説明

リポソーム組成物

本発明は、一般にリポソーム医薬組成物および関連方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる2005年12月8日出願の米国仮出願第60/748,686号の利益を主張するものである。
技術分野
本発明は、一般にリポソーム医薬組成物および関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ヒトまたは動物の薬物による処置において、時には、薬物を静脈内経路により投与しなければならない場合がある。静脈内投与は、最も迅速で直接の薬物送達手段の1つである。しかしながら、局所静脈内注射部位副作用が、(a)静脈血中での薬物の熱力学的に推進される局所的沈降(例えば、局所的静脈血栓症、化学的静脈炎)、(b)薬物の比較的高い局所的蓄積をもたらす、薬物と注射部位組織との選択的結合、または(c)管外遊出につながり、続いて、薬物による露出組織の攻撃を引き起こす可能性がある、注射針による静脈の損傷の結果として起こり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
概要
本発明は、一般に、1種以上の疎水性治療薬(例えば、薬物)を含有するリポソーム形成医薬組成物、およびその水性処方物に関する。そのような処方物は、好ましくは、前記疎水性治療薬と混和性である補助溶媒(例えば、有機溶媒)を含まない水性ビヒクル中で対象に(例えば、それを必要とする対象)に投与する(例えば、静脈内投与する)ときに疎水性治療薬の送達前および後の(例えば、注射前および後の)可溶化を実現するために用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本発明は、(i)疎水性治療薬と、(ii)第1の成分と、(iii)第2の成分とを含む凍結乾燥リポソーム組成物であって、該組成物を水と接触させたときに、該第1の成分と該第2の成分とが相互に作用して、該疎水性治療薬の実質的に均質なリポソーム溶液を形成する、凍結乾燥リポソーム組成物に関する。
【0005】
別の態様では、本発明は、凍結乾燥リポソーム組成物を調製するための方法であって、(i)第1の組合せを作るために有機溶媒中で疎水性治療薬、第1の成分、および第2の成分を組み合わせることと、(ii)第2の組合せを作るために該第1の組合せを水相と組み合わせることと、(iii)第3の組合せを作るために該第2の組合せから該有機溶媒を除去すること(例えば、一部もしくは実質的に全ての該有機溶媒を、例えば、蒸留、減圧(例えば、吸引器圧もしくは低真空、例えば、約1mmHg〜約50mmHg)下での蒸発、またはタンジェンシャルフローフィルトレーションにより除去すること)と、(iv)該第3の組合せを凍結乾燥し、それにより該凍結乾燥リポソーム組成物を調製することとを含む方法に関する。実施形態では、これらの方法は、疎水性薬物(例えば、滅菌疎水性薬物)の大規模製造に用いることができ、滅菌リポソーム医薬製剤の製造のための比較的簡単な「ワンポット」法を提供することができる。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、凍結乾燥リポソーム組成物を調製するための方法であって、(i)第1の組合せを作るために有機溶媒中で疎水性治療薬、第1の成分、および第2の成分を組み合わせることと、(ii)第2の組合せを作るために該第1の組合せから該有機溶媒を除去すること(例えば、薄膜などを形成するために一部もしくは実質的に全ての該有機溶媒を除去すること)と、(iii)第3の組合せを作るために該第2の組合せを水相と組み合わせることと、(iv)該第3の組合せを凍結乾燥し、それにより該凍結乾燥リポソーム組成物を調製することとを含む方法に関する。
【0007】
一態様では本発明は、(i)疎水性治療薬と、(ii)第1の成分と、(iii)第2の成分と、(iv)水とを含む実質的に均質なリポソーム処方物に関する。
【0008】
実施形態は次の特徴の1つ以上を含み得る。
【0009】
前記疎水性治療薬は、約1.0〜約5.0(例えば、約2.0〜約5.0、約3.0〜約5.0、約4.0〜約5.0)のlogP値を有し得る。
【0010】
前記組成物は、約20重量パーセント〜約40重量パーセントの前記第1の成分および前記第2の成分を含み得る。
【0011】
前記第2の成分の前記第1の成分に対する重量パーセント比は、約1〜約7(例えば、約1〜約5、約2〜約5、約1〜約3、約2〜約3)であり得る。前記第2の成分の前記第1の成分に対する重量パーセント比は、約2.2〜約2.7であり得る。前記第2の成分の前記第1の成分に対する重量パーセント比は、約4〜約5(例えば、約4.2〜約4.8、例えば、4.5)であり得る。
【0012】
前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも小さくあり得る。例えば、前記(前記第1の成分の比率):疎水性治療薬は、(約0.10〜約0.95):l、例えば、(約0.50〜約0.95):1、例えば、約(0.75):1であり得る。
【0013】
前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数とほぼ同じであり得る。
【0014】
前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約1.5〜約6倍大きくあり得る。
【0015】
前記第2の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きくあり得る。
【0016】
前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも小さくあり得、かつ前記第2の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きくあり得る。
【0017】
前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数とほぼ同じであり得、かつ前記第2の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きくあり得る。
【0018】
前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約1.5〜約6倍大きくあり得、かつ前記第2の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きくあり得る。
【0019】
例えば、前記疎水性治療薬:前記第1の成分:前記第2の成分のモル比は、約
【表1】

であり得る。
【0020】
前記第1の成分および前記第2の成分の前記疎水性治療薬に対する重量パーセント比は、約2〜約50(例えば、約10〜約50)であり得る。
【0021】
前記第1の成分および前記第2の成分の前記疎水性治療薬に対する重量パーセント比は、約15〜約25であり得る。
【0022】
前記第1の成分および前記第2の成分のそれぞれは、独立に、天然レシチンまたはリン脂質(例えば、卵、大豆、もしくは植物性リン脂質または合成リン脂質由来)であり得る。
【0023】
前記第1の成分はホスファチジルグリセロールであり得、かつ前記第2の成分はホスファチジルコリン(例えば、卵、大豆、もしくは植物性リン脂質または合成リン脂質由来)であり得る。例えば、前記第1の成分は卵ホスファチジルグリセロールであり得、かつ前記第2の成分は大豆ホスファチジルコリンであり得る。
【0024】
前記組成物は、約0.05重量パーセント〜約10重量パーセントの前記疎水性治療薬を含み得る。
【0025】
前記組成物は凍結防止剤(例えば、糖、例えば、ラクトース)をさらに含み得る。
【0026】
前記組成物は酸化防止剤をさらに含み得る。ある特定の実施形態では、前記組成物は2種の酸化防止剤(例えば、BHTおよびアスコルビルパルミテート)を含み得る。ある特定の実施形態では、前記組成物は3種以上の酸化防止剤を含み得る。
【0027】
前記組成物は、凍結防止剤と、第1の酸化防止剤と、第2の酸化防止剤とをさらに含み得る。
【0028】
前記凍結防止剤はラクトースであり得、第1の酸化防止剤はBHTであり得、かつ第2の酸化防止剤はアスコルビルパルミテートであり得る。
【0029】
前記疎水性治療薬は、約5ng/mL〜約5mg/mL(例えば、約5ng/mL〜約2mg/mL)の水溶解度を有し得る。
【0030】
前記疎水性治療薬は、約100ダルトン〜約1,000ダルトンの分子量を有し得る。
【0031】
前記疎水性治療薬はイオン性基を欠き得る。
【0032】
前記疎水性治療薬は、約2〜約11のpKaを有する酸性基をさらに含み得る。
【0033】
前記疎水性治療薬は塩基性基をさらに含み得、この際、その塩基性基の共役酸のpKaは約3〜約12であり得る。
【0034】
前記疎水性治療薬は、約2〜約11のpKaを有する1つ以上の酸性基と、塩基性基の共役酸のpKaが約3〜約12である1つ以上の塩基性基とをさらに含み得る。例えば、前記疎水性治療薬は両性イオンであり得る。
【0035】
前記疎水性治療薬は結晶性固体であり得る。
【0036】
前記疎水性治療薬は疎水性液体(例えば、油)であり得る。
【0037】
前記疎水性治療薬は2つの環をさらに含み得、この際、各環は、独立に、芳香環または複素芳香環であり得る。
【0038】
前記疎水性治療薬は、縮合二環系、三環系または多環系(例えば、合成起源または天然起源のもの)をさらに含み得る。
【0039】
前記疎水性治療薬は、不水溶性真菌抗生物質または合成起源、半合成起源、もしくは天然起源の複合大員環であり得る。
【0040】
前記有機溶媒はエタノールであり得る。
【0041】
前記水相は凍結防止剤(例えば、ラクトース)をさらに含み得る。
【0042】
前記第1の組合せは酸化防止剤をさらに含み得る。
【0043】
前記第2の組合せはリポソーム溶液であり得る。
【0044】
前記方法は、前記リポソームの平均粒径分布を減少させる工程をさらに含み得る。例えば、前記方法は、前記(例えば、粗)リポソームの粒径分布を最終粒径分布 約5,000nm〜約20nm、例えば、約5,000nm〜約50に減少させる工程(すなわち、この粒径減少工程実施後のリポソームの粒径分布は、例えば、約5,000nm〜約20nmである)をさらに含み得る。例えば、前記方法は、前記リポソームの粒径分布を約200ナノメートル(nm)以下(例えば、最大限でも約200nm、200nm未満)に減少させる工程をさらに含み得る。例えば、前記方法は、前記リポソームの粒径分布を約200nm〜約20nm、例えば、約200nm〜約50nmに減少させる工程(すなわち、この粒径減少工程実施後のリポソームの粒径分布は、例えば、約200nm〜約20nmである)をさらに含み得る。
【0045】
工程(iii)はタンジェンシャルフローフィルトレーションを実施することを含み得る。前記有機溶媒はエタノールであり得る。
【0046】
前記処方物は少なくとも約80重量/容量パーセントの水を含み得る。
【0047】
前記処方物は、凍結防止剤と、第1の酸化防止剤と、第2の酸化防止剤とをさらに含み得る。
【0048】
前記処方物は、約2mg/mL〜約10mg/mL(例えば、約2mg/mL〜約8mg/mL、例えば、約2mg/mL)の前記疎水性治療薬を含み得る。
【0049】
前記処方物は、ヒトまたは動物対象への投与のための静脈内処方物または非経口処方物であり得る。
【0050】
前記処方物は、本明細書に記載の凍結乾燥リポソーム組成物を水と接触させることにより調製され得る。
【0051】
前記リポソームは、最大限でも約5,000nmの平均粒径分布を有し得る。
【0052】
前記リポソームは、約20nm〜約300nm、例えば、約50nm〜約300(例えば、約200nm)の平均粒径分布を有し得る。
【0053】
前記処方物は、前記疎水性治療薬を沈殿させることなく、水で無制限に希釈することが可能であり得る。
【0054】
前記処方物は急速崩壊し得る。実施形態では、前記処方物(リポソーム)は、インビボ投与によると、血流中に前記疎水性治療薬を迅速に放出して、血液中の例えば、赤血球(RBC)、リポタンパク質、HSAまたはWBCと結合し得る。これは前記疎水性治療薬が肝臓などの非標的組織に蓄積される可能性を低くすると考えられており、そうでなければ、その非標的組織では従来のリポソームが集中する傾向にある。学説に捉われることなく、本明細書に記載のリポソーム組成物および処方物のリポソームの「急速崩壊」性は、前記疎水性治療薬が前記リポソームの脂質二重層と結合する様式によるものであり得ると考えられている。
【0055】
本明細書において、用語「疎水性治療薬」とは、対象(例えば、ヒトまたは動物対象)に約0.01mg/Kg〜約1000mg/Kg、(例えば、約0.01mg/Kg〜約500mg/kg、約0.1mg/Kg〜約250mg/Kg、約1mg/Kg〜約100mg/Kg、約1mg/Kg〜約10mg/kg)の量で投与するときに治療を受けた対象に治療的、生物学的、または薬理学的効果を与える(例えば、1種以上の疾患、障害、またはその状態もしくは症状を治療する、制御する、改善する、予防する、それらの発症を遅延する、またはそれらを発病する危険性を低減する)、水にやや溶けにくい、わずかしか溶けない、極めてわずかしか溶けない、ほとんど溶けない、または溶けない生物活性部分を指す。治療的効果は他覚的(すなわち、何かの試験またはマーカーによって測定可能)であっても自覚的(すなわち、対象が効果の兆候を示すかまたは効果を感じる)であってもよく、局所的または全身的であり得る。
【0056】
本明細書において、用語「やや溶けにくい、わずかしか溶けない、極めてわずかしか溶けない、ほとんど溶けない、または溶けない」とは、意味上、近似溶解度表現のための米国薬局方(the United States Pharmacopeia)(USP)一般用語に対応する(例えば、DeLuca and Boylan in Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, vol. 1, Avis, K. E., Lachman, L. and Lieberman, H.A., eds、 Marcel Dekkar: 1084, pages 141-142参照:
【表2】

【0057】
一例として、やや溶けにくい疎水性治療薬は、約1分量の前記疎水性治療薬を溶かすのに約30〜約100分量の水を必要とするものである。同様に、わずかしか溶けない疎水性治療薬は、約1分量の前記疎水性治療薬を溶かすのに約100〜約1,000分量の水を必要とするものであり、極めてわずかしか溶けない疎水性治療薬は、約1分量の前記疎水性治療薬を溶かすのに約1,000〜約10,000分量の水を必要とするものであり、そしてほとんど溶けない、または溶けない疎水性治療薬は約1分量の前記疎水性治療薬を溶かすのに約10,000分量より多い水を必要とするものである。
【0058】
「生物活性部分」には、例えば、監督官庁(例えば、米国(US)食品医薬品局(Food and Drug Administration)、農務省(Department of Agriculture)、またはUS以外の同等な機関)によって認可されている薬物、監督官庁によって検討中の薬物候補(例えば、フェーズ0、1、2、または3薬物候補、例えば臨床試験中の薬物候補)、あるいは公的研究団体または民間研究団体によって従来のスクリーニング法またはインビトロもしくはインビボアッセイの結果に基づいてリード化合物として確認された化合物が含まれ得る。用語「疎水性治療薬」とは、例えば、米国特許第6,074,666号および同第6,890,555号および同第7,135,193B2号に記載されているポルフィリン光増感剤(例えば、ベンゾポルフィリン誘導体(BPD)、例えば、BPD一酸(BPDMA)を除外する。
【0059】
本明細書において、用語「リポソーム」とは、乾燥したリン脂質膜(例えば、本明細書に記載のように回転蒸発によって得られる)またはリン脂質溶液(例えば、本明細書に記載のようにタンジェンシャルフローフィルトレーションによって得られる)に水溶液を加えるとすぐに自発的に形成される、内部に水相を備えた完全に閉鎖された脂質二分子膜を指す。リポソームには、単一膜二重層を有する単層小胞または多重膜二重層を有する多層小胞(各層は水層によって隣の層と分離されている)が含まれる。この二重層は、疎水性「尾部」領域および親水性「頭部」領域を有する2つの脂質単分子層を含む。学説に捉われることなく、膜二重層の構造は、脂質単分子層の疎水性(非極性)「尾部」が二重層の中央に向いており、一方、親水性「頭部」が水相に向いているといったものである。
【0060】
本明細書において、用語「リポソーム溶液」とは、一般に、任意の平均粒径分布の疎水性治療薬封入リポソームの水性または水性/有機溶媒分散液を指す。
【0061】
本明細書において、用語「前記疎水性治療薬の実質的に均質なリポソーム溶液」または「前記疎水性治療薬の実質的に均質なリポソーム処方物」とは、疎水性治療薬封入リポソームの均質な水性分散液を指し、この場合のリポソームは約20nm〜約5,000nm(例えば、約50nm〜約5,000nm、例えば、最大限でも約200nm、200nm未満)の平均粒径分布を有する。本明細書に記載のリポソーム溶液の平均粒径分布は、当技術分野における従来法(例えば、光散乱、例えば、動的レーザー光散乱(例えば、Nicomp社またはMalvern社から入手可能なもののようなサブミクロン粒子測定システムを使用))によって決定することができる。
【0062】
本明細書において、用語「対象」とは、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ヤギ、およびウマ、サル、イヌ、ネコ、そして好ましくはヒトを含む生物を指す。
【0063】
本発明の1以上の実施形態の詳細を以下の説明において記載する。本発明の他の特徴および利点はその説明からも特許請求の範囲からも明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
詳細な説明
いくつかの実施形態では、凍結乾燥リポソーム組成物は、1種以上の疎水性治療薬と、第1の成分と、第2の成分と、凍結防止剤と、第1の酸化防止剤と、第2の酸化防止剤とを含み得る。
【0065】
疎水性治療薬
好ましい疎水性治療薬は、次の物質的、構造的または立体化学的もしくは化学的特質の1つ以上を有し得る。
【0066】
(1)前記疎水性治療薬は、約1.0〜約5.0(例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0)のオクタノール/水分配係数(logP)値を有し得る。
【0067】
説明を簡単にするために、範囲(例えば、約1.0〜5.0のlogP)または特定範囲(例えば、約1.0〜1.5のlogP)の部分的な範囲の列挙は、明示的に、列挙された範囲の上下限を含む、列挙された範囲内に入る個々の値のそれぞれを包含することは理解される。
【0068】
ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、約1.0〜約5.0(例えば、約1.0〜約4.5、約1.0〜約4.0、約1.0〜約3.5、約1.0〜約3.0、約1.0〜約2.5、約1.0〜約2.0、約1.0〜約1.5)のlogPを有し得る。
【0069】
ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、約2.0〜約5.0(例えば、約2.0〜約4.5、約2.0〜約4.0、約2.0〜約3.5、約2.0〜約3.0、約2.0〜約2.5)のlogPを有し得る。
【0070】
ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、約2.5〜約5.0(例えば、約2.5〜約4.5、約2.5〜約4.0、約2.5〜約3.5、約2.5〜約3.0)のlogPを有し得る。
【0071】
ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、約3.0〜約5.0(例えば、約3.0〜約4.5、約3.0〜約4.0、約3.0〜約3.5)のlogPを有し得る。
【0072】
ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、約3.5〜約5.0(例えば、約3.5〜約4.5、約3.5〜約4.0)のlogPを有し得る。
【0073】
ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、約4.0〜約5.0(例えば、約4.0〜約4.5)のlogPを有し得る。
【0074】
ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、約4.5〜約5.0のlogPを有し得る。
【0075】
(2)前記疎水性治療薬は、約5ng/mL〜約5mg/mL(例えば、約5ng/mL〜約4mg/mL、約5ng/mL〜約3mg/mL、約5ng/mL〜約2mg/mL、約5ng/mL〜約1mg/mL、約5ng/mL〜約0.5mg/mL、約5ng/mL〜約0.25mg/mL、約5ng/mL〜約0.1mg/mL)の水溶解度を有し得る。ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、約5ng/mL〜約2mg/mLの水溶解度を有し得る。
【0076】
(3)前記疎水性治療薬は、約100ダルトン(D)〜約2000D(例えば、約100D〜約1500D約100D〜約1000D、約200D〜約800D)の分子量を有し得る。
【0077】
(4)前記疎水性治療薬は酸性基(すなわち1つ以上の解離性プロトンを含有する部分)を含み得、この場合、その(それらの)解離性プロトンのpK(水に対する)は約2〜約11(例えば、約2〜約10、約2〜約7、約4〜約11、約4〜約10、約4〜約7)pK単位である。
【0078】
(5)前記疎水性治療薬は塩基性基を含み得、この場合、その塩基性基の共役酸のpK(水に対する)は約1.5〜約12(例えば、約3〜約12、約5〜約12)である。
【0079】
(6)前記疎水性治療薬は、全ての解離性プロトンのpK(水に対する)が約11より大きい酸性基および/または塩基性基の共役酸のpKa(水に対する)が約1.5より小さい塩基性基を含み得る。
【0080】
(7)前記疎水性治療薬は、(4)、(5)、および(6)に明確に述べた基の任意の組合せまたは数を含み得る。例えば、前記疎水性治療薬は、本明細書に記載のような1つ以上の酸性基と、本明細書に記載のような1つ以上の塩基性基とを含み得る。いくつかの実施形態では、前記疎水性治療薬は、両性イオンまたは双極子イオン(逆電荷をもつ部分を有する中性分子、例えば、同じ分子上に存在する酸性基(例えば、−COOH、−P(O)(OH)、または−SOH)、塩基性基(例えば、−NH、第2級または第3級アミノ)との間の反応(プロトン交換)の生成物である部分)、および両性イオン基(例えばアミノ酸、ペプチドおよびタンパク質)であり得る。
【0081】
(8)前記疎水性治療薬は(4)に明確に述べた1つ以上の基だけを含み得る。
【0082】
(9)前記疎水性治療薬は1つ以上の不斉中心を含み得、そのため、前記疎水性治療薬は、本明細書に記載の組成物および処方物中に前記疎水性治療薬の1種以上の異性体とともに存在し得る。そのようなものとして、本明細書に記載の組成物および処方物は、疎水性治療薬のラセミ化合物およびラセミ混合物、単一エナンチオマー、個別ジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物を含み得る。同様に、前記疎水性治療薬はまた、結合(例えば、炭素−炭素結合、炭素−窒素結合(アミド結合など))も含み得、この際、結合回転はその特定の結合に制限され、例えば制限は環または二重結合が存在することによって生じる。よって、本明細書に記載の組成物および処方物は、前記疎水性治療薬のシス/トランスおよびE/Z異性体ならびに/または回転異性体混合物を含み得る。本明細書に記載の組成物および処方物はまた、前記疎水性治療薬の互変異性体混合物も含み得る。
【0083】
(10)前記疎水性治療薬の物理的形状は、所望により(例えば、安定性の考察または単離および取り扱いの容易さに基づいて)選択することができる。例えば、前記疎水性治療薬は、結晶性固体、多形体、非晶質固体、または疎水性液体(例えば、油)であり得る。
【0084】
(11)前記疎水性治療薬は、当技術分野において化学化合物に疎水性を与えることが分かっている1つ以上の部分(例えば、C1−20(例えば、C5−18)アルキル、C2−20(例えば、C5−18)アルケニル、もしくはC−C20(例えば、C5−18)アルキニル直鎖もしくは分枝鎖、またはC−C20飽和もしくは部分飽和炭素環、または5〜18個の原子を含有する芳香族もしくは複素芳香環)を含み得る。ある特定の実施形態では、前記疎水性治療薬は、2つの環を含み得、それらの環のそれぞれは、互いに独立に、芳香環または複素芳香環であり得る。それらの2つの環は、一重結合による連結を通じてあるいは縮合(融合)二環系、三環系または多環系(例えば、合成起源または天然起源のもの)の一部を形成することによって互いに結合していてよい。
【0085】
疎水性治療薬としては、限定されるものではないが、Srcキナーゼ阻害薬、心筋細胞ギャップ結合修飾薬、抗炎症薬(例えば、ステロイド性および非ステロイド性)、抗菌薬、抗原虫薬、抗真菌薬、冠血管拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、気管支拡張薬、酵素阻害薬(コラゲナーゼ阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、エラスターゼ阻害薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬など)、他の抗高血圧薬、ロイコトリエン拮抗薬、抗潰瘍薬(H2拮抗薬など)、ステロイド性ホルモン、抗ウイルス薬および/または免疫調節薬、局所麻酔薬、強心薬、鎮咳薬、抗ヒスタミン薬、麻薬性鎮痛薬、ペプチドホルモン、性ホルモン、心臓作用性製品(アトリオペプチド(atriopeptides)など)、タンパク質性製品、制吐剤(antinauseants)、抗痙攣薬、免疫抑制薬、精神治療薬、鎮静薬、抗凝固薬、鎮痛薬、片頭痛治療薬、抗不整脈薬、鎮吐薬(antiemetics)、抗癌薬、神経薬(抗不安薬など)、止血薬、抗肥満薬、抗微生物薬、セロトニン経路モジュレーター、環状ヌクレオチド経路薬、カテコールアミンモジュレーター、エンドセリン受容体拮抗薬、酸化窒素供与体/放出分子、ATII−受容体拮抗薬、血小板粘着阻害薬、血小板凝集阻害薬、凝固経路モジュレーター、シクロオキシゲナーゼ経路阻害薬、リポキシゲナーゼ経路阻害薬、E−およびP−セレクチン拮抗薬、VCAM−1およびICAM−1相互作用阻害薬、プロスタグランジンおよびその類似体、マクロファージ活性化予防薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、様々な増殖因子に作用する薬剤(FGF経路薬、PDGF受容体拮抗薬、IGF経路薬、TGF−β経路薬、EGF経路薬、TNF−α経路薬、トロンボキサンA2[TXA2]経路モジュレーター、およびプロテインチロシンキナーゼ阻害薬を含む)、MMP経路阻害薬、細胞運動阻害薬、抗炎症薬、抗増殖/抗悪性腫瘍薬、マトリックス沈着/組織化経路阻害薬、内皮化ファシリテイター(endothelialization facilitators)、血液レオロジーモジュレーター、ならびにインテグリン、ケモカイン、サイトカインおよび増殖因子が含まれ得る。
【0086】
好ましい治療薬としては、例えば、不水溶性真菌抗生物質および植物起源、海洋起源または動物起源由来の天然、合成、または半合成複合大員環(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ラパマイシン)が挙げられる。好ましい治療薬には、陸源から得られるもの例えば粘土、泥、土壌、または地(例えば、地球の表面層、鉱山、乾燥した河、湖、沼床から)が含まれ得る。
【0087】
また、疎水性治療薬には、遺伝子治療薬およびタンパク質、例えばリボザイム、アンチセンスポリヌクレオチドおよびゲノムDNA、cDNA、またはRNAなどの特定の産物をコードするポリヌクレオチド(組換え核酸を含む)も含まれる。このようなポリヌクレオチドは、「裸の」形態でまたはポリヌクレオチドの取り込みおよび発現を高めるベクター系と連結して、提供することができる。これらは、DNA凝縮薬(DNA compacting agents)、非感染性ベクターおよびウイルスベクター例えばウイルスおよびウイルス様粒子(すなわちウイルスのような働きをするように作られた合成粒子)を含み得る。このようなベクターは、フェリータンパク質(ferry proteins)をコードする遺伝子配列例えば膜輸送配列(「MTS」)および単純ヘルペスウイルス−1(「VP22」)を含むペプチドターゲッティング配列、アンチセンス核酸、およびDNAキメラをさらに付けていてよい。
【0088】
一般に、凍結乾燥リポソーム組成物は、約0.05重量パーセント〜約10重量パーセント(該組成物の総重量に対して)(例えば、約0.500重量パーセント〜約2.500重量パーセント、約1.000重量パーセント〜約2.000重量パーセント)の前記疎水性治療薬を含み得る。
【0089】
成分
前記第1および第2の成分は、前記凍結乾燥リポソーム組成物を水と接触させたときに、リポソーム脂質二重層を形成するように相互に作用する部分である。
【0090】
一般に、高い結晶格子エネルギーは、高融点および低水溶解度につながり得る。結晶格子エネルギーは、例えば、π−スタッキング相互作用(例えば、芳香環のスタッキング)によって増加され得る。この分子間スタッキングは、相互補完的である、分子の異なる領域における極性の非対称性から生じると考えられており、これが複数のπ系を有する一部の疎水性治療薬(HTA)の水不溶性の一員と考えられている。学説に捉われることなく、このπ−π電子的相互作用が、陰イオン性頭部基および疎水性尾部を有する分子を挿入することによって低減され得るならば、格子エネルギー寄与は低減され得、HTAの水溶解度は増加され得ると考えられている。さらに、疎水性治療薬(例えば、複数のπ系を有する疎水性治療薬または高い関連結晶格子エネルギーを有するいずれもの疎水性治療薬)を、1種以上の低融点疎水性リン脂質(例えば、中間長の脂肪酸鎖および/もしくは1以上の不飽和を含有する脂肪酸鎖を有するもの)と、ならびに/または陰イオン電荷もしくは電子供与能を有するポリマーと相互作用(例えば、複合体形成)させることにより、例えば、複合体中の疎水性治療薬の融点を低下させ得ると考えられている。例えば、疎水性治療薬:脂質複合体が水に曝されると、疎水性相互作用と静電相互作用のバランスによってリポソームまたはミセルなどの有機集合体が形成され得る。結果として、使用できる水溶解度が達成され得る。
【0091】
よって、いくつかの実施形態では、前記第1および第2の成分は、それぞれ、独立に、中鎖長および/または1以上の不飽和度を有する1つ以上の脂肪酸鎖を含み得る。学説に捉われることなく、これらの特性の一方または両方を有する脂肪酸は融点を低下させ得、本明細書に記載のリポソーム組成物および処方物の前記成分中にそれらが存在することで親油性または疎水性材料の二重層への取り込み度を増加し得ると考えられている。また、前記成分にそのような脂肪酸鎖が存在することで、結果として得られるリポソームの二重層流動性も増加し得、その結果として得られるリポソームの血液タンパク質による浸透を可能にし得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、前記第1および第2の成分は、それぞれ、独立に、前記成分上(それゆえその結果として得られるリポソーム)上に正味電荷が存在することを含み得る。この構造的特徴は静電反発力を通じてリポソームの安定性を提供し得、そのことにより次には多層リポソームの凝集または形成の可能性が減少され得るため、より大きな粒径のリポソームがもたらされ得る。例えば、陰イオン性リン脂質は静電反発力によりリポソームの凝集を防ぎ、高い保存性を提供し得る。しかしながら、I.V.投与によると、陰イオン性脂質は、血液の成分によって取り出され得る。これは次にはリポソームの崩壊、そして事前に封入された疎水性治療薬の血液コンパートメントへの送達につながり得る。血液コンパートメントなどは細網内皮系(RES)によって認識されないため、RES回避がなされ得る。本明細書に記載のインビボ急速崩壊型リポソーム組成物および処方物において形成されるリポソームは、前記疎水性治療薬の、血液中の赤血球(RBC)、リポタンパク質、HSAまたはWBCへの移行程度および速度を、前記疎水性治療薬のRES中への移行程度および速度に対して増強(例えば、増加)し得ると考えられている。
【0093】
いくつかの実施形態では、前記第1および第2の成分は、それぞれ、独立に、中鎖長を有する脂肪酸鎖、1以上の不飽和度を有する脂肪酸鎖、および正味電荷を含み得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記第1および第2の成分が存在することによって、前記疎水性治療薬のDMSOまたは補助溶媒溶液と同様に挙動し得るリポソーム処方物をもたらし得る。
【0095】
前記第1および第2の成分のような成分には、限定されるものではないが、天然レシチンまたはリン脂質(例えば、任意の植物起源、動物起源、または細菌起源由来、例えば、卵または大豆起源由来の、卵または大豆ホスファチド、例えば、卵レシチン、卵ホスファチジルエタノールアミン、卵ホスファチジルグリセロール、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、植物モノガラクトシルジグリセリド(水素化)または植物ジガラクトシルジグリセリド(水素化)と呼ばれるリン脂質)、あるいは合成レシチン(例えば、ジヘキサノイル−L−α−レシチン、ジオクタノイル−L−α−レシチン、ジデカノイル−L−α−レシチン、ジドデカノイル−L−α−レシチン、ジテトラデカノイル−L−α−レシチン、ジヘキサデカノイル−L−α−レシチン、ジオクタデカノイル−L−α−レシチン、ジオレオイル−L−α−レシチン、ジリノレオイル−L−α−レシチン、α−パルミト,β−オレオイル−L−α−レシチン、L−α−グリセロホスホリルコリン)が含まれ得る。他の好適なリン脂質としては、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ホスファチジルコリン(PC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、またはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルイノシトールが挙げられる。
【0096】
模範的な第1および第2の成分としては、炭素数14の飽和炭素鎖であるジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、両性イオン性頭部基、脂肪酸の混合物である卵ホスファチジルコリン(EPC、卵PC)、両性イオン性頭部基約42%が飽和し、約57%が不飽和である炭素数16〜18の炭素鎖、脂肪酸の混合物である大豆ホスファチジルコリン(SPC)、両性イオン性頭部基約17%が飽和し、約81%が不飽和である炭素数16〜18の炭素鎖、またはEPCと本質的に同じ混合物を含むが、頭部基が正味の負電荷を含む卵ホスファチジルグリセロール(EPG、卵PG)が挙げられる。
【0097】
ある特定の実施形態では、前記第1の成分および前記第2の成分のそれぞれは、互いに独立に、天然レシチンまたはリン脂質であり得る。例えば、前記第1の成分は卵ホスファチジルグリセロールであり得、かつ前記第2の成分は大豆ホスファチジルコリンであり得る。別の例として、前記第1の成分は、卵ホスファチジルグリセロールであり得、かつ前記第2の成分は、DMPCであり得る。
【0098】
他の実施形態では、前記第1の成分および前記第2の成分の一方または両方は、リン脂質以外の脂質を有する合成脂肪酸鎖であり得る。例えば、陽イオン性部分としての第四級アンモニウムイオンおよび陰イオン性部分としての硫酸基を有する合成脂肪酸鎖。
【0099】
一般に、凍結乾燥リポソーム組成物は、約10重量パーセント〜約90重量パーセント(該組成物の総重量に対して)(例えば、約10重量パーセント〜約50重量パーセント、約20重量パーセント〜約40重量パーセント)の前記第1の成分および前記第2の成分を含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記第2の成分の前記第1の成分に対する重量パーセント比は、約1〜約7(例えば、約1〜約5、約2〜約5、約1〜約3、約2〜約3、約4〜約5)であり得る。前記第2の成分の前記第1の成分に対する重量パーセント比は、約2.2〜約2.7であり得る。前記第2の成分の前記第1の成分に対する重量パーセント比は、約4.2〜約4.8(例えば、4.5)であり得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも小さくあり得る。例えば、前記(前記第1の成分の比率):疎水性治療薬は、(約0.10〜約0.95):1、例えば、(約0.50〜約0.95):1、例えば、約(0.75):1であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数とほぼ同じであり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約1.5〜約6倍大きく(例えば、約2〜約5倍大きく、約3〜約4倍大きく)あり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、前記第2の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きく(例えば、約2〜約12倍大きく、約2〜約4倍大きく、約4〜約6倍大きく、約6〜約12倍大きく、例えば、約3倍大きく、約5倍大きく、例えば、約7倍大きく、例えば、約11倍大きく)あり得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも小さくあり得(例えば、前記(前記第1の成分の比率):疎水性治療薬は、(約0.10〜約0.95):l、例えば、(約0.50〜約0.95):l、例えば、約(0.75):lであり得)、かつ前記第2の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きく(例えば、約2〜約12倍大きく、約2〜約4倍大きく、約4〜約6倍大きく、約6〜約12倍大きく、例えば、約3倍大きく、約5倍大きく、例えば、約7倍大きく、例えば、約11倍大きく)あり得る。例えば、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも小さくあり得(例えば、前記(前記第1の成分の比率):疎水性治療薬は、(約0.50〜約0.95):l、例えば、約(0.75):lであり得)、かつ前記第2の成分のモル数は、約2〜約4倍大きく(例えば、約3倍大きく)であり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数とほぼ同じであり得、かつ前記第2の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きく(例えば、約2〜約12倍大きく、約2〜約4倍大きく、約4〜約6倍大きく、約6〜約12倍大きく、例えば、約3倍大きく、約5倍大きく、例えば、約7倍大きく、例えば、約11倍大きく)あり得る。例えば、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数とほぼ同じであり得、かつ前記第2の成分のモル数は、約4〜約6倍大きく(例えば、約5倍大きく)あり得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約1.5〜約6倍大きく(例えば、約2〜約5倍大きく、約3〜約4倍大きく)あり得、かつ前記第2の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きく(例えば、約2〜約12倍大きく、約2〜約4倍大きく、約4〜約6倍大きく、約6〜約12倍大きく、例えば、約3倍大きく、約5倍大きく、例えば、約7倍大きく、例えば、約11倍大きく)あり得る。例えば、前記第1の成分のモル数は、前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約5倍大きく(例えば、約3倍または約4倍大きく)あり得、かつ前記第2の成分のモル数は、約6〜約12倍大きく(例えば、約7倍または約11倍大きく)あり得る。
【0108】
実施形態では、前記疎水性治療薬:前記第1の成分:前記第2の成分のモル比は、
【表3】

であり得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、前記第1の成分および前記第2の成分の前記疎水性治療薬に対する重量パーセント比は、約2〜約50(例えば、約10〜約50、約15〜約25)であり得る。
【0110】
凍結防止剤
凍結防止剤により(例えば、保存中に)前記水性処方物の凍結からの保護を講じる。好適な凍結防止剤としては、グリシン、グリセロール、糖類(例えば、単糖類、二糖類、または多糖類、例えば、グルコース、フルクトース、ラクトース、トレハロース、マルトース、マルトトリオース、パラチノース、ラクツロースもしくはスクロース)、あるいはポリヒドロキシアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)が挙げられる。一般に、凍結乾燥リポソーム組成物は、約50重量パーセント〜約75重量パーセント(該組成物の総重量に対して)の凍結防止剤を含み得る。いくつかの実施形態では、前記凍結防止剤の前記第1の成分および前記第2の成分に対する重量パーセント比は、約1.5〜約5(例えば、約2〜約3)であり得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、前記凍結防止剤は単糖類、二糖類または多糖類(例えば、グルコース、フルクトース、ラクトースもしくはトレハロース)である。ある特定の実施形態では、前記リポソーム処方物中に単糖類、二糖類または多糖類が存在することで比較的小さく狭い粒径分布(例えば、約130nm〜約200nm未満)を有するリポソームが生じ得、この場合、前記疎水性治療薬は、そのリポソーム中に比較的効率的に(例えば、約80%以上、例えば、約90%以上、例えば、約95%以上の封入効率で)安定に封入され得る。
【0112】
一般に、封入効率は次のとおり評価することができる:(1)既知量の疎水性治療薬を含有するリポソーム溶液を、例えば、本明細書に記載の方法を用いて、調製し、(2)そのリポソーム溶液中の疎水性治療薬の濃度を測定し、(3)得られたリポソーム溶液を0.22μフィルターで濾過し、その後、濾過したリポソーム溶液中にはおよそナノメートル粒径分布のリポソームが保持され、(4)その濾過したリポソーム溶液中の疎水性治療薬の濃度を測定し、そして(5)工程(4)で得られた疎水性治療薬の濃度を工程(2)で得られた疎水性治療薬の濃度で除すことによって封入効率を決定する。
【0113】
酸化防止剤、追加成分、および模範的な凍結乾燥組成物
いくつかの実施形態では、前記第1の酸化防止剤および前記第2の酸化防止剤のそれぞれは、互いに独立に、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシルアニソール(BHA)、α−トコフェロールもしくはそのアシルエステル、ペグ化ビタミンE(例えば、TPGS)、またはアスコルビルパルミテートであり得る。好ましい実施形態では、前記酸化防止剤は疎水性酸化防止剤(例えば、BHT、BHA、α−トコフェロール、またはアスコルビルパルミテート)である。他の実施形態では、前記凍結乾燥リポソーム組成物は3種以上の酸化防止剤(3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種の酸化防止剤)を含み得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥リポソーム組成物は、1種以上の界面活性剤(例えば、様々な鎖長のペグ化(PEG)ビタミンE、チロキソポール(tyloxopol)およびそのペグ化(PEG)誘導体、または5〜15個の炭素の脂肪鎖を有する単糖類)をさらに含み得る。
【0115】
模範的な凍結乾燥リポソーム組成物には、表1に明確に述べたものが含まれる。
【表4】

【0116】
実質的に均質なリポソーム溶液
いくつかの実施形態では、実質的に均質なリポソーム溶液または実質的に均質なリポソーム処方物は、1種以上の疎水性治療薬と、第1の成分と、第2の成分と、凍結防止剤と、第1の酸化防止剤と、第2の酸化防止剤と、水とを含み得る。特定の疎水性治療薬、第1の成分、第2の成分、凍結防止剤、第1の酸化防止剤、および第2の酸化防止剤は、他の場所に記載したように選択することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、前記実質的に均質なリポソーム処方物は、少なくとも約70重量/容量パーセント(例えば、少なくとも約75重量/容量パーセント、少なくとも約80重量/容量パーセント、少なくとも約85重量/容量パーセント、少なくとも約90重量/容量パーセント、少なくとも約95重量/容量パーセント)の水を含み得る。
【0118】
一般に、前記実質的に均質なリポソーム処方物中の前記疎水性治療薬の濃度は、、例えば、前記疎水性治療薬の性質に依存し得る。いくつかの実施形態では、前記処方物は、約0.050重量/容量(w/v)パーセント〜約0.500%重量/容量(w/v)パーセントの前記疎水性治療薬を含み得、それにより約0.5mg/ml〜約10.0mg/ml(例えば、約0.5mg/ml〜約8.0mg/ml、例えば、2mg/ml)の前記疎水性治療薬を有するリポソーム溶液が提供される。
【0119】
全ての実施形態では、前記処方物は、前記疎水性治療薬を沈殿させることなく、水で無制限に希釈することが可能である
【0120】
一般に、ナノメートル平均粒径分布のリポソームを含有するリポソーム溶液は、澄んだ半透明溶液(例えば、実質的に均質なリポソーム溶液または実質的に均質なリポソーム処方物)になる。そのため、前記疎水性治療薬の沈殿は、定性的手法、例えば、攪拌リポソーム溶液の、例えば、濁ったまたは乳状の分散液の形成についての視覚的モニタリングを利用してモニタリングすることができる。また、前記疎水性治療薬の沈殿は、本明細書に記載の定量的手法を利用しても(また定性的手法と併用しても)モニタリングすることができる。例えば、濾過し、濾過されていないリポソーム溶液の濃度の実質的な変化により前記疎水性治療薬の沈殿を示すことができる。
【0121】
模範的な処方物には、表2に明確に述べたものが含まれる。
【表5】

【0122】
いくつかの実施形態では、前記凍結乾燥リポソーム組成物、前記実質的に均質なリポソーム溶液または前記実質的に均質なリポソーム処方物中に存在する第1の成分、第2の成分、凍結防止剤、第1の酸化防止剤、および第2の酸化防止剤ならびに他の添加剤の一部または全ては、米国特許第4,816,247号および米国特許第6,890,555号、および米国特許第7,135,193B2号に記載のものからも選択することができ、それらの全ては引用することにより本明細書の一部とされる。
【0123】
全ての実施形態では、前記リポソームは、肺毛細血管を閉鎖する可能性を最小にするように、約5,000nm未満の平均粒径分布を有する。一般に、前記リポソームは、約30nm〜約500nm(例えば、約50nm〜約300nm、例えば、約200nm、約30nm〜最大限でも約200nm、約200nm未満)の平均粒径分布を有する。
【0124】
一般に、従来のリポソーム処方物は、肝臓および脾臓などの細網内皮系(RES)器官に優先的に取り込まれる。場合によっては、薬物の10〜20%だけは体循環中で利用可能である。粒径が増加すると、従来の処方物の正常な時間効果の結果として、RES取り込みの可能性はさらに増加する。
【0125】
前記リポソームのRES取り込みが起こると、封入されている疎水性治療薬の大部分はRESに集中しているため、標的組織では利用され得ない。実施形態では、前記新規リポソーム処方物は「急速崩壊型」であり得るが、これは前記疎水性治療薬−リポソーム組合せはインビトロで安定であるが、インビボ投与すると、前記疎水性治療薬は血流中に迅速に放出され、そこでその疎水性治療薬は血清リポタンパク質、赤血球、およびヒト血清アルブミンと結合するという点からである。いくつかの実施形態では、前記リポソーム処方物(リポソーム)は、インビボ投与によると、急速崩壊し、前記疎水性治療薬を血流中に迅速に放出して、血液中の、例えば、赤血球(RBC)、リポタンパク質、HSAまたはWBCと結合し得る。学説に捉われることなく、この迅速放出により前記疎水性治療薬を肝臓、脾臓、または骨髄などの非標的組織に蓄積させないようにすることができ、そうでなければ、その非標的組織ではリポソームが集中する傾向にあると考えられている。好ましいリポソームの「急速崩壊」性は、前記疎水性治療薬が本明細書に記載の処方物中に形成されているリポソームの脂質二重層と相互作用する様式とも関連し得る。
【0126】
本明細書に記載の組成物および処方物は、前記疎水性治療薬自体だけでなく、妥当な場合には、それらの塩およびそれらのプロドラッグも含み得る。塩は、例えば、陰イオンと本明細書に記載の化合物の正電荷置換基(例えば、アミノ)の間で形成され得る。好適な陰イオンとしては、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルフェート、ニトレート、ホスフェート、シトレート、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、およびアセテートが挙げられる。。同様に、塩は、陽イオンと本明細書に記載の化合物の負電荷置換基(例えば、カルボキシレート)の間でも形成され得る。好適な陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびアンモニウム陽イオン(テトラメチルアンモニウムイオンなど)が挙げられる。プロドラッグの例としては、対象への投与により活性な化合物を提供可能であるエステルおよび他の医薬上許容される誘導体が挙げられる。
【0127】
医薬上許容される塩には、医薬上許容される無機および有機酸および塩基から誘導されるものが含まれる。好適な酸性塩の例としては、アセテート、アジペート、アルギネート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビスルフェート、ブチレート、シトレート、カンホレート、カンファースルホネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、ホルメート、フマレート、グルコヘプタノエート、グリコレート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、2−ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、パルモエート、ペクチネート、ペルスルフェート、3−フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、サリチレート、スクシネート、スルフェート、タルトレート、チオシアネート、トシレートおよびウンデカノエートが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、本来医薬上許容されないが、本発明の化合物およびそれらの医薬上許容される酸付加塩を得る際に中間体として有用な塩の調製に使用してよい。適当な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびN−(アルキル)塩が挙げられる。また、本発明では、本明細書に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。そのような四級化によって、水または油溶性または分散性生成物を得てよい。本明細書におけるいかなる処方の化合物の塩形態も、カルボキシ基のアミノ酸塩(例えばL−アルギニン、−リジン、−ヒスチジン塩)であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥リポソーム組成物は、
(i)第1の組合せを作るために有機溶媒中で疎水性治療薬、第1の成分、および第2の成分を組み合わせることと、
(ii)第2の組合せ(例えば、リポソーム溶液)を作るために該第1の組合せを水相と組み合わせることと、
(iii)第3の組合せを作るために該第2の組合せから該有機溶媒を除去することと、
(iv)該第3の組合せを凍結乾燥すること(例えば、フリ−ズドライすること)と
を含む方法によって調製することができる。
【0129】
好ましい有機溶媒としては、蒸発減圧下(例えば、吸引器圧または低真空、例えば、約1mmHg〜約50mmHg)によって比較的容易にかつ実用的に除去することができるものが挙げられる。模範的な有機溶媒としては、例えば、C1−6直鎖および分枝アルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノールまたはt−ブタノール)、C1−6直鎖および分枝ハロアルカン(例えば、塩素化アルカン、例えば、クロロホルムまたは塩化メチレン)、C1−6直鎖および分枝アルキルエステル(例えば、エチルアセテート)が挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記第1の組合せは1種以上の酸化防止剤(例えば、2種の酸化防止剤)を含み得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、前記水相は凍結防止剤(例えば、ラクトース)を含み得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、前記第2の組合せはリポソーム溶液であり得、かつ前記方法は前記リポソームの粒径分布を減少させる(例えば、「前記疎水性治療薬の実質的に均質なリポソーム溶液」または「前記疎水性治療薬の実質的に均質なリポソーム処方物」を作るために、例えば、前記リポソームの平均粒径分布を約50nm〜約500nm(例えば、約50nm〜約300nm、例えば、(〜最大限でも約200nm、200nm未満)に減少させる)工程をさらに含み得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、工程(iii)は、一部もしくは実質的に全ての前記有機溶媒を、例えば、蒸留、減圧(例えば、吸引器圧もしくは低真空、例えば、約1mmHg〜約50mmHg)下での蒸発、またはタンジェンシャルフローフィルトレーションにより除去することを含み得る。
【0134】
ある特定の実施形態では、工程(iii)はタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)を実施することを含み得る。好ましい実施形態では、前記有機溶媒は好ましくは水混和性有機溶媒(例えば、エタノール、iso−プロパノール、n−プロパノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)である。一般に、最初の溶媒は、フィルター膜に約5〜10(例えば、5〜6)回通した後にリポソーム溶液から除去することができる。
【0135】
本明細書に記載の方法においてTFFを用いることには、次の利点の1つ以上があり得る。例えば、TFFは一般に拡張可能であり、除去する有機溶媒に対して柔軟性がある。TFFは、一般に、本質的に任意の低分子量の水混和性有機溶媒を、約100mL〜約10,000リットル(L)(例えば、約100mL〜約1,000mL(例えば、1〜3L、30〜50L)の総容量を有するリポソーム溶液から除去するのに用いることができる。また、TFF法自体は溶媒蒸発工程を含まない。そのため、TFFを用いることによって本明細書に記載の方法の実施に伴う作業コストが下がる可能性があり得る(例えば、タンジェンシャルフローフィルトレーションがあり得るが、それは特別に設計されたコストのかかる施設(例えば、防爆施設)の範囲内で実施する必要はなく、そのような施設は真空系、加熱マントル、縮合塔などの溶媒除去装置を適応させるのに一般に必要とされる(要求されることがある)。さらなる例として、タンジェンシャルフローフィルトレーションを用いることによって本明細書に記載の方法を本質的にワンポット操作として実施することができるようになり、それにより該方法の中間段階におけるリポソーム溶液のバルク輸送の可能性を最小にする。
【0136】
いくつかの実施形態では、前記方法は無菌濾過の工程をさらに含み得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、前記方法は、より大きな粒子を分離するために濾過したり、または狭い分布の粒径分布を得る他の機械的方法を利用したりしないで前記リポソーム処方物を製造することができるように、十分に小さく狭い平均粒径分布(例えば、約200ナノメートル(nm)未満)を有するリポソームを提供することができる。
【0138】
他の実施形態では、凍結乾燥リポソーム組成物は、
(i)第1の組合せを作るために有機溶媒中で疎水性治療薬、第1の成分、および第2の成分を組み合わせることと、
(ii)第2の組合せを作るために該第1の組合せから該有機溶媒を除去すること(例えば、薄膜などを形成するために一部もしくは実質的に全ての該有機溶媒を除去すること)と、
(iii)第3の組合せを作るために該第2の組合せを水相と組み合わせることと、
(iv)該第3の組合せを凍結乾燥し、それにより該凍結乾燥リポソーム組成物を調製することと
を含む方法によって調製することができる。
【0139】
一般に、前記凍結乾燥組成物は、約2℃〜約37℃(例えば、約2℃〜約8℃)で約2年以上の間保存することができる。前記凍結乾燥組成物はまた、より低い温度、例えば、約−20℃〜−70℃でも保存することができる。
【0140】
加えて、本明細書に記載の方法は、1種以上の疎水性治療薬を有するエマルジョン、ベシクル、または高分子量集合体を調製するのに用いることができる。
【0141】
一般に、実質的に均質なリポソーム水性処方物または溶液は、本明細書に記載の当該凍結乾燥リポソーム組成物を水性ビヒクルで復元することにより調製することができる。復元された組成物は、水で無制限に希釈することができ、一般に室温にて約1週間にわたって物質的にも化学的にも安定している。
【0142】
前記リポソーム水性処方物は一般に非経口投与される。注射は、静脈内、皮下、筋肉内、くも膜下腔内、あるいは腹腔内であり得る。前記リポソーム処方物は、経皮、舌下、経口、眼、膣および結腸経路によって適用され得る。ある特定の実施形態では、前記リポソーム水性処方物は、鼻腔内にエアゾールにより、気管支内に、肺胞内に(intraalvelorly)、または肺内に投与され得る。前記組成物は、注射前に滅菌水で復元するためにバイアル中にパッケージングし得、そのバイアルには少量の無毒の補助剤例えばpH緩衝剤、防腐剤、キレート化剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤なども含まれ得る。
【0143】
投薬量は、0.5〜120時間おきに、または特定の薬剤の用件に従って、約0.01mg/Kg〜約1000mg/Kg、(例えば、約0.01mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/Kg、約0.05mg/kg〜約10mg/Kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg)の範囲に及び得る。動物とヒトについての投薬量の相互関係(体表面1平方メートル当たりのミリグラム数に基づく)については、Freireich et al., Cancer Chemother. Rep. 50, 219 (1966)によって記載されている。体表面積は、患者の身長と体重から近似的に決めてよい。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, New York, 537 (1970)参照。本明細書における方法は、所望の効果または記述した効果を得るのに有効な量の疎水性治療薬の投与を意図している。一般に、本明細書に記載の処方物は1日1〜6回、あるいは、持続注入として投与される。ある特定の実施形態では、リポソーム水性処方物はボーラス(例えば、約1分にわたって投与される)またはスローボーラス(例えば、約15分〜約20分にわたって投与される)として投与され得る。そのような投与は慢性または急性治療として用いることができる。
【0144】
上に挙げた用量より低いまたは高い用量が必要な場合がある。いかなる特定の患者についての具体的な投薬量および処置計画も、使用する具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食習慣、投与時期、排泄速度、薬物の組合せ、疾患、状態または症状の重篤度および経過、疾患、状態または症状に対する患者の素因、ならびに治療する医師の判断を含む種々の因子によって決まる。
【0145】
患者の状態の改善があれば、必要に応じて、本明細書に記載の処方物の維持量を投与してよい。引き続いて、症状が所望のレベルまで緩和されたときには、改善された状態が維持されるレベルまで、症状の関数として投与の投薬量または頻度、あるいは両方を減じてよい。しかしながら、患者は、疾患の症状の再発についての長期的な間欠的処置を必要とし得る。
【0146】
本発明の組成物および処方物は、任意の従来の無毒の医薬上許容される担体、希釈液またはアジュバントを含有してよい(例えば、該組成物および処方物は、医薬組成物形態として調製することができ、医薬組成物形態として保存することができ、または医薬組成物形態で投与することができる)。一部の例では、、前記処方物のpHを医薬上許容される酸、塩基またはバッファーで調整して、処方された化合物またはその送達形態の安定性を高めてよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の処方物は1種以上の他の治療薬と同時投与され得る。ある特定の実施形態では、前記追加の薬剤は、複数回投与計画の一部として、本発明の化合物とは別個に(例えば、逐次的に、例えば、本明細書に記載の処方物の投与と重なる異なるスケジュールで)投与され得る。あるいは、これらの薬剤は、単一組成物中で前記疎水性治療薬と一緒に混合されている単回投与形の一部であり得る。さらにもう1つの実施形態では、これらの薬剤は、本明細書に記載の処方物が投与されるのとほぼ同時に(例えば、本明細書に記載の処方物の投与と同時に)投与される別の用量として与えられ得る。
【0148】
次の実施例において本発明をさらに記載する。これらの実施例は本発明を単に例示するためのものであり、いかなる方法によっても本発明を限定するものと解釈すべきではないということを理解すべきである。
【0149】
実施例
候補疎水性治療薬
化合物1:(5−フルオロ−2−メチル−N−[4−(5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−10(11H)−カルボニル)−3−クロロフェニル]ベンズアミド、分子式−C2721ClFN、分子量 473.9、融点は180℃〜184℃である。
【0150】
化合物1は非ペプチド性バソプレシン受容体拮抗薬であり、生理学的pH範囲(1.2〜7.5)間の水溶液には溶けない。この化合物1の、医薬上許容される親水性および親油性溶媒の部分的水性溶媒に対する溶解度は限られている。化合物1の種々の製剤系に対する25℃での溶解度を表1に示している。
【表6】

【0151】
表3では、化合物1のPEG400、PEG300、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、トリアセチンおよびエタノールに対する溶解度(mg/ml)は、それぞれ、26.3、14.86、21.03、3.41、2.70および1.89であり、一方、PEG300とエタノールの50:50の組合せでは溶解度が8.75mg/mlまで低下していることが分かる。PEG300/エタノール/水(40:30:30)組成物を得るために水を加えることで、溶解度は0.28mg/mlまで低下する。
【0152】
補助溶媒系としての、PEG400または300、ベンジルアルコール、エタノールおよび少量の胆汁酸塩(例えばナトリウムデオキシタウロコレート(Sodium Deoxytauro Cholate))のさらなる組合せでは、水を30%レベルに加えると、最終的な水性有機混合物において化合物1が沈殿した。
【0153】
化合物2:ブタ−2−イン酸[4−(3−ブロモ−フェニルアミノ)−キナゾリン−6−イル]−アミドメシレート、式:C1813BrNO.CH
【0154】
実施例1
凍結乾燥リポソーム組成物を調製するための基本タンジェンシャルフローフィルトレーション手順。
基本手順:疎水性治療薬、リン脂質、および酸化防止剤を無水アルコールに溶かして、疎水性治療薬−リン脂質複合体を作る。そのアルコール溶液をラクトース水溶液により希釈すると、アルコールを含むリポソーム溶液が生成する。そのアルコールをタンジェンシャルフローフィルトレーション装置(TFF)による反復分子ふるい操作によって除去する。得られたリポソーム水溶液を高圧ホモジナイザ−に通して、粒径分布をサブミクロン範囲に減少させ、0.22μmフィルターで無菌濾過し、バイアルに充填する。化学的安定性を得るためにバイアル内容物を凍結乾燥する。
【0155】
凍結乾燥前に、TFF法を用いたスケールアップバッチを50リットル規模のバルクリポソーム溶液で製造した。薬物:卵PG:DMPCのモル比組成物(1:4:11)を含む化合物1のリポソーム凍結乾燥処方物の代表的なデータを示している。本明細書に記載のもの以外のモル比組成物を含む組成物および処方物は、TFF処理により製造することができる。
【0156】
凍結乾燥リポソーム化合物1(15mg/バイアル)を得るためのタンジェンシャルフローフィルトレーション処理の概要(代表例)
1).アルコール溶液、4mg/ml 化合物1およびリン脂質を調製する。
2).1)に注射用水(WFI)を、1)のアルコール溶液の3倍の量でゆっくりと加え、混合して、水性アルコール性リポソーム溶液 1.0mg/ml 化合物1を準備する。
3).2)の水性アルコール性リポソーム溶液についてタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)を、WFIを少なくとも6〜8回交換することにより(アルコールの工程内試験を用いて)実施して、リポソーム水溶液 1.0mg/ml 化合物1を準備する。
4).3)のリポソーム水溶液をTFFにより最初の量の45%まで濃縮して、リポソーム水溶液 2.2mg/ml 化合物1を準備する。
5)4)のリポソーム水溶液 2.2mg/ml 化合物1に固体ラクトース&WFIを加え、活性を1.8mg/ml 化合物1に調整し、高圧ホモジナイゼーションを実施して、ラクトース含有リポソーム水溶液、1.8mg/ml 化合物1を準備する。
6.5)のラクトース含有リポソーム水溶液、1.8mg/ml 化合物1を0.45μフィルターおよび0.22μフィルターで濾過して、濾過済ラクトース含有リポソーム溶液、1.8mg/ml 化合物1を準備する。
7.6)の濾過済ラクトース含有リポソーム溶液、1.8mg/ml 化合物1について工程内HPLC活性測定を実施し、25%ラクトース溶液&WFIを加えることによって活性を1.58mg/ml 化合物1に調整する。0.22μに通して無菌区域内に再度濾過して、滅菌ラクトース含有リポソーム溶液、1.58mg/ml 化合物1を準備する。
8.7)の滅菌ラクトース含有リポソーム溶液、1.58mg/ml 化合物1を10.5ml/バイアルで充填する。凍結乾燥して、凍結乾燥リポソーム化合物1のバイアルを準備する。
【0157】
表4では、化合物1のリポソーム溶液を得るためのパイロットバッチ(TFF操作の結果)(TFF通過の関数としてのエタノール除去効率)を示している。
【表7】

【0158】
透過物が12〜13リットル流出し終えた時点で+透過物サンプルを集める。
【0159】
TFF法による凍結乾燥リポソーム化合物1バイアルの処理パラメーターの概要
●最初のアルコール性−HO リポソーム溶液の量=16,000ml
●アルコールが減少したリポソーム濃縮溶液の最終量=8,600ml
●最終調整量(固体ラクトース+WFI添加後=10,000ml
●総TFF操作時間=3時間
●外観
−最初のアルコール性−HO リポソーム溶液=乳様
−最終リポソーム溶液(TFF+濃縮+ラクトース+HO)=澄明な半透明
●フィルタラビリティ(filterability)
−マイクロフルイダイゼーション(Microfluidization)前=0.45μで40mlおよび0.45/0.22μで20ml
−マイクロフルイダイゼーション後(18,500psiで2回実施)=0.45μで>>40mlおよび0.45/0.22μで30ml
●最終リポソームバルク溶液の活性値
−濾過されていない溶液=1.523mg/ml
−0.22μ Millipore 200で濾過されたもの=1.513mg/ml
●凍結乾燥のためのバイアル充填量=10.5ml
●製造効率=93%(開始時に用いたVPA−985総量とバイアル中に得られた総量に基づく)
●フリーズドライ
●Nにより真空破壊し、栓をし、密閉し、それらのバイアルを2〜8℃で保存する
●フリーズドライしたバイアルの評価
−ケークの外観:黄色がかった白色ケーク
−水分−3.99%
−アルコール−0.1%
−構成能(Constitutability):15秒で澄明な溶液となり、その溶液では少なくとも4日の観察期間の間は沈殿物が観察されなかった
−構成された溶液:−pH=5.54および297mosm 浸透圧
−粒径分布(Nicompによる)
二峰性分布
89nm 69容量%
11nm 31容量%
●バイアルベースでの化合物1活性=15.91mg/バイアル
●製造した総バイアル数=950バイアル
【0160】
TFFによって調製された代表的な組成物:表5および表6では、TFF法によって調製された、化合物1および化合物2それぞれを含有する代表的な凍結乾燥リポソーム組成物を示している。
【表8】


水を加えることによって復元した際のリポソーム溶液の組成
【0161】
【表9】


水を加えることによって復元した際のリポソーム溶液の組成
【0162】
実施例2
リポソーム処方物を調製するための基本手順(ロータリーエバポレーターによる薄膜技術)。
IV処方物は、1バイアル当たり20mgの化合物1に相当する滅菌凍結乾燥リポソーム粉末を入れたバイアルとして与えられる。化合物1の水不溶性および他の物理化学的特性に基づいて、該薬物のIV投与のためのリポソーム処方物を選択した。10mLの注射用水を加えることによって、2mg/mlの化合物1を含む水様のリポソーム溶液(約200nm平均サイズのリポソームを含む)が得られる。プロトタイプA(1:3:7 モル比)およびプロトタイプB(1:4:11 モル比)の組成物を表7に示している。それらの組成物は以下に記載する薄膜ロータリーエバポレーター法によって製造した。代表的なバッチの安定性データを表8に示している。リポソームの粒径分布に関する復元性パラメーターも示している。
【0163】
疎水性治療薬の代表的な凍結乾燥リポソーム組成物(薄膜ロータリーエバポレーター手順):
【表10】

【0164】
リポソームの製造(ロータリーエバポレーターによる薄膜技術):代表的な工程:
1.溶解:疎水性治療薬(HTA)リン脂質を有機溶媒中へ(プロセス制御:〜低溶解Oレベル、〜混合速度および温度、〜溶媒曝露)。
2.溶媒除去およびHTA−脂質複合体の薄膜としての蒸着(プロセス制御:〜蒸発速度、〜残留溶媒レベルを確認する、〜膜の厚さおよび多孔性)。
3.制御水和および粗リポソーム形成(プロセス制御:〜膜湿潤速度、〜水和溶媒温度、〜混合)。
4.粒径減少(プロセス制御:〜チャンバー圧、〜入口、チャンバーおよび出口の温度:〜パス回数)。
5.粗濾過(粗いフィルター)および分散していない薬物の除去(プロセス制御:〜濾過圧力、〜速度および温度)。
6.無菌濾過(プロセス制御:〜フィルタラビリティ試験、〜濾過圧力および速度、〜活性分析)。
7.バイアル充填(プロセス制御:〜バルク溶液温度および均質性、〜重量制御)。
8.凍結乾燥(プロセス制御:第1、第2、第3の乾燥工程をカスタマイズする、〜水分分析)。
9.放出についての物理および化学試験(プロセス制御:〜モノグラフ試験、〜粒径再現性)。
【0165】
注射#(15mg/バイアル)凍結乾燥処方(1:4:11 モル比)に関する化合物1についての形式的安定性データ:
【表11】


#モル比+薬物:EPG:DMPC 1:4:11
リポソームの安定性データは以下のバッチのものである:
膜は2〜8℃で1M間保存した
凍結乾燥したバッチは室温で保存し、1M後に形式的に安定した
よって、サンプルができてからの実際の経過時間は形式的保存時点+2ヶ月である
【0166】
リポソーム溶液の復元および粒径パラメーター:
凍結乾燥リポソームケークは、WFIの添加および混合から30秒以内に澄明〜半透明の溶液に復元された。泡が存在した場合でもそれは10分で消えた。溶液のpHは6.0〜6.2間であった。粒径分布は、動的光散乱法を利用してNicomp社製サブミクロン粒径計測器(Submicron Particle Size Analyzer)により測定した。その処方物では、代表的なNicompプロットは微細なリポソームの単峰性サイズ分布を示す。
【0167】
プロットから以下のことが分かった:
平均径:39nm
標準偏差:19nm
変動係数:0.499
カイ二乗値:23
累積結果:
75%の粒子<46nm
99%の粒子<105nm
【0168】
実施例4
リン脂質混合物のモル組成を定義するための研究
初期実験では、EPG(陰イオン性リン脂質)とDMF(半合成飽和炭化水素鎖両性イオン性リン脂質)とを組み合わせることによって化合物1の可溶化が実現するようになることが示された。許容される薬物添加量と、化学的および物質的安定性と、製造可能性とを提供する最適なモル比 薬物:EPG:DMPCを定義するためにさらなる実験を行った。安定に製造できる1.5〜2.0mg/mlを封入したリポソームについての他の、陰イオン性リン脂質と両性イオン性リン脂質との組合せの例を表9に示している。
【表12】

【0169】
実施例5
リポソームの細網内皮系(Res)回避設計のための生物学的証拠
典型的な従来の薬物担体リポソームをIV経路によって投与すると、一般に薬物の約80〜90%は細網内皮系器官(すなわち肝臓、脾臓、骨髄など)によって捕捉されるが、微量の薬物は体循環中で利用可能である。標的がRESではない場合には、このことが治療の目的にそぐわない可能性がある。
【0170】
化合物1のリポソームの設計では、リポソームがインビトロでまたは棚上で安定しており、かつ、崩壊し、循環薬物貯蔵器となる血液の1または複数の成分へと薬物を送達し、その結果として、投与形が用量の大部分をRES器官ではなく体循環に提供する単純溶液のように挙動するように、リン脂質分子タイプと組成を選択した。
【0171】
投与形の比較薬理学的有効性研究(尿量試験)
化合物1に関する測定可能な薬理学的有効性指標の1つは尿排出量の増加である。異なる処方物の化合物1の有効性に関するこの試験は、ラットで試験を実施することによって広く利用されている。
【0172】
1:5:7および1:3:7 化合物1:EPG:DMPC比の2つのリポソーム処方物(表10)の補助溶媒処方物との直接比較研究を、対照としてDMSO:PEG200(50:50)化合物1溶液を用いてラットで実施した。新規リポソーム処方物は70〜90%の尿排出量をもたらし、DMSO:PEG200対照と比べて厳密なRSD値を示した。DMSOを含む対照処方物は、一般には静脈内製剤として許容されない。補助溶媒処方物は、プロピレングリコール、PEG400、エタノール、ベンジルアルコールおよび酸化防止剤の混合物であり、この補助溶媒処方物では尿排出量に関して対照値の50%しかもたらされなかった。
【表13】

【0173】
補助溶媒とリポソーム投与形を比較する薬物動態研究:
化合物1の補助溶媒処方物と1:3:7リポソーム処方物とを比較する薬物動態研究の結果の概要を表11に示している。これらのデータは、リポソームが、HTAを体循環中に送達する溶液により一層類似するように挙動することを示している。
【0174】
比較静脈内用量決定試験は雄イヌにて漸増用量(投与当たり3日)で行った。各処方物を2匹のイヌに各用量レベル(0.5mg/kg/日、2.5mg/kg/日、および5.0mg/kg/日)で3日間投与し、化合物1の分析のために3日目、6日目、および9日目に血液サンプルを採取した。
(1)両処方物における化合物1の薬物動態パラメーターは、用量の増加とともに大きくなり、比例用量よりもやや高いかもしれない。
(2)0.5mg/kgおよび2.5mg/kg用量でのCmax値については、2つの処方物間では差がないように思われる。5.0mg/kg/日では、リポソーム処方物のCmax値は補助溶媒処方物の値よりも高いように思われる。より高い用量では薬物が補助溶媒から沈殿する可能性があるために利用できないという要因があると考えられる。
(3)補助溶媒群における平均AUC0−24値はリポソーム群における値よりもやや高いが、サンプルサイズが小さいため決定的な評価としてはならない。
【0175】
ラットでの尿排出量による薬理学的効果予備試験およびイヌでの薬物動態研究は、記載した新規化合物1リポソーム処方物は、従来のリポソームとは異なり、薬物の有機溶媒溶液により一層類似するように作用し、肝臓に到達する前に疎水性薬を血液の1以上のコンパートメントに高い確実性で送達し、そしてそれらの血液のコンパートメントが細網内皮系には認識されない循環薬物担体になるということを示している。

【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)疎水性治療薬と、
(ii)第1の成分と、
(iii)第2の成分と
を含む凍結乾燥リポソーム組成物であって、
該組成物を水と接触させると、該第1の成分と該第2の成分とが相互に作用して、該疎水性治療薬の実質的に均質なリポソーム溶液を形成する、凍結乾燥リポソーム組成物。
【請求項2】
約20重量パーセント〜約40重量パーセントの前記第1の成分および前記第2の成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の成分の前記第1の成分に対する重量パーセント比が約1〜約7である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の成分のモル数が前記疎水性治療薬のモル数とほぼ同じであり、かつ前記第2の成分のモル数が前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の成分のモル数が前記疎水性治療薬のモル数よりも約1.5〜約6倍大きく、かつ前記第2の成分のモル数が前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の成分および前記第2の成分の前記疎水性治療薬に対する重量パーセント比が約10〜約50である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記第1の成分および前記第2の成分のそれぞれが、独立して、天然レシチンまたはリン脂質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の成分が卵ホスファチジルグリセロールであり、かつ前記第2の成分が大豆ホスファチジルコリンである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
約0.05重量パーセント〜約10重量パーセントの前記疎水性治療薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
凍結防止剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記凍結防止剤が糖である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記凍結防止剤がラクトースである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
2種の酸化防止剤を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記2種の酸化防止剤がBHTおよびアスコルビルパルミテートである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
凍結防止剤と、第1の酸化防止剤と、第2の酸化防止剤とをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
【表1】

を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記凍結防止剤がラクトースであり、第1の酸化防止剤がBHTであり、かつ第2の酸化防止剤がアスコルビルパルミテートである、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記疎水性治療薬が約5ng/mL〜約5mg/mLの水溶解度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記疎水性治療薬が約100ダルトン〜約1,000ダルトンの分子量を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記疎水性治療薬がイオン性基を欠く、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記疎水性治療薬が約2〜約11のpKaを有する酸性基をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記疎水性治療薬が塩基性基をさらに含み、ここで前記塩基性基の共役酸のpKaが約3〜約12である、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記疎水性治療薬が両性イオンである、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
前記疎水性治療薬が結晶性固体である、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
前記疎水性治療薬が2つの環をさらに含み、ここで各環が、独立して、芳香環または複素芳香環である、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記疎水性治療薬が、縮合二環系、三環系または多環系をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
前記疎水性治療薬が、不水溶性真菌抗生物質または合成起源、半合成起源、もしくは天然起源の複合大員環である、請求項19に記載の組成物。
【請求項29】
前記疎水性治療薬が約1.0〜約5.0のlogP値を有する、請求項1または19に記載の組成物。
【請求項30】
前記疎水性治療薬が約2.0〜約5.0のlogP値を有する、請求項1または19に記載の組成物。
【請求項31】
前記疎水性治療薬が約3.0〜約5.0のlogP値を有する、請求項1または19に記載の組成物。
【請求項32】
前記疎水性治療薬が約4.0〜約5.0のlogP値を有する、請求項1または19に記載の組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の組成物の調製方法であって、
(i)疎水性治療薬、第1の成分、および第2の成分を有機溶媒中で合して、第1の組合せを形成すること;
(ii)該第1の組合せを水相と合して、第2の組合せを形成すること;
(iii)該第2の組合せから該有機溶媒を除去し、第3の組合せを形成することと;
(iv)該第3の組合せを凍結乾燥し、それにより請求項1に記載の組成物を調製することと
を含む、方法。
【請求項34】
前記有機溶媒がエタノールである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記水相が凍結防止剤をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記凍結防止剤がラクトースである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の組合せが酸化防止剤をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の組合せがリポソーム溶液である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記リポソームの粒径分布を減少させる工程をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記リポソームの粒径分布を最終粒径分布約5,000nm〜約20nmに減少させる工程をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記リポソームの粒径分布を約200nmに減少させる工程をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
工程(iii)がタンジェンシャルフローフィルトレーションを実施することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記有機溶媒がエタノールである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
(i)疎水性治療薬と、
(ii)第1の成分と、
(iii)第2の成分と、
(iv)水と
を含む、実質的に均質なリポソーム処方物。
【請求項45】
少なくとも約80重量/容量パーセントの水を含む、請求項44に記載の処方物。
【請求項46】
凍結防止剤と、第1の酸化防止剤と、第2の酸化防止剤とをさらに含む、請求項44に記載の処方物。
【請求項47】
【表2】

を含む、請求項46に記載の処方物。
【請求項48】
約2mg/mLの前記疎水性治療薬を含む、請求項44に記載の処方物。
【請求項49】
ヒトまたは動物対象への投与のための静脈内処方物または非経口処方物である、請求項44に記載の処方物。
【請求項50】
請求項1に記載の凍結乾燥リポソーム組成物を水と接触させることにより調製される、請求項44に記載の処方物。
【請求項51】
前記リポソームが最大約5,000nmの平均粒径分布を有する、請求項44に記載の処方物。
【請求項52】
前記リポソームが約50nm〜約200nの平均粒径分布を有する、請求項44に記載の処方物。
【請求項53】
前記リポソームが約200nmの平均粒径分布を有する、請求項44に記載の処方物。
【請求項54】
前記疎水性治療薬を沈殿させることなく、水で無制限に希釈することが可能である、請求項44に記載の処方物。
【請求項55】
インビボ投与すると、血流中に前記疎水性治療薬を迅速に放出して、血液中の赤血球(RBC)、リポタンパク質、HSAまたはWBCと結合する、請求項44に記載の処方物。
【請求項56】
前記第1の成分のモル数が前記疎水性治療薬のモル数よりも小さく、かつ前記第2の成分のモル数が前記疎水性治療薬のモル数よりも約2〜約15倍大きい、請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−519250(P2009−519250A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544566(P2008−544566)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/047101
【国際公開番号】WO2007/067784
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】