説明

リフロー装置

【課題】過熱水蒸気を加熱媒体とすることによって、ランニングコストが低く、かつはんだ付廃棄物の回収が容易な無公害リフロー装置を実現する。
【解決手段】空気を加熱媒体としてワークを予熱し、過熱水蒸気を媒体としてリフローはんだ付を行い、送気空冷によってワークを冷却するリフロー装置において、高周波電磁誘導ヒータによって水から生成した高温過熱水蒸気をリフロー室に導入して、過熱水蒸気の常圧膨張の性質を利用してリフロー室内を高温過熱水蒸気で充満し、リフロー室を無酸素状態に保持すると共に、高温過熱水蒸気をワークに向けてジェット噴射してはんだを溶融し、使用後過熱水蒸気を供給水と熱交換して蒸留処理し、はんだ溶融によって飛散した成分を蒸留水中に捕集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に無鉛クリームはんだを印刷し、その上に部品をマウントしてはんだ付を行うリフロー工法においては、はんだの酸化を防ぐために、熱媒体として不活性ガス、中でも窒素ガスが一般的に使用されている。この場合、加熱した窒素ガスを繰り返し利用するために、その雰囲気中にははんだが溶融した際に飛散したフラックス成分やヒューム成分などの濃度が上昇し、はんだ付自体を妨げるようになるのみならず、ワークに付着したり炉内の低温部に凝縮累積するなどの弊害があった。この状況は、コスト面から使用後の窒素ガスを廃棄せず、再利用する必要性から生じたものであった。
【0003】
このはんだ付老廃物の除去と窒素ガス再利用のために多くの技術が提案されている(例として、特許文献1、2、3、4、5)。
これらの技術には、以下のような共通性があった。
(1)窒素ガスを含む230°C乃至240°C程度の使用後高温媒体からフラックス成分を除去するためには、媒体を冷却しなければならない。そのために、これらの技術はいずれも媒体を炉外あるいは加熱チャンバ外に誘導して冷却する技術と、冷却で凝縮した物質を捕集するための複雑な機構技術とを備える。これらの技術では、再生媒体を炉内あるいはチャンバ内に戻す際、内部雰囲気温度を降下させないために、低温にした媒体を再度加熱しなければならず、余分の加熱コストが必要とされる。
(2)以上の冷却方法で捕集できない有機溶媒などは、さらに400°C程度に加熱した触媒を用いて分解除去するので、この場合は逆に媒体を低温化してからチャンバに戻している(代表例として特許文献4、5)。
【0004】
これらはすべて、コストの高い窒素ガス再利用のために工夫された公開技術である。窒素ガス以外の不活性ガスはより高価であるため、利用できない。
このほかの媒体として、水蒸気を利用する技術(特許文献6)や過熱水蒸気を利用する技術(特許文献7)が公開されている。空気分子は、水蒸気あるいは過熱水蒸気が充満した雰囲気から排除されるため、ワークのはんだ付を無酸素状態で行うことができる。これらの方法は消耗品が水であるため、ランニングコストが窒素ガス利用の場合よりも低減されるというメリットがある。
このうち特許文献6の技術は、しかし、容易に発生する結露を防ぐためにリフロー炉構造が複雑化し、一般的に普及するまでに至っていない。
【0005】
いっぽう、特許文献7で開示された技術は、複数のチャンバ内に水蒸気を導入して加熱し、過熱水蒸気を生成して、ファンによって雰囲気を循環しながらリフローはんだ付を行う技術である。
【0006】
しかしこの技術には、過熱水蒸気を加熱媒体として利用する点において、次のような問題があった。
(1)過熱水蒸気の相転換に対応する技術がない
過熱水蒸気は、水を水蒸気とし、水蒸気を更に加熱して生成する。即ち、1mol(18グラム)の水は、常温常圧で22.4リットルの水蒸気になり、常圧であれば温度に比例して更に容積が増大する。つまりリフロー加熱の媒体として過熱水蒸気を用いると、少量の水を原料として大量の媒体を得ることができ、リフロー室内を高温高圧の過熱水蒸気で充満することができる。過熱水蒸気には強い遠赤外線加熱効果があり、これによって無酸素リフローが実現する。いっぽうこの性質によって、加熱室内に充満した高温過熱水蒸気は、常に室外に漏出しようとする強い傾向を有するので、漏出する使用後過熱水蒸気量を捕捉し、回収するための技術的対応が必要である。
逆に、過熱水蒸気を冷却すると、凝縮して水になり、容積が極端に縮小する。このことは、リフロー加熱に使用した後の過熱水蒸気を冷却すれば、非常に少量の水として回収できることを意味している。
過熱水蒸気を媒体として利用する場合には、相転換という特性を技術的に考慮しなければならない。この特性は、常温でも数百度の高温でも気体である空気や窒素ガスとは非常に異なるものである。しかし特許文献7には、過熱水蒸気の特性に配慮した技術は何ら用意されていない。
【0007】
(2)チャンバ内雰囲気中の溶融飛散成分の増加
この問題は上記したように、窒素ガスを加熱媒体として利用するリフロー炉においても共通する問題でもあった。はんだ溶融飛散成分は排気に含まれて炉外に排出され、一部は炉内の低温部分に接触すると凝縮して蓄積する。この点において特許文献7記載の技術には、循環媒体中のはんだ飛散成分の増加を抑制したり捕集する手段が何ら用意されていないので、循環雰囲気中の老廃物濃度が無制限に増加すると同時に、老廃物が炉外に無制限に漏出するという公害問題がある。
【0008】
(3)過熱水蒸気で常温のワークを加熱する時の問題
このほか特許文献7は、過熱水蒸気の特性に基づく副作用を防ぐ技術的対応手段を欠いている。
特許文献7の説明では、150°C以上の過熱水蒸気を秒速1メートル以上でワークに吹き付ければ、ワークには結露が起きないとしているが、常温のワークが加熱チャンバに入ると、温度が十分上昇するまでに、部品の熱容量に応じた時間を要する。熱容量の大きな部品は当然長い加熱時間を要し、この間ワーク表面には過熱水蒸気が結露し、水滴になって付着する。この水滴は部品温度が上昇すると蒸発する。リフロー基板の枚数が増加すると、チャンバ内媒体中のはんだ溶融飛散成分濃度が上昇するので、それらの成分が結露中に溶解する濃度も上昇する。溶解成分は特許文献7説明の通り化学的に活性があり、基板や部品に付着して有害作用を及ぼすばかりでなく、水滴が再蒸発した後も残渣としてワーク上に残る。その残渣は後日空中の水分を吸収して溶解し、ワークの金属部分を腐食する。この問題は、窒素ガスを加熱媒体としたリフロー炉では発生しない、過熱水蒸気特有の問題である。
【0009】
(4)ワーク冷却時の問題
特許文献7記載の技術は、リフロー後ワークの冷却の問題についてなんら対応技術を備えていない。この文献で開示されたリフロー装置の技術には、リフローゾーンと冷却ゾーンの雰囲気同士の相互干渉については何ら説明がなく、ワークを移動させるためのコンベア機構が共通であるため、両ゾーン間は隙間を通じた気体の流通が可能である。そこでリフローゾーンの過熱水蒸気の一部は、常温膨張の性質に基づいて冷却ゾーンに漏出する。漏出した高温過熱水蒸気はそこで霧化して水滴になり、上記の予熱ステップと同様にワークに付着して基板や部品に有害作用をもたらす可能性がある。この問題も、窒素ガス利用の場合にはなかった、過熱水蒸気特有の問題である。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、高温高圧の加熱水蒸気でリフローはんだ付を行い、使用後過熱水蒸気を集めてはんだ溶融時の飛散成分を簡単な技術により除去することを可能にする、ランニングコスト低廉かつ無公害の過熱水蒸気利用リフロー装置の提供を目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−77346号公報
【特許文献2】特開2007−160322号公報
【特許文献3】特開2008−279502号公報
【特許文献4】特開2009−99761号公報
【特許文献5】特開2009−99762号公報
【特許文献6】特開2002−263832号公報
【特許文献7】特開2008−270499号公報
【特許文献8】特開2001−235228号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】中尾剛介、平泉敦嗣、岩崎悦子著「鉛フリー対応のリフロー装置」、古河電工時報、第106号、25−30ページ、平成12年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする第1の問題点は、過熱水蒸気を媒体とするリフロー装置において、高温高圧の過熱水蒸気が加熱室から室外へ漏出する強い傾向を有する点である。
また解決しようとする第2の問題点は、過熱水蒸気を媒体とするリフロー装置において、加熱室内で過熱水蒸気が再利用される間に、その中に含まれるはんだ溶融飛散成分濃度が際限なく上昇する点である。
更に解決しようとする第3の問題点は、常温のワークを過熱水蒸気で加熱する時に、ワークが十分に加熱されるまでにワーク表面にはんだ溶融飛散成分を含有した過熱水蒸気が結露して付着し、ワークが汚染される点と、リフロー後にワークを冷却する工程において、リフロー室から漏出したはんだ溶融飛散成分を含有した過熱水蒸気が霧状の水滴になってワークに付着し、ワークが汚染される点である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
リフロー装置は、利用する加熱媒体の特性に対応しなければ、リフロー装置として成立せず、実用化できない。窒素ガスと過熱水蒸気の加熱媒体としての特性には、大きな差異がある。窒素ガスは化学的に不活性であり、常温でもリフロー温度でも気相である。いっぽう過熱水蒸気は、温度降下によってたちまち液相(水)に相転換し、水としての性質を発揮する。
従って、過熱水蒸気を加熱媒体として利用するためには、過熱水蒸気の相転換にうまく対応することが必要である。
本発明は、過熱水蒸気をリフロー過熱媒体として利用するために、過熱水蒸気の気相から液相への相転換を利用して、使用済み過熱水蒸気を液化し、その中に含まれるはんだ溶融飛散物質を水滴中に捕集することによって、はんだの溶融によって生じた飛散成分の残渣を除去すると共に、ワークへの使用済み過熱水蒸気の結露を防止する手段を備えることを最も主要な特徴とする。
【0015】
本発明のリフロー装置は、はんだを印刷して部品を搭載した基板であるワークが複数の室を通過する間にリフローはんだ付を行うリフロー装置であって、電磁誘導ヒータ及び/あるいは電熱ヒータによって過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成手段と、上記過熱水蒸気生成手段に水を供給する給水路と、過熱水蒸気でワークのはんだ付を行うリフローはんだ付手段と、電熱ヒータとファンが配設されたリフロー室と、使用後の過熱水蒸気を導出する導出路と、上記給水路と上記導出路を密接させて熱交換と過熱水蒸気の蒸留を行い、生成蒸留水中に溶融はんだ飛散成分を捕集するはんだ付残渣回収手段と、電熱ヒータとファンが配設された予熱室と、外気を取り込んでワークを空冷する冷却室とから成ることを特徴とする。
【0016】
また本発明のリフロー方法は、はんだを印刷して部品を搭載した基板であるワークが複数の室を通過する間にリフローはんだ付を行うリフロー方法であって、過熱水蒸気生成ステップと、上記過熱水蒸気生成手段に水を供給する給水路と、過熱水蒸気でワークのはんだ付を行うリフローはんだ付ステップと、使用後の過熱水蒸気を導出する導出路と、上記給水路と上記導出路を密接させて熱交換と過熱水蒸気の蒸留を行い、生成蒸留水中に溶融はんだ飛散成分を捕集するはんだ付残渣回収ステップとから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の過熱水蒸気を加熱媒体とするリフロー装置は、過熱水蒸気の気相から液相への相転換を利用して、はんだの溶融によって生じた飛散成分を除去すると共に、過熱水蒸気結露防止手段を備えるので、無公害かつランニングコストが低廉なリフロー装置が実現できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はリフロー装置の全体構成を示した説明図である。(実施例1)
【図2】図2はリフロー装置の動作のステップを説明するフロー図である。(実施例1)
【図3】図3は高周波誘電加熱ヒータの1例の構成を示した参考図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0019】
無公害かつランニングコストが低廉なリフローはんだ付を行うという目的を、過熱水蒸気を相転換した水分中に溶融はんだ飛散成分を捕集し、かつ過熱水蒸気の結露を防止することによって実現した。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明リフロー装置の1実施例の全体構成を示す図である。
クリームはんだを印刷し、部品を搭載した基板であるワーク6を、基板搬入口23からリフロー装置1内に搬入し、搬送機構25によってリフロー装置内を搬送し、リフローはんだ付をした後、基板搬出口24から搬出する。この図では、装置の下半分の構成は、搬送機構25より上部と搬送ラインを軸とした回転対称であるので、詳細構成の図示を省略している。
【0021】
リフロー装置1は、第1予熱ゾーン2と、第2予熱ゾーン3と、リフローゾーン4と、冷却ゾーン5で構成されている。
【0022】
図1では、第1予熱ゾーン2が第1予熱室1室に対応するように図示しているが、具体的には必要により室数を複数にしてもよい。以下述べるその他のゾーンにおいても、対応する室の数を各1として図示しているが、同様に具体的な使用ニーズに応じて複数とすることができる。
【0023】
第1予熱室はヒータ7によって加熱された室内の空気をファン8により循環して、搬入されたワーク6を水の沸点である100°C程度に加熱する。適用するヒータ7は、電熱ヒータでもその他の種類のヒータでもよい。この予熱ステップは、ワークを予熱すると共に、水の沸点程度に加熱することにより、ワークがリフローゾーン4から漏出する可能性のある過熱水蒸気に接しても、その表面に結露を発生させない作用を持っている。
【0024】
第2予熱室は、第2予熱ゾーン3に対応する加熱室であって、ヒータ(番号を示さず)によって加熱された室内の空気をファン(番号を示さず)により循環して、使用者において設定されたリフローはんだ付温度プロファイルに従って、第1予熱室で加熱されたワーク6を更に150°C乃至170°C程度に加熱する。第2予熱室は、リフロー室から漏出する可能性のある過熱水蒸気を排出する導出路を備えているが、その詳細については後述する。
【0025】
リフロー室は、リフローゾーン4に対応する加熱室であって、リフロー装置1の運転開始時からヒータ(番号を示さず)によって加熱した室内の空気をファン(番号を示さず)により循環して、室内雰囲気と構成材などをリフローに必要な温度(230°乃至240°程度)に予熱する。室内温度が上昇したら、過熱水蒸気を導入し、内部の空気をすべて追い出したのち、リフローはんだ付を行う。
【0026】
リフローはんだ付に適用する過熱水蒸気は、高周波電磁誘導ヒータ11で生成する。まず給水路入口9から給水路10を介して高周波電磁誘導ヒータ11に水を取り込み、高周波電磁誘導によりリフロー温度の240°C程度以上の温度の過熱水蒸気を生成する。生成した過熱水蒸気を過熱水蒸気ダクト12を介して、過熱水蒸気噴出口13からリフロー室内に噴出する。リフロー室が過熱水蒸気で充満されたことが酸素電極(図示せず)によって検知されたら、先に述べたワーク6を基板搬入口23から搬入し、このリフロー装置におけるはんだ付工程を開始する。リフロー装置の運転とワークのはんだ付ステップについては、後に詳しく説明する。なお、リフロー室内の温度は、温度センサ(図示せず)により検出して、はんだ付工程の制御信号としている。
【0027】
高周波電磁誘導ヒータ11で生成された過熱水蒸気は、高温高圧であり、急速にリフロー室内空間を充満し、ファン(番号を示さず)により室内を循環すると共にリフロー室下部に設定された噴射口14から、ワーク6に向けて噴射される。噴射口14は、平板に多数の小孔を開け、これに管状のガイドを設けてノズル形状としたものであり、ファンによって室内を循環する高温過熱水蒸気をワークに向けて噴射し、熱容量の大きい部品や、特に下面のみにはんだ接合部を備えた部品(BGA)のはんだ付を円滑に行っている(参考文献として非特許文献1参照)。
【0028】
従来の窒素ガス利用のリフロー装置では、媒体を無酸素はんだ付に必要な低酸素濃度レベルに維持するために、予熱ゾーンにもリフローゾーンにも窒素ガスを供給したので、窒素ガス費消空間が大きく、しかも漏出する窒素ガスの常時補給が必要であった。このために、窒素ガスの需要量が大きく、ランニングコストの面で問題があった。
本発明はこれに対して、リフローゾーンだけに過熱水蒸気を供給すればよいので、水の消費量が少なく、加熱コストもより低廉である。
加熱媒体の供給がリフローゾーンだけで済むのは、過熱水蒸気の特性によるものである。高周波電磁誘導ヒータ11で生成されたばかりの240°以上の高温過熱水蒸気は、1mol(18グラム)の水に相当する22.4リットルの容積が、常圧換算では気体方程式により約260リットルになる。このことは、高温高圧の過熱水蒸気が、常圧環境に接触すると、温度が降下して常温になるまでは、常時容積を膨張させる性質を有することを意味する。
即ち、リフロー室内の過熱水蒸気は、下部の平板の噴射口14から、より気圧の低い搬送機構部25に向って噴出し、ワーク6に向ってジェット流となって浴びせられる。またこの性質のため、リフロー室への過熱水蒸気の供給が続く限り、室内から空気が駆逐され、室内は無酸素状態に維持されるので、無酸素はんだ付が成立するのである。
【0029】
ここで、この実施例に利用した高周波電磁誘導ヒータ11について、説明する。
一般には種々の形態の高周波電磁誘導ヒータ技術が実施されているが、この実施例ではその中の1形態のものを利用している。その構成を参考図として図3に示す。図3は特許文献8から引用したものである。
図3において、導電性材料から成る発熱曲管10に流体を流し、コイル14に高周波電流を流すと、その磁束によってコイルの内側に磁界が発生し、発熱曲管10に渦電流が生じ、固有抵抗のためにジュール熱が発生して、管内を流れる流体に熱伝達して流体が加熱される。
【0030】
図1におけるこの実施例の高周波電磁誘導ヒータ11は、1台のユニットで水から過熱水蒸気を生成するように図示されているが、水を加熱して水蒸気を生成するユニットと水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成するユニットを連接してもよい。あるいは、水から水蒸気を生成するステップに電熱ヒータを用い、生成した水蒸気を過熱水蒸気とするステップに、他の電熱ヒータを用いることや、あるいは高周波電磁誘導ヒータを用いることも可能である。いずれの生成方法を用いても、本発明における過熱水蒸気特性利用リフロー装置の利点が得られることは、言うまでもない。
【0031】
ワーク6に吹き付けられた使用後の過熱水蒸気は、ファン15によって使用後過熱水蒸気吸入口16から吸入され、使用後過熱水蒸気導出路17を介して、はんだ付残渣回収装置18に導入される。このようにして、リフロー室内は、常に新鮮な過熱水蒸気で満たされ、使用後の気体は直ちに排出される。また、リフローゾーン4からリフロー装置内に漏出した過熱水蒸気も、使用後過熱水蒸気導出路17を通ってはんだ付残渣回収装置18に導入される。
【0032】
はんだ付残渣回収装置18は、熱交換式の蒸留装置であって、給水路入口9から供給された常温水によって、使用後過熱水蒸気を冷却蒸留する。使用後過熱水蒸気はここで、少なくも70°C以下に冷却されて相転換し、水となる。この水には、はんだ溶解によって飛散したフラックス成分やヒューム成分や微小なはんだ粒子が吸着あるいは溶解し、はんだ溶融残渣が捕集される。生成する水の容積は、気体の過熱水蒸気よりも非常に小さいので、廃棄処理あるいは再生処理にも非常に便利である。排水は排水口10から排出される。
いっぽう、この熱交換によって加熱水蒸気の熱エネルギーが水に移行し、高周波電磁誘導ヒータ11に供給される水が加熱されるので、高周波電磁誘導ヒータ11の加熱電力コストの節約に貢献している。
【0033】
リフロー室と第2予熱室の壁下端には、逆T字型の仕切り20を設けている。また、冷却室のリフロー室寄りの壁下端にも仕切り20を設けている。これらは過熱水蒸気の漏出を最小限にするための仕切りであり、それでも漏出した少量の過熱水蒸気は、使用後過熱水蒸気導出路17に集められる。
【0034】
リフロー後のワーク6は、冷却ゾーン5の冷却室において空冷された後、基板搬出口24から搬出される。冷却室には外気取入口21より外気が導入され、ファン(番号を示さず)によって循環されつつワーク6を冷却し、排気口22より装置外へ排気される。この送風冷却は、リフローゾーンから漏出する可能性のある過熱水蒸気の冷却室への浸入防止作用がある。
【0035】
次に、図2を参照して、この実施例の動作ステップを説明する。
まず、リフロー装置の電源を投入し(ST1)、第1予熱室、第2予熱室、およびリフロー室のヒータとファンを始動する(ST2)。第1予熱室の室内温度が約100°C、第2予熱室の室内温度が150°乃至170°程度の使用者設定温度に、またリフロー室の室内温度が230°C乃至240°C程度の使用者設定温度にそれぞれ到達したら(ST3)、電磁誘導ヒータに送水を開始し(ST4)、生成した過熱水蒸気をリフロー室に送気する(ST5)。
【0036】
リフロー室に設置した酸素電極の信号によって、過熱水蒸気がリフロー室に充満し(ST6)、設定したリフロー温度に到達したら、リフロー装置にワークを搬入する(ST7)。第1予熱室でワークを100°C程度に加熱した後(ST8)、第2予熱室で設定した予熱温度に加熱する(ST9)。その後、ワークをリフロー室に進め、過熱水蒸気の噴射によってリフローはんだ溶融を行う(ST10)。ワークの加熱は、使用者が設定した温度プロファイルに従って実行される。最後にワークは冷却室で送気空冷され(S12)、リフロー装置から搬出される(ST13)。
【0037】
リフロー室においてワークに向けて噴射された使用後過熱水蒸気は、はんだ残渣回収装置に導入され、供給水との熱交換により飛散成分が捕集され、除去される(S11)。
【産業上の利用可能性】
【0038】
リフロー室のみをリフロー温度にしてリフローはんだ付を行うことで、使用する加熱媒体の容積を最少としてコストの低減ができ、熱交換によって加熱媒体を液相としてはんだ溶融飛散成分を捕集する公害対策用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 リフロー装置
2 第1予熱ゾーン
3 第2予熱ゾーン
4 リフローゾーン
11 高周波電磁誘導ヒータ
18 はんだ付残渣回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだを印刷して部品を搭載した基板であるワークが複数の室を通過する間にリフローはんだ付を行うリフロー装置であって、
電磁誘導ヒータ及び/あるいは電熱ヒータによって過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成手段と、
上記過熱水蒸気生成手段に水を供給する給水路と、
過熱水蒸気でワークのはんだ付を行うリフローはんだ付手段と、
電熱ヒータとファンが配設されたリフロー室と、
使用後の過熱水蒸気を導出する導出路と、
上記給水路と上記導出路を密接させて熱交換と過熱水蒸気の蒸留を行い、生成蒸留水中に溶融はんだ飛散成分を捕集するはんだ付残渣回収手段と、
電熱ヒータとファンが配設された予熱室と、
外気を取り込んでワークを空冷する冷却室と
から成ることを特徴とするリフロー装置。
【請求項2】
はんだを印刷して部品を搭載した基板であるワークが複数の室を通過する間にリフローはんだ付を行うリフロー方法であって、
過熱水蒸気生成ステップと、
上記過熱水蒸気生成手段に水を供給する給水路と、
過熱水蒸気でワークのはんだ付を行うリフローはんだ付ステップと、
使用後の過熱水蒸気を導出する導出路と、
上記給水路と上記導出路を密接させて熱交換と過熱水蒸気の蒸留を行い、生成蒸留水中に溶融はんだ飛散成分を捕集するはんだ付残渣回収ステップと
から成ることを特徴とするリフロー方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−82282(P2011−82282A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232104(P2009−232104)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(594077024)
【出願人】(309023955)
【Fターム(参考)】