説明

リフローはんだ付け方法、およびリフローはんだ付け装置

【課題】簡単な構成で、ワークと加熱部材との容易にかつ確実に密着させて、加熱部材によりワークを精度よく加熱して適切にワークの接合部品を互いにはんだ付けすることができるリフローはんだ付け方法とその装置を提供する。
【解決手段】リフローはんだ付け装置は、はんだ箔1を介して接合部品2、3を重合してなるワークWが載置されてこのワークWを加熱する加熱部材5と、ワークWが載置された加熱部材5の周囲に密閉された空間を形成することが可能なチャンバ6と、このチャンバ5内の密閉された空間を減圧する減圧手段7と、チャンバ6内を減圧することによって生じるチャンバ6の内部と外部との圧力差を利用してワークWと加熱部材5とを互いに押し付けるように押圧する押圧手段8と、チャンバ6内に還元ガスを供給する手段9とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフローはんだ付け方法、およびリフローはんだ付け装置に関し、特に、はんだ箔を介して接合部品が重合されたワークを、チャンバ内に設けられた加熱部材上に載置し、減圧雰囲気の下で加熱部材によりワークを加熱し、前記はんだ箔を溶融させて接合部品を互いにはんだ付けするリフローはんだ付け方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リフローはんだ付けにおいては、接合部品の間にはんだ材を介在させてリフロー炉内に入れて所定の温度に加熱することによりはんだ材を溶融させて、接合部材を互いに接合する。そのためのリフローはんだ付け装置は、一般に、図6に示すように、はんだ1’を介して接合部品2’,3’を重合してなるワークW’が載置されて、このワークW’を加熱する加熱部材5’と、ワークW’が載置された加熱部材5’の周囲に密閉された空間を形成することが可能なチャンバ6’と、このチャンバ6’内の密閉された空間を減圧する減圧手段7’とを備えている。
【0003】
はんだ付けにより互いに接合される接合部品としては、たとえば、半導体などの素子2’と、リードフレーム3’とがある。素子2’とリードフレーム3’との間には、はんだ1’を配置する。はんだ1’としては、一般に粉末状のはんだ合金とペースト状のフラックスとを混錬してなるクリームはんだが用いられる。
【0004】
一方、加熱部材5’は、チャンバ6’内の所定の高さに支持されている。図6に示した加熱部材5’は、その下方にヒータ50’が設けられており、ヒータ50’の熱をワークW’に伝導するものである。加熱部材5’は、熱伝導率が良好な材質を選択することが望ましく、たとえば銅板などにより構成することができる。
【0005】
チャンバ6’は、接合部品2’、3’の間にはんだクリーム1’が配置されたワークW’を内部に収容し、また、はんだ付けされたワークW’を取り出すための開口部と、この開口部を開閉することが可能な扉を備えている。扉を閉めることにより、チャンバ6’の内部に密閉された空間が形成される。
【0006】
減圧手段7’は、チャンバ6’の内部を外部と遮断して密閉された空間を形成するとともにチャンバ6’の内部と外部を連通して減圧された空間を常圧(大気圧)に戻すよう切り換える開閉弁70’と、チャンバ6’内に形成された密閉空間を減圧する真空ポンプ71’とを備えている。
【0007】
このように構成されたリフローハンダ付け装置では、接合部品2’、3’の間にクリームはんだ1’が塗布されたワークW’をチャンバ6’の内部に収容し、チャンバ6’の扉を閉めるとともに開閉弁70’を閉じて、ワークW’を収容したチャンバ6’内に密閉された空間を形成し、この空間内を真空ポンプ71’によって減圧するとともにヒータ50’により熱を発生させる。ヒータ50’の熱は、加熱部材5’によってワークW’に伝導されてクリームはんだ7’を溶融し、接合部材2’、3’を互いに接合させる。接合部品2’、3’を互いに適切に接合するためには、クリームはんだ1’の溶融温度にあわせて加熱部材5’からワークW’への熱伝導を精度よく制御する必要がある。
【0008】
ところで、銅板などからなる加熱部材5’は、ヒータ50’の熱やワークW’の荷重などによって波打つなど変形している場合がある。また、加熱部材5’は、その表面粗さなどによって表面に凹凸が生じている場合がある。
【0009】
ここで、加熱部材5’が変形していたり表面に凹凸が生じていることにより、加熱部材5’とこれに載置されたワークW’のリードフレームなどの接合部品3’が密着していない場合であっても、これらの周囲が減圧雰囲気下となっていない状態、すなわち、図7の(a)斜線で示すように空気などの気体が存在している場合には、加熱部材5’と接合部品3’との接触部分のみならず、加熱部材5’と接合部品3’とが接触していない部分の間に存在する気体によっても、加熱部材5’から接合部品3’に熱が伝導される。
【0010】
しかしながら、図7の(b)に示すように、加熱部材5’と接合部品3’との周囲が減圧雰囲気下とされた場合には、加熱部材5’と接合部品3’とが接触していない部分の間に空気などの気体が存在しないこととなるため、加熱部材5’と接合部品3’との接触部分だけで熱が伝導される。つまり、加熱部材5’と接合部品3’とが接触していない部分の間では、熱を伝導する役割を果たす空気などの気体が存在しないため、加熱部材5’から接合部品3’に熱が伝導されない。その結果、加熱部材5’から接合部品3’全体に均等にかつ効率的に熱を伝導することができず、クリームはんだ1’の溶融温度に応じて加熱部材5’から接合部品3’への熱伝導を精度よく制御することが困難となる。
【0011】
そのため、図8に示すように、加熱部材5’にネジ孔51’を形成するとともに、このネジ孔51’にワッシャ状の押え部材80’を有するボルト81’を螺合し、ボルト81’を締め付けることで押さえ部材80’により接合部品3’を加熱部材5’に押し付けて、加熱部材5’に接合部品3’を密着させることが考えられている。
【0012】
図9は、加熱部材(Cu板)、および、異なる締め付けトルク(0N(ゼロN:締め付けなし)〜1.5N)でボルト81’を締め付けて加熱部材5’に押し付けられた接合部品3’の温度と、チャンバ6’内の圧力変化(常圧と減圧の状態)との、時間経過に対する変化の一例を示したものである。このグラフから、ボルト81’を締め付けて接合部品3’と加熱部材5’とを密着させることにより加熱部材5’から接合部品3’に熱が良好に伝導されることが知見される。
【0013】
しかしながら、図8に示したように構成した場合にあっては、はんだ付けするワークW’毎に接合部品3’をボルト81’で締め付けて加熱部材5’に密着させる必要があり、手間がかかるなどの問題が生じる。
【0014】
そのため、接合部品3’を加熱部材5’に密着させるための従来の技術として、たとえば特許文献1が知られている。特許文献1には、基板上にクリームはんだを印刷し、該基板を熱伝導の良好な平板状のリフロー用治具の上に押し付けて密着させ、該治具をホットプレートタイプの加熱装置に載置してリフローすることなどを特徴とするハンダリフロー方法が開示されている。また、特許文献1には、長手方向に対して温度調節が可能な平面度良好なホットプレートタイプの加熱手段とこの加熱手段上の直上を、この加熱手段に沿って移動する移動速度調整可能な無端の搬送手段と前記搬送手段状に載置されるリフロー用治具とを備えたクリームハンダ印刷基板のハンダリフロー装置であって、前記リフロー用治具は良好な熱伝導性を有する平坦な平板にクリームハンダ印刷基板の一部を該平板上に押圧する押圧用バネを設けて成ることを特徴とするハンダリフロー装置が開示されている。
【0015】
そして、特許文献1には、ハンダリフロー用治具として、平板上に支点と留め金とを設け、U字型のステンレス線製のバネの両端部を支点に取付けて、バネの中間部(反対側の端部)を留め金に係合することが可能な構成が開示されている。なお、特許文献1では、単に押圧用バネによってクリームハンダ印刷基板の一部を平板上に押圧するものであり、クリームハンダ印刷基板と平板の周囲を減圧雰囲気下とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平4−46671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、クリームハンダ印刷基板(ワーク)毎に
ハンダリフロー用治具の平板上に載置して、押圧用バネを留め金に係合する作業が必要であり、やはり手間がかかるなどの問題があった。また、特許文献1にあっては、クリームハンダ印刷基板(ワーク)を押圧用バネによって部分的に平板上に押し付けることしかできないという問題があった。そして、特許文献1にあっては、ホットプレートとクリームハンダ印刷基板(ワーク)との間にハンダリフロー用治具の平板が介在するため、クリームハンダ印刷基板(ワーク)の加熱温度を精度よく制御することが困難であるという問題があった。
【0018】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、ワークと加熱部材とを容易にかつ確実に密着させて、加熱部材によりワークを精度よく加熱して適切にワークの接合部品を互いにはんだ付けすることができるリフローはんだ付け方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1のリフローはんだ付け方法に係る発明は、上記目的を達成するため、はんだ箔を介して接合部品が重合されたワークを、チャンバ内に設けられた加熱部材上に載置し、チャンバを密閉してその内部空間を減圧し、前記加熱部材によりワークを加熱し、前記はんだ箔を溶融させて接合部品を互いにはんだ付けするリフローはんだ付け方法であって、前記チャンバ内の空間を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧することを特徴とするものである。
請求項2のリフローはんだ付け装置に係る発明は、上記目的を達成するため、はんだ箔を介して接合部品を重合してなるワークが載置されて該ワークを加熱する加熱部材と、前記ワークが載置された加熱部材の周囲に密閉された空間を形成することが可能なチャンバと、該チャンバ内の密閉された空間を減圧する減圧手段とを備えてなるリフローはんだ付け装置であって、前記チャンバ内を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧する押圧手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、チャンバ内の空間を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧するという簡単な構成で、ワークと加熱部材とを容易にかつ確実に密着させて、加熱部材によりワークを精度よく加熱して適切にワークの接合部品を互いにはんだ付けすることが可能なリフローはんだ付け方法を提供することができる。
請求項2の発明によれば、チャンバ内を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧する押圧手段を設けたという簡単な構成で、ワークと加熱部材とを容易にかつ確実に密着させて、加熱部材によりワークを精度よく加熱して適切にワークの接合部品を互いにはんだ付けすることが可能なリフローはんだ付け装置を提供することができる。
【0021】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(5)項が請求項2に相当する。
【0022】
(1) はんだ箔を介して接合部品が重合されたワークを、チャンバ内に設けられた加熱部材上に載置し、チャンバを密閉してその内部空間を減圧し、前記加熱部材によりワークを加熱し、前記はんだ箔を溶融させて接合部品を互いにはんだ付けするリフローはんだ付け方法であって、
前記チャンバ内の空間を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧することを特徴とするリフローはんだ付け方法。
【0023】
(1)項に記載の発明では、チャンバ内の空間を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧するため、ワークと加熱部材とを容易にかつ確実に密着させることができ、したがって、減圧雰囲気下であっても加熱部材の熱をワークに伝導して、適切にはんだ箔を溶融させてワークの接合部品を互いにはんだ付けすることができる。
【0024】
(2) 前記チャンバ内の空間を減圧することによってチャンバ内に突出する押圧手段を予め設け、
前記チャンバ内を減圧して押圧手段をチャンバ内に突出させて前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧することを特徴とする(1)項に記載のリフローはんだ付け方法。
【0025】
(2)項に記載の発明では、(1)項に記載の発明において、前記チャンバ内の空間を減圧することによってチャンバ内に突出する押圧手段を予め設けておくことにより、前記チャンバ内の空間を減圧することによって生じるチャンバ内部と外部との圧力差を利用してワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧することを具現化することができる。
【0026】
(3) 前記押圧手段を、前記ワークの上面に接する押圧部と、該押圧部のワークを押圧する面と直交する方向に昇降移動する支持部と、前記押圧部と支持部を上方に付勢する付勢手段と、前記支持部が昇降移動可能に設けられた前記チャンバ内の空間の密閉状態を保持する密閉状態保持手段とを備えた構成とすることを特徴とする(2)項に記載のリフローはんだ付け方法。
【0027】
(3)項に記載の発明では、(2)項に記載の発明において、前記押圧手段を、前記ワークの上面に接する押圧部と、該押圧部のワークを押圧する面と直交する方向に昇降移動する支持部と、前記押圧部と支持部を上方に付勢する付勢手段と、前記支持部が昇降移動可能に設けられた前記チャンバ内の空間の密閉状態を保持する密閉状態保持手段とを備えた構成とすることにより、チャンバ内を減圧すると、密閉状態保持手段によってチャンバ内の空間の密閉状態が保持された状態で、付勢手段に抗して支持部がワークの上面に対して直交する方向に下降移動し、押圧部がワークの上面に接して押圧する。そして、加熱部材の熱がワークに伝導されて、適切にはんだ箔が溶融してワークの接合部品が互いにはんだ付けされて、チャンバ内を常圧に戻すと、付勢手段により支持部が上昇移動して押圧部がワークから離れる。
【0028】
(4) 前記ワークを加熱する前にチャンバ内を減圧してから、チャンバ内に還元ガスを供給するとともに、前記加熱部材を前記はんだ箔が溶融しない温度まで昇温させ、
該還元ガスをチャンバ内から排出して減圧し、この状態で前記加熱部材を前記はんだ箔が溶融する温度まで昇温させることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のリフローはんだ付け方法。
【0029】
(4)項に記載の発明では、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の発明において、前記ワークを加熱する前にチャンバ内を減圧することによりはんだ箔が接合部品の間で押圧されて接合部品の形状に応じて展延される。そして、チャンバ内に還元ガスを供給することにより、接合部品のはんだ箔と接する部分の酸化膜が除去され、この状態で、前記加熱部材を前記はんだ箔が溶融しない温度まで昇温させて予熱しておく。続いて還元ガスをチャンバ内から排出して減圧し、この状態で前記加熱部材を前記はんだ箔が溶融する温度まで昇温させることにより、前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧してワークと加熱部材とを容易にかつ確実に密着させて加熱部材の熱をワークに伝導し、適切にはんだ箔を溶融させてワークの接合部品を互いにはんだ付けすることができる。
【0030】
(5) はんだ箔を介して接合部品を重合してなるワークが載置されて該ワークを加熱する加熱部材と、前記ワークが載置された加熱部材の周囲に密閉された空間を形成することが可能なチャンバと、該チャンバ内の密閉された空間を減圧する減圧手段とを備えてなるリフローはんだ付け装置であって、
前記チャンバ内を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧する押圧手段を設けたことを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【0031】
(5)項に記載の発明では、押圧手段がチャンバ内の空間を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧するため、ワークと加熱部材とを容易にかつ確実に密着させることができ、したがって、減圧雰囲気下であっても加熱部材の熱をワークに伝導して、適切にはんだ箔を溶融させてワークの接合部品を互いにはんだ付けすることができる。
【0032】
(6) 前記押圧手段は、前記チャンバ内を減圧することによってチャンバ内に突出して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧するものであることを特徴とする(5)項に記載のリフローはんだ付け装置。
【0033】
(6)項に記載の発明では、(5)項に記載の発明において、押圧手段を、前記チャンバ内を減圧することによってチャンバ内に突出して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧するものとすることにより、具現化することができる。
【0034】
(7) 前記押圧手段は、前記ワークの上面に接する押圧部と、該押圧部と直交する方向に昇降移動する支持部と、前記押圧部と支持部を上方に付勢する付勢手段と、前記支持部が昇降移動可能に設けられた前記チャンバ内の空間の密閉状態を保持する密閉状態保持手段とを備えていることを特徴とする(6)項に記載のリフローはんだ付け装置。
【0035】
(7)項に記載の発明では、(6)項に記載の発明において、前記押圧手段を、前記ワークの上面に接する押圧部と、該押圧部と直交する方向に昇降移動する支持部と、前記押圧部と支持部を上方に付勢する付勢手段と、前記支持部が昇降移動可能に設けられた前記チャンバ内の空間の密閉状態を保持する密閉状態保持手段とを備えた構成とすることにより、チャンバ内を減圧すると、密閉状態保持手段によってチャンバ内の空間の密閉状態が保持された状態で、付勢手段に抗して支持部がワークの上面に対して直交する方向に下降移動し、押圧部がワークの上面に接して押圧する。そして、加熱部材の熱がワークに伝導されて、適切にはんだ箔が溶融してワークの接合部品が互いにはんだ付けされて、チャンバ内を常圧に戻すと、付勢手段により支持部が上昇移動して押圧部がワークから離れる。
【0036】
(8) 前記チャンバ内に還元ガスを供給する手段を備えていることを特徴とする(5)〜(7)のいずれか1項に記載のリフローはんだ付け装置。
【0037】
(8)項に記載の発明では、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の発明において、はんだ箔の溶融温度に加熱する前にチャンバ内に還元ガスを供給し、その後、チャンバ内から還元ガスを排出して減圧し、この状態で前記加熱部材を前記はんだ箔が溶融する温度まで昇温させる。これにより、接合部品のはんだ箔と接する部分の酸化膜が除去された状態で、押圧手段によってワークと加熱部材とが互いに押し付けられて加熱部材から熱が接合部品を介してはんだ箔に伝導されるため、適切にはんだ箔を溶融させてワークの接合部品を互いにはんだ付けすることができる。
【0038】
(9) 前記加熱部材は、前記はんだ箔が溶融しない温度と、前記はんだ箔が溶融する温度とに昇温するよう制御可能であることを特徴とする(5)〜(8)のいずれか1項に記載のリフローはんだ付け装置。
【0039】
(9)項に記載の発明では、(5)〜(8)のいずれか1項に記載の発明において、加熱部材を、前記はんだ箔が溶融しない温度と、前記はんだ箔が溶融する温度とに昇温するよう制御可能であることとすることにより、チャンバ内を減圧する前からはんだ箔が溶融しない温度にワークを予熱し、チャンバ内の減圧が完了してからはんだ箔が溶融する温度に僅かな時間で昇温させることができる。
【0040】
(10) 前記加熱部材は、ヒータの熱を伝導する熱伝導部材により構成されていることを特徴とする(5)〜(9)のいずれか1項に記載のリフローはんだ付け装置。
【0041】
(10)項に記載の発明では、(5)〜(9)のいずれか1項に記載の発明において、前記加熱部材を熱伝導部材で構成することにより、ヒータの熱を適切にワークへ伝導して加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のリフローはんだ付け装置の実施の一形態を説明するために示した概念図である。
【図2】図1の状態からチャンバ内を減圧した状態を説明するために示した概念図である。
【図3】本発明のリフローはんだ付け方法の実施の一形態を説明するために、加熱部材の温度と、チャンバ内の圧力との時間に対する変化を示したグラフである。
【図4】チャンバ内を減圧することによって押圧手段が加熱部材に対してワークを押し付けて密着させている状態を説明するために部分的に示した概念図である。
【図5】本発明の、ワークを加熱する前にチャンバ内を減圧することによりはんだ箔を展延させる実施の形態を説明するために要部を拡大して示した概念図である。
【図6】従来の一般的なリフローはんだ付け装置を説明するために示した概念図である。
【図7】従来のリフローはんだ付け装置において、加熱部材とワークの接合部品とが密着していない場合の、常圧時(a)と減圧時(b)を説明するために示した概念図である。
【図8】加熱部材とワークの接合部品とを密着させるために、加熱部材に螺合されたボルトを締め付けて押さえ部材により接合部品を押さえつける構成を説明するために示した概念図である。
【図9】図8に示した構成において、ボルトを異なるトルクで締め付けた場合の、加熱部材と接合部品との温度と、チャンバ内の圧力の時間に対する変化を説明するために示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
最初に、本発明のリフローはんだ付け装置の実施の一形態を、図1と図2に基づいて詳細に説明する。
本発明のリフローはんだ付け装置は、概略、はんだ箔1を介して接合部品2、3を重合してなるワークWが載置されてこのワークWを加熱する加熱部材5と、ワークWが載置された加熱部材5の周囲に密閉された空間を形成することが可能なチャンバ6と、このチャンバ5内の密閉された空間を減圧する減圧手段7と、チャンバ6内を減圧することによって生じるチャンバ6の内部と外部との圧力差を利用してワークWと加熱部材5とを互いに押し付けるように押圧する押圧手段8とを備えている。
さらに、本発明のリフローはんだ付け装置は、この実施の形態の場合、チャンバ6内に還元ガスを供給する手段9を備えている。
【0044】
ワークWは、第1及び第2の接合部品2、3の間にはんだ箔1が配置され積重されたものにより構成されている。はんだ付けにより互いに接合される接合部品2、3としては、たとえば、半導体などの素子(第1の接合部品)2と、リードフレーム(第2の接合部品)3とがある。リードフレーム3は、たとえば銅など、導電性を有する素材により構成されている。素子2は、治具30により、リードフレーム3に対して位置決め固定される(図5を参照)。素子2とリードフレーム3との間に配置されるはんだ箔1は、この実施の形態では、はんだにフラックスが混錬されたクリームはんだを使用することなく、たとえば、鉛フリーの錫合金により構成することができる。はんだ箔1は、素子2の大きさや形状に応じて成形されている。
【0045】
加熱部材5は、熱伝導率が良好な材質により構成され、平板状に成形されたもので、この実施の形態の場合、銅板が採用されている。加熱部材5は、後述するチャンバ6の内部に所定の高さで設けられている。加熱部材5の下方には、電熱ヒータ50などが複数配設されている。加熱部材5上には、ワークWが載置され、ヒータ50から発せられる熱をワークWに伝導して所定の温度(この温度T1とT2については後述する)に制御可能に加熱する。なお、加熱部材5は、この実施の形態に限定されることはなく、たとえば銅板の内部に複数の電熱ヒータを配設したものとするなど、ワークWを支持して所定の温度に制御可能に加熱することができるものであれば、他の形態とすることができる。
【0046】
チャンバ6は、ヒータ50の熱を伝導する加熱部材5と、この加熱部材5上に載置されるワークWとを収容し得る大きさの空間を内部に形成し、かつ、減圧されることにより変形しないような強度を有する箱状に成形されたもので、ワークWの搬入と搬出が可能な開口部と、この開口部を開閉することが可能な扉を備えている。扉を閉めることにより、チャンバ6の内部に密閉された空間を形成し得るように開口を気密に閉鎖することができる。
【0047】
減圧手段7は、チャンバ6の内部を外部と遮断して密閉された空間を形成し、また、チャンバの内の減圧された空間を常圧(大気圧)に戻すよう切り換える開閉弁70と、チャンバ6内に形成された密閉空間を減圧する真空ポンプ71とを備えている。開閉弁70を解放することにより、チャンバ6の内部が外部と連通されて、チャンバ6内の空間を常圧に戻すことができる。さらに、この実施の形態では、チャンバ6と開閉弁70との間の管路72から分岐して管路92が設けられており、この管路92には、チャンバ6内に還元ガスを供給する手段9が設けられている。この還元ガス供給手段9は、たとえば水素など、還元ガスを貯留したタンク91と、還元ガスのチャンバ6内への供給と停止を制御する開閉弁90とを備えている。なお、還元ガス供給手段9は、この実施の形態に限定されることはなく、減圧手段7の管路72とは別に管路92をチャンバ6に接続するなどしてもよい。
【0048】
押圧手段8は、ワークWの上面を押圧する押圧部80と、押圧部80のワークWを押圧する面と直交する方向に延びる支持部81と、押圧部80と支持部81を上方に付勢する付勢手段82と、支持部81が昇降移動可能に設けられたチャンバ6内の空間の密閉状態を保持するための密閉状態保持手段83とを備えている。押圧部80は、図5に参照されるように、位置決め治具30によりリードフレーム3上にはんだ箔1とともに位置決めされた素子2を押圧し得る大きさに成形されている。支持部81は、下方の押圧部80と上方のフランジ部81aとが一体に成形されたもので、図1および図2における上下方向に延びており、チャンバ6の天井部に穿設された孔60に挿通されている。チャンバ6の天井部の上面とフランジ部81aとの間には、押圧部80と支持部81を上方に付勢する手段としてバネ82が設けられている。さらに、チャンバ6の天井部の上面とフランジ部61aとの間であって、バネ82の外側には、たとえば蛇腹やベローズなど、チャンバの密閉を保持しつつ押圧部80と支持部81の昇降移動を許容する密閉状態保持手段83が設けられている。なお、密閉状態保持手段83は、この実施の形態に限定されることはなく、チャンバ6の孔60の内周面に支持部81と摺動可能に接するシール部材を設けるなどにより構成することもできる。
【0049】
次に、本発明のリフローはんだ付け方法の実施の一形態を、上述したように構成された装置を用いる場合により、この装置の作動とともに図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
【0050】
本発明のリフローはんだ付け方法は、概略、はんだ箔1を介して接合部品2、3が重合されたワークWを、チャンバ6内に設けられた加熱部材5上に載置し、チャンバ6を密閉してその内部空間を減圧し、加熱部材5によりワークWを加熱し、はんだ箔1を溶融させて接合部品2、3を互いにはんだ付けするものであって、チャンバ6内の空間を減圧することによって生じるチャンバ6内部と外部との圧力差を利用して、ワークWと加熱部材5とを互いに押し付けるように押圧するものである。
【0051】
ワークWをリフローはんだ付けするに際しては、リードフレーム3上にはんだ箔1と素子2を積重する。このとき、はんだ箔1は、図5に示したように波打つなど、変形している場合がある。なお、はんだ箔1と素子2は、治具30を用いることによってリードフレーム3上の所定の位置に位置決めすることができる。このように積重されたワークWは、チャンバ6の扉を開いて解放された状態の開口から内部の加熱部材5上の所定の位置(押圧手段8の押圧部80によって加圧され得る位置)に載置される。そして、扉を閉じて開口を閉鎖し、開閉弁70、90を閉じた状態とすると、チャンバ6内には密閉された空間が形成される。
【0052】
この状態で減圧手段7の真空ポンプ71を駆動して空間内を減圧する(図3のP1)。これにより、チャンバ6の密閉された空間である内部と常圧である外部との間には圧力差が生じることとなる。そのため、図2に示したように、押圧手段8の押圧部80と支持部81は、バネ82の付勢に抗して下降移動し、押圧部80が素子2を押圧することとなる。そのため、図5に示したように、はんだ箔1が変形している場合であっても、押圧部80が矢印で示したように押圧することにより、はんだ箔1が素子2とリードフレーム3との間で押圧されてその変形が矯正されることとなる。
【0053】
続いて、還元ガス供給手段9の開閉弁90を開いて、タンク91から還元ガスをチャンバ6内に導入させ(図3のP2)、また、ヒータ50を以下に説明する所定の温度に加熱する。これにより、ヒータ50から発せられた熱は、加熱部材5を介してリードフレーム3に伝導される。このとき、ヒータ50による加熱は、はんだ箔1の溶融温度に達しない程度の温度(図3のT1)までリードフレーム3を昇温させるよう制御される。リードフレーム3と素子2は、その表面の酸化被膜が還元ガスによって除去される。なお、このとき、チャンバ6内の圧力は、還元ガスの導入によって略常圧に戻されるため(図3のP2−P3)、押圧手段8の押圧部80と支持部81がバネ82の付勢によって上昇移動し、図1に示したように復帰する。
【0054】
その後、所定時間経過してリードフレーム3の温度がT1で安定すると、開閉弁90を閉じて、再度真空ポンプ71を駆動し、チャンバ6内の空間を減圧する(図3のP3−P4)。これにより、図2に示したように、押圧手段8の押圧部80と支持部81が再びバネ82の付勢に抗して下降移動し、押圧部80がワークWを全面にわたって均等に押圧することとなる。そのため、図4に示すように、加熱部材5とリードフレーム3のいずれかが変形するなどして平坦でない場合であっても、互いの表面が密着することとなる。
【0055】
また、このチャンバ内の減圧状態を所定時間維持した状態のとき(図3のP4−P5)に、はんだ箔1の溶融温度に達する温度(図3のT2)までリードフレーム3を昇温させるようヒータ50による加熱を制御する。このとき、上述したように、加熱部材5とリードフレーム3の表面が互いに密着しているため、ヒータ50の発した熱が加熱部材5を介して適切にリードフレーム3に伝導される。その結果、リードフレーム3をはんだ箔1の溶融温度(図3のT2)に容易にかつ正確に昇温させるよう制御することができる。
【0056】
はんだ箔1が適切に溶融されると、開閉弁70を開いてチャンバ6内に大気を導入して常圧に戻し(図3のP5−P6)、ヒータ50による加熱を停止する。その後、チャンバ6の扉を開いて、溶融したはんだの温度が低下することにより固化してリードフレーム3と素子2が適切にはんだ付けされたワークWを開口から取り出す。
【0057】
なお、本発明においては、一般的な従来の技術のようにはんだにフラックスが混錬されたクリームはんだを使用することなく、錫合金などにより構成されたはんだ箔1を使用し、このはんだ箔1を溶融させるに先だって還元ガスをチャンバ6内に導入するため、はんだ箔1の変形を矯正することができるとともに、素子2とリードフレーム3の酸化皮膜を除去することができ、しかも、クリームはんだのように加熱することによってフラックスが気化することに起因するボイドの発生を防止することができる。
【0058】
そして、本発明では、はんだ付けを行う毎に各ワークWを従来の技術のように治具(特許文献1)やボルトの締め付け(図8)によって加熱部材5に押し付けて密着させる必要がなく、チャンバ6の減圧による圧力差を利用するだけで、ワークWを加熱部材5と全面にわたって容易にかつ確実に密着させて適切に加熱させることができる。
【符号の説明】
【0059】
W:ワーク、 1:はんだ箔、 2:素子(第1の接合部品)、 3:リードフレーム(第2の接合部品)、 5:加熱部材、 6:チャンバ、 7:減圧手段、 8:押圧手段、 9:還元ガス供給手段、 80:押圧部、 81:支持部、 82:バネ(付勢手段)、 83:蛇腹またはベローズ(密閉状態保持手段)、 T1:はんだ箔が溶融しない程度の温度、 T2:はんだ箔を溶融させる温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ箔を介して接合部品が重合されたワークを、チャンバ内に設けられた加熱部材上に載置し、チャンバを密閉してその内部空間を減圧し、前記加熱部材によりワークを加熱し、前記はんだ箔を溶融させて接合部品を互いにはんだ付けするリフローはんだ付け方法であって、
前記チャンバ内の空間を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧することを特徴とするリフローはんだ付け方法。
【請求項2】
はんだ箔を介して接合部品を重合してなるワークが載置されて該ワークを加熱する加熱部材と、前記ワークが載置された加熱部材の周囲に密閉された空間を形成することが可能なチャンバと、該チャンバ内の密閉された空間を減圧する減圧手段とを備えてなるリフローはんだ付け装置であって、
前記チャンバ内を減圧することによって生じる前記チャンバ内部と外部との圧力差を利用して前記ワークと加熱部材とを互いに押し付けるように押圧する押圧手段を設けたことを特徴とするリフローはんだ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10117(P2013−10117A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144186(P2011−144186)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】