説明

リフローはんだ付け装置及びその方法

【課題】プリント配線板の一方の面側のみを加熱してリフローはんだ付けを行う場合に、専用の冷却手段を用いることなく、他方の面側の温度上昇を抑制して照り返しを防止し、プリント配線板上の耐熱温度の低い電子部品のダメージからの保護や、プリント配線板上のはんだ付けが完了している被はんだ付け部のはんだに再溶融が生じることのないようにすること。
【解決手段】炉体を上側炉体101と下側炉体102とに分割され断熱材を介して上側炉体101と下側炉体102とを一体に繋ぎ合わせる構成とし、また、搬送コンベア105により炉体内を搬送されるプリント配線板100に対面して上側炉体101,下側炉体102のそれぞれに設けられる独立作動可能な複数の加熱手段(106〜110)のうち、少なくとも一方の炉体側の加熱手段のプリント配線板に対面する面に着脱自在な断熱板110を設けた構成を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載されその被はんだ付け部に予めはんだが供給されたプリント配線板のはんだ付けを行うリフローはんだ付け装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リフローはんだ付け方法には各種の方法があり、プリント配線板の両面を一括してリフローはんだ付けを行う方法の他に、一方の面のリフローはんだ付けを行った後に他の面リフローはんだ付けを行う方法や、一方の面にのみ被はんだ付け部が存在するため、当該の面のみをリフローはんだ付けを行う方法、等々がある。これらは、プリント配線板にはんだ付け実装される電子部品の種類や実装構造により選択される。
【0003】
一般的なリフローはんだ付け装置では、炉体内を搬送されるプリント配線板の両面側に対面してそれぞれ加熱手段を設け、プリント配線板の両面一括リフローはんだ付けを行うことが可能に構成されている。そして、プリント配線板の一方の面側のみのリフローはんだ付けを行う場合には、はんだ付けを行わない側の加熱手段を停止させてリフローはんだ付けが行われている。
【0004】
加熱手段としては、熱風加熱手段を主とし赤外線加熱手段を補助的に使用する併用加熱が一般的に使用され、熱風加熱手段のみの構成もあるが、この熱風加熱手段からも赤外線放射が生じるため、完全な熱風加熱手段のみの構成はない。便宜上において、赤外線による加熱割合が小さいものを熱風加熱方式と呼称している場合が通常である。
【0005】
ところで、プリント配線板の一方の面側のみを加熱してリフローはんだ付けを行う場合において、加熱されない面側の温度すなわちプリント配線板の板面温度や実装される電子部品の温度を予め決めた所定の温度以下に制限してリフローはんだ付けを行いたい場合がある。
【0006】
例えば、既にはんだ付けが完了している部品が搭載されていて、はんだの再溶融によるはんだ付け品質の低下を防ぎたい場合や、耐熱温度の低い電子部品が搭載されている場合等である。以下、図4を参照して説明する。
【0007】
図4は、リフローはんだ付けを行うプリント配線板の一例を説明する図である。なお、図4(a)は、プリント配線板に耐熱温度の低いリード型電子部品が搭載されている実装例に対応し、図4(b)は、プリント配線板に既にはんだ付けが完了している部品が搭載されている実装例に対応する。
【0008】
図4(a),図4(b)において、401はプリント配線板である。プリント配線板401の下方側の面に被はんだ付け部を有し、その被はんだ付け部にはクリームはんだ402を予め供給してある。
【0009】
図4(a)の例では、プリント配線板401の上方側の面に耐熱温度の低いリード型電子部品403が搭載されている。
【0010】
図4(b)の例では、プリント配線板401の上方側の面に既にはんだ付けが完了しているチップ型電子部品405が搭載されている。
【0011】
図4(a),図4(b)に示すようなプリント配線板401のチップ型部品404,407のリフローはんだ付けを行う場合には、リード型電子部品403の耐熱温度や既にはんだ付けが完了しているチップ型電子部品404の被はんだ付け部406のはんだが再溶融するような温度以上に、プリント配線板401の上方側の面の温度を、上昇させてはならない。そのため、リフローはんだ付け装置の上方側の加熱手段の作動は停止させてはんだ付けを行っている。
【0012】
しかしながら、一般的なリフローはんだ付け装置では、はんだ付けを行わない側(図4(a),図4(b)において上側)の加熱手段の作動を停止しても、プリント配線板401の上側(はんだ付けを行わない側)の面の温度や電子部品の温度が十分には下がらないのが実情である。つまり、既にはんだ付けが完了している被はんだ付け部406のはんだが再溶融したり、耐熱温度の低い電子部品403がダメージを受けて性能維持ができなくなってしまう。
【0013】
そのため、特許文献1に開示されるように、冷風(外気)を炉体内に導入して、はんだ付けを行わない側において所定の温度が維持できるように構成した特別なリフローはんだ付け装置が使用されている。
【特許文献1】特開平4−271192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、炉体内に窒素ガス等の不活性ガスを供給して低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中ではんだ付けを行うようなリフローはんだ付け装置には、特許文献1の技術を適用することができない。
【0015】
すなわち、炉体内に低酸素濃度の不活性ガス雰囲気を維持することと、外気(冷気)を導入して冷却することとは相反するからである。
【0016】
また、大気雰囲気中でリフローはんだ付けを行うリフローはんだ付け装置であっても、予め決めた所定の温度になるように外気供給量を調節することが難しいという問題点があった。外気供給量が多くなるとプリント配線板の温度が過剰に低下するばかりか、リフローはんだ付けを行う側の面の加熱温度も低下するようになり、はんだ付けに必要な加熱プロファイルを得難くなるからである。
【0017】
さらには、一般的なリフローはんだ付け装置と特許文献1に開示されるようなリフローはんだ付け装置とをそれぞれ設備すると、生産コストが高まるばかりか、工場内のスペースを有効利用することができなくなるといった問題点もあった。
【0018】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、プリント配線板の一方の面側のみを加熱して(他方の面側の加熱手段を休止して)リフローはんだ付けを行う場合に、専用の冷却手段を用いることなく、他方の面側の温度上昇を抑制し、プリント配線板上の耐熱温度の低い電子部品をダメージから保護し、また、プリント配線板上のはんだ付けが完了している被はんだ付け部のはんだに再溶融が生じることのないように、照り返しを防止して、他方の面側の加熱手段が休止している状態における温度オフセットを可変することが可能なリフローはんだ付け装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のリフローはんだ付け装置は、作動している加熱手段以外から放射される熱エネルギーを大幅に少なくして、温度オフセットを可変することができるように構成したところに特徴がある。
【0020】
すなわち、炉体が上側炉体と下側炉体とに分割され断熱材を介して前記上側炉体と下側炉体とを一体に繋ぎ合わせると供に前記炉体に搬入口と搬出口とを設けて、この搬入口および搬出口にわたりプリント配線板の搬送手段を設ける。そして、前記搬送手段により搬送されるプリント配線板に対面して前記上側炉と下側炉の双方にそれぞれ独立作動可能な加熱手段を設けるとともに、少なくとも一方の側の炉の加熱手段のプリント配線板に対面する面に着脱自在な断熱板を設けたことを特徴とする。
【0021】
一方の側の加熱手段は、その作動(即ち加熱)を停止しても、他方の側の加熱手段により加熱されたり炉内雰囲気温度が温度上昇するため、当該温度による赤外線放射(いわゆる照り返し)を生じる。そのため、温度上昇させたくない領域(面側)の温度がそれ程には低下しない。しかし、炉体を上下に分割して断熱材を介して繋ぎ合わせることにより、一方の炉体から他方の炉体への熱伝導が無くなり炉体温度にオフセットを与えることができるようになる。また、作動を停止させた加熱手段を断熱板で覆うことにより、作動している加熱手段からの加熱エネルギーを遮断してその温度上昇を少なくして照り返しを防止することができる。
【0022】
その結果、作動を停止している加熱手段や炉体からの照り返しが無くなり、プリント配線板の一方の面を加熱しつつ他方の面の温度上昇を大幅に抑制することができるようになる。
【0023】
また、上記構成において用いる断熱板は、熱伝導率が1.1W/(mk)以下の部材であり炉体内雰囲気温度における放射に波長1μm以上の放射が含まれる割合が30%以下の部材で構成する。すなわち、プリント配線板やそこに搭載される電子部品等は、波長1μm以上の赤外線を吸収し易くそれにより温度上昇し易いことが知られている。
【0024】
そのため、このような波長帯域の照り返しを生じない断熱板を使用することにより、作動停止中の加熱手段の温度上昇を抑制しつつ温度上昇の要因となる断熱板からの照り返しも少なくすることができる。
【0025】
また、鉄鋼やアルミニウムの熱伝導率は、60〜210W/(mk)であるのに対して、断熱板の熱伝導率を100分の1以下にすることにより、停止している加熱手段への熱伝導や放射加熱は殆ど生じなくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のリフローはんだ付け装置によれば、プリント配線板の一方の面側のみを加熱してリフローはんだ付けを行う場合に、専用の冷却手段を用いることなく、加熱していない面側の温度上昇を抑制し、照り返しを防止して、耐熱温度の低い電子部品をダメージから保護し、また、はんだ付けが完了している被はんだ付け部のはんだに再溶融が生じることのないようにすることができる。
【0027】
しかも、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気を維持することも可能であり、専用のリフローはんだ付け装置を追加して設備する必要もない。
【0028】
従って、リフローはんだ付け装置の作動範囲を大幅に拡張して1台のリフローはんだ付け装置であらゆるはんだ付け方法を実現することができるようになり、はんだ付け実装に要するコストも大幅に削減することができるようになる。
【0029】
このように、プリント配線板の両面を一括してリフローはんだ付け可能なリフローはんだ付け装置において、プリント配線板の一方の面側のみのリフローはんだ付けを行う際に、該プリント配線板のはんだ付けを行う面側とはんだ付けを行わない面側との温度オフセットが可能なリフローはんだ付け装置を実現することができる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のオフセット可変リフローはんだ付け装置は、次のような形態において実現することができる。
【0031】
<構成の説明>
図1は、本発明の一実施形態を示すリフローはんだ付け装置の構成の一例を説明する縦断面図である。
【0032】
図2は、図1に示したリフローはんだ付け装置の横断面構成の一例を示す横断面図であり、図1と同一のものには同一の符号を付してある。なお、図2(a)は、図1に示したリフローはんだ付け装置の横断面図に対応し、図2(b)は、図2(a)に示す搬送コンベア105の横断面を拡大した図に対応する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態のリフローはんだ付け装置は、6ゾーン構成の例であり、昇温工程に1ゾーン、均熱工程に2ゾーン、リフロー工程に2ゾーン、冷却工程に1ゾーンを設けた構成である。なお、ゾーン数については任意に選択される設計事項である。
【0034】
このように、加熱雰囲気や冷却雰囲気を保持する炉体は、上側炉体101と下側炉体102とに分けて構成してあり、図2(a)に示すように断熱材(例えば、シリコンゴム,テフロン(登録商標)材等)201で繋ぎ合わせて一体に構成してある。
【0035】
断熱材201による上側炉体101と下側炉体102との繋ぎ合わせの位置は、プリント配線板100の加熱面(図2(a)では下面)と加熱を行わない面(図2(a)では上面)との界面位置となる搬送コンベア105の位置である。また、加熱炉には、プリント配線板を搬入する搬入口103と搬出する搬出口104とを設けてあり、この搬入口103から搬出口104にわたり搬送コンベア(チェーンコンベア)105がプリント配線板100を搬送する構成となっている。
【0036】
この搬送コンベア105は、図示しないコンベアフレームにより、リフローはんだ付け装置本体に取り付けられており、図2(b)に示すように、チェーンガイド202,搬送チェーン203を有する。また、この搬送チェーン203には、ピン204,ガイド板205が設けられている。そして、この搬送チェーン203が、走行路であるチェーンガイド202に沿って走行することにより、ピン204,ガイド板205で保持されるプリント配線板100を搬送する構成となっている。なお、この種の搬送コンベアについては、特開平10−163622号公報に開示されている。
【0037】
このように、搬送コンベア105を挟んで炉体を上側炉体101,下側炉体102に分割して断熱材201により断熱することにより、加熱手段を作動させない側の炉体は積極的に自己放熱し、大幅に温度低下させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、断熱材201の一例として、シリコンゴムやテフロン(登録商標)材を素材とした断熱材を挙げるが、上述したような上側炉体101と下側炉体102との断熱を目的としたものであれば、どのような素材を用いてもよいことはいうまでもない。
【0039】
一方で、昇温工程,均熱工程,リフロー工程の各ゾーンは同一の構成となっており、上側炉体101,下側炉対102の双方にそれぞれ加熱手段(106〜110)が設けられている。この加熱手段の構成は熱風循環式であり、ヒータ106によって加熱された雰囲気をモータ107に回転駆動されたファン108により循環させ、熱風吹き出し板109の多数の透孔から吹き出す熱風をプリント配線板に吹きつけて加熱する構成である。なお、熱風吹き出し板109は、例えば、アルミニュウム等の素材で構成されている。
【0040】
そして、吹きつけられた熱風は還流路110を通ってヒータ106側に戻る。なお、熱風温度に加熱されている熱風吹き出し板109からは赤外線が放射され、プリント配線板100との温度差の関数としてプリント配線板100が赤外線加熱される。従って、熱風加熱を主とし赤外線加熱を補助的に用いる加熱が行われる。
【0041】
このような構成により、本実施形態のリフローはんだ付け装置は、電子部品が搭載されその被はんだ付け部に予めクリームはんだが供給されたプリント配線板100のはんだ付けを行う。
【0042】
なお、上側炉体101の加熱手段と、下側炉体102の加熱手段はそれぞれ独立に作動可能であり、搬送コンベア105で搬送されるプリント配線板の片面のみをリフローはんだ付けすることができる。
【0043】
なお、図2(a)に示したように、搬送コンベア105は、上側炉体101,下側炉体102を遮断するものではない。従って、昇温工程,均熱工程,リフロー工程の各ゾーンでは、一方の炉体(例えば、上側炉体101)の加熱手段を停止していても、もう一方の炉体(即ち、下側路体102)の加熱手段を作動させると、下側路体102の熱風吹き出し板109から噴出される熱風や、炉内雰囲気温度が温度上昇することにより、上側炉体101の熱風吹き出し板109が加熱されて、赤外線放射(いわゆる照り返し)を生じてしまう。これにより、搬送コンベア105により搬送されるプリント配線板100の加熱手段を停止している側(即ち、上側)をも加熱してしまうといった事態が発生してしまう。
【0044】
そこで、本実施形態では、昇温工程,均熱工程,リフロー工程の各ゾーンに設けられた熱風吹き出し板109(上側炉体101,下側路体102の双方の熱風吹き出し板109)の熱風吹き出し面(即ち、搬送コンベア105で搬送されるプリント配線板100に対面する面)に該熱風吹き出し面を覆うように、断熱板111を着脱自在に設けることができるように構成してある。
【0045】
図1,図2の例では、リフロー工程の上側の熱風吹き出し板109に断熱板111を固定具112を用いて取り付けてある。即ち、これにより、一方側の加熱手段(停止されている加熱手段)が断熱板111で覆われることとなり、上述したような加熱している側の炉体からの照り返しによるプリント配線板100の温度上昇を防止することが可能となる。
【0046】
なお、図1,図2の例では、リフロー工程の上側の熱風吹き出し板109に断熱板111を固定具112を用いて取り付けてあるが、下側の熱風吹き出し板109に断熱板111を固定具112を用いて取り付けてもよい。
【0047】
図3は、図1に示した断熱板111の熱風吹き出し板109への着脱構成の一例を示した図であり、図1に示した縦断面図を拡大して図に対応する。なお、図1,図2と同一のものには同一の符号を付してある。
【0048】
すなわち、断熱板111に設けた掛け具301にばね302を介在させた吊り具(ばね302,固定具112からなる)を掛け、固定具112を矢印B上方向に締めることにより、着脱自在に固定する構成である。
【0049】
また、断熱板111を取り外す場合は、固定具112を矢印B下方向に緩めることにより、吊り具を断熱板111に設けた掛け具から外すことができる。
【0050】
なお、断熱板111の熱風吹き出し板109への着脱方法は、図3に示した方法に限られるものではなく、熱風吹き出し板109に断熱板111を着脱可能な方法であればどのような方法であってもよい。例えば、熱風吹き出し板109にレールを設け、このレールに断熱板111を差し込んで装着するような方法であってもよい。
【0051】
また、断熱板111に使用できる部材としては、例えば白色系の石膏ボード等が適している。この種の石膏ボードは、熱伝導率が0.9W/(mk)以下の部材が多く鉄鋼やアルミニウムの熱伝導率(60〜210W/(mk))の100分の1以下であり、熱風吹き出し板に使用される部材の温度上昇を極めて良好に抑制することができる。しかも、この素材は、炉体内雰囲気温度(200℃〜300℃程度)の雰囲気に接しても波長1μm以上の赤外線が殆ど放射されることがなく、その放射割合は全放射の約30%以下である。
【0052】
すなわち、白色系の断熱材であり200℃〜300℃程度の雰囲気温度における赤外線放射が少ないことと相まって波長1μm以上の赤外線が放射される割合が30%以下であれば、照り返しによりプリント配線板を加熱することが殆ど無く、その影響を実質的に考える必要がなくなる。
【0053】
なお、断熱板111に使用できる部材は、上記白色系の石膏ボードに限られるものではなく、熱伝導率が1.1W/(mk)以下の部材であり炉体内雰囲気温度における放射に波長1μm以上の放射が含まれる割合が30%以下の部材であれば他の部材であってもよい。
【0054】
以下、図1を参照して、リフロー工程の冷却工程について説明する。
【0055】
リフロー工程の後段に設けた冷却工程は、ブロワで循環させた冷風をプリント配線板100に吹きつける構成である。
【0056】
即ち、図1に示すように、吹き出しチャンバ113に設けた吹き出し板の多数の透孔114から冷風を吹き出させ、プリント配線板100に吹きつける仕組みである。そして、この冷却に使用された雰囲気は、吸引チャンバ115で吸い込まれ、熱交換フィン116で冷却した後にブロワ117に還流する。
【0057】
なお、熱交換フィン116は、ヒートパイプを使用して排熱する構成である。また、吸引チャンバ115の下方に設けたタンク118は、液化したフラックスヒュームを回収する手段である。
【0058】
<はんだ付け態様の説明>
以下、背景技術の欄で示した図4を参照して、図1〜図3に示したオフセット可変なリフローはんだ付け装置を使用して、リフローはんだ付けを行うプリント配線板のはんだ付け実装例について説明する。即ち、図1〜図3で示したプリント配線板100を図4(a),図4(b)に示したプリント配線板401とした場合を例に説明する。
【0059】
先に説明したように、図4(a),図4(b)共にプリント配線板401の下方側の面に被はんだ付け部を有し、その被はんだ付け部にはクリームはんだ402を予め供給してある。そして、図4(a)の例では、プリント配線板401の上方側の面に耐熱温度の低いリード型電子部品403が搭載され、図4(b)の例では、プリント配線板401の上方側の面に既にはんだ付けが完了しているチップ型電子部品405が搭載されている。
【0060】
図4(a),図4(b)に示したようなプリント配線板401のリフローはんだ付けを行う場合には、リード型電子部品403の耐熱温度や既にはんだ付けが完了しているチップ型電子部品405の被はんだ付け部406のはんだが再溶融するような温度以上に、プリント配線板401の上方側の面の温度を、上昇させてはならない。そのため、リフローはんだ付け装置の上方側の加熱手段の作動は停止させる。
【0061】
そして、最も高い温度に加熱するリフロー工程においては、上方側に設けた加熱手段に断熱板111を設ける。もちろん、昇温工程や均熱工程の各ゾーンにおいても上方側の加熱手段に断熱板111を設けても良い(装着しても良い)。
【0062】
プリント配線板401の下方側の面の加熱プロファイルは周知加熱プロファイルで良い。例えば、昇温工程で約150℃程度まで温度上昇させ、均熱工程では150℃〜170℃の温度を維持する。そして、リフロー工程では約220℃(この温度は、クリームはんだの種類により異なる)程度まで加熱し、リフローはんだ付を行う。
【0063】
図4(b)に示すようなプリント配線板401の下方側の面のみのリフローはんだ付けを行う場合には、昇温工程や均熱工程で、被はんだ付け部406のはんだが再溶融することがないので、上方側の加熱手段に断熱板111を設ける(装着する)必要はない。
【0064】
しかし、図4(a)に示すようなプリント配線板の下方側の面のみのリフローはんだ付けを行う場合には、リード型電子部品403に与える熱ストレスが小さくなるように、昇温工程や均熱工程の加熱手段にも断熱板111を設ける(装着する)と良い。
【0065】
このように、リフローはんだ付け装置の温度オフセットを可変することにより、上方側炉体101の温度が低くなる事と併せて、上方側炉体101の吹き出し板109ひいては加熱手段の温度が上昇しなくなる。
【0066】
また、断熱板111からの赤外線放射が殆ど無く、特に白色系の石膏ボードからは波長1μm以上の赤外線が殆ど放射されず、その割合も全放射の30%以下なので、プリント配線板401の上方側の面の温度が、耐熱温度の低いリード型電子部品403の品質を損なうような温度や、被はんだ付け部406のはんだの再溶融温度まで上昇することがない。
【0067】
以下、上述したような構成のリフローはんだ付け装置で上述したようなはんだ付け方法によりプリント配線板のリフローはんだ付けを実施した場合におけるプリント配線板の上方側の面/下方側の面の温度特性について示す。
【0068】
まず、上記図1〜図3に示したような構成のリフローはんだ付け装置において、リフロー工程ゾーンにおいて上方側炉体101の加熱手段に断熱板111を設けて(装着して)オフセットを与えて、プリント配線板の下方側の面のリフローはんだ付けを行った場合を例にして示す。
【0069】
この場合、使用するはんだに錫−亜鉛−ビスマス系のはんだを使用した場合に、リフロー工程のプリント配線板の下方側の面の温度は約220℃であった。一方、プリント配線板の上方側の面の温度は185℃以下であり、はんだの融点よりも大幅に低い温度に維持されて、被はんだ付け部のはんだが再溶融を生じることはなかった。
【0070】
次に、上記リフローはんだ付け装置において、冷却工程を除く全工程ゾーンの上方側炉体101の加熱手段に、断熱板111を設けて(装着して)オフセットを与えて、プリント配線板の下方側の面のリフローはんだ付けを行った場合を示す。
【0071】
この場合には、上記の場合と同じ加熱条件におけるプリント配線板の上方側の面の温度が約175℃になり、耐熱温度の低いリード型電子部品に与えるダメージを解消できるようになった。
【0072】
以上示したように、本発明のリフローはんだ付け装置は、加熱手段以外から放射される熱エネルギーを大幅に少なくして、温度オフセットを可変することができるように構成したところに特徴がある。
【0073】
即ち、本発明のリフローはんだ付け装置は、炉体が上側炉体101と下側炉体102とに分割され、断熱材201を介して上側炉体101と下側炉体102とを一体に繋ぎ合わせるとともに前記炉体に搬入口103と搬出口104とを設けて、この搬入口103および搬出口104にわたりプリント配線板100を搬送する搬送コンベア105を設けた構成となっている。そして、前記搬送コンベア105により搬送されるプリント配線板100に対面して加熱手段(106〜110)が設けられるとともに、この加熱手段のプリント配線板100に対面する面に断熱板111が着脱自在に設けられるように構成する。
【0074】
加熱手段(例えば、上側炉体101の加熱手段)はその作動(即ち、加熱)を停止しても、他の加熱手段(下側炉体102の加熱手段)により加熱されたり炉内雰囲気温度には温度上昇するため、当該温度による赤外線放射(いわゆる照り返し)を生じる。そのため、温度上昇させたくない領域(面側)の温度がそれ程には低下しない。
【0075】
しかし、本発明のように、炉体を上下に分割して断熱材201を介して繋ぎ合わせることにより、一方の炉体から他方の炉体への熱伝導が無くなり、双方の炉体温度にオフセットを与えることができるようになる。
【0076】
また、作動を停止させた加熱手段を断熱板111で覆うことにより、作動している加熱手段からの加熱エネルギーを遮断して、その温度上昇を少なくすることができる。
【0077】
この結果、作動を停止している加熱手段や炉体からの照り返しが無くなり、プリント配線板の一方の面を加熱しつつ他方の面の温度上昇を大幅に抑制することができるようになる。
【0078】
また、上記構成において用いる断熱板111は、熱伝導率が1.1W/(mk)以下の部材であり炉体内雰囲気温度における放射に波長1μm以上の放射が含まれる割合が30%以下の部材で構成する。プリント配線板やそこに搭載される電子部品等は、波長1μm以上の赤外線を吸収し易くそれにより温度上昇し易いことが知られている。そのため、このような波長帯域の照り返しを生じない断熱板を使用することにより、作動停止中の加熱手段の温度上昇を抑制しつつ温度上昇の要因となる断熱板からの照り返しも少なくすることができる。
【0079】
また、鉄鋼やアルミニウムの熱伝導率は60〜210W/(mk)であるのに対して、断熱板の熱伝導率を100分の1以下にすることにより、停止している加熱手段への熱伝導や放射加熱は殆ど生じなくなる。
【0080】
従って、本発明のオフセット可変なリフローはんだ付け装置によれば、プリント配線板の一方の面側のみを加熱して(他方の面側の加熱手段を休止して)リフローはんだ付けを行う場合に、専用の冷却手段を用いることなく他方の面側の温度上昇を抑制して照り返しを防止し(即ち、他方の面側の加熱手段が休止している状態における温度オフセットを可変することが可能となり)、耐熱温度の低い電子部品をダメージから保護し、また、はんだ付けが完了している被はんだ付け部のはんだに再溶融が生じることのないようにすることができる。
【0081】
しかも、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気を維持することも可能であり、専用のリフローはんだ付け装置を追加して設備する必要もない。即ち、リフローはんだ付け装置の作動範囲を大幅に拡張して、1台のリフローはんだ付け装置であらゆるはんだ付け方法を実現することができるようになり、はんだ付け実装に要するコストも大幅に削減することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
近年、電子装置の小型化が求められ1枚のプリント配線板に電子装置の全ての機能を搭載するようになってきた。そのため、プリント配線板の各面には、それぞれ異なる機能の電子回路ひいては電子部品が実装されるようになってきた。
【0083】
その結果、プリント配線板の各面に搭載される電子部品の種類が大幅に異なるようになり、それに理由してプリント配線板のリフローはんだ付けを行う際に、両面一括でリフローはんだ付けを行うのではなく、片面ずつ行われることが多くなってきた。そのため、2回目のリフローはんだ付けを行う際に、既にはんだ付けが完了している被はんだ付け部のはんだが再溶融しないようにすることが求められるようになった。
【0084】
本発明は、このようなプリント配線板のはんだ付けに利用可能な、はんだ付け実装技術の進歩を支える技術である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態を示すリフローはんだ付け装置の構成の一例を説明する縦断面図である。
【図2】図1に示したリフローはんだ付け装置の横断面構成の一例を示す横断面図である。
【図3】図1に示した断熱板の熱風吹き出し板への着脱構成の一例を示した図である。
【図4】リフローはんだ付けを行うプリント配線板の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0086】
100 プリント配線板
101 上側炉体
102 下側炉体
103 搬入口
104 搬出口
105 搬送コンベア
106 ヒータ
107 モータ
108 ファン
109 熱風吹き出し板
110 還流路
111 断熱板
112 固定具
201 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側炉体と下側炉体とに分割され前記上側炉体と下側炉体とが断熱材を介して一体に繋ぎ合わされる構成の炉体と、
前記炉体の搬入口および搬出口にわたりプリント配線板を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されるプリント配線板に対面して前記上側炉体,下側炉体のそれぞれに設けられる独立作動可能な複数の加熱手段と、
前記上側炉体に設けられる加熱手段,下側炉体に設けられる加熱手段の少なくとも一方の加熱手段のプリント配線板に対面する面に着脱自在な断熱板と、
を有することを特徴とするリフローはんだ付け装置。
【請求項2】
前記断熱板は、熱伝導率が1.1W/(mk)以下の部材であり炉体内雰囲気温度における放射に波長1μm以上の放射が含まれる割合が30%以下の部材で構成されていることを特徴とする請求項1記載のリフローはんだ付け装置。
【請求項3】
前記上側炉体に設けられる加熱手段,下側炉体に設けられる加熱手段のいずれか一方の加熱手段を停止してプリント配線板の片面のみにリフローはんだ付けを行う場合、前記停止される加熱手段に前記断熱板を装着して前記リフローはんだ付けを行うことを特徴とする請求項1又は2記載のリフローはんだ付け装置。
【請求項4】
上側炉体と下側炉体とに分割され前記上側炉体と下側炉体とが断熱材を介して一体に繋ぎ合わされる構成の炉体と、前記炉体の搬入口および搬出口にわたりプリント配線板を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送されるプリント配線板に対面して前記上側炉体,下側炉体のそれぞれに設けられる独立作動可能な複数の加熱手段とを有するリフローはんだ付け装置のリフローはんだ付け方法において、
前記上側炉体に設けられる加熱手段,下側炉体に設けられる加熱手段のいずれか一方の加熱手段を停止してプリント配線板の片面のみにリフローはんだ付けを行う場合、前記停止される加熱手段のプリント配線板に対面する面に断熱板を装着して前記リフローはんだ付けを行うことを特徴とするリフローはんだ付け装置のリフローはんだ付け方法。
【請求項5】
前記断熱板は、熱伝導率が1.1W/(mk)以下の部材であり炉体内雰囲気温度における放射に波長1μm以上の放射が含まれる割合が30%以下の部材で構成されていることを特徴とする請求項4記載のリフローはんだ付け装置のリフローはんだ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−339171(P2006−339171A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158244(P2005−158244)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000232450)日本電熱計器株式会社 (25)
【Fターム(参考)】