【0024】
又、保持部材4は、その上部側に、ゼンマイバネ6の径内側の巻き始端6aが係止されている。このゼンマイバネ6は、バックフレーム101を前方側に付勢する付勢部材としてのもので、ゼンマイバネ6の径外側の巻き終端6bは、バックフレーム101に係止されている。
【0025】
リクライニングレバー5は、略U字状を呈する板状体から構成されたリクライニングレバー本体5aと、リクライニングレバー本体5aの前部側に配設されリクライニングレバー5を可動操作するためのリクライニングレバー操作部51を備えている。又、リクライニングレバー本体5aの後部の上端には、軸係止孔52が設けられている。
【0026】
この軸係止孔52は、上記保持部材4の軸挿通孔41に通されたロック・ロック解除操作用軸71と回転不能に係止するように構成されている。又、この軸係止孔52がロック・ロック解除操作用軸71に係止されることにより、図2に示すように、リクライニングレバー操作部51がバックフレーム101の前方側に配置されている。そして、このリクライニングレバー操作部51が引き上げ操作されることにより、ロック・ロック解除操作用軸71が図4の時計方向に回転して第1連結部材31と第2連結部材32とのロックが解除される。
【0027】
又、リクライニングレバー本体5aにおける軸係止孔52の下方側には、図3に示すように、保持部材4側(図3の左側)に突出するように突片53が設けられている。また、リクライニングレバー5には、コイルバネ54が付設されている。
【0028】
このコイルバネ54は、その一端が保持部材4に係止され、その他端がリクライニングレバー5に係止されるようにして配設されており、リクライニングレバー5を、常時図4の反時計方向(リクライニングレバー操作部51が下方向となる方向)に付勢している。尚、図4及び図5では、説明の都合上、コイルバネ54の一部を省略している。
【0029】
次に、ウォークインレバー1について説明する。ウォークインレバー1は、この実施形態では、図1に示すように、ウォークインレバー本体11と、このウォークインレバー本体11を可動操作するためのウォークインレバー操作部12とを備えている。
【0030】
ウォークインレバー操作部12は、指を入れる指挿入孔12aを有する環部材12bと、環部材12bとウォークインレバー本体11とを連結したベルト部材12cとを備えている。
【0031】
ベルト部材12cは、長手方向を上下方向に沿わせるようにして、その下端が、後述のウォークインレバー本体11の操作部材連結部11cにボルト12dを介して取り付けられている。又、ベルト部材12cの上端には、環部材12bが回動自在に取り付けられている。
【0032】
ウォークインレバー本体11は、長尺板状のものから構成されており、その後端側に、ベルト部材12cに連結される操作部材連結部11cを備えている。
【0033】
又、ウォークインレバー本体11は、その前端側に、軸支用孔11aを備えている。そして、この軸支用孔11aに、上記保持部材4に設けられた支持軸42(図3に図示)が回転自在に通されることにより、ウォークインレバー本体11が支持軸42に軸支されている。又、この軸支により、環部材12bがバックフレーム101の後方側に配置されている。
【0034】
又、ウォークインレバー本体11は、軸支用孔11aと操作部材連結部11cとの中間部の一部に、リクライニングレバー5と厚さ方向に重ね合わされる重ね合わせ部11dを備えている。また、この重ね合わせ部11dには、上記保持部材4の突片53と当接するリクライニングレバー当接部11bが設けられている。
【0035】
また、この実施形態では、ウォークインレバー本体11は、その前端に、上記保持部材4の下端面に突き当てて回り止めする回り止め部11eを備えている。さらに、ウォークインレバー本体11には、操作部材連結部11cを下方側に付勢するコイルバネ11fが付設されており、このコイルバネ11fによってウォークインレバー本体11が常時図4の時計方向に付勢されて回り止め部11eが保持部材4の下端面に突き当たるようになっている。
【0036】
次に、以上のように構成されたウォークインレバー1の動作について説明する。例えば後部側のシートに着座した着座者が、後部側のシートに着座した状態で、フロントシ−ト100の後方側から、図4に示す状態のウォークインレバー1の環部材12bにおける指挿入孔12aに手の指を挿入し、環部材12bを上方に引き上げ操作する。
【0037】
これにより、図5に示すように、ウォークインレバー1のウォークインレバー本体11が支持軸42を中心にして図5の反時計方向に回動する。又、その回動に際して、リクライニングレバー当接部11bがリクライニングレバー5の突片53と当接して押圧する。
【0038】
そして、この突片53が押圧されることによって、リクライニングレバー5が、ロック・ロック解除操作用軸71を中心にしてロック・ロック解除操作用軸71と共に、図5の時計方向に回動する。これにより、互いに回転不能にロックした第1連結部材31と第2連結部材32とがロック解除される。又、そのロック解除によって、バックフレーム101がクッションフレーム102(図2参照)に対して回動可能状態になり、バックフレーム101を前倒しできる。
【0039】
以上のように構成することにより、1つのウォークインレバーによってリクライニングレバーを連動操作でき、従来のようにリクライニングレバーとウォークインレバーとを連結したケーブル等の部材を不要にできる。従って、簡単な構成で、低コストで製作できる。しかも、ウォークインレバー本体11の重ね合わせ部にリクライニングレバー当接部を配設しているため、ウォークインレバーとウォークインレバーとの設置面積を、より一層、少なくでき、よりコンパクトなものにできる。
【0040】
尚、上記実施形態では、ウォークインレバー1の回動操作による連結部材3のロック解除によってシートを前傾しのみできるようにしているが、この形態のものに限らず、例えばリクライニングレバー5の回動操作によってシートを前傾しできると同時に、シートを前方側に移動させるウォークイン形式のものにも適応でき、適宜変更できる。
【0041】
又、上記実施形態では、ウォークインレバー1を保持部材4に回動自在に保持してウォークインレバー1の回動に際してリクライニングレバー5を連動させているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。
【0042】
例えばウォークインレバー1を保持部材4に摺動自在に保持してウォークインレバー1の摺動に際してリクライニングレバー5を連動させ、その連動に際して連結部材3をロック解除させるようにしても良い。
【0043】
又、上記実施形態では、リクライニングレバー5に被当接部としての突片53を設けているが、この形態のものに限らず、リクライニングレバー当接部11bを突片から構成し、リクライニングレバー5に被当接部として、突片が移動可能な溝から構成しても良く、適宜変更できる。
【0044】
また、上記実施形態では、本発明のシ−トは、自動車用シートに実施されているが、例えば電車、応接椅子等のシ−トとして実施することもでき、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ウォークインレバー
2 装置本体
3 連結部材
4 保持部材
5 リクライニングレバー
10 リクライニング装置
11 ウォークインレバー本体
11b リクライニングレバー当接部
11d 重ね合わせ部
12 ウォークインレバー操作部
53 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニングレバー及びウォークインレバーを備え、前記リクライニングレバーをシートのシートバックの前方側から可動操作してシートバックを前倒しできるようにするとともに、前記ウォークインレバーをシートバックの後方側から可動操作してシートバックを前倒しできるようにしたシートのリクライニング装置であって、
前記ウォークインレバーは、前記リクライニングレバーに対して可動するように配設されているとともに、ウォークインレバー操作部と、リクライニングレバー当接部とを備え、
前記ウォークインレバー操作部は、引上げ操作されることにより、このウォークインレバーを可動操作できるように構成され、
前記リクライニングレバー当接部は、前記ウォークインレバー操作部の引上げ操作に伴う前記リクライニングレバーの可動に際して、前記リクライニングレバーを連動させてシートバックを前倒しできるように、前記リクライニングレバーに当接して押圧操作することを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記リクライニングレバーは、シートに回動自在に取り付けられた板状体からなるリクライニングレバー本体を備え、
前記ウォークインレバーは、板状体からなるウォークインレバー本体を備え、
前記ウォークインレバー操作部は、前記ウォークインレバー本体の後端部に配設され、
前記ウォークインレバー本体は、前記リクライニングレバー本体と厚さ方向に重ね合わされるようにして配設されていることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213754(P2010−213754A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60811(P2009−60811)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000109738)デルタ工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】