説明

リッジ型半導体光素子及びリッジ型半導体光素子の製造方法

【課題】本発明は、クラッド層から熱伝導率の大きい電極へ直接熱を放熱するルートを確保し、使用環境温度が高い条件でも光素子特性を大きく劣化させることを防ぐ構造のリッジ型半導体光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るリッジ型半導体レーザ301は、エッチングストップ層33の上面m、リッジ部クラッド層14の上面rとするリッジストライプ状のリッジ部クラッド層14と、リッジ部クラッド層14の側面を覆う絶縁層13と、を備え、リッジ部クラッド層14の側面にある絶縁層13の端部Pが、リッジ部クラッド層14の上面rとエッチングストップ層33の上面mとの間にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクト抵抗及び熱抵抗の低減と高信頼度との両立を図ったリッジ型半導体レーザが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1のリッジ型半導体レーザは、図1のように、半導体基板12上の下部クラッド層31、活性層11、上部クラッド層32、及びエッチングストップ層33と、その上に設けられたリッジ部クラッド層14及びその上に設けられたリッジ部コンタクト層15を有するリッジと、リッジ部クラッド層14を覆う絶縁層13と、リッジ部コンタクト層15にバリアメタル層17を介して接続された電極層18とを有し、絶縁層13は、前記リッジの厚さ方向における端部がリッジ部コンタクト層15の上面と下面との間に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−104073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性層11及びリッジ部クラッド層14で発生した熱を、リッジ型半導体レーザの活性層11の上面側で熱伝導率の大きい電極層18へ放熱するルートは2つある。第1のルートは、リッジ部コンタクト層15から電極層18へのルート、第2のルートは、リッジ側面19及びリッジ近傍の絶縁膜13を通して電極層18へのルートである。しかし、特許文献1のリッジ型半導体レーザの構造の第1のルートでは、リッジ部コンタクト層15が熱伝導率の小さいInGaAs(熱伝導率:5W/m・K)の場合、活性層11及びリッジ部クラッド層14で発生した熱をリッジ部コンタクト層15経由で熱伝導率の大きい電極層18(例えばAu:熱伝導率:314W/m・K)へ放熱する効率が悪い。また、第2のルートでは、絶縁層13の熱伝導率がリッジ部コンタクト層15の熱伝導率よりさらに小さい(例えばSiO:熱伝導率:1.4W/m・K)ため、リッジ部クラッド層14のリッジ側面19及びリッジ近傍の絶縁膜13から電極層18への放熱効率も悪い。このように、特許文献1のリッジ型半導体レーザの構造には、依然放熱効率が悪いという課題があり、特に使用環境温度が85℃と高い場合、レーザ素子自身の発熱のため、レーザ素子の温度が使用環境温度より高くなり、レーザ光出力及び高速変調特性などのレーザ特性が劣化するという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、クラッド層から熱伝導率の大きい電極層へ直接熱を放熱するルートを確保し、使用環境温度が高い条件でも特性を大きく劣化させることを防ぐ構造のリッジ型半導体光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るリッジ型半導体光素子は、リッジ側面の絶縁層の端部をクラッド層上面より後退させ、熱伝導率の高いクラッド層(例えば、InP:熱伝導率68W/m・K)と熱伝導率の高い電極とが直接接する構造とした。
【0007】
具体的には、本発明に係るリッジ型半導体光素子は、活性層と、エッチングストップ層と、前記エッチングストップ層の、前記活性層がある側と反対側の表面に形成され、前記エッチングストップ層側を底部、前記エッチングストップ層側と反対側を上面とするリッジストライプ状のリッジ部クラッド層と、前記リッジ部クラッド層の側面を覆う絶縁層とを備え、前記リッジ部クラッド層の側面にある前記絶縁層の端部が、前記リッジ部クラッド層の上面と底部との間にある。
【0008】
本リッジ型半導体光素子は、絶縁層の端部がクラッド層の上面から後退させた構造である。このため、バリアメタル層及び電極層を積層したときに、クラッド層と電極層とがバリアメタル層を介して接するため、活性層からの熱を電極層へ放熱することができる。
【0009】
従って、本発明は、クラッド層から熱伝導率の大きい電極層へ直接熱を放熱するルートを確保し、使用環境温度が高い条件でも光出力及び高速変調特性などの光素子特性を大きく劣化させることを防ぐ構造のリッジ型半導体光素子を提供することができる。
【0010】
本発明に係るリッジ型半導体光素子の前記絶縁層の端部は、前記活性層からの光の強度分布において、前記活性層の中心における光の最大強度に対して1/e以下になる位置にあることが好ましい。
【0011】
金属である電極層が活性層に近づくと、金属への光の吸収が大きくなり光出力特性を劣化させることになる。光が金属である電極層に達しないようにするため、本リッジ型半導体光素子では、光強度分布を考慮し、光強度が活性層中心における光の最大強度に対して1/e以下となる位置に、絶縁層の端部を配置することが好ましい。本リッジ型半導体光素子は、リッジ部クラッド層側面のうち、活性層からの光の強度分布範囲に含まれる部分を光の吸収の少ない絶縁層で覆う構造とし、光出力特性の劣化を防止している。
【0012】
また、本発明に係るリッジ型半導体光素子は、前記リッジ部クラッド層の上面に配置されたリッジ部コンタクト層と、前記絶縁層、前記リッジ部クラッド層及び前記リッジ部コンタクト層を覆うバリアメタル層と、前記バリアメタル層を覆う電極層と、をさらに備えることを特徴とする。クラッド層と電極層とがバリアメタル層を介して接するため、電極層の金属原子がクラッド層及び活性層内に拡散することを防止することができ、且つ活性層からの熱を電極層へ放熱することができる。
【0013】
本発明に係るリッジ型半導体光素子の製造方法は、活性層を形成する工程と、エッチングストップ層を形成する工程と、前記エッチングストップ層の、前記活性層がある側と反対側の表面にクラッド層及びコンタクト層を順に形成する半導体積層工程と、リッジストライプとなる部分のリッジ部クラッド層及びリッジ部コンタクト層を残し、他の部分を前記エッチングストップ層が露出するまでエッチングするリッジストライプ形成工程と、前記リッジストライプとなった前記リッジ部クラッド層及び前記リッジ部コンタクト層を含む半導体の表面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記リッジ部クラッド層の前記エッチングストップ層側を底部、前記リッジ部クラッド層の前記リッジ部コンタクト層側を上面としたとき、前記リッジ部クラッド層の側面にある前記絶縁層の端部が、前記リッジ部クラッド層の上面と底部との間にあるように、前記絶縁層をエッチングする絶縁層エッチング工程と、を順に行うことを特徴とする。
【0014】
本製造方法で、絶縁層の端部がクラッド層の上面から後退させた構造とすることができる。バリアメタル層及び電極層を積層したときに、クラッド層と電極層とがバリアメタル層を介して接することができ、電極層の金属原子がクラッド層及び活性層内に拡散することを防止することができ、且つ活性層からの熱を電極層へ放熱することができるリッジ型半導体光素子を製造することができる。
【0015】
従って、本発明は、クラッド層から熱伝導率の大きい電極層へ直接熱を放熱するルートを確保し、使用環境温度が高い条件でも光出力及び高速変調特性などの光素子特性を大きく劣化させることを防ぐ構造のリッジ型半導体光素子の製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明に係るリッジ型半導体光素子の製造方法の前記絶縁層エッチング工程では、前記クラッド層の側面にある前記絶縁層の端部が、前記活性層からの光の強度分布において、前記活性層の中心における光の最大強度に対して1/e以下になる位置にあるように前記絶縁層をエッチングすることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るリッジ型半導体光素子の製造方法は、前記絶縁層エッチング工程の後、前記エッチングストップ層の前記リッジストライプが形成された側において前記絶縁層、前記クラッド層及び前記コンタクト層を覆うバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程と、前記バリアメタル層を覆う電極層を形成する電極層形成工程と、を順に行うことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るリッジ型半導体光素子の製造方法の前記バリアメタル層形成工程では、バリアメタルを斜め蒸着すること、または、スパッタ法でバリアメタルを付着させること、を特徴とする。
【0019】
特許文献1では、クラッド層側面におけるバリアメタル層のカバレッジが不完全であるため、絶縁層でクラッド層側面全てを覆い、電極層の金属原子がクラッド層及び活性層内に拡散することを防止して、レーザの電流を光に変換する変換効率の低下を防いでいた。本発明では、バリアメタル層を斜め蒸着することで、バリアメタル層のカバレッジを改善することができる。このため、本発明は、絶縁層でクラッド層側面全てを覆う必要がなくなり、リッジ型半導体光素子の放熱性の改善とレーザの変換効率の低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、クラッド層から熱伝導率の大きい電極層へ直接熱を放熱するルートを確保し、使用環境温度が高い条件でも光出力及び高速変調特性などの光素子特性を大きく劣化させることを防ぐ構造のリッジ型半導体光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のリッジ型半導体レーザの構造を説明する図である。
【図2】本発明に係るリッジ型半導体レーザの構造を説明する図である。
【図3】本発明に係るリッジ型半導体レーザの熱解析を説明する図である。
【図4】本発明に係るリッジ型半導体レーザの放熱性を説明する図である。
【図5】本発明に係るリッジ型半導体レーザの製造方法を説明する図である。
【図6】本発明に係るリッジ型半導体光変調器の構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
(第1実施形態)
第1実施形態では、リッジ型半導体光素子の一例としてリッジ型半導体レーザを説明する。図2は、本実施形態の一例であるリッジ型半導体レーザ301を説明する図である。リッジ型半導体レーザ301は、半導体基板12上に下部クラッド層31、活性層11、上部クラッド層32、エッチングストップ層33が順に形成され、エッチングストップ層33の上面m、リッジ部クラッド層14の上面rとするリッジストライプ状のリッジ部クラッド層14と、リッジ部クラッド層14の側面を覆う絶縁層13と、を備え、リッジ部クラッド層14の側面にある絶縁層13の端部Pが、リッジ部クラッド層14の上面rとエッチングストップ層33の上面mとの間にある。例えば、半導体基板12及びリッジ部クラッド層14の半導体材料はInP、下部クラッド層31及び上部クラッド層32の半導体材料はInP及びAlInGaAsである。
【0024】
リッジ型半導体レーザ301は、リッジ部クラッド層14の上面に配置されたリッジ部コンタクト層15と、絶縁層13、リッジ部クラッド層14及びリッジ部コンタクト層15を覆うバリアメタル層17と、バリアメタル層17を覆う電極層18と、をさらに備える。なお、リッジ型半導体レーザ301は、リッジ部コンタクト層15の上面にオーミック電極16を備えており、バリアメタル層17はオーミック電極16も含めて覆っている。
【0025】
リッジ型半導体レーザ301は、リッジ部クラッド層14側面の絶縁膜13の端部Pをリッジ部コンタクト層15の下面(リッジ部クラッド層14の上面r)より下げて、リッジ部クラッド層14と電極層18がバリアメタル層15を介して接する構造としている。この構造により、リッジ型半導体レーザ301は、リッジ部クラッド層14から熱伝導率の大きい電極層18へ直接熱を放熱するルートを確保できるため、使用環境温度が高い条件でもレーザ光出力及び高速変調特性などのレーザ特性を大きく劣化することがない。
【0026】
続いて、絶縁膜13の端部Pの活性層11の中心からの高さdについて検討する。端部Pのリッジ部コンタクト層15の上面からの後退量とリッジ型半導体レーザ301内部の温度との関係を次の熱解析モデルでシミュレーションした。なお、リッジ型半導体レーザの構造は、InP基板を用いた発振波長1.3μm帯の例である。
リッジ部クラッド層14:厚さ1.5μm、底部mの幅1.6μm、材料InP、熱伝導率68W/m・K
リッジ部コンタクト層15:厚さ0.35μm、材料InGaAs、熱伝導率5W/m・K
電極層18:厚さ1.0μm、材料Au、熱伝導率315W/m・K
絶縁膜13:材料SiO、熱伝導率1.4W/m・K
なお、リッジ部クラッド層14の厚さとは、エッチングストップ層33の上面mからリッジ部クラッド層14の上面rまでの距離である。リッジ部コンタクト層15及び電極層18の厚さとは、リッジ部クラッド層14上の部分の半導体基板12表面の法線方向の厚みである。また、Auが半導体材料に拡散するのを防止するバリアメタルはTiとPtを積層したものであるが、Ti、Ptの熱伝導率はInGaAsの熱伝導率に比して充分大きく、熱解析に影響を与えないのでシミュレーションでは省略する。
【0027】
図3は、シミュレーションを行う熱解析モデルを説明する図である。本熱解析モデルは、リッジ型半導体レーザ301をヒートシンク21上に配置している。ヒートシンク21は材質AlNであり、リッジ型半導体レーザ301の環境温度として85℃に設定されている。リッジ型半導体レーザ301を特性仕様を満たす条件で駆動し、リッジ型半導体レーザ301の内部温度とヒートシンク温度(85℃)との差分温度ΔTを求めた。端部Pの位置をリッジ部コンタクト層15の上面(リッジ部コンタクト層15とオーミック電極16との境界面)と同位置(後退量0μm)から徐々に後退させ、後退量1.5μmまでの、差分温度ΔTと後退量との関係のシミュレーションを行った結果を図4に示す。
【0028】
図4のグラフの横軸は、リッジ部コンタクト層15の上面から絶縁層13の端部Pの後退量を示す。縦軸は、差分温度ΔTである。リッジ部コンタクト層15の上面と端部Pが一致する場合、すなわち後退量がゼロでは、差分温度ΔTは36℃であるが、端部Pがリッジ部クラッド層14の上面r(後退量0.35μm)以下になると、ΔTが急激に小さくなる。これは、熱がリッジ部クラッド層14と電極層18との接触部分から、電極層18に放熱することを示す。
【0029】
次に、後退量の範囲を検討する。後退量が大きくなればなる程ΔTは小さくなるが、後退量が大きくなると、光をほとんど吸収しない絶縁層13の代わりに、光の吸収が大きいバリアメタル層17及び電極層18が活性層11に近づくことになる。その結果、図2の活性層11で発生した光の強度分布範囲Bがバリアメタル層17及び電極層18まで届き、光出力特性の急激な劣化を招く。したがって、絶縁層の端部Pは、活性層11からの光の強度分布において、活性層11の中心における光の最大強度に対して1/e以下になる位置にする必要がある。以上の観点から、端部Pは活性層の中心からエッチングストップ層33面の法線方向に0.8μm以上の位置に配置することになる。端部Pの後退量で規定すれば、1.05μm程度が限界値である。
【0030】
すなわち、端部Pの高さdは、リッジ部クラッド層14の上面rから光分布範囲Bが電極層18に達しない範囲となる。具体的には、端部Pは、d≧0.8μm且つリッジ部クラッド層14の上面r以下の位置である。
【0031】
リッジ型半導体レーザ301は、特許文献1に記載される構造の半導体レーザに比べ高温度領域での放熱効果で約5℃以上の効果が達成できる。特に、85℃の最高使用温度条件で求められているアンクールド高速変調用DFBレーザ素子に関しては、リッジ型半導体レーザの内部温度が5℃以上下げられることは、レーザ素子のレーザ光出力及び高速変調特性などのレーザ特性歩留りの大幅な改善が達成でき非常に有用な技術であることは言うまでもない。
【0032】
続いて、リッジ型半導体レーザ301の製造方法について説明する。図5は、本製造方法を説明する図である。本製造方法は半導体基板12上に下部クラッド層31、活性層11、上部クラッド層32、及びエッチングストップ層33を形成し、エッチングストップ層33の上にリッジ部クラッド層14及びリッジ部コンタクト層15となる層を形成する半導体積層工程と、リッジストライプとなる部分のリッジ部クラッド層14及びリッジ部コンタクト層15を残し、他の部分をエッチングストップ層33表面が露出するまでエッチングするリッジストライプ形成工程と、リッジストライプとなったリッジ部クラッド層14及びリッジ部コンタクト層15を含む半導体表面に絶縁層13を形成する絶縁層形成工程と、リッジ部クラッド層14の側面にある絶縁層13の端部Pが、リッジ部クラッド層14の上面rと底部mとの間にあるように、絶縁層13をエッチングする絶縁層エッチング工程と、を順に行う。さらに、前記絶縁層エッチング工程の後にリッジ部コンタクト層15の上にオーミック電極16を形成するオーミック電極形成工程を行う。例えば、オーミック電極16がP型ならばAuZnNiを積層する。
【0033】
本製造方法は、さらに、オーミック電極形成工程の後、絶縁層13、リッジ部クラッド層14、リッジ部コンタクト層15及びオーミック電極16を覆うバリアメタル層17を形成するバリアメタル層形成工程と、バリアメタル層17を覆う電極層18を形成する電極層形成工程と、を順に行う。
【0034】
図5では、絶縁層エッチング工程、オーミック電極形成工程、バリアメタル層形成工程、電極層形成工程を示している。例えば、公知の技術を利用して半導体積層工程、リッジストライプ形成工程、及び絶縁層形成工程を行い、(1)に示す構造を形成する。この後、(2)レジスト塗布を行い、(3)レジスト膜の一部を除去してリッジストライプ上の絶縁膜13を露出する。(4)と(5)が絶縁層エッチング工程である。まず、(4)リッジストライプ上の絶縁膜を反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)を利用して除去する。続いて、(5)リッジ部クラッド層14の側面の絶縁膜13をウエットエッチングする。このとき、エッチング時間を調整して絶縁層13の端部Pが、リッジ部クラッド層14の上面rと底部mとの間にあるように、絶縁層13をエッチングする。具体的には、端部Pが、活性層11の中心からエッチングストップ層33表面の法線方向に0.8μm以上、且つリッジ部クラッド層14の上面r以下の位置にあるように絶縁層13をエッチングする。
【0035】
絶縁層エッチング工程が終了した後、(6)レジストを除去し、(7)オーミック電極形成工程、(8)バリアメタル層形成工程を行う。ここでは、Ti、Pt及びAuの層を積層する。バリアメタル層形成工程では、バリアメタルを斜め蒸着する。斜め蒸着は、半導体基板12表面の法線に対して30度以上55度以下の角度の範囲の方向からの蒸着が好ましい。斜め蒸着を行うことで、リッジストライプ側面(リッジ部クラッド層14の側面及びリッジ部クラッド層14の側面を覆う絶縁膜13の側面)を完全に覆うことができ、バリアメタル層のカバレッジを改善することができ、この後に積層する電極層の原子がリッジ部クラッド層14及び活性層11に拡散することを防止できる。
【0036】
最後に(8)電極層形成工程を行い、リッジ型半導体レーザ301を完成させる。ここでは、Ti及びAuを蒸着する。
【0037】
また、バリアメタル層形成工程は、斜め蒸着法について説明したが、スパッタ法でもバリアメタル層のカバレッジを改善することができる。
【0038】
また、オーミック電極形成工程は、絶縁層エッチング工程の後に行われる例を説明したが、オーミック電極工程は、半導体積層工程の後、リッジストライプ形成工程の前に行われる場合でも、本発明を適用することができることは云うまでもない。
【0039】
(第2実施形態)
以上の説明の実施例形態はリッジ型半導体レーザの実施例であるが、本発明の素子構造及び製造方法は、前記のリッジ型半導体レーザと同様の構造をもつリッジ型半導体光変調器にも適用可能である。第2実施形態では、リッジ型半導体光素子の一例としてリッジ型半導体光変調器を説明する。図6は、本実施形態の一例であるリッジ型半導体光変調器302を説明する図である。リッジ型半導体光変調器302の場合、吸収層110で発生した光電流により吸収層110及びリッジ部クラッド層14で熱が発生する。この発熱は、従来のリッジ型半導体光変調器の変調特性を劣化させる。そこで、図2のリッジ型半導体レーザ301で説明した構造を適用したリッジ型半導体光変調器、すなわち、リッジ型半導体光変調器302は変調特性の劣化を防ぐことができる。
【0040】
リッジ型半導体光変調器302の製造方法は、リッジ型半導体レーザ301の活性層11を光変調器の吸収層110と置き換えることでリッジ型半導体レーザ301と同様の製造方法で説明できる。このように、本発明は、前記リッジ型半導体レーザの場合と同様に、光変調特性を大きく劣化させることを防ぐ構造のリッジ型半導体光変調器及びその製造方法を提供することができる。
【0041】
以上の説明は、リッジ型半導体レーザ及びリッジ型半導体光変調器の単体素子の場合の実施例であるが、本発明の素子構造及び製造方法は、半導体レーザと半導体光変調器が同一基板上に集積化された光素子の場合にも適用できることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
11:活性層
12:半導体基板
13:絶縁層
14:リッジ部クラッド層
15:リッジ部コンタクト層
16:オーミック電極
17:バリアメタル層
18:電極層
19:リッジ側面
21:ヒートシンク
31:下部クラッド層
32:上部クラッド層
33:エッチングストップ層
110:吸収層
301:リッジ型半導体レーザ
302:リッジ型半導体光変調器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層と、
エッチングストップ層と、
前記エッチングストップ層の、前記活性層がある側と反対側の表面に形成され、前記エッチングストップ層側を底部、前記エッチングストップ層側と反対側を上面とするリッジストライプ状のリッジ部クラッド層と、
前記リッジ部クラッド層の側面を覆う絶縁層と、
を備え、
前記リッジ部クラッド層の側面にある前記絶縁層の端部が、前記リッジ部クラッド層の上面と底部との間にあるリッジ型半導体光素子。
【請求項2】
前記絶縁層の端部は、前記活性層からの光の強度分布において、前記活性層の中心における光の最大強度に対して1/e以下になる位置にあることを特徴とする請求項1に記載のリッジ型半導体光素子。
【請求項3】
前記リッジ部クラッド層の上面に配置されたリッジ部コンタクト層と、
前記絶縁層、前記リッジ部クラッド層及び前記リッジ部コンタクト層を覆うバリアメタル層と、
前記バリアメタル層を覆う電極層と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のリッジ型半導体光素子。
【請求項4】
活性層を形成する工程と、
エッチングストップ層を形成する工程と、
前記エッチングストップ層の、前記活性層がある側と反対側の表面にクラッド層及びコンタクト層を順に形成する半導体積層工程と、
リッジストライプとなる部分のリッジ部クラッド層及びリッジ部コンタクト層を残し、他の部分を前記エッチングストップ層が露出するまでエッチングするリッジストライプ形成工程と、
前記リッジストライプとなった前記リッジ部クラッド層及び前記リッジ部コンタクト層を含む半導体の表面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記リッジ部クラッド層の前記エッチングストップ層側を底部、前記リッジ部クラッド層の前記リッジ部コンタクト層側を上面としたとき、前記リッジ部クラッド層の側面にある前記絶縁層の端部が、前記リッジ部クラッド層の上面と底部との間にあるように、前記絶縁層をエッチングする絶縁層エッチング工程と、
を順に行うことを特徴とするリッジ型半導体光素子の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層エッチング工程では、前記クラッド層の側面にある前記絶縁層の端部が、前記活性層からの光の強度分布において、前記活性層の中心における光の最大強度に対して1/e以下になる位置にあるように前記絶縁層をエッチングすることを特徴とする請求項4に記載のリッジ型半導体光素子の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁層エッチング工程の後、
前記エッチングストップ層の前記リッジストライプが形成された側において前記絶縁層、前記リッジ部クラッド層及び前記リッジ部コンタクト層を覆うバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程と、
前記バリアメタル層を覆う電極層を形成する電極層形成工程と、
を順に行うことを特徴とする請求項4又は5に記載のリッジ型半導体光素子の製造方法。
【請求項7】
前記バリアメタル層形成工程では、
バリアメタルを斜め蒸着すること、または、スパッタ法でバリアメタルを付着させることを特徴とする請求項6に記載のリッジ型半導体光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−222927(P2011−222927A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122018(P2010−122018)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】