説明

リリーフ弁

【課題】本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、簡易な構成にして弁をスムーズに開閉することができるリリーフ弁の提供を目的とする。
【解決手段】内部に流体が通過する通過孔110が形成された弁本体100と、弁本体100の通過孔110を開閉するステム200と、ステム200を流出側に付勢するバネ部材800と、ステム200が貫通する態様で設けられ、該ステム200を流入側に付勢するためのダイヤフラム400とを備える。ステム200の内部に長さ方向に沿って貫通孔240が穿設されるとともに、ダイヤフラム400の後方に流体が滞留する空間部130が設けられる。弁本体100の通過孔110を通過する流体の一部がステム200の貫通孔240を通過してから空間部130に流出し、その流体の圧力がダイヤフラム400に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が一定の圧力以上になった場合に流体を流すリリーフ弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器、流体混合ライン、レーザー機器、燃料電池、ガス発生装置、高圧洗浄装置、油圧空圧ライン、容器等圧力保護システムなどの各種機器において、流体が一定の圧力以上になった場合に流体を流すリリーフ弁は既に知られている。
【0003】
このリリーフ弁の構造は種々のものが存在しているが、例えば特許文献1には、リリーフ弁の弁体50において、弁座42と当接する部位よりも上流側を円錐形にしたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、リリーフ弁20において、ボール受けホルダ40が、ボール受け24の小径部24aの端面に当接する基板41と、基板41の外縁部に接着される防振シール42とを有し、防振シール42が、基板41に一端を接着されてボール受け24の小径部24aの外周に抱着される抱着部43と、抱着部43の基板41に接着されている一端側から半径方向に沿う外方、かつ軸方向に沿うボール23側に延在してバルブ孔21aの内面に摺接するリップ部44とを有して構成されるゴムからなり、防振シール42のゴム硬度をHs75〜Hs65の範囲内に定めてなるものが開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、リリーフ弁20において、ボール受けホルダ40の防振シール42が、ボール受け24の小径部24aの外周に抱着される抱着部43と、抱着部43から半径方向に沿う外方、かつ軸方向に沿う反ボール23側に延在してバルブ孔21aの内面に摺接するリップ部44とを有して構成されるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−236269
【特許文献2】特開2009−236242
【特許文献3】特開2009−236241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のリリーフ弁はいずれも簡易な構成にして弁をスムーズに開閉することが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、簡易な構成にして弁をスムーズに開閉することができるリリーフ弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、内部に流体が通過する通過孔が形成された弁本体と、該弁本体の通過孔を開閉するステムと、該ステムを流出側に付勢するバネ部材と、前記ステムが貫通する態様で設けられ、該ステムを流入側に付勢するためのダイヤフラムとを備え、前記ステムの内部に長さ方向に沿って貫通孔が穿設されるとともに、前記ダイヤフラムの後方に流体が滞留する空間部が設けられ、前記弁本体の通過孔を通過する流体の一部が前記ステムの貫通孔を通過してから空間部に流出し、該空間部に滞留した流体の圧力がダイヤフラムに作用するものとなされていることを特徴とする。
【0010】
これによれば、流体の一部がステムの貫通孔を通過してから空間部に流出して、流体の圧力がダイヤフラムに作用するようになっている。このため、流体が一定の圧力未満の場合、ステムはバネ部材の付勢力により流入側に付勢され通過孔を閉蓋するが、流体が一定の圧力以上になった場合、増加した流体の圧力がダイヤフラムに後方から作用し、それに伴ってバネ部材の付勢力に抗してダイヤフラムがステムを流入側に移動せしめることにより通過孔を開蓋する。このように流体の圧力をダイヤフラムに作用させるのに別の圧力管を別途設ける必要はなく、ステムの貫通孔を通じて流体を流すのみでよいため、簡易な構成にして弁をスムーズに開閉することができる。
【0011】
また、前記ステムの貫通孔の後端部において、抜出孔が長さ方向に穿設された圧力調整部材が設けられているのが好ましい。これによれば圧力調整部材によりステムの貫通孔を通過する流体の流量が調整されるため、弁の開閉のときに生じるいわゆるチャタリングを防止することができる。
【0012】
また、前記圧力調整部材は、前記ガイド部材の貫通孔の後端部において脱着可能な状態で設けられているのが好ましい。これによれば圧力調整部材をリリーフ弁に簡単に脱着することができるため、製品納入前の試験段階において当該リリーフ弁に適した圧力調整部材を試行錯誤的に選定し易くなる。
【0013】
また、前記圧力調整部材は、前記ガイド部材の貫通孔の内径よりも径大に形成された弾性部材からなるのが好ましい。圧力調整部材をステムの流出側端部に押し込むと、その弾性部材の弾性作用によりステムの貫通孔に密着するため、圧力調整部材をリリーフ弁により一層簡単に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体の圧力をダイヤフラムに作用させるのに別の圧力管を別途設ける必要はなく、ステムの貫通孔を通じて流体を流すのみでよいため、簡易な構成にして弁をスムーズに開閉することができ、ひいては流体を安定良く制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本リリーフ弁の閉蓋状態の縦断面図である。
【図2】本リリーフ弁の開蓋状態の縦断面図である。
【図3】圧力調整部材付近の拡大図である。
【図4】本リリーフ弁の分解斜視図である。
【図5】圧力調整部材を設けいないリリーフ弁の流量、流入側圧力および流出側圧力の状態の遷移図である。
【図6】圧力調整部材を設けているリリーフ弁の流量、流入側圧力および流出側圧力の状態の遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の一実施形態に係るリリーフ弁(以下、本リリーフ弁という)ついて図面を参照しつつ説明する。
【0017】
本リリーフ弁は、金属製の円錐台状の弁本体100を備えている。この弁本体100は、前方内部に略L字状の通過孔110が形成されるとともに、後方内部にダイヤフラム400などが収容される収容部120が形成されている。
【0018】
この通過孔110は、弁本体100の流入側端部に流入口111が形成されるとともに、弁本体100の側面部に流出口112が形成されている。このため流体は、流入口111から流入すると、通過孔110をL字状に通過したあと、流出口112から流出するようになっている。また、通過孔110がL字状に屈曲する部分にはやや径小の通過口113が形成され、当該通過口113がステム200により開閉するようになっている。
【0019】
前記弁本体100の内部には、流入の軸線方向(図1の左右方向)に沿ってステム200が設けられている。このステム200は、全体形状が筑紫状に形成されており、通過口113を開閉する頭部210と、該頭部210から後方に延びる胴体部220とから構成される。なお、頭部210の後方部分にはO型リング230が設けられており、頭部210が通過口113を閉蓋したときに頭部210と通過口113の密着状態をより確実なものとしている。
【0020】
ステム200の胴体部220は、頭部210に連結される径小の第1胴体部221と、該第1胴体部221に連結される径大の第2胴体部222と、該第2胴体部222に連結される径小の第3胴体部223とから構成される。第1胴体部221は通過孔110の屈曲部部分に位置し、第2胴体部222は主に弁本体100に摺動可能に挿着され、第3胴体部223は弁本体100の収容部120に位置している。
【0021】
ステム200の内部には、長さ方向に沿って貫通孔240が形成されている。このため通過孔110を通過する流体の一部は、ステム200の頭部200から流入したあと、貫通孔240を直線的に通過して、ステム200の後端部から流出する。
【0022】
また、前記ステム200の第3胴体部223には、流入側から順にピストン300、ダイヤフラム400、リティナプレート500、ナット600が同軸状に設けられている。
【0023】
前記ピストン300は、浅底円筒状に形成されており、その開口部を前方側に向ける態様で設けられている。このピストン300は、ステム200の第2胴体部222と第3胴体部223の段差部分に係止されるとともに、バネ部材800とダイヤフラム400の間に接した状態で配置されており、ダイヤフラム400の動作をバネ部材800の付勢力に抗してステム200に伝達するようになっている。
【0024】
前記ダイヤフラム400は、円形状の弾性部材からなり、周縁部を弁本体100部の内周部に固着されるとともに、その大部分をピストン300に密着している。また、弁本体100の内周面とピストン300の側面の間において折り返すように屈曲している。このようなダイヤフラム400の構造により、後述するようにダイヤフラム400は流体の圧力を全体で受けて、流体の圧力が一定以上になった場合に前方側に変形して、それをほぼ全体でピストン300に伝達するようになっている。
【0025】
前記リティナプレート500は、皿状に形成されており、その開口部を前方側に向けたる態様で設けられている。このリティナプレート500は、ピストン300を沿う態様でダイヤフラム400を挟み込んでおり、ダイヤフラム400の中央部付近の形状を不必要に変形させることなく、流体の圧力を適正に受けてピストン300に伝達できるようになっている。
【0026】
前記ナット600は、ステム200の第3胴体部223の後端部に螺着され、これによりピストン300、ダイヤフラム400、リティナプレート500がステム200に一体的に構成されている。
【0027】
また、前記リティナプレート500及びナット600の後方位置には、浅底略円筒状のボンネット700が設けられている。このボンネット700は、周縁部が弁本体100に固着されており、これにより弁本体100の収容部120を閉蓋する態様でダイヤフラム400との間に空間部130を形成している。これによりステム200の貫通孔240から流出した一部の流体は当該空間部130内に滞留することになり、該空間部130に滞留した流体がダイヤフラム400に対して圧力を加えるようになっている。
【0028】
なお、140は、環状のパッキンであり、空間部130の密閉状態を確実なものとして、空間部130内の流体が弁外に流出することを防止している。
【0029】
また、前記ステム200の第2胴体部222の後方側周囲にはバネ部材800が設けられている。このバネ部材800は、前方側端部を弁本体100の収容部120の壁面に接地し、後方側端部をピストン300の底壁に接地しており、ピストン300を後方側に付勢することにより、ピストン300と一体に構成されているステム200を後方側に付勢している。このとき、図1に示すように、ステム200の頭部210は通過口113を閉蓋している。
【0030】
なお、150は、合成樹脂製のO型リングであり、ステム200と弁本体100との間の密閉状態を維持している。また、160は、パッキンであり、ステム200とピストン300との間の密閉状態を維持している。
【0031】
而して、流体が一定の圧力未満の場合、ステム200はバネ部材800の付勢力により後方側に付勢され、それに伴ってステム200の頭部210が通過口113を閉蓋している。このとき弁本体100の通過孔110に流入した流体の一部は、ステム200の頭部200から流入したあと、貫通孔240を直線的に通過して、ステム200の後端部から流出して空間部130に滞留するが、流体の圧力が低いためにダイヤフラム400を作動させるに至っていない。
【0032】
そして、流体の流量が増加して一定の圧力以上になった場合、空間部130内の流体の圧力が増加して一定圧力以上になると、当該圧力によってダイヤフラム400をバネ部材800の付勢力に抗して前方側に移動せしめ、それに伴ってダイヤフラム400と一体のステム200も前方側に移動する。
【0033】
すると、ステム200の頭部210が通過口113を開蓋して、通過孔110の流入口111から流入した流体は通過口113を通過して、L字状に屈曲しながら通過孔110の流出口112から流出していく。
【0034】
このようにこのように流体の圧力をダイヤフラム400に作用させるのに別の圧力管を別途設ける必要はなく、ステム200の貫通孔240を通じて流体を流すのみでよいため、簡易な構成にして弁をスムーズに開閉することができる。
【0035】
ただし、特に流体が微小流のである場合、図5に示すように、ステム200が閉蓋状態から開蓋状に移動するときにいわゆるチャタリングと呼ばれる微小振動が生じるという問題があった。
【0036】
図5を具体的に説明すると、横軸に時間、縦軸に流量又は圧力が設定されている。(A)は流体の流量、(B)は流体の流入側の圧力、(C)は流体の流出側の圧力である。そして、時間が経過するにつれて流量が増えて圧力が大きくなると、ステム200が閉蓋状態から開蓋状態に動くことにより弁内を流体が流れ、それに伴って流入側圧力が次第に減少するとともに、流出側圧力が急激に減少する。このときステム200にチャタリングが生じるため、流体の流量、流入側圧力および流出側圧力のいずれにも振動の影響が生じ、流量を安定良く制御することが難しかった。
【0037】
そこで、本発明では、前記ステム200の貫通孔240の後方端部において圧力調整部材900が脱着可能な状態で設けられている。この圧力調整部材900は、円柱状の弾性部材からなり、軸線方向に沿って流体を抜き出すための抜出孔910が穿設されている。
【0038】
このため 圧力調整部材900によりステム200の貫通孔240を通過する流体の流量が調整されるため、弁の開閉のときに生じるいわゆるチャタリングを防止することができる。
【0039】
実際、本リリーフ弁について、図6に示すように実験を試みた。図6を具体的に説明すると、横軸に時間、縦軸に流量又は圧力が設定されている。(A)は流体の流量、(B)は流体の流入側の圧力、(C)は流体の流出側の圧力である。そして、時間が経過するにつれて流量が増えて圧力が大きくなると、ステム200が閉蓋状態から開蓋状態に動くことにより弁内を流体が流れ、それに伴って流入側圧力が次第に減少するとともに、流出側圧力が急激に減少する。このとき図5に示すような従来のリリーフ弁とは違って、流体の流量、流入側圧力および流出側圧力のいずれにも振動が生じておらず、ステム200にチャタリングを防止できており、流量を安定良く制御することが可能となる。
【0040】
ところで、この圧力調整部材900はどのようなものであってもいいものではなく、リリーフ弁のサイズや設定流圧などによって適宜変更する必要がある。そして、リリーフ弁は使用される機器や納入先の要望する仕様によって、納入前の試験段階において種々変更しなければならない。本実施形態では、圧力調整部材900をステム200に完全に固定するのではなく、上述のようにステム200に脱着可能な状態で設けられているため、製品納入前の試験段階において試行錯誤的に適正な圧力を選定し易くなっている。
【0041】
具体的には、この圧力調整部材900は、ステム200の貫通孔240の内径よりもやや経大の円柱状の弾性部材(例えば合成樹脂)からなる。このため圧力調整部材900をステム200の挿通孔に押し込むように嵌合すれば、弾性部材の弾性力によりステム200の貫通孔240の内面に密着するように固定される。
【0042】
また、圧力調整部材900の選定に際しては、所望のリリーフ弁に応じて抜出孔910の径や長さなどが種々変更されたものが試行錯誤的に使用される。
【0043】
なお、本逆止弁は一実施形態にすぎないものであり、各部の形状、大きさ、あるいは材質は種々に設計変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
100…弁本体
110…通過孔
111…流入口
112…流出口
113…通過口
120…収容部
130…空間部
140…パッキン
150…O型リング
160…パッキン
200…ステム
210…頭部
220…胴体部
221…第1胴体部
222…第2胴体部
223…第3胴体部
230…O型リング
240…貫通孔
300…ピストン
400…ダイヤフラム
500…リティナプレート
600…ナット
700…ボンネット
800…バネ部材
900…圧力調整部材
910…抜出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が通過する通過孔が形成された弁本体と、
該弁本体の通過孔を開閉するステムと、
該ステムを流出側に付勢するバネ部材と、
前記ステムが貫通する態様で設けられ、該ステムを流入側に付勢するためのダイヤフラムとを備え、
前記ステムの内部に長さ方向に沿って貫通孔が穿設されるとともに、前記ダイヤフラムの後方に流体が滞留する空間部が設けられ、前記弁本体の通過孔を通過する流体の一部が前記ステムの貫通孔を通過してから空間部に流出し、該空間部に滞留した流体の圧力がダイヤフラムに作用するものとなされていることを特徴とするリリーフ弁。
【請求項2】
前記ステムの貫通孔の後端部において、抜出孔が長さ方向に穿設された圧力調整部材が設けられている請求項1に記載のリリーフ弁。
【請求項3】
前記圧力調整部材は、前記ガイド部材の貫通孔の後端部において脱着可能な状態で設けられている請求項2に記載のリリーフ弁。
【請求項4】
前記圧力調整部材は、前記ガイド部材の貫通孔の内径よりも径大に形成された弾性部材からなる請求項3に記載のリリーフ弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−7640(P2012−7640A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142172(P2010−142172)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(504229778)株式会社IBS (3)
【Fターム(参考)】