説明

リリーフ弁

【課題】リリーフ弁から発生する振動や騒音を抑制することを目的とする。
【解決手段】流入流路103と流出流路104とシール斜面105とを含むリリーフ弁本体101と、流入部111と流出部112と傾斜部113とを含みリリーフ弁本体内101に摺動自在に挿入された弁体110と、傾斜部113の外周に形成された溝119に嵌入されたOリング120と、Oリング120をシール斜面105に押圧する付勢力を備えたばね130とを含み、流入流路103および流出流路104の少なくとも一方に、流路抵抗部150を設けられたことにより、弁体110のリフト量を増加させることができ、Oリング120の凸部121とシール斜面105とで形成される絞り部123の流速を低下させることで、Oリング120の凸部121を越えて発生する渦に起因するリリーフ弁100の振動や騒音を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力を一定に保持するために使用されるリリーフ弁の振動および騒音の防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のリリーフ弁は、給水回路に定流量弁とともに配置されて、給水系の二次圧力を一定に保持することにより、給水回路と接続される洗浄ノズルへ供給する流体圧力を安定化させる他、ノズル給水回路に接続された温水タンク等が水圧により変形したり破損することを防止するために使用されている。このリリーフ弁は配置構成上、給水回路に設置されている温水タンクの下方に排水栓と一体に構成されており、温水タンクのリリーフ弁の止水性能が不十分で洩れがあると、温水タンク内に貯められた水が流出するという課題があり、シール性を確保するためにリリーフ弁のシール部にOリングを用いた構成が採用されている。(例えば、特許文献1参照)
図9は、従来のリリーフ弁の断面図を示すものである。図9に示すように、温水タンク1の排水口2に嵌入した排水栓ケース3の内部には貫通孔4が設けられており、貫通孔4は中間部分に傾斜部5を有した2段の円筒形状を成している。貫通孔4の内部には弁コマ6がコイルばね7によって付勢されて取り付けられている。
【0003】
弁コマ6の傾斜部5に対向する部分には円錐形状部が形成されており、円錐形状部には周回する溝8が形成されており、溝の中にOリング9が挿入されている。Oリング9の一部は溝から突出しており、溝から突出したOリング9の凸部が傾斜部5にコイルばね7の付勢力により圧接されることによりシール性を確保する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3567656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、Oリングをリリーフ弁のシール部分に用い、シール形態を線シールに近い構成とすることでシール性は確保されるが、Oリングは弁コマの溝より一部飛び出す構成となっている。
【0006】
上記構成のリリーフ弁が減圧動作を行う場合、弁コマが水圧によってコイルばねの付勢力に打ち勝って移動することにより、Oリングと傾斜部とのシールが開放されて高圧の水が排水される。
【0007】
排出される水流に対してOリングの凸部では絞り作用が発生する。Oリングで絞られた水は、Oリングの凸部を越えて流れるため、この凸部を越えた流れが乱れ易く、さらに、Oリングが設置された部分では絞り動作により高速の流れとなるため、騒音の発生し易い構成となっていた。
【0008】
例えば、衛生洗浄装置で使用されるリリーフ弁の動作条件は、通過流量が0.5L/分〜1L/分程度で、リリーフ弁の設定圧力は0.1MPa〜0.13MPa程度に設定され、この時の弁コマの移動量は0.1mm程度であり、Oリングで絞られた部分の流体の通過速度は最大で10m/秒程度に達する。
【0009】
流れが高速となるため、Oリングの凸部を超えた流れは大きな渦を発生し、さらに弁コマが僅かに傾いてもOリングを通過する流れは部分的に絞られた状態となり、流れの不均一が増長されて、不安定状態へと移行し、リリーフ弁の振動、騒音の発生に至る場合があった。
【0010】
Oリングにより絞り部を構成するリリーフ弁において、Oリングの凸部を越える流れで発生する渦による流れの不安定性、さらに弁コマが傾くことによる絞り部の通過面積が不均一となることにより生ずるリリーフ弁の振動・騒音を防止するため、弁コマの移動量を増加させて、絞り部の流速を下げて、流れの安定性を改善すると共に、弁コマの傾きの影響を低減することにより、絞り部の後方の流れを安定化させて、リリーフ弁の振動や騒音の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明のリリーフ弁は、流入流路と流出流路と流入流路と流出流路とを傾斜面で連接するシール斜面とを含むリリーフ弁本体と、略棒状の流入部と略棒状の流出部と流入部と流出部とを傾斜面で連接する傾斜部とを含みリリーフ弁本体内に摺動自在に挿入された弁体と、傾斜部の外周に形成された溝に嵌入されたOリングと、Oリングをシール斜面に押圧する付勢力を備えたばねとを含み、流入流路および流出流路の少なくとも一方に、流路抵抗部を設けたことを特徴としたものである。
【0012】
これにより、弁体のリフト量を増加させることができ、Oリングの凸部とシール斜面とで形成される絞り部の流速を低下させることで、Oリングの凸部を越えて発生する渦に起因するリリーフ弁の振動や騒音を防止することができる。
【0013】
また弁体のリフト量が増加することで、絞り部を通過する流速の不均一から生ずるリリーフ弁の振動や騒音を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリリーフ弁は、止水性能を確保した上で、リリーフ弁から発生する振動や騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1におけるリリーフ弁を使用した衛生洗浄装置の水回路図
【図2】本発明の実施の形態1におけるリリーフ弁を温水タンクに取り付けた状態の外観を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態1におけるリリーフ弁の外観を示す斜視図
【図4】図3におけるAA断面図
【図5】(a)図3におけるBB断面図、(b)は図3におけるCC断面図
【図6】本発明の実施の形態1における弁体の外観を示す斜視図
【図7】本発明の実施の形態1におけるリリーフ弁の作動時の断面図
【図8】(a)本発明の実施の形態1におけるリリーフ弁の流路抵抗が少ない場合の動作説明図、(b)は圧力リリーフ弁の流路抵抗が多い場合の動作説明図
【図9】従来のリリーフ弁を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、流入流路と、流出流路と、前記流入流路と前記流出流路とを傾斜面で連接させたシール斜面と、を含むリリーフ弁本体と、略棒状の流入部と、略棒状の流出部と、前記流入部と前記流出部とを傾斜面で連接させた傾斜部と、を含み、前記リリーフ弁本体内に摺動自在に挿入された弁体と、前記傾斜部の外周に形成された溝に嵌入されたOリ
ングと、前記Oリングを前記傾斜面に押圧する付勢力を備えたばねと、を含み、前記流入流路および前記流出流路の少なくとも一方に、流路抵抗部を設けられたことを特徴とした、 リリーフ弁である。
【0017】
これにより、弁体のリフト量を増加させることができ、Oリングの凸部とシール斜面とで形成される絞り部の流速を低下させることで、Oリングの凸部を越えて発生する渦に起因するリリーフ弁の振動や騒音を防止することができる。
【0018】
また弁体のリフト量が増加することで、絞り部を通過する流速の不均一から生ずるリリーフ弁の振動や騒音を防止することができる。
【0019】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記弁体の前記流入部と前記流出部の少なくとも一方の外周面に、前記流入流路と前記流出流路の内周面に当接する複数の案内リブを備え、前記案内リブの間に形成される抵抗溝と、前記流入流路と前記流出流路の内周面とで流路抵抗部が形成されることを特徴としたものである。
【0020】
これにより、流路抵抗部が流れの整流化効果を発揮し、弁体を通過する流れの乱れにより生ずる振動や騒音を抑制することができる。
【0021】
第3の発明は、特に第1または第3の発明において、前記弁体の、前記流出部と前記傾斜面とを、曲面を介して接合されたものである。
【0022】
これにより、Oリングの凸部を超えて発生した渦がさらに増長されることなく、安定した流れとなり、振動や騒音をさらに抑制することができる。
【0023】
第4の発明は、特に第1〜第3の発明において、前記Oリングの張力を、リリーフ弁の動作圧により生ずる前記Oリングの押圧力よりも大きく設定されたものである。
【0024】
これにより、リリーフ弁の動作圧によりOリングが浮き上がり不安定な動作をすることがなく、騒音や振動の発生を防止することができる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
<1>リリーフ弁を使用した衛生洗浄装置の構成
図1は本実施の形態におけるリリーフ弁を使用した衛生洗浄装置の水回路図を示し、図2はリリーフ弁と電磁止水弁を温水タンク取り付けた状態の斜視図を示し、図3は電磁止水弁とリリーフ弁を一体に構成した状態の斜視図を示すものである。
【0027】
図1に示すように、衛生洗浄装置の流路は、ストレーナ10、止水電磁弁20、リリーフ弁100、温水タンク30、バキュームブレーカ40、切替弁50、洗浄ノズル60等の流路構成部材で構成されている。
【0028】
切替弁50の複数のポートを備えており、それらのポートは洗浄ノズル60のお尻洗浄ノズル部61、ビデノズル部62、ノズル洗浄部63にそれぞれ接続されている。
【0029】
温水タンク30には貯溜した水を加熱するヒータ31が内蔵されており、温水タンク30の天面にはバキュームブレーカ40が設置されており、温水タンク30内が負圧になった場合に外気を導入して温水タンク30内の温水が逆流することを防止するようになって
いる。
【0030】
また、図2に示すように、温水タンク30の入水口(図示せず)には止水電磁弁20にリリーフ弁100を一体に組み合わせた状態で設置されている。
【0031】
図3に示すようにリリーフ弁100は止水電磁弁20の2次側の流路に接続されており、2次側の流路の水圧が所定値以上に高くなった場合、リリーフ弁100が開放されて2次側の水圧を所定値に維持することができるようになっている。
【0032】
2次側の流路の水圧を維持することにより、洗浄ノズルから噴出する洗浄水の噴出力を維持することが可能となり、快適な洗浄間を提供することが可能となる。また、止水電磁弁20の2次側流路に接続される温水タンク30は本体を樹脂材料で形成されており、温水タンク30の変形や損傷を防止するためにリリーフ弁100は有効である。
【0033】
<2>リリーフ弁の構成
図3はリリーフ弁を一体に構成した止水電磁弁の正面図を示し、図4はリリーフ弁の弁体がシール位置にある断面図を示し、図5(a)はリリーフ弁の流入側の断面図を示し、(b)は流出側の断面図を示し、図6は弁体の外観の斜視図を示し、図7は弁体の平面図を示すものである。
【0034】
図3に示すように、止水電磁弁20は電磁弁を駆動する電磁コイル21と、電磁コイル21に電流を供給する端子22と、コイル21を固定する樹脂材料で成型された電磁弁本体23を有し、電磁弁本体23は入水口24および出水口25を備えている。さらに、電磁弁本体23はリリーフ弁100のリリーフ弁本体101とを一体に形成されている。
【0035】
電磁弁本体23の内部には入水口24と出水口25を連通する流路(図示せず)が形成されており、流路の途中には流路を開閉する止水弁(図示せず)が設置されている。止水弁は電磁コイル23の駆動力により開閉される構成となっている。
【0036】
図4に示すように、電磁弁本体23と一体に形成されたリリーフ弁本体101は略円筒形であり、流入口102は電磁弁本体23の流路の止水弁より下流側の2次流路と連通している。
【0037】
リリーフ弁本体101は直径の小さい流入流路103と直径の大きい流出流路104とを傾斜面で形成されたシール斜面105を介して連接されている。
【0038】
リリーフ弁本体101の内部には流入流路103とシール斜面105と流出流路104とに亘る弁体110が摺動自在に挿入され、弁体110の後方に配置されたコイルばね130と、リリーフ弁蓋140により流入口102側に押圧されている。
【0039】
図6に示すように、弁体110は、直径の小さい流入部111と直径の大きい流出部112とを略円錐形状の傾斜部113で連接された略二段形状であり、流入部111と傾斜部113との接合部および流出部112と傾斜部113との接合部は曲面113aを介して接合されている。流出部112の後端部にはコイルばね130を固定するばね受部114が形成されている。
【0040】
流入部111の外周面には複数の案内リブ115が設けられており、隣接する案内リブ115の間は排水が流れる抵抗溝116が形成されている。案内リブ115の外径はリリーフ弁本体101の流入流路103の内径より僅かに小さく、スムーズに摺動可能な構成となっている。
【0041】
また、流入部111の外周面と同様に、流出部112の外周面にも複数の案内リブ117が設けられており、隣接する案内リブ117の間は排水が流れる抵抗溝118が形成されている。案内リブ117の外径はリリーフ弁本体101の流出流路104の内径より僅かに小さく、スムーズに摺動可能な構成となっている。
【0042】
傾斜部113の外周には溝119が全周に亘って形成されており、溝119の中にはOリング120が挿入されている。Oリング120の一部は溝119から突出して凸部121が形成されている。図4に示すように、弁体110をリリーフ弁本体101のシール斜面105に押圧した状態においては、Oリング120の凸部121がシール斜面105に全周に亘り圧接されることにより、凸部121とシール斜面105とでとシール部122が形成されている。
【0043】
図5(a)はリリーフ弁の流入側の断面図を示し、(b)は流出側の断面図を示すものであるが、図5(a)に示すように、リリーフ弁本体101の流入流路103に挿入された弁体110の流入部111の案内リブ115は流入流路103の内周面にほぼ接しており、案内リブ115の間に設けられた抵抗溝116と流入流路103の内周面とで、流路抵抗を発生させる流路抵抗部150を形成している。
【0044】
また、リリーフ弁本体101の流出流路104に挿入された弁体110の流出部112の案内リブ117は流出流路104の内周面にほぼ接しており、案内リブ117の間に設けられた抵抗溝118と流出流路104の内周面とで、流路抵抗を発生させる流路抵抗部151を形成している。
【0045】
さらに弁体110の流入部111の前縁111aは、止水電磁弁20よりリリーフ弁100に流入する流れに対して、邪魔板として機能し、リリーフ弁100に流入する流れを均一化することができる。
【0046】
弁体外周面は案内リブ115により仕切られて、流路抵抗部150を構成する関係から、流路抵抗部150の断面積を小さく設定する場合、案内リブ115の幅を大きくし弁体外周面をほぼ、連続的に繋いだ構成とし、外周面の一部に流路抵抗部150が設置された構成とすることもできる。
【0047】
<3>リリーフ弁の動作、作用
図8はリリーフ弁の作動時の断面図を示し、図9は、リリーフ弁の流路抵抗部の圧力損失が少ない場合の動作圧力説明図、同(b)はリリーフ弁の流路抵抗部の圧力損失が多い場合の動作説明図である。
【0048】
リリーフ弁100は止水電磁弁20がONすると、リリーフ弁100の弁体110の流入部111の前縁111a、傾斜部113、Oリング120の凸部121等の流入側の面に水圧がかかり、規定の圧力に達するとリリーフ弁100の弁体110はシール斜面105より離れて、流体がOリング120の凸部121を越えた流れが生成され、Oリング120の凸部121とシール斜面105の間に絞り部123が形成される。
【0049】
Oリング120の凸部121がシール斜面105に押圧されシール部122が形成されている状態においては、弁体110の受圧面積に対応して水圧によって発生する圧力と、コイルばね130の付勢力とのバランスによって弁体110の移動が開始する。
【0050】
一方、Oリング120の凸部121がシール斜面105より離れて、流体がOリング120の凸部121を越えた流れが生成され、Oリング120の凸部121とシール斜面1
05の間に絞り部123が形成された状態における圧力バランスは、前記受圧面積に対応した水圧による圧力とコイルばね130の付勢力とに加え、絞り部123で発生する圧力損出による流入側と流出側の圧力差を加えたものになる。絞り部123で発生する圧力差は、流入側が高圧となり流出側が低圧となる。
【0051】
Oリング120の凸部121がシール斜面105から離れるリフト量CLは絞り部123で発生する圧力差により決まる。すなわち、圧力差が大きい場合、流入側の圧力の減衰が短時間におこなわれるため、弁体110が僅かに移動した状態、すなわち僅かなリフト量CLで流入側と流出側の圧力がバランスしてしまうため、その間に絞り部123を高速の流体が通過することにより渦が発生し、振動や騒音が発生する原因となる。
【0052】
本実施の形態における構成においては、絞り部123の流入側と流出側に弁体110のリフト量CLに影響されずに独立して流路抵抗を発生する流路抵抗部150、151を設けたことにより、絞り部123で発生する圧力差を少なくすることが可能となり、流入側の圧力減衰の時間が長くなる。圧力減衰の時間の延長により、弁体のリフト量CLが大きくなり、絞り部123を通過する流速を低下することで、振動や騒音を抑制することが可能となる。
【0053】
以下、弁体110の流入側と流出側の流路抵抗が異なる場合の弁体110のリフト量CLの違いについては図9(a)、(b)にて説明する。
【0054】
弁体110に流路抵抗部150、151を設けず、弁体110の流入側の圧力損失ΔPinと流出側の圧力損出ΔPoutが小さいときは、図9(a)に示すように、弁体110の圧力損失は、ほぼ絞り部123の圧力損失で決まる。
【0055】
通常の衛生洗浄便座に使用されているリリーフ弁では、作動流量は0.5L/分から 1L/分程度であり、この時の弁体110のリフト量CLはOリング120の外径が8mmの場合0.1mm程度である。
【0056】
一方、本実施の形態に示すように、弁体110の流入側と流出側に流路抵抗部150、151を設け、弁体110の流入側の圧力損失ΔPinと流出側の圧力損出ΔPoutが大きい時は、図9(b)に示すように、絞り部123の圧力損失に対して、弁体110の流入側と流出側の圧力損失が10%から50%程度の割合となると、弁体110の流入側と流出側の圧力損失の影響が大きくなり、例えば、弁体110の流入側と流出側の圧力損失の割合が20%程度となると弁体110のリフト量CLは0.25mm程度に大きくなる。
【0057】
弁体110のリフト量が0.1mm程度では、絞り部151を通過する流速が10m/sec近くなり、Oリング120の凸部121を越えた流れから大きな渦が発生しやすくなり、振動や騒音の原因となる。また、弁体110の僅かな傾きも、絞り部123における流れの均一性に大きな影響をあたえる。
【0058】
一方、弁体110の流入側と流出側との圧力損失の割合が20%程度の流路抵抗を設けることで、弁体110のリフト量を0.25mmまで増やすことができ、流速は4m/sec程度にまで低下させることができ、流体の速度に依存性の高い渦の発生による騒音や振動を抑えることが出来る。また、リフト量が増えることにより、弁体110の傾きによる絞り部123の流れの不均一性を抑えることができる。
【0059】
また、Oリング120の凸部121を越えた流れは渦を発生し易く、Oリング120の凸部121の流出側にさらに突起などエッジとなる部分があると渦をさらに増長させ、振
動や騒音の原因となる。そのため、弁体110のOリング120の流出側にあたる傾斜部113と流出部112とを曲面を介して接続したことで、流体的に滑らかな構成とし、渦の発生を抑制し、振動や騒音の発生を防止することができる。
【0060】
また、Oリング120については、Oリング120がコイルばね130によりシール斜面105に押し付けられている時は、Oリング120は弁体110に設けた溝119に押圧されており安定しているが、弁体110が流体圧によりシール斜面105から離れたときは、Oリング120自身の張力で溝に張り付き、この張力が絞り部130で発生する差圧によりOリング120に作用する力よりも大きくなる必要がある。
【0061】
そのため、Oリング120のゴム硬度の選定、およびOリング120の内径とOリング120と嵌合する溝119の底面の直径を適切に設定する必要があり、本実施の形態においては、Oリング120の伸長率を20%程度に設定している。
【0062】
なお、本実施の形態においては、流路抵抗部150、151を流入流路103と流出流路104の両方に形成されるように、流入部111と流出部112の両方に抵抗溝116、118を設けたが、これに限るものではなく、流入流路と流出流路のいずれか一方に流路抵抗部が形成される構成でもよい。
【0063】
また、本実施の形態においては、抵抗溝は弁体に設けたが、これに限るものではなく、リリーフ弁本体の流入流路103と流出流路104に設けても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明にかかるリリーフ弁は、弁体設けたOリングの設置部分で発生する振動や騒音を抑制することが可能となるので、リリーフ弁以外のあらゆる流体用の弁の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
100 リリーフ弁
101 リリーフ弁本体
103 流入流路
104 流出流路
105 シール斜面(傾斜面)
110 弁体
111 流入部
112 流出部
113 傾斜部
113a 曲面
115、117 案内リブ
116、118 抵抗溝
119 溝
120 Oリング
130 コイルばね(ばね)
150、151 流路抵抗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入流路と、流出流路と、前記流入流路と前記流出流路とを傾斜面で連接させたシール斜面と、を含むリリーフ弁本体と、
略棒状の流入部と、略棒状の流出部と、前記流入部と前記流出部とを傾斜面で連接させた傾斜部と、を含み、前記リリーフ弁本体内に摺動自在に挿入された弁体と、
前記傾斜部の外周に形成された溝に嵌入されたOリングと、
前記Oリングを前記傾斜面に押圧する付勢力を備えたばねと、を含み、
前記流入流路および前記流出流路の少なくとも一方に、流路抵抗部を設けられたことを特徴とした、
リリーフ弁。
【請求項2】
前記弁体の前記流入部と前記流出部の少なくとも一方の外周面に、前記流入流路と前記流出流路の内周面に当接する複数の案内リブを備え、
前記案内リブの間に形成される抵抗溝と、前記流入流路と前記流出流路の内周面とで流路抵抗部が形成されることを特徴とした、
請求項1に記載のリリーフ弁。
【請求項3】
前記弁体の、前記流出部と前記傾斜面とを、曲面を介して接合されたことを特徴とした、
請求項1または2に記載のリリーフ弁。
【請求項4】
前記Oリングの張力を、リリーフ弁の動作圧により生ずる前記Oリングの押圧力よりも大きく設定されたことを特徴とした、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリリーフ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−21551(P2012−21551A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158402(P2010−158402)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】