説明

リソグラフィー用リンス液

【課題】 リソグラフィー技術によりレジストパターンを形成させる際、レジストパターンの表面を接触角70度以上に改質してパターン倒れを迅速かつ効果的に防止して、高品質の製品を製造するための新規なリンス液を提供する。
【解決手段】 (A)水溶性含フッ素化合物及び(B)オルガノシラン化合物を含有する溶液からなるリソグラフィー用リンス液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アスペクト比の微細パターン形成時におけるパターン倒れを防止するのに有効なリソグラフィー用リンス液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの小型化、集積化とともに、この微細加工用光源として、g線、i線のような紫外光、KrF、ArFのようなエキシマレーザー光などの使用及びそれに適合したホトレジスト組成物、例えば化学増幅型ホトレジスト組成物の開発が進められ、この方面におけるリソグラフィー技術上の課題の多くはすでに解決されつつある。
【0003】
ところで、リソグラフィー技術により微細なレジストパターン、特に高アスペクト比のパターンを形成させる場合に生じる問題の1つにパターン倒れがある。このパターン倒れは、基板上に多数のパターンを並列状に形成させる際、隣接するパターン同士がもたれ合うように近接し、時によってはパターンが基部から折損したり、剥離するという現象であり、このようなパターン倒れが生じると、所望の製品が得られないので、製品の歩留りや信頼性の低下を引き起こすことになる。
【0004】
ところで、このパターン倒れの原因は既に究明され(非特許文献1参照)、レジストパターンを現像した後のリンス処理において、リンス液が乾燥する際、そのリンス液の表面張力により発生することが分っている。
【0005】
したがって、レジストパターンがリンス液に浸漬している間、すなわち現像後のリンス処理では、パターンを倒す力は生じないが、乾燥過程でリンス液が除去される際に、レジストパターン間にリンス液の表面張力に基づく応力が作用し、レジスト倒れを生じることになる。
【0006】
このため、理論的には表面張力の小さい、すなわち接触角の大きいリンス液を用いれば、パターン倒れを防止することができるので、これまでリンス液に表面張力を低下させる、あるいは接触角を増大させる化合物を添加し、パターン倒れを防止する試みが多くなされている。
【0007】
例えば、イソプロピルアルコールを添加したリンス液(特許文献1参照)、リンス液としてイソプロピルアルコールと水、又はイソプロピルアルコールとフレオンのような混合物を用いて、現像後のレジスト表面とリンス液との接触角を60〜120度の範囲になるように調整する方法(特許文献2参照)、レジスト材料の母材としてノボラック樹脂又はヒドロキシポリスチレン樹脂を用いたレジストに対し、アルコール類、ケトン類又はカルボン酸類の添加により、表面張力が30〜50dyne/cmの範囲に調整されたリンス液を使用する方法(特許文献3参照)、現像液とリンス液の少なくとも一方にフッ素系界面活性剤を添加する方法(特許文献4参照)、水によるリンス工程とレジストが水中に浸漬した状態で水より比重が大きく、表面張力が小さい非水混和性液体例えばペルフルオロアルキルポリエーテルで置換した後、乾燥する方法(特許文献5参照)、分子中にアミノ基、イミノ基又はアンモニウム基と炭素数1〜20の炭化水素基を有し、分子量45〜10000の窒素含有化合物を含有したリンス剤組成物(特許文献6参照)、現像液としてフッ素化カルボン酸又はフッ素化スルホン酸或いはそれらの塩を含む組成物を用いる方法(特許文献7参照)、現像された基板をリンス処理したのちヒドロフルオロエーテルを含む有機系処理液で処理する方法(特許文献8参照、特許文献9参照)などが提案されている。
【0008】
しかしながら、これらのリンス液やリンス方法は、いずれも完全にパターン倒れを防止することができない上、形成されるパターンの物性、特に精度がそこなわれるおそれがあるため、実用化するには必ずしも満足しうるものではない。
他方、現在、フッ素系界面活性剤として用いられているC817SO3H(PFOS)は、日本国内では指定化学物質となっており、また、米国の生態影響関連規則である重要新規利用規則(SNUR)の対象ともなっているため、取り扱いが制限されている。例えばSNUR規制に該当する物質は、健康若しくは環境を損なう不当なリスクをもたらすおそれがあるため、作業場での保護具の着用、有害性についての従業員への周知、教育、訓練等を行なうことが必要とされ、さらに廃棄処分についても規制がある。
【0009】
【特許文献1】特開平6−163391号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】特開平5−299336号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献3】特開平7−140674号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献4】特開平7−142349号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献5】特開平7−226358号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献6】特開平11−295902号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献7】特開2002−323773号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献8】特開2003−178943号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献9】特開2003−178944号公報(特許請求の範囲その他)
【非特許文献1】「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.Appl.Phys.)」、第32巻、1993年、p.6059−6064
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、リソグラフィー技術によりレジストパターンを形成させる際、レジストパターンの表面を接触角70度以上に改質してパターン倒れを迅速かつ効果的に防止して、高品質の製品を製造するための新規なリンス液を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、リソグラフィー技術によりホトレジストパターンを形成させる際のパターン倒れを効果的に防止でき、しかも処理後のレジストパターンの物性をそこなうことのないリンス液を開発するために鋭意研究を重ね、水によるリンス処理の前又は後に特定の官能基をもつ水溶性含フッ素化合物を含む溶液により処理すれば、レジスト自体の物性をそこなうことなくそのレジストパターン表面の純水に対する接触角を70度以上に上昇させ、パターン倒れを防止し得ることを見出したが、さらに研究を進めた結果、この際オルガノシラン化合物を併用すれば、このリンス液の乾燥時間を短縮しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、(A)水溶性含フッ素化合物及び(B)オルガノシラン化合物を含有する溶液からなるリソグラフィー用リンス液を提供するものである。
【0013】
本発明のリソグラフィー用リンス液の(A)成分としては、一般式
【化1】

(式中のR1及びR2は、それぞれ水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された炭素数1〜5のアルキル基若しくは置換アルキル基であり、R1とR2はたがいに連結して両者が結合しているSO2及びNとともに五員環又は六員環を形成していてもよい)、
一般式
【化2】

(式中のRfは水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された炭素数1〜5のアルキル基若しくは置換アルキル基、n及びmは2又は3の整数である)
又は一般式
f´−COOH (III)
(式中のRf´は炭素数8〜20の少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル基である)
で表わされる水溶性含フッ素化合物が用いられる。
このような水溶性含フッ素化合物としては、一般式(I)及び(II)で表わされる化合物が、取り扱いが容易であるという点から好ましい。
【0014】
上記一般式(I)におけるR1及びR2は、例えばペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基のようなペルフルオロアルキル基を挙げることができるが、好ましいのは、R1とR2が連結して、それらが結合しているSO2基及び窒素原子とともに五員環又は六員環を形成している化合物、例えば
【化3】

で表わされるペルフルオロ(1,3‐プロパンジスルホン酸イミド)である。
【0015】
また、一般式(II)におけるRfは、少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1〜5のアルキル基又は置換基として水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基又はアミノ基をもつ置換アルキル基であり、n及びmが2又は3の化合物である。
【0016】
このような化合物としては、例えばペルフルオロ(3‐モルホリノプロピオン酸)、ペルフルオロ(2‐メチル‐3‐モルホリノプロピオン酸)、ペルフルオロ(4‐モルホリノ酪酸)などを挙げることができるが、これらの中で特に好ましいのは、式
【化4】

で表わされるペルフルオロ(2‐メチル‐3‐モルホリノ酪酸)である。
【0017】
これらのフッ素化合物は、原料のフッ素化されていない化合物を公知の方法により電解フッ素化することにより製造することができる。また、一般式(I)の中のR1及びR2がトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基そのものは、登録商標名「フロラード」として市販されている。
また、一般式(III)におけるRf´としては、デカンカルボン酸、ドデカンカルボン酸、テトラデカンカルボン酸、ヘキサデカンカルボン酸の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを挙げることができるが、特に好ましいのは、ペルフルオロ(デカンカルボン酸)である。
なお、高級脂肪酸のフッ素化物は、水に溶解しないため、アルコール系溶剤、例えば水とメチルアルコール又はイソプロピルアルコールとの混合溶剤、水とトリフルオロエタノールとの混合溶剤を用いる必要がある。この場合の水とアルコールとの混合割合は体積比で60:40ないし99:1の範囲である。
【0018】
これらのフッ素化合物は、水又はアルコール系溶剤、例えばメチルアルコール若しくはエチルアルコールと水との混合物に溶解した溶液として用いられる。
【0019】
通常、リソグラフィー技術を用いて半導体デバイスを製造する場合、基板又は反射防止膜を設けた基板の表面にホトレジスト膜を設け、これにマスクパターンを通して紫外光線やレーザー光や電子線のような放射線を照射して像形成露光を行ったのち、現像処理してレジストパターンを形成させ、水リンスを行ってレジスト残渣や付着現像液などを除去するが、この際のレジストパターンの水に対する接触角が小さいとパターン倒れを生じ、製品の生産効率の低下を招く。本発明のリンス液は、レジストパターンの水に対する接触角を高める作用を有するので、水リンスに先立って、これにより処理することにより、水リンスの際のこのようなパターン倒れを防止することができる。
【0020】
例えば、現像時において現像液との接触性を高め、マスクパターンに対する忠実性を確保するために、現像処理に先立って、カチオン性水溶性樹脂を含むリンス液で処理するか、現像液として、カチオン性水溶性樹脂を含む現像液を用いて現像することが行われるが、この場合にはレジストパターンの水に対する接触角は40度以下になることが多いので、本発明のリンス液による処理が特に有効である。
【0021】
上記のカチオン性水溶性樹脂としては、例えばビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルモルホリン、ビニルカプロラクタムの中から選ばれた少なくとも1種の含窒素複素環をもつモノマーの重合体又は共重合体或いはこのような含窒素複素環基をもつモノマーと、単独で重合させた場合に水溶性ポリマーを形成するモノマー、例えばビニルアルコール、ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、四級化ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アリルアミン、ジアリルアミンなどとの共重合体が用いられている。
【0022】
そして、このようなカチオン性水溶性樹脂を含むリンス液又は現像液で濡れたホトレジスト膜表面に、上記のフッ素化合物分子が接触すると、あらかじめ付着しているカチオン性水溶性樹脂分子とフッ素化合物分子との間で相互作用を起し、複合体分子が形成される結果、ホトレジスト膜表面の純水に対する接触角が70度以上に上昇し、結果的に後続の水リンス処理に際し生じるパターン倒れが防止されることになると予想される。
このように、本発明のリンス液における(A)成分は、現像後におけるレジストパターン、特にアスペクト比の大きいパターンのパターン倒れを防止する役割を果している。
【0023】
次に、本発明のリソグラフィー用リンス液の(B)成分としては、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリメチルメトキシシランなどのオルガノシラン化合物が用いられるが、特に一般式
【化5】

(式中のR3、R4及びR5は低級アルキル基であり、nは0〜5の整数である)
で表わされるシリル基をもつ脂肪酸が用いられる。
【0024】
このようなシリル基をもつ脂肪酸としては、例えばトリメチルシリル酢酸、トリエチルシリル酢酸、ジメチルエチルシリル酢酸、トリメチルシリルプロピオン酸、ジメチルエチルシリルプロピオン酸、トリメチルシリル酪酸などを挙げることができるが、これらの中でトリメチルシリルプロピオン酸が特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
この(B)成分は、リンス液を塗布する際に生じるマイクロバブルを消泡させ、また大型サイズのウェーハに塗布する場合でも、(A)成分をホトレジスト膜上に均一に分布して作用させ、さらに水切れをよくする役割を果すものである。
【0026】
本発明のリソグラフィー用リンス液においては、(A)成分を0.0001〜5.0質量%、好ましくは0.0005〜1.0質量%、(B)成分を0.0001〜10.0質量%、好ましくは0.0005〜5.0質量%の濃度で含有させる。この際、(B)成分の濃度は(A)成分の濃度の4倍を超えない範囲で用いるのが好ましい。
この(B)成分の添加により、このリンス液の本来の効果、すなわち(A)成分に基づく接触角を増大させるという効果は、何らそこなわれることはない。
【0027】
本発明のリソグラフィー用リンス液で処理するには、現像処理した後のホトレジスト膜の表面に、スピンコーティング、スプレー又は浸漬などにより塗布することによって行われる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のリソグラフィー用リンス液で処理すると、ホトレジストパターン表面の接触角を70度以上に増大させて後続の水リンス処理の際に起るパターン倒れを効果的に防止しうる上、大型サイズのウェーハを処理した場合でもリンス液中の有効成分をウェーハ表面全体にわたり均一に分散させて、リンス液の作用を均一化できる。また、水切り時間を短縮させることにより、半導体デバイスの製造に要する作業時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例中の接触角及び水切り時間は次のようにして測定した。
【0030】
(1)接触角;
接触角計(協和界面科学社製、製品名「CA−X150」)を用いて測定した。
【0031】
(2)水切り時間;
リンス液による処理後、2000rpmにて基板を回転し乾燥させた際に要した時間を秒で表わした。
【0032】
参考例
シリコンウェーハ上に反射防止膜[ブリューワ(Brewer)社製、製品名「ARC29A」]を塗布し、215℃にて60秒間加熱処理し膜厚77nmの反射防止膜を形成した。この反射防止膜上に、
樹脂成分として、下記一般式
【化6】

で表わされる樹脂成分及び該樹脂成分に対して、3.0質量%のトリフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホネート及び0.35質量%のトリエタノールアミンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合溶剤(混合比=6:4)に溶解し、全体の固形分濃度を11質量%とした化学増幅型ポジ型ホトレジストを塗布し、膜厚460nmのホトレジスト膜を形成した。
【0033】
このホトレジスト膜が形成された基板に対して、NikonS302A(ニコン社製)を用いて波長193nmの光で露光処理を行い、続いて130℃で90秒加熱処理した。
露光終了後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて23℃で60秒の現像処理を行った。
【0034】
次いで、このようにして得たラインアンドスペース(110nm/150nm)パターンを、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールの等量混合物を共重合させて得た水溶性樹脂の0.1%水溶液で処理して、水との接触角が25度の表面をもつレジストパターンを形成させた。
【実施例1】
【0035】
ペルフルオロ(2‐メチル‐3‐モルホリノプロピオン酸)[以下PFMO3(ジェムコ社製)と示す]、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)アミン(以下EF−N331と示す)及びペルフルオロ(デカンカルボン酸)(以下PDCと示す)の0.005%水溶液のそれぞれに対し、トリメチルシリル酢酸を0.02質量%の濃度で添加し、リソグラフィー用リンス液を調製した。
次いで、参考例で得たレジストパターンにスピンナーを用いてこれらのリンス液のそれぞれを、23℃、2000rpm、6秒の条件下で塗布後、23℃の純水を用い、500rpmで3秒間リンスした。このようにして処理したサンプルについて、リンス処理前後の接触角を測定し、その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
この表から分るように、本発明のリソグラフィー用リンス液で処理することにより、接触角は著しく増大する。
【実施例2】
【0038】
6インチ(152.4mm)シリコンウェーハ上に反射防止膜形成用液[ブリューワ(Brewer)社製、製品名「ARC29A」]を塗布し、215℃にて60秒間加熱処理し膜厚77nmの反射防止膜を形成した。
次に、この反射防止膜上に、ポジ型ホトレジスト(東京応化工業社製、製品名「TARF−P6111」)を、スピンナーにより2000rpmで90秒間塗布し、膜厚18nmのレジスト膜を形成させた。
次に、このホトレジスト膜が形成された基板に対して、NikonS302A(ニコン社製)を用いて波長193nmの光で露光処理を行い、続いて130℃で90秒加熱処理した。
【0039】
この露光後加熱したホトレジスト膜を、ポリビニルイミダゾール(PVI)の0.1質量%水溶液又はビニルピロリドンとビニルイミダゾールの等量混合物の共重合体(VP/VI)の0.1質量%水溶液をスピンナーにより、23℃、2000rpm、6秒の条件下で塗布後、ただちに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて23℃で60秒の現像処理を行った。
このようにして、純水との接触角が25度の表面をもつレジストパターンを得た。
次いで、このレジストパターンを、ペルフルオロデカンカルボン酸の0.05質量%水溶液及びこれにトリメチルシリルプロピオン酸(TMSiPAと略す)を0.005質量%又は0.01質量%濃度で添加して調製したリソグラフィー用リンス液で処理し、それぞれについて処理後の接触角及び水切り時間を測定した。その結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
この表から分るように、リソグラフィー用リンス液中にオルガノシラン化合物を添加することにより、水切り時間は著しく短縮する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、リソグラフィー法を用いたLSI、ULSIなどの半導体デバイス、特に高アスペクト比のデバイスの製造に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性含フッ素化合物及び(B)オルガノシラン化合物を含有する溶液からなるリソグラフィー用リンス液。
【請求項2】
(A)成分の水溶性含フッ素化合物が
一般式
【化1】

(式中のR1及びR2は、それぞれ水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された炭素数1〜5のアルキル基若しくは置換アルキル基であり、R1とR2はたがいに連結して両者が結合しているSO2及びNとともに五員環又は六員環を形成していてもよい)、
一般式
【化2】

(式中のRfは水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された炭素数1〜5のアルキル基若しくは置換アルキル基、n及びmは2又は3の整数である)
又は一般式
f´−COOH
(式中のRf´は炭素数8〜20の少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル基である)
で表わされるフッ素化合物の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項3】
溶媒として水を用いた溶液である請求項1記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項4】
溶媒としてアルコール系溶剤を用いた溶液である請求項1記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項5】
水溶性含フッ素化合物が、式
【化3】

で表わされるペルフルオロ(1,3‐プロパンジスルホン酸イミド)である請求項1ないし4記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項6】
水溶性含フッ素化合物が、式
【化4】

で表わされるペルフルオロ(2‐メチル‐3‐モルホリノ酪酸)である請求項1ないし4記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項7】
水溶性含フッ素化合物が、式
1021COOH
で表わされるペルフルオロ(デカンカルボン酸)である請求項1ないし4記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項8】
(B)成分のオルガノシラン化合物がオルガノシランカルボン酸である請求項1ないし7のいずれかに記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項9】
オルガノシランカルボン酸が一般式
【化5】

(式中のR3、R4及びR5は低級アルキル基であり、nは0〜5の整数である)
で表わされる化合物である請求項8記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項10】
オルガノシランカルボン酸が、式
【化6】

で表わされるトリメチルシリルプロピオン酸である請求項8記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項11】
(A)成分を0.0001〜5.0質量%濃度で、(B)成分を0.0001〜10.0質量%濃度で含有する請求項1ないし10のいずれかに記載のリソグラフィー用リンス液。

【公開番号】特開2006−145897(P2006−145897A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336579(P2004−336579)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】