説明

リバビリン誘発性貧血と関連しているマーカー

本発明は、リバビリン療法によって誘発される貧血と関連している遺伝子マーカーおよびバイオマーカーを提供する。該遺伝子マーカーは、ITPA遺伝子内のヒト第20染色体上のどこかに位置しており、該バイオマーカーは低ITPA活性表現型である。これらのリバビリン誘発性貧血マーカーは、とりわけ、リバビリンの医薬組成物および薬物製剤での処置の際に最も貧血が起こりにくいであろう患者を特定するため、リバビリンでの処置に感受性の疾患を有する患者の処置方法において、ならびにかかる患者に対して最も適切な治療法を選択するための方法において有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバビリン療法の有害効果と関連しているマーカーに関し、特に、リバビリン誘発性貧血と関連している遺伝的多型およびバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションまたは本出願の任意のセクションにおける任意の刊行物の特定は、かかる刊行物が本発明に対する先行技術であることの是認ではない。
【0003】
リバビリン(1−[(2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミドは、1−(β−D−リボフラノシル)−1H−l,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド)としても知られており、広範な抗ウイルス活性を有するヌクレオシド類似体である。リバビリン(RBV)の主な臨床用途は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染の処置のためのインターフェロンαとの併用であり、現在の医療標準では、RBVはペグ化インターフェロンα(PeglFN)と併用されている(ペグインターフェロンα−2a(Hoffman−La Roche(Nutley,NJ)により商標名PEGASYS(登録商標)で市販)またはペグインターフェロンα−2b(Schering−Plough(Kenilworth,NJ)により商標名Peglntron(登録商標)で市販)のいずれか)。ペグ−IFN/RBV併用療法剤は、一連の処置制限有害効果と関連している。
【0004】
このような有害効果の1つにRBV誘発性貧血があり、これは、大部分の患者が患う。RBV誘発性貧血は、典型的には治療の最初の4週間の間に始まり、2つの機構:赤血球の溶血(すなわち、溶血性貧血)および赤血球生成の抑制(インターフェロンの並行使用による)によるものである。溶血性貧血はリバビリンで処置された患者のほぼ全員が患うが、ヘモグロビン減少の程度は個体間でかなり異なり得る。
【0005】
最近、RBV誘発性溶血性貧血の機構が報告された(De Franceschi,L.ら,Hepatol.31:997−1004(2000);Line,C−Cら,J.Clin.Pharmacol.44:265−275(2004))。血漿リバビリンが細胞内にプロドラッグとして進入すると、リバビリンの5’−一リン酸塩(RMP)、−二リン酸塩(RDP)および−三リン酸塩(RTP)に変換され、アデノシン三リン酸(ATP)の枯渇がもたらされる。赤血球にはリバビリンリン酸塩を加水分解するのに必要とされるホスファターゼがないため該塩が蓄積され、RTP濃度は、赤血球内で血漿中より60倍大きいレベルに達する。リバビリンリン酸塩の総蓄積量および相対的ATP欠損により、赤血球は、細網内皮系による酸化的ストレスに対して高度に感受性となり、血管外溶血がもたらされる。
【0006】
ペグ−IFN/RBV併用療法剤の臨床試験では、ヘモグロビン(Hb)レベルが平均2〜3g/dL低下した。Hbレベルは、50%より多くの患者で<12g/dLまで低下し、中等度の貧血(Hb<11g/dL)が約30%の患者に起こり、リバビリン用量の低減を要する重度の貧血(Hb<10g/dL)が15%までの患者に起こった。Manns,M.P.ら,Lancet 358:958−965(2001)。しかしながら、RBV用量を低減すると、ペグ−IFN/RBV併用療法剤の有効性に対してマイナスの影響を有することがあり得る(McHutchinson,J.G.ら,Gastroenterol 123:1061−1069(2002);Sbiffman,M.L.ら,Gastroenterol 126:1015−1023(2004);Hadziyannis,S.J.ら,Ann Intern Med 140:346−355(2004))。さらに、中等度の貧血であっても生活の質は障害され、処置に対する合致が改変されることがあり得、治療の早期中止となり得る。
【0007】
このような望ましくない結果を最小限にするため、組換えヒトエリスロポエチン(エポエチンアルファ)などの処置誘発性貧血を中和する薬剤が、多くの場合で補助療法薬として使用される。しかしながら、かかる補助療法薬により、既に複雑で高価な処置レジメンに対して複雑さとコストが付加される。
【0008】
したがって、中等度または重度のRBV誘発性貧血のリスクがあり、そのため、治療中に充分なリバビリンが維持されるように設計された処置レジメンの恩恵を最も受けるであろう患者を特定する必要性が存在している。いくつかの患者のベースライン特徴がRBV誘発性貧血の予後因子として特定されており、性別、リバビリン用量/キログラム、ベースライン(治療前)ヘモグロビン濃度、年齢、肝硬変および腎機能障害が挙げられる(例えば、Sulkowski,M.S.ら,J.Viral Hepatol.11(3):243−250(2004)参照)。本発明は、RBV誘発性貧血と相関している遺伝子マーカーを提供することにより、この予後因子のリストに加えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】De Franceschi,L.ら,Hepatol.31:997−1004(2000)
【非特許文献2】Line,C−Cら,J.Clin.Pharmacol.44:265−275(2004)
【非特許文献3】Manns,M.P.ら,Lancet 358:958−965(2001)
【非特許文献4】McHutchinson,J.G.ら,Gastroenterol 123:1061−1069(2002)
【非特許文献5】Sbiffman,M.L.ら,Gastroenterol 126:1015−1023(2004)
【非特許文献6】Hadziyannis,S.J.ら,Ann Intern Med 140:346−355(2004)
【非特許文献7】Sulkowski,M.S.ら,J.Viral Hepatol.11(3):243−250(2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、処置誘発性ヘモグロビン(Hb)低減と第20染色体および第10染色体上の単一ヌクレオチド多型(SNP)との関連の特定がもたらされた、ペグインターフェロンα−2bまたはペグインターフェロンα−2aと併用してRBVで処置した3つの人種集団(ethnic group)(ヨーロッパ系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、およびヒスパニック系)のHCV患者のレトロスペクティブ全ゲノム解析試験(GWAS)に基づいたものである。
【0011】
このような関連SNPのうちの1つは、第20染色体のp13領域(20p13)に存在し、NCBI SNP Databaseにおいてrs6051702で特定されるA/C多型である。C対立遺伝子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である個体は、A対立遺伝子についてホモ接合型である個体よりも、処置の最初の4週間の間に少なくとも3g/dlのヘモグロビン(Hb)の減少が起こる可能性が有意に低かった。
【0012】
本発明者らは、ヨーロッパ系アメリカ人では、rs6051702の防御的C対立遺伝子が、イノシントリホスファターゼ(ITPA)をコードする遺伝子におけるITPA活性の低下の原因として関連している2つの変異:エキソン2における94C>Aミスセンス変異(これにより、プロリンのトレオニン置換(P32T)(rs1127354)がもたらされ、ITPA単量体の二量体酵素への会合が障害されたり、エキソン2および3のミススプライシングが引き起こされたりし得る);および第2イントロン内に存在するスプライシング改変SNP(IVS2+21 A>C;rs7270101)(これにより、エキソン3のミススプライシングがもたらされる)と連鎖不平衡(LD)であることを見い出した。Sumi,Sら,Hum Genet 111:360−367(2002);Cao,H.ら,J Hum Genet 47:620−622(2002);Arenas,M.ら,Biochim Biophys Acta 1772:96−102(2007)。rs1127354 A対立遺伝子は、すべての人種集団に見られたが、その頻度は中央および南アメリカ人集団の1〜2%からアジア系集団の11〜19%までと集団間で有意に異なる(Marsh S.ら,J.Hum.Genet.49:579−581(2004))。コーカサス系、アフリカ系アメリカ人およびアフリカ系の集団では、rs1127354 A対立遺伝子頻度は5〜7%である。rs7270101 C対立遺伝子の対立遺伝子頻度は、コーカサス系集団ではおよそ13%であり、日本人集団では観察されなかった(Maeda T.ら,Mol.Genet.Metab.85:271−279(2005))。
【0013】
このような低活性ITPA変異によってRBV誘発性貧血に対する防御が付与され得る可能性を試験するため、本発明者らは、HCV患者コホートにおいて、rs1127354 SNPおよびrs7270101 SNPを遺伝子型分類し、このようなITPA SNPにより、rs6051702で観察された関連シグナルが完全に説明されることを見い出した。この所見に基づき、本発明者らは、本明細書において、イノシントリホスファターゼ欠損によりRBV誘発性溶血性貧血が防御されると考える。
【0014】
イノシントリホスファターゼ欠損は、赤血球中のイノシン三リン酸(ITP)の蓄積を特徴とする赤血球酵素病であり、チオプリン薬であるアザチオプリンおよび6−メルカプトプリンに対する有害な応答と関連している(Bierau,J.ら,Pharmacogenomics 8(9):1221−1228(2007))。RBV誘発性溶血性貧血の機構は赤血球中へのRBV−TPの蓄積を伴うため、RBV誘発性貧血に対するイノシントリホスファターゼ欠損の防御効果は、RBV−TPの影響を受ける細胞内プロセスにおけるITPのRBV−TPとの競合により、細胞がRBV−TPの溶解作用から防御されることによって説明され得る。
【0015】
したがって、本発明者らは、臨床的に有意なRBV誘発性貧血を有する可能性が高い個体の特定(例えば、≧3g/dLのHbの減少またはHb≦10g/dL)は、以下:ITPA欠損と関連しているITPA遺伝子におけるSNP(あれば)の正常ITPA活性対立遺伝子(例えば、rs1127354またはrs7270101 SNPの貧血関連対立遺伝子)、本明細書に記載のGWASにおける任意のSNP、および正常ITPA活性対立遺伝子では高LDである20p13領域内の他の任意のSNPにおける対立遺伝子のいずれかの有無について試験することにより行われ得ると考える。このようなSNPを以下の表1に示す。表には、SNPが存在している多型部位(PS)(NCBI SNP Database表示により特定)、そのPSに見られる別の対立遺伝子、RBV誘発性貧血と関連している対立遺伝子(本明細書において「貧血対立遺伝子」という)、ならびにこの対立遺伝子を含むヘテロ接合型およびホモ接合型の遺伝子型(本明細書においてRIA(「R」ibavirin−「I」nduced「A」nemia)遺伝子マーカーという)を示す。表1のSNPは、rs10159477が第10染色体上のヘキソキナーゼ遺伝子に存在している以外はすべて、第20染色体に存在している。
【0016】
【表1】


本発明者らは、本明細書において、(1)表1の1種類以上のRIA遺伝子マーカーの存在、および/または(2)赤血球の正常なITPA活性について個体を試験することが、リバビリンでの処置に感受性の疾患に対するリバビリン療法に応答して最も貧血が起こりやすい個体を特定するのに有用であると想定している。また、このようなRIAマーカー(SNP遺伝子マーカーおよびITPA活性バイオマーカー)により、赤血球中でリン酸化されてRBV−TPと構造的に類似した三リン酸塩を生成させる任意のリバビリン類似体(例えば、タリバビリン)に応答して最も貧血が起こりやすい個体も特定されるはずである。リバビリンおよびかかる構造類似体を、本明細書では、集合的にリバビリン化合物と称する。
【0017】
したがって、一実施形態において、本発明は、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有し、少なくとも1種類のRIAマーカーについての試験で陰性である個体を処置するための、リバビリン化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有し、少なくとも1種類のRIAマーカーについての試験で陰性である個体を処置するための医薬の製造におけるリバビリン化合物の使用を提供する。
【0019】
また別の実施形態では、本発明は、リバビリン医薬組成物と、該医薬組成物を推奨する薬理遺伝学的指示を含む処方情報を含む薬物製剤を提供する。該薬理遺伝学的指示は、該医薬組成物中のリバビリン化合物での処置に感受性の疾患、および該疾患を有し、少なくとも1種類のRIAマーカーが欠損していることによって遺伝学的に規定される患者の2つの要素を含む。
【0020】
また、本発明は、個体から核酸試料を採取し、該試料をアッセイして表1の多型部位の少なくとも1つにおける該個体の遺伝子型を調べることを含む、個体を少なくとも1種類のRIAマーカーの有無について個体を試験する方法を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、個体から生物学的試料を採取し、該生物学的試料を、アミノ酸32位にプロリンを有するITPA(ITPA−Pro32)の存在についてアッセイすることを含む、個体をRIAマーカーの存在について試験する方法を提供する。一部の実施形態では、該アッセイ工程は、生物学的試料を、ITPA−Pro32に特異的に結合する(すなわち、ITPA−Thr32には結合しない)モノクローナル抗体と接触させることを含む。他の実施形態では、該アッセイ工程は、該生物学的試料を、ITPA−Pro32に特異的に結合するモノクローナル抗体およびITPA−Thr32に特異的に結合する(すなわち、ITPA−Pro32に結合しない)モノクローナル抗体の各々と接触させることを含む。
【0022】
また別の実施形態では、本発明は、リバビリン化合物で処置した場合、個体に重度の貧血(Hb<10g/dL)のリスクがあるかどうかを予測する方法を提供し、該方法は、個体から赤血球試料を採取すること、該試料中のITPA活性を測定すること、および該ITPA活性を標準(例えば、正常ITPA活性での範囲)と比較することを含み、ここで、測定されたITPA活性が標準よりも低い場合、リバビリン化合物で処置したとき、個体は重度の貧血を起こしにくいという予測になり、測定されたITPA活性が標準よりも低くない(例えば、正常範囲内であるか、それより高い)場合、リバビリン化合物で処置したとき、個体は重度の貧血を起こす可能性があるという予測になる。
【0023】
一部の実施形態では、個体をRIAマーカーの有無について試験する方法は、さらに、アッセイした多型部位の該個体の遺伝子型を示す試験報告を作成することを含み、該試験報告を、該個体または該個体をリバビリン化合物での処置に感受性の疾患について処置している医師に提供することを含んでいてもよい。
【0024】
別の態様では、本発明は、核酸試料においてRIAマーカーを検出するためのキットを提供する。キットは、RIAマーカーの多型部位における各対立遺伝子が特定されるように設計された一組の1種類以上のオリゴヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸試料は、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有する患者由来のものである。一部の好ましい実施形態では、該疾患は慢性HCV感染である。他の好ましい実施形態では、リバビリン化合物はリバビリンまたはタリバビリンである。
【0025】
なおさらなる実施形態では、本発明は、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有する個体を処置するための治療法の選択方法であって、少なくとも1種類のRIAマーカーの存在から該個体の遺伝子型を得ること、および得られた遺伝子型に基づいて治療法を選択することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、個体がRIAマーカーを有する場合、選択される治療法は、リバビリン化合物を、リバビリン誘発性貧血に反対作用する薬剤と併用して投与することを含むものである。他の実施形態では、RIAマーカーを有する個体に選択される治療法は、該疾患に推奨される用量より低い用量のリバビリン化合物での処置を含むものであるか、またはリバビリン化合物での処置を除外する。個体にRIAマーカーがない場合、選択される治療法は、一部の実施形態では、リバビリン化合物を、該疾患に推奨される用量または推奨用量より高い用量のいずれかで投与すること、および該個体を貧血についてモニタリングすることを含むものである。
【0026】
また、本発明は、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有する個体の群から、リバビリン化合物での初期処置または継続処置のための個体を選択するためのスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法は、該疾患群の各構成員を少なくとも1種類のRIAマーカーの存在について試験すること、およびRIAマーカーについての試験で陽性である個体をすべて、処置から除外することを含む。
【0027】
RIA遺伝子マーカーを使用する上記の各実施形態において、該マーカーは、表1に示すヘテロ接合型およびホモ接合型RIAマーカーのうちのいずれかである。好ましい実施形態では、RIAマーカーは、ホモ接合型RIAマーカーのうちの1つである。好ましい一実施形態では、RIAマーカーは、rs1127354におけるC/C遺伝子型またはrs7270101におけるA/A遺伝子型である。別の好ましい実施形態では、RIAマーカーは、該個体がコーカサス系人種である場合はrs6051702 PSにおけるA/A遺伝子型、または個体がアフリカ系人種である場合はrs3810560 PSにおけるA/A遺伝子型、または該個体がヒスパニック系人種である場合はrs11697114におけるT/T遺伝子型である。他の実施形態では、リバビリン化合物での処置によって誘発される重度の貧血の予測は、表1の少なくとも2つのPSの各々のRIAマーカーの存在に基づいたものであり、好ましい実施形態では、該2つのPSはrs1127354とrs7270101である。
【0028】
リバビリン化合物での処置に感受性の疾患が慢性HCV感染である上記のいずれかの組成物および方法の一部の実施形態では、慢性HCV感染は、遺伝子型1(Gl HCV)、遺伝子型3(G3 HCV)または遺伝子型4(G4 HCV)からなる群から選択されるHCV遺伝子型を有するベースラインウイルス負荷量が高い感染である。
【0029】
上記のすべての実施形態において、RIAマーカーについて試験が陽性であることを、RBV誘発性貧血の1種類以上の他の予測因子の存在と組み合わせて使用し、リバビリン化合物で処置したとき重度の貧血を起こす可能性がある患者を特定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】異なる長さの転写物にコードされた2種類のヒトITPAAアイソフォームの参照アミノ酸配列を示す。長い方の転写物は、図1A(配列番号l)に示した194アミノ酸のアイソフォームaをコードし、短い方の転写物は、図1B(配列番号2)に示した177アミノ酸のアイソフォームbをコードしている。変異アミノ酸位の位置を該参照配列において太字で示し、変異(低頻度)対立遺伝子の実体を該変異アミノ酸位の下に太字で示している。
【図1B】異なる長さの転写物にコードされた2種類のヒトITPAAアイソフォームの参照アミノ酸配列を示す。長い方の転写物は、図1A(配列番号l)に示した194アミノ酸のアイソフォームaをコードし、短い方の転写物は、図1B(配列番号2)に示した177アミノ酸のアイソフォームbをコードしている。変異アミノ酸位の位置を該参照配列において太字で示し、変異(低頻度)対立遺伝子の実体を該変異アミノ酸位の下に太字で示している。
【図2】HCV遺伝子型1に慢性的に感染しており、ペグ−IFNα−2aまたは2b/リバビリン併用療法で4週間処置したヨーロッパ系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人およびヒスパニック系患者を合わせた群における、処置誘発性ヘモグロビン減少の有意な決定因子に関する単一−マーカー遺伝子型トレンド試験の結果を示す。上部および中央のグラフは、それぞれ、全ゲノムおよび20p13染色体領域で遺伝子型分類したすべてのSNPのp値[−log(P)]を示し、上位10個の長い垂直線は、ゲノム全体においてヘモグロビン減少との有意な関連が示されたSNPを示す。下部のグラフは、20p13領域におけるITPA遺伝子および周囲遺伝子の位置および構造を示す。
【図3】HCV遺伝子型1に慢性的に感染し、ペグ−IFN/RBV併用療法剤で処置した種々の患者群における、rs6051702多型部位における遺伝子型(CC、ACまたはAA)(X軸)と、≧3g/dLのHbレベルの減少を示した各遺伝子型を有する患者のパーセント(Y軸)との関連を示す。Nは、表示した患者群での各遺伝子型を有する被検体の総数を表す。さらなる詳細は本実施例で示す。
【図4】HCV遺伝子型1に慢性的に感染し、ペグ−IFN/RBV併用療法剤で処置した患者のうち、中等度の貧血(≧3g/dLのHbの減少、ドット部)または重度の貧血(Hb≦10g/dL、斜線部)を起こした患者の割合を、ITPA活性と関連している2つのITPA SNPの遺伝子型(rs1127354、左上のグラフおよびrs7270101、右上のグラフ)または予測したITPA欠損(下側のグラフ)の関数として示す。+++は、残存活性が非常に低いことを示し、++は、正常活性の30%であることを示し、+は、正常活性の60%であることを示し、Nは、各ITPA遺伝子型または予測した表現型を有する患者の総数を表す。さらなる詳細は本実施例で示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
I.総論
本発明は、本明細書に記載した具体的な実施形態による範囲に限定されないものとする。実際、当業者には、前述の説明から、本明細書に記載したものに加えて本発明の種々の変形例が明らかとなろう。かかる変形例は、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることを意図する。
【0032】
本出願を通して特許、特許出願、刊行物、製品に関する文書、およびプロトコルを挙げているが、その開示内容は、引用によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
II.定義
本発明がより容易に理解され得るように、一部の科学技術用語を以下に具体的に定義する。本文書中の別の箇所に具体的に定義していない限り、本明細書で用いる他のすべての科学技術用語は、本明細書における使用と同様の状況で使用される場合に、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0033】
本明細書(添付の特許請求の範囲を含む)で用いる場合、「a」、「an」および「the」などの単数形の語は、本文中にそうでないことを明示していない限り、その対応する複数の指示対象物を含む。
【0034】
「約」は、数値規定されたパラメータ(例えば、本明細書において考察している治療用薬剤の投薬量、または処置期間の長さ)を修飾するように使用されている場合、そのパラメータが、該パラメータに関して記載された数値より最大10%以上または以下まで異なっていてもよいことを意味する。例えば、HCV患者の処置に使用されるリバビリンの用量約800mgは、720mg〜880mgの間で変動させてもよい。
【0035】
「対立遺伝子」は、その特定のヌクレオチド配列によって他の形態と識別される遺伝子または他の遺伝子座の特定の形態である。また、対立遺伝子という用語は、多型部位において見られる別の多型の1つ(例えば、SNP)も含む。
【0036】
「有益な結果」は、リバビリン化合物での処置の所望の臨床結果を意味し、限定されないが:1つ以上の疾患症状の緩和、疾患の程度の減弱(例えば、ウイルス負荷量の低減)、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅滞、疾患状態の改善または軽減、生存期間の長期化(処置しない場合の予測生存期間との比較時)、無再発生存期間、寛解(一部であれ、完全であれ)および治癒(すなわち、疾患の解消)が挙げられる。
【0037】
「本質的に〜からなる(「consist essentially of」)」および「consist essentially of」または「consisting essentially of」などの変化形は、本明細書全体および特許請求の範囲で用いる場合、記載の任意の要素または要素群が含まれること、および明記した投薬レジメン、方法または組成物の基本的または新規な性質を実質的に変化させない、記載の要素と類似したまたは異なる性質の他の要素が含まれてもよいことを示す。
【0038】
「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、いずれかの請求項に記載の組成物および方法が必要とされるか、または有益であり得る任意の被検体、特に、哺乳動物被検体を意図する。好ましい実施形態では、個体はヒトである。より好ましい実施形態では、個体は成人のヒト、すなわち、少なくとも18歳である。
【0039】
「イノシントリホスファターゼ」(ITPAもしくはITPase)または「イノシン三リン酸ピロホスホヒドロラーゼ」は、配列番号1(アイソフォームa、NCBI参照配列NP_258412.1、GI:15626999)または配列番号2(アイソフォームb、NCBI参照配列NP_852470.1;GI:31657144)のアミノ酸を含むポリペプチドを意味する。ITPAアイソフォームa(585ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含む転写物にコードされている)では、プロリンまたはトレオニンの対立遺伝子変異がアミノ酸32位に存在している。この対立遺伝子変異はITPAアイソフォームbでは15位に存在し、このアイソフォームは177個のアミノ酸を有し、5’コード領域内に別のインフレームスプライス部位が使用された短い方の転写物にコードされている。したがって、ITPAa Thrポリペプチドは、配列番号lのアミノ酸32位にトレオニンを有するITPaseアイソフォームaであり、ITPAb Thrポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸15位にトレオニンを有するITPaseアイソフォームbである。同様に、ITPAa Proポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸32位にプロリンを有するITPaseアイソフォームaであり、ITPAb Proポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸15位にプロリンを有するITPaseアイソフォームbである。
【0040】
「単離された」は、典型的には、RNA、DNA、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質などの生物学的分子の精製状態を反映するために使用しており、かかる状況において、分子には、他の生物学的分子(核酸、タンパク質、脂質、糖質など)、または細胞残屑および増殖培地などの他の物質が実質的に含有されていないことを意味する。一般的に、用語「単離された」は、他の生物学的分子もしくは物質の完全な非存在、または水、バッファーもしくは塩の非存在を示すことを意図するものでないが、これらの存在は、実質的に本発明の方法の妨げとならない量であるものとする。
【0041】
「ITPA活性」は、イノシン三リン酸(ITP)がイノシン一リン酸塩(IMP)に変換される速度をいい、1時間あたりヘモグロビン1グラムあたりに形成されるIMPのマイクロモル(μモル)[μモル/(g Hb・h)]で表示する。「正常ITPA活性」は、類似の人種起源の健常個体集団、例えば、rs1127354 PSにC/C遺伝子型およびrs7270101 PSにA/A遺伝子型を有するコーカサス系、アジア系、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系で観察される活性である。コーカサス系の女性では、正常ITPA活性は、133.9〜362.0μモル/g Hb・h)の範囲内の任意の値であり、コーカサス系の男性では、正常ITPA活性は、154.3〜408.3μモル/(g Hb・h)の範囲内の任意の値である。
【0042】
「遺伝子座」は、表現型の特長と関連している遺伝子、物理的特長(多型部位など)または位置に対応する染色体またはDNA分子上の位置をいう。
【0043】
「ヌクレオチドペア」は、個体の染色体の2つのコピー上の多型部位に見られる2つのヌクレオチド(これは、同じであっても異なっていてもよい)の組である。
【0044】
「オリゴヌクレオチド」は、通常、5〜100連続塩基長、最も多くの場合では、10〜50、10〜40、10〜30、10〜25、10〜20、15〜50、15〜40、15〜30、15〜25、15〜20、20〜50、20〜40、20〜30または20〜25連続塩基長である核酸をいう。オリゴヌクレオチドの配列は、遺伝子座の任意の対立遺伝子形態に特異的にハイブリダイズするように設計され得る;かかるオリゴヌクレオチドは、対立遺伝子特異的プローブと称される。遺伝子座がSNPを含むPSである場合、該SNPの相補対立遺伝子は、対立遺伝子特異的プローブ内の任意の位置に存在し得る。本発明の実施に有用な他のオリゴヌクレオチドは、PSに隣接する標的領域に特異的にハイブリダイズするものであり、その3’末端は該PSから1〜約10ヌクレオチド以内、好ましくは約5ヌクレオチド以内に位置する。PSの隣接部にハイブリダイズするかかるオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ媒介性プライマー伸長法に有用であり、本明細書において「プライマー−伸長オリゴヌクレオチド」と称する。好ましい実施形態では、プライマー−伸長オリゴヌクレオチドの3末端は、該PSと直接隣接して存在するヌクレオチドに相補的なデオキシヌクレオチドである。
【0045】
「非経口投与」は、静脈内、皮下または筋肉内注射を意味する。
【0046】
「薬学的に許容され得る」は、分子性実体および組成物が「一般的に安全とみなされる」こと−例えば、生理学的に許容され、典型的には、ヒトに投与したときにアレルギー反応または同様の不都合な反応(例えば、胃の不快感など)をもたらさないことをいう。別の実施形態では、この用語は、分子性実体および組成物が、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されていること、または米国薬局方もしくは動物(より特別にはヒト)における使用のための別の一般的に認知された薬局方に記載されていることを示す。
【0047】
「多型部位」または「PS」は、多型、例えば、単一ヌクレオチド多型(SNP)、制限断片長多型(RFLP)、可変数タンデム反復配列(VNTR)、ジヌクレオチド反復配列、トリヌクレオチド反復配列、テトラヌクレオチド反復配列、単純配列反復配列、Aluなどの要素の挿入、および1つ以上のヌクレオチドの欠失または挿入)が見られる遺伝子座または遺伝子の位置をいう。通常、PSの前または後ろには、対象集団において高度に保存された配列が存在し、したがって、PSの位置決定は、典型的には、該PSを含む30〜60ヌクレオチドのコンセンサス核酸配列を参照して行われ、SNPの場合、該コンセンサス核酸配列は、一般的に「SNPコンテキスト(context)配列」と称される。また、PSの位置は、コンセンサスまたは参照配列内のタンパク質翻訳の開始コドン(ATG)に相対するその位置によっても特定され得る。当業者には、コンセンサスまたは参照配列と比較したとき個体において1つ以上の挿入または欠失が存在するために、具体的なPSの位置が、対象集団の各個体において、参照配列またはコンテキスト配列内の厳密に同じ位置に存在しないことがあり得ることが理解されよう。さらに、当業者に、具体的な検出対象のPSにおける別の対立遺伝子および該PSが存在する参照配列またはコンテキスト配列の一方または両方が示された場合、任意の所与の個体において多型部位の別の対立遺伝子を検出するためのロバストで、特異的かつ正確なアッセイを設計することは、当業者にとって常套的なことである。したがって、当業者には、参照配列またはコンテキスト配列内の具体的な位置を参照した(またはかかる配列内の開始コドンに対する)本明細書に記載の任意のPSの位置の明示は、便宜上にすぎないこと、および具体的に列挙した任意のヌクレオチド位置は、文字どおり、本明細書に記載の任意の遺伝子型分類法または当該技術分野でよく知られた他の遺伝子型分類法を用いた、本発明の遺伝子マーカーの有無についての試験の対象の、任意の個体において、同じPSが同じ遺伝子座に実際に存在しているどのようなヌクレオチド位置も含むことが理解されよう。
【0048】
「リバビリン応答」は、リバビリン化合物での処置の所望の臨床結果を意味し、限定されないが:1つ以上の疾患症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅滞、疾患状態の改善または軽減、生存期間の長期化(処置しない場合の予測生存期間との比較時)、無再発生存期間、寛解(一部であれ、完全であれ)および治癒(すなわち、疾患の解消)が挙げられる。
【0049】
「リバビリン処置未経験」は、本明細書に記載の任意の実施形態による処置または試験対象の個体または患者が、これまでに、いずれのリバビリン化合物(任意の実験用または承認済リバビリン薬物製剤を含む)でも処置されたことがないことを意味する。
【0050】
「処置する」または「処置すること」は、本明細書に記載の任意のリバビリン化合物を含む組成物などの治療用薬剤を、該治療用薬剤を必要とする個体に、内服的または外用的に投与することを意味する。該薬剤を必要とする個体としては、該薬剤での処置に感受性の病状または障害を有するか、または該病状または障害が発現するリスクがあると診断された個体、ならびに第1の治療用薬剤での処置の1種類以上の有害効果(これは、第2の治療用薬剤での緩和に感受性である)を有するか、または該有害効果が発現するリスクがある個体が挙げられる。典型的には、治療用薬剤は治療有効量で投与され、治療有効量は、1つ以上の有益な結果をもたらすのに有効な量を意味する。具体的な薬剤の治療有効量は、処置対象の患者の疾患状態、年齢および体重、ならびに患者の感受性(例えば、治療用薬剤に対する応答能)などの要素に応じて異なり得る。有益なまたは臨床結果が得られたかどうかは、対象の疾患、症状または有害効果の存在、重症度または進行状態を評価するために医師または他の熟練保険医療提供者によって典型的に使用される任意の臨床的手段によって評価することができる。典型的には、薬剤の治療有効量は、該当する臨床測定値(1つまたは複数)において、ベースライン状態または処置なしの場合に予測される状態と比べて、少なくとも5%、通常、少なくとも10%、より通常には少なくとも20%、最も通常には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、最も理想的には少なくとも90%の改善がもたらされる量である。本発明の実施形態(例えば、処置方法または製造物品)により、どの患者でも所望の臨床上の有益性または結果が得られるとは限らないが、当該技術分野で知られた任意の統計学的検定(スチューデントのt試験、カイ−検定、マンホイットニーによるU−検定、クラスカル−ウォリス検定(H−検定)、ヨンクヒール・タプストラ−検定およびウィルコクスン−検定)によって測定した場合、統計学的に有意な数の患者において所望の臨床上の有益性または結果が得られるはずである。
【0051】
慢性HCV感染の処置の状況における「ウイルス負荷量」は、患者の血清中のHCV RNAの量を意味する(当該技術分野および本明細書において、血清HCV RNAおよびHCVウイルス負荷量とも称する)。ウイルス負荷量は、好ましくは、当該技術分野において信頼性のある結果が得られると一般的に認められた定量的RT−PCRアッセイを用いて測定される。より好ましくは、個体のHCVウイルス負荷量を測定するために使用されるRT−PCRアッセイは、約29国際単位/mL(IU/mL)以下の定量下限(LLQ)を有するものである。ベースライン時および抗ウイルス療法での処置中の種々の時点で患者のHCVウイルス負荷量を定量することは、患者が高いベースラインウイルス負荷量(本明細書において定義)を有するかどうかの分類、およびウイルス応答表現型(例えば、本明細書に記載のウイルス応答表現型のいずれか1つ)への患者の割り当てに有用である。
【0052】
「ベースラインウイルス負荷量」は、1種類以上の抗ウイルス剤での治療開始前の血清HCV RNAレベルを意味する。「高いベースラインウイルス負荷量」は、当該技術分野において患者を慢性HCVウイルス感染の処置に困難さを有すると分類するのに一般的に理解されているHCV RNAの量を意味する。間接的ペグインターフェロンα/リバビリン療法の状況において、患者を処置が困難であると分類するのに使用されていた2つのベースラインウイルス負荷量値は、>600,000IU/mlおよび>800,000IU/mlである。最近では、患者を処置が困難であると分類するのに使用されているウイルス負荷量は>400,000IU/mlである。
【0053】
「検出不可能なHCV RNA」は、検出下限(LLD)が約10IU/ml以下であるRT−PCRアッセイまたは異なる方法論を使用しているが当該技術分野において同等もしくは同様の感度をもたらすと一般的に認められた任意の他のアッセイを用いてHCV RNAが検出されなかったことを意味する。
【0054】
慢性HCV感染の処置の状況における「ウイルス応答」は、抗ウイルス療法の開始後の血清HCV RNAレベルの低下を意味する。
【0055】
一部の実施形態では、抗ウイルス療法剤は、リバビリン化合物とインターフェロンαを含むものである。インターフェロンαを含む併用療法剤は、当該技術分野において多くの場合、インターフェロン−α系治療薬と称される。他の実施形態では、測定されるウイルス応答は、インターフェロンαを含まない抗ウイルス療法に対する応答である。好ましいウイルス応答表現型は迅速ウイルス応答(RVR)、早期ウイルス応答(EVR)、処置応答終了(ETR)、持続的ウイルス応答(SVR)、低速応答、空白応答、無応答(NR)および再発である。これらの応答表現型の定義および評価時点を以下に記載する。一部の実施形態では、HCV処置は、間接的抗ウイルス療法剤(ペグインターフェロンα/リバビリン併用療法剤)の導入期、続いて、「直接抗ウイルス療法」(これは、本明細書で用いる場合、治療が、少なくとも1種類の直接的抗ウイルス剤(HCVプロテアーゼプロテアーゼ阻害薬など)の投与を含むことを意味し、1種類以上の間接的抗ウイルス剤(ペグ化インターフェロンおよびリバビリンなど)と併用してもよい)を含むものである。かかる多重相処置レジメンでは、後述するウイルス応答時点に導入処置期間を含めない;そうではなく、これは、直接的抗ウイルス療法での処置の長さを示す。
【0056】
例えば、ペグ化インターフェロン−αとリバビリンを含む間接的抗ウイルス併用療法の状況における「迅速ウイルス応答」または「RVR」は、4週間の処置の終了時に血清HCV RNAが検出不可能であることを意味する。
【0057】
「早期ウイルス応答」または「EVR」は、12週間の抗ウイルス療法の終了時における血清HCV RNAの≧2logの減少を意味し、「完全EVR」は、12週間の抗ウイルス療法の終了時に血清HCV RNAが検出不可能であることを意味する。
【0058】
「処置応答終了または「ETR」は、血清HCV RNAが、抗ウイルス療法の終結時、好ましくは、本明細書に記載の任意の処置レジメンの終結時、または規制機関によって承認された処方情報において推奨された任意の処置レジメンの終結時に検出不可能であることを意味する。ETR時点の非限定的な例は12、16、24、36および48週間である。
【0059】
「持続的ウイルス応答」または「SVR」は、抗ウイルス療法の終結時および抗ウイルス療法終了後、最長24週間の時点で血清HCV RNAが検出不可能であることを意味する。一部の実施形態では、SVRは、抗ウイルス療法の終了後、12週間の時点で測定される。また、SVRは、Dr.Steven L.Flamm in the Journal of the American Medical Association,第289巻,No.18,pp.2413〜2417(2003)にも報告されている。
【0060】
ペグ化インターフェロンα/リバビリン併用療法の状況における「低速応答」は、血清HCV RNAが、12週間の抗ウイルス療法の終了時に≧2log減少しているが、なお検出可能であり、24週間の抗ウイルス療法の終了時には血清HCV RNAが検出不可能であることを意味する。
【0061】
「空白応答」は、それぞれ、4週間および12週間の抗ウイルス療法の終了時に血清HCV RNAが<1log減少および/または血清HCV RNAが<2log減少していることを意味する。
【0062】
「無応答」または「NR」は、最低12週間の抗ウイルス療法期間を通して検出可能なHCV RNAが存在することを意味する。無応答表現型は、典型的には、4週間および12週間の抗ウイルス療法の終了時血清HCV RNAが検出可能である場合に割り当てられる。
【0063】
「再発」は、処置応答終了(ETR)後(例えば、限定されないが、ETRの12週間後または24週間後)任意の時点での検出可能なHCV RNAの存在を意味する。
III.本発明のリバビリン誘発性貧血マーカーの有用性
本明細書に記載のRIAマーカーの表現型効果により、さまざまな商業的適用、例えば限定されないが、1種類以上のこのようなマーカーの有無に基づいて選択された患者での治験用または既に承認されたリバビリン薬物の臨床試験、RIAマーカーがない患者を処置するためのリバビリン化合物を含む医薬組成物および薬物製剤、診断方法、および患者が1種類以上のこのようなマーカーを有するかどうかに基づいて患者に薬物療法をあつらえることを伴う薬理遺伝学的処置方法におけるこのようなマーカーの使用が補助される。
【0064】
本明細書における請求項に記載の任意の商業的適用の有用性は、本発明のRIAマーカーの存在と溶血性貧血の発生との相関が、リバビリン化合物を受けた100%の個体において観察されることを要するものでない;また、診断方法またはキットが、どの個体においてもRIAマーカーの有無の測定において特定の度合の特異性または感度を有することを要するものでもなく、本明細書における請求項に記載の診断方法が、どの個体についても該個体がリバビリン化合物に応答して溶血性貧血を有する可能性があることの予測において100%正確であることを要するものでもない。したがって、本発明者らは、本明細書において、用語「測定する」、「測定すること」および「予測すること」は、明白なまたは一定の結果を必要とすると解釈されるべきでない;そうではなく、このような用語は、請求項に記載の方法が大部分の個体に対して正確な結果をもたらすものであること、または任意の所与の個体に対する結果もしくは予測が不正確であるよりは正確である可能性が高いことを意図することを意味するものと解釈されるべきである。
【0065】
好ましくは、本発明の診断方法によって示される結果の精度は、該方法が使用される具体的な適用に対して当業者または規制当局が適当であるとみなし得るものである。同様に、請求項に記載の薬物製剤および処置方法の有用性は、どの個体においても請求項に記載の効果または所望の効果がもたらされることを要するものではない;必要とされるのは、臨床療法士が、適用可能なあらゆる基準に整合する自身の専門的判断を適用する際に、請求項に記載の方法に従って、または請求項に記載の薬物製剤での所与の個体の処置で、請求項に記載の効果が得られる可能性が、該処置または薬物製剤の処方が正当であるとするのに充分に高いと決定することだけである。
【0066】
A.本発明のリバビリン誘発性貧血マーカーの試験
RIAマーカーの有無は、当該技術分野において一般的に使用されている任意のさまざまな遺伝子型分類手法によって検出され得る。典型的には、かかる遺伝子型分類手法では、対象のPSを含む領域または対象のPSに隣接している領域に相補的な1種類以上のオリゴヌクレオチドを使用する。対象の具体的なPSの遺伝子型分類に使用されるオリゴヌクレオチドの配列は、典型的には、該PSのコンテキスト配列に基づいて設計される。表1に特定した任意の多型部位の特定の個体での位置は、対象のPSの周囲の参照コード配列もしくはゲノムDNA配列内の対象のPSの位置、または以下の表2に記載したコンテキスト配列内もしくはその相補配列内のうちの1つの対象のPSの位置に対応する位置である。表2のコンテキスト配列は、2009年10月25日にNCBI SNP Databaseに報告されたものであり、別の対立遺伝子は、以下の命名法で示す:Yは、CまたはTを示し、Sは、GまたはCを示し、Rは、GまたはAを示し、K=GまたはT、M=AまたはC。表1のPSを遺伝子型分類するためのオリゴヌクレオチドの設計に有用な長いコンテキスト配列は、2009年10月26日付けでNCBI SNP Databaseに示されたコンテキスト配列である。
【0067】
【表2】




当業者には認識されるように、特定のPSを含む核酸試料は相補的な二本鎖分子であり得、したがって、同様に、センス鎖上の特定の部位に対する参照は、その相補アンチセンス鎖上の対応する部位も示し得る。同様に、染色体の一方の鎖の両コピー上のPSについて得られた特定の遺伝子型に対する参照は、他方の鎖の両コピー上の同じPSについて得られる相補的な遺伝子型と同等である。したがって、ITPA遺伝子のコード鎖上のrs1127354 PSのA/A遺伝子型は、非コード鎖上の該PSのT/T遺伝子型と同等である。
【0068】
本明細書に記載のコンテキスト配列、ならびにその相補配列は、個体が表1に特定した貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型であるかホモ接合型であるかの判定を可能にする当該技術分野でよく知られた任意のさまざまな方法を用いて、対象のヒト被検体から採取した核酸試料中の表1の多型部位の遺伝子型分類を行うためのプローブおよびプライマーを設計するために使用され得る。かかる方法で使用される核酸分子としては、一般的にRNA、ゲノムDNA、またはRNAから誘導したcDNAが挙げられる。
【0069】
典型的には、遺伝子型分類法は、個体から採取した生物学的試料から調製した核酸試料アッセイし、対象の1つ以上の多型部位に存在するヌクレオチドまたはヌクレオチドペアの実体を調べることを伴う。核酸試料は、事実上、任意の生物学的試料から調製され得る。例えば、簡便な試料としては、全血血清、精液、唾液、涙、糞便、尿、汗、口内物質、皮膚および髪が挙げられる。体細胞は、
対象のPSに存在する両方の対立遺伝子の実体の決定が可能であるため好ましい。
【0070】
核酸試料は、当業者に知られた任意の手法を用いて解析のために調製され得る。好ましくは、かかる手法は、核酸分子内の所望の多型部位(1つまたは複数)の遺伝子型を判定するのに充分純粋なゲノムDNAの単離がもたらされるものである。該判定の感度および特異性を向上させるため、多くの場合、核酸試料から、遺伝子型分類するPSを含む標的領域を増幅させることが望ましい。核酸の単離および増幅手法は、例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(2001)において知得され得る。
【0071】
当業者に知られた任意の増幅手法が本発明の実施に使用され得、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手法が挙げられる。PCRは、当業者に知られた材料および方法を用いて行われ得る(概要は,PCR Technology:Princzals and Applications for DNA Amplification(H.A,Erlich編,Freeman Press,NY,N.Y.,1992);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編,Academic Press,San Diego,Calif.,1990);Matillaら,Nucleic Acids Res.19:4967(1991);Eckertら,PCR Methods and Applications 1:17(1991);PCR(McPhersonら編,IRL Press,Oxford);および米国特許第4,683,202号を参照。他の適当な増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace,Genomics 4:560(1989)およびLandegrenら,Science 241:1077(1988)参照)、転写増幅(Kwohら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1 173(1989))、自家持続配列複製(Guatelliら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA、87:1874(1990));等温法(Walkerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:392−6(1992));ならびに核酸系配列増幅(NASBA)が挙げられる。
【0072】
増幅した標的領域をアッセイし、標的領域内のPSに存在する少なくとも一方の対立遺伝子の実体を調べる。遺伝子座の両方の対立遺伝子が増幅標的において提示される場合、あるPSにおいてホモ接合型である個体では、該PSにおいて1つの対立遺伝子だけが検出されるが、個体が、該PSについてヘテロ接合型である場合、2つの異なる対立遺伝子が検出されることが当業者には容易に認識されよう。
【0073】
対立遺伝子の実体は、直接(正の同定として知られている)、または参照によって(負の同定と称される)特定され得る。例えば、SNPが、参照集団においてグアニンまたはシトシンであることがわかっている場合、PSは、該部位においてホモ接合型である個体ではグアニンもしくはシトシンのいずれかである、または該個体が、該部位においてヘテロ接合型である場合、グアニンとシトシンの両方である、と肯定的に判定される。あるいはまた、PSは、グアニン(したがって、シトシン/シトシン)でない、またはシトシン(したがって、グアニン/グアニン)でないと否定的に判定され得る。
【0074】
個体から採取した核酸試料のPSの対立遺伝子または対立遺伝子ペア(例えば、SNPの場合は2つのヌクレオチド)の特定は、当業者に知られた任意の手法を用いて行われ得る。好ましい手法は、最小限の試料の取り扱いで多数のPSの迅速で正確なアッセイが可能なものである。適当な手法の一例としては、限定されないが、増幅した標的領域の直接DNA配列決定、キャピラリー電気泳動、対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーション、一本鎖コンホメーション多型解析、変性勾配ゲル電気泳動、温度勾配電気泳動、ミスマッチ検出;核酸アレイ、プライマー特異的伸長、タンパク質検出、および当該技術分野でよく知られた他の手法が挙げられる。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning;A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(2001 );Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,New York)(1997);Oritaら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86,2766−2770(1989);Humphriesら,MOLECULAR DIAGNOSIS OF GENETIC DISEASES,Elles編,pp.32 1−340,1996;Wartellら,Nucl.Acids Res.18:2699−706(1990);Hsuら(1994)Carcinogenesis 15:1657−1662;Sheffieldら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:232−6(1989);Winterら,Proc.Natl Acad.Sci.USA 82:7575(1985);Myersら(1985)Nature 313:495;Rosenbaum and Reissner(1987)Biophys Chem.265:12753;Modrich,Ann.Rev.Genet.25:229−53(1991);米国特許第6,300,063号;同第5,837,832号;同第5,459,039号;およびHuSNP Mapping Assay,reagent kit and user manual,Affymetrix Part No.90094(Affymetrix,Santa Clara,CA)を参照のこと。
【0075】
好ましい実施形態では、PSの対立遺伝子(1つまたは複数)の実体は、ポリメラーゼ媒介性プライマー伸長法を用いて調べる。かかる方法がいくつか特許および科学文献において報告されており、「遺伝子ビット解析(Genetic Bit Analysis)」法(国際公開第92/15712号)およびリガーゼ/ポリメラーゼ媒介性遺伝子ビット解析(米国特許第5,679,524号)が挙げられる。関連する方法が、国際公開第91/02087号、同第90/09455号、同第95/17676号、ならびに米国特許第5,302,509号および同第5,945,283号に開示されている。該多型の相補配列を含む伸長プライマーは、米国特許第5,605,798号に記載の質量分析によって検出され得る。
【0076】
別のプライマー伸長法は、対立遺伝子特異的PCRを使用するものである(Ruano,G.ら,Nucl.Acids Res.17:8392(1989);Ruano,G.ら,Nucl.Acids Res.19:6877−82(1991); 国際公開第93/22456号;Turkiら,J.Gun.Invest.95:1635−41(1995))。また、国際公開第89/10414号に記載の対立遺伝子特異的プライマーの組を使用し、核酸の多数の領域を同時に増幅させることにより、多数のPSが調べられ得る。
【0077】
多型を特定および解析するためのまた別のプライマー伸長法は、付加塩基の標識とプライマーの標識間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)とカップリングさせた蛍光標識プライマーの単一塩基伸長(SBE)を使用するものである。典型的には、該方法(Chenら,Proc.Nat.Acad.Sci.94:10756−61(1997)に記載されたものなど)では、5’末端を5−カルボキシフルオレセイン(FAM)で標識した遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドプライマーが使用される。この標識プライマーは、3’末端が、対象の多型部位に直接隣接するように設計される。標識プライマーが遺伝子座にハイブリダイズし、標識プライマーの単一塩基伸長が、デオキシリボヌクレオチドが存在しないことを除いて、蛍光標識ジデオキシリボヌクレオチド(ddNTP)により色素ターミネータ(terminator)配列決定様式で行われる。標識プライマーの波長での励起に応答した添加ddNTPの蛍光の増大を使用し、付加ヌクレオチドの実体を推測する。
【0078】
好ましい遺伝子型分類アッセイは、TaqMan(登録商標) SNP Genotyping Assay(Applied Biosystems製)またはほぼ同じ信頼性、精度および特異性を有するアッセイである。
【0079】
上記の方法ではすべて、任意のPSの対立遺伝子(1つまたは複数)の実体を検出するために設計されたアッセイの精度および特異性は、典型的には、該PSの対立遺伝子(1つまたは複数)の実体が既知であるDNA試料でアッセイを行うことにより確認する。好ましくは、考えられ得る各対立遺伝子を提示する試料を確認プロセスに含める。常染色体上およびX染色体上のものなどの二倍体遺伝子座では、確認試料としては、典型的には、当該PSの主対立遺伝子についてホモ接合型である試料、当該PSの副対立遺伝子についてホモ接合型である試料、および当該PSにおいてヘテロ接合型である試料が挙げられる。また、このような確認試料は、典型的には、アッセイを試験試料(すなわち、当該PSの対立遺伝子(1つまたは複数)の実体が未知である試料)において行う場合に対照として含められる。また、アッセイの特異性は、試験試料のアッセイ結果を異なる型のアッセイを用いて同じ試料で得られた結果と比較することによっても確認され得る(例えば、対象のPSを含んでいると考えられる増幅標的領域の配列を決定し、決定された配列を、当該技術分野で認められたコンテキスト配列(本明細書に示したコンテキスト配列など)と比較することにより)。
【0080】
正確なゲノム位置がアッセイ対象になることを確立するために必要なコンテキスト配列の長さは、標的領域内の配列の特殊性に基づいて異なる(例えば、他のゲノム領域内に1つ以上の高度に相同な配列が存在することがあり得る)。当業者は、既知の手法(公に入手可能な配列データベースに対してコンテキスト配列をブラスティング(blasting)することなど)を用いて、任意のPSに対するコンテキスト配列の適切な長さを容易に決定することができよう。増幅標的領域(これにより、第1レベルの特異性が示される)では、既知試料のPSの各側の約30〜60塩基のコンテキスト配列を調べることが、典型的には、アッセイの設計が対象のPSに特異的であることを確保するのに充分である。場合によっては、確認済のアッセイで試験試料について明白な結果が得られないことがあり得る。これは、通常、試料が不充分な純度または量のDNAを有する結果であり、通常、DNA試料を再度精製もしくは再単離すること、または試料を異なる型のアッセイを用いてアッセイすることにより明白な結果が得られる。
【0081】
さらに、特定のRIAマーカーの有無の判定が必要とされる本明細書に記載の任意の方法を実施する際、またはRIAマーカーのPSの個体の遺伝子型を得る際には、かかる活動は、患者が目的のマーカーを有するかどうかを判定するための患者の遺伝子組成に関する充分な情報を含むデータ集積体を参考にすることにより行われ得る。好ましくは、データ集積体は、個体にどのようなRIAマーカー(1種類または複数種)が存在するか存在しないかが列挙されたものである。データ集積体としては、コンピュータまたは他の電子媒体もしくは非電子媒体(適切な情報または遺伝子データを保存することができるもの)によってアクセス可能な個々の患者の記録、医療データカード、ファイル(例えば、ASCIIフラットファイル)が挙げられ得る。本明細書で用いる場合、医療データカードは、携帯型保存デバイス、例えば、磁気データカード、スマートカード(これは、オンボード型プロセッシングユニットを有し、Siemens(Munich Germany)などの供給元から販売されている)、またはフラッシュメモリカードである。データ集積体がコンピュータによってアクセス可能なファイルである場合;かかるファイルを、種々の媒体上、例えば:サーバー、クライアント、ハードディスク、CD、DVD、個人用のデジタルアシスタント、例えば、Palm Pilot テープ、ジップディスク、コンピュータの内部ROM(読み出し専用メモリ)またはインターネットもしくはワールドワイドウェブ上に存在させてもよい。コンピュータによってアクセス可能なファイルの保存用の他の媒体は、当業者に自明であろう。
【0082】
また、本発明では、個体が、表1に示した任意のSNPについて貧血対立遺伝子と高い連鎖不平衡(LD)である異なる遺伝子座に対立遺伝子(例えば、ヌクレオチド)を有するかどうかを判定することにより、RIAマーカーの試験が行われ得ることを想定する。同じ染色体上の異なる遺伝子座上の2つの特定の対立遺伝子は、一方の遺伝子座の該対立遺伝子の一方の存在によって他方の遺伝子座の他方の対立遺伝子の存在が予測される傾向にある場合、LDであるという。かかる変異(これを、本明細書では連鎖変異または代理(proxy)変異と称する)は、対象の貧血対立遺伝子と高LDである任意の型の変異(例えば、SNP、挿入または欠失)であり得る。
【0083】
連鎖変異は、表1の任意のSNPの貧血対立遺伝子と、染色体領域20p13または第20染色体上のどこかに存在する多型部位の候補連鎖対立遺伝子との連鎖不平衡(LD)の度合を調べることにより容易に特定される。候補連鎖変異は、現在既知の多型の対立遺伝子であってもよい。他の候補連鎖変異は、当業者により、多型を見い出すための当該技術分野でよく知られた任意の手法を用いて容易に特定され得よう。
【0084】
表1の貧血対立遺伝子と候補連鎖変異間のLDの度合は、当該技術分野で知られた任意のLD測定法を用いて測定され得る。ゲノム領域におけるLDパターンは、適切に選択された試料において、任意の2つの対立遺伝子(例えば、異なるPSのヌクレオチド同士)が連鎖不平衡であるかどうかを判定するための当該技術分野で知られた種々の手法を用いて経験的に容易に測定される(例えば、GENETIC DATA ANALYSIS II,Weir,Sineuer Associates,Inc.Publishers,Sunderland,MA 1996参照)。当業者には、どのLD測定法が具体的な集団試料サイズおよびゲノム領域に最良に適しているかが容易に選択され得よう。最も多くの場合で使用される連鎖不平衡測定法の一例はrであり、これは、Devlinら(Genomics,29(2):311−22(1995))に記載された式を用いて計算される。rは、第1の遺伝子座の対立遺伝子Xによって、同じ染色体上の第2の遺伝子座の対立遺伝子Yの存在が、どれだけ良好に予測されるかの測定値である。この測定値は、予測が完璧な場合でのみ(例えば、Yが存在する場合のみX)1.0になる。
【0085】
好ましくは、連鎖変異の遺伝子座は、ゲノム領域内の約100キロベース、より好ましくは任意の表1のPSにまたがる約10kbである。他の連鎖変異は、貧血対立遺伝子とのLDが、適当な参照集団で測定したとき、少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.80、さらにより好ましくは少なくとも0.85または少なくとも0.90、なおより好ましくは少なくとも0.95、および 最も好ましくは1.0のr値を有するものである。このr測定に使用される参照集団は、一般的な集団、リバビリン化合物を使用している集団、リバビリン化合物が活性を有する特定の病状(インターフェロンαを併用する慢性HCV感染など)と診断された集団、もしくは構成員が同じ人種集団(コーカサス系、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系、ラテン系、先住アメリカ人など)に属していると自己意識している集団、またはこれらのカテゴリーの任意の組合せであり得る。好ましくは、参照集団は、リバビリン化合物での処置対象の患者集団の遺伝的多様性を反映している集団である。
【0086】
一部の実施形態では、医師が、患者が表1の1つ以上の多型部位に少なくとも1つの貧血対立遺伝子を有するかどうかを判定するために設計された診断試験を指図することにより、患者が本明細書に記載のRIAマーカーを有するかどうかを判定する(またはRIAマーカーのPSの個体の遺伝子型を得る)。好ましくは、該試験により、両方の対立遺伝子の実体、すなわち、このPSの遺伝子型が決定される。一部の実施形態では、試験を行う実験室で、患者から採取した生物学的試料(血液試料または口腔内スワブなど)から核酸試料を調製する。一部の実施形態では、患者の血液試料を医師もしくは医師スタッフの構成員または技術者が、診断試験所で吸引採取する。一部の実施形態では、患者に、口腔内部から口腔内スワブを採取するためのキットを提供し、次いで、患者は、それを医師スタッフ構成員に渡すか、または直接診断試験所に郵送する。
【0087】
一部の実施形態において、試験を行う実験室では、試料が試験される個体の実体が知らされていない;すなわち、実験室が受領した試料は、実験室に送られる前になんらかの様式で無記名にされている。例えば、試料は、単に番号またはなんらかの他のコード(「試料ID」)によって識別され得、診断方法の結果は、試料IDを用いて試験を依頼した団体に報告され得る。好ましい実施形態では、個体の実体と個体の試料間の関係は個体または個体の医師のみに知らされる。
【0088】
一部の実施形態では、試験結果が得られた後、試験を行う実験室で、貧血対立遺伝子が遺伝子型分類した多型部位に存在するのか存在しないのかを示す、好ましくは患者が貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型であるのかホモ接合型であるのかを示す試験報告を作成する。一部の実施形態では、試験報告は、試験を行う実験室で作成された書面であり、患者または患者の医師に、ハードコピーとして、または電子メールによって送付される。他の実施形態では、試験報告は、コンピュータプログラムによって作成され、医師の診療所のビデオモニターに表示される。
【0089】
また、試験報告は、患者または患者の医師または医師の診療所の許可された従業員に対する試験結果の直接口頭伝達を含むものであってもよい。同様に、試験報告は、医師が患者のファイルに作成した試験結果の記録を含むものであってもよい。
【0090】
好ましい一実施形態では、患者が貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、試験報告は、さらに、患者が試験でリバビリン誘発性貧血と関連している遺伝子マーカーについて陽性であったことを示すものであり、一方、該個体が、他方の対立遺伝子についてホモ接合型である場合、試験報告は、さらに、患者が試験でリバビリン誘発性貧血と関連している遺伝子マーカーについて陰性であったことを示すものである。一部の実施形態では、試験結果にはリバビリン化合物に応答して重度の貧血を有する確率スコアが含まれ、これは、該当疾患集団の種々の患者のパラメータ(例えば、年齢、性別、リバビリン用量/キログラム、ベースラインヘモグロビン濃度)に加重したモデルでの実験により誘導される。各パラメータに付与される加重は、該当疾患集団のリバビリン化合物に応答して示される貧血の個体間のばらつきの説明のその他のパラメータと比べたその寄与に基づいたものである。この貧血確率スコアは、医師により、患者に対する治療または処置レジメンを選択する際の指針として使用され得る。例えば、慢性HCV感染では、リバビリン誘発性貧血と関連している患者のパラメータとしては、年齢、性別、リバビリン用量/キログラム、およびベースラインヘモグロビン濃度に加えて、肝硬変の存在が挙げられる。
【0091】
典型的には、個体は、リバビリン療法の開始前にRIAマーカーの存在について試験され得るが、かかる試験は、個体に初回用量のリバビリン化合物を投与した後の任意の時点で行われ得ることが想定され、好ましい試験時点は、リバビリン化合物での処置の2週間後、3週間後または4週間後である。例えば、処置担当医師は、患者が充分に応答しなかったことを懸念することがあり得、個体がより高用量のリバビリンに耐容し得るかどうかをRIAマーカーの有無について試験することにより判定すること所望する。一部の実施形態では、医師により、個体をRIAマーカーについて試験すべきか否かが判定され得る。例えば、医師により、試験の結果がRIAマーカーについて陰性である患者に指示されたリバビリン化合物を含む医薬組成物を処方すべきかどうかが検討され得る。一部の実施形態では、医師は、RBV誘発性貧血に反対作用する補助療法薬(エポエチンアルファなど)を処方するかどうかの判断の補助のために、患者のRIAマーカー状態を知ること望む場合があり得る。
【0092】
任意の個体患者の処置にRIAマーカーの試験結果をどのように使用するかを決定する際、医師はまた、他の関連状況、例えば、処置対象の疾患病状、患者の年齢、体重、性別、ベースラインヘモグロビン濃度、遺伝的背景および人種を考慮し、治療および/または該治療での処置レジメンの選択の際、このような要素と遺伝子マーカー試験結果の組合せのインプットを、医師の指針を補助するモデルに含めることもあり得る。
【0093】
表1の任意のRIAマーカーの有無の検出は、この目的のために特別に設計されたキットを用いて行われ得る。一実施形態において、本発明のキットは、表1の少なくとも1つのマーカーのPSの各対立遺伝子の特定のために設計された一組のオリゴヌクレオチドを含むものである。好ましい実施形態では、PSは、rs6051702、rs3810560、rs11697114、rs3310、rs964569、rs1127354またはrs7270101である。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドの組は、表1のPSの2つ以上の任意の組合せの対立遺伝子を特定するために設計される。好ましい実施形態では、PSの組合せは、少なくともrs1127354多型部位とrs7270101多型部位を含むものである。別の好ましい実施形態では、PSの組合せは、rs6051702、rs3810560、rs11697114、rs3310およびrs964569の各々を含むものである。
【0094】
一部の実施形態では、キットのオリゴヌクレオチドは、対立遺伝子特異的プローブまたは対立遺伝子特異的プライマーのいずれかである。他の実施形態では、キットは、プライマー−伸長オリゴヌクレオチドを含むものである。なおさらなる実施形態では、オリゴヌクレオチドの組は、対立遺伝子特異的プローブ、対立遺伝子特異的プライマーおよびプライマー−伸長オリゴヌクレオチドの組合せである。キットは、リバビリンに対する有益および/または有害な応答と関連している他の遺伝子マーカーの存在を検出するために設計されたオリゴヌクレオチドを含むものであってもよい。
【0095】
本発明のキットのオリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの標的領域に特異的にハイブリダイズすることができるものでなければならない。本明細書で用いる場合、特異的ハイブリダイゼーションは、オリゴヌクレオチドが、標的領域と特定のハイブリダイズ条件下で逆平行の二本鎖構造を形成するが、同じハイブリダイズ条件下で該ポリヌクレオチドとともにインキュベートした場合、非標的領域とはかかる構造を形成しないことを意味する。一部の実施形態では、標的領域は対象のPSを含み、一方、他の実施形態では、標的領域は、PSに隣接した1〜10ヌクレオチドに存在する。
【0096】
キットの各オリゴヌクレオチドの組成および長さは、PSを含むゲノム領域の性質ならびに該オリゴヌクレオチドを用いて行われるアッセイの型に依存し、当業者によって容易に決定される。
【0097】
例えば、アッセイで使用するポリヌクレオチドは、増幅産物を構成するものであり得、したがって、該オリゴヌクレオチドの必要とされる特異性は、個体から単離したゲノムまたはcDNA内の標的領域ではなく増幅産物内の標的領域へのハイブリダイゼーションに関するものである。別の例として、キットが2つ以上の多型部位を同時に遺伝子型分類するために設計されたものである場合、キットの各PSのオリゴヌクレオチドの融解温度は、典型的には、狭い範囲内、好ましくは約5℃未満、より好ましくは約2℃未満である。
【0098】
一部の実施形態では、キットの各オリゴヌクレオチドは、その標的領域の完璧な相補配列である。オリゴヌクレオチドは、一方の分子のどのヌクレオチドも、他方の分子の対応する位置のヌクレオチドに相補的である場合、別の核酸分子と「完璧」または「完全」な相補配列であるという。完璧に相補的なオリゴヌクレオチドは多型の検出に好ましいが、完全な相補性からの逸脱も想定され、その場合、かかる逸脱は、該分子が上記に定義した標的領域に特異的にハイブリダイズすることを妨げないものである。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、非相補的な断片をその5’末端に有し、該プライマーの残部は標的領域に完全に相補的なものであり得る。あるいはまた、非相補的なヌクレオチドは、プローブまたはプライマー内に散在していてもよいが、得られるプローブまたはプライマーはなお、標的領域に特異的にハイブリダイズすることができるものとする。
【0099】
一部の好ましい実施形態では、キットの各オリゴヌクレオチドは、その標的領域にストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で特異的にハイブリダイズする。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は配列依存性であり、状況に応じて異なる。一般的に、ストリンジェント条件は、規定のイオン強度とpHにおいて具体的な配列の熱融点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度下での)。標的配列は、一般的に過剰に存在しているため、Tmでは、プローブの50%は平衡状態を占める。
【0100】
典型的には、ストリンジェント条件としては、pH7.0〜8.3で少なくとも約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)の塩濃度が挙げられ、温度は、短いオリゴヌクレオチドプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約25℃である。また、ストリンジェント条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成され得る。例えば、5×SSPE(750mM NaCl,50mM リン酸Na,5mM EDTA,pH7.4)および25〜30℃の温度の条件が、対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションに適している。さらなるストリンジェント条件は,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989),第7,9および11章,ならびにNUCLEIC ACID HYBRIDIZATION,A PRACTICAL APPROACH,Haymesら,IRL Press,Washington,D.C.,1985を参照するとよい。
【0101】
ストリンジェントハイブリダイゼーション条件の非限定的な一例としては、4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(あるいはまた、4×SSC+50%ホルムアミド中、約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)の後、1×SSC中、約65〜70℃での1回以上の洗浄が挙げられる。高度ストリンジェントハイブリダイゼーション条件の非限定的な一例としては、1×SSC中、約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(あるいはまた、1×SSC+50%ホルムアミド中、約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)後、0.3×SSC中、約65〜70℃での1回以上の洗浄が挙げられる。還元型ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の非限定的な一例としては、4×SSC中、約50〜60℃でのハイブリダイゼーション(あるいはまた、6×SSC+50%ホルムアミド中、約40〜45℃でのハイブリダイゼーション)後、2×SSC中、約50〜60℃での1回以上の洗浄が挙げられる。また、上記の値の中間範囲(例えば、65〜70℃または42〜50℃)のストリンジェンシー条件も本発明に包含されることを意図する。SSPE(l×SSPEは、0.15M NaCl、1.0mM NaHP0、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)の代わりにハイブリダイゼーションおよび洗浄バッファーに使用してもよく;洗浄は、ハイブリダイゼーションが終了するたびに15分間行う。
【0102】
50塩基対長未満であることが予測されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(T)より5〜10℃低いのがよく、ここで、Tmは、下記の式に従って求められる。18塩基対長未満のハイブリッドでは、T(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)である。18〜49塩基対長のハイブリッドでは、T(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)であり、式中、Nは、ハイブリッドの塩基の数であり、[Na+]はハイブリダイゼーションバッファーのナトリウムイオン濃度である(1×SSCの[Na+]=0.165 M)。
【0103】
本発明のキットのオリゴヌクレオチドは、リン酸化状態のリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、および非環状ヌクレオチド誘導体、ならびに他の機能的に等価な誘導体のいずれかで構成されたものであってもよい。あるいはまた、該オリゴヌクレオチドはリン酸無含有主鎖を有するものであってもよく、該主鎖は、例えば、カルボキシメチル、アセトアミド、カルバメート、ポリアミド(ペプチド核酸(PNA))などの結合で構成されたものであり得る(Varma,MOLECULAR BIOLOGY AND BIOTEChNOLOGY,A COMPREHENSIVE DESK REFERENCE,Meyers編,pp.6 17−20,VCH Publishers,Inc.,1995)。該オリゴヌクレオチドは、化学合成によって当該技術分野で知られた任意の適当な方法論を用いて調製されたものであってもよく、生物学的試料から例えば制限消化によって誘導したものであってもよい。該オリゴヌクレオチドは、当該技術分野で知られた任意の手法により検出可能な標識を含むものであってもよく、放射性標識、蛍光標識、酵素標識、タンパク質、ハプテン、抗体、配列タグなどの使用が挙げられる。キットのオリゴヌクレオチドは、解析物特異的試薬(ASR)として製造および市販されているものであってもよく、承認済の診断用デバイスの構成要素を構成しているものであってもよい。
【0104】
一部の実施形態では、キットのオリゴヌクレオチドの組は、2つ以上の多型部位の対立遺伝子の実体の同時判定を可能にするために異なる標識を有する。また、該オリゴヌクレオチドは、固相表面上、例えば、マイクロチップ、シリカビーズ(Illumina,San Diego,CAのBeadArray技術など)、またはガラススライド(例えば、国際公開第98/20020号および同第98/20019号参照)に固定化させたオリゴヌクレオチドの整列アレイを構成しているものであってもよい。かかる固定化オリゴヌクレオチドを含むキットは、さまざまな多型検出アッセイ、例えば限定されないが、プローブハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸長アッセイが行われるように設計され得る。
【0105】
また、本発明のキットに、他の試薬、例えば、ハイブリダイゼーションバッファー(例えば、該オリゴヌクレオチドを対立遺伝子特異的プローブとして使用する場合)またはジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP;例えば、多型部位の対立遺伝子をプライマー伸長によって検出する場合)を含めてもよい。また、ポリメラーゼ媒介性遺伝子型分類アッセイにおける使用のための設計されるキットは、ポリメラーゼと、実施されるポリメラーゼ媒介性アッセイのために最適化された反応バッファーを含むものであり得る。
【0106】
また、本発明のキットに、特異的ハイブリダイゼーションが起こった時点、または特異的ポリメラーゼ媒介性伸長が起こった時点を検出する試薬を含めてもよい。かかる検出試薬としては、ビオチン−または蛍光−タグ化オリゴヌクレオチドあるいはddNTPおよび/または酵素標識抗体および該酵素の作用を受けると検出可能なシグナルを生じる1種類以上の物質が挙げられ得る。
【0107】
当業者には、該アッセイを行うためのオリゴヌクレオチドの組および試薬は、生物学的または化学的活性を保持し、アッセイでの適正な使用を可能にすることが適切な場合は、キット容器内に入れられた別々の収容器にて供給されることが理解されよう。
【0108】
他の実施形態では、キットの各オリゴヌクレオチドおよびすべての他の試薬は、表1の1つ以上のPSの遺伝子型を調べるために設計されたアッセイでの最適な性能のために品質試験が行われる。一部の実施形態では、キットには、判定された遺伝子型を、試験した核酸試料、RIAマーカーの有無に帰属させるためにどのようにして使用するかが記載された使用説明マニュアルが含まれる。
【0109】
一部の好ましい実施形態では、キットのオリゴヌクレオチドの組は対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドである。本明細書で用いる場合、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)という用語は、充分にストリンジェントな条件下で、PSを含む標的領域PSのある対立遺伝子には特異的にハイブリダイズするが、異なる対立遺伝子を含む同領域にはハイブリダイズしないできるオリゴヌクレオチドを意味する。当業者には理解されるように、対立遺伝子特異性は、さまざまな容易に最適化されるストリンジェンシー条件、例えば、塩およびホルムアミド濃度、ならびにハイブリダイゼーション工程と洗浄工程の両方の温度に依存する。
【0110】
ASOプローブおよびプライマーに典型的に使用されるハイブリダイゼーション条件および洗浄条件の例は、Koganら,「Genetic Prediction of Hemophilia A」in PCR PROTOCOLS,A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS,Academic Press,1990、およびRuafloら,Proc.Nati Acad.Sci.USA 87:6296−300(1990)を参照するとよい。
【0111】
典型的には、ASOは、一方の対立遺伝子に完璧に相補的であるが、他方の対立遺伝子に対する単一ミスマッチを含む。ASOプローブでは、単一ミスマッチは、好ましくは、標的領域内の多型部位と整列させた場合、オリゴヌクレオチドプローブの中央の位置内に存在する(例えば、15量体ではだいたい7番目または8番目の位置、16量体では8番目または9の位置、20量体では10番目または11番目の位置)。ASOプライマー内の単一ミスマッチは、3’末端ヌクレオチド、好ましくは3’から2番目のヌクレオチドに存在する。コード鎖または非コード鎖のいずれかにハイブリダイズするASOプローブおよびプライマーも本発明によって想定される。
【0112】
一部の実施形態では、キットは、アッセイ対象の各PSに対する一対の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを含むものであり、この一対の一方の構成員は一方の対立遺伝子(例えば、貧血対立遺伝子)に特異的であり、他方の構成員は他方の対立遺伝子に特異的である。かかる実施形態では、キットのユーザーがアッセイしたPSの遺伝子型を判定することが可能となるように、一対のオリゴヌクレオチドは異なる長さを有する、または異なる検出可能な標識を有するものであり得る。
【0113】
さらに他の好ましい実施形態では、キットのオリゴヌクレオチドはプライマー−伸長オリゴヌクレオチドである。任意のこのようなオリゴヌクレオチドによるポリメラーゼ媒介性伸長の終止ミックスは、該オリゴヌクレオチドの伸長がPSに存在する別の(alternative)ヌクレオチドに応じて、対象のPSで、またはその1塩基後ろで終結するように選択される。
【0114】
一実施形態において、キットは、表1の多型部位の少なくとも1つの遺伝子型分類のための一対の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを含むものである。一実施形態において、該一対の一方のASOプローブは、表2の貧血対立遺伝子のコンテキスト配列と同一であるか、または該配列に完璧に相補的な少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該一対の他方のASOプローブは、表2の他方の対立遺伝子のコンテキスト配列と同一であるか、または該配列に完璧に相補的な少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。好ましい一実施形態では、キットは、rs6051702、rs3810560、rs11697114、rs3310、rs964569、rs1127354およびrs7270101からなる群から選択される少なくとも1つのPSの遺伝子型分類のためのかかるASOプローブを含むものである。別の好ましい実施形態では、キットは、このようなPSの任意の2つ以上、例えば、(a)rs 1127354とrs7270101または(b)rs6051702、rs3810560およびrs11697114の遺伝子型分類のためのかかるASOプローブを含むものである。さらに別の実施形態では、キットは、rs6051702、rs3810560、rs11697114、rs3310、rs964569、rs1127354およびrs7270101の各々の遺伝子型分類のためのかかるASOプローブを含むものである。
【0115】
また別の実施形態では、リバビリン誘発性貧血に対する個体の感受性が、赤血球ITPA活性に対する個体の表現型を調べることにより予測される。この表現型分類法は、リバビリン誘発性貧血のリスクが低い個体を検出するのに有用である。それは、該個体が、rs1127354およびrs7270101以外の多型もしくは変異によって引き起こされる、またはITPA活性レベルに影響を及ぼす他の要素(例えば、喫煙、ダイエット、ステロイド系経口避妊薬および他の薬物,Atanasova S.ら,Ther Drug Monit 29(1);6−10(2007))によって引き起こされるITPA欠損を有するためである。ITPA活性は、個体から採取した血液試料から調製した赤血球溶解物において測定する。ヒト赤血球においてITPA活性を測定するためのアッセイは、報告されており、例えば,Holmes S.L.ら,Clin Chim Acta 97(2−3):143−153(1979);Sumi S.ら,Hum Genet.111:36−370(2002);Bireau,J.ら,Nucleosides Nucleotide Nucleic Acids 25(9−11):1129−1132(2006);およびShipkovaら,Clin.Chem.52(2):240−247(2006)を参照のこと。また、rs1127354およびrs7270101の種々の遺伝子型のITPA活性レベルも報告されている:Sumiら(上掲)およびShipkovaら(上掲)。以下の表3は、Shipkovaら(上掲)に記載されたアッセイおよびデータを用いて予測され得るrs1127354およびrs7270101多型部位の異なる遺伝子型のITPase活性の中央値と範囲を示す。
【0116】
【表3】

好ましい実施形態では、≧125μmol IMP/g Hb×h(Shipkovaら(上掲)に記載のアッセイで測定時)の赤血球ITPA活性を有する個体は、rs1127354に対するヘテロ接合型RIAマーカー(CA遺伝子型)を有する患者によって示されるものと同等の度合のリバビリン誘発性貧血を示すと予測され得る。
【0117】
B.医薬組成物、薬物製剤および処置レジメン
本明細書に記載のいずれかの方法および製剤での試験対象または処置対象の個体は、リバビリン化合物での処置を必要とするヒト被検体である。一部の実施形態では、個体は、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患と診断された個体、または該疾患の症状を示す個体である。他の実施形態では、使用されるリバビリン化合物は、個体が診断された適応症の処置における使用が承認されたものである。また他の実施形態では、使用されるリバビリン化合物は、診断された疾患または発現した症状(1つまたは複数)の処置に承認されていないが、処方する医師が、個体の処置に有用であろうと考える薬物である。
【0118】
本発明の医薬組成物、薬物製剤および方法に使用されるリバビリン化合物は、赤血球内で代謝されてRTPと構造的に類似した三リン酸塩を生成させる任意のヌクレオシド類似体(任意のリバビリン誘導体を含む)であり得る。したがって、本発明に有用なリバビリン化合物としては、限定されないが、インビボでリバビリンに代謝されるリバビリンプロドラッグが挙げられる。
【0119】
かかるリバビリンプロドラッグとしては、米国特許6,673,773に記載のリバビリン誘導体が挙げられ、好ましいリバビリンプロドラッグは、式I:
【0120】
【化1】

を有するものである。
【0121】
別の好ましいリバビリンプロドラッグはタリバビリン(1−(β−D−リボフラノシル)−l,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド、ビラミジンおよびリバミジンとしても知られている)である。また、タリバビリンのプロドラッグ(国際公開第01/60379号に記載のビラミジンプロドラッグ)も本発明におけるリバビリン化合物として有用である。
【0122】
リバビリン化合物は、経口、静脈内または気道投与のために製剤化され得る。好ましいリバビリン製剤としては、カプセル剤(REBETOL(登録商標)としてSchering−Ploughにより市販)、錠剤(COPEGUSとしてHoffmann La−Rocheにより市販)、吸入用液剤(VIRAZOLE(登録商標)としてValeant Pharmaceuticalsにより市販)、および前述のブランド製剤の全身性型、例えば、RIBASPHERE(登録商標)錠剤(Three Rivers Pharmaceuticalsによって市販)、カプセル剤および錠剤(Teva Pharmaceuticals Industries Ltdによって市販)ならびにリバビリンカプセル剤および錠剤(Sandozによって市販)が挙げられる。
【0123】
本発明に従って処置され得る疾患および病状は、一般的に、リバビリン化合物での処置に感受性のもの、すなわち、リバビリン化合物により、該疾患を有する患者群において臨床的に測定可能な有益な結果(例えば、HCV感染患者でのウイルス負荷量の低減)が得られるものである。リバビリン化合物での処置に感受性である例示的な疾患および病状としては、限定されないが、広範なRNAおよびDNAウイルスによって引き起こされるウイルス感染、例えば限定されないが、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、A型、B型およびC型インフルエンザウイルス(H1N1および他のブタインフルエンザウイルスを含む)、ヒトパラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」);SARSコロナウイルス、麻疹ウイルス、天然痘ウイルス、ラッサ熱ウイルス;韓国型出血熱ウイルス、クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、セントルイス脳炎ウイルス、ハンタウイルス、ポリオ、イヌジステンパーウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、パピローマウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、ヒトTリンパ好性ウイルス−1型および2型、ヒトロタウイルスならびに狂犬病ウイルスが挙げられる。好ましくは、該疾患は、リバビリン化合物が米食品医薬品局などの規制機関によって承認されたものである。
【0124】
好ましい実施形態では、ウイルス感染がHCVであり、リバビリン化合物が、少なくとも1種類の他の抗ウイルス剤、例えば、インターフェロン(インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンλ(例えば、IFN−λ1、IFN−2またはIFN−λ3)およびインターフェロンβ(IFN−β)など)と併用して使用される。特に好ましい実施形態では、ウイルス感染が慢性HCV感染であり、少なくとも1種類の他の抗ウイルス剤が組換えIFN−2aもしくはIFN−α2b、またはアミノ酸配列が、各位置において種々の天然IFN−α亜型の該位置に最も一般的に存在するアミノ酸を選択することにより設計された任意のコンセンサスIFN−αタンパク質である。
【0125】
本発明の方法でリバビリン(ribavrin)化合物との併用における使用に特に好ましいIFN−α組成物は、政府の規制機関によって承認済のインターフェロンα−2製剤、例えば、以下の任意のもの:Roferon(登録商標)−A(インターフェロン−α2A,組換え)(Hoffmann La−Roche,Nutley N.J. によって市販))、およびそのペグ化型、例えば、PEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンα−2a)(Hoffmann La−Roche,Nutley N.J.によって市販));INTRON(登録商標)A(インターフェロンα−2b、組換え)(Schering Corporation,Kenilworth,NJによって市販))およびそのペグ化型、例えば、Peglntron(登録商標)(ペグインターフェロンα−2b);(INFERGEN(登録商標)(インターフェロンalphacon−1)、コンセンサスIFN−α(最初にAmgen,Thousand Oaks,CAによって開発、現在、Three Rivers Pharmaceuticals,Warrendale,PAによって市販)である。本発明における使用に想定される他のインターフェロンとしては:インターフェロンαと非インターフェロンタンパク質との融合体、例えば、例えば、ZALBIN(登録商標)(アルブインターフェロンα−2b)(これは、Human Genome Sciences,Rockville,MDおよびNorvartis,Basel,Switzerland;Locteronによって開発され、制御放出インターフェロンα治験製剤(Biolex/OctoPlus)である);ならびにBelerofon(登録商標)(天然αインターフェロンの単一アミノ酸変異型、Nautilus Biotechによって操作)が挙げられる。また、上記に挙げた任意のIFN−α組成物は、異なる商標名、例えば、VIRAFERONPEG(登録商標)ペグインターフェロンα−2b(これは、Peglntron(登録商標)ペグインターフェロンα−2bと同じ組成である)で販売されている場合があり得る。
【0126】
PEGASYS(登録商標)ペグインターフェロンα−2aは、1つの40kDaの分枝PEG−ポリマーをアミド結合によってインターフェロンα−2b分子のリジン側鎖に共有結合させることにより得られる。例えば、Dhalluin,C.ら,Bioconjugate Chem.16:504−517(2005)および米国特許第7,201,897号を参照のこと。得られる製剤は、主に6種類のモノペグ化位置異性体の混合物である(Dhalluin,C(上掲)、Foser,S.ら,J.Prot.Exp.Purif.30:78−87[2003])。PEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンα−2a)およびそのバイオシミラーを、本明細書では、bPEG40K−インターフェロンα−2aとも称する。
【0127】
Peglntron(登録商標)ペグインターフェロンα−2bは、組換えインターフェロン−α2bを、12,000Daの平均分子量を有するスクシンイミジルカーボネートPEG(SC−PEG12k)と、100mMリン酸ナトリウム(pH6.5)中で共有結合的に反応させることにより得られる(例えば、Grace,M.ら,J.Interferon Cytokine Res.21:1103−1115(2001);Wang,Y.S.ら,Adv.Drug Delivery Rev.54:547−570(2000);および米国特許第5,951,974号参照)。得られる製剤は、主に、PEG 12kがインターフェロンα−2bの異なる残基にウレタン結合によって結合され、大部分の位置異性体がヒスチジン34にウレタン結合を有するモノペグ化種の混合物である(例えば、Wang,Y.S.ら(上掲)および米国特許第5,951,974号参照)。Peglntron(登録商標)ペグインターフェロンα−2bおよびそのバイオシミラーは、本明細書においてPEG12k−インターフェロンα−2bとも称する。
【0128】
本発明の方法において使用され得る既に承認済の、および現在市販されている他のIFN−α製剤としては:Berofor(登録商標)α2(組換えインターフェロンα−2C、Boehringer Ingelheim Pharmaceutical,Inc.,Ridgefield,CT;インターフェロンα−n1、Surniferon(登録商標)(Sumitomo、Japan)として知られた天然αインターフェロンの精製ブレンドまたはWellferon(登録商標)インターフェロンα−nl(INS),Glaxo−Wellcome Ltd.,London、Great Britain;コンセンサスαインターフェロン、例えば、米国特許第4,897,471号および同第4,695,623号(特に、その実施例7、8または9)に記載のもの;ALFERON N Injection(登録商標)[Interferonα−n3(ヒト白血球由来)、Hemispherx Biopharma,Inc.,Philadelphia,PAから入手可能な天然αインターフェロンの多くの種の混合物が挙げられる。
【0129】
本発明に有用な他のインターフェロンα−ポリマーコンジュゲートは、米国特許第4,766、106号、同第4,917,888号、欧州特許出願公開公報番号0236987号、同第0510356号、同第0593868号および同第0809996号ならびに国際公開第95/13090号に記載されている。
【0130】
また、任意の上記の市販のペグ化インターフェロンα製剤、すなわち、PEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンα−2a)およびPeglntron(登録商標)(ペグインターフェロンα−2b)の承認に関連して規制当局に事前に提出された信用できる前臨床および/または臨床データに少なくとも一部基づいて規制機関によって承認済の任意のペグ化インターフェロンα2aまたは2bの医薬組成物も、本発明における使用に想定される。後に承認されたかかる製剤は、規制機関により、既に承認済の製剤のジェネリック、生物学的等価体、バイオシミラーまたは代用薬などの用語で示されるものであり得、該用語は、規制機関によって明示的に規定されている場合もあり、そうでない場合もあり得る。
【0131】
非経口投与が意図されるペグ化インターフェロンαの医薬組成物は、適当なバッファー、例えば、Tris−HCl、酢酸またはリン酸(例えば、二塩基性リン酸ナトリウム/一塩基性リン酸ナトリウム)バッファー、ならびに薬学的に許容され得る賦形剤(例えば、スクロース、トレハロース)、担体(例えば、ヒト血清アルブミン)、毒性薬剤(例えば、NaCl)、保存料(例えば、チメロサール(thimerosol)、クレゾールまたはベンジルアルコール(benylalcohol)、および界面活性剤(例えば、tweenまたはポリソルベート)を含む滅菌注射用水を用いて製剤化され得る。例えば、米国特許第6,180,096号および国際公開第2006/020720号を参照のこと。かかる組成物は、凍結乾燥粉末として2〜8℃の冷蔵下で保存され、使用前に滅菌水を用いて再構成され得る。かかる再構成された水性液剤は、典型的には、再構成から24時間以内に使用されるまでの間の保存時は安定である。例えば、米国特許第4,492,537号;同第5,762,923号および同第5,766,582号を参照のこと。凍結乾燥ペグ化インターフェロン製剤はペン型シリンジシステムにて提供され得、該システムは、一区画に希釈剤(すなわち、滅菌水)を内包し、別の区画に凍結乾燥ペグ化インターフェロン−α粉末を内包するガラスカートリッジを備えたものである。
【0132】
水性ペグ化インターフェロン製剤の例は、米国特許第5,762,923号に記載されている。かかる製剤は、充填済反復用量シリンジ(例えば、インスリンなどの薬物の送達に有用なもの)に保存され得る。典型的な適当なシリンジとしては、ペン型シリンジに取り付けられた充填済バイアルを備えたシステム(Novo Nordiskから入手可能なNOVOLET Novo Penなど)、ならびにユーザーが自分で容易に注射が可能な充填済ペン型シリンジが挙げられる。
【0133】
また、本発明では、リバビリン化合物および上記のいずれかのインターフェロンαを、インターフェロン応答を誘導すると提案されているtoll様受容体(TLR)アゴニストと併用して使用することを想定する。例えば、TLR3、TLR7およびTLR9のアゴニストは、HCVの処置における使用が評価されている。
【0134】
好ましい実施形態では、本発明のRIAマーカーは、規制当局によって慢性HBVまたは慢性HCVへの指示が承認済のインターフェロンα/リバビリン併用療法処置レジメンとともに、特に好ましい実施形態では、Roferon(登録商標)−A(インターフェロン−α2A,組換え)、PEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンα−2a)、INTRON(登録商標)A(インターフェロンα−2b,組換え)およびPeglntron(登録商標)(ペグインターフェロンα−2b)製剤について添付文書に記載された慢性C型肝炎に対する任意の投与レジメンおよび処置レジメンとともに使用される。Peglntron(登録商標)(ペグインターフェロンα−2b)製剤の場合、かかる承認済の併用レジメンは、HCV遺伝子型2または3に慢性的に感染した患者には24週間の治療、およびHCV遺伝子型1に慢性的に感染した患者には48週間までの治療を推奨するものであり、24週間の治療は、欧州では、遺伝子型1感染を有する患者サブセットおよび処置4週目でHCV−RNA陰性であり、処置24週目もHCV−RNA陰性のままである低ウイルス負荷量(<600,000)の患者に承認されている。
【0135】
また、本発明では、リバビリンよりも貧血の可能性が低いヌクレオシド類似体を、IFN−α系レジメンと併用して、RIAマーカーについての試験の結果が陽性である個体のHCV感染の処置のために使用することを想定する。例えば、臨床試験においてタリバビリンとPeglntron(ペグインターフェロンα−2b)で処置した患者は、報告によると、リバビリンとPeglntronで処置した患者よりも、貧血を示した患者が少なかった。
【0136】
また、本発明のRIAマーカーは、1種類以上のさらなる抗ウイルス剤と併用したIFN−α/リバビリン療法での処置時に、最もRBV誘発性貧血を起こしにくい、HCVに慢性的に感染した患者を選択するためにも使用され得る。あるいはまた、RIAマーカーについての試験の結果が陽性である患者には、リバビリン化合物でない1種類以上の抗ウイルス剤が、IFN−αとともに、またはなしで処方され得る。かかる併用処置レジメンに有用な抗ウイルス剤の非限定的な例としては、HCVプロテアーゼ阻害薬、NS3プロテアーゼ阻害薬、HCVポリメラーゼ阻害薬、HCV NS5A阻害薬、IRES阻害薬、NS4B阻害薬、HCVヘリカーゼ阻害薬、HCV進入阻害薬、HCVビリオン生成プロテアーゼ阻害薬、および他のインターフェロンが挙げられる。
【0137】
一実施形態において、抗ウイルス剤はHCVプロテアーゼ阻害薬である。
【0138】
かかる併用レジメンに有用なHCVプロテアーゼ阻害薬は、国際公開第2009/038663号、同第2007/092616号、および同第2002/18369号ならびに米国特許出願公開第2007/0042968号に記載されている。
【0139】
本発明の方法および併用療法に有用な他のHCVプロテアーゼ阻害薬(inhbitior)としては、ボセプレビル(SCH503034)およびSCH 900518(Schering−Plough);テラプレビル(VX−950)、VX−500およびVX−813(Vertex Pharmaceuticals);MK−7009(Merck);ならびにITMN−191(R7227)(Intermune and Roche);TMC−435(Medivir/Tibotec);MK−7009(Merck);GS−9132およびACH−1095(Gilead/Achillon);PHX1766(Phenomix);ABT−450 HCV(Abbott/Enanta Pharmaceuticals);ならびにBILN 2061およびBI 201335(Boehringer Ingelheim)が挙げられる。
【0140】
本発明の方法および併用療法に有用なHCVプロテアーゼ阻害薬(inhbitor)のさらなる例としては、Landroら,Biochemistry,36(31):9340−9348(1997);Ingallinellaら,Biochemistry,37(25):8906−8914(1998);Llinas−Brunetら,Bioorg Med Chem Lett,8(13):1713−1718(1998);Martinら,Biochemistry,37(33):11459−11468(1998);Dimasiら,J Virol,71(10):7461−7469(1997);Martinら,Protein Eng,10(5):607−614(1997);Elzoukiら,J Hepat,27(1):42−48(1997);BioWorld Today,9(217):4(1998年11月10日);米国特許出願公開第2005/0249702号および同第2007/0274951号;ならびに国際公開第98/14181号、同第98/17679号、同第98/17679号、同第98/22496号および同第99/07734号および同第05/087731号に開示されたものが挙げられる。
【0141】
本発明の組成物および方法に有用なHCVプロテアーゼ阻害薬のさらなる例としては、限定されないが、以下の化合物:
【0142】
【化2】


が挙げられる。
【0143】
別の実施形態では、抗ウイルス剤はNS3プロテアーゼ阻害薬である。本発明の方法および本発明の併用療法に有用なNS3セリンプロテアーゼ阻害薬としては、限定されないが、米国特許第7,494,988号、同第7,485,625号、同第7,449,447号、同第7,442,695号、同第7,425,576号、同第7,342,041号、同第7,253,160号、同第7,244,721号、同第7,205,330号、同第7,192,957号、同第7,186,747号、同第7,173,057号、同第7,169,760号、同第7,012,066号、同第6,914,122号、同第6,911,428号、同第6,894,072号、同第6,846,802号、同第6,838,475号、同第6,800,434号、同第6,767,991号、同第5,017,380号、同第4,933,443号、同第4,812,561号および同第4,634,697号;米国特許出願公開第20020068702号、同第20020160962号、同第20050119168号、同第20050176648号、同第20050209164号、同第20050249702号および同第20070042968号;ならびに国際公開第03/006490号、同第03/087092号、同第04/092161号および同第08/124148号に開示されたものが挙げられる。
【0144】
なおさらなる実施形態では、抗ウイルス剤は、HCVポリメラーゼ阻害薬であり、本発明の方法および併用療法に有用なHCVポリメラーゼ阻害薬としては、限定されないが:VP−19744(Wyeth/ViroPharma)、PSI−7851(Pharmasset)、R7128(Roche/Pharmasset)、PF−00868554(Pfizer)、VCH−759およびVCH−916(ViroChern/Vertex)、HCV−796(Wyeth/ViroPharma)、IDX184(Idenix)、NM−283(Idenix/Novartis)、R−1626(Roche)、MK−0608(Isis/Merck)、GS9190(Gilead)、ABT−333(Abbott)、A−848837およびA−837093(Abbott)、GSK−71185(Glaxo SmithKline)、ANA598(Anadys)、GSK−625433(Glaxo SmithKline)、XTL−2125(XTL Biopharmaceuticals)、ならびにNiら,Current Opinion in Drug Discovery and Development,7(4):446(2004);Tanら,Nature Reviews,1:867(2002);およびBeaulieuら,Current Opinion in Investigational Drugs,5:838(2004)、ならびに国国際公開第08/082484号、同第08/082488号、同第08/083351号、同第08/136815号、同第09/032116号、同第09/032123号、同第09/032124号および同第09/032125号に開示されたものが挙げられる。
【0145】
別の実施形態では、抗ウイルス剤はHCV NS5Aプロテアーゼ阻害薬である。本発明の方法および併用療法に有用なHCV NS5Aプロテアーゼ阻害薬の非限定的な例は、AZD2836(A−831)およびAZD7295(A−689)(Arrow Therapeutics);ならびにBMS−790052(Bristol−Myers Squibb)である。
【0146】
一実施形態において、抗ウイルス剤は、NS4Bプロテアーゼ阻害薬、例えば、塩酸クレミゾールおよびクレミゾールの他の塩である。
【0147】
一実施形態において、抗ウイルス剤は、HCVレプリカーゼプロテアーゼ阻害薬(例えば、米国特許出願公開第20090081636号に開示されたもの)である。
【0148】
別の実施形態では、抗ウイルス剤は、HCVヘリカーゼ阻害薬(トリオキサレンなど)である。
【0149】
別の実施形態では、抗ウイルス剤は、HCV進入阻害薬、例えば限定されないが、ITX5061およびITX4520(iTherx))、PRO 206(Progenies)ならびにセルゴシビル(MX−3253)、MIGENIXである。
【0150】
別の実施形態では、抗ウイルス剤は、RNAi化合物、例えば、TT−033(Tacere Therapeutics,Inc.,San Jose,CA)である。
【0151】
なおさらなる実施形態では、抗ウイルス剤は、別の1型インターフェロン(例えば、IFN−βもしくはIFN−ω)、II型インターフェロン(例えば、IFN−γ)またはIII型インターフェロン(例えば、11−28もしくは11−29)である。
【0152】
本発明の方法および併用療法における使用に想定されるIII型インターフェロンの例としては、限定されないが、PEG−IFNλ(ZymoGenetics/Brisol Myers Squibb)が挙げられる。
【0153】
本発明の方法および併用療法における使用に想定されるなおさらなる抗ウイルス剤の例としては、限定されないが、TT033(Benitec/Tacere Bio/Pfizer)、Sirna−034(Sirna Therapeutics)、GNI−104(GENimmune)、IDX−102(Idenix)、Levovirin(商標)(ICN Pharmaceuticals,Costa Mesa,California);Humax(Genmab)、ITX−2155(Ithrex/Novartis)、PRO 206(Progenies)、HepaCide−I(NanoVirocides)、MX3235(Migenix)、SCV−07(SciClone Pharma)、KPE02003002(Kemin Pharma)、Lenocta(VioQuest Pharmaceuticals)、IET−Interferon Enhancing Therapy(Transition Therapeutics)、Zadaxin(SciClone Pharma)、VP 50406(商標)(Viropharma、Incorporated,Exton,Pennsylvania);ISIS 14803(商標)(ISIS Pharmaceuticals,Carlsbad,California);Heptazyme(商標)(Ribozyme Pharmaceuticals,Boulder,Colorado);Thymosin(商標)(SciClone Pharmaceuticals,San Mateo,California);Maxamine(商標)(Maxim Pharmaceuticals,San Diego,California);NKB−122(JenKen Bioscience Inc.,North Carolina);Alinia(Romark Laboratories)、INFORM−1(R7128、ITMN−191およびリバビリンの組合せ);ならびにミコフェノール酸モフェチル(Hoffman−LaRoche,Nutley,New Jersey)、SCY−635(SCYNEXIS)、ANA773(Anadys)、CYT107(Cytheris)、SPC3649(Santaris Pharma)、Alinia(nitrazoxanide)(Romark);オグルファニド二ナトリウム(Implicit Bioscience)、CTS−1027(Conatus)NOV−205(Novelos Therapeutics)、IMO−2125(Idera Pharmaceuticals)およびCF102(CAN−FITE)が挙げられる。
【0154】
また、(1)RIAマーカーの存在の試験で陽性、および(2)ITPA欠損についての試験で陰性(例えば、ITPA活性≧125μmol IMP/g Hb X h(Shipkovaら(上掲)に記載のアッセイで測定時))の一方または両方を有する個体では、本発明は、リバビリン化合物を含む任意の治療レジメンに対する、RBV誘発性貧血に反対作用する薬剤を用いた補助療法薬を想定する。かかる薬剤としては、エポエチン(epoieten)α、漢方薬十全大補湯(TJ−48)、ニンヒニョエイト(ninhinyoeito)(NYT)およびエイコサペンタエン酸(EPA)(ビタミンCおよびEの補給とともに、またはなし)(例えば、Martin,P.ら、J Gastroenterol and Hepatol 23:844−855(2008)を参照のこと)、または赤血球のITPA活性を阻害する薬剤が挙げられる。
【0155】
一部の実施形態では、リバビリンでの処置に感受性の疾患を有するが、RIAマーカーについての試験の結果が陽性であるおよび/またはITPA欠損についての試験の結果が陰性(例えば、ITPA活性≧125μmol IMP/g Hb X h)である患者は、リバビリン化合物を除いた処置レジメンで処置する。一部の実施形態では、かかる処置レジメンは、リバビリン化合物でない、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)の阻害薬、例えば、メリメポディブ(VX−497)(Markland W.ら,Antimic ob Agents Chemother 44:859−866(2000))、ミコフェノール酸モフェチル(ornberg A.ら,Int.Immunopharmacol.5:107−115(2005))およびミゾリビン(Naka K.ら,Biochem.Biophys.Res Commun.330:871−879(2005)を含むものである。
【0156】
HCV感染の処置のために本発明の併用療法で使用されるその他の薬剤の用量および投薬レジメンは、担当医師により、添付文書の承認された用量および投薬レジメン;ならびに患者の年齢、性別、および一般健康状態を考慮して決定され得る。HCV併用療法で投与される薬剤は、同時に(すなわち、同じ組成物または別々の組成物で次から次に)投与してもよく、逐次投与してもよい。これは、併用成分を異なる投与スケジュールで施与する(例えば、ある成分は1日1回、別の成分は6時間毎に投与する)場合、または好ましい医薬組成物が異なる(例えば、あるものは錠剤であり、あるものはカプセル剤である)場合、特に有用である。したがって、別々の投薬形態を含むキットが好都合である。
【0157】
IFN−αがPEG12k−インターフェロンα−2b(Peglntron(登録商標)(ペグインターフェロンα−2b)またはそのバイオシミラーなど)である場合、慢性HCV感染の好ましい処置レジメンは、週1回の1.5mcg/kgのPEG12k−インターフェロンα−2bと毎日800〜1400mgの用量のリバビリンの併用を含むものである。リバビリンの用量は、患者の体重を基にしており:体重が40〜65kgの患者では800mg/日、体重が65kgより重く85kgまでの患者では1000mg/日、体重が85kgより重く105kgまでの患者では1200mg/日、体重が105kgより重い患者では1400mg/日である。一部の実施形態では、PEG12k−インターフェロンα−2bの推奨週用量は、0.5、0.75または1.0mcg/kgであり、リバビリンの日用量は、患者の体重に基づいて600〜1400mgのリバビリンである。
【0158】
IFN−αがbPEG40K−インターフェロンα−2a(PEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンα−2a)またはそのバイオシミラーなど)である場合、慢性HCV感染の好ましい処置レジメンは、180meg/週のbPEG40K−インターフェロンα−2aとの併用で、体重が<75kgの患者では1000mg、体重が≧75kgの患者では1200mgのリバビリンの日用量を含むものである。一部の実施形態では、bPEG40−インターフェロンα−2aの推奨週用量は、180megより少なくとも25%少ない用量である。
【0159】
一部の好ましい実施形態では、高いウイルス負荷量のHCV遺伝子型1に慢性的に感染しており、RIAマーカーについての試験の結果が陰性である患者は、インターフェロンα(PEG12k−インターフェロンα−2bおよびbPEG40K−インターフェロンα−2aなど)をリバビリンまたは別のリバビリン化合物と併用して投与する約2〜17週間の導入処置期間の後、インターフェロンα、リバビリン化合物およびプロテアーゼ阻害薬(ボセプレビルまたはテラプレビルなど)を三重併用で投与する約12〜約28週間の第2の処置期間を含む併用レジメンで処置する。かかる二相処置レジメンは国際公開第2009/038663号に記載されている。特に好ましい実施形態では、導入期間は約4週間であり、第2の処置期間は約24週間である。
【0160】
患者におけるRIA遺伝子マーカーまたはITPA欠損バイオマーカーの有無に基づいて該患者の処置のために選択される併用療法剤を投与する場合、該併用薬の治療用薬剤、または該治療用薬剤を含む医薬組成物(1種類もしくは複数種)は、任意の順序(例えば、逐次、並行、一緒、同時など)で投与され得る。かかる併用療法剤中の種々の治療用薬剤の量は異なる量(異なる投薬量)であってもよく、同じ量(同じ投薬量)であってもよい。一部の実施形態では、併用薬中の薬剤は、かかる薬剤が単独療法剤として患者の疾患または病状の処置に使用される場合に一般的に使用される用量で投与されるが、他の実施形態では、該薬剤は、かかる薬剤が単独療法剤として該疾患または病状の処置に一般的に使用される用量よりも少ない用量で投与される。
【0161】
一部の実施形態では、併用療法で使用する治療用薬剤を同じ医薬組成物中に存在させ、該組成物は、経口投与、静脈内 投与、皮下投与または非経口投与に適したものであり得る。
【0162】
また、本発明者らは、本発明において本明細書に記載のRIAマーカーが、薬理遺伝学的指示、すなわち、疾患成分とRIAマーカー成分を含む指示のための新たなリバビリン薬物製剤の市販を規制当局の承認を求めるために使用されることがあり得ることを想定する。疾患成分は、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患であり、遺伝子マーカー成分は、本明細書に記載の少なくとも1種類のRIAマーカーについて陰性である試験患者である。同様に、本発明者らは、本明細書において、このようなRIAマーカーが、医師が、特定の疾患に対して、一般集団でのかかる疾患に対する便益/リスク比が非常に小さいことに基づいて処方したがらない現在承認済のリバビリン薬物に対する、かかる薬理遺伝学的指示の承認を求めるために有用であることを想定する。
【0163】
薬理遺伝学的指示の承認を求めることは、典型的には、当該化合物で処置した2つの別々の患者群においてリバビリン化合物に応答した貧血の発生を調べることを伴う。一方の群の各個体は、提案された薬理遺伝学的指示下に置かれる疾患および遺伝的プロフィールを有する個体である。他方の群の個体は、提案された薬理遺伝学的指示の遺伝子マーカー成分を有するかどうかとは無関係に無作為に選択され得る。あるいはまた、個体は、遺伝子マーカー成分に対応する個体および対応しない個体のパーセントが、一般集団または提案された薬理遺伝学的指示の疾患成分を有する患者集団で観察されるものと類似している「対照」群が得られる様式で他方の群に割り当てられる。承認を求める薬物製剤は、プロスペクティブ臨床試験で2つの群に投与され得る。あるいはまた、以前に該薬物で処置した患者のレトロスペクティブ薬理遺伝学的解析を行ってもよい。
【0164】
薬理遺伝学的指示を求める対象の薬物製剤は、他の治療活性薬剤、例えば、提案された薬理遺伝学的指示の疾患または病状の処置に対して有効性を有する別の薬物、またはリバビリンによって引き起こされる貧血以外の有害効果の発生の低減が意図される薬剤を用いて評価される場合もあり得る。一部の実施形態では、規制当局の承認を求める薬理遺伝学的指示は、他のマーカー(遺伝子マーカーもしくはバイオマーカー)または該薬物に対する応答の予測因子を含むものであり得る。例えば、PegIFN/リバビリン併用療法で処置した慢性HCV患者のSVRと関連している遺伝子マーカーは、Ge D,Fellay J,Thompson AJら Genetic variation in IL28B predicts hepatitis C treatment−induced viral clearance.Nature 2009および米国仮特許出願第61232547号(2009年8月14日出願)に記載されている。また、ペグ化インターフェロンαとリバビリンでの併用療法に対する速やかなHCVウイルス応答(RVR)は、SVRの達成の良好な予測因子である。
【0165】
薬理遺伝学的試験は、薬理遺伝学的薬物製剤を具体的な国で市販する前に、承認を得る規制機関または政府団体の代表と協議して設計され得る。好ましくは、規制機関は、主要先進国(例えば、オーストラリア、カナダ、中国、欧州連合の加盟国、日本など)の政府に認定された機関である。最も好ましくは、規制機関は、米国政府に認定された機関であり、提出される承認のための申請の型は、当該薬物製剤に適用される食品医薬品化粧品法の最新制定版に示された法定基準に依存し、また、規制当局への提出物の作製費用および薬物製剤のマーケティングストラテジーなどの他の考慮事項が含まれることがあり得る。例えば、薬物製剤中の医薬製剤が、提案された薬理遺伝学的指示の疾患成分について以前に承認されたものである場合、申請は、書面NDA、変更(supplemental)NDAまたは簡略NDAであり得るが、申請は、医薬製剤が以前に承認されたものでない場合は、完全なNDAであることが必要とされ得る;これらの用語は、製薬分野の当業者によって適用される意味を有するもの、または1984年の医薬品の価格競争と特許期間回復法で定義されたものである。
【0166】
本発明の1種類以上のRIAマーカーを用いた薬理遺伝学的臨床試験の所望の結果の1つは、(1)リバビリン化合物を含む医薬組成物、および(2)該医薬組成物を推奨する薬理遺伝学的指示を含む処方情報を含む薬物製剤の市販の承認である。処方情報は、典型的には、薬物に関する製品パンフレット(多くの場合、添付文書とも称される)またはラベルにて知得される。
【0167】
上記で考察したように、薬理遺伝学的指示は2つの成分:疾患成分とRIAマーカー成分を有する。したがって、処方情報は、疾患成分に記載された疾患または疾患の処置において、薬物で示された貧血が少ない遺伝学的に規定される患者群が記載されたものであり得る。一部の実施形態では、処方情報には、遺伝学的に規定される群の個体をどのようにして特定するかが記載されている。例えば、一部の実施形態では、処方情報には、薬物を、本明細書に記載の1種類以上のRIAマーカーについての試験の結果が陰性である個体、またはITPA欠損について試験結果が陽性である個体に対して指示するよう記述されている。あるいはまた、処方情報には、薬物が、1種類以上のRIAマーカーについて試験結果が陽性である個体、またはITPA欠損についての試験の結果が陰性である個体には禁忌であると記載されており、一部の好ましい実施形態では、処方情報には、薬理遺伝学的指示の必要とされる遺伝子マーカー成分の有無を検出するために使用すべき少なくとも1つの承認済の診断試験の名称が含まれている。上記のように、本発明の薬理遺伝学的薬物製剤における薬理遺伝学的指示に、医薬組成物に対する応答の予測因子のさらなるマーカーおよび/または1種類以上の他の治療活性薬剤との併用での該薬物の使用に対する要件を含めてもよい。処方情報に、推奨される投薬量および処置レジメンに関する情報を含めてもよい。
【0168】
一部の実施形態では、薬理遺伝学的薬物製剤は、当該薬物製剤が薬理遺伝学的製剤であることを特定し、薬剤師および医師が、この製剤を、同じまたは類似の活性成分を含むが薬理遺伝学的指示のない他の市販製剤と識別することが補助されるように、製造業者によって採用された独自の外観を有する製剤として、または該外観を有するパッケージにて提供される。医薬製剤および薬物製剤パッケージの外観を独自のブランドの薬物製剤の創出の一部として使用することは、当該技術分野でよく知られており、錠剤またはカプセル剤の形状および色、ならびに該薬剤の上面または薬物製剤のパッケージ材の上面への符号またはロゴのスタンプ表記が挙げられる。
【0169】
本発明の好ましい薬理遺伝学的薬物製剤では、医薬組成物はリバビリンを含む。本発明の薬物製剤の好ましい薬理遺伝学的指示は、HCVに慢性的に感染し、表1に記載されたRIA遺伝子マーカーの少なくとも1つについての試験の結果が陰性である患者の処置のために、インターフェロンαと併用して該医薬組成物を使用することを含むものである。一部の好ましい実施形態では、患者は、本明細書において上記に定義した高いベースラインHCVウイルス負荷量を有する患者である。他の好ましい実施形態では、患者は、HCV遺伝子型1に感染しており、高いHCVウイルス負荷量を有する。より好ましい実施形態では、処方情報には、リバビリン医薬組成物は、高いベースラインウイルス負荷量のHCV遺伝子型1に慢性的に感染している患者の処置のために、インターフェロンαおよび少なくとも1種類の他の抗ウイルス剤との併用して指示するよう記述されている。抗ウイルス剤は、HCVプロテアーゼ阻害薬、HCVポリメラーゼプロテアーゼ阻害薬、またはHCV複製を特異的に阻害する別の薬剤であり得る。処方情報は、このような抗ウイルス剤の2種類以上の任意の組合せとの併用でのリバビリン医薬組成物の使用を推奨するものであり得る。また、処方情報は推奨処置レジメンを含むものであり得、好ましい処置レジメンは、PEG12k−インターフェロンα−2bおよびbPEG40−インターフェロンα−2a医薬組成物について上記の任意のものである。
【0170】
本明細書に記載の方法の実施または本明細書に記載のキットおよび製剤の使用に関与する解析操作および数学的操作のいずれか、またはすべてがコンピュータによって実行され得る。例えば、コンピュータにより、RIAマーカーの有無を、試験を行う実験室の従業者または処置担当医師によって入力された遺伝子型データに基づいて個体に割り当てるコンピュータプログラムが実行され得る。また、同じコンピュータまたは異なるコンピュータで、RIAマーカー(RBV誘発性貧血に影響を及ぼし得る他の患者特異的または治療特異的要素でもよい)の割り当てに基づいて個体に起こることが予測される貧血度合を出力してもよい。一部の実施形態では、コンピュータにより、RBV誘発性貧血と関連している種々の患者パラメータおよび疾患パラメータ(例えば、1種類以上のRIAマーカーの有無、ITPA活性レベル、ベースラインヘモグロビンレベル、同時使用中の薬など)から患者の貧血確率スコアを誘導するコンピュータプログラムが実行される。個体のRIAマーカーの有無またはITPA欠損に関するデータは、個体の他の臨床データおよび/または遺伝子データを含むリレーショナルデータベース(例えば、一例として、OracleデータベースまたはASCIIフラットファイルの組)の一部として保存され得る。このようなデータは、コンピュータのハードドライブに保存してもよく、例えば、CD ROMもしくはコンピュータによりアクセス可能な1つ以上の他の保存デバイスに保存してもよい。例えば、データは、ネットワーク経由でコンピュータ通信される1つ以上のデータベースに保存され得る。
IV.本発明の例示的な具体的実施形態
1.リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有し、少なくとも1種類のリバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーについての試験で陰性である個体を処置するためのリバビリン化合物を含む医薬組成物であって、
該RIAマーカーは表1のRIA遺伝子マーカーから選択されるものであるか、または
該RIAマーカーは正常ITPA活性である
医薬組成物。
2.リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有し、少なくとも1種類のリバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーについての試験で陰性である個体を処置するための医薬の製造におけるリバビリン化合物の使用であって、
該RIAマーカーは表1のRIAマーカーから選択されるものであるか、または
該RIAマーカーは正常ITPA活性である
使用。
3.医薬組成物と処方情報を含む薬物製剤であって、
該医薬組成物はリバビリン化合物を含み、該処方情報は薬理遺伝学的指示を含み、
該薬理遺伝学的指示は、試験の結果が少なくとも1種類のリバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーについて陰性である患者の、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患の処置を含み、該RIAマーカーは表1のRIAマーカーから選択されるか、または該RIAマーカーは正常ITPA活性である、
薬物製剤。
4.個体を少なくとも1種類のリバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーの有無について試験する方法であって、個体から核酸試料を採取し、核酸試料をアッセイして、表1の多型部位(PS)の該個体の遺伝子型を調べることを含み、ここで、該個体が前記PSの貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、RIAマーカーが存在し、該個体が前記PSの他方の対立遺伝子についてホモ接合型である場合、RIAマーカーは存在しない、方法。
5.さらに、前記PSの該個体の遺伝子型を示す試験報告を作成することを含む、実施形態4の方法。
6.個体から生物学的試料を採取し、該生物学的試料を、アミノ酸32位にプロリン(ITPA−Pro32)を有するITPAの存在についてアッセイすることを含む、個体をRIAマーカーの存在について試験する方法。
7.該アッセイ工程が、該生物学的試料を、ITPA−Pro32に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその結合断片と接触させることを含む、実施形態6の方法。
8.該アッセイ工程が、該生物学的試料を、(1)ITPA−Pro32に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその結合断片、および(2)ITPA−Thr32に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその結合断片の各々と接触させることを含む、実施形態6の方法。
9.リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有する個体を処置するための治療法の選択方法であって、
表1の多型部位から選択される多型部位(PS)の該個体の遺伝子型を得、得られた遺伝子型に基づいて治療法を選択することを含み、
該個体が、選択したPSの貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、選択される治療法は:
(a)リバビリン化合物を該疾患に推奨される用量でリバビリン誘発性貧血に反対作用する薬剤と併用して投与することを含むものである、
(b)リバビリン化合物を該疾患に推奨される用量よりも少ない用量で投与することを含むものである、または
(b)リバビリン化合物での処置を除外したものであり、
該個体が、選択したPSの他方の対立遺伝子についてホモ接合型である場合、
選択される治療法は:
(a)リバビリン化合物を該疾患に推奨される用量で投与すること、または
(b)リバビリン化合物を該疾患に推奨される用量よりも高い用量で投与し、該個体を貧血についてモニタリングすること
を含むものである、方法。
10.リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有する個体の群から、初期処置またはリバビリン化合物での継続処置を行う個体を選択するためのスクリーニング方法であって、該疾患群の各構成員を、少なくとも1種類のリバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーの存在について試験すること、およびRIAマーカーについての試験で陽性である個体をすべて、処置から除外することを含み、RIAマーカーについての試験の陽性は、表1の多型部位から選択される少なくとも1つの多型部位(PS)の貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型遺伝子型またはホモ接合型遺伝子型であることである方法。
11.リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有する個体を、リバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーの有無について試験するためのキットであって、表1の多型部位の群から選択される少なくとも1つの多型部位(PS)を遺伝子型分類するために設計された一組のオリゴヌクレオチドを含むキット。
12.該オリゴヌクレオチドが対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブである実施形態11のキット。
13.該オリゴヌクレオチドが固相表面上に固定化された実施形態11または12のキット。
14.該RIAマーカーが、表1のホモ接合型RIAマーカーから選択される、実施形態1〜13いずれかの医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
15.リバビリン化合物で処置した場合、個体に重度の貧血のリスクがあるかどうかを予測する方法であって、個体から赤血球試料を採取すること、および該試料中のITPA活性を測定することを含み、測定されたITPA活性が正常より低い場合、リバビリン化合物で処置したとき、個体は重度の貧血を起こしにくいという予測になり、測定されたITPA活性正常であるか、正常より高い場合、リバビリン化合物で処置したとき、個体は重度の貧血を起こす可能性があるという予測になる。
16.リバビリン化合物での処置に感受性の疾患がウイルス感染である、実施形態1〜15いずれかの医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
17.ウイルス感染が、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)による慢性感染である、実施形態16の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
18.C型肝炎ウイルスがHCV遺伝子型1である、実施形態17の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
19.リバビリン化合物がリバビリンまたはリバビリンプロドラッグである、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
20.リバビリンプロドラッグがタリバビリンである、実施形態19の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
21.IFN−αが非経口投与のために製剤化されたものである、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
22.HCVに慢性的に感染している個体が、インターフェロンα(IFN−α)タンパク質とリバビリンを含む併用療法に応答して貧血が起こすかどうかを予測する方法であって、
個体から核酸試料を採取すること;
該核酸試料をアッセイし、表1の少なくとも1つの多型部位(PS)の該患者の遺伝子型を調べること;および
調べた遺伝子型に基づいて予測を行うこと
を含み、
患者の遺伝子型が貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、個体は重度の貧血を起こす可能性があるという予測になり、患者の遺伝子型が他方の対立遺伝子についてホモ接合型である場合、個体は貧血を起こしにくいという予測になる、
方法。
23.HCVによる慢性感染について個体を処置する方法であって、
表1の少なくとも1つの多型部位(PS)の個体の遺伝子型を得、得られた遺伝子型に基づいた処置レジメンを処方すること
を含み、
ここで、該遺伝子型が、貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、処置レジメンは:
(a)個体に、インターフェロンα(IFN−α)タンパク質を、リバビリンおよびリバビリン誘発性貧血に反対作用する少なくとも1種類の薬剤と併用して投与すること;または
(b)個体に、インターフェロンα(IFN−α)タンパク質を、リバビリン化合物でない少なくとも1種類の抗ウイルス剤と併用して投与すること;または
(c)個体に、どちらもインターフェロンαタンパク質またはリバビリン化合物でない少なくとも2種類の抗ウイルス剤の組合せを投与すること
を含むものである方法。
24.該少なくとも1種類の抗ウイルス剤がHCVプロテアーゼ阻害薬である、実施形態23の方法。
25.該少なくとも2種類の抗ウイルス剤の組合せがHCVプロテアーゼ阻害薬とHCVポリメラーゼ阻害薬を含むものである、実施形態24の方法。
26.HCVプロテアーゼ阻害薬が、ボセプレビル、ナルラプレビルまたはテラプレビルである、実施形態24の方法。
27.IFN−αタンパク質がペグ化インターフェロンα−2aタンパク質またはアルブミン−インターフェロンα−2a融合タンパク質である、実施形態22〜26のいずれかの方法。
28.IFN−αタンパク質がPEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンα−2a)またはそのバイオシミラーである、実施形態27の方法。
29.IFN−αタンパク質がペグ化インターフェロンα−2bまたはアルブミン−インターフェロンα−2b融合タンパク質である、実施形態22〜26のいずれかの方法。
30.IFN−αタンパク質がPeglntron(登録商標)(ペグインターフェロンα−2b)またはそのバイオシミラーである、実施形態29の方法。
31.個体が、コーカサス系、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系またはアジア系と自己意識している個体である、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
32.個体がコーカサス系と自己意識している個体である、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
33.該RIAマーカーが、rs6051702におけるA/A遺伝子型、rs1127354におけるC/C遺伝子型、rs7270101におけるA/A遺伝子型または正常ITPA活性からなる群から選択される、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
34.該RIAマーカーがrs6051702におけるA/A遺伝子型である、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
35.該RIAマーカーがA/C遺伝子型またはrs1127354におけるC/C遺伝子型である、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
36.該RIAマーカーがA/C遺伝子型またはrs7270101におけるA/A遺伝子型である、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
37.該RIAマーカーがrs1127354およびrs7270101の各々のA/C遺伝子型である、先のいずれかの実施形態の医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
38.該RIAマーカーが正常ITPA活性である、実施形態1〜33いずれかの医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
39.該RIAマーカーが、個体がコーカサス系と自己意識している場合はrs6051702 PSにおけるA/A遺伝子型、該個体がアフリカ系アメリカ人と自己意識している場合はrs3810560 PSにおけるA/A遺伝子型、または該個体がヒスパニック系と自己意識している場合はrs11697114におけるT/T遺伝子型である、実施形態1〜32いずれかの医薬組成物、使用、薬物製剤、方法またはキット。
40.各オリゴヌクレオチドが別々のシリカビーズ上に固定化された実施形態13のキット。
【実施例】
【0171】
以下の実施例は、より明白に本発明を説明するために示したものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
実施例1.リバビリン誘発性貧血と関連している単一ヌクレオチド多型(SNP)の特定
処置応答に対する遺伝的寄与を確認するため、本発明者らは、IDEAL試験で得たゲノム試料において全ゲノム関連試験を行った。該試験の設計は、McHutchisonら,J.Viral Hepatol,第15巻,7号,2008年7月,第475〜481頁に報告されている。簡単には、IDEAL試験では、HCV遺伝子型1に慢性的に感染した処置未経験患者を無作為化し(1:1:1)、以下:ペグインターフェロンα−2b(PEG2b)を1.5mcg/kg/週+リバビリン(RBV);PEG2bを1.0mcg/kg/週+RBV;またはペグインターフェロンα−2a(PEG2a)を180meg/週+RBVのうちの1つの48週間の処置レジメンを施与した。PEG2bレジメンでは、体重が40〜65kgの患者には800mg/日のRBVを施与し;体重が65kgより重く85kgまでの患者には1000mg/日のRBVを施与し;体重が85kgより重く105kgまでの患者には1200mg/日のRBVを施与し;体重が105kgより重い患者には1400mg/日のRBVを施与した。PEG2aレジメンでは、体重が<75kgの患者には1000mg/日のRBVを施与し、一方、体重が≧75kgの患者には1200mg/日のRBVを施与した。ヘモグロビン値を、ベースライン時(初回用量での処置前)、2週目、4週目、8週目、12週目、その後、処置終了(全48週間)まで6週間毎に測定した。追跡測定値は、処置後4週目、12週目および24週目に得た。
【0172】
RBV誘発性貧血の全ゲノム解析では、本発明者らは、治療の4週目を3つの臨床表現型:i)Hbの絶対減少;ii)≧3g/dLのHbの減少;iii)≦10g/dLのレベルまでのHbの減少に対する遺伝的寄与を評価する時点として選択した。4週目までに、有意な貧血が起こったが、増殖因子療法は開始していなかった。4週目までのペグ−IFNまたはRBVのいずれかに対する支持が<80%である患者(N=95)、および4週目のHbデータがない患者(N=21)は、この解析から除外した。試験集団の臨床的特徴を以下に示す。
【0173】
【表4】

1286例の個体のゲノム試料を、フェーズII HapMapデータ(HumanHap 610 quad V 1.0)から誘導された約600,000個のタギングSNPを含むAlumina(登録商標)(San Diego,CA)のHuman610−quad BeadChipを用いて遺伝子型分類した。一連の品質管理工程により、関連試験で565,759個の多型が得られた。
【0174】
一次関連試験は、各単一ヌクレオチド多型(SNP)とHb表現型との関連の単一−マーカー遺伝子型トレンド試験を伴うものであり、PLINKソフトウェア(Purcell,S.ら Am J Hum Genet.81(2007))にて実行される線形およびロジスティック回帰モデルを、いくつかの共変量(例えば、年齢、性別、体重、前処理肝臓生検材料の線維症の重症度、ベースラインヘモグロビンレベル、ならびに試験で投与するRBVの用量およびPegIFNの型と用量)を補正して使用した。別途の解析を3つの人種集団において行った。集団の層別化に起因する誤った関連の可能性を制御するため、改良EIGENSTRAT法(Price,A.L.ら Nat Genet 38,904−9(2006))を使用し、各人種集団における集団家系軸を補正した。有意差は、ボンフェローニの補正(Pカットオフ=8.8×10−8)を用いて評価した。以下の表5に、スタウファーの加重Z−法によりP値の組合せた後の最も強い関連を示す20個のSNPを、3つの人種集団のそのP値とともに示す。SNPは、rs10159477(これは、第10染色体上のHK1遺伝子のイントロン変異である)以外はすべて20p13に対するマッピングされる。
【0175】
【表5】

3つの各人種集団においてHb減少と最も強い関連を示すSNPを以下の表6に、種々の該人種集団のそのP値とともに示す。
【0176】
【表6】

ヨーロッパ系アメリカ人集団におけるトップ関連シグナルの独立性を、ネスト(nested)線形回帰モデルを用いて試験した。このモデルでは、個々のSNPを、最も関連している変異rs6051702を含めた後に加えた。さらなる独立的関連が、rs2295547(P=1.4×10−9)およびrs6051855(P=2.3×l0−4)で観察され、これは、合成的関連をもたらす原因部位がいくつか存在することを示唆する。
【0177】
rs6051702 SNPとRBV誘発性貧血との関連が、4週間の処置後に3g/dLより大きい、または小さいHbの減少を有する被検体を比較するケース−コントロール解析において確認された。図3に示すデータから明らかなように、この場合も、rs6051702 SNPで、最も強い関連シグナルがヨーロッパ系アメリカ人で示された:CC遺伝子型の患者では、2.9%のみで少なくとも3g/dLのHbの減少が示されたが、主対立遺伝子AAについてホモ接合型である患者では、58.8%がこの閾値に達した。整合して、いずれのCC患者も、4週目に<10g/dLのHb濃度を有さなかったが、AA遺伝子型を有する患者は、13%に重度の貧血が起こったと記録された(データ表示せず)。
実施例2.リバビリン誘発性貧血の原因多型候補の特定
合計15個のSNPで、全ゲノムで有意な関連が示され、複合解析で定量的Hb減少が見られた:このようなSNPは、5つの異なるタンパク質コード遺伝子を含む250kbの領域全体に広がっていた(図1)。このような遺伝子の1つはITPA遺伝子である。ITPA遺伝子内の2つのSNP(P32Tアミノ酸変異をもたらすrs1127354と、第2イントロンに存在するスプライシング改変SNPであるrs7270101)は、ITPA欠損およびチオプリン毒性の増大と機能的に関連しているため、本発明者らは、CEPH親のHapMapデータ(The International HapMap Consortium,Nature 437:1299−1320(2005))を使用し、このようなITPA SNPとrs6051702 SNP間の連鎖不平衡の度合を調べた。この解析には、rs1127354、rs7270101およびrs6051702 SNPについて完全な遺伝子型データを有する56のCEU親を含めた。本発明者らは、ITPA欠損と関連している各ITPA対立遺伝子が、ヘモグロビン減少とあまり関連していないrs6051702C対立遺伝子と優先的に関連していることを見い出した。
【0178】
RBV誘発性貧血におけるITPA活性の機能的役割の可能性をさらに評価するため、本発明者らは、2つの低活性対立遺伝子を破壊して新たな変異型にし、この変異型をLDについて試験すると、HapMap SNPはすべて、周囲の1Mb領域内に存在した。最高rは0.65であり、これは、rs6051702 SNPおよびこの領域内の26個の他のSNPで観察された(表7参照)。
【0179】
【表7】

実施例3.ITPA欠損とリバビリン誘発性貧血に対する防御との関連
実施例2に記載した結果から、低ITPA活性によりリバビリン誘発性溶血性貧血に対する防御がもたらされる可能性が示唆された。この可能性を試験するため、本発明者らは、試験集団試料の168名の患者由来のゲノム試料のITPA遺伝子のコード領域全体を配列決定し、全試験集団のrs1127354およびrs7270101 SNPを遺伝子型分類し、種々の遺伝子型を、rs6051702 C対立遺伝子(GWASにて特定)との関連について、および処置誘発性Hb減少との独立的関連について解析した。
【0180】
配列決定では、関連シグナルに寄与し得る他の明白な機能低下変異は示されなかった(データ表示せず)。しかしながら、rs1127354およびrs7270101 ITPA SNPの低活性対立遺伝子を回帰モデルに組み込むと、実施例1に記載のGWASで観察された関連が完全に説明された(データ表示せず)。また、ヨーロッパ系アメリカ人家系のHCV患者では、2つの低活性ITPA対立遺伝子は、ペグ−IFN/RBV療法時にHb減少が少ないことと関連しているrs6051702 PSのC対立遺伝子を同様に担持する染色体上にほぼ排他的に見られた。このデータを以下の表8に示す。
【0181】
【表8】

また、これらの各ITPA低活性対立遺伝子は、以下の表9に示すように、試験集団において、リバビリン誘発性貧血に対する防御と独立して関連している。
【0182】
【表9】

これらの変異の臨床的意義を、中等度または重度の貧血(それぞれ、≧3g/dLのHbまたは≦10g/dLのHbレベルの減少と規定する)に苦しんでいる患者の割合を、個体遺伝子型の関数として、またはShipkova,M.ら,Clin Chem.52:240−247(2006)から推定されるITPA欠損度合の関数として:野生型ホモ接合型との比較において調べることにより評価すると、ITPA活性は、rs7270101ヘテロ接合性では60%まで;rs1127354ヘテロ接合性またはrs7270101ホモ接合性では30%まで;および混合型ヘテロ接合性またはrs1127354ホモ接合性では非常に低い残留活性まで減少した。データを図4に示す。ITPA酵素活性が正常の3分の1未満である予測された184名の患者では、重度の貧血を有する患者は全く観察されず、4.3%のみが中等度の貧血を有した(下側のグラフ、左側の2つのバー)。他方、「正常な」ITPA機能を有すると予測された863名の患者のうち、13.3%が重度の貧血(すなわち、≦10g/dLまでのHbの減少)に苦しみ、58.4%に中等度の貧血(≧3g/dLのHbの減少)が起こった。
【0183】
最後に、イノシントリホスファターゼ欠損がRBV誘発性溶血性貧血に対する主要な保護因子であると特定されたことは、薬理遺伝学的な診断方法および製剤におけるITPA欠損対立遺伝子の検出またはITPA活性の測定の根拠をもたらす。また、ITPA欠損は良性状態と思われるため、ITPAに対する薬理学的介入によってRBV誘発性貧血を防御することが可能であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物と処方情報を含む薬物製剤であって、
該医薬組成物はリバビリン化合物を含み、該処方情報は薬理遺伝学的指示を含み、
該薬理遺伝学的指示は、試験の結果が少なくとも1種類のリバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーについて陰性である患者の、リバビリン化合物での処置に感受性の疾患の処置を含み、該RIAマーカーは表1のRIAマーカーから選択されるか、または該RIAマーカーは正常ITPA活性である、
薬物製剤。
【請求項2】
(a)個体から核酸試料を採取し、核酸試料をアッセイして、表1の多型部位(PS)における該個体の遺伝子型を調べること、ここで、該個体が前記PSの貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、RIAマーカーが存在し、該個体が前記PSの他方の対立遺伝子についてホモ接合型である場合、RIAマーカーは存在しない;あるいは
(b)個体から生物学的試料を採取し、該生物学的試料を、アミノ酸32位にプロリン(ITPA−Pro32)を有するITPAの存在についてアッセイすること
を含む、個体を少なくとも1種類のリバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーの有無について試験する方法。
【請求項3】
(a)の部の工程を含み、さらに、前記PSにおける該個体の遺伝子型を示す試験報告を作成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(b)の部の工程を含み、該アッセイ工程が、該生物学的試料を、ITPA−Pro32に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその結合断片と接触させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該アッセイ工程が、該生物学的試料を、(1)ITPA−Pro32に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその結合断片、および(2)ITPA−Thr32に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその結合断片の各々と接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
リバビリン化合物での処置に感受性の疾患を有する個体を、リバビリン誘発性貧血(RIA)マーカーの有無について試験するためのキットであって、表1の多型部位の群から選択される少なくとも1つの多型部位(PS)を遺伝子型分類するために設計された一組のオリゴヌクレオチドを含むキット。
【請求項7】
該オリゴヌクレオチドが、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブである、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
該オリゴヌクレオチドが固相表面上に固定化された、請求項6または7に記載のキット。
【請求項9】
該RIAマーカーが、表1のホモ接合型RIAマーカーから選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の薬物製剤、方法またはキット。
【請求項10】
該リバビリン化合物での処置に感受性の疾患がウイルス感染である、請求項1〜10のいずれかに記載の薬物製剤、方法またはキット。
【請求項11】
該ウイルス感染が、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)による慢性感染である、請求項10に記載の薬物製剤、方法またはキット。
【請求項12】
該リバビリン化合物が、リバビリンまたはリバビリンプロドラッグである、請求項1〜12のいずれかに記載の薬物製剤、方法またはキット。
【請求項13】
HCVによる慢性感染について個体を処置する方法であって、表1の少なくとも1つの多型部位(PS)の個体の遺伝子型を得、得られた遺伝子型に基づいた処置レジメンを処方することを含み、
ここで、該遺伝子型が、貧血対立遺伝子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、処置レジメンは:
(a)該個体に、インターフェロンα(IFN−α)タンパク質を、リバビリンおよびリバビリン誘発性貧血に反対作用する少なくとも1種類の薬剤と併用して投与すること;または
(b)該個体に、インターフェロンα(IFN−α)タンパク質を、リバビリン化合物でない少なくとも1種類の抗ウイルス剤と併用して投与すること;または
(c)該個体に、どちらもインターフェロンαタンパク質またはリバビリン化合物でない少なくとも2種類の抗ウイルス剤の組合せを投与すること
を含むものである、前記方法。
【請求項14】
該少なくとも1種類の抗ウイルス剤がHCVプロテアーゼ阻害薬である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該少なくとも2種類の抗ウイルス剤の組合せがHCVプロテアーゼ阻害薬とHCVポリメラーゼプロテアーゼ阻害薬を含むものである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
該HCVプロテアーゼ阻害薬が、ボセプレビル、ナルラプレビルまたはテラプレビルである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
該IFN−αタンパク質が、ペグ化インターフェロンα−2aタンパク質、アルブミン−インターフェロンα−2a融合タンパク質、ペグ化インターフェロンα−2bまたはアルブミン−インターフェロンα−2b融合タンパク質である、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
該個体がコーカサス系、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系またはアジア系と自己意識している個体である、請求項1〜17のいずれかに記載の薬物製剤、方法またはキット。
【請求項19】
該RIAマーカーが、
rs6051702におけるA/A遺伝子型;
rs1127354におけるC/C遺伝子型;
rs7270101におけるA/A遺伝子型;
rs1127354およびrs7270101の各々におけるA/C遺伝子型;ならびに
正常ITPA活性
からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれかに記載の薬物製剤、方法またはキット。
【請求項20】
該RIAマーカーは、請求項1〜17の個体がコーカサス系と自己意識している場合はrs6051702 PSにおけるA/A遺伝子型、該個体がアフリカ系アメリカ人と自己意識している場合はrs3810560 PSにおけるA/A遺伝子型、または該個体がヒスパニック系と自己意識している場合はrs11697114におけるT/T遺伝子型である、請求項1〜19のいずれかに記載の薬物製剤、方法またはキット。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−511259(P2013−511259A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538020(P2012−538020)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055570
【国際公開番号】WO2011/066082
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(596129215)メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション (785)
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】126 East Lincoln Avenue,Rahway,New Jersey 07065−0907 U.S.A.
【Fターム(参考)】