説明

リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスおよびその製造方法

【課題】リチウムイオン電池またはリチウム空気電池の固体電解質として使用する場合に要求される固体電解質の厚みであっても、充分な機械的強度を有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを提供すること。また、化学的にも安定で、表面を研磨した際に露出するピットが少なく、高いリチウムイオン伝導性を有するガラスセラミックスを高い歩留まりで安定して取得することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】 表面を研磨した時に露出する最大幅30μm以上の空孔の数が、1cmあたり50個以下であるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
ガラスを熱処理し結晶化するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法であって、結晶化を行なう熱処理において、結晶化開始温度における昇温速度が50℃/hを超え1200℃/h未満であることを特徴とするリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来のリチウムイオン電池は有機電解液の使用に起因する危険性が指摘されており、この問題を解決するために、無機固体からなるリチウムイオン伝導性固体電解質が研究されている。このような固体電解質材料として、特許文献1および特許文献2に開示されるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスが公知である。このリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスはリチウムイオン電池のみならずリチウム空気電池の固体電解質としての利用も期待されている。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは特定組成の原ガラスを熱処理することによってガラスの内部に結晶を析出させて得られるため、粉体を焼結して作製されるセラミックスなどと比較して、内部に空孔がほぼ存在せず、空孔がイオン伝導を阻害するということがないので、リチウムイオン伝導性の酸化物セラミックスと比較してイオン伝導性に優れているという特徴を有している。
このガラスセラミックスのイオン伝導性や緻密性は、ガラスの組成や均質性に影響されるが、原ガラスの結晶化を行なう熱処理条件によっても大きく影響される。特に一般的な結晶化ガラスと比較して、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスについては原ガラスと原ガラスから析出する結晶の比重や熱膨張の差が大きい場合、結晶化の際には大きな歪が生じてしまい割れてしまうことが多くあった。また、原ガラスの組成が同じであっても、結晶化後の状態を観察するとセラミックスなどと比較すれば空孔は非常に少ないものの、理想的に作製されたガラスセラミックスよりも空孔が多く生成されてしまい、結晶そのものが有するイオン伝導度よりも低いリチウムイオン伝導度を示すことも多くあった。
このように、高いリチウムイオン伝導性を示すガラスセラミックスを高い歩留まりで安定して取得することは困難であった。
【0003】
また、リチウムイオン電池やリチウム空気電池の用途では、固体電解質は薄いほうがリチウムイオン伝導の抵抗が低くなる為に好ましいが、反対に機械的強度は低下してしまう。特に表面にピット(表面に開口する空孔)が存在すると、リチウムイオン伝導性の低下となるばかりでなく、機械的強度低下の要因となり好ましくない。固体電解質の機械的強度低下は正極−負極間の短絡につながる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1には、
【特許文献1】特開平11−157872号公報
【特許文献2】特開2000−34134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題はリチウムイオン電池またはリチウム空気電池の固体電解質として使用する場合に要求される固体電解質の厚みであっても、充分な機械的強度を有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを提供することである。
また、本発明のさらなる課題は化学的にも安定で、表面を研磨した際に露出するピットが少なく、高いリチウムイオン伝導性を有するガラスセラミックスを高い歩留まりで安定して取得することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、表面を研磨した時に露出する特定の大きさ以上の空孔の存在密度を特定の範囲とすることにより、リチウムイオン電池またはリチウム空気電池の固体電解質として使用する場合に要求される固体電解質の厚みであっても、充分な機械的強度を有することを見いだし、この発明を完成したものであり、その具体的な構成は以下の通りである。
【0007】
(構成1)
表面を研磨した時に露出する最大幅30μm以上の空孔の数が、1cmあたり50個以下であるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
(構成2)
板状であり、厚み10mm以下であることを特徴とする構成1に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
(構成3)
前記ガラスは板状であり、その主表面の面積をS、厚みをtとするとき、S1/2・t−1の値が10以上500未満である構成1または2に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
(構成4)
結晶相がLi1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)を含むことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
(構成5)
酸化物基準の質量%で、
LiO 3.5%〜5.0%
SiO 0%〜2.5%、
50%〜55%、
GeO 10%〜30%
TiO 8%〜22%、
5%〜12%、(但し、M=Al,Gaの中から選ばれる1種または2種)
の各成分を含有する構成1から4のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
(構成6)
酸化物基準の質量%で、ZrO成分を0.1%〜5.0%含有する構成1から5のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
【0008】
また、本発明者は上記のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを製造するに際し、結晶化のための熱処理において、結晶化時の昇温速度を特定の範囲とすることによって、表面を研磨した時に露出するピットが少なく、その結果機械的強度が高く、かつ高いリチウムイオン伝導性を示すガラスセラミックスを非常に高い歩留まりで安定して取得することができる製造方法を見いだした。その具体的な構成は以下の通りである。
(構成7)
ガラスを熱処理し結晶化するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法であって、結晶化を行なう熱処理において、結晶化開始温度における昇温速度が50℃/hを超え1200℃/h未満であることを特徴とするリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成8)
結晶化を行なう熱処理の最高温度は、800〜1,100℃であることを特徴とする構成7に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成9)
前記ガラスは板状であり、厚み10mm以下であることを特徴とする構成7または8に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成10)
前記ガラスは板状であり、その主表面の面積をS、厚みをtとするとき、S1/2・t−1の値を10以上500未満とする構成7から9のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成11)
前記結晶化を行う熱処理において、前記ガラスをセッターに挟んで結晶化の熱処理を行なうことを特徴とする構成7から10のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成12)
前記セッターに挟む前記ガラスは1枚である構成7から11のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成13)
前記結晶化を行う熱処理時に前記ガラスを積層し、かつ前記ガラスを直接積層した厚みが10mm以下であることを特徴とする構成7から12のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成14)
前記結晶化を行う熱処理において、前記ガラスをセッターに挟んで結晶化の熱処理を行ない、前記セッターに挟む前記ガラスは2枚以上直接積層された状態である構成13に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成15)
前記結晶化を行う熱処理において、熱処理時の前記ガラス表面の温度分布の幅が熱処理時の最高温度にて、20℃以内とする構成7から14のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成16)
前記結晶化を行う熱処理において、前記ガラスを熱処理する炉内の温度の分布の幅を熱処理時の最高温度にて、20℃以内とする構成7から15のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成17)
前記ガラスは結晶化をおこなう熱処理においてLi1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)の結晶相を析出する構成7から16のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成18)
前記ガラスは酸化物基準の質量%で、
LiO 3.5%〜5.0%
SiO 0%〜2.5%、
50%〜55%、
GeO 10%〜30%
TiO 8%〜22%、
5%〜12%、但し、M=Al,Gaの中から選ばれる1種または2種の各成分を含有する構成7から17のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成19)
前記ガラスは酸化物基準の質量%で、ZrO成分を0.1%〜5.0%含有する構成7から18のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
(構成20)
構成7から19のいずれに記載の製造方法で得られたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを研削する工程及び/又は研磨する工程とを有するリチウム電池用固体電解質の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によればリチウムイオン電池またはリチウム空気電池の固体電解質として使用する場合に要求される固体電解質の厚みであっても、充分な機械的強度を有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを得ることができる。
また、本発明によれば化学的にも安定で、表面を研磨した際に露出するピットが少なく、その結果機械的強度が高く、かつ高いリチウムイオン伝導性を有するガラスセラミックスを高い歩留まりで安定して取得することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】示唆熱分析測定の結果から、結晶化開始温度(Tx)の決定を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスについて説明する。リチウムイオン電池またはリチウム空気電池の固体電解質としての使用を考慮する場合、表面を研磨した時に露出する最大幅30μm以上の空孔の数を、1cmあたり50個以下とすることによって、リチウムイオン伝導度と機械的強度を両立させることができる。より高い機械的強度を得やすくするためには表面を研磨した時に露出する最大幅30μm以上の空孔の数を、1cmあたり40個以下とすることがより好ましく、30個以下とすることが最も好ましい。
【0012】
リチウムイオン電池またはリチウム空気電池の固体電解質として使用する場合には、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは板状であることが電池の製造が容易であるため好ましい。そして電池として実用上機能しうる程度までリチウムイオン伝導の抵抗を少なくする為には厚みが10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが最も好ましい。
【0013】
本発明のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは結晶相がLi1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)を含むものであると、高いリチウムイオン伝導性を示し、大気中でも安定で扱いが容易であることから有利であるので好ましい。
【0014】
次に本発明のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法について説明する。
ガラスセラミックスはガラスを熱処理し、内部に結晶を析出させることにより製造される。このときガラスセラミックスの元となるガラスを原ガラスという。
原ガラスを熱処理する際の結晶化開始温度の昇温速度が50℃/h以下の場合は、結晶核の生成が多く、微細な結晶が多く析出する。その後徐々に結晶が成長するため、原ガラス内には歪が入りにくく、熱処理中に割れることは昇温速度が速い場合と比較して少ない。しかし、原ガラスの大部分が結晶核となり、残留するガラス相が少ない状態でこの結晶核が成長すると、成長する際に必要なガラスマトリックスが不足してしまうため、結果として成長した結晶粒界に大きな空孔が多く生成し、結晶化ガラスの緻密性を低下させている。本発明者のこれまでの研究によれば、リチウムイオン伝導性ガラスの結晶化の熱処理の際には比較的遅い速度での昇温が微細な空孔生成の抑制に有効であるとの知見を得ていた。しかし、結晶化開始温度の昇温速度が50℃/h以下の場合は、最大幅0.1μm〜1μm程度の空孔は少ないが、それよりも大きさのレベルが1桁以上大きな空孔が多く出現することがあることが判明した。このような大きな空孔、特に最大幅30μm以上の大きな空孔が多く存在すると、結晶化ガラスの比重、強度、イオン伝導度などの特性が低下してしまう。そのため、欠陥の無い緻密なガラスセラミックスを得るためには、結晶化開始温度の昇温速度が50℃/hを超えて速いことが好ましい。より欠陥の無い緻密なガラスセラミックスを得やすくする為には100℃/hを超えて速いことがより好ましく、150℃/h以上が最も好ましい。
また、昇温速度を早くした場合、結晶核が十分に生成し、その後成長するためガラスセラミックス内に最大幅1μm以下の微小な空孔が存在することがあるが、これらは貫通孔ではなく、非常に微小であるため、ガラスセラミックスの比重やイオン伝導度、強度には影響しない。
結晶化開始温度の昇温速度が1200℃/h以上の場合は、結晶核の析出が局所的に生じてしまい、この結晶核の成長も速くなってしまうため、ガラス内に大きな歪が生じてしまう。また、ガラスと結晶の熱膨張が等しくないため、歪と不均一な体積膨張のため、結晶化工程中で割れが生じる原因となってしまう。また、この速い昇温のためには熱源が多く必要であり、熱処理設備が大きく高価になってしまう。そのため、結晶化開始温度の昇温速度は1200℃/h未満が好ましい。より好ましくは1000℃/h未満である。
結晶化開始温度の昇温速度を上記の範囲とする事による効果はリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの原ガラスがリチウム、リン、チタン、ゲルマニウムを含むガラスである場合に特に顕著に得ることができる。
【0015】
本発明において、「結晶化開始温度」とは、熱分析装置を用い、一定の速度でガラスを昇温して示差熱測定を行ない、結晶化に伴う発熱ピークの開始温度を計算することで得られる温度である。熱分析装置は例えばNETSZCH製のSTA−409を用いればよい。
結晶化開始温度(Tx)を測定する際には、ガラスを約0.5mm程度のサイズに砕いてサンプルとする。熱分析装置を用いて、昇温速度10℃/minで室温から1000℃まで示差熱測定を行なうことで、ガラス転移に伴う吸発熱や結晶化に伴う発熱が測定できる。結晶化に伴う発熱開始温度を求めることで、ガラスの結晶化開始温度(Tx)が測定できる。発熱開始温度は、図1に示すように、ベースラインとピーク曲線の接線同士の交点の温度とする。
【0016】
ガラスの温度が結晶化開始温度以上になると、ガラスの中で分相・結晶核の生成が起こり、さらに温度を上げると、結晶核が成長して大きくなり、ガラスの中に結晶が分散されたガラスセラミックスが得られる。結晶が十分大きくなり、複数の結晶が隣接すると結晶同士の焼結が生じる。
結晶化を行なう熱処理の最高温度が800℃未満の場合は、イオン伝導性を有する結晶核が大きく成長しないため、得られたガラスセラミックスは結晶の割合が低くなり、イオン伝導性も低くなってしまう。そのため、結晶化を行なう熱処理の最高温度は800℃以上が好ましい。結晶核を充分に成長させる為には結晶化を行なう熱処理の最高温度はより好ましくは830℃以上であり、最も好ましいのは850℃以上である。また、結晶化を行なう熱処理の最高温度が1100℃を超える場合、結晶同士の焼結が生じガラスセラミックス内にクラックや欠陥が生じたり、結晶の分解が生じるため、得られるガラスセラミックスは強度が弱く、またイオン伝導性も低くなってしまうため、熱処理温度は1100℃以下が好ましい。結晶同士の焼結や結晶の分解を効果的に抑制するためには結晶化を行なう熱処理の最高温度が1050℃以下がより好ましく、1000℃以下が最も好ましい。
【0017】
結晶化を行う前の原ガラスは、析出する結晶との熱膨張係数の差が大きいために、ガラスが厚いと結晶化の熱処理中にガラスの内部と表面付近に熱履歴の差が生じ、ガラス内に大きな歪が生じやすく、割れやすくなってしまうため、割れずにクラックの無いガラスセラミックスを得るためには、原ガラスの厚みを10mm以下にすることが好ましい。割れずにクラックの無いガラスセラミックスをより得やすくするためには、原ガラスの厚みは5mm以下がより好ましく、2mm以下が最も好ましい。また、成形のしやすさ、機械的強度の観点から原ガラスの厚みは0・4mm以上であることが好ましい。
【0018】
結晶化を行う際の伝熱を均一にするため、また結晶化後にリチウム電池用途として使用しうる形状に加工する場合の加工性を良好にするために、原ガラスは平板状であることが好ましい。そして、割れずにクラックの無いガラスセラミックスを得るために、原ガラスの主表面の面積をS、厚みをtとするとき、S1/2・t−1の値を10以上とすることが好ましく、15以上とすることが好ましく、20以上とすることが最も好ましい。また、結晶化の熱処理時のたわみを減らすために、前記S1/2・t−1の値を500未満とすることが好ましく、400以下とすることがより好ましく、250以下とすることが最も好ましい。
【0019】
原ガラスの結晶化を行う熱処理においては、結晶化の熱処理前後の形状を保つ為に前記原ガラスをセラミックス製のセッターに挟んで結晶化の熱処理を行なうことが好ましい。
前記セッターとしては石英、アルミナ、ジルコニア、サファイア、窒化ホウ素等が好ましい。
【0020】
セッターに挟む原ガラスは1枚ずつでも2枚以上直接積層しても良いが、材料のソリを最小限にするためには1枚ずつ挟むことが好ましい。セッター間のガラスを2枚以上直接積層させる場合には、直接積層されたガラスの厚みはガラスの熱伝導が低いためにセッターと接している面と内部の温度に差ができてしまう為に10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが最も好ましい。
【0021】
結晶化のための熱処理時の割れや変形を防ぎやすくするために、原ガラスの結晶化を行う熱処理時の最高温度に達した時点において、前記原ガラス表面の温度の分布の幅を20℃以内とすることが好ましい。より変形やイオン伝導性の均一性の効果を得やすくするためには15℃以内がより好ましく、10℃以内が最も好ましい。
原ガラス表面の温度分布の幅は、熱電対で測定する。
【0022】
原ガラスの結晶化を行う熱処理時の最高温度に達した時点において、前記原ガラス表面の温度の分布の幅を20℃以内とする為及び、結晶化のための熱処理時の割れや変形を防ぎやすくするために、原ガラスの結晶化を行う熱処理時の最高温度に達した時点において、前記原ガラスを熱処理する炉内の温度の分布の幅を20℃以内とすることが好ましい。より変形やイオン伝導性の均一性の効果を得やすくするためには15℃以内がより好ましく、10℃以内が最も好ましい。
炉内の温度分布の幅は、JFCC(財団法人ファインセラミックスセンター)の標準物質である共通熱履歴センサー(リファサーモL1)を有効体積内に100mm間隔で3次元的に配置し、熱処理を行なう事で測定する。リファサーモのユーザーズマニュアルに指定されている加熱処理評価条件に従い、大気中、昇温速度200℃/h、保持時間2h、降温速度300℃/hにて測定対象の炉を稼動し、室温まで冷却されたリファサーモの指定された長さをマイクロメーターにて測定し、ロット毎に管理されている長さ−温度対照表により、リファサーモを置いた箇所の温度を算出する。炉の有効体積内に配置した全てのリファサーモの指示した最高温度から最低温度を差し引いた温度を温度分布の幅とする。
【0023】
[原ガラス]
次に原ガラスについて説明する。熱処理をすることでリチウムイオン伝導性の結晶が析出しリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスとなるガラスは、LiS、P等から製造される硫化物系ガラスや、酸化物系ガラスを用いることができる。酸化物系ガラスは大気中でも安定で扱いが容易であることから有利であり、特にLi1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)の結晶相を析出するガラスは結晶化後に高いリチウムイオン伝導性を有するので好ましい。
【0024】
Li1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)の結晶相を析出するガラスの組成について説明する。このガラスの組成は、酸化物基準の質量%で表示し得る。ここで、「酸化物基準」とは、ガラスの構成成分の原料として使用される酸化物、硝酸塩等が溶融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定して、ガラス中に含有される各成分の組成を表記する方法であり、「酸化物基準の質量%」とは、この生成酸化物の質量の総和を100質量%として、結晶化ガラス中に含有される各成分の量を表記することをいう。
【0025】
上記ガラスにおいて、ZrO成分の範囲を0.1%〜5.0%にすることにより、原ガラスの安定性を高くすることが可能となり、かつ高いリチウムイオン伝導度を得ることが可能となる。ZrO成分が0.1%未満である場合、結晶化の核が減少してしまうため、高いイオン伝導度を得るために必要な結晶化温度が高くなってしまう。結晶化温度を上げることによりイオン伝導度を高くすることは可能であるが、同時に結晶成長が進み過ぎてしまうため、クラックや内部の気孔の発生につながってしまう。5.0%を超える場合にガラスが溶けにくくなってしまい、より高い溶解温度が必要となる。また失透性が高く、ガラス化しにくくなってしまうため安定なガラス製造ができなくなってしまう。ZrO成分の下限は緻密で高いイオン伝導性を得るために、0.5%とすることがより好ましく、0.7%とすることが最も好ましい。また、上限値は失透性が高くなってしまうため、2.5%とすることがより好ましく、2.1%とすることが最も好ましい。
一般的にガラスの熱的な安定性の評価はTx[℃](ガラスの結晶化温度)とTg[℃](ガラスの転移温度)との差であるTx−Tgの値で評価され、この値が大きいほどガラスの熱的な安定性が良好となる。上記の構成により本発明のガラスセラミックスは原ガラスの熱的安定性が大幅に向上し、Tx−Tgの値が70℃以上であり、リチウムイオン伝導性は若干劣るものの最大で160℃の値を得ることができる。リチウムイオン伝導度なども考慮した総合的により好ましい態様においても72℃以上、最も好ましい態様においては74℃以上の値を得ることができる。
【0026】
LiO成分はLiイオンキャリアを提供し,リチウムイオン伝導性をもたらすのに有用な成分である。LiO成分の下限は良好なリチウムイオン伝導度を得るために、3.5%以上であることが好ましく、3.7%であることがより好ましく、3.9%であることが最も好ましい。またLiO成分の上限は失透性が高くなってしまうため、5.0%以下であることが好ましく、4.8%以下であることがより好ましく、4.6%以下であることが最も好ましい。
【0027】
成分はガラスの形成に有用な成分であり,また上記結晶相の構成成分でもある。この成分の含有量が50%未満の場合には、ガラスの溶解温度が高くなってしまい、結果としてガラス化しにくくなってしまう。ガラス化しにくくなると熱間でのガラスの成形が難しく、特に大きなバルク状(例えば 200cm以上)のガラスを得る事が困難となりやすい。そのため含有量の下限値は50%以上であることが好ましく、50.5%以上であることがより好ましく、51%以上であることが最も好ましい。また、含有量が55%を越えると、熱処理(結晶化)において前記の結晶相がガラスから析出しにくく、所望の特性が得られにくくなるので、含有量の上限値は55%以下が好ましく、54.5%以下がより好ましく、54%以下が最も好ましい。
また、ガラスフォーマーであるP成分の量に対して、ZrO成分の量が少ないと結晶化時の核生成が良好に生じず、微細な結晶ではなく大きな結晶となってしまい、イオン伝導度も緻密性も低くなってしまう。そのため、P成分とZrO成分の質量%の比P/ZrOの値は、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることが最も好ましい。
成分の量に対して、ZrO成分の量が多すぎると、ガラスの融点が上がり、かつガラス成形時に失透が生じやすくなってしまう。そのため、P成分とZrO成分の質量%の比P/ZrOの値は、100以下であることが好ましく、90以下であることがより好ましく、75以下であることが最も好ましい。
【0028】
GeO成分はガラスの形成に有用な成分であり、またリチウムイオン伝導性の結晶相の構成成分になりうる成分である。この成分の含有量が10%未満の場合にはガラス化しにくくなり、上記の結晶相が析出しにくくなり高いリチウムイオン伝導性を得にくくなるため、含有量の下限値は10%以上であることが好ましく、11%以上であることがより好ましく、11.5%以上であることが最も好ましい。また、含有量が30%を超えるとイオン伝導性と耐久性が低くなってのため、含有量の上限値は30%以下が好ましく、28%以下がより好ましく、26%以下が最も好ましい。
【0029】
TiO成分はガラスの形成に有用な成分であり、またリチウムイオン伝導性の結晶相の構成成分になりうる成分である。この成分の含有量が8%未満の場合にはガラス化しにくくなり、上記の結晶相が析出しにくくなり高いリチムイオン伝導性を得にくくなるため、含有量の下限値は8%以上であることが好ましく、9%以上であることがより好ましく、10%以上であることが最も好ましい。また、含有量が22%を超えると失透性が高くなってのため、含有量の上限値は22%以下が好ましく、21%以下がより好ましく、20%以下が最も好ましい。
【0030】
成分(但し、M=Al,Gaの中から選ばれる1種または2種)は、原ガラスの熱的な安定をより高めることができると同時に、Al3+および/またはGa3+イオンが前記結晶相に固溶し、リチウムイオン伝導率向上にも効果があるため、含有量の下限値は5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましく、7%以上であることが最も好ましい。しかしその量が12%を超えると、かえってガラスの熱的な安定性が悪くなりガラスセラミックスのリチウムイオン伝導率も低下してしまうため、含有量の上限値は12%以下にすることが好ましく、11%以下がより好ましく、10%以下が最も好ましい。
【0031】
SiO成分は、原ガラスの溶融性および熱的な安定性を高めることができると同時に、Si4+イオンが前記結晶相に固溶し、リチウムイオン伝導率の向上にも寄与するので任意に含有させることができる。しかしその量が2.5%を超えると、結晶化時にクラックが入り易くなってしまうため、リチウムイオン伝導率が低下してしまう。そのため、リチウムイオン伝導性を良好に維持するためには2.5%以下にすることが好ましく、2.2%以下にすることがより好ましく、2%以下にすることは最も好ましい。
【0032】
M’成分は(但し、M’はIn,Fe,Cr,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luの中から選ばれる1種または2種以上)ガラスの溶融性および熱的な安定性を高める効果があるので合計で5%まで含有させることができるが、これらの成分は市場で流通する原料の価格が非常に高価であるので、実質的に含有させないことが好ましい。
【0033】
また、ガラスの溶融性を更に向上するためにB,As,Sb,Ta,CdO,PbO,MgO,CaO,SrO,BaO,ZnO等を添加することも可能であるが、それらの量は3%以下に制限すべきである。これらを3%を越えて添加すると、伝導率が添加量に伴って著しく低下してしまう。
【0034】
以上Li1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)の結晶相を析出するガラスの組成について説明したが、このガラスを熱処理しガラスセラミックスとする段階においては成分の揮発は殆ど無い為、上記ガラスの各成分の組成範囲はリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの組成と同一となる。
【0035】
前記原ガラスは、以下の方法により製造することができる。すなわち、各出発原料を所定量秤量し、均一に混合した後、白金るつぼに入れて電気炉で加熱溶解する。1200〜1400℃に温度を上げ、その温度で2時間以上保持し溶解する。その後、溶融ガラスを鉄板上にキャストし、板状のガラスを作製する。また、必要に応じて切断、研削、研磨などの加工を施しても良い。
【0036】
本発明の製造方法で得られたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスのリチウムイオン伝導度は5.0×10−5S・cm−1以上であり、より好ましくは8.0×10−5S・cm−1以上、最も好ましくは1.0×10−4S・cm−1以上の値を得ることができる。
【0037】
また、上記の方法で得られたガラスセラミックスを、リチウムイオン二次電池やリチウム一次電池等のリチウム電池用固体電解質として使用するためには、作製する電池の大きさに合わせて加工すれば良い。形状としては薄板状に加工することが好ましく、通常ガラスやガラスセラミックスで使用される公知の研削方法、研磨方法を用いればよい。例えば両面加工機を用い、#1000程度のペレットで研削加工をし、その後、研磨液を供給しながらウレタン研磨パッドを用いて研磨加工をすればよい。
【0038】
リチウム電池用の固体電解質として使用する場合、加工後のガラスセラミックスの厚みの下限値は電池用途として必要な機械的強度を得るために0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上が最も好ましい。また、厚みの上限値はリチウムイオン伝導性を良好にするために1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、300μm以下が最も好ましい。
【0039】
上記のリチウム電池用の固体電解質の両側に正極材料及び負極材料を配置し、さらに公知の集電体を配置し、公知の方法でパッケージングすることにより、リチウム一次電池またはリチウムイオン二次電池等の電池を得る事ができる。
【0040】
リチウム一次電池の正極材料には、リチウムの吸蔵が可能な遷移金属化合物や炭素材料を用いることができる。例えば、マンガン,コバルト,ニッケル,バナジウム,ニオブ、モリブデン、チタンから選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属酸化物等や、グラファイトやカーボン等を使用することができる。
【0041】
リチウム一次電池の負極材料には、金属リチウムや、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−インジウム合金などリチウムの放出が可能な合金等を使用することができる。
【0042】
リチウム二次電池の正極材料に使用する活物質としては、リチウムの吸蔵,放出が可能な遷移金属化合物を用いることができ、例えば、マンガン,コバルト,ニッケル,バナジウム,ニオブ、モリブデン、チタンから選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属酸化物等を使用することができる。
【0043】
リチウム二次電池において、その負極材料に使用する活物質としては、金属リチウムやリチウム−アルミニウム合金、リチウム−インジウム合金などリチウムの吸蔵、放出が可能な合金、チタンやバナジウムなどの遷移金属酸化物及び黒鉛などのカーボン系の材料を使用することが好ましい。
【0044】
正極および負極には、固体電解質に含有されるガラスセラミックスと同じものを添加するとイオン伝導が付与されるため、より好ましい。これらが同じものであると電解質と電極材に含まれるイオン移動機構が統一されるため、電解質―電極間のイオン移動がスムーズに行え、より高出力・高容量の電池が提供できる。
【0045】
また、本発明の製造方法で得られたリチウム電池用固体電解質はリチウム−空気電池の電解質として好適に用いることが出来る。例えば、負極をリチウム金属とし、本発明の固体電解質を配し、水溶液電解質と触媒層を正極とすることでリチウム−空気電池を得る事ができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明に係るリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法ついて、具体的な実施例を挙げて説明する。
【0047】
原料として日本化学工業株式会社製のHPO、Al(PO、LiCO、株式会社ニッチツ製のSiO、堺化学工業株式会社製のTiO、住友金属鉱山製のGeO、日本電工製のZrOを使用した。これらを酸化物換算のmol%で、表1の組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1350℃の温度で撹拌しながら3時間加熱・溶解してガラス融液を得た。
その後、ガラス融液をポットに取り付けた白金製のパイプから加熱しながら、300℃に加熱したINCONEL600製(INCONELは登録商標)の金属の型に流し込んだ。その後ガラスの表面温度が600℃以下になるまで放冷し、その後550℃に加熱した電気炉中に入れ、室温まで徐冷することにより、熱的な歪を取り除いたガラスブロックを作製した。
得られたガラスを、約0.5mm程度まで砕き、NETSZCH製の熱分析装置STA−409を用いて、昇温速度10℃/minで室温から1000℃まで示差熱測定を行なうことで、結晶化に伴う発熱開始温度の算出を行なった。この値をそのガラスの結晶化開始温度(Tx)とした。
作製したガラスの組成と測定された結晶化開始温度(Tx)を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
得られたガラスブロックを切断し、1辺32mm、厚み0.6、1.0、1.3mmの3種類の厚みで正方形状に加工し、アルミナ製のセッターに1枚ずつ挟み、結晶化開始温度の昇温速度を変えて、880℃まで加熱し、880℃をキープしたまま12時間熱処理を行ない、結晶化処理を行なった。その後、室温まで降温した。X線回折分析により結晶化後のガラスセラミックスはLi1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)の結晶相を有することが確認された。
【0050】
結晶化後のガラスセラミックスについて、外周研削後、両面を研削および研磨して、顕微鏡による表面観察とイオン伝導度測定用、機械強度測定用のサンプルを作製した。サンプルのサイズはどのサンプルも一辺25.4mmの正方形、厚み0.15mmとした。
【0051】
ニコン製の金属顕微鏡(倍率50倍、観察視野Φ4mm)を用いて、研磨面全面の観察を行ない、最大幅30μm以上のピットの数を測定した。
なお、最大幅とはピットを平行な2直線で挟んだ時の2直線間の距離が最大となる時の距離をいう。
【0052】
機械強度の測定は、日本電産シンポ株式会社製のフォースゲージFGPを用い、突き刺し破壊試験による破壊強度の測定を行った。強度の評価はサンプルが破壊された時の荷重(N)で表わす。
【0053】
サンユー電子製のクイックコーターを用い、金をターゲットとしてガラスセラミックスの両面にスパッタを行ない、金電極を取り付けた。ソーラートロン社製のインピーダンスアナライザーSI−1260を用い交流二端子法による複素インピーダンス測定により25℃におけるリチウムイオン伝導度を算出した。
結晶化処理において割れてしまったサンプルについては、Φ10mm以上の欠片が取得できたサンプルのみ、上記と同様にリチウムイオン伝導度を算出した。
表2および表3に実施例と比較例の組成と厚み、S1/2・t−1の値、結晶化開始温度の昇温速度(表中では単に昇温速度と表記)、最大幅30μm以上のピットの個数(表中では単にピット数と表記)、25℃でのイオン伝導度を示す
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
昇温速度が、50℃/hである比較例4〜5では、割れは生じなかったが、厚みの違いによる欠陥の数やイオン伝導度にバラつきがある。昇温速度が100〜300℃/hである実施例1〜8では、厚みに関係なく欠陥は観測されないか又は非常に少なく、イオン伝導性と強度ともに高いガラスセラミックスの作製が可能であった。昇温速度が500℃/hである実施例9〜11では、厚みが1mm以上の厚みの場合、数は少ないが欠陥があったり、割れが生じたりした。昇温速度が500℃/hの条件では、ガラスの厚みを制御する必要があるが、欠陥が無く、イオン伝導性も高いガラスセラミックスの作製が可能であった。
昇温速度が25℃/hである比較例1〜3では、どの厚みにおいても多くの欠陥が観測され、イオン伝導度も厚みによるバラつきが大きく、緻密でイオン伝導性の良好なガラスセラミックスの作製はできなかった。
【0057】
[比較例4]
比較例1〜3と同じガラスを、昇温速度のみ1200℃/hに変更して熱処理を行った。その結果、全てのガラスが割れてしまい、ガラスセラミックスの作製は困難であった。
【0058】
以上のように、結晶化開始温度の昇温速度を制御することにより、緻密で欠陥が少なく、イオン伝導性と機械的強度を兼ね備えたガラスセラミックスの製造が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を研磨した時に露出する最大幅30μm以上の空孔の数が、1cmあたり50個以下であるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項2】
板状であり、厚み10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項3】
前記ガラスは板状であり、その主表面の面積をS、厚みをtとするとき、S1/2・t−1の値が10以上500未満である請求項1または2に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項4】
結晶相がLi1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項5】
酸化物基準の質量%で、
LiO 3.5%〜5.0%
SiO 0%〜2.5%、
50%〜55%、
GeO 10%〜30%
TiO 8%〜22%、
5%〜12%、(但し、M=Al,Gaの中から選ばれる1種または2種)
の各成分を含有する請求項1から4のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項6】
酸化物基準の質量%で、ZrO成分を0.1%〜5.0%含有する請求項1から5のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項7】
ガラスを熱処理し結晶化するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法であって、結晶化を行なう熱処理において、結晶化開始温度における昇温速度が50℃/hを超え1200℃/h未満であることを特徴とするリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項8】
結晶化を行なう熱処理の最高温度は、800〜1,100℃であることを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項9】
前記ガラスは板状であり、厚み10mm以下であることを特徴とする請求項7または8に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項10】
前記ガラスは板状であり、その主表面の面積をS、厚みをtとするとき、S1/2・t−1の値を10以上500未満とする請求項7から9のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項11】
前記結晶化を行う熱処理において、前記ガラスをセッターに挟んで結晶化の熱処理を行なうことを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項12】
前記セッターに挟む前記ガラスは1枚である請求項7から11のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項13】
前記結晶化を行う熱処理時に前記ガラスを積層し、かつ前記ガラスを直接積層した厚みが10mm以下であることを特徴とする請求項7から12のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項14】
前記結晶化を行う熱処理において、前記ガラスをセッターに挟んで結晶化の熱処理を行ない、前記セッターに挟む前記ガラスは2枚以上直接積層された状態である請求項13に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項15】
前記結晶化を行う熱処理において、熱処理時の前記ガラス表面の温度分布の幅が熱処理時の最高温度にて、20℃以内とする請求項7から14のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項16】
前記結晶化を行う熱処理において、前記ガラスを熱処理する炉内の温度の分布の幅を熱処理時の最高温度にて、20℃以内とする請求項7から15のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項17】
前記ガラスは結晶化をおこなう熱処理においてLi1+X+Z(Ge1−YTi2−X3−ZSi12(0<X≦0.6,0.2≦Y<0.8,0≦Z≦0.5、M=Al、Ga)の結晶相を析出する請求項7から16のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項18】
前記ガラスは酸化物基準の質量%で、
LiO 3.5%〜5.0%
SiO 0%〜2.5%、
50%〜55%、
GeO 10%〜30%
TiO 8%〜22%、
5%〜12%、但し、M=Al,Gaの中から選ばれる1種または2種の各成分を含有する請求項7から17のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項19】
前記ガラスは酸化物基準の質量%で、ZrO成分を0.1%〜5.0%含有する請求項7から18のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項20】
請求項7から19のいずれに記載の製造方法で得られたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを研削する工程及び/又は研磨する工程とを有するリチウム電池用固体電解質の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−96475(P2011−96475A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248553(P2009−248553)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】