説明

リンク機構、及びこれを備えている軸流流体機械の可変静翼駆動装置

【課題】リンク機構の組立及び分解作業の容易化を図る。
【解決手段】一端部が可変静翼に固定され、翼軸線Awと平行な方向に凹んだピン押込みネジ穴44が他端部43に形成されている翼回転軸41と、翼軸線と平行な方向に貫通し翼回転軸が挿通可能な軸挿通孔46が形成されている第一リンク片45と、翼回転軸に対して翼軸線回りに相対回転不能に第一リンク片を拘束する回り止めピン61と、回り止めピンが固定されているピン支持部材55と、ピン押込みネジ穴に螺合可能なピン押込みボルト66と、を備える。翼回転軸の他端部と第一リンク片とに跨って、翼軸線と平行な方向に凹み、回り止めピン61が嵌挿可能なピン穴47が形成され、ピン支持部材55には、回り止めピン61の延びている方向に貫通したピン引抜ネジ孔56が形成され、ピン引抜ネジ孔56のネジ山径は、ピン押込みボルト66の雄ネジ部のネジ山径よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材の動きに連動して、第二部材を軸線回りに回転させるリンク機構、及びこれを備えている軸流流体機械の可変静翼駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンやターボ冷凍機では、気体を圧縮するために軸流流体機械の一種である軸流圧縮機が用いられている。この種の軸流流体機械では、ロータの周りに環状に複数配置された可変静翼と、この可変静翼の向きを変える可変静翼駆動装置と、を備えているものがある。
【0003】
可変静翼駆動装置は、例えば、以下の特許文献1に記載されているように、ケーシングの外周側に配置された環状の可動環と、可動環を回転可能に支持する環支持機構と、可動環を回転させるアクチュエータと、可動環の回転で可変静翼の向きが変わるよう可動環と可変静翼とを連結するリンク機構と、を備えている。
【0004】
リンク機構は、可変静翼に固定され可変静翼の軸線を中心として円筒状を成す回転軸と、回転軸の端部が挿通される軸挿通孔が形成されているリンク部材と、回転軸に対してリンク部材を相対回転不能に拘束する回り止めピンと、を備えている。回り止めピンが嵌挿可能なピン穴は、回転軸の端部とこの端部が挿通されたリンク部材に跨って、回転軸の軸線と垂直な方向に凹んでいる。回り止めピンとピン穴とは、締まりばめの関係になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−196550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、回り止めピンの挿抜方向が回転軸の軸線に対して垂直な方向であるため、この方向に比較的大きな作業スペースが必要であるにも関わらず、この方向には他の可変静翼のリンク機構が隣接しているため、十分な作業スペースを確保できない。
【0007】
さらに、上記特許文献1に記載の技術では、回り止めピンとピン穴とが締まりばめの関係になっているため、回り止めピンをピン穴に嵌挿して、回転軸に対してリンク部材を相対回転不能にする際には、回り止めピンをピン穴に大きな力で圧入する必要があり、また、修理や点検等で、回転軸からリンク部材を外す際には、大きな力で回り止めピンをピン穴から引抜く必要がる。このため、前述の作業スペースに関係なく、回り止めピンのピン穴に対する挿抜作業が困難である。
【0008】
すなわち、上記特許文献1に記載の技術では、リンク機構の組立及び分解のための作業が困難であるという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記特許文献1に記載の技術の問題点に着目し、組立及び分解のための作業が容易になり、これらの作業時間の短縮化を図ることができるリンク機構、及びこれを備えている軸流流体機械の可変静翼駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するための発明に係るリンク機構は、
第一部材の動きに連動して、第二部材を該第二部材の軸線回りに回転させるリンク機構において、前記軸線を中心として円柱状を成し、一端部が前記第二部材に固定され、該軸線と平行な方向に他端部から該一端部に向って凹んだピン押込みネジ穴が形成されている回転軸と、前記軸線と平行な方向に貫通し、前記回転軸の前記他端部が挿通可能な軸挿通孔が形成されているリンク部材と、前記回転軸の前記他端部に対して、前記軸線回りに相対回転不能に前記リンク部材を拘束する回り止めピンと、前記回り止めピンが固定されているピン支持部材と、前記回転軸の前記ピン押込みネジ穴に螺合可能な雄ネジ部を有するピン押込みボルトと、を備え、
前記回転軸の前記他端部と該他端部が挿通された前記リンク部材とには、該他端部と該リンク部材とに跨って、前記軸線と平行な方向に前記一端部に向かって凹み、前記回り止めピンが嵌挿可能なピン穴が形成され、前記ピン支持部材には、該ピン支持部材に固定されている前記回り止めピンの延びている方向に貫通し、該回り止めピンが前記ピン穴に嵌挿されているときに前記回転軸の前記ピン押込みネジ穴と同軸となるピン引抜ネジ孔が形成され、前記ピン引抜ネジ孔のネジ山径は、前記ピン押込みボルトの雄ネジ部のネジ山径よりも大きく且つ該ピン押込みボルトのボルト頭部の外径よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
当該リンク機構では、回転軸にリンク部材を取り付ける際には、まず、回転軸の他端部にリンク部材を装着する。具体的には、リンク部材の軸挿通孔に回転軸の他端部を挿通させる。次に、回り止めピンが固定されているピン支持部材のピン引抜ネジ孔に、ピン押込みボルトの雄ネジ部を挿通させた後、このピン押込みボルトの雄ネジ部を回転軸のピン押込みネジ穴に捩じ込んでゆく。この結果、ピン支持部材は、軸線方向において、ピン押込みボルトのボルト頭部に押されて、回転軸及びリンク部材に次第に近づくと共に、このピン支持部に固定されている回り止めピンが次第にピン穴に嵌挿されていく。
【0012】
一方、当該リンク機構では、回転軸からリンク部材を取り外す際には、ピン引抜ボルトの雄ネジ部をピン支持部材のピン引抜ネジ孔に捻じ込む。ピン引抜ネジ孔のネジ山径は、ピン押込みボルトの雄ネジ部のネジ山径よりも大きい関係上、このピン引抜ボルトのネジ谷径は、第一リンク片のピン押込みネジ穴の谷径よりも大きくなるため、ピン引抜ボルトは、第一リンク片のピン押込みネジ穴に入り込めない。
【0013】
このピン引抜ボルトをピン支持部材のピン引抜ネジ孔に捻じ込んでゆくと、このピン引抜ボルトの先端が第一リンク片の表面に接触する。その後、さらに、ピン引抜ボルトをピン支持部材のピン引抜ネジ孔に捻じ込む。前述したように、ピン引抜ボルトは、第一リンク片のピン押込みネジ穴に入り込めない。このため、ピン引抜ボルトは、その先端が第一リンク片の表面に接触した状態を維持しつつ、ピン支持部材からの突出量が増加する。この結果、このピン引抜ボルトに螺合しているピン支持部材、さらに、このピン支持部材に固定されている回り止めピンは、軸線方向で第二部材から遠ざかる側に移動し、回り止めピンがピン穴から引抜かれる。そして、回転軸からリンク部材を外す。
【0014】
以上のように、当該リンク機構では、回り止めピンの挿抜方向が軸線方向、つまり回転軸が延びている方向であり、回転軸に対するリンク部材の取付及び取外し方向であるため、このリンク部材の取付及び取外しのために作業スペースが確保されているスペースで、回り止めピンの挿抜作業を行うことができる。このため、当該リンク機構では、リンク機構中の回り止めピンの挿抜作業の際、隣接している他のリンク機構がじゃまにならない。よって、当該リンク機構によれば、回り止めピンの挿抜作業に十分な作業スペースを確保することができる。
【0015】
また、当該リンク機構では、ピン押込みボルトの捻じ込みにより、回り止めピンをピン穴に嵌挿させることができる。さらに、当該リンク機構では、ピン引抜ボルトをピン支持部材に捻じ込むことで、ジャッキ等を用いずに、回り止めピンをピン穴から引き抜くことができる。このため、当該リンク機構では、回り止めピンのピン穴に対する挿抜作業を容易に行うことができる。
【0016】
よって、当該リンク機構によれば、組立・分解作業を容易に且つ短時間で行うことができる。
【0017】
また、当該リンク機構では、軸線と平行な方向、つまり回転軸が延びている方向にピン穴を形成しているため、リンク部材の厚さを厚くし、ピン穴の深さを深くすれば、回り止めピンの回転軸及びリンク部材に対する接触面積を容易に広げることができる。このため、当該リンク機構では、リンク部材に大きな回転トルクがかかっても、回り止めピンの破損を防ぐことができる。
【0018】
ここで、前記リンク機構において、複数の前記回り止めピンを備え、複数の前記回り止めピンは、前記ピン引抜ネジ孔の軸を中心とする円周上に、周方向に等間隔で前記ピン支持部材に固定されていることが好ましい。
【0019】
当該リンク機構では、各回り止めピンを互いに均等にピン穴に嵌挿さることができる。
【0020】
また、前記リンク機構において、前記ピン押込みネジ穴の軸は、前記回転軸の前記軸線上であることが好ましい。
【0021】
当該リンク機構では、ピン押込みボルトにより第二部材側に押されるリンク部材を、回転軸を中心として均等に押すことができる。
【0022】
また、前記リンク機構において、前記ピン支持部材には、前記ピン引抜ネジ孔の貫通方向に貫通したピン取付孔が形成され、前記回り止めピンは、一端部側に形成されている雄ネジ部と、他端部に形成され、前記ピン穴に嵌挿される嵌挿部と、該雄ネジ部と該嵌挿部との境目に形成され、当該回り止めピンの軸に対して垂直な方向に張出した鍔部と、を有してもよい。
【0023】
当該、リンク機構では、ピン支持部材に対して、回り止めピンを容易に固定することができると共に、固定した回り止めピンを容易に取り外すことができる。
【0024】
ここで、上記問題点を解決するための発明に係る軸流流体機械の可変静翼駆動装置は、
複数の動翼を有するロータと、該ロータを回転可能に覆うケーシングと、該ケーシング内に該ロータを中心として環状に複数配置された可変静翼と、を備えている軸流流体機械の可変静翼駆動装置において、前記ケーシングの外周側に配置された環状の可動環と、前記可動環の周方向に間隔をあけて複数配置され、該可動環を前記ロータ回りに回転可能に支持する環支持機構と、前記可動環を前記ロータ回りに回転させる回転駆動機構と、上記リンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、前記第一部材としての前記可動環の回転で、前記第二部材としての前記可変静翼の向きが変わるよう、該可動環と該可変静翼とを連結している、ことを特徴とする。
【0025】
当該可変静翼駆動機構も、上記リンク機構を備えているので、回り止めピンの挿抜作業に十分な作業スペースを確保することができる上に、回り止めピンのピン穴に対する挿抜作業を容易に行うことができる。よって、当該可変静翼駆動機構でも、リンク機構の組立・分解作業を容易に且つ短時間で行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、回り止めピンの挿抜作業に十分な作業スペースを確保することができる上に、回り止めピンのピン穴に対する挿抜作業を容易に行うことができる。
【0027】
よって、本発明によれば、組立・分解作業を容易に且つ短時間で行うことができる。
【0028】
また、本発明では、軸線と平行な方向、つまり回転軸が延びている方向にピン穴を形成しているため、リンク部材の厚さを厚くし、ピン穴の深さを深くすれば、回り止めピンの回転軸及びリンク部材に対する接触面積を容易に広げることができる。このため、本発明によれば、リンク部材に大きな回転トルクがかかっても、回り止めピンの破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る一実施形態における軸流圧縮機の要部切欠側面図である。
【図2】本発明に係る一実施形態における可変静翼駆動装置の要部断面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における可変静翼駆動装置の斜視図である。
【図4】図2におけるIV矢視図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における翼回転軸への第一リンク片の取付作業過程での回り止めピンの嵌挿前の状態を示し、同図(a)は同状態のリンク機構の平面図、同図(b)は同状態のリンク機構の断面図である。
【図6】本発明に係る一実施形態における翼回転軸への第一リンク片の取付作業過程での回り止めピンの嵌挿中の状態を示し、同図(a)は同状態のリンク機構の平面図、同図(b)は同状態のリンク機構の断面図である。
【図7】本発明に係る一実施形態における翼回転軸への第一リンク片の取付作業完了時の状態を示し、同図(a)は同状態のリンク機構の平面図、同図(b)は同状態のリンク機構の断面図である。
【図8】本発明に係る一実施形態における翼回転軸への第一リンク片の取外作業過程での回り止めピンの引抜中の状態(その1)を示し、同図(a)は同状態のリンク機構の平面図、同図(b)は同状態のリンク機構の断面図である。
【図9】本発明に係る一実施形態における翼回転軸への第一リンク片の取外作業過程での回り止めピンの引抜中の状態(その2)を示し、同図(a)は同状態のリンク機構の平面図、同図(b)は同状態のリンク機構の断面図である。
【図10】本発明に係る一実施形態における回り止めピン及びピン固定ナットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る軸流流体機械の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
本実施形態の軸流流体機械は、図1に示すように、軸流圧縮機Cであり、複数の動翼12を有しているロータ10と、このロータ10を回転可能に覆うケーシング20と、ロータ10の周りに環状に複数配置されている静翼16,18と、を備えている。
【0032】
ロータ10は、複数のロータディスクが積層されて構成されているロータ本体11と、複数のロータディスク毎にそのロータディスクから放射方向に延びる複数の動翼12と、を有している。すなわち、このロータ10は、多数段動翼構成である。このロータ10は、ロータ本体11の軸線(以下、ロータ軸線Arとする)を中心としてケーシング20により回転可能に支持されている。
【0033】
ケーシング20のロータ軸線Ar方向の一方の側には、外気を吸い込む吸込口21が形成され、他方の側には圧縮気体を吐き出す吐出口(図示されていない)が形成されている。
【0034】
複数の動翼12のうち、最も吸込口21側のロータディスクに固定されている複数の動翼12が第一動翼段12aを成し、このロータディスクの吐出口側に隣接しているロータディスクに固定されている複数の動翼12が第二動翼段12bを成し、以下、吐出口側に設けられている各ロータディスクに固定されている複数の動翼12が第三動翼段12c、第四動翼段12d、…を成している。
【0035】
各動翼段12a,12b,…の吸込口21側には、それぞれ、ロータ本体11の周りに環状に複数の静翼16,18が配置されている。ここで、第一動翼段12aの吸込口21側に配置されている複数の静翼16が第一静翼段16aを成し、第二動翼段12bの吸込口21側に配置されている複数の静翼16が第二静翼段16bを成し、以下、吐出口22側に設けられている各動翼段12c,12d,…の吸込口21側に配置されている複数の静翼16が第三静翼段16c、第四静翼段16d、…を成している。
【0036】
本実施形態では、各静翼段のうち、第一静翼段16aから第四静翼段16dを構成する各静翼16が可変静翼を成し、第五段目以降を構成する各静翼18が固定静翼を成している。
【0037】
各可変静翼16は、ロータ本体11を基準とした径方向に自身の翼軸線が延び、且つこの翼軸線回りに回転可能にケーシング20に取り付けられている。
【0038】
本実施形態の軸流圧縮機Cは、さらに、可変静翼段16a〜16d毎の可変静翼16の向きを変えるために、可変静翼段16a〜16d毎の可変静翼駆動装置30を備えている。
【0039】
各可変静翼駆動装置30は、図2及び図3に示すように、いずれも、ケーシング20の外周側に配置された環状の可動環31と、可動環31の周方向に間隔をあけて複数配置され、可動環31をロータ軸線Ar(図3に示す)を中心として回転可能に支持する環支持機構33と、可動環31をロータ軸線Ar回りに回転させる回転駆動機構37(図3に示す)と、可動環31の回転で可変静翼16の向きが変わるよう、可動環31と可変静翼16とを連結するリンク機構40と、を備えている。
【0040】
環支持機構33は、図2に示すように、可動環31に転がり接触するローラ34と、このローラ34を回転可能に支持する支持台35と、を有している。
【0041】
また、リンク機構40は、図2及び図4に示すように、可変静翼16の翼軸線Awを中心として円柱状を成し、一端部42が可変静翼16の外側端に固定されている翼回転軸41と、この翼回転軸41の他端部43に相対回転不能に取り付けられている第一リンク片(リンク部材)45と、一方の端部がピンで第一リンク片45に連結され、他方の端部がピンで可動環31に連結されている第二リンク片48と、を有している。
【0042】
翼回転軸41は、ケーシング20を貫通しており、一端部42がケーシング20の内周側に位置して、前述したように、可変静翼16の外側端に固定されている。また、翼回転軸41の他端部43は、ケーシング20の外周側に位置して、前述したように、第一リンク片45が取り付けられている。この翼回転軸41は、ケーシング20に設けられたケーシング側ブッシュ51により、ケーシング20に対して、翼軸線Aw回りに回転可能に支持されている。
【0043】
リンク機構40は、さらに、図6に示すように、翼回転軸41に対して翼軸線Aw回りに相対回転不能に第一リンク片45を拘束する2本の回り止めピン61と、2本の回り止めピン61が固定されているピン支持部材55と、2本の回り止めピン61を後述のピン穴47に押し込むためのピン押込みボルト66と、を有している。
【0044】
第一リンク片45には、翼回転軸41の他端部43が挿通可能な軸挿通孔46が形成されている。この軸挿通孔46は、軸挿通孔46に翼回転軸41が挿通された際、この軸挿通孔46の軸が翼軸線Aw上に位置する。第一リンク片45において、軸挿通孔46の軸方向で互いに対向している外面面のうち、一方の外面には、環状を成し、軸挿通孔46の内径より大きな内径のバネ受け54が、軸挿通孔46の軸の位置が中心になるよう固定されている。
【0045】
第一リンク片45及び翼回転軸41の他端部43には、第一リンク片45と、この第一リンク片45の軸挿通孔46に挿通されている翼回転軸41とに跨って、翼軸線Awと平行に、翼回転軸41の一端部42に向って凹み、回り止めピン61が嵌挿可能な前述のピン穴47が形成されている。この2本の回り止めピン61に対する各ピン穴47は、翼軸線Awを中心とする円周上に、周方向に等間隔で形成されている。なお、ピン穴47は、第一リンク片45の軸挿通孔46に翼回転軸41の他端部43を挿通させ、翼回転軸41に対して相対回転不能に第一リンク片45を治具で固定している状態で、第一リンク片45と翼回転軸41とを共加工することで形成される。
【0046】
翼回転軸41には、ピン押込みボルト66の雄ネジ部66aが螺合可能なピン押込みネジ穴44が形成されている。このピン押込みネジ穴44は、翼回転軸41の他端側から一端側に凹み、その軸が翼軸線Aw上に位置している。この翼回転軸41の外周には、この翼回転軸41に対して相対回転不能に回転軸側ブッシュ52が設けられている。この回転軸側ブッシュ52には、翼回転軸41を基準にして外周側に突出したフランジ部52fが形成されている。このフランジ部52fの端面は、ケーシング側ブッシュ51のフランジ部の端面と摺接する摺接面を成している。また、第一リンク片45に固定されているバネ受け54と回転軸側ブッシュ52のフランジ部52fとの間には、両者を離す方向に付勢するバネ53が設けられている。
【0047】
ピン支持部材55には、ピン引抜ボルト68(図8に示す)が螺合可能なピン引抜ネジ孔56と、回り止めピン61が挿通される2個のピン取付孔57とが形成されている。ピン引抜ネジ孔56及び2個のピン取付孔57は、互いに平行にピン支持部材55を貫通している。2個のピン取付孔57は、ピン引抜ネジ孔56の軸を中心とする円周上に、周方向に等間隔で形成されている。この円周の径は、翼軸線Awを中心とする円周であって、この円周上に2個のピン穴47が形成されている円周の径と同じである。従って、ピン引抜ネジ孔56の軸が翼軸線Aw上に位置するようにピン支持部材55を配置すると、各ピン穴47の軸上に各ピン取付孔57の軸が位置することになる。
【0048】
ピン引抜ネジ孔56のネジ山径は、ピン押込みボルト66の雄ネジ部66aのネジ山径よりも大きく且つピン押込みボルト66のボルト頭部66bの外径よりも小さい。従って、ピン引抜ネジ孔56には、ピン押込みボルト66の雄ネジ部66aを接触させずに、これを挿通させることができる一方で、ピン押込みボルト66のボルト頭部66bを挿通させることができない。
【0049】
回り止めピン61は、図7及び図10に示すように、一端部に形成されている雄ネジ部62と、他端部に形成され、ピン穴47に嵌挿される嵌挿部63と、雄ネジ部62と嵌挿部63との境目に形成され、回り止めピン61の軸に対して垂直な方向に張出した鍔部64と、を有している。回り止めピン61の嵌挿部63とピン穴47とは締まりばめの関係である。すなわち、回り止めピン61の嵌挿部63は、その外径がピン穴47の内径よりも僅かに大きくなるよう形成されている。
【0050】
この回り止めピン61は、図7に示すように、その雄ネジ部62の一部がピン支持部材55のピン取付孔57に挿通される。そして、この回り止めピン61の雄ネジ部62にピン固定ナット65が捩じ込まれる。この結果、ピン支持部材55は、この回り止めピン61の雄ネジ部62に捩じ込まれたピン固定ナット65と回り止めピン61の鍔部64との間に挟持され、回り止めピン61に対して相対移動できなくなる、言い換えると、回り止めピン61はピン支持部材55に固定される。
【0051】
次に、リンク機構40の組立て手順について説明する。
【0052】
まず、図5に示すように、翼回転軸41の他端部43側に回転軸側ブッシュ52を取り付ける。そして、この回転軸側ブッシュ52の外周側から内周側へ向って回り止めネジ59を捻じ込み、翼回転軸41に対して回転軸側ブッシュ52を相対回転不能に拘束する。なお、この際、翼軸(Aw)方向で回転軸側ブッシュ52を基準として可変静翼16と反対側には、第一リンク片45を装着する部分が残っている。続いて、回転軸側ブッシュ52の外周側にバネ53を配置する。
【0053】
次に、翼回転軸41の他端部43に第一リンク片45を装着する。具体的には、第一リンク片45の軸挿通孔46に翼回転軸41の他端部43を挿通させる。この結果、前述のバネ53は、回転軸側ブッシュ52のフランジ部52fと、第一リンク片45に固定されているバネ受け54との間に挟持される。
【0054】
次に、図6に示すように、回り止めピン61が固定されているピン支持部材55のピン引抜ネジ孔56に、ピン押込みボルト66の雄ネジ部66aを挿通させる。この際、ピン支持部材55を基準にして、回り止めピン61をピン支持部材55に固定するためのピン固定ナット65と同じ側に、ピン押込みボルト66のボルト頭部66bが位置するよう、ピン押込みボルト66の雄ネジ部66aを挿通させる。また、前述したように、ピン引抜ネジ孔56のネジ山径は、ピン押込みボルト66の雄ネジ部66aのネジ山径よりも大きいため、このピン押込みボルト66の雄ネジ部66aは、ピン引抜ネジ孔56に螺合しない。
【0055】
続いて、ピン支持部材55から突出しているピン押込みボルト66の先端を翼回転軸41のピン押込みネジ穴44の位置に一致させると共に、このピン押込みボルト66を中心としてピン支持部材55を回転させて、このピン支持部材55に固定されている回り止めピン61の先端をピン穴47の位置に一致させる。そして、このピン押込みボルト66の雄ネジ部66aを翼回転軸41のピン押込みネジ穴44に捩じ込んでゆく。この結果、ピン支持部材55は、ピン押込みボルト66のボルト頭部66bに押されて、翼回転軸41及び第一リンク片45に次第に近づくと共に、このピン支持部材55に固定されている回り止めピン61の嵌挿部63が次第にピン穴47に嵌挿されていく。
【0056】
この際、ピン押込みネジ穴44が翼回転軸41上に位置しているため、ピン押込みボルト66により翼回転軸41側に押される第一リンク片45は、翼回転軸41を中心として均等に押されることになる。また、回り止めピン61は、翼回転軸41を中心とする円周上に、その周方向に等間隔でピン支持部材55に固定されているため、各回り止めピン61は、互いに均等にピン穴47に嵌挿されることになる。このため、本実施形態では、周り止めピン61をスムーズにピン穴47に嵌挿させることができる。
【0057】
ピン押込みボルト66の雄ネジ部66aを翼回転軸41のピン押込みネジ穴44に捻じ込み、図7に示すように、ピン支持部材55がピン押込みボルト66のボルト頭部66bに押されて第一リンク片45に接触し、ピン支持部材55及びこれに固定されている回り止めピン61が翼回転軸41及び第一リンク片45に対して、翼軸(Aw)方向において、翼回転軸41の一端側へ移動できなくなると、ピン押込みボルト66の捻じ込みを終了する。
【0058】
以上で、翼回転軸41に対する第一リンク片45の取付作業が完了する。
【0059】
第一リンク片45の取付作業が終了すると、第二リンク片48の一方の端部をピンで第一リンク片45に連結し、その他方の端部をピンで可動環31に連結する。以上で、リンク機構40の組立作業が終了する。
【0060】
次に、リンク機構40の分解作業について説明する。
【0061】
まず、可動環31から第二リンク片48を取り外す。
【0062】
次に、図8に示すように、ピン支持部材55のピン引抜ネジ孔56に螺合可能な雄ネジ部68aが形成されているピン引抜ボルト68を準備し、このピン引抜ボルト68の雄ネジ部68aをピン支持部材55のピン引抜ネジ孔56に捻じ込む。なお、前述したように、ピン引抜ネジ孔56のネジ山径は、ピン押込みボルト66の雄ネジ部66aのネジ山径よりも大きい関係上、このピン引抜ボルト68のネジ谷径は、第一リンク片45のピン押込みネジ穴44の谷径よりも大きくなるため、ピン引抜ボルト68は、第一リンク片45のピン押込みネジ穴44に入り込めない。
【0063】
ピン引抜ボルト68をピン支持部材55のピン引抜ネジ孔56に捻じ込んでゆくと、このピン引抜ボルト68の先端が第一リンク片45の表面に接触する。
【0064】
その後、さらに、図9に示すように、ピン引抜ボルト68をピン支持部材55のピン引抜ネジ孔56に捻じ込む。前述したように、ピン引抜ボルト68は、第一リンク片45のピン押込みネジ穴44に入り込めない。このため、ピン引抜ボルト68は、その先端が第一リンク片45の表面に接触した状態を維持しつつ、ピン支持部材55からの突出量が増加する、言い換えると、ピン引抜ボルト68の先端はピン支持部材55の下面(第一リンク片45側の面)から遠ざかる。この結果、このピン引抜ボルト68に螺合しているピン支持部材55、さらに、このピン支持部材55に固定されている回り止めピン61は、翼軸(Aw)方向で可変静翼16から遠ざかる側に移動し、最終的に、回り止めピン61がピン穴47から引抜かれる。そして、翼回転軸41から第一リンク片45を外す。
【0065】
以上で、第一リンク片45の取外作業が完了する。
【0066】
次に、回転軸側ブッシュ52からバネ53を外し、翼回転軸41から回転軸側ブッシュ52を外す。以上でリンク機構40の分解作業が終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態では、回り止めピン61の挿抜方向が翼軸(Aw)方向、つまり翼回転軸41が延びている方向であり、翼回転軸41に対する第一リンク片45の取付及び取外し方向であるため、この第一リンク片45の取付及び取外しのために作業スペースが確保されているスペースで、回り止めピン61の挿抜作業を行うことができる。このため、本実施形態では、リンク機構40中の回り止めピン61の挿抜作業の際、ロータ本体11を基準にして周方向で隣接している他のリンク機構40がじゃまにならない。よって、本実施形態によれば、回り止めピン61の挿抜作業に十分な作業スペースを確保することができる。
【0068】
また、本実施形態では、ピン押込みボルト66の捻じ込みにより、回り止めピン61をピン穴47に嵌挿させることができる。さらに、本実施形態では、ピン引抜ボルト68をピン支持部材55に捻じ込むことで、ジャッキ等を用いずに、回り止めピン61をピン穴47から引き抜くことができる。よって、本実施形態によれば、回り止めピン61のピン穴47に対する挿抜作業を容易に行うことができる。
【0069】
よって、本実施形態では、リンク機構40の組立・分解作業を容易に且つ短時間で行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、翼回転軸41と平行な方向にピン穴47を形成しているため、第一リンク片45の厚さを厚くし、ピン穴47の深さを深くすれば、回り止めピン61の翼回転軸41及び第一リンク片45に対する接触面積を容易に広げることができる。このため、本実施形態では、第一リンク片45に大きな回転トルクがかかっても、回り止めピン61の破損を防ぐことができる。
【0071】
なお、以上の実施形態のリンク機構40は、2本の回り止めピン61を有しているが、3本以上の回り止めピン61を有していてもよい。この場合も、以上の実施形態と同様、各回り止めピン61は、翼回転軸41を中心とする円周上に、その周方向に等間隔でピン支持部材55に固定されていることが好ましい。
【0072】
また、以上の実施形態のリンク機構40は、軸流流体機械の可変静翼駆動装置の一部を構成するものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の装置の一部を構成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10:ロータ、11:ロータ本体、12:動翼、16:可変静翼、20:ケーシング、30:可変静翼駆動装置、31:可動環、33:環支持機構、40:リンク機構、41:翼回転軸、42:(翼回転軸の)一端部、43:(翼回転軸の)他端部、44:ピン押込みネジ穴、45:第一リンク片(リンク部材)、46:軸挿通孔、47:ピン穴、55:ピン支持部材、56:ピン引抜ネジ孔、57:ピン取付孔、61:回り止めピン、62:雄ネジ部、63:嵌挿部、64:鍔部、65:ピン固定ナット、66:ピン押込みボルト、66a:(ピン押込みボルトの)雄ネジ部、66b:(ピン押込みボルトの)ボルト頭部、68:ピン引抜ボルト、68a:(ピン引抜ボルトの)雄ネジ部、68b:(ピン引抜ボルトの)ボルト頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材の動きに連動して、第二部材を該第二部材の軸線回りに回転させるリンク機構において、
前記軸線を中心として円柱状を成し、一端部が前記第二部材に固定され、該軸線と平行な方向に他端部から該一端部に向って凹んだピン押込みネジ穴が形成されている回転軸と、
前記軸線と平行な方向に貫通し、前記回転軸の前記他端部が挿通可能な軸挿通孔が形成されているリンク部材と、
前記回転軸の前記他端部に対して、前記軸線回りに相対回転不能に前記リンク部材を拘束する回り止めピンと、
前記回り止めピンが固定されているピン支持部材と、
前記回転軸の前記ピン押込みネジ穴に螺合可能な雄ネジ部を有するピン押込みボルトと、
を備え、
前記回転軸の前記他端部と該他端部が挿通された前記リンク部材とには、該他端部と該リンク部材とに跨って、前記軸線と平行な方向に前記一端部に向かって凹み、前記回り止めピンが嵌挿可能なピン穴が形成され、
前記ピン支持部材には、該ピン支持部材に固定されている前記回り止めピンの延びている方向に貫通し、該回り止めピンが前記ピン穴に嵌挿されているときに前記回転軸の前記ピン押込みネジ穴と同軸となるピン引抜ネジ孔が形成され、
前記ピン引抜ネジ孔のネジ山径は、前記ピン押込みボルトの雄ネジ部のネジ山径よりも大きく且つ該ピン押込みボルトのボルト頭部の外径よりも小さい、
ことを特徴とするリンク機構。
【請求項2】
請求項1に記載のリンク機構において、
前記ピン引抜ネジ孔に螺合可能な雄ネジ部を有するピン引抜ボルトを備えている、
ことを特徴とするリンク機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリンク機構において、
複数の前記回り止めピンを備え、
複数の前記回り止めピンは、前記ピン引抜ネジ孔の軸を中心とする円周上に、周方向に等間隔で前記ピン支持部材に固定されている、
ことを特徴とするリンク機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のリンク機構において、
前記ピン押込みネジ穴の軸は、前記回転軸の前記軸線上である、
ことを特徴とするリンク機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のリンク機構において、
前記ピン支持部材には、前記ピン引抜ネジ孔の貫通方向に貫通したピン取付孔が形成され、
前記回り止めピンは、一端部側に形成されている雄ネジ部と、他端部に形成され、前記ピン穴に嵌挿される嵌挿部と、該雄ネジ部と該嵌挿部との境目に形成され、当該回り止めピンの軸に対して垂直な方向に張出した鍔部と、を有する、
ことを特徴とするリンク機構。
【請求項6】
複数の動翼を有するロータと、該ロータを回転可能に覆うケーシングと、該ケーシング内に該ロータを中心として環状に複数配置された可変静翼と、を備えている軸流流体機械の可変静翼駆動装置において、
前記ケーシングの外周側に配置された環状の可動環と、
前記可動環の周方向に間隔をあけて複数配置され、該可動環を前記ロータ回りに回転可能に支持する環支持機構と、
前記可動環を前記ロータ回りに回転させる回転駆動機構と、
請求項1から5のいずれか一項に記載のリンク機構と、
を備え、
前記リンク機構は、前記第一部材としての前記可動環の回転で、前記第二部材としての前記可変静翼の向きが変わるよう、該可動環と該可変静翼とを連結している、
ことを特徴とする軸流流体機械の可変静翼駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96361(P2013−96361A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242143(P2011−242143)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】