説明

リラクゼーション椅子

【課題】 従来におけるリラクゼーション椅子にあっては、背凭れが伏倒し座部が前方に移動し、かつ、伏倒状態において腰部と腰部を支持する部分の隙間を補完することで、着座する人の身長さをある程度吸収することは可能であるが、人の平均身長より大きな人とか小さな人には対応することが出来ないといった問題があった。
【解決手段】 昇降可能な座部1と、該座部に対して起伏可能に形成されると共に下部背凭れ41と上部背凭れ42とからなり、かつ、下部背凭れに対して上下動および所望の高さ位置でロック可能に取付けられた背凭れ4と、前記座部に対して起伏可能に形成された前垂れ5とから構成したリラクゼーション椅子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容用椅子として好適な椅子であって、特に、被施術者を着座させた状態でマッサージ、フェイシャル、ネイル等の施術を行う時に、被施術者の身長に合わせて背凭れの高さを調整することが可能なリラクゼーション椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種のリラクゼーション椅子としては、本出願人に出願した特開2002−282079号公報に開示された発明がある。この発明は、座部と背凭れの角度を一定となし、かつ、座部と背凭れを一体として振り子状に傾斜可能な構造となし、さらに、座部のみを前後動させることで着座している被施術者を水平状態に近い仰臥姿勢をとらせるようにしたものである。
【0003】
そして、座部を前方に移動して被施術者を仰臥姿勢にした場合に、被施術者の腰部と背凭れの下部との間に隙間ができるので、この隙間を無くして背中全体を背凭れで支持できるように、背凭れを上下2分割し、腰部に対応する下部背凭れを座部の移動に伴って腰部側に変移するようにしたものである。
【特許文献1】特開2002−282079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記したリラクゼーション椅子にあっては、背凭れが伏倒し座部が前方に移動し、かつ、伏倒状態において腰部と腰部を支持する部分の隙間を補完することで、着座する人の身長さをある程度吸収することは可能であるが、人の平均身長より大きな人とか小さな人には対応することが出来ないといった問題があった。
【0005】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、背凭れを上部と下部の2つに分割し、上部の背凭れを上下方向に伸長可能とすることで、人の標準伸長よりかなり大きな人や小さな人の背部全体と密着させてリラックス状態で着座および仰臥させることができるリラクゼーション椅子を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリラクゼーション椅子は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、昇降可能な座部と、該座部に対して起伏可能に形成されると共に下部背凭れと上部背凭れとからなり、かつ、下部背凭れに対して上下動および所望の高さ位置でロック可能に取付けられた背凭れと、前記座部に対して起伏可能に形成された前垂れとから構成したものである。
【0007】
請求項2の手段は、前記し請求項1において、前記背凭れの起伏は、前記座部の両側面に配置された肘掛けの側面より突出して取付けられている回転摘みを回転することでガスシリンダが制御され、該ガスシリンダの伸長、収縮によって行われることを特徴とする。
【0008】
請求項3の手段は、前記し請求項1において、前記前垂れの起伏は、前記座部の両側面に配置された肘掛けの側面より突出して取付けられた回転ハンドルを回転することでリンク機構を介して行われ、かつ、前垂れの起立時にはダンパーによって緩やかに行われることを特徴とする。
【0009】
請求項4の手段は、前記し請求項3において、前記前垂れの側面から操作杆が突出して形成されており、該操作杆は前記回転ハンドルによって駆動するリンク機構を駆動することを特徴とする。
【0010】
請求項5の手段は、前記し請求項1において、前記背凭れにおける上部背凭れに対して枕が回動自在に取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は前記したように、座部に対して背凭れと前垂れを伏倒自在に形成すると共に、前記背凭れを上部背凭れと下部背凭れとに分割し、上部背凭れを下部背凭れに対して上下動自在で、かつ、所望の高さ位置でロック可能としたことにより、人の標準伸長よりかなり大きな人や小さな人の背部全体と密着させてリラックス状態で着座および仰臥させることができる。
【0012】
また、前記背凭れの起伏は、座部の両側面に配置されている肘掛けの側面より突出している回転摘みを回すことで伏倒され、かつ、起立はガスシリンダのガス圧で行われるので、油タンク内の油の供給や油タンクへの油の排出を利用した油圧シリンダより低価格で市場に提供することができる。
【0013】
さらに、前垂れの起伏は、前記肘掛けの側面より突出している回転ハンドルや前垂れの下部より突出している操作杆を操作することによりリンク機構を介して行われるので、前記したと同様に高価な油圧シリンダを利用するよりも安価に提供でき、かつ、伏倒時にはダンパーによって緩やかに回動するので、安全性を保てると共に着座している人を驚かすことがない。
【0014】
また、前記上部背凭れを上下動可能としたことで、従来のように枕を上下動させる必要がなく、上部背凭れにコストの安い単に前後方向に回動する枕を使用できる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、座部に対して背凭れと前垂れを伏倒自在に形成すると共に、前記背凭れを上部背凭れと下部背凭れとに分割し、上部背凭れを下部背凭れに対して上下動自在で、かつ、所望の高さ位置で固定可能とした。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明に係るリラクゼーション椅子の一実施例を図面と共に説明する。
図1は本発明のリラクゼーション椅子の概略を示し、1は台座2に対して水平状態で昇降する座部、3は該座部1の両側に一体的に取付けられた肘掛け、4は座部1の後ろ側において起伏可能に形成され、かつ、上部背凭れ41と下部背凭れ42とに分割されると共に上部背凭れ42は下部背凭れ41に対して上下度自在および所望の高さ位置で固定可能に形成された背凭れ、5は座部1の前側において起伏可能に形成された前垂れ、6は前記上部背凭れ42の上面に取付けられ前後方向に回動自在な枕である。なお、図1の(a)は上部背凭れ42が下降した状態を示し、(b)は上昇した状態を示している。なお、22は後述する座部基板11に取付けられているステップである。
【0017】
次に、上部背凭れ42を上下動自在で、かつ、所望高さ位置でロックするためのスライド杆ロック装置7を図2と共に説明する。
このスライド杆ロック装置6は前記下部背凭れ41の背面側における左右中心部に設けられ、主体71が前記上部背凭れ42の下部中央部から垂下されたスライド杆42aを上下方向に対してスライド可能となるように取付けられている。
【0018】
この主体71にはポリアセタール等の耐磨耗性と摩擦抵抗の低い樹脂で形成で形成された挿通部72が取付けられ、この挿通部72内に前記スライド杆42aが挿通されている。また、主体部71には2枚の軸支板73が起立状態で固定されており、他の軸支板73の間に位置するように解除部材74が軸74aで軸支されている。前記解除部材74には切り込み部74bが形成され、該切り込み部74bに断面円形のロックピン75が嵌め込まれ、該ロックピン75の周面の一部がスライド杆42aに摺接するようになっている。
【0019】
また、解除部材74には前記ロックピン75がスライド杆43aと圧接する方向にバネ付勢するスプリング76が張設されている。そして、前記解除部材74の操作部74cが主体部71に形成された長孔71aより突出し、かつ、図示していないが主体部71を覆う下部背凭れ41の背面側表皮よりも外部に突出している。
【0020】
このように構成したスライド杆ロック装置7は、図示の状態において解除部材74がスプリング76によって反時計方向にバネ付勢されているので、ロックピン75がスライド杆42aに圧接された状態となっているので、ロックピン75とスライド杆42aとの摩擦抵抗によってロック状態となっている。
【0021】
前記ロック状態において、上部背凭れ42の上下動を行うには、下部背凭れ41の裏面側から突出している解除部材74をスプリング76のバネ力に抗して押すと、解除部材74は時計方向に回動され、ロックピン75がスライド杆42aから離れるので、この状態において上部背凭れ42を手で持って所望の高さ位置まで上下動し、所望の高さ位置に達した時に解除部材74から手を離すことで、図2の状態に戻ってスライド杆42aはロックされ固定される。
【0022】
このように、着座する人の身長に合わせて上部背凭れ42を上下動させて固定することで、低身長者でも高身長者でも背中の全体を背凭れ4によって支持することができるので、着座している人を安楽状態にすることができる。
【0023】
次に、前記した座部1(背凭れ4および前垂れ5)を昇降させるための前記台座2内に組み込まれている昇降装置21について説明する。
図3〜図6において、21aは台座2内に収容されている油タンクおよびポンプからなる駆動源21bと接続される油圧シリンダにして、シリンダ側が台座2側に軸支され、ピストン側がリンク機構21cを介して座部1が取付けられる座部基板11に接続されている。リンク機構21cは公知の如く油圧シリンダ21aのピストンが突出すると座部基板11を前方側に移動させながら平行状態で上昇させる公知の構造のものである。
【0024】
そして、図3に示すように油圧シリンダ21aに油が供給されていない(ピストンがシリンダ内に収容されている)状態では図4、図5に示すようにリンク機構21cが座部1を下降位置に停止させ、シリンダ内に油が供給されるとピストンを突出させてリンク機構22cを変移させて図6に示すように座部1を前方に移動させながら平行移動させて上昇させる公知の昇降装置である。
【0025】
次に、背凭れ4を起伏させるための背凭れ起伏装置8を図3〜図6と共に説明する。
81は座部1における前記座部基板11にピストン側が軸支されたガスシリンダにして、シリンダ側は下部背凭れ41の背凭れ基板41aに取付けられた固定板41bに軸支されている。なお、固定板41aは座部基板11に対して回転自在に軸支されている。82は座部基板11に対して回動自在に取付けられた回転軸にして、先端は前記肘掛け3の側面より突出され図1に示す回転摘み83が取付けられている。
【0026】
また、回転軸82にはアーム82aの一端が固定されており、該アーム82aの先端にはリンク84が軸支されている。また、前記座部基板11には回転自在にガスシリンダ81内のガスを膨張させるための突起81aを操作する突起操作板84が軸支され、該突起操作板84の他端と前記アーム82aの先端とは連結リンク85によって連結されている。
【0027】
このように構成した背凭れ起伏装置8の動作は、図3に示す背凭れ4が起立状態において着座者が背凭れ4に寄り掛かり、肘掛け3から突出している回転摘み83を図1において反時計方向に回転すると、回転軸82が同じく反時計方向に回転される。この回転軸82の回転に伴ってアーム82aが反時計方向に回転するので、連結リンク85を介して突起操作板84がガスシリンダ81の突起81aを押すので、背凭れ4は着座者の寄り掛かった重さによってガスシリンダ81のピストンを収縮方向に移動させてガスを圧縮しながら緩やかに伏倒される。
【0028】
この伏倒された状態(図4、図5参照)において回転摘み83から手を離すと、該回転摘み83はガスシリンダ81の突起81aの戻り力によって逆回転して元の回転位置に戻る。そして、ピストンが終端にでシリンダ内に収納された状態において背凭れ4の伏倒は停止するので、この状態において各種の施術を受けることができる。
【0029】
前記各種の施術が終了した後に、着座者が仰臥状態から背部を起立状態に移行して背凭れ4への荷重を解除する。そして、回転摘み83を前記したと同様に回転させると、再び、ガスシリンダ81の突起81aが押されるのでシリンダ内に圧縮されていたガスが膨張してピストンを突出方向に移動させるので、背凭れ4はガス圧によって緩やかに起立状態となって図3の位置に戻される。
【0030】
次に、前垂れ5を起伏させるための前垂れ起伏装置9を図3〜図8と共に説明する。
91は前記した座部基板11の裏面に一端が軸支され、他端は前垂れ5の裏面上方に固定されたU字状の回動リンク、92は前記座部基板11の裏面側から垂下された垂下片、93は一端が前記垂下片92の下部に回転自在に軸支された軸92aに取付けられた第1リンク、94は一端が前記第1リンク93に軸支され他端が前垂れ5の裏面下方に軸支された第2リンク、95は前記垂下片92に軸支された軸92aに取付けられ一面にギア95aが形成された回転板、96は前記回転板95の前記ギア95aと噛合する歯車を有するダンパー、97は前記軸92aが前記肘掛け3の側面下部から突出している部分に固定された回転ハンドルである。
【0031】
なお、前垂れ5の側面には着座している人や施術者が足先で操作する操作棒51が突出して設けられている。また、92bは前記垂下片92に設けられたストッパーにして、前垂れ5を水平方向に回動した時に前記回転板95の側面に当接して、前垂れ5に対して着座者の脚体の重みなどで垂下方向に回動しないようにするためのものである。
【0032】
次に、前記した構成の前垂れ起伏装置9の動作は、図3および図7に示す前垂れ5が垂下状態である時に、回転ハンドル97を反時計方向(図1参照)に回動し、あるいは、前垂れ5の側面から突出している操作棒51を足先等で前垂れ5を持ち上げると、軸92aが反時計方向に回転して第1リンク93を反時計方向に回動する。これにより、第1リンク93に軸支されている第2リンク94が前垂れ5の下端側を押し上げるので、該前垂れ5の上端側が回動リンク91を座部基板11の軸支点を支点として回動される。
【0033】
この回動において、回動リンク91によって前垂れ5の上端側が押し上げられながら回動するので、前垂れ5は上方に向かって押し上げられながら水平方向に回動されることになる。なお、前記回動初期状態にあっては、回転板95のギア95aがダンパー96の歯車96aに噛合されているので、前垂れ5の水平方向の回動は緩やかに行われる。また、前垂れ5が水平状態になるとギア95aとダンパー96の歯車96aの噛合は解除された状態となる。さらに、この水平状態において回転版95がストッパー92bに当接して垂下方向へ力が作用しても前垂れ5は回動するのを防止している。
【0034】
次に、水平状態にある前垂れを垂下方向に戻す動作について説明するに、図4、図6、図7に示す前垂れ5が水平になっている状態から垂下状態とするには、前記した回転ハンドル97を時計方向に回動すると第1リンク93が時計方向に回動され、第2リンク94は第1リンク93側に回動される。この回動途中において回転板95のギア95aがダンパー96の歯車96aと噛合されるので、回転ハンドル97から手を放しても前垂れ5は、該前垂れ5の重量と着座者の脚体の重量とに関係なく緩やかに垂下方向に回動され、前垂れ5が床面に対して略直角状態で停止する。従って、着座者はステップ22を介して椅子から下りることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るリラクゼーション椅子の全体斜視図を示し、(a)は上部背凭れが下部背凭れに接近している状態を示し、(b)は上部背凭れが下部背凭れから離れている状態を示している。
【図2】スライド杆ロック装置の断面図である。
【図3】背凭れと前垂れが起立している状態を示す断面図である。
【図4】背凭れと前垂れが伏倒している状態を示す断面図である。
【図5】同上の要部の断面図である。
【図6】図5において椅子全体が上昇している状態を示す断面図である。
【図7】前垂れ起伏装置の前垂れが垂下している状態の斜視図である。
【図8】同上において前垂れが伏倒した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 座部
2 台座
3 肘掛け
4 背凭れ
41 下部背凭れ
42 上部背凭れ
5 前垂れ
6 枕
7 スライド杆ロック装置
8 背凭れ伏倒装置
9 前垂れ伏倒装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能な座部と、該座部に対して起伏可能に形成されると共に下部背凭れと上部背凭れとからなり、かつ、下部背凭れに対して上下動および所望の高さ位置でロック可能に取付けられた背凭れと、前記座部に対して起伏可能に形成された前垂れとから構成したことを特徴とするリラクゼーション椅子。
【請求項2】
前記背凭れの起伏は、前記座部の両側面に配置された肘掛けの側面より突出して取付けられている回転摘みを回転することでガスシリンダが制御され、該ガスシリンダの伸長、収縮によって行われることを特徴とする請求項1記載のリラクゼーション椅子。
【請求項3】
前記前垂れの起伏は、前記座部の両側面に配置された肘掛けの側面より突出して取付けられた回転ハンドルを回転することでリンク機構を介して行われ、かつ、前垂れの起立時にはダンパーによって緩やかに行われることを特徴とする請求項1記載のリラクゼーション椅子。
【請求項4】
前記前垂れの側面から操作杆が突出して形成されており、該操作杆は前記回転ハンドルによって駆動するリンク機構を駆動することを特徴とする請求項3記載のリラクゼーション椅子。
【請求項5】
前記背凭れにおける上部背凭れに対して枕が回動自在に取付けられていることを特徴とする請求項1記載のリラクゼーション椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−93051(P2008−93051A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275812(P2006−275812)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】