リニア・モータの固定子鉄心
【課題】本発明の目的はリニア・モータを改善する手段を提供する。
【解決手段】固定子鉄心および/またはムーバを備えるリニア・モータである。前記リニア・モータの固定子鉄心は、内周と、特に内周を囲む外周と、内周または外周の一方に沿って配置された第1および第2の歯と、固定子鉄心内に配置された空洞であって固定子コイルを受けるスロットとを備える。前記固定子鉄心は第1の固定子部と第2の固定子部とに分割され、前記第1の固定子部はスロットを部分的に定義するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第1の歯を含み、前記第2の固定子部はスロットを部分的に区画するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第2の歯を含む。
【解決手段】固定子鉄心および/またはムーバを備えるリニア・モータである。前記リニア・モータの固定子鉄心は、内周と、特に内周を囲む外周と、内周または外周の一方に沿って配置された第1および第2の歯と、固定子鉄心内に配置された空洞であって固定子コイルを受けるスロットとを備える。前記固定子鉄心は第1の固定子部と第2の固定子部とに分割され、前記第1の固定子部はスロットを部分的に定義するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第1の歯を含み、前記第2の固定子部はスロットを部分的に区画するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第2の歯を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニア・モータに関するものであって、特に、リニア・モータと、リニア・モータの固定子鉄心と、リニア・モータのムーバとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に電気モータおよび機械の、鉄心とも呼ばれる軟磁性構成要素は軟磁性材料(例えば、鉄または電気鋼)の絶縁された薄板で作られる。軟電気材料のかかる絶縁された薄板は積層とも呼ばれる。渦電流の発生を抑え、したがって電気モータおよび機械の効率を高めるために、鉄心は積層で作られる。
【0003】
リング状固定子鉄心と管状ムーバ(固定子の磁界との相互作用で駆動されるリニア・モータの部分)とを有するリニア・モータでは、渦電流の影響を最小にするために各金属薄板は放射および軸平面に配置される。
或るリニア・モータでは金属薄板を平行に積重ねて鉄心部を形成する。1つの金属薄板を放射軸平面に、他の金属板をこれに並列に配置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に述べたようにして作られた固定子鉄心の1つの問題は、コイルを固定子鉄心のスロットの中に巻かなければならないことである。スロットの開口が固定子鉄心の内側円周面に配置されているときは、これは特に困難である。
また、上に述べた方法を用いるリニア・モータは、リニア・モータの全空間容積に対する生成力の比(すなわち、生成力/空間容積)が効率的でない。
【0005】
したがって、より小さな空間容積で特定の力を作るリニア・モータと、コイルを取り付けるのが容易な固定子が必要である。
米国特許第6,060,810号は、千鳥配置の鉄心積層を有するリニア・モータ用の固定子を提示している。この固定子は、円筒形に巻かれた固定子コイルと、1個の水平ユニットと1個の垂直ユニットとを有するL型の積層とを含む。複数の積層の水平ユニットは上面と下面上に放射状に交互に重ねられて円筒形を形成する。
【0006】
かかる固定子を構築するとき、固定子鉄心のスロットに開口を通してコイルを巻く必要がない。しかし、コイルの上に固定子鉄心を構築するのは複雑であろう。
また、米国特許第6,060,810号に係る固定子鉄心は、モータの空間容積に対する生成力の比に関して言えばやはり余り効率的でない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的はリニア・モータを改善する手段を提供することである。
この目的は、請求項1記載の固定子鉄心により、また請求項9記載のムーバにより、また請求項16記載のリニア・モータにより、また請求項18記載の固定子鉄心により達成される。本発明の好ましい実施の形態は従属項に開示されている。
【0008】
詳しく述べると、本発明の1つの態様では、リニア・モータ用の固定子鉄心は、内周と、この内周を実質的に囲む外周と、内周または外周の一方に沿って配置される第1および第2の歯と、固定子鉄心内に配置された空洞であって固定子コイルを受けるスロットとを備え、前記固定子鉄心は第1の固定子部と第2の固定子部とに分割され、前記第1の固定子部はスロットを部分的に定義するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第1の歯を含み、また前記第2の固定子部はスロットを部分的に定義するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第2の歯を含む。
【0009】
固定子鉄心を、それぞれが歯を含む2つの固定子部に分割することにより、固定子鉄心内にコイルを配置するのが容易になる。なぜなら、固定子部が分離されているときにコイルを第1の固定子部内に容易に取り付けた後で、第2の固定子部を第1の固定子部と容易に密着させて固定子または固定子部を完成することができるからである。この実施の形態では予め巻いたコイルを用いることができる。本発明で規定するように固定子鉄心を分割すると、このコイルを固定子鉄心内に容易に配置することができる。したがって、固定子の製作が容易になる。
【0010】
また、軟磁性粉で固定子部を作ることにより、複雑な形に形成する場合でも固定子部を容易に製作することができるし、また固定子部を丈夫にすることができる。また、必要な場合は、軟磁性粉の固定子部を容易に精密加工することができる。したがって、上に述べたように軟磁性粉を用いかつ2つの別々の固定子部に分割することにより、固定子の組立てが容易になる。2つの固定子部のそれぞれが軟磁性粉の均質のボディであれば、固定子の組立ては更に容易になろう。
【0011】
軟磁性粉の固定子部を作ることの別の利点は、固定子を含むモータの全空間容積に対する前記モータの生成力の比が大きくなることである。詳しく述べると、固定子の充填係数が大きくなる。充填係数とは、全空間容積に対する活動的な材料の空間容積の比と定義される。この理由は、固定子鉄心全体を通る磁束の透磁度が比較的高くなるように軟磁性粉を形成することができるからである。密接して配置される部分の隣接端でも磁束の透磁度はこのように比較的高くなる。なぜなら、部品を高精密に形成することができるからである。
【0012】
層化された固定子鉄心の透磁度が高くなるのは各積層内だけである。積層を軸および放射平面に配置して外周と内周とを有するボディを形成すると、軟磁性粉が存在しない大きな空間ができる。前記空間は透磁度の低い物質(例えば、空気または或る充填材料)で充填されることが多い。しかし軟磁性粉の固定子鉄心を作ることにより、磁束は一定の幅を有する「磁束チャンネル」に限定されずに、より自由に流れてよい(積層では、前記幅は各積層の厚さに対応する)。したがって、固定子の全容積の一層多くが磁束を通すのに用いられ、したがって一層高い充填係数が得られる。すなわち、固定子(したがってモータ)を小さくすることができる。
【0013】
固定子の1つの実施の形態では、第1の歯は第2の固定子部に向かって軸方向に或る距離伸び、前記距離は固定子鉄心の内周または外周の一方に沿って変わる。また第2の固定子部は第1の固定子部に向かって軸方向に或る距離伸び、前記距離は固定子鉄心の内周または外周の一方に沿って変わる。
【0014】
各固定子部の歯が前記周に沿う異なる位置で軸方向に伸びる距離に前記変化を導入することにより、回転モータのスキューに似た効果が得られる。したがって、この固定子設計で生じるリニア・モータ内のフォース・リップル(force ripple)は小さくなる。固定子に設けられるモータ用の予定のムーバを固定子の外側(すなわち、固定子の外周)に配置するか固定子の内側(すなわち、固定子の内周)に配置するかに従って、歯を固定子の外周または内周に設けてよい。
【0015】
1つの実施の形態では、第1の歯と第2の歯とは互いに密着して配置される。密着する歯の部分の半径の伸びは非常に小さいので、動作中は歯の間の接触領域は磁気的に飽和する。歯を互いに接触して置くことにより、2つの固定子部の組立体は一層安定し、動作中に接触領域を飽和させることにより接触部を介した磁束漏れは低く抑えられる。
【0016】
別の実施の形態では、前記第1の固定子部と前記第2の固定子部とはそれぞれ少なくとも軟磁性粉の2つの部分を含む。前記部分は前記内周と外周の方向に対応する方向に互いに隣接して配置される。この実施の形態は大型の固定子の製作に便利である。
【0017】
1つの実施の形態では、各固定子部の密度は少なくとも6500kg/m3である。これにより、固定子部は優れた磁気特性を有すると共に、軟磁性粉を用いるので形成するのが容易になる。特に、磁束路は積層鉄心の場合と同様に2次元である必要はない。
更に別の実施の形態では、前記各固定子部内の抵抗率は少なくとも1μΩmである。これにより、渦電流から生じる負の影響が少なくなる。
【0018】
1つの実施の形態では、第1の固定子部と第2の固定子部とはそれぞれ外周で互いに密着しまた内周で互いに分離して配置され、内周で分離した結果、第1の歯と第2の歯との間にスリットに移行するスロット開口が形成される。このような実施の形態ではコイルの配置が容易になる。
【0019】
別の実施の形態では、第1の固定子部と第2の固定子部とはそれぞれ内周で互いに密着しまた外周で互いに分離するよう配置され、外周で分離した結果、第1の歯と第2の歯との間にスリットに移行するスロット開口が形成される。
【0020】
本発明の別の実施の形態では、リニア・モータ用のムーバは軟磁性材料の少なくとも1つの部分と少なくとも1個の永久磁石とを備え、前記軟磁性材料の少なくとも1つの部分と少なくとも1個の永久磁石とはムーバの軸方向に並び、前記少なくとも1個の永久磁石の分極ベクトルは軸方向に向く。
本発明の文脈では、どちらが他方に対して動くかに従って、軸方向はムーバまたは固定子が動く方向である。
【0021】
軸方向に向く分極ベクトルを有する前記少なくとも1個の永久磁石を軟磁性材料の少なくとも1つの部分と軸方向に整列されて配置することにより、丈夫なムーバを得ることができる。また、かかるムーバで用いてよい永久磁石の製作が容易になる。なぜなら、永久磁石の軸の長さと永久磁石の幅との比を、ムーバに通常用いられる永久磁石に比べて小さくすることができる。
【0022】
1つの実施の形態では、ボディの軟磁性部分は軟磁性粉で作られる。この方法により、軟磁性部分の製作が容易になり、またムーバの充填係数が大きくなる。
別の実施の形態では、ムーバは前記軸方向に整列された少なくとも2個の永久磁石(第1の永久磁石と第2の永久磁石)を備え、前記少なくとも2個の永久磁石の軸方向の中心の間の距離は予定の固定子のピッチの0.75−1.5倍である。ムーバをこのように設計すると一層効率的になる。
別の実施の形態では、ムーバは管状である。
【0023】
更に別の実施の形態では、軟磁性材料の少なくとも1つの部分は端面を有する少なくとも第1の軸端を備え、前記少なくとも1個の永久磁石は第1の軸端の端面全体と実質的に接触して配置される。この実施の形態では、前記軟磁性材料の少なくとも1つの部分と前記少なくとも1個の永久磁石との間の接触面が大きいので、ムーバは一層効率的になる。
【0024】
1つの実施の形態では、前記少なくとも1個の永久磁石の円周方向と軸方向とに伸びる面は、予定の固定子に面するように配置されたムーバの円周方向と軸方向とに伸びる面と実質的に同じ高さに配置される。
本発明の別の態様では、リニア・モータは上に述べた固定子鉄心の実施の形態の任意の1つに係る固定子鉄心を備える。したがって、かかるリニア・モータは固定子鉄心の特定の実施の形態と同じ利点を有する。
【0025】
リニア・モータの別の実施の形態では、リニア・モータは上に述べたムーバの実施の形態の任意の1つに係るムーバを備える。したがって、かかるリニア・モータはムーバの特定の実施の形態と同じ利点を有する。
本発明の更に別の態様では、リニア・モータ用の固定子鉄心は、前記リングが少なくとも2つのリング形の固定子部(第1の固定子部と第2の固定子部)に分割され、また前記固定子部が軟磁性粉で作られた均質なボディである、固定子鉄心を含む。
【0026】
本発明の文脈では、リング形の固定子鉄心と固定子部とは円形である必要はなく、任意の形でよい。例えば、リング形の固定子鉄心と固定子部とは3角形、正方形、長方形、楕円形、数字の8に似た形などでよい。
本発明のこの態様の利点は、リング形の固定子鉄心を2個のリング形の固定子部に分割した結果、固定子鉄心をその一部として含む固定子の製作が容易になるような設計ができることである。また、固定子鉄心は容易に製作することができるし、また高い充填係数が得られる。
【0027】
この固定子鉄心の1つの実施の形態では、固定子鉄心は、固定子鉄心内に配置された空洞であって固定子コイルを受けるスロットを更に含む。前記スロットは第1の固定子部により部分的に区画され、また第2の固定子部により部分的に区画される。
固定子鉄心の更に別の実施の形態では、第1の固定子部は第1の歯を含み、また第2の固定子部は第2の歯を含み、前記第1および第2の歯はリング形の固定子鉄心の内周または外周の一方に沿って配置される。
また、この固定子鉄心は前に述べた固定子鉄心の特徴を含んでよい。
本発明の適用可能な別の範囲は以下に述べる詳細な説明から明らかになる。しかし理解すべきであるが、詳細な説明と特定の例は本発明の好ましい実施の形態を示すものではあるが、単なる例として示すものである。なぜなら、本発明の精神と範囲内での種々の変更と修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の特徴と利点は、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施の形態の詳細な説明を読めば明らかになる。
【図1a】本発明の1つの実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心との斜視図である。
【図1b】図1aのリニア・モータの軸方向の図である。
【図1c】図1aのリニア・モータの図1bにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図2a】本発明の別の実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心との軸方向の図である。
【図2b】図2aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図3a】本発明の更に別の実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心とムーバとの軸方向の図である。
【図3b】図3aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図4a】本発明の更に別の実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心とムーバとの軸方向の図である。
【図4b】図4aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図5】本発明の1つの実施の形態に係る、2つの固定子部を含む固定子鉄心の斜視図である。
【図6】図5の固定子鉄心に対応する固定子鉄心の断面図である。
【図7a】固定子鉄心を2つの別々の固定子部に分割した別の例を示す、本発明の実施の形態にかかる固定子鉄心の断面図である。
【図7b】固定子鉄心を2つの別々の固定子部に分割した別の例を示す、本発明の実施の形態にかかる固定子鉄心の断面図である。
【図7c】固定子鉄心を2つの別々の固定子部に分割した別の例を示す、本発明の実施の形態にかかる固定子鉄心の断面図である。
【図8】本発明の1つの実施の形態に係る、複数の部分に分割された固定子部の斜視図である。
【図9】本発明の1つの実施の形態に係る、複数の部分に分割された固定子部の斜視図である。
【図10】スキューに似た効果を導入する設計の一例を示す、本発明の1つの実施の形態に係る固定子鉄心の断面図である。
【図11】歯が互いに接触するように設計された一例を示す、本発明の1つの実施の形態に係る固定子鉄心の断面図である。
【図12】本発明の1つの実施の形態に係る、2個の固定子コイル用の固定子鉄心の断面図である。
【図13a】本発明の1つの実施の形態に係るムーバの斜視図である。
【図13b】図13aのリニア・モータの軸方向の図である。
【図13c】図13aのムーバの図13bにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図14】本発明の1つの実施の形態に係る固定子鉄心の斜視図である。
【図15a】本発明の別の実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心との軸方向の図である。
【図15b】図15aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1a−1cは1つの実施の形態に係るリニア・モータの略図を示す。リニア・モータ10は固定子12とムーバ14とを含む。通常、固定子は静止してムーバを軸方向に駆動するが、ムーバが静止して固定子が自分を軸方向に駆動させることもできる。したがって、本発明の文脈では、どちらが他方に関して動くかに従って、軸方向はムーバまたは固定子が動く方向である。
【0030】
固定子は少なくとも1個のコイル18a−18cと少なくとも1個の固定子鉄心20a−20cとを含む。固定子コイルは単巻(すなわち、1本のワイヤをコイルに巻いて電源ユニット(図示しない)に接続したもの)か、または分布巻(すなわち、各固定子コイルは電源ユニットの異なる出力に接続するワイヤを含んで異なる電気特性を有する電気を運んでよい)でよい。用いてよい多くの異なるタイプの電源ユニットは電気モータの当業者に周知である。また、かかる電源ユニットに単巻または分布巻を接続する方法は当業者に周知である。
【0031】
固定子コイルの目的はムーバと相互作用する磁束を生成することである。固定子鉄心20a−20cは固定子コイル18a−18cに近接して配置され、図1a−1cの実施の形態に示すように、固定子コイル18a−18cは固定子鉄心20a−20cに実質的に囲まれてもよい。
【0032】
図1a−1cの実施の形態では、各固定子鉄心20a−20cは2つの固定子部21a−21cと22a−22cとに分割される。図1a−1c,図2a−2b、図3a−3bの各固定子鉄心20a−20cは、互いの上に軸方向に重ねられた1個の第1の固定子部21a−21cと1個の第2の固定子部22a−22cとで作られる。図1-3に示すような複数の固定子鉄心20a−20cを有するリニア・モータでは、別の固定子鉄心の固定子部に密着して配置された1つの固定子の固定子部を1つの単一部分として作ってよい。すなわち、固定子部22aおよび21bを1つの単一部分として作り、固定子部22bおよび21cを1つの単一部分として作ってよい。これについては後で説明する。
【0033】
固定子20a−20cを2つの固定子部21a−21cと22a−22cとに分割する異なる方法と固定子20a−20cの異なる設計とについては後で説明する。
【0034】
渦電流の発生を減らすために固定子部21a−21cおよび22a−22cは電気抵抗を備えた軟磁性材料で作られている。電気抵抗を持つためには、用いる材料は電気抵抗を与える電気絶縁された軟磁性粉、または電気抵抗を与える成形可能な軟磁性材料でよい。電気抵抗を与える電気絶縁された軟磁性粉、または電気抵抗を与える成形可能な軟磁性材料を用いるとき、1つの実施の形態では、渦電流の発生を十分に減らすには製作された固定子部は少なくとも1μΩmの抵抗率を示さなければならない。
【0035】
また、積層板で作られた固定子では高い充填係数を得るのは困難であろうが、軟磁性粉を用いるとこれが達成される。1つの実施の形態では、各固定子部は軟磁性粉の1つの均質の片として作られる。かかる固定子部内では、磁束は積層の2次元の形に制限されず、固定子部の3次元の形を用いて次元を減らし、固定子鉄心を飽和させない。1つの実施の形態では、得られる固定子部が少なくとも1μΩmの抵抗率を示す限り、用いる軟磁性材料に従って、軟磁性粉を望ましい形に成形しまたは焼結してよい。また別の実施の形態では、固定子部の密度は少なくとも6500kg/m3でよい。成形して固定子部を作るのに用いてよい軟磁性粉のいくつかの例を示すと、スウェーデン国、S−263 83
AB製のソマロイ(Somaloy)500、ソマロイ550、パーマイト(Permite)75がある。
【0036】
通常、ムーバ14はリニア・モータの固定子に対して動く部分なので、リニア・モータ10の外部に明確な影響を与えてよい。ムーバ14は固定子12が生成する磁界と相互作用して、固定子12により駆動される。ムーバ14は軟磁性粉の管26を含んでよい。軟磁性材料は上の固定子鉄心20a−20cに関して述べた任意の質および/またはタイプでよい。
【0037】
また、複数の磁性管28a−28dを管26の上に取り付ける。各磁性管は半径方向に向かう分極ベクトルを有する永久磁石である。すなわち、永久磁石の1つの極は半径方向に外向きに面し、永久磁石の1つの極は半径方向に内向きに面する。例えば、図1a−1cの磁性管28a−28cは次のように配置される。すなわち、磁性管28aの北極は外向きに面しその南極は内向きに面し、磁性管28bの南極は外向きに面しその北極は内向きに面し、磁性管28cの北極は外向きに面しその南極は内向きに面し、磁性管28dの南極は外向きに面しその北極は内向きに面する。磁性管28a−28dは当業者に周知の任意の方法で管26に固定してよい。
【0038】
ムーバの軸の長さは図1に示す長さと異なってよく、磁性管の数も異なってよい。磁性管28a−28dの軸の長さと磁性管28a−28dの数は変わってよく、リニア・モータ10を用いるアプリケーションに従ってよい。1つの実施の形態では、各磁性管28a−28dの軸の長さLmは固定子の2個の連続した歯の中心の間のピッチLpの0.75−1.5倍でよい。すなわち、関係Lm/Lpは0.75−1.5でよい。このアプリケーションの文脈では、ピッチは2個の隣接する歯の中心線の間の軸の距離と見てよい。
【0039】
図2a−2bはリニア・モータの別の実施の形態を示す。この実施の形態は図1a−1cの実施の形態に似ており、違いについて以下に示す。
リニア・モータの固定子12は追加の部分である内部固定子部30を含む。内部固定子部30は固定子部21a−21cおよび22a−22cの内側に位置し、内部固定子部30の外周と固定子部21a−21cおよび22a−22cの内周との間に空間を残す。内部固定子部の機能は磁気回路(固定子部21a−21cおよび22a−22cもその一部である)内の一部として作用することである。内部固定子部30は同じ軟磁性材料で、上に述べた固定子の残りと同じ方法を用いて作ってよい。内部固定子部は、固定子部21a−21cおよび22a−22cに対してその位置を保つよう配置される。
【0040】
また、ムーバは図1a−1cのムーバとは異なる設計である。図2a−2bの実施の形態のムーバは磁性管28a−28dだけで作られる。図1a−1cの実施の形態の場合と同様にこれらの磁性管も永久磁石であり、その分極ベクトルの方向は、図1a−1cに関して示した永久磁石の分極ベクトルの方向に対応する方向に配置してよい。この方法では、ムーバは図1a−1cのムーバより軽く作ってよい。しかしそのために、ムーバは特に2つの磁性管28a−28dの間の接続部で壊れやすい。関係Lm/Lpは図1a−1cに示す実施の形態の場合と同じでよい。
【0041】
図3a−3bはリニア・モータの更に別の実施の形態を示す。この実施の形態も図1a−1cの実施の形態に似ており、違いについて以下に説明する。
固定子12は図1a−1cのものと同じでよい。しかし、ムーバ14は軟磁性管32a−32dで、軟磁性管32a−32dの一部分は永久磁石リング34a−34cで置換されている。永久磁石リングは軟磁性管内で、永久磁石の分極ベクトルが軸に向かうように配置される。このタイプのムーバについての一層詳細な説明は後で述べる。
【0042】
図1a−1c、図2a−2b、図3a−3bの実施の形態では、3個の固定子鉄心と3個のコイルとを有する固定子を説明した。しかし、固定子鉄心とコイルとの数は3個より多くても少なくてもよい。例えば、図1a−1cの固定子は追加の固定子鉄心とこれに対応する固定子コイルとを用いて伸ばしてよい。また、図1a−1c、図2a−2b、図3a−3bのリニア・モータから固定子鉄心20a−20cとこれに対応する固定子コイルとを除くことにより固定子コイルの数を減らしてよい。
【0043】
図4a−4bは1個の固定子コイル18と1個の固定子鉄心20とを有するリニア・モータを示す。この図のムーバは、図3a−3bに示すリニア・モータのムーバに対応するムーバであり、これについては後で詳細に説明する。しかし、ムーバは任意のタイプ、例えば、図1a−1bおよび図2a−2bに示すムーバの1つでよい。
【0044】
図5および図6は1つの実施の形態に係る固定子鉄心20を示す。上に述べたように、固定子鉄心20は2つの別個の固定子部(第1の固定子部21と第2の固定子部22)に分割される。固定子鉄心20は内周50と、外周52と、分割面54とを有する。内周は固定子鉄心20の内部境界を区画する線と理解すべきであり、外周は固定子鉄心20の外部境界を区画する線と理解すべきである。この固定子鉄心は円リングの形を有すると述べてもよい。この図で外周52は内周50を囲むが、固定子鉄心20は固定子鉄心20を通して半径方向に伸びる隙間を含んでよく、内周を囲む(少なくとも実質的に内周を囲む)外周を有すると考えてよい。分割面54は固定子鉄心を2つの固定子部21と22とに分割したためにできる面である。
【0045】
また、固定子鉄心20は少なくとも2個の歯(第1の歯56と第2の歯58)と背面鉄心60とを含む。歯56および58は内周50に沿って配置され、磁束をムーバの近傍の方にまたその逆の方に導く。背面鉄心60は外周52に沿って配置され、第1の歯56と第2の歯58との間に高透磁度の磁束路を形成する。図5および図6に示す実施の形態では、各固定子部21および22はそれぞれ1個の歯56,58と背面鉄心60の一部分とを含む。
【0046】
固定子コイルを受けるための空隙の形のスロット62が固定子鉄心20内に配置される。したがって、スロットは外周52と内周50との間に配置され、第1の固定子部21により部分的に区画され、また第2の固定子部22により部分的に区画される。したがって、スロット62も円リングの形を有する。
【0047】
固定子鉄心20の歯56および58は互いに向かって軸方向に伸びて、その間にスロット開口64を残す。スロット開口64は固定子鉄心20内のスロット62に移行する。
固定子部21および22は、したがって固定子鉄心20は、図1a−1cに関して上に述べた特性を有する軟磁性材料で作ってよい。
【0048】
固定子鉄心20の分割面54は、軸に面する固定子鉄心の第1の面66と軸の逆方向に面する固定子鉄心の第2の面68とから等しい軸距離に配置してよい。歯56および58が内周に沿って軸方向に同じ軸距離だけ伸び、また分割面54が前に述べたように配置されると、2つの固定子部は全く同じであって一組の製作ツールを用いて作ることができる。したがって、異なる固定子部21および22を作るために2つの異なる組のツールを必要とする固定子に比べて、固定子を製作する初期コストが小さくてよい。
【0049】
しかし、分割面54は図5および図6とは異なる位置に置いてもよい。固定子鉄心20を第1の固定子部21と第2の固定子部22とに分割する別の方法を図7a−7cに示す。これらの図は固定子鉄心を分割する可能な変形の全ての図を示すものではない。固定子鉄心20を少なくとも2つの固定子部21および22に分割する理由は、固定子20のスロット62にコイルを取り付けやすくするためである。上に説明したように、固定子20を分割することにより、予め巻かれたコイルを用いることができる。コイルをそのスロット内に配置した固定子鉄心の製作は容易であって、予め巻かれたコイルを固定子部21または22の一方に入れて、他方の固定子部21または22を最初の固定子部21または22に密着させれば固定子は完成する。
【0050】
図8−9は、固定子部21,22を複数の部分74a−74b、75a−75b,76a−76d,77a−77dに分割し、内周および外周の方向に対応する方向に隣接して配置した実施の形態を示す。このように固定子部を分割すると、少なくとも大型の固定子を製作するときに有利であろう。
【0051】
図10は固定子鉄心20の別の実施の形態を示す。この実施の形態は、前に説明した固定子鉄心の実施の形態の任意の1つに基づいてよい。この実施の形態では、各固定子歯56および58の内周面50に沿った軸の長さは変わってよい。この図で、内周70の円周長さに沿った歯56,58の軸の長さを調べると、歯56,58のこの軸の長さは長さLmaxから長さLminに、そしてLmaxに戻るように変わってよい。この変動は連続的でよい。スロット開口64は内周70に沿った位置に無関係に同じ軸距離伸びてよく、これは、1つの固定子部の歯の軸方向の伸びがLmaxで、他方の歯の軸方向の伸びが周の同じ位置でLminになるように固定子部を配置することにより達成される。
【0052】
このように歯の軸の長さを可変にすることは回転モータ内にスキューを導入することに似ている。回転モータに用いられるスキューとは、スロットが軸方向から或る電気角だけ逸れる角「ねじれ」を言う。多くの場合、スキューは回転子の1つの特徴である。M.G.Sayの「交流機械(Alternating Current Machines)」、第5版、Longman Scientific & Technical、1983(ISBN 0−582−98875−6)、106ページを参照していただきたい。したがって、歯56および58の前記可変の軸の長さを導入することにより、リニア・モータのフォース・リップルは減少する。
【0053】
図11は固定子鉄心20の別の実施の形態を示す。この実施の形態は前に説明した固定子鉄心の実施の形態の任意の1つに基づいてよい。この実施の形態では、歯56および58の軸の長さが延びて、歯56と58とは互いに接触する。伸びた部分は歯56または58の残りの部分より半径方向に狭く、このために突出部72が形成される。突出部72は、突出部72の磁束が飽和して、突出部72を通って流れる漏れ磁束が小さくなる程度に半径方向に狭くすべきである。また、突出部72は、2つの固定子部21および22を互いに密着して配置したときに突出部が補足的な支持物として働く程度に半径方向に広くしてよい。
【0054】
単一固定子コイルを有するリニア・モータ(例えば、図4a−4bに示すもの)を作るには、上に説明した固定子鉄心の任意の1つを用いてよい。複数の固定子コイルを有するリニア・モータ(例えば、図1a−1c、図2a−2b、図3a−3bに示すもの)を作るには、上に述べた複数の固定子鉄心を互いに隣接して配置してよい。かかる固定子(すなわち、前記固定子鉄心が互いに隣接して配置されている固定子)では、2個の隣接する固定子鉄心の隣接する歯は、磁束の観点からは1本の歯に見える。したがって、かかる固定子のピッチを決定するときはこの「磁気」歯の中心を用いなければならない。かかる設計では、2個の異なる固定子鉄心からの軟磁性材料を含む磁気歯を全歯と呼び、1個の固定子鉄心からの軟磁性材料だけを含む固定子の各端の各磁気歯を半歯と呼んでよい。また、複数のコイルを有するリニア・モータの固定子12は図12に示すように設計してもよい。
【0055】
図12は、2個の固定子コイル(図示しない)用の固定子12の或る実施の形態の略図である。上に説明した固定子鉄心(固定子鉄心は分割されて互いに隣接して配置されている)を含む固定子との違いは、この実施の形態は中間部80を含むことである。中間部80は1つの片で作られ、図6に説明した単一固定子鉄心の第2の歯58に対応する歯82と、第1の単一固定子鉄心と密着して配置された別の単一固定子鉄心の第1の歯56に対応する歯84とを含む。したがって、前記中間部80は第1の固定子スロット86を部分的に区画し、また第2の固定子スロット88を部分的に区画する。2個より多い固定子コイルを含む固定子12を作るのにこの中間部80を用いてよい。
【0056】
図13a−13cは、図3a−3bのリニア・モータで示したムーバの1つの実施の形態に対応するムーバ14を示す。このムーバは軟磁性材料(すなわち、図1a−1cに関して説明した材料の1つ)の軟磁性部分32a−32cと、永久磁石部分34a−34cとを含んでよい。永久磁石部分34a−34cはムーバ14の内面102から外面104に実質的に伸びて、ムーバ14の円周に沿って連続的でよい。磁束を軟磁性部分32a−32cに送るため、永久磁石部分34a−34cは軟磁性部分32a−32cに密着して配置してよい。永久磁石部分34a−34cは固定子に面するムーバの表面を超えて伸びてはならない。また、固定子に面する前記表面と同じ高さに配置する必要はなく、前記表面に到達する直前で終わってよい。軸方向では、永久磁石は軟磁性部分32a−32cより短くてよい。
【0057】
永久磁石34a−34cはそのN極とS極とが軸方向に面するように配置してよい。また、永久磁石部分34a−34cは永久磁石部分(例えば、永久磁石部分34b)のN極が隣接する永久磁石部分(例えば、永久磁石部分34c)のN極に面するように配置される。したがって、永久磁石部分のS極は隣接する永久磁石部分のS極に面する(例えば、永久磁石部分34aと34b)。これにより、軟磁性部分32a−32cは半径方向に向く分極ベクトルを持つ磁石として働いてよい。
【0058】
また、永久磁石は軸方向に短く作ってよい。すなわち、ムーバの内面から外面までの磁石の軸の長さと半径方向の長さとの比La/Lrは、図1a−1cおよび図2a−2bのリニア・モータのムーバ内の永久磁石の対応する比より小さくてよい。したがって永久磁石の製作が容易になる。なぜなら、La/Lrの値が小さな永久磁石の方が作りやすいからである。このように設計すると、ムーバは一層丈夫にもなる。
【0059】
しかし、ムーバは磁石を収めるように配置された溝を持つ管でもよい。かかる実施の形態では、溝は固定子に面するように配置してよく、したがって溝内に収められて固定子に面しない磁石の部分は管の材料に面する。かかるムーバの他の特徴は、ムーバの他の実施の形態の特徴に少なくとも対応してよい。
【0060】
1つの実施の形態では、リニア・モータ用のムーバは軟磁性材料の少なくとも1つの部分と少なくとも1個の永久磁石とで構成してよく、軟磁性材料の前記少なくとも1つの部分と前記少なくとも1個の永久磁石とはムーバの軸方向に整列され、また前記少なくとも1個の永久磁石の分極ベクトルは軸方向に向く。
また、軟磁性材料で作られた上のムーバの前記部分は軟磁性粉で作ってよい。
【0061】
別の実施の形態では、ムーバは前記軸方向に整列された少なくとも2個の永久磁石(第1の永久磁石と第2の永久磁石)で構成してよく、また前記少なくとも2個の永久磁石の軸の中心の間の距離は予定の固定子のピッチの0.75−1.5倍である。
【0062】
前の実施の形態に加えて、第1の永久磁石に対して他の永久磁石が第2の永久磁石より近くに配置されないように永久磁石を配置してよい。
更に別の実施の形態では、ムーバは管状でよい。
更に別の実施の形態では、軟磁性材料の前記少なくとも1つの部分は端面を有する少なくとも第1の軸端を持ち、また前記少なくとも1個の永久磁石は前記第1の軸端の全端面に実質的に接触して配置される。
【0063】
別の実施の形態では、前記少なくとも1個の永久磁石の円周方向および軸方向に伸びる面は、予定の固定子に面するように配置されたムーバの円周方向および軸方向に伸びる面と実質的に同じ高さに配置される。
1つの実施の形態では、この文書の任意の実施の形態に説明したリニア・モータは、上に説明したムーバの実施の形態の任意の1つに従うムーバで構成してよい。
【0064】
固定子12とムーバ14の半径方向部分の形は円である必要はない。或る実施の形態では、半径方向部分の別の形の方が一層適している。図14は、2つの固定子部21および22を含む3角形固定子鉄心20を示す。固定子鉄心は3角形を有するリングと記述してもよい。この固定子鉄心20は上に述べた固定子の任意の1つと同じ方法で作り、および/または配置してよい。固定子鉄心内に配置される固定子コイルは半径方向部分の形とは独立に予め巻いてよい。
【0065】
性能を最高にするためには、前記3角形固定子鉄心を備えるリニア・モータ内のムーバもこの3角形に形成してよい。固定子および/またはムーバの半径方向部分の形はほとんど任意の形をとってよい。例えば、楕円、長方形、星型、2つの円を接合した形(すなわち、数字の8の形)など、可能性は無限である。上に述べたように、固定子とムーバとは少なくとも優れた磁束透磁度と電流の抵抗の特性を有する軟磁性粉でまたは成形可能な材料で作ってよいので、奇妙な、通常は困難な形の固定子とムーバの製作は容易である。
【0066】
図15a−15bはリニア・モータの別の実施の形態を示す。リニア・モータのこの実施の形態は、図1a−1c、図2a−2b、図3a−3bに関して説明したリニア・モータによく似た固定子112とムーバ114とを備える。しかしこの実施の形態では、固定子112はムーバ114の中に置かれる。すなわち、ムーバ114は固定子112を実質的に囲む。固定子112は複数の固定子コイルを含んでよい。この図の実施の形態は3個の固定子コイル118a−118cを含むが、このタイプのリニア・モータは1個の固定子コイルだけで配置してもよい。
【0067】
固定子112の固定子鉄心120a−120cも、上に説明した外側固定子鉄心と同じ方法で第1の固定子部121a−121cと第2の固定子部122a−122cとに分割してよい。図1−3のリニア・モータとこの実施の形態のリニア・モータの固定子の間の1つの大きな違いは、固定子鉄心120a−120cの歯156a−56cおよび158a−158cが、ムーバ114と磁気的に相互作用するように固定子112の外周150に沿って配置されていることである。
【0068】
また、固定子鉄心120a−120cは上に説明した外側固定子鉄心と同じように設計してよいが、内側ムーバではなく外側ムーバと磁気的に相互作用するのに必要な異なる構造を有する。したがって、図10の実施の形態と同様に種々の軸方向の歯の長さで、また図11の実施の形態の突出と同様に歯を突出させて設計してよい。したがって、外側固定子鉄心の前に説明した特徴はこれらの内側固定子鉄心120a−120cに適用される。
【0069】
ここに示した実施の形態では、固定子112は固定子鉄心120a−120cの中心の軸方向の孔を定義する内周152を含む。別の実施の形態ではこの孔はなくてよい。すなわち、各固定子鉄心120a−120cの中心は固定子鉄心の残りの部分と同じ軟磁性材料の固体でよい。
【0070】
ムーバ114は図1a−1cのムーバと同じ方法で形成するが、異なる点は、永久磁石128a−128dを軟磁性管126の内側に配置することである。ムーバ114は図13a−13bで説明したタイプでもよく、設計を全く変えずにかかるムーバを用いてよい。
【技術分野】
【0001】
本発明はリニア・モータに関するものであって、特に、リニア・モータと、リニア・モータの固定子鉄心と、リニア・モータのムーバとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に電気モータおよび機械の、鉄心とも呼ばれる軟磁性構成要素は軟磁性材料(例えば、鉄または電気鋼)の絶縁された薄板で作られる。軟電気材料のかかる絶縁された薄板は積層とも呼ばれる。渦電流の発生を抑え、したがって電気モータおよび機械の効率を高めるために、鉄心は積層で作られる。
【0003】
リング状固定子鉄心と管状ムーバ(固定子の磁界との相互作用で駆動されるリニア・モータの部分)とを有するリニア・モータでは、渦電流の影響を最小にするために各金属薄板は放射および軸平面に配置される。
或るリニア・モータでは金属薄板を平行に積重ねて鉄心部を形成する。1つの金属薄板を放射軸平面に、他の金属板をこれに並列に配置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に述べたようにして作られた固定子鉄心の1つの問題は、コイルを固定子鉄心のスロットの中に巻かなければならないことである。スロットの開口が固定子鉄心の内側円周面に配置されているときは、これは特に困難である。
また、上に述べた方法を用いるリニア・モータは、リニア・モータの全空間容積に対する生成力の比(すなわち、生成力/空間容積)が効率的でない。
【0005】
したがって、より小さな空間容積で特定の力を作るリニア・モータと、コイルを取り付けるのが容易な固定子が必要である。
米国特許第6,060,810号は、千鳥配置の鉄心積層を有するリニア・モータ用の固定子を提示している。この固定子は、円筒形に巻かれた固定子コイルと、1個の水平ユニットと1個の垂直ユニットとを有するL型の積層とを含む。複数の積層の水平ユニットは上面と下面上に放射状に交互に重ねられて円筒形を形成する。
【0006】
かかる固定子を構築するとき、固定子鉄心のスロットに開口を通してコイルを巻く必要がない。しかし、コイルの上に固定子鉄心を構築するのは複雑であろう。
また、米国特許第6,060,810号に係る固定子鉄心は、モータの空間容積に対する生成力の比に関して言えばやはり余り効率的でない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的はリニア・モータを改善する手段を提供することである。
この目的は、請求項1記載の固定子鉄心により、また請求項9記載のムーバにより、また請求項16記載のリニア・モータにより、また請求項18記載の固定子鉄心により達成される。本発明の好ましい実施の形態は従属項に開示されている。
【0008】
詳しく述べると、本発明の1つの態様では、リニア・モータ用の固定子鉄心は、内周と、この内周を実質的に囲む外周と、内周または外周の一方に沿って配置される第1および第2の歯と、固定子鉄心内に配置された空洞であって固定子コイルを受けるスロットとを備え、前記固定子鉄心は第1の固定子部と第2の固定子部とに分割され、前記第1の固定子部はスロットを部分的に定義するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第1の歯を含み、また前記第2の固定子部はスロットを部分的に定義するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第2の歯を含む。
【0009】
固定子鉄心を、それぞれが歯を含む2つの固定子部に分割することにより、固定子鉄心内にコイルを配置するのが容易になる。なぜなら、固定子部が分離されているときにコイルを第1の固定子部内に容易に取り付けた後で、第2の固定子部を第1の固定子部と容易に密着させて固定子または固定子部を完成することができるからである。この実施の形態では予め巻いたコイルを用いることができる。本発明で規定するように固定子鉄心を分割すると、このコイルを固定子鉄心内に容易に配置することができる。したがって、固定子の製作が容易になる。
【0010】
また、軟磁性粉で固定子部を作ることにより、複雑な形に形成する場合でも固定子部を容易に製作することができるし、また固定子部を丈夫にすることができる。また、必要な場合は、軟磁性粉の固定子部を容易に精密加工することができる。したがって、上に述べたように軟磁性粉を用いかつ2つの別々の固定子部に分割することにより、固定子の組立てが容易になる。2つの固定子部のそれぞれが軟磁性粉の均質のボディであれば、固定子の組立ては更に容易になろう。
【0011】
軟磁性粉の固定子部を作ることの別の利点は、固定子を含むモータの全空間容積に対する前記モータの生成力の比が大きくなることである。詳しく述べると、固定子の充填係数が大きくなる。充填係数とは、全空間容積に対する活動的な材料の空間容積の比と定義される。この理由は、固定子鉄心全体を通る磁束の透磁度が比較的高くなるように軟磁性粉を形成することができるからである。密接して配置される部分の隣接端でも磁束の透磁度はこのように比較的高くなる。なぜなら、部品を高精密に形成することができるからである。
【0012】
層化された固定子鉄心の透磁度が高くなるのは各積層内だけである。積層を軸および放射平面に配置して外周と内周とを有するボディを形成すると、軟磁性粉が存在しない大きな空間ができる。前記空間は透磁度の低い物質(例えば、空気または或る充填材料)で充填されることが多い。しかし軟磁性粉の固定子鉄心を作ることにより、磁束は一定の幅を有する「磁束チャンネル」に限定されずに、より自由に流れてよい(積層では、前記幅は各積層の厚さに対応する)。したがって、固定子の全容積の一層多くが磁束を通すのに用いられ、したがって一層高い充填係数が得られる。すなわち、固定子(したがってモータ)を小さくすることができる。
【0013】
固定子の1つの実施の形態では、第1の歯は第2の固定子部に向かって軸方向に或る距離伸び、前記距離は固定子鉄心の内周または外周の一方に沿って変わる。また第2の固定子部は第1の固定子部に向かって軸方向に或る距離伸び、前記距離は固定子鉄心の内周または外周の一方に沿って変わる。
【0014】
各固定子部の歯が前記周に沿う異なる位置で軸方向に伸びる距離に前記変化を導入することにより、回転モータのスキューに似た効果が得られる。したがって、この固定子設計で生じるリニア・モータ内のフォース・リップル(force ripple)は小さくなる。固定子に設けられるモータ用の予定のムーバを固定子の外側(すなわち、固定子の外周)に配置するか固定子の内側(すなわち、固定子の内周)に配置するかに従って、歯を固定子の外周または内周に設けてよい。
【0015】
1つの実施の形態では、第1の歯と第2の歯とは互いに密着して配置される。密着する歯の部分の半径の伸びは非常に小さいので、動作中は歯の間の接触領域は磁気的に飽和する。歯を互いに接触して置くことにより、2つの固定子部の組立体は一層安定し、動作中に接触領域を飽和させることにより接触部を介した磁束漏れは低く抑えられる。
【0016】
別の実施の形態では、前記第1の固定子部と前記第2の固定子部とはそれぞれ少なくとも軟磁性粉の2つの部分を含む。前記部分は前記内周と外周の方向に対応する方向に互いに隣接して配置される。この実施の形態は大型の固定子の製作に便利である。
【0017】
1つの実施の形態では、各固定子部の密度は少なくとも6500kg/m3である。これにより、固定子部は優れた磁気特性を有すると共に、軟磁性粉を用いるので形成するのが容易になる。特に、磁束路は積層鉄心の場合と同様に2次元である必要はない。
更に別の実施の形態では、前記各固定子部内の抵抗率は少なくとも1μΩmである。これにより、渦電流から生じる負の影響が少なくなる。
【0018】
1つの実施の形態では、第1の固定子部と第2の固定子部とはそれぞれ外周で互いに密着しまた内周で互いに分離して配置され、内周で分離した結果、第1の歯と第2の歯との間にスリットに移行するスロット開口が形成される。このような実施の形態ではコイルの配置が容易になる。
【0019】
別の実施の形態では、第1の固定子部と第2の固定子部とはそれぞれ内周で互いに密着しまた外周で互いに分離するよう配置され、外周で分離した結果、第1の歯と第2の歯との間にスリットに移行するスロット開口が形成される。
【0020】
本発明の別の実施の形態では、リニア・モータ用のムーバは軟磁性材料の少なくとも1つの部分と少なくとも1個の永久磁石とを備え、前記軟磁性材料の少なくとも1つの部分と少なくとも1個の永久磁石とはムーバの軸方向に並び、前記少なくとも1個の永久磁石の分極ベクトルは軸方向に向く。
本発明の文脈では、どちらが他方に対して動くかに従って、軸方向はムーバまたは固定子が動く方向である。
【0021】
軸方向に向く分極ベクトルを有する前記少なくとも1個の永久磁石を軟磁性材料の少なくとも1つの部分と軸方向に整列されて配置することにより、丈夫なムーバを得ることができる。また、かかるムーバで用いてよい永久磁石の製作が容易になる。なぜなら、永久磁石の軸の長さと永久磁石の幅との比を、ムーバに通常用いられる永久磁石に比べて小さくすることができる。
【0022】
1つの実施の形態では、ボディの軟磁性部分は軟磁性粉で作られる。この方法により、軟磁性部分の製作が容易になり、またムーバの充填係数が大きくなる。
別の実施の形態では、ムーバは前記軸方向に整列された少なくとも2個の永久磁石(第1の永久磁石と第2の永久磁石)を備え、前記少なくとも2個の永久磁石の軸方向の中心の間の距離は予定の固定子のピッチの0.75−1.5倍である。ムーバをこのように設計すると一層効率的になる。
別の実施の形態では、ムーバは管状である。
【0023】
更に別の実施の形態では、軟磁性材料の少なくとも1つの部分は端面を有する少なくとも第1の軸端を備え、前記少なくとも1個の永久磁石は第1の軸端の端面全体と実質的に接触して配置される。この実施の形態では、前記軟磁性材料の少なくとも1つの部分と前記少なくとも1個の永久磁石との間の接触面が大きいので、ムーバは一層効率的になる。
【0024】
1つの実施の形態では、前記少なくとも1個の永久磁石の円周方向と軸方向とに伸びる面は、予定の固定子に面するように配置されたムーバの円周方向と軸方向とに伸びる面と実質的に同じ高さに配置される。
本発明の別の態様では、リニア・モータは上に述べた固定子鉄心の実施の形態の任意の1つに係る固定子鉄心を備える。したがって、かかるリニア・モータは固定子鉄心の特定の実施の形態と同じ利点を有する。
【0025】
リニア・モータの別の実施の形態では、リニア・モータは上に述べたムーバの実施の形態の任意の1つに係るムーバを備える。したがって、かかるリニア・モータはムーバの特定の実施の形態と同じ利点を有する。
本発明の更に別の態様では、リニア・モータ用の固定子鉄心は、前記リングが少なくとも2つのリング形の固定子部(第1の固定子部と第2の固定子部)に分割され、また前記固定子部が軟磁性粉で作られた均質なボディである、固定子鉄心を含む。
【0026】
本発明の文脈では、リング形の固定子鉄心と固定子部とは円形である必要はなく、任意の形でよい。例えば、リング形の固定子鉄心と固定子部とは3角形、正方形、長方形、楕円形、数字の8に似た形などでよい。
本発明のこの態様の利点は、リング形の固定子鉄心を2個のリング形の固定子部に分割した結果、固定子鉄心をその一部として含む固定子の製作が容易になるような設計ができることである。また、固定子鉄心は容易に製作することができるし、また高い充填係数が得られる。
【0027】
この固定子鉄心の1つの実施の形態では、固定子鉄心は、固定子鉄心内に配置された空洞であって固定子コイルを受けるスロットを更に含む。前記スロットは第1の固定子部により部分的に区画され、また第2の固定子部により部分的に区画される。
固定子鉄心の更に別の実施の形態では、第1の固定子部は第1の歯を含み、また第2の固定子部は第2の歯を含み、前記第1および第2の歯はリング形の固定子鉄心の内周または外周の一方に沿って配置される。
また、この固定子鉄心は前に述べた固定子鉄心の特徴を含んでよい。
本発明の適用可能な別の範囲は以下に述べる詳細な説明から明らかになる。しかし理解すべきであるが、詳細な説明と特定の例は本発明の好ましい実施の形態を示すものではあるが、単なる例として示すものである。なぜなら、本発明の精神と範囲内での種々の変更と修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の特徴と利点は、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施の形態の詳細な説明を読めば明らかになる。
【図1a】本発明の1つの実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心との斜視図である。
【図1b】図1aのリニア・モータの軸方向の図である。
【図1c】図1aのリニア・モータの図1bにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図2a】本発明の別の実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心との軸方向の図である。
【図2b】図2aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図3a】本発明の更に別の実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心とムーバとの軸方向の図である。
【図3b】図3aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図4a】本発明の更に別の実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心とムーバとの軸方向の図である。
【図4b】図4aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図5】本発明の1つの実施の形態に係る、2つの固定子部を含む固定子鉄心の斜視図である。
【図6】図5の固定子鉄心に対応する固定子鉄心の断面図である。
【図7a】固定子鉄心を2つの別々の固定子部に分割した別の例を示す、本発明の実施の形態にかかる固定子鉄心の断面図である。
【図7b】固定子鉄心を2つの別々の固定子部に分割した別の例を示す、本発明の実施の形態にかかる固定子鉄心の断面図である。
【図7c】固定子鉄心を2つの別々の固定子部に分割した別の例を示す、本発明の実施の形態にかかる固定子鉄心の断面図である。
【図8】本発明の1つの実施の形態に係る、複数の部分に分割された固定子部の斜視図である。
【図9】本発明の1つの実施の形態に係る、複数の部分に分割された固定子部の斜視図である。
【図10】スキューに似た効果を導入する設計の一例を示す、本発明の1つの実施の形態に係る固定子鉄心の断面図である。
【図11】歯が互いに接触するように設計された一例を示す、本発明の1つの実施の形態に係る固定子鉄心の断面図である。
【図12】本発明の1つの実施の形態に係る、2個の固定子コイル用の固定子鉄心の断面図である。
【図13a】本発明の1つの実施の形態に係るムーバの斜視図である。
【図13b】図13aのリニア・モータの軸方向の図である。
【図13c】図13aのムーバの図13bにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図14】本発明の1つの実施の形態に係る固定子鉄心の斜視図である。
【図15a】本発明の別の実施の形態に係る、リニア・モータと固定子鉄心との軸方向の図である。
【図15b】図15aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1a−1cは1つの実施の形態に係るリニア・モータの略図を示す。リニア・モータ10は固定子12とムーバ14とを含む。通常、固定子は静止してムーバを軸方向に駆動するが、ムーバが静止して固定子が自分を軸方向に駆動させることもできる。したがって、本発明の文脈では、どちらが他方に関して動くかに従って、軸方向はムーバまたは固定子が動く方向である。
【0030】
固定子は少なくとも1個のコイル18a−18cと少なくとも1個の固定子鉄心20a−20cとを含む。固定子コイルは単巻(すなわち、1本のワイヤをコイルに巻いて電源ユニット(図示しない)に接続したもの)か、または分布巻(すなわち、各固定子コイルは電源ユニットの異なる出力に接続するワイヤを含んで異なる電気特性を有する電気を運んでよい)でよい。用いてよい多くの異なるタイプの電源ユニットは電気モータの当業者に周知である。また、かかる電源ユニットに単巻または分布巻を接続する方法は当業者に周知である。
【0031】
固定子コイルの目的はムーバと相互作用する磁束を生成することである。固定子鉄心20a−20cは固定子コイル18a−18cに近接して配置され、図1a−1cの実施の形態に示すように、固定子コイル18a−18cは固定子鉄心20a−20cに実質的に囲まれてもよい。
【0032】
図1a−1cの実施の形態では、各固定子鉄心20a−20cは2つの固定子部21a−21cと22a−22cとに分割される。図1a−1c,図2a−2b、図3a−3bの各固定子鉄心20a−20cは、互いの上に軸方向に重ねられた1個の第1の固定子部21a−21cと1個の第2の固定子部22a−22cとで作られる。図1-3に示すような複数の固定子鉄心20a−20cを有するリニア・モータでは、別の固定子鉄心の固定子部に密着して配置された1つの固定子の固定子部を1つの単一部分として作ってよい。すなわち、固定子部22aおよび21bを1つの単一部分として作り、固定子部22bおよび21cを1つの単一部分として作ってよい。これについては後で説明する。
【0033】
固定子20a−20cを2つの固定子部21a−21cと22a−22cとに分割する異なる方法と固定子20a−20cの異なる設計とについては後で説明する。
【0034】
渦電流の発生を減らすために固定子部21a−21cおよび22a−22cは電気抵抗を備えた軟磁性材料で作られている。電気抵抗を持つためには、用いる材料は電気抵抗を与える電気絶縁された軟磁性粉、または電気抵抗を与える成形可能な軟磁性材料でよい。電気抵抗を与える電気絶縁された軟磁性粉、または電気抵抗を与える成形可能な軟磁性材料を用いるとき、1つの実施の形態では、渦電流の発生を十分に減らすには製作された固定子部は少なくとも1μΩmの抵抗率を示さなければならない。
【0035】
また、積層板で作られた固定子では高い充填係数を得るのは困難であろうが、軟磁性粉を用いるとこれが達成される。1つの実施の形態では、各固定子部は軟磁性粉の1つの均質の片として作られる。かかる固定子部内では、磁束は積層の2次元の形に制限されず、固定子部の3次元の形を用いて次元を減らし、固定子鉄心を飽和させない。1つの実施の形態では、得られる固定子部が少なくとも1μΩmの抵抗率を示す限り、用いる軟磁性材料に従って、軟磁性粉を望ましい形に成形しまたは焼結してよい。また別の実施の形態では、固定子部の密度は少なくとも6500kg/m3でよい。成形して固定子部を作るのに用いてよい軟磁性粉のいくつかの例を示すと、スウェーデン国、S−263 83
AB製のソマロイ(Somaloy)500、ソマロイ550、パーマイト(Permite)75がある。
【0036】
通常、ムーバ14はリニア・モータの固定子に対して動く部分なので、リニア・モータ10の外部に明確な影響を与えてよい。ムーバ14は固定子12が生成する磁界と相互作用して、固定子12により駆動される。ムーバ14は軟磁性粉の管26を含んでよい。軟磁性材料は上の固定子鉄心20a−20cに関して述べた任意の質および/またはタイプでよい。
【0037】
また、複数の磁性管28a−28dを管26の上に取り付ける。各磁性管は半径方向に向かう分極ベクトルを有する永久磁石である。すなわち、永久磁石の1つの極は半径方向に外向きに面し、永久磁石の1つの極は半径方向に内向きに面する。例えば、図1a−1cの磁性管28a−28cは次のように配置される。すなわち、磁性管28aの北極は外向きに面しその南極は内向きに面し、磁性管28bの南極は外向きに面しその北極は内向きに面し、磁性管28cの北極は外向きに面しその南極は内向きに面し、磁性管28dの南極は外向きに面しその北極は内向きに面する。磁性管28a−28dは当業者に周知の任意の方法で管26に固定してよい。
【0038】
ムーバの軸の長さは図1に示す長さと異なってよく、磁性管の数も異なってよい。磁性管28a−28dの軸の長さと磁性管28a−28dの数は変わってよく、リニア・モータ10を用いるアプリケーションに従ってよい。1つの実施の形態では、各磁性管28a−28dの軸の長さLmは固定子の2個の連続した歯の中心の間のピッチLpの0.75−1.5倍でよい。すなわち、関係Lm/Lpは0.75−1.5でよい。このアプリケーションの文脈では、ピッチは2個の隣接する歯の中心線の間の軸の距離と見てよい。
【0039】
図2a−2bはリニア・モータの別の実施の形態を示す。この実施の形態は図1a−1cの実施の形態に似ており、違いについて以下に示す。
リニア・モータの固定子12は追加の部分である内部固定子部30を含む。内部固定子部30は固定子部21a−21cおよび22a−22cの内側に位置し、内部固定子部30の外周と固定子部21a−21cおよび22a−22cの内周との間に空間を残す。内部固定子部の機能は磁気回路(固定子部21a−21cおよび22a−22cもその一部である)内の一部として作用することである。内部固定子部30は同じ軟磁性材料で、上に述べた固定子の残りと同じ方法を用いて作ってよい。内部固定子部は、固定子部21a−21cおよび22a−22cに対してその位置を保つよう配置される。
【0040】
また、ムーバは図1a−1cのムーバとは異なる設計である。図2a−2bの実施の形態のムーバは磁性管28a−28dだけで作られる。図1a−1cの実施の形態の場合と同様にこれらの磁性管も永久磁石であり、その分極ベクトルの方向は、図1a−1cに関して示した永久磁石の分極ベクトルの方向に対応する方向に配置してよい。この方法では、ムーバは図1a−1cのムーバより軽く作ってよい。しかしそのために、ムーバは特に2つの磁性管28a−28dの間の接続部で壊れやすい。関係Lm/Lpは図1a−1cに示す実施の形態の場合と同じでよい。
【0041】
図3a−3bはリニア・モータの更に別の実施の形態を示す。この実施の形態も図1a−1cの実施の形態に似ており、違いについて以下に説明する。
固定子12は図1a−1cのものと同じでよい。しかし、ムーバ14は軟磁性管32a−32dで、軟磁性管32a−32dの一部分は永久磁石リング34a−34cで置換されている。永久磁石リングは軟磁性管内で、永久磁石の分極ベクトルが軸に向かうように配置される。このタイプのムーバについての一層詳細な説明は後で述べる。
【0042】
図1a−1c、図2a−2b、図3a−3bの実施の形態では、3個の固定子鉄心と3個のコイルとを有する固定子を説明した。しかし、固定子鉄心とコイルとの数は3個より多くても少なくてもよい。例えば、図1a−1cの固定子は追加の固定子鉄心とこれに対応する固定子コイルとを用いて伸ばしてよい。また、図1a−1c、図2a−2b、図3a−3bのリニア・モータから固定子鉄心20a−20cとこれに対応する固定子コイルとを除くことにより固定子コイルの数を減らしてよい。
【0043】
図4a−4bは1個の固定子コイル18と1個の固定子鉄心20とを有するリニア・モータを示す。この図のムーバは、図3a−3bに示すリニア・モータのムーバに対応するムーバであり、これについては後で詳細に説明する。しかし、ムーバは任意のタイプ、例えば、図1a−1bおよび図2a−2bに示すムーバの1つでよい。
【0044】
図5および図6は1つの実施の形態に係る固定子鉄心20を示す。上に述べたように、固定子鉄心20は2つの別個の固定子部(第1の固定子部21と第2の固定子部22)に分割される。固定子鉄心20は内周50と、外周52と、分割面54とを有する。内周は固定子鉄心20の内部境界を区画する線と理解すべきであり、外周は固定子鉄心20の外部境界を区画する線と理解すべきである。この固定子鉄心は円リングの形を有すると述べてもよい。この図で外周52は内周50を囲むが、固定子鉄心20は固定子鉄心20を通して半径方向に伸びる隙間を含んでよく、内周を囲む(少なくとも実質的に内周を囲む)外周を有すると考えてよい。分割面54は固定子鉄心を2つの固定子部21と22とに分割したためにできる面である。
【0045】
また、固定子鉄心20は少なくとも2個の歯(第1の歯56と第2の歯58)と背面鉄心60とを含む。歯56および58は内周50に沿って配置され、磁束をムーバの近傍の方にまたその逆の方に導く。背面鉄心60は外周52に沿って配置され、第1の歯56と第2の歯58との間に高透磁度の磁束路を形成する。図5および図6に示す実施の形態では、各固定子部21および22はそれぞれ1個の歯56,58と背面鉄心60の一部分とを含む。
【0046】
固定子コイルを受けるための空隙の形のスロット62が固定子鉄心20内に配置される。したがって、スロットは外周52と内周50との間に配置され、第1の固定子部21により部分的に区画され、また第2の固定子部22により部分的に区画される。したがって、スロット62も円リングの形を有する。
【0047】
固定子鉄心20の歯56および58は互いに向かって軸方向に伸びて、その間にスロット開口64を残す。スロット開口64は固定子鉄心20内のスロット62に移行する。
固定子部21および22は、したがって固定子鉄心20は、図1a−1cに関して上に述べた特性を有する軟磁性材料で作ってよい。
【0048】
固定子鉄心20の分割面54は、軸に面する固定子鉄心の第1の面66と軸の逆方向に面する固定子鉄心の第2の面68とから等しい軸距離に配置してよい。歯56および58が内周に沿って軸方向に同じ軸距離だけ伸び、また分割面54が前に述べたように配置されると、2つの固定子部は全く同じであって一組の製作ツールを用いて作ることができる。したがって、異なる固定子部21および22を作るために2つの異なる組のツールを必要とする固定子に比べて、固定子を製作する初期コストが小さくてよい。
【0049】
しかし、分割面54は図5および図6とは異なる位置に置いてもよい。固定子鉄心20を第1の固定子部21と第2の固定子部22とに分割する別の方法を図7a−7cに示す。これらの図は固定子鉄心を分割する可能な変形の全ての図を示すものではない。固定子鉄心20を少なくとも2つの固定子部21および22に分割する理由は、固定子20のスロット62にコイルを取り付けやすくするためである。上に説明したように、固定子20を分割することにより、予め巻かれたコイルを用いることができる。コイルをそのスロット内に配置した固定子鉄心の製作は容易であって、予め巻かれたコイルを固定子部21または22の一方に入れて、他方の固定子部21または22を最初の固定子部21または22に密着させれば固定子は完成する。
【0050】
図8−9は、固定子部21,22を複数の部分74a−74b、75a−75b,76a−76d,77a−77dに分割し、内周および外周の方向に対応する方向に隣接して配置した実施の形態を示す。このように固定子部を分割すると、少なくとも大型の固定子を製作するときに有利であろう。
【0051】
図10は固定子鉄心20の別の実施の形態を示す。この実施の形態は、前に説明した固定子鉄心の実施の形態の任意の1つに基づいてよい。この実施の形態では、各固定子歯56および58の内周面50に沿った軸の長さは変わってよい。この図で、内周70の円周長さに沿った歯56,58の軸の長さを調べると、歯56,58のこの軸の長さは長さLmaxから長さLminに、そしてLmaxに戻るように変わってよい。この変動は連続的でよい。スロット開口64は内周70に沿った位置に無関係に同じ軸距離伸びてよく、これは、1つの固定子部の歯の軸方向の伸びがLmaxで、他方の歯の軸方向の伸びが周の同じ位置でLminになるように固定子部を配置することにより達成される。
【0052】
このように歯の軸の長さを可変にすることは回転モータ内にスキューを導入することに似ている。回転モータに用いられるスキューとは、スロットが軸方向から或る電気角だけ逸れる角「ねじれ」を言う。多くの場合、スキューは回転子の1つの特徴である。M.G.Sayの「交流機械(Alternating Current Machines)」、第5版、Longman Scientific & Technical、1983(ISBN 0−582−98875−6)、106ページを参照していただきたい。したがって、歯56および58の前記可変の軸の長さを導入することにより、リニア・モータのフォース・リップルは減少する。
【0053】
図11は固定子鉄心20の別の実施の形態を示す。この実施の形態は前に説明した固定子鉄心の実施の形態の任意の1つに基づいてよい。この実施の形態では、歯56および58の軸の長さが延びて、歯56と58とは互いに接触する。伸びた部分は歯56または58の残りの部分より半径方向に狭く、このために突出部72が形成される。突出部72は、突出部72の磁束が飽和して、突出部72を通って流れる漏れ磁束が小さくなる程度に半径方向に狭くすべきである。また、突出部72は、2つの固定子部21および22を互いに密着して配置したときに突出部が補足的な支持物として働く程度に半径方向に広くしてよい。
【0054】
単一固定子コイルを有するリニア・モータ(例えば、図4a−4bに示すもの)を作るには、上に説明した固定子鉄心の任意の1つを用いてよい。複数の固定子コイルを有するリニア・モータ(例えば、図1a−1c、図2a−2b、図3a−3bに示すもの)を作るには、上に述べた複数の固定子鉄心を互いに隣接して配置してよい。かかる固定子(すなわち、前記固定子鉄心が互いに隣接して配置されている固定子)では、2個の隣接する固定子鉄心の隣接する歯は、磁束の観点からは1本の歯に見える。したがって、かかる固定子のピッチを決定するときはこの「磁気」歯の中心を用いなければならない。かかる設計では、2個の異なる固定子鉄心からの軟磁性材料を含む磁気歯を全歯と呼び、1個の固定子鉄心からの軟磁性材料だけを含む固定子の各端の各磁気歯を半歯と呼んでよい。また、複数のコイルを有するリニア・モータの固定子12は図12に示すように設計してもよい。
【0055】
図12は、2個の固定子コイル(図示しない)用の固定子12の或る実施の形態の略図である。上に説明した固定子鉄心(固定子鉄心は分割されて互いに隣接して配置されている)を含む固定子との違いは、この実施の形態は中間部80を含むことである。中間部80は1つの片で作られ、図6に説明した単一固定子鉄心の第2の歯58に対応する歯82と、第1の単一固定子鉄心と密着して配置された別の単一固定子鉄心の第1の歯56に対応する歯84とを含む。したがって、前記中間部80は第1の固定子スロット86を部分的に区画し、また第2の固定子スロット88を部分的に区画する。2個より多い固定子コイルを含む固定子12を作るのにこの中間部80を用いてよい。
【0056】
図13a−13cは、図3a−3bのリニア・モータで示したムーバの1つの実施の形態に対応するムーバ14を示す。このムーバは軟磁性材料(すなわち、図1a−1cに関して説明した材料の1つ)の軟磁性部分32a−32cと、永久磁石部分34a−34cとを含んでよい。永久磁石部分34a−34cはムーバ14の内面102から外面104に実質的に伸びて、ムーバ14の円周に沿って連続的でよい。磁束を軟磁性部分32a−32cに送るため、永久磁石部分34a−34cは軟磁性部分32a−32cに密着して配置してよい。永久磁石部分34a−34cは固定子に面するムーバの表面を超えて伸びてはならない。また、固定子に面する前記表面と同じ高さに配置する必要はなく、前記表面に到達する直前で終わってよい。軸方向では、永久磁石は軟磁性部分32a−32cより短くてよい。
【0057】
永久磁石34a−34cはそのN極とS極とが軸方向に面するように配置してよい。また、永久磁石部分34a−34cは永久磁石部分(例えば、永久磁石部分34b)のN極が隣接する永久磁石部分(例えば、永久磁石部分34c)のN極に面するように配置される。したがって、永久磁石部分のS極は隣接する永久磁石部分のS極に面する(例えば、永久磁石部分34aと34b)。これにより、軟磁性部分32a−32cは半径方向に向く分極ベクトルを持つ磁石として働いてよい。
【0058】
また、永久磁石は軸方向に短く作ってよい。すなわち、ムーバの内面から外面までの磁石の軸の長さと半径方向の長さとの比La/Lrは、図1a−1cおよび図2a−2bのリニア・モータのムーバ内の永久磁石の対応する比より小さくてよい。したがって永久磁石の製作が容易になる。なぜなら、La/Lrの値が小さな永久磁石の方が作りやすいからである。このように設計すると、ムーバは一層丈夫にもなる。
【0059】
しかし、ムーバは磁石を収めるように配置された溝を持つ管でもよい。かかる実施の形態では、溝は固定子に面するように配置してよく、したがって溝内に収められて固定子に面しない磁石の部分は管の材料に面する。かかるムーバの他の特徴は、ムーバの他の実施の形態の特徴に少なくとも対応してよい。
【0060】
1つの実施の形態では、リニア・モータ用のムーバは軟磁性材料の少なくとも1つの部分と少なくとも1個の永久磁石とで構成してよく、軟磁性材料の前記少なくとも1つの部分と前記少なくとも1個の永久磁石とはムーバの軸方向に整列され、また前記少なくとも1個の永久磁石の分極ベクトルは軸方向に向く。
また、軟磁性材料で作られた上のムーバの前記部分は軟磁性粉で作ってよい。
【0061】
別の実施の形態では、ムーバは前記軸方向に整列された少なくとも2個の永久磁石(第1の永久磁石と第2の永久磁石)で構成してよく、また前記少なくとも2個の永久磁石の軸の中心の間の距離は予定の固定子のピッチの0.75−1.5倍である。
【0062】
前の実施の形態に加えて、第1の永久磁石に対して他の永久磁石が第2の永久磁石より近くに配置されないように永久磁石を配置してよい。
更に別の実施の形態では、ムーバは管状でよい。
更に別の実施の形態では、軟磁性材料の前記少なくとも1つの部分は端面を有する少なくとも第1の軸端を持ち、また前記少なくとも1個の永久磁石は前記第1の軸端の全端面に実質的に接触して配置される。
【0063】
別の実施の形態では、前記少なくとも1個の永久磁石の円周方向および軸方向に伸びる面は、予定の固定子に面するように配置されたムーバの円周方向および軸方向に伸びる面と実質的に同じ高さに配置される。
1つの実施の形態では、この文書の任意の実施の形態に説明したリニア・モータは、上に説明したムーバの実施の形態の任意の1つに従うムーバで構成してよい。
【0064】
固定子12とムーバ14の半径方向部分の形は円である必要はない。或る実施の形態では、半径方向部分の別の形の方が一層適している。図14は、2つの固定子部21および22を含む3角形固定子鉄心20を示す。固定子鉄心は3角形を有するリングと記述してもよい。この固定子鉄心20は上に述べた固定子の任意の1つと同じ方法で作り、および/または配置してよい。固定子鉄心内に配置される固定子コイルは半径方向部分の形とは独立に予め巻いてよい。
【0065】
性能を最高にするためには、前記3角形固定子鉄心を備えるリニア・モータ内のムーバもこの3角形に形成してよい。固定子および/またはムーバの半径方向部分の形はほとんど任意の形をとってよい。例えば、楕円、長方形、星型、2つの円を接合した形(すなわち、数字の8の形)など、可能性は無限である。上に述べたように、固定子とムーバとは少なくとも優れた磁束透磁度と電流の抵抗の特性を有する軟磁性粉でまたは成形可能な材料で作ってよいので、奇妙な、通常は困難な形の固定子とムーバの製作は容易である。
【0066】
図15a−15bはリニア・モータの別の実施の形態を示す。リニア・モータのこの実施の形態は、図1a−1c、図2a−2b、図3a−3bに関して説明したリニア・モータによく似た固定子112とムーバ114とを備える。しかしこの実施の形態では、固定子112はムーバ114の中に置かれる。すなわち、ムーバ114は固定子112を実質的に囲む。固定子112は複数の固定子コイルを含んでよい。この図の実施の形態は3個の固定子コイル118a−118cを含むが、このタイプのリニア・モータは1個の固定子コイルだけで配置してもよい。
【0067】
固定子112の固定子鉄心120a−120cも、上に説明した外側固定子鉄心と同じ方法で第1の固定子部121a−121cと第2の固定子部122a−122cとに分割してよい。図1−3のリニア・モータとこの実施の形態のリニア・モータの固定子の間の1つの大きな違いは、固定子鉄心120a−120cの歯156a−56cおよび158a−158cが、ムーバ114と磁気的に相互作用するように固定子112の外周150に沿って配置されていることである。
【0068】
また、固定子鉄心120a−120cは上に説明した外側固定子鉄心と同じように設計してよいが、内側ムーバではなく外側ムーバと磁気的に相互作用するのに必要な異なる構造を有する。したがって、図10の実施の形態と同様に種々の軸方向の歯の長さで、また図11の実施の形態の突出と同様に歯を突出させて設計してよい。したがって、外側固定子鉄心の前に説明した特徴はこれらの内側固定子鉄心120a−120cに適用される。
【0069】
ここに示した実施の形態では、固定子112は固定子鉄心120a−120cの中心の軸方向の孔を定義する内周152を含む。別の実施の形態ではこの孔はなくてよい。すなわち、各固定子鉄心120a−120cの中心は固定子鉄心の残りの部分と同じ軟磁性材料の固体でよい。
【0070】
ムーバ114は図1a−1cのムーバと同じ方法で形成するが、異なる点は、永久磁石128a−128dを軟磁性管126の内側に配置することである。ムーバ114は図13a−13bで説明したタイプでもよく、設計を全く変えずにかかるムーバを用いてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニア・モータ用の固定子鉄心であって、
内周と、
前記内周を実質的に囲む外周と、
前記内周または外周の一方に沿って配置された第1および第2の歯と、
前記固定子鉄心内に配置された空洞であって固定子コイルを受けるスロットと、
を備え、
前記固定子鉄心は第1の固定子部と第2の固定子部とに分割され、
前記第1の固定子部は前記スロットを部分的に区画するように配置されかつ軟磁性粉で作られた前記第1の歯を含み、
前記第2の固定子部は前記スロットを部分的に区画するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第2の歯を含む、
固定子鉄心。
【請求項2】
請求項1に記載の固定子鉄心において、前記第1の歯は前記第2の固定子部に向かって軸方向に或る距離伸び、前記距離は前記固定子鉄心の前記内周または外周の一方に沿って変わり、また前記第2の固定子部は前記第1の固定子部に向かって軸方向に或る距離伸び、前記距離は前記固定子鉄心の前記内周または外周の一方に沿って変わる、固定子鉄心。
【請求項3】
請求項1および2のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の固定子部と前記第2の固定子部とはそれぞれ前記外周で互いに密着しまた前記内周で互いに分離して配置され、前記内周で分離した結果、前記第1の歯と第2の歯との間にスロットに移行するスロット開口が形成される、固定子鉄心。
【請求項4】
請求項1および2のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の固定子部と前記第2の固定子部とはそれぞれ前記内周で互いに密着しまた前記外周で互いに分離して配置され、前記外周で分離した結果、前記第1の歯と第2の歯との間にスロットに移行するスロット開口が形成される、固定子鉄心。
【請求項5】
請求項1−4のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の歯と第2の歯とは互いに密着して配置され、また前記歯の延長は、前記2個の歯の間の接触領域内で前記半径方向に伸びが小さいので動作中は前記固定子のこの部分は磁気的に飽和する、固定子鉄心。
【請求項6】
請求項1−5のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の固定子部と前記第2の固定子部とはそれぞれ少なくとも軟磁性粉の2つの部分を含み、前記部分は前記内周と外周の方向に対応する方向に互いに隣接して配置される、固定子鉄心。
【請求項7】
請求項1−6のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記固定子部のそれぞれの密度は少なくとも6500kg/m3である、固定子鉄心。
【請求項8】
請求項1−7のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記固定子部のそれぞれの中の抵抗率は少なくとも1μΩmである、固定子鉄心。
【請求項9】
請求項1−3のいずれかに記載の固定子鉄心を含むリニア・モータ。
【請求項10】
リニア・モータ用の固定子鉄心であって、
リング形固定子鉄心であって、前記リングは少なくとも2つのリング形の固定子部(第1の固定子部と第2の固定子部)に分割され、また前記固定子部は軟磁性粉で作られた均質なボディであるリング形固定子鉄心、
を含む固定子鉄心。
【請求項11】
請求項10に記載の固定子鉄心であって、固定子コイルを受けるスロットを更に含み、前記スロットは前記固定子鉄心内に配置された空洞であり、また前記スロットは前記第1の固定子部により部分的に区画され、また前記第2の固定子部により部分的に区画される、固定子鉄心。
【請求項12】
請求項1−11のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の固定子部は第1の歯を含み、また前記第2の固定子部は第2の歯を含み、前記第1および第2の歯は前記リング形の固定子鉄心の内周または外周の一方に沿って配置される、固定子鉄心。
【請求項13】
請求項10−12のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記固定子鉄心は請求項2−8のいずれかにより更に定義される、固定子鉄心。
【請求項1】
リニア・モータ用の固定子鉄心であって、
内周と、
前記内周を実質的に囲む外周と、
前記内周または外周の一方に沿って配置された第1および第2の歯と、
前記固定子鉄心内に配置された空洞であって固定子コイルを受けるスロットと、
を備え、
前記固定子鉄心は第1の固定子部と第2の固定子部とに分割され、
前記第1の固定子部は前記スロットを部分的に区画するように配置されかつ軟磁性粉で作られた前記第1の歯を含み、
前記第2の固定子部は前記スロットを部分的に区画するように配置されかつ軟磁性粉で作られた第2の歯を含む、
固定子鉄心。
【請求項2】
請求項1に記載の固定子鉄心において、前記第1の歯は前記第2の固定子部に向かって軸方向に或る距離伸び、前記距離は前記固定子鉄心の前記内周または外周の一方に沿って変わり、また前記第2の固定子部は前記第1の固定子部に向かって軸方向に或る距離伸び、前記距離は前記固定子鉄心の前記内周または外周の一方に沿って変わる、固定子鉄心。
【請求項3】
請求項1および2のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の固定子部と前記第2の固定子部とはそれぞれ前記外周で互いに密着しまた前記内周で互いに分離して配置され、前記内周で分離した結果、前記第1の歯と第2の歯との間にスロットに移行するスロット開口が形成される、固定子鉄心。
【請求項4】
請求項1および2のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の固定子部と前記第2の固定子部とはそれぞれ前記内周で互いに密着しまた前記外周で互いに分離して配置され、前記外周で分離した結果、前記第1の歯と第2の歯との間にスロットに移行するスロット開口が形成される、固定子鉄心。
【請求項5】
請求項1−4のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の歯と第2の歯とは互いに密着して配置され、また前記歯の延長は、前記2個の歯の間の接触領域内で前記半径方向に伸びが小さいので動作中は前記固定子のこの部分は磁気的に飽和する、固定子鉄心。
【請求項6】
請求項1−5のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の固定子部と前記第2の固定子部とはそれぞれ少なくとも軟磁性粉の2つの部分を含み、前記部分は前記内周と外周の方向に対応する方向に互いに隣接して配置される、固定子鉄心。
【請求項7】
請求項1−6のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記固定子部のそれぞれの密度は少なくとも6500kg/m3である、固定子鉄心。
【請求項8】
請求項1−7のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記固定子部のそれぞれの中の抵抗率は少なくとも1μΩmである、固定子鉄心。
【請求項9】
請求項1−3のいずれかに記載の固定子鉄心を含むリニア・モータ。
【請求項10】
リニア・モータ用の固定子鉄心であって、
リング形固定子鉄心であって、前記リングは少なくとも2つのリング形の固定子部(第1の固定子部と第2の固定子部)に分割され、また前記固定子部は軟磁性粉で作られた均質なボディであるリング形固定子鉄心、
を含む固定子鉄心。
【請求項11】
請求項10に記載の固定子鉄心であって、固定子コイルを受けるスロットを更に含み、前記スロットは前記固定子鉄心内に配置された空洞であり、また前記スロットは前記第1の固定子部により部分的に区画され、また前記第2の固定子部により部分的に区画される、固定子鉄心。
【請求項12】
請求項1−11のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記第1の固定子部は第1の歯を含み、また前記第2の固定子部は第2の歯を含み、前記第1および第2の歯は前記リング形の固定子鉄心の内周または外周の一方に沿って配置される、固定子鉄心。
【請求項13】
請求項10−12のいずれかに記載の固定子鉄心において、前記固定子鉄心は請求項2−8のいずれかにより更に定義される、固定子鉄心。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【公開番号】特開2011−4602(P2011−4602A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223940(P2010−223940)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2006−507952(P2006−507952)の分割
【原出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【出願人】(595054486)ホガナス アクチボラゲット (66)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2006−507952(P2006−507952)の分割
【原出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【出願人】(595054486)ホガナス アクチボラゲット (66)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]