説明

リニアアクチュエータ

【課題】簡単な構成で回転運動を直動運動に変換することができるリニアアクチュエータを提供すること。
【解決手段】ステータと、ステータの内部に配置され、ステータに対して相対回転するロータと、ロータの回転中心に固定されロータとともに回転する棒状の部材であり、表面の少なくとも一部にネジ溝が形成されたボールネジ軸と、ステータおよびロータを収納し、ステータを固定するハウジングと、ハウジングを介してステータに固定され、ボールネジ軸のネジ溝と螺合したナットと、を備えるモータと、ロータをステータに対して相対回転させる制御装置と、を有し、制御装置は、ロータをステータに対して回転させることで、ナットに対してボールネジ軸を回転させ、ボールネジ軸をロータの回転方向に直交する直動方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転運動を直動運動に変換するリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
直動方向に動力を出力するリニアアクチュエータとしては、モータの回転運動を直動運動に変換し、直動方向に動力を出力するリニアアクチュエータがある。例えば、特許文献1および特許文献2には、内周壁にネジ溝を形成したナットをロータとともに回転する状態で保持し、回転を抑制しつつ摺動可能な状態で支持されたボールネジを当該ナットに挿入させたリニアアクチュエータが記載されている。特許文献1および特許文献2に記載のリニアアクチュエータは、ロータが回転することで、ロータとともにナットが回転し、ナットのネジ溝と螺合したボールネジが直動方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−220715号公報
【特許文献2】特開2000−257604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載のリニアアクチュエータは、ボールネジを回転しない状態で支持し、かつ、ロータと相対回転可能な状態とする。このため、ステータとロータとを相対的に支持するための軸受機構と、ロータとボールネジとを相対的に支持するための軸受機構が必要となり、部品点数が増え、機構が複雑になる。また、軸受部材を配置するための領域が必要となるため、回転軸に直交する方向、つまり径方向の大きさが大きくなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で回転運動を直動運動に変換することができるリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のリニアアクチュエータは、ステータと、前記ステータの内部に配置され、前記ステータに対して相対回転するロータと、前記ロータの回転中心に固定され前記ロータとともに回転する棒状の部材であり、表面の少なくとも一部にネジ溝が形成されたボールネジ軸と、前記ステータおよび前記ロータを収納し、前記ステータを固定するハウジングと、前記ハウジングを介して前記ステータに固定され、前記ボールネジ軸のネジ溝と螺合したナットと、を備えるモータと、前記ロータを前記ステータに対して相対回転させる制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記ロータを前記ステータに対して回転させることで、前記ナットに対して前記ボールネジ軸を回転させ、前記ボールネジ軸を前記ロータの回転方向に直交する直動方向に移動させることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記モータは、前記ナットを2つ備え、一方の前記ナットが前記直動方向において前記ロータの一方の端面と対面し、他方の前記ナットが前記直動方向において前記ロータの他方の端面と対面し、2つの前記ナットが前記ロータを挟み込んで配置されていることが好ましい。
【0008】
また、前記モータは、前記ボールネジ軸が前記ハウジングに対して回動可能かつ直動方向に摺動可能な状態で、前記ボールネジ軸と前記ハウジングとを連結する軸受部材をさらに備えることが好ましい。
【0009】
また、前記軸受部材は、アンギュラ玉軸受であることが好ましい。
【0010】
また、前記モータは、前記ナットが前記直動方向において前記ロータの一方の端面と対面し、前記軸受部材が前記直動方向において前記ロータの他方の端面と対面し、前記ナットと前記軸受部材が前記ロータを挟み込んで配置されていることが好ましい。
【0011】
また、前記モータは、前記ボールネジ軸の前記ネジ溝が形成されている領域と前記ロータと固定されている領域の境界を含む部分に固定された保護部材をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、前記ロータは、前記ボールネジ軸の外周に固定されたロータコアと、ロータコアの外周部に設けられて、前記ロータコアの周方向に向かって配列される複数のマグネットと、を有し、前記ステータは、励磁コイルが巻き付けられた分割コアが、前記ロータの外側に所定の間隔を有して環状に配置されていることが好ましい。
【0013】
また、前記ロータは、前記ボールネジ軸の外周に固定されたコアと整流子とを含み、前記モータは、前記整流子の径方向で対向し前記整流子と接触して設けられるブラシを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、簡単な構成で回転運動を直動運動に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態1に係るモータを備えるリニアアクチュエータの概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るモータの構成を示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示すナットの概略構成を示す断面図である。
【図4】図4は、図2示すモータの断面図である。
【図5A】図5Aは、実施形態1に係るモータの動作を説明する説明図である。
【図5B】図5Bは、実施形態1に係るモータの動作を説明する説明図である。
【図6】図6は、変形例に係るモータの構成を示す断面図である。
【図7】図7は、実施形態2に係るモータの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。本実施形態では、本発明に係るリニアアクチュエータが対象部材14を付勢する場合について説明するが、本発明の適用対象は対象部材14の付勢に限定されるものではない。本発明のリニアアクチュエータは、直動運動の動力が必要な各種対象部材の駆動、制御に用いることができる。
【0017】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るモータを備えるリニアアクチュエータの概略構成を示す模式図である。まず、図1を用いて、本実施形態に係るリニアアクチュエータの概要を説明する。図1に示すように、リニアアクチュエータ10は、モータ11と制御装置12とを有する。モータ11は、ハウジング(筐体)の一部が締結部材9で支持部8に支持されている。なお、締結部材9はネジ、ボルト、ピン等である。これにより、モータ11は、支持部8に固定される。また、モータ11は、ロータが回転することで直動方向(モータの回転方向に直交する方向)に移動する可動子であるボールネジ軸20を有する。モータ11については後述する。制御装置12は、モータ11の駆動を制御する装置である。
【0018】
制御装置12は、モータ11に供給する電流、電圧の大きさ、周波数、波形を制御することで、モータ11の回転方向や回転速度を制御し、直動方向に移動する可動子の、直動方向における移動方向や移動速度を制御する。
【0019】
リニアアクチュエータ10のモータ11の直動方向に移動するボールネジ軸20の先端に対向する位置には、対象部材14が配置されている。リニアアクチュエータ10は、制御装置12によりモータ11の回転を制御し、モータ11のボールネジ軸20を直動方向(図1中矢印方向)に移動させることで、対象部材14を付勢したり、付勢しなかったりすることができる。
【0020】
次に、図2から図4を用いてモータ11の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るモータの構成を示す断面図である。図3は、図2に示すナットの概略構成を示す断面図である。図4は、図2に示すモータの断面図である。
【0021】
図2に示すようにモータ11は、ブラシレスモータであり、ボールネジ軸20と、略円筒形のハウジング22Aと、ハウジング22Aの一方の開口端部を閉塞する略円板状のフロントブラケット22Bと、フロントブラケット22Bに固定されボールネジ軸20と螺合するナット23、ハウジング22Aに固定されボールネジ軸20と螺合するナット24と、マグネット25およびロータコア26を備えボールネジ軸20とともに回転するロータ30と、コア27と励磁コイル28とを備えハウジング22Aに固定されたステータ29と、ロータ30を保護する保護部材35、36と、を有する。
【0022】
ボールネジ軸20は、モータ11の中心軸Zrに配置された棒状の部材である。ボールネジ軸20は、棒状の部材の延在方向、つまり中心軸Zrに平行な方向(直動方向)における領域によって形状が異なる。具体的には、ボールネジ軸20の中心部近傍の中央領域20Aは、ネジ溝が形成されていない。また、ボールネジ軸20の一方の端部近傍(フロントブラケット22B近傍)の端部領域20Bと他方の端部近傍の端部領域20Cとはネジ溝が形成されている。なお、端部領域20Bに形成されるネジ溝と端部領域20Cに形成されるネジ溝は、同一の向きに形成されている。
【0023】
ハウジング22Aは、円筒形状であり、かつ、一方の端部(フロントブラケット22Bが設けられた側とは反対側の端部)が、端部を閉塞するように絞られた形状である。また、ハウジング22Aは、フロントブラケット22Bが設けられた側とは反対側の端部の中心部分に開口が形成されている。つまり、ハウジング22Aは、フロントブラケット22Bが開口となり、底面に開口が形成され側面が円筒となる箱形状である。なお、ハウジング22Aを形成する磁性材料としては、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄等が適用できる。
【0024】
フロントブラケット22Bは、ハウジング22Aの一方の開口端部を閉塞する略円板状であり、円板の外周側の一部がハウジング22Aよりも外側に突出している。また、フロントブラケット22Bは、円板形状の中心部分に開口が形成されている。フロントブラケット22Bは、ハウジング22Aよりも外側(円筒形状の径方向外側)に突出した部分の一部が支持部8と接しており、締結部材9が挿入されている。このようにフロントブラケット22Bは、モータ11を所望の機器に取り付ける際のフランジの役割を果たしている。
【0025】
ナット23は、フロントブラケット22Bの内側であって、フロントブラケット22Bの略中央部分形成された開口に固定されている。ナット23は、図3に示すように、内周面23Aにネジ溝が形成されている。ナット23は、ボールネジ軸20が挿入されており、ボールネジ軸20の端部領域20Bを回転可能に支持する。また、ナット23は、内周面23Aのネジ溝が端部領域20Bのネジ溝と螺合している。
【0026】
ナット24は、ハウジング22Aの内側であって、ハウジング22Aの底部の略中央部分に形成された開口に固定されている。ナット24もナット23と同様に内周面にネジ溝が形成されている。ナット24は、ボールネジ軸20が挿入されており、ボールネジ軸20の端部領域20Cを回転可能に支持する。また、ナット24は、内周面のネジ溝が端部領域20Cのネジ溝と螺合している。ナット23、24は、内周面に挿入されたボールネジ軸20を支持しているので、ナット23、24の中心は、ボールネジ軸20の中心軸と同一の中心軸Zrとなる。なお、ステータ29およびロータ30の中心軸のボールネジ軸20の中心軸と同一の中心軸Zrとなる。また、このように、ボールネジ軸20は、ハウジング22Aの両端部にそれぞれ位置されたナット23、24に挿入されているため、端部がハウジング22Aの端部から露出する。
【0027】
次に、ボールネジ軸20の表面(外周)、具体的にはボールネジ軸20の中央領域20Aには、円柱形状のロータコア26が固定されている。ロータコア26は、完全な円柱には限られず、マグネット25を配置するための溝があってもよい。また、ロータコア26の側面にマグネット25の側面を沿わせるための面が形成されて、ロータコア26の底面が多角形であってもよい。
【0028】
ロータコア26は、電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの薄板を、接着、ボス、カシメなどの手段により積層して製造されている。ロータコア26は、順送金型の型内において積層され、金型から排出される。ボールネジ軸20は、ロータコア26と一体で成型してもよいし、ボールネジ軸20をロータコア26に圧入してもよい。ロータコア26の外周部には、モータ駆動用の複数(2×n個、nは整数)のマグネット25が設けられる。マグネット25は、ロータコア26の外周部に取り付けられ、図4に示すように、S極及びN極がロータコア26の周方向に交互に、かつ等間隔に着磁された永久磁石である。本実施形態において、マグネット25は、分割形状(セグメント構造)である。
【0029】
マグネット25は、円柱をその軸方向を含む平面と平行な平面で切断したときに生じる、底面が略半円形の柱であるが、これには限られない。例えば、マグネット25は、円管をその軸方向を含む平面で切断したときに生じる曲板であってもよい。マグネット25の長手方向は、ロータコア26の中心軸Zr方向と平行である。本実施形態では、8本のマグネット25がロータコア26の外周部に等間隔で配列されている。隣接するマグネット25の間には、ロータコア26の側面が表れている。なお、ロータコア26の側面とは、柱形状であるロータコア26が、ステータ29のコア27と対向する面である。
【0030】
図4に示すように、ハウジング22Aの内周面には、コア27がその全体が包囲された状態で固定されている。このコア27には、ロータコア26の周方向に配列されたマグネット25を包囲するように、例えば3相の励磁コイル28がインシュレータ31を介して集中巻きされている。これらのコア27及び励磁コイル28によってモータ11のステータ29が構成されている。ステータ29は、ロータ30の外側に所定の間隔を有して環状に配置される。
【0031】
コア27は、例えば、等分割された複数(本実施形態では12個)の分割コア27Aから構成されている。それぞれの分割コア27Aは、組み立てられてコア27を構成した際に、円筒形のヨーク部となる円弧状の分割ヨーク37と、この分割ヨーク37の内周面からロータ30に向かって延びる1本のティース38とを備えている。各々の分割コア27Aのティース38には、励磁コイル28がそれぞれ集中巻きされている。そして、複数の分割コア27Aが組み合わされてハウジング22A内に圧入されて、環状のコア27を構成する。このように、分割コア27Aは、ハウジング22A内に圧入されて、ハウジング22Aに締結されて、コア27を構成する。なお、コア27とハウジング22Aとは、圧入の他に接着や焼きばめ等によって固定されてもよい。
【0032】
本実施形態において、コア27は、分割コア27Aを組み合わせて構成されるが、これに限定されるものではない。例えば、コア27を一体で構成したり、焼結で構成したりしてもよい。励磁コイル28は、コア27にインシュレータ31を取り付けた後に、インシュレータ31が取り付けられたコア27に巻き付けられる。ステータ29の片側端部には端子台が設けられる。端子台に挿入又はインサートモールドされたバスバー(パワーハーネスでもよい)と各層の励磁コイル28とは、ヒュージングや抵抗溶接等で電気的に接続される。
【0033】
次に、ボールネジ軸20の表面(外周)の中央領域20Aと端部領域20Bとの境界を含む部分(中央領域20Aの端部領域20B側の一部および端部領域20Bの中央領域20A側の一部)、つまりボールネジ軸20のロータ30とナット23との間となる領域には、円柱形状の保護部材35が固定されている。保護部材35は、ロータ30のフロントブラケット22B側の端面と隣接している。
【0034】
ボールネジ軸20の表面(外周)の中央領域20Aと端部領域20Cとの境界を含む部分(中央領域20Aの端部領域20C側の一部および端部領域20Cの中央領域20A側の一部)、つまりボールネジ軸20のロータ30とナット24との間となる領域には、円柱形状の保護部材36が固定されている。保護部材36は、ロータ30のハウジング22Aの底部側の端面と隣接している。ここで、保護部材35、36は、弾性を備える材料または剛性の低い材料で作製することが好ましい。これにより、保護部材35、36が他の部材と接触したときに接触により他の部材や自身が損傷することを抑制できる。モータ11は、以上のような構成である。
【0035】
次に、図5Aおよび図5Bを用いてリニアアクチュエータ10およびモータ11について説明する。図5Aおよび図5Bは、それぞれ実施形態1に係るモータの動作を説明する説明図である。リニアアクチュエータ10の制御装置12は、ステータ29の励磁コイル28に例えば交流を印加し、励磁コイル28に印加する電圧を所定の周期で切り換えることで、ステータ29に対してロータ30が回転する駆動力を発生させる。モータ11のロータ30が回転するとロータ30に固定されているボールネジ軸20も回転する。モータ11は、ボールネジ軸20のネジ溝とナット23、24のネジ溝とが螺合しており、ナット23、24がそれぞれフロントブラケット22B、ハウジング22Aに固定されている。このため、ボールネジ軸20が回転すると、ボールネジ軸20のネジ溝がナット23、24のネジ溝に沿って直動方向に移動する。これにより、ボールネジ軸20は、回転することで、ナット23、24に対して相対的に直動方向に移動する。本実施形態では、図5Aに示すように、ボールネジ軸20を紙面手前の面において上から下に回転させると、ボールネジ軸20がナット23、24に対して左から右に移動する。図5Bに示すように、ボールネジ軸20を紙面手前の面において下から上に回転させると、ボールネジ軸20がナット23、24に対して右から左に移動する。
【0036】
リニアアクチュエータ10およびモータ11は、このように、ボールネジ軸20をロータ30に固定して、ロータ30とボールネジ軸20とが一体で回転する構成とし、さらに、ボールネジ軸20に形成されたネジ溝と螺合するナット23、24をステータ29とともに回転しないハウジング22A、フロントブラケット22Bに固定することで、モータ11の回転運動をボールネジ軸20の直動運動に変換することができる。これにより、リニアアクチュエータ10およびモータ11は、ボールネジ軸20を直動運動させることができる。
【0037】
リニアアクチュエータ10およびモータ11は、ボールネジ軸20をロータ30に固定することで、つまりボールネジ軸20とロータ30とを一体とすることで、ロータ30の内部にボールネジ軸を挿入し、ボールネジ軸と螺合するナットをロータ30で回転させる構成とするよりも装置構成を簡単にすることができる。つまり、ナット23、24が回転運動を直線運動に変換する変換手段となりかつボールネジ軸20およびロータ30を中心軸Zrに支持する軸受部材となる。これにより、モータ11の回転軸を配置する位置にボールネジ軸20を配置し、ロータ30の軸受を配置する位置にナット23、24を配置することで、本実施形態のモータ11を実現することができる。従って、ロータの内部にボールネジ軸を配置し、ボールネジ軸を他の機構で支持する機構よりも径方向の大きさを小さくすることできる。これにより、リニアアクチュエータ10およびモータ11をより小型化することができる。また、軸受部材等を少なくできることで、モータの大きさが同一の場合は、ボールネジ軸をより太い径とすることができる。
【0038】
また、本実施形態のようにモータ11をブラシレスモータとする場合は、ロータ30とステータ29の相対位置を検出するレゾルバを設けることが好ましい。これによりボールネジ軸20の直動方向の位置をより高精度に制御することができる。
【0039】
また、リニアアクチュエータ10およびモータ11は、ネジ溝のピッチ(リード)を調整することにより、回転運動を直動運動の変換する際の変換率、ロータ30の一回転でボールネジ軸20が直動方向に動く距離を種々の値とすることができる。これにより、種々の性能のリニアアクチュエータを簡単な設計変更で作成することができる。
【0040】
また、モータ11は、ボールネジ軸20にあわせてロータ30が移動する直動方向の領域の全域にステータ29(コア27)を設けることが好ましい。これにより、ボールネジ軸20およびロータ30の直動方向の位置によって、ロータ30とステータ29との間で生じる磁界が変化することを抑制することができる。
【0041】
本実施形態のように、保護部材35を、ボールネジ軸20の外周の、ロータ30の直動方向の側面、つまりロータ30とナット23との間に設けることで、ロータ30およびボールネジ軸20を回転させて直動方向に移動させた場合に、ロータ30がナット23と接触する前に保護部材35とナット23が接触する。保護部材36も同様にロータ30がナット24と接触する前に保護部材36とナット24が接触する。以上より、保護部材35、36を設けることで、ロータ30とナット23、24とが接触することを抑制できる。
【0042】
また、保護部材35を端部領域20B(具体的には端部領域20Bの中央領域20A側の一部)に配置することで、ナット23がボールネジ軸20の端部領域20Bに形成されたネジ溝の終端(ネジ溝の中央領域20A側の端)まで移動することを抑制できる。つまり、ナット23がネジ溝の終端まで移動する前に、ナット23と保護部材35とが接触し、ボールネジ軸20の回転および直動方向の移動が抑制されるため、ナット23がネジ溝の終端まで移動することを抑制できる。また、保護部材36も同様に、端部領域20C(具体的には端部領域20Cの中央領域20A側の一部)に配置することで、ナット24がボールネジ軸20の端部領域20Cに形成されたネジ溝の終端(ネジ溝の中央領域20A側の端)まで移動することを抑制できる。以上より、保護部材35、36をネジ溝の終端側の一部に配置することで、ナット23、24がボールネジ軸20のネジ溝の終端まで移動することを抑制でき、ナット23、24がボールネジ軸20に対してロックする恐れを低減することができる。なお、保護部材35、36は、ロータ30の近傍に配置することが好ましい。保護部材35、36をロータ30の近傍に配置することで、ボールネジ軸20およびロータ30の直動方向における移動可能な距離を大きくすることができる。つまり、保護部材35、36をロータ30の近傍に配置することで、保護部材35とナット23との接触時のロータ30とナット23との距離、保護部材36とナット24との接触時のロータ30とナット24との距離を短くすることができるため、ボールネジ軸20の直動方向における移動可能な距離を大きくすることができる。
【0043】
また、本実施形態のようにボールネジ軸20のロータ30が配置された中央領域20Aにネジ溝を形成しないことで、つまり直動方向において、ロータ30が配置されている領域とネジ溝が形成されている領域との間に間隔を設けることで、ボールネジ軸20の直動方向における移動領域を制限することができる。例えば、ナット23、24がボールネジ軸20の保護部材35、36が配置されている部分まで移動し、ネジ溝の終端(中央領域20A側の端部)とナット23、24が接触している状態でさらにネジ溝の終端側にボールネジ軸20を回転させる力が生じてもネジ溝が無いため、ボールネジ軸20は回転しない。これにより、ボールネジ軸20を直動方向に移動させた際に、ロータ30とナット23、24とが接触することを抑制できる。これにより、モータ11を故障しにくくすることができる。
【0044】
(変形例)
図6は、変形例に係るモータの構成を示す断面図である。図6に示すモータ111は、ボールネジ軸120の構成と、ナット24に代えて軸受部材124を設けた点を除いて他の構成は、図2に示すモータ11と同様の構成である。以下、モータ111に特有の点を説明する。
【0045】
ボールネジ軸120は、モータ11の中心軸Zrに配置された棒状の部材である。ボールネジ軸120は、中心軸Zrに平行な方向(直動方向)における領域によって形状が異なる。具体的には、ボールネジ軸20の中心部近傍および他方の端部近傍(ハウジング22Aの底部近傍)の領域120Aは、ネジ溝が形成されていない。また、ボールネジ軸20の一方の端部近傍(フロントブラケット22B近傍)の端部領域120Bはネジ溝が形成されている。つまり、ボールネジ軸120は、他方の端部近傍(ハウジング22Aの底部近傍)の領域にネジ溝を形成していない点で、ボールネジ軸20と異なる。
【0046】
軸受部材124は、ハウジング22Aの内側であって、ハウジング22Aの底部の略中央部分に形成された開口に固定されている。軸受部材124は、ボールネジ軸120の領域120Aをハウジング22Aに対して回動可能かつ直動方向に摺動可能な状態で支持(連結)している部材である。本実施形態の軸受部材124は、単列のアンギュラ玉軸受を組み合わせ構成である。軸受部材124は、ボールネジ軸120をハウジング22Aに対して回動可能かつ直動方向に摺動可能な状態で支持できる部材であればよく、単列のアンギュラ玉軸受を組み合わせ構成には限定されない。ボールネジ軸120は、ハウジング22Aに対して直動方向の双方向に移動するため、軸受部材124は、直動方向のいずれの方向に力に対しても対応できる構成とすることが好ましい。
【0047】
また、モータ111は、モータ11と同様に、ボールネジ軸120の表面の領域120Aと端部領域120Bとの境界を含む部分つまりボールネジ軸120のロータ30とナット23との間となる領域には、円柱形状の保護部材35が固定されている。また、モータ111は、ボールネジ軸120の表面の領域120Aにおいてボールネジ軸120のロータ30とナット23との間となる領域(ボールネジ軸20の中央領域20Aと端部領域20Cとの境界に対応する位置を含む領域)には、円柱形状の保護部材36が固定されている。また、保護部材36は、ハウジング22Aの底部側の端面と隣接している。
【0048】
モータ111は、ロータ30によりボールネジ軸120が回転されるとボールネジ軸120のネジ溝に沿ってボールネジ軸120とナット23とが相対的に直動方向に移動する。このように、ボールネジ軸120のネジ溝と螺合するナット23を1つのみ設けた構成としても、モータ11と同様にモータ111の回転運動をボールネジ軸120の直動運動に変換することができる。また、軸受部材124により、ボールネジ軸120をハウジング22Aに対して支持することで、ボールネジ軸120を中心軸Zr上に適切に支持することができる。なおモータ111では、フロントブラケット22B側にナット23を設け、ハウジング22Aの底部側に軸受部材124を設けた構成としたが、ナット23と軸受部材124の位置は逆にしてもよい。
【0049】
また、モータ111は、ボールネジ軸120のロータ30と軸受部材124との間、つまりロータ30のネジ溝が形成されていない側の側面側に保護部材36を設けることで、ロータ30と軸受部材124とが接触することを抑制することができる。
【0050】
ボールネジ軸は、モータ11およびモータ111に示すように、直動方向においてロータ30を挟んだ両端をナットまたは軸受部材でハウジングに対して(ハウジングを介してロータに対して)支持することが好ましい。これにより、ボールネジ軸の中心軸とモータの中心軸とがずれることを抑制することができる。
【0051】
(実施形態2)
図7を用いて、実施形態2に係るモータの構成を説明する。図7は、実施形態2に係るモータの構成を示す断面図である。図7に示すモータ201は、ブラシモータであり、ボールネジ軸20と、ハウジング22Aと、フロントブラケット22Bと、ナット23、24と、整流子(コンミテータ)203とコア213とを含むロータ(回転子)202と、複数のブラシ204と、複数のブラシ204をそれぞれ保持するブラシ保持手段205と、マグネット209を含むステータ212と、保護部材235、236と、を有している。なお、ブラシ204にはピグテイル(導線)が接続されている。なお、ボールネジ軸20と、ハウジング22Aと、フロントブラケット22Bと、ナット23、24とは、上述したブラシレスモータのモータ11と同様の構成であるので詳細な説明は省略する。
【0052】
ロータ202とブラシ204とは、磁性材料で形成された略円筒形のハウジング22A内に収められている。ロータ202は、整流子203と、コア213と、コイル214とを備えている。ハウジング22Aの一端には、この端部を閉塞するようにハウジング22Aと一体に底部が設けられている。底部に対して反対側の一端には、開口部が設けられている。この開口部は、フロントブラケット22Bにより閉塞される。なお、ロータ202を形成する磁性材料としては、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄等が適用できる。
【0053】
ハウジング22Aの内側面には、ハウジング22Aの内部に収納されたロータ202のコア213に対向するように、ステータ212となる2個のマグネット209が互いに極性を逆にして配置され、マグネットボルダ210により固定されている。2個のマグネット209の表面にはマグネット飛散防止カバーが取り付けられる。マグネット飛散防止カバーは、2個のマグネット209を押さえることにより、2個のマグネット209の万一の飛散を防止する。
【0054】
ロータ202は、ボールネジ軸20の表面(外周)に固定されている。ロータ202は、直動方向において、ボールネジ軸20のネジ溝が形成されていない領域に固定されている。ロータ202のコア213部分は、複数のスロット(溝)を有する。コイル214は、前記スロットに巻き回されている。コア213は、磁性材料を用いて形成される。コア213は、例えば、磁性材料としてケイ素鋼板を用い、これを積層して形成される。整流子203は、絶縁体で形成された円柱状の絶縁部の側面に、導電体で形成された複数の導電部215が等間隔で平行に配置されているものである。コイル214の一端は、一つの導電部215に接続されており、他端は別の導電部215に接続されている。整流子203も、ボールネジ軸20の表面(外周)に固定されている。
【0055】
ブラシ204は、ハウジング22A内で、整流子203の径方向で整流子203と対向する位置に複数設けられる。ブラシ204は、略角柱、好ましくは四角柱状の多面体である。より好ましくは、ブラシ204は、整流子203と対向する面に含まれる4つの頂点のうち、フロントブラケット22B側ではなく、コア213側にある2つ頂点のいずれかが突出する形状である。ブラシ204は、この突出している頂点が整流子203と接する。このような構造により、モータ201は、ブラシ204と整流子203とが接触する位置が明確となる。その結果、モータ201は、ブラシ204から整流子203への電力の供給が安定する。
【0056】
ブラシ204は、接触抵抗が小さく機械的衝撃に耐えられる材料により構成される。例えば、ブラシ204は、黒鉛により構成される。ブラシ204は、底部を有する角筒状のブラシケース218の内部に摺動可能に収められている。ブラシケース218は、絶縁体で形成された基板219に固定されている。ブラシ保持手段205は、ブラシケース218と、基板219とを含んで構成されている。ブラシ204は、ブラシケース218の底部に設置されたバネ220によって整流子203へ向かう力、すなわち、ブラシケース218からブラシ204が出る方向の力が付勢され、整流子203に押し付けられる。バネ220として、つるまきバネを図示しているが、バネ220は板バネやその他の弾性体であってもよい。ブラシ204とブラシケース218とは、固定されておらず、ブラシ204がブラシケース218との間で摺動できるようにブラシ204とブラシケース218との間には間隔が設けられている。基板219は、フロントブラケット22Bに固定され、軸120と直交するようにハウジング22A内に収納される。したがって、基板219に固定されたブラシケース218に収められたブラシ204は、基板219と平行な面が軸120と直交する。
【0057】
ブラシ204には、ピグテイル(導線)が電気的に接続されており、ピグテイルは、さらに基板219に埋設されたバスバーを経由して、電力供給部材222と電気的に接続される。なお、電力供給部材は、制御装置の端子と接続され、制御装置により制御された電流値の電力が制御装置から直接供給される。
【0058】
ブラシ204にピグテイルを通じて制御装置から供給された電流は、ブラシ204と接触する整流子203の導電部215を通ってコイル214を流れ、整流子203の別の導電部215に至り、別のブラシ204に流入する。モータ201は、コイル214を電流が流れることによって磁界が発生し、この磁界と、マグネット209の磁界との相互作用によりロータ202が回転する。
【0059】
次に、ボールネジ軸20の表面(外周)の中央領域と一方の端部領域との境界を含む部分(中央領域の端部領域側の一部および端部領域の中央領域側の一部)、つまりボールネジ軸20の整流子203とナット23との間となる領域には、円柱形状の保護部材235が固定されている。保護部材235は、整流子203のフロントブラケット22B側の端面と隣接している。
【0060】
ボールネジ軸20の表面(外周)の中央領域と他方の端部領域との境界を含む部分(中央領域の端部領域側の一部および端部領域の中央領域側の一部)、つまりボールネジ軸20のロータ202とナット24との間となる領域には、円柱形状の保護部材236が固定されている。保護部材236は、ロータ203のハウジング22Aの底部側の端面と隣接している。
【0061】
モータ201のように、モータをブラシモータとした場合でもロータ202をボールネジ軸20に固定し、ボールネジ軸20とナット23、24を螺合させることで、モータ11と同様の効果を得ることができる。また、モータ201のように、モータをブラシモータとした場合とすることで、駆動の制御をより簡単にすることができる。
【0062】
モータ201のように、ブラシモータとした場合は、ボールネジ軸20にあわせてロータ30が移動する直動方向の領域の全域で整流子(コンミテータ)203と、ブラシ204とが接触するように、整流子203の長さをボールネジ軸20の直動方向の移動可能領域よりも長くする。また、ブラシ204は、ボールネジ軸20が直動方向の移動可能領域のどの位置にいても整流子203と接触する位置に配置する。これにより、ボールネジ軸20およびロータ30の直動方向の位置が位置でも、ブラシ204から整流子203に電流を供給することができる。
【0063】
また、保護部材235、236を、ボールネジ軸20に固定され、ボールネジ軸20とともに回転するロータ202と整流子203の直動方向の端部に配置することで、ハウジング22Aの内部に配置されて、ボールネジ軸20とものに直動方向に移動する部品(モータ11を回転させる機構)がナット23、24と接触することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
8 支持部
9 締結部材
10 リニアアクチュエータ
11 モータ
12 制御装置
14 対象部材
20 ボールネジ軸(回転軸)
22A ハウジング
22B フロントブラケット
23、24 ナット
25 マグネット
26 ロータコア
27 コア
27A 分割コア
28 励磁コイル
29 ステータ
30 ロータ
31 インシュレータ
35、36、235、236 保護部材
37 分割ヨーク
38 ティース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータの内部に配置され、前記ステータに対して相対回転するロータと、
前記ロータの回転中心に固定され前記ロータとともに回転する棒状の部材であり、表面の少なくとも一部にネジ溝が形成されたボールネジ軸と、
前記ステータおよび前記ロータを収納し、前記ステータを固定するハウジングと、
前記ハウジングを介して前記ステータに固定され、前記ボールネジ軸のネジ溝と螺合したナットと、を備えるモータと、
前記ロータを前記ステータに対して相対回転させる制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記ロータを前記ステータに対して回転させることで、前記ナットに対して前記ボールネジ軸を回転させ、前記ボールネジ軸を前記ロータの回転方向に直交する直動方向に移動させることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記モータは、前記ナットを2つ備え、一方の前記ナットが前記直動方向において前記ロータの一方の端面と対面し、他方の前記ナットが前記直動方向において前記ロータの他方の端面と対面し、2つの前記ナットが前記ロータを挟み込んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記モータは、前記ボールネジ軸が前記ハウジングに対して回動可能かつ直動方向に摺動可能な状態で、前記ボールネジ軸と前記ハウジングとを連結する軸受部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記軸受部材は、アンギュラ玉軸受であることを特徴とする請求項3に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記モータは、前記ナットが前記直動方向において前記ロータの一方の端面と対面し、前記軸受部材が前記直動方向において前記ロータの他方の端面と対面し、前記ナットと前記軸受部材が前記ロータを挟み込んで配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記モータは、前記ボールネジ軸の前記ネジ溝が形成されている領域と前記ロータと固定されている領域の境界を含む部分に固定された保護部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記ロータは、前記ボールネジ軸の外周に固定されたロータコアと、ロータコアの外周部に設けられて、前記ロータコアの周方向に向かって配列される複数のマグネットと、を有し、
前記ステータは、励磁コイルが巻き付けられた分割コアが、前記ロータの外側に所定の間隔を有して環状に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記ロータは、前記ボールネジ軸の外周に固定されたコアと整流子とを含み、
前記モータは、前記整流子の径方向で対向し前記整流子と接触して設けられるブラシを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−5491(P2013−5491A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131352(P2011−131352)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】