説明

リン酸カルシウムナノ粒子のコア、生体分子および胆汁酸を含む粒子、ならびにそれらの製造方法および治療用途

本発明は、生物学的に活性なマクロ分子と共にカプセル化されたリン酸カルシウムナノ粒子を提供する。該粒子は、マクロ分子の送達用の生物学的に活性なマクロ分子の担体として用いることができる。また、本発明は該粒子を製造し、および用いる方法も提供する。本発明は、a)リン酸カルシウムナノ粒子のコア;b)コア粒子にカプセル化された生物学的に活性なマクロ分子;およびc)コア粒子にカプセル化された胆汁酸を含む表面修飾剤を含む粒子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参考としてその全体を援用される、2004年2月13日に出願された米国仮特許出願第60/544,693号に関する。
【0002】
(連邦政府により補助された研究または開発に関する陳述)
適用無し
発明の分野
本発明は、新規なリン酸カルシウム粒子、その製法、および生物学的に活性なマクロ分子の送達用の担体としてのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
蛋白質、ペプチド、多糖、核酸、脂質またはその組合せを含めたマクロ分子医薬は、種々の医学的疾患を治療するための益々重要性が増大するクラスの薬物である。マクロ分子医薬を投与するための主な経路は注射であり、これは不快であり、高価であり、しばしば、貧弱な患者コンプライアンスをもたらす。経口送達は医薬を投与するための好ましい経路である。しかしながら、マクロ分子薬物は腸を通じて吸収されにくく、胃酸および胃腸酵素によって容易に破壊され得る。経口マクロ分子送達のためのバリアーを克服するための有望なアプローチは、ナノ粒子を用いることであり、これは、分解からの保護を供することができ、マクロ分子薬物の吸収を可能とする。
【0004】
インスリンが負荷されたナノ粒子を用いて、生物活性インスリンを動物に送達することができると報告されている。例えば、無水フマル酸はおよび鉄酸化物添加剤を含むポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ナノ粒子に負荷されたインスリンによる血漿グルコース上昇の阻害は示されている(非特許文献1)。キトサンナノ粒子へのインスリンの経口送達のもう1つの例は、非特許文献2によって供される。加えて、ポリアルキルシアノアクリレートナノカプセルもまた、糖尿病動物におけるインスリンの経口送達用の効果的な担体であると報告されている(非特許文献3)。胃腸経路による特定の物質の摂取は記載されており、リンパのペイヤーパッチが関連する(非特許文献4)。
【0005】
粒子の吸収に影響する要因の中での、粒子のサイズは主な要因のように見える。例えば、非特許文献5は、ラットにおいて種々のサイズのポリスチレン粒子の腸吸収を研究した。ポリスチレン粒子の吸収効率は明らかにサイズに依存している。100nm未満の粒子は有意な吸収を示し、他方、大きな粒子(500nm以上)は中程度ないし低い吸収を示したにすぎなかった。
【0006】
粒子の腸吸収に対するサイズ依存性もまた、非特許文献6によってポリ(ラクチド−コ−グリコリド)またはPLGA粒子によって観察されている。この研究においては、500nmよりも大きなPLGA粒子は腸管を介する実質的な摂取を示しておらず、100nmのPLGA粒子の36%が吸収された。
【0007】
ナノメータースケールの粒子が、蛋白質および核酸のような生物学的マクロ分子のための担体粒子として用いるために提案されている(特許文献1〜9を参照)。
【0008】
リン酸カルシウム粒子は生体−接着性/生体適合性であって、イン・ビトロにて核酸を細胞内区画に送達するのに日常的に担体として用いられてきた(非特許文献7〜10)。加えて、リン酸カルシウムは、イン・ビボにて大きな核酸を送達するための遺伝子治療用の担体として試験もされてきた(非特許文献11)。
【0009】
治療用リン酸カルシウム粒子は記載されている。(特許文献10〜20、非特許文献12)。インスリン負荷リン酸カルシウム粒子の経口処方の効果は糖尿病マウスで試験され、血中グルコースの制御が示されている(非特許文献13)。開示されたリン酸カルシウム粒子は300nmないし10umの間の粒子サイズを有する。動物実験は平均して2ないし4umの範囲の粒子サイズを用いた。これらの粒子サイズは明らかに最適ではない。
【0010】
所望のサイズを持つリン酸カルシウム粒子を作成するためには、広範な音波処理が必要であり(非特許文献14および15))、これはカプセル化されたマクロ分子薬物を損傷しかねず、共沈殿手法に適合しない。
【0011】
さらに、マクロ粒子のリン酸カルシウムの粒子へのカプセル化効率はしばしば低い。例えば、特許文献21は、もしインスリンを予め形成されたリン酸カルシウム粒子に加えたならば約40%;もしインスリンを粒子形成の間に混合したならば、約89%の吸収効率を開示する。
【特許文献1】米国特許第5,178,882号明細書
【特許文献2】米国特許第5,219,577号明細書
【特許文献3】米国特許第5,306,508号明細書
【特許文献4】米国特許第5,334,394号明細書
【特許文献5】米国特許第5,460,830号明細書
【特許文献6】米国特許第5,460,831号明細書
【特許文献7】米国特許第5,462,750号明細書
【特許文献8】米国特許第5,464,634号明細書
【特許文献9】米国特許第6,355,271号明細書
【特許文献10】米国特許第6,355,271号明細書
【特許文献11】米国特許第6,183,803号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0258763号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2002/0054914号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2000/0068090号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2003/0185892号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2001/0048925号明細書
【特許文献17】国際公開第02/064112号パンフレット
【特許文献18】国際公開第03/051394号パンフレット
【特許文献19】国際公開第00/46147号パンフレット
【特許文献20】国際公開第2004/050065号パンフレット
【特許文献21】米国特許第6,355,271号明細書
【非特許文献1】Carino et al.,Controlled Release 65:261、(2000)
【非特許文献2】Pan et al.,Intl.J.Pharmaceutics,249:139(2002)
【非特許文献3】Damge et al.,Diabetes,37:246(1988)
【非特許文献4】Hussain et al.,Adv.Drug Delivery Rev.50:107,(2001)
【非特許文献5】Jani et al.,(J.Pharm.Pharmacol.42:821,1990)
【非特許文献6】Desai et al.,(Pharm.Res.13:1838,1996)
【非特許文献7】Chen et al.,Mol.Cell.Biol.7:2745−52,(1987)
【非特許文献8】Welzel et al.,J.Mater.Chem.14:2213−2217(2004)
【非特許文献9】Jordan et al.,Nucleic Acids Research 24:596−601(1996)
【非特許文献10】Loyter et al.,Exp.Cell Res.139:223−234(1982)
【非特許文献11】Roy et al.,Intl.J.Pharmaceutics 250:25、(2003)
【非特許文献12】Cherian et al.,Drug Development and Industiral Pharmacy 26:459−463(2000)
【非特許文献13】Morcol et al.,Intl.J.Pharmaceutics 277;91,(2004)
【非特許文献14】Cherian et al.,Drug Dev.Ind.Pharmacy,26:459,2000
【非特許文献15】Roy et al.,Intl.J.Pharmaceutics 250:25,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの報告された方法は最適でないサイズを持つ粒子をもたらすが、あるいはマクロ粒子処方に適合しない拡大された音波処理のような厳しい条件を必要とする。従って、高度に効果的であって、低コストで容易に作成される経口マクロ分子送達系に対する要望が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の簡単な要旨
本発明は、a)リン酸カルシウムナノ粒子のコア;b)コア粒子にカプセル化された生物学的に活性なマクロ分子;およびc)コア粒子にカプセル化された胆汁酸を含む表面修飾剤を含む粒子を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、コア粒子の直径は約1000nm未満、約300nm未満、または約200nm未満である。
【0015】
いくつかの実施形態において、胆汁酸は、コレート、デオキシコレート、タウロコレート、グリココレート、タウロデオキシコレート、ウルソロデオキシコレート、タウロウルソデオキシコレート、およびケノデオキシコレートよりなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、粒子は、さらに、腸溶コーティングを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、生物学的に活性なマクロ分子は蛋白質、ポリペプチド、多糖、核酸、ポリヌクレオチド、脂質、および炭水化物よりなる群から選択される。いくつかの実施形態において、蛋白質またはポリペプチドは、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、および顆粒球コロニー−刺激因子(G−CSF)よりなる群から選択される。いくつかの実施形態において、生物学的に活性なマクロ分子は家塵ダニ、動物フケ、黴、花粉、ブタクサ、ラテックス、スズメバチ毒および昆虫−由来アレルゲン、およびそのいずれかの組合せよりなる群から選択されるアレルゲンである。
【0018】
いくつかの実施形態において、該粒子はエアロゾルの形態で適合される。いくつかの実施形態において、該粒子は生物学的に活性なマクロ分子を粘膜表面に送達するように適合される。いくつかの実施形態において、該粒子は、生物学的に活性なマクロ分子を、目の障害の治療のためにそれを必要とする対象の目表面に送達するように適合される。
【0019】
また、本発明は、本明細書中に記載されたリン酸カルシウムナノ粒子および医薬上許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0020】
本発明は、リン酸カルシウムの1以上の粒子を作成する方法を提供し、該方法はa)胆汁酸を含む表面修飾剤の存在下でカルシウム塩の水溶液をリン酸塩の水溶液と接触させ;b)所望のサイズのリン酸カルシウム粒子が得られるまで溶液を混合し;次いで、c)粒子を回収することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、カルシウム塩の濃度は約5mMおよび約200mMの間である。いくつかの実施形態において、リン酸塩の濃度は約5mMおよび約200mMの間である。
【0022】
いくつかの実施形態において、該方法は、さらに、胆汁酸を含む表面修飾剤の存在下で、カルシウム塩の水溶液をリン酸塩の水溶液と接触させる前に、生物学的に活性なマクロ分子をリン酸塩の水溶液またはカルシウム塩の水溶液に加えることを含み、それにより、リン酸カルシウム粒子はマクロ粒子と共結晶化される。
【0023】
また、本発明は、生物学的に活性なマクロ分子を必要とする対象を治療する方法を提供し、該方法は本明細書中に記載されたリン酸カルシウムナノ粒子を含む医薬組成物を該対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は経口経路によって投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は粘膜表面に投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は目表面に投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、生物学的に活性なマクロ分子でカプセル化された新規なリン酸カルシウムナノ粒子、該ナノ粒子の製法、および生物学的に活性なマクロ分子の投与を必要とする医学的疾患を治療するためのナノ粒子を用いる方法を提供する。本明細書中で用いるように、「カプセル化された」、「包埋された」または「配合された」は、物質によって複合体化された、入れられた、結合された、関連する、被覆された、層状化された、または包まれた、を意味する。かくして、粒子中にカプセル化された物質は、該物質が粒子構造に一体化され、または粒子の表面に被覆または付着されまたはその双方である。
【0025】
他の定義がない限り、本明細書中で用いた全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野における当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。本明細書中で言及された全ての特許、出願、公開された出願および他の刊行物はここに引用してその全体を援用する。本セクションに記載された定義がもしここに引用して援用する特許、出願、公開された出願および他の刊行物に記載された定義に反し、またはそうでなければ合致しないならば、本セクションに記載された定義がここに引用して援用する定義よりも優先する。
【0026】
本明細書中で用いるように、「ある(「a」または「an」)」は「少なくとも1つ」または「1以上」を意味する。
【0027】
(A.カプセル化された生物学的活性マクロ分子を持つリン酸カルシウムナノ粒子)
本発明は、a)リン酸カルシウムナノ粒子のコア;b)該コア粒子中にカプセル化された生物学的に活性なマクロ分子;およびc)該コア粒子中にカプセル化された胆汁酸を含む表面修飾剤を含むリン酸カルシウムナノ粒子を提供する。
【0028】
本発明のリン酸カルシウムコア粒子は約8000nm未満、約1000nm未満、より好ましくは、約300nm未満の平均粒子サイズ(直径)を有する。該粒子は約50nmおよび約8000nmの間、約100nmおよび約3000nmの間、または約100nmおよび約1000nmの間の直径を有することができる。いくつかの実施形態において、平均粒子サイズは200nm未満である。いくつかの実施形態において、該平均粒子サイズは100nm未満である。
【0029】
本発明のコア粒子は、一般的にかつ実質的に形状が球形である形態を一般的に有し、ナノ粒子のサイズが実質的に単分散である。単分散とは、例えば、サイズが約20%、約30%、約40%または約50%の差の範囲内の、これらのナノ粒子で観察される狭いサイズ分布をいう。粒子の表面は実質的に平滑とすることができる。
【0030】
用語「実質的に球形」とは、本明細書中においては、形状が実質的に丸いまたは卵型である粒子をいうように用いられ、面がなく平滑である、または非常に少数の面を有する粒子、ならびにいくつかまたは多数の面を有する多面体である粒子を含む。用語「実質的に平滑」は、本明細書中においては、実質的に表面特徴がない、または100nm以上のサイズを有する凹凸を意味する。コア粒子は面があっても、または角張っていてもよく、面が前記したタイプの多くの表面凹凸を含有しない限り、依然として本定義内に入る。
【0031】
図3Aおよび3Bは、本明細書中に記載された方法に従って調製されたナノ粒子の例の走査型電子顕微鏡イメージを示す。図3Aは、約200nmの平均直径で被覆または分散されたマクロ分子無しのブランクナノ粒子を示す。図3Bは、約70nmの平均直径を持つナノ粒子内に分散されたマクロ分子インスリンを持つナノ粒子を示す。これらのナノ粒子は球形および狭いサイズ分布を示す。
【0032】
本発明におけるリン酸カルシウムナノ粒子は、デュアル機能を有する胆汁酸を含む表面修飾剤を含有する。実施例1に示されるように、リン酸カルシウムナノ粒子への生物学的に活性なマクロ分子のカプセル化は、粒子が胆汁酸の存在下で形成される場合に増強される。胆汁酸はナノ粒子の生物−接着性を増強させ、ナノ粒子のサイズに影響することもできる。いずれの胆汁酸を用いてもよい。胆汁酸の例としては、限定されるものではないが、コレート、デオキシコレート、タウロコレート、グリココレート、タウロデオキシコレート、ウルソデオキシコレート、タウロウルソデオキシコレート、およびケノデオキシコレートが挙げられる。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明のリン酸カルシウムナノ粒子は、さらに、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。該PEGは約500ダルトンないし約20,000ダルトン、例えば、約500、約1000、約5000、約10,000、約15,000、約20,000ダルトンの分子量を有することができる。
【0034】
いずれの生物学的に活性なマクロ分子もコアリン酸カルシウムナノ粒子にカプセル化することができる。そのような生物学的に活性なマクロ分子としては、限定されるものではないが、蛋白質、ポリペプチド、多糖、核酸、脂質、炭水化物、およびその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、生物学的に活性なマクロ分子はインスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、または顆粒球コロニー−刺激因子(G−CSF)である。いくつかの実施形態において、生物学的に活性なマクロ分子は、アレルゲンまたは抗原性物質である。アレルゲンの例は、家塵ダニ、動物フケ、黴、花粉、ブタクサ、ラテックス、スズメバチ毒および昆虫−由来アレルゲン、およびそのいずれかの組合せである。
【0035】
生物学的に活性なマクロ分子には、アルファ−1−抗トリプシン、ステロイド、骨粗鬆症を治療するための薬物、血液凝固因子、抗癌薬物、抗生物質、治療抗体、リパーゼ、ベータ−ブロッカー、抗−喘息、アンチセンスオリゴヌクレオチド、呼吸器系および他の障害のためのDNase酵素、抗炎症薬剤、抗−ウイルス、抗−高血圧、抗−不整脈薬剤のような心臓治療剤、および遺伝子治療、利尿剤、ヘパリンのような抗−凝固化学物質、ならびにその組合せのようないずれの治療剤が挙げられる。該剤は天然単離体、または合成、化学または生物剤であり得る。
【0036】
リン酸カルシウムナノ粒子は、さらに、コーティングを含むことができる。例えば、生物学的に活性なマクロ分子で被覆されたおよび/または含浸されたナノ粒子は、さらに、セルロースアセテートフタレート、オイドラギット、およびアクアテリックのような腸溶ポリマーで被覆される。腸溶コーティングのプロセスは先行技術によく記載されており、文献はここに引用して援用される。Beyger et al., J.Pharm.Sci.75:573−578(1986);Maharaj et al., J.Pharm.Sci.73:39−42(1984)。
【0037】
また、本発明は、リン酸カルシウムナノ粒子のコア、および該コア粒子にカプセル化された生物学的に活性なマクロ分子を含むリン酸カルシウムナノ粒子を提供し、ここに、コア粒子の平均粒子サイズ(直径)は約300nm未満であり、但し、生物学的に活性なマクロ分子は核酸、ポリヌクレオチド、蛋白質またはポリペプチドではないものとする。また、本発明は、リン酸カルシウムナノ粒子のコア、および該コア粒子にカプセル化された生物学的に活性なマクロ分子を含むリン酸カルシウム−ナノ粒子を提供し、ここに、コア粒子の平均粒子サイズ(直径)は約300nm未満であり、ここに、生物学的に活性なマクロ分子は抗体である。
【0038】
また、本発明は、本明細書中に記載されたリン酸カルシウムナノ粒子、および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。適当な担体およびそれらの処方は当該分野で知られており、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20版, Mack Publishing, 2000に記載されている。医薬組成物は、溶液、カプセル、錠剤、粉末およびエアロゾルの形態に処方することができ;経口送達、粘膜送達、または目表面への送達に適した形態に処方することができる。該組成物は、緩衝剤、保存剤、非イオン性界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、エモリエント、滑沢剤、および等張剤のような他の成分を含むことができる。該組成物は、マクロ分子につき制御された放出を達成するように処方することができる。
【0039】
(B.リン酸カルシウムナノ粒子の方法)
また、本発明はリン酸カルシウムの1以上の粒子の製法を提供し、該方法は、a)胆汁酸を含む表面修飾剤の存在下で、カルシウム塩の水溶液をリン酸塩の水溶液と接触させ;b)所望のサイズのリン酸カルシウム粒子が得られるまで溶液を混合し;次いで、c)粒子を回収することを含む。
【0040】
本発明のリン酸カルシウムナノ粒子は、典型的には、可溶性カルシウム塩を可溶性リン酸塩と、好ましくは、胆汁酸を含む表面修飾剤の存在下で接触させることによって水性媒体中の懸濁液として調製される。
【0041】
いくつかの実施形態において、約1mMおよび約100mMの間の濃度を有する二塩基性リン酸ナトリウムの蒸留水溶液、および0.01ないし1%(w/v)の濃度を有するデオキシコレートのような表面修飾剤を調製し、溶液中で混合する。いくつかの実施形態において、1ないし30%(w/v)の濃度を有するポリエチレングリコールのような他の賦形剤も含まれる。
【0042】
溶液のpHはリン酸緩衝液系によって制御される。pH値はナノ粒子のサイズに影響し、カプセル化すべきマクロ分子の安定性要件に適合すべきである。pH値は約4.0ないし約9.0の間、またはより好ましくは約5.0ないし約8.0の間とすることができる。
【0043】
粒子サイズは、カルシウム、ホスフェート、およびマクロ分子を含めた種々の成分の濃度によって影響される。一般に、カルシウムまたはホスフェートの濃度が高くなれば、ナノ粒子はより大きくなる。
【0044】
ナノ粒子を生じさせるためには、1mMおよび約100mMの間の濃度を有する塩化カルシウムのようなカルシウム塩の水溶液を、前記したホスフェートの水溶液と混合する。濁りが直ちに形成され、これは、リン酸カルシウムナノ粒子の形成を示す。混合は、一般には、1分ないし1時間、またはそれよりも長く(例えば、2ないし48時間)さえ継続する。粒子のサイズは、混合スピードを上昇させることによって、または音波処理によって低下させることができる。
【0045】
生じたリン酸カルシウムナノ粒子は、さらに、回収されおよび/または精製される。いくつかの実施形態において、カプセル化されたマクロ分子を有する形成されたリン酸カルシウムナノ粒子は遠心によって回収される。溶液は3000ないし1000xgにおいて5ないし15分間遠心され、収集されたナノ粒子は真空下で乾燥される。いくつかの実施形態において、カプセル化されたマクロ分子を有する形成されたリン酸カルシウムナノ粒子は濾過によって回収される。溶液を真空でのブッフェル漏斗のような濾過デバイスに加えられる。20nmのAnodisc(Whatman)のような濾過膜を用いて、ナノ粒子を回収することができ、これはさらに真空下で乾燥される。
【0046】
本発明の粒子は、生物学的に活性な物質の捕獲の効率を増大させるために、胆汁酸を含む表面修飾剤の存在下で形成される。本発明で用いることができる胆汁酸の例はコレート、デオキシコレート、タウロコレート、グリココレート、タウロデオキシコレート、ウルソデオキシコレート、タウロウルソデオキシコレート、またはケノデオキシコレートである。胆汁酸の濃度は一般には0.01%ないし5%である。一般に、この手法の結果、粒子の被覆または含浸の実質的により高い効果がもたらされる。例えば、表面修飾剤の存在下におけるインスリン負荷効率は100%に近づくことができ、他方、同一条件下で表面修飾剤の存在下において50ないし60%に過ぎない。
【0047】
生物学的に活性なマクロ分子のナノ粒子への負荷は、好ましくは、胆汁酸および賦形剤の存在下でリン酸溶液と組み合わせ、それと混合するに先立って、カルシウム塩水溶液を一体化させるべき生物学的に活性なマクロ分子と混合し、あるいは胆汁酸および賦形剤の存在下でカルシウム塩溶液と組み合わせ、それと混合するに先立って、リン酸塩水溶液を一体化させるべき生物学的に活性なマクロ分子と混合することによって行われる。一体化させるべき生物学的に活性なマクロ分子は約0.1ないし20mg/mLの濃度を有することができる。ナノ粒子は適当な時間の間、一般には、1分ないし1時間の間維持される。ナノ粒子は、遠心または濾過のいずれかによって懸濁液から分離し、次いで、真空下で乾燥することができる。
【0048】
本発明のナノ粒子は、さらに、例えば、腸溶コーティングでコートすることができる。腸溶コーティングのプロセスおよび材料は周知であり、当該分野で実施される。異なる腸溶ポリマーの選択の結果、胃腸管の標的化面積およびマクロ分子の薬物動態学的挙動の変化をもたらし得ることはよく認識される。
【0049】
いくつかの実施形態において、生物学的に活性なマクロ分子でカプセル化されたリン酸カルシウムナノ粒子は腸溶ポリマー溶液に懸濁される。最も普通に使用される溶媒はアセトン、エタノールまたは組合せである。例えば、ナノ粒子は10ないし100mg/mLの濃度で懸濁させることができる。コーティングポリマーおよびコアナノ粒子の比は3:1ないし0.5:1、好ましくは2:1ないし1:1の間とすることができる。ナノ粒子は軽い音波処理によって分散でき、1ないし5×容量パラフィン油を混合物に加えることができる。ボルテックスおよび音波処理による完全な混合の後、2ないし10×容量のクロロホルムを加えて、コーティングポリマーを固化させることができる。コートされた粒子はWhatman Chr 3MMのような濾紙、およびにクロロホルムでの洗浄によって回収することができる。回収された生成物はさらに真空下で乾燥し、均一なサイズまで粉砕することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、リン酸カルシウムナノ粒子は、20ないし100mg/mLの間の濃度を有する腸溶ポリマー溶液に懸濁させ、ナノ粒子に対するコーティングポリマーの比率は2:1ないし1:1の間である。懸濁液を軽く音波処理し、腸溶ポリマーを溶解させず、腸溶ポリマーを溶解させるべき溶媒と混和性でない溶媒に直接加える。混合物および分散溶媒の間の容量比率は1:10ないし500:1である。粒子は、Whatman Chr 3MMのような濾紙への濾過によって回収される。粒子は真空下で乾燥させ、均一なサイズまで粉砕される。
【0051】
本発明の粒子は、さらに、他の表面修飾剤でコートし、または含浸させることができ、あるいは双方が可能である。本発明で用いるのに適したそのような表面修飾剤は、マクロ分子を変性することなく、生物学的に活性なマクロ分子の粒子用の結合、またはその捕獲を容易とする物質を含む。適当な表面修飾剤の例は米国特許第5,460,830号、第5,462,751号、第5,460,831号および第5,219,577号に記載されている。適当な表面修飾剤の他の例は、米国特許第5,219,577号に記載されたセロビオースまたはオリゴヌクレオチドのような塩基性または修飾された糖を含むことができる。適当な表面修飾剤は、例えば、米国特許第5,460,830号に記載された、炭水化物、炭水化物誘導体、および−OH側鎖基の豊富さによって特徴付けられる炭水化物−様成分との他のマクロ分子を含む。ポリエチレングリコール(PEG)は特に適当な表面修飾剤である。
【0052】
リン酸カルシウム粒子のコーティングは、セロビオースまたはPEG(例えば、292mM前後)のような表面修飾剤のストック溶液をリン酸カルシウムコア粒子の懸濁液へ、約20mLの粒子懸濁液に対する約1mLのストック溶液の比率にて加えることによって調製することができる。混合物を攪拌し(swirl)、一晩放置して、少なくとも部分的にコートされたコア粒子を形成することができる。一般には、いくつかの部分的にコートされたまたはコートされていない粒子を存在させることもできるが、この手法は粒子の実質的に完全なコーティングをもたらすであろう。
【0053】
(C.リン酸カルシウムナノ粒子を用いる方法)
本発明は、生物学的に活性なマクロ分子を必要とする対照を治療する方法も提供し、該方法は、本明細書中に記載されたリン酸カルシウムナノ粒子を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0054】
本発明の組成物の投与は、経口、静脈内、皮下、吸入を介する、動脈内、筋肉内、心臓内、心室内、非経口、クモ膜下腔内、および腹腔内を含めた当該分野で知られたいずれの手段によることもできる。投与は、全身、例えば静脈内または局所にて行うものとする。
【0055】
本発明のナノ粒子および医薬組成物は、それを必要とする対象に投与することができる。「対象」は哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物は、限定されるものではないが、(ウシのような)家畜、スポーツ動物、(ネコ、イヌ、ウマのような)ペット、霊長類、マウスおよびラットを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、医薬組成物のリン酸カルシウムナノ粒子は腸溶コーティングを含む。腸溶コート粒子は適当には経口経路によって投与することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、医薬組成物はインスリンを含んでカプセル化された腸溶コートリン酸カルシウムナノ粒子を含む。医薬組成物は、糖尿病または高血糖症を治療するために、溶液、カプセル、錠剤および粉末の形態で経口により対象に投与することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、医薬組成物はインターフェロンを含んでカプセル化された腸溶コートリン酸カルシウムナノ粒子を含む。医薬組成物は、ウイルス感染、癌、自己免疫疾患を治療するために、溶液、カプセル、錠剤および粉末の形態で経口により対象に投与することができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、エリスロポエチンを含んでカプセル化された腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子を含む。医薬組成物は、貧血を治療するために、または赤血球細胞レベルを上昇させるために、溶液、カプセル、錠剤または粉末の形態で対象に経口投与することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、G−CSFを含んでカプセル化された腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子を含む。医薬組成物は、化学療法または他の理由によって引き起こされた好中球減少症を治療するために、溶液、カプセル、錠剤または粉末の形態で対象に経口投与することができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ヒト成長ホルモンを含んでカプセル化された腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子を含む。医薬組成物は、小人症、成人成長ホルモン欠乏、るいそう、およびひどい負傷のような成長ホルモンの補充を必要とする疾患を治療するために、溶液、カプセル、錠剤または粉末の形態で対象に経口投与することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、副甲状腺ホルモン(PTH)を含んでカプセル化された腸溶被覆リン酸カルシウム粒子を含む。医薬組成物は、溶液、カプセル、錠剤および粉末の形態で対象に経口投与することができる。経口PTH組成物は、骨粗鬆症、またはPTH投与を必要とする他の障害を治療するのに用いることができる。
【0063】
本発明の粒子は、アレルゲンまたは他の抗原性物質を送達するのに用いることができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、アレルゲンまたは抗原を含んでカプセル化されたリン酸カルシウムナノ粒子を含む。医薬組成物は、対象において免疫応答を誘導し、対象へのアレルゲンの制御された放出を供するために、または対象においてアレルギー性脱感作を誘導するために、対象に投与することができる。粒子は吸入を介して、または粘膜を横切って皮下投与することができる。粒子は、スプレイ、エアロゾル、軟膏、点眼剤、ゲル、懸濁液、カプセル、坐薬、含浸タンポン、またはその組合せとして送達することができる。
【0064】
本発明の粒子は、粘膜免疫保護、粘膜ワクチン送達、または粘膜薬物送達のために粘膜表面へ生物学的に活性なマクロ分子を送達するのに用いることができる。生物学的に活性なマクロ分子の非限定的な例としては、以下:抗原性物質、天然免疫増強因子、免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド物質、インスリンのような治療薬物、または粘膜表面に投与された場合に治療効果を有することができるいずれかの他の組成物の1以上が挙げられる。粒子はいずれかの生物学的に許容できる賦形剤と複合体化することができ、経口、肺内、鼻腔内、直腸、眼内のような粘膜表面を介して投与することができる。
【0065】
本発明の粒子は、目の障害を治療するために、生物学的に活性なマクロ分子を目の表面に送達するのに用いることができる。例えば、治療蛋白質もしくはペプチド、または治療効果を有することができる他の成分を粒子中にカプセル化し、目の表面に投与することができる。治療することができる目の障害または疾患は、限定されるものではないが、緑内障、ブドウ膜炎、色素性網膜炎、黄斑変性、網膜障害、網膜血管病、および他の血管異常、眼内炎、感染症、炎症性であるが感染性でない障害、目の虚血性症候群、末梢網膜変性、網膜変性、脈絡膜障害および腫瘍、ガラス体障害、および炎症性光学神経障害が挙げられる。
【0066】
以下の実施例は説明目的のためだけに含めるものであり、本発明の範囲を限定する意図のものではない。リン酸カルシウムナノ粒子は、本出願で詳細に説明された種々の実施形態で調製することができる。以下の非限定的例は、種々の実施形態の典型的な結果を示す。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
ウシ血清アルブミン(BSA)負荷リン酸カルシウムナノ粒子の製造
音波処理でのリン酸カルシウム粒子の調製
200ミリグラムのポリエチレングリコール(PEG、MW10000、Fluka)、23.2mgのBSA、1mLの125mM NaHPO、(1.4mM NaHPO、10mM KCl、12mMグルコース、275mM NaCl、および40mM BES、pH6.964を含有する)3mLのBBS溶液を20mLの水溶液に溶解させた。該溶液は0.615のOD280を有した。攪拌下で、0.3mLの2.5M CaClを加えた。
【0068】
沈殿が直ちに観察され、攪拌を室温にて一晩継続した。混合物を15分間音波処理し、8000rpmにおいて15分間スピンダウンした。収集した粒子を真空下で乾燥し、回収を測定した。上清のOD280は0.084であった。捕獲効率は以下の方程式によって見積もった:
効率(%)=[1−上清のOD280/出発溶液のOD280]×100
この場合、捕獲効率は86%であった。
【0069】
リン酸カルシウム粒子からのBSA放出を評価した。20.6mgのBSAを負荷したリン酸カルシウム粒子を20mLのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に加えた。混合した後、22ミクロ−遠心管を各々0.8mLアリコットに設定した。全てのアリコットを37℃にて揺動させた。以下の表1に示された各時点において、アリコットの3チューブを採取し、14000rpmにおいて10分間スピンダウンさせた。上清を除去し、OD280を測定し、データを表1に示す。リン酸カルシウム粒子からのBSA放出は、PBSにおいて、4ないし8時間以内に実質的に完了した。
【0070】
【表1】

音波処理無しでのBSA−負荷リン酸カルシウムナノ粒子の調製
200ミリグラムのポリエチレングリコール(PEG、MW10000、Fluka)、10mgのBSA、1mLの125mM NaHPO、3mLのBBS溶液を20mLの水溶液に溶解させた。該溶液は0.350のOD280を有した。攪拌下で、0.3mLの2.5M CaClを加えた。
【0071】
沈殿が直ちに観察され、8000rpmにおいて15分間スピンダウンすることによって粒子を回収した。収集された粒子を真空下で乾燥した。上清のOD280は0.224であって、見積もられた捕獲効率は36%であった。
【0072】
デオキシコレートの存在下でのBSA−負荷リン酸カルシウムナノ粒子の調製
200ミリグラムのポリエチレングリコール(PEG、MW10000、Fluka)、10mgのBSA、1mLの125mM NaHPO、3mLのBBS溶液および40mgデオキシコレートを20mLの水溶液に溶解させた。OD280は0.296であった。攪拌下で0.3mLの2.5mM CaClを加えた。
【0073】
沈殿が直ちに観察され、8000rpmにおいて15分間スピンアウトすることによって粒子を回収した。収集された粒子を真空下で乾燥した。上清のOD280は0.084であり、見積もられた捕獲効率は72%であった。
【0074】
これらの2つの例は、デオキシコレートが同一条件下でカプセル化効率を実質的に上昇させることを示す。
【0075】
濾過によるBSA−負荷リン酸カルシウムナノ粒子の調製
1グラムのポリエチレングリコール(PEG、MW10000、Fluka)、40mgのBSA、12mMのリン酸ナトリウム、pH6.6、および160mgのデオキシコール酸ナトリウムを20mLの水に溶解させた。添加前に、デオキシコレートを1mLのエタノールに溶解させた。OD280は1.349であった。攪拌下で、20mLの72mM CaClを加えた。2分後に、混合物を真空下で20nmのAnodisc膜に濾過した。膜を真空下で乾燥し、カルシウムナノ粒子を回収した。濾液のOD280は0.142であって、捕獲効率は82%であった。
【0076】
(実施例2)
エリスロポエチン(EPO)負荷腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子の製造
EPO試料(1.2mg/mLの1mL)を1Lの水に対して4℃にて一晩透析し、最終容量は1.3mLであった。400mgのPEG(MW10000、Fluka)、1.3mLのEPO、6mLのBBS、pH6.964、および2mLの125mM NaHPOを合計40mLの溶液に混合した。OD280は0.070であった。攪拌下で、60uLの2.5M CaClを加えた。沈殿が直ちに観察され、攪拌を室温にて1時間継続した。
【0077】
溶液を8000gにおいて、10分間スピンダウンして、粒子を収集した。溶液のOD280は0.033と測定され、全ての粒子を真空下で乾燥した。捕獲効率は53%と見積もられた。
【0078】
EPO−負荷リン酸カルシウムナノ粒子をセルロースアセテートフタレートで被覆した。30mgのEPO−負荷リン酸カルシウムナノ粒子を、アセトン:エタノール(95:5)中の0.5mLの10%セルロースアセテートフタレートに懸濁させた。1.5mLのパラフィン油を加え、攪拌し、続いて、6mLのクロロホルムを加えることによって混合した。粒子をWhatman濾紙(Chr 3mm)で回収し、クロロホルムで洗浄した。粒子を真空下で乾燥し、均一なサイズまで粉砕した。
【0079】
1mg粒子被覆リン酸カルシウムナノ粒子を採取することによってEPO負荷を測定し、室温にて4時間で0.5mLのPBSに再懸濁させた。14000rpmにおいてスピンダウンした後、上清中のEPO濃度を市販のELISAキット(R&D System)で測定した。EPO負荷は3600IU/mgであった。
【0080】
(実施例3)
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口エリスロポエチン(EPO)のイン・ビボの活性
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口EPOの活性を、ヘマトクリットを測定することによって正常なBalB/cマウスにおいて評価した。
【0081】
動物。9匹の6ないし8週齢雌Balb/Cマウスを換気された部屋に収容した。食物および水を自由に与えた。光サイクルを12時間毎に設定した。
【0082】
処理。マウスを、3匹のマウスを各群に入るように、3つの群に任意に分けた。ビヒクル群を0.5mLビヒクル溶液(10mM酢酸ナトリウム、pH4.0)で毎日1回5日間胃管栄養に付した。皮下(SC)注射群にビヒクル中の50IU EPOを毎日1回5日間注射した。経口群は0.5mLのビヒクル溶液中の1000IU EPOで毎日1回5日間胃管栄養に付した(garvaged)。2日に、全てのマウスに10mg鉄デキストランの腹腔内注射を与えた。
【0083】
10日に、血液試料を眼球後ろ穿刺から吸い取り、ヘパリン処理したキャピラリチューブを用いて、血液試料を収集した。キャピラリチューブを3000rpmにおいて20分間スピンダウンし、全血中の赤血球細胞画分の比率によってヘマトクリット(HCT)を計算した。結果を以下の表2に示す。両側および不均等偏差t−検定を、Excelスプレッドシートプログラムにおいて形成関数で行った。
【0084】
【表2】

データは、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口送達されたEPOが活性であり、HCT値を有意に増大させたことを示唆する。
【0085】
(実施例4)
腸溶被覆顆粒球コロニー−刺激因子(G−CSF)負荷リン酸カルシウムナノ粒子の製造
カプセル化および生物学的効果に対するデオキシコレートのデュアル効果を次の2つの試料で説明する。
【0086】
デオキシコレートの不存在下におけるG−CSF負荷リン酸カルシウムナノ粒子の製造
1.9mg/mL試料の20mLのG−CSFを3Lの水に対して4℃にて一晩透析し、最終G−CSF濃度は1.5mg/mLであった。200mgのPEG(MW10000、Fluka)、2.5mLのG−CSF、3mLのBBS、pH6.964、1mLの125mM NaHPOを混合し、蒸留水中に20mLに調製した。OD280は0.145であった。攪拌下、300uLの2.5M CaClを加え、沈殿が直ちに観察された。攪拌を10分間継続し、粒子はポリトロンホモゲナイザーで10分間ホモゲナイズし、8000gにおいて10分間スピンダウンすることによって回収した。上清のOD280は0.033であって、捕獲効率は77%であった。粒子を真空下で乾燥した。
【0087】
G−CSF負荷リン酸カルシウムナノ粒子を腸溶ポリマーのセルロースアセテートフタレートで被覆した。17mgの粒子を400uLの、95:5アセトン:エタノール中の10%セルロースアセテートフタレートに懸濁させた。ボルテックスによって混合した後、攪拌しつつ20mLのパラフィン油を加え、1分後に7.5mLのクロロホルムを加えた。被覆した粒子を濾過によってWhatman濾紙(Chr 3mm)に回収し、クロロホルムで洗浄した。被覆粒子を真空下で乾燥し、粉砕した。
【0088】
デオキシコレートの存在下でのG−CSF負荷リン酸カルシウム粒子の製造
200mgのPEG(MW10000、Fluka)、2.5mLのGCSF、65.9mgのデオキシコレート、3mLのBBS溶液、pH6.964、および1mLの125mM NaHPOを溶解させ、20mLに調整した。デオキシコレートを添加前に1mLエタノールに溶解させた。OD280は0.106であった。攪拌下に、300uLの2.5M CaClを加え、沈殿が直ちに観察された。攪拌を10分間継続し、粒子をポリトロンホモゲナイザーで5分間ホモゲナイズし、8000gにおいて10分間スピンダウンすることによって回収した。上清のOD280は0.008であった。カプセル化効率は92%であった。粒子を真空下で乾燥した。
【0089】
G−CSF負荷リン酸カルシウムナノ粒子を腸溶ポリマーのセルロースアセテートフタレートで被覆した。58mgの粒子を、1.2mLの、95:5アセトン:エタノール中の5%セルロースアセテートフタレートに懸濁した。渦巻かせることによって混合させた後、攪拌しつつ20mLのパラフィン油を加え、1分後に7.5mLのクロロホルムを加えた。被覆された粒子が濾過によってWhatman濾紙(Chr 3mm)に回収され、クロロホルムで洗浄した。被覆された粒子を真空下で乾燥し、粉砕した。
【0090】
該実施例は、もし粒子がデオキシコレートの存在下で調製されるならば捕獲効率は有意に改良することができることを示す。
【0091】
(実施例5)
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口G−CSFのイン・ビボ活性
経口G−CSFの活性を、正常なBalb/Cマウスにおける処理の後に、白血球細胞の数をカウントすることによって測定した。
【0092】
動物。18匹の6ないし8週齢Balb/Cマウスを換気された部屋に収容した。食物および水を自由に与えた。光サイクルは12時間毎に設定した。
【0093】
処理。マウスを任意に4つの群に分けた。ビヒクルおよびSCG群は4匹のマウスを有し、CAPおよびCAPD群が、各々、5匹のマウスを有した。ビヒクル群を0.5mLの10mM NaAc、pH4.0で処理した。ビヒクル中の100ug/kgのG−CSFの0.1mL皮下注射でSCGを処理した。CAP群を、2mg/kgG−CSFにて、1mLのビヒクル中の腸溶被覆リン酸カルシウム粒子中の経口G−CSFで処理した。CAPDは、デオキシコレートの存在下で調製された腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口G−CSFであった。用量はCAP群と同一であった。
【0094】
マウスを毎日4日間処理し、血液試料を5日に吸い取って、全白血球細胞カウントを決定した。赤血球細胞を溶解させ、顕微鏡を用いて全白血球細胞カウントを測定した。t−検定の形成関数にてExcelスプレッドシートプログラムを用いてデータを解析した。
【0095】
【表3】

データは、注射された、および経口送達されたG−CSFがより高い白血球細胞カウントを有意に達成したことを示唆する。加えて、デオキシコレートの存在下で調製されたリン酸カルシウムナノ粒子がより大きなG−CSF活性を送達し、デオキシコレート無しのそれよりもより高い白血球細胞カウントを達成した。
【0096】
(実施例6)
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口G−CSFの生物−同等性
動物。10匹の8ないし10週齢Sprague−Dawleyラットを換気された部屋に収容した。食物および水を自由に供給した。光サイクルは12時間毎に設定した。
【0097】
処理。ラットを任意に3つの群に分け、2匹のラットはビヒクル群(V)、4匹のラットは注射(G)および経口G−CSF処理(D)群とした。処理スケジュールは以下の表4にリストする。Vは10mMのNaAc、pH4.0のビヒクルであった。Gは皮下注射群であった。Dは、デオキシコレートの存在下で調製された腸溶被覆リン酸カルシウム粒子中の経口G−CSFであった。
【0098】
【表4】

ラットを処理し、血液試料を0、4、8、12および26時間における所定の時点で吸い取った。赤血球細胞を溶解させ、顕微鏡を用いて全白血球細胞カウントを決定した。
【0099】
図1は各時点における白血球細胞のカウントを示す。注射された、および経口送達されたG−CSFについての曲線下面積を見積もり、経口送達されたG−CSFの生物−同等性は皮下経路の8.5%と見積もられた。
【0100】
(実施例7)
腸溶被覆インターフェロンアルファ(IFN)負荷リン酸カルシウムナノ粒子の製造
400mgのPEG(MW10000、Fluka)、1.3mLのIFN、6mLのBBS溶液、pH6.964、および2mLの125mM NaHPOを合計40mLの水溶液中で混合した。OD280は0.082であった。攪拌下で、600uLの2.5M CaClを加え、沈殿が直ちに観察された。攪拌を10分間継続し、粒子を15分間音波処理し、8000gにおいて10分間スピンダウンした。上清のOD280は0.033であった。捕獲効率は60%であった。真空下での乾燥の後、35.2mg粒子が回収された。
【0101】
IFN負荷リン酸カルシウムナノ粒子を腸溶ポリマーのセルロースアセテートフタレートで被覆した。32mgの粒子を、640uLの、95:5アセトン:エタノール中の5%セルロースアセテートフタレートに懸濁した。ボルテックスによって混合した後、20mLパラフィン油を攪拌しつつ加え、1分後に7.5mLのクロロホルムを加えた。被覆された粒子をWhatman濾紙(Chr 3mm)への濾過によって回収し、クロロホルムで洗浄した。被覆された粒子を真空下で乾燥し、粉砕した。
【0102】
(実施例8)
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子における経口IFNの生物学的利用性
動物。2匹の8ないし10週齢Sprague−Dawleyラットを換気された部屋に収容した。食物および水を自由に供給した。光サイクルは12時間毎に設定した。
【0103】
処理。1匹のマウスを、100uLの10mM NaAc、pH4.0中の皮下注射を介して160万IU IFNで処理した。他のラットを、1mLのビヒクル溶液中のリン酸カルシウム粒子中の1600万IU IFNでの胃管栄養に付した。
【0104】
血液試料を−0.5、0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20、24時間の所定の時点で吸い取った。血清をELISA分析のために貯蔵した。
【0105】
図2は各時点において血清IFNレベルを示す。注射された、および経口送達されたIFNについての曲線下面積を見積もり、経口送達されたIFNの生物学的利用性は皮下経路の10.2%と見積もられた。
【0106】
(実施例9)
腸溶被覆インスリン負荷リン酸カルシウムナノ粒子の製造
フミリン(Eli Lilly)を薬局で購入した。180mLのインスリン試料(642mg)を、Sephadex G−25カラム(4.6cm×100cm、1.7Lのベッド容量)にて蒸留水に交換した。OD280をモニターし、第一のピークを収集した。全300mL試料を回収し、OD280は2.022であった。
【0107】
5gのPEG(MW 10000、Fluka)、600mgのインスリン、1.6gのデオキシコレート、40mLのBBS溶液、pH6.964、19.2mLの125mM NaHPOを混合し、蒸留水で400mLに調整した。デオキシコレートを添加前に10mLのエタノールに溶解させた。OD280は1.868であった。攪拌下で、400mLの36mM CaClを混合し、形成された粒子を直ちに20nmのAnodisc膜に濾過した。濾液のOD280は0.022であって、カプセル化効率は98.2%であった。粒子を真空下で乾燥し、回収された粒子の全量は1.8gであった。
【0108】
蛋白質成分を省略した以外は同一の手法により、ブランクのナノ粒子を調製した。インスリン負荷リン酸カルシウムナノ粒子およびブランクのリン酸カルシウムナノ粒子双方を、Material Testing Labsによる走査型電子顕微鏡(SEM)調査に付した。SEMのイメージは図3Aおよび3Bに示す。ブランクのリン酸カルシウムナノ粒子は、平均直径が200nmである球形の単分散かつ中空形態を呈した(図3A)。対照的に、インスリン負荷リン酸カルシウムナノ粒子は、平均直径が約70nmの、球形および単分散形態を示した(図3B)。
【0109】
腸溶コーティングでは、0.5gのインスリン負荷リン酸カルシウムナノ粒子を、0.5gセルロースアセテートフタレートを含有する5mLのアセトン:エタノール(95:5)に懸濁させた。混合した後、15mLのパラフィン油を加え、混合し、続いて、50mLのクロロホルムを加えた。粒子をWhatman濾紙(Chr 3mm)への濾過によって集め、クロロホルムで洗浄した。粒子を真空下で乾燥し、均一なサイズまで粉砕した。1mg粒子からの放出インスリンを室温にて3時間1mLPBS中に採取することによって、インスリン含有量を測定した。標準としてのインスリンでのLowry蛋白質アッセイを用いて、放出媒体中のインスリン濃度を測定した。
【0110】
(実施例10)
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口インスリンの生物−同等性
動物モデル。35匹の8ないし10週齢Sprague−Dawleyラットを換気された部屋に収容した。食物および水を自由に供給した。光サイクルを12時間毎に設定した。
【0111】
ラットを20mMクエン酸緩衝液、pH4.5中の60mg/kgストレプトゾシンで腹腔内注射した。ストレプトゾシンから8時間後に、1mLの5%グルコースを腹腔内投与した。2週間後に、絶食血中グルコースレベルを測定した。絶食血中グルコースは24匹のラットにおいて>300mg/D1であり、これを引き続いての試験で用いた。
【0112】
処理。16匹のラットを任意に3つの群に分けた。インスリン溶液(OI−50、「Control」)、およびインスリン注射(SCI−5、「注射」)群は共に、各々、4匹の糖尿病ラットを有した。処理群(PO−50、「Oral」)を8匹のラットを有した。対照群には0.5mLのビヒクル溶液中の50IUインスリン/kgを経口にて与えた。注射群は0.5mLビヒクル中の5IUインスリン/kgでの皮下注射を受けた。他の群には0.5mLビヒクル溶液中の腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中に処方した50IUインスリン/kgを経口で与えた。ビヒクル溶液は10mM酢酸、pH4.0中の2%カルボキシメチル−セルロースであった。
【0113】
【表5−1】

一晩絶食させた後、ラットを処理し、0、1、3、6、12および24時間の時点で尾静脈を介して血液試料を吸い取った。血中グルコースをグルコメーター(SureStep)で測定した。
【0114】
図4は、糖尿病ラットにおける経口または皮下インスリンでの処理の後における各時点のパーセント血中グルコース変化を示す。皮下インスリンは血中グルコースレベルを迅速に降下させ、12時間以内に正常に戻した。リン酸カルシウム粒子を送達した経口インスリンは、より徐々にかつ延長された血中グルコース低下効果を示した。傾向インスリンの生物−同等性は皮下インスリンと比べて12%であった。
【0115】
(実施例11)
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口インスリンによる健康なボランティアでの血中グルコースの低下
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口インスリンの効果を評価するために、2人の健康なヒトボランティアを試験した。標準グルコース許容性試験を行った。各ボランティアを12時間を超えて絶食させ、68gのグルコースを摂取させた。血中グルコースを、グルコース摂取に関して、−30、0、30、60、90、120、150および180分においてSureStepグルコメーターで測定した。測定の2つのサイクルを各ボランティアに対して行った。第一のサイクルはベースラインを確立するための標準グルコース許容性試験であった。各ボランティアは、第二のサイクルの間に、−30分において腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の200U経口インスリンを摂取した。
【0116】
第一のボランティアにおける血中グルコース変化を図5Aに示す。腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子を介して送達された経口インスリンはピークおよびトラフ血中グルコースレベルを共に低下させた。
【0117】
第二のボランティアにおけるパーセント血中グルコース変化を図5Bに示す。腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子を介して送達された経口インスリンはピーク血中グルコースレベルを低下させ、測定期間を通じて血中グルコース曲線を降下させた。
【0118】
この実験は、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口インスリンがヒト対象において活性であり、血中グルコースを低下させることを示す。測定の間に有害反応は記録されなかった。
【0119】
(実施例12)
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口インスリンによる糖尿病患者の絶食血中グルコースの制御
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口インスリンの可能性を、さらに、糖尿病患者で評価した。その血中測定レベルを制御するために規則的にインスリン処置を受けた19人のII型糖尿病患者を実験のために募った。3サイクルの評価を各患者で行った。
【0120】
第一のサイクルにおいては、各患者を12時間を超えて絶食した。血中グルコースレベルを30分毎に翌朝測定した。SureStepグルコメーターを用いて、血中グルコースレベルを測定した。ベースラインを確立させるためにこのサイクルにおいて処理は行わなかった。
【0121】
第二のサイクルにおいて、各患者を12時間を超えて絶食させた。翌朝30分毎に血中グルコースレベルを測定した。SureStepグルコメーターを用いて、血中グルコースレベルを測定した。各患者にはこのサイクルにおいては時間0で10IUフムリン皮下注射を与えた。
【0122】
第三のサイクルにおいては、各患者を12時間を超えて絶食させた。血中グルコースレベルを翌朝30分毎に測定した。SureStepグルコメーターを用いて、血中グルコースレベルを測定した。腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の100IUまたは200IU経口インスリンいずれかをこのサイクルにおいて時間0に各患者に与えた。
【0123】
各患者についての測定の順序は任意であり、次のサイクル前で経口インスリン測定後に48時間の洗浄期間があった。実験の後に、ベースライン測定のための17の使用可能な患者データがあり、インスリン注射について19の患者データがあり、100IU経口インスリン処理について6つの患者データがあり、200IU経口インスリン処理について11の患者データがある。
【0124】
測定の各サイクルにおけるパーセント血中グルコース変化を図6に示す。処理なくして、血中グルコースレベルを上昇させ、観察期間の間に比較的安定に維持された。インスリン注射が血中グルコースの劇的な低下を生じた。事実、7名の患者は低血糖症を発症し、その血中グルコースレベルは50mg/dL未満まで降下し、経口グルコースで処理しなければならなかった。対照的に、100IUまたは200IU経口インスリンを摂取した患者は、ベースラインと比較して徐々ではあるが統計学的に有意な血中グルコースレベルの低下を示した。加えて、200IU経口インスリンで処理した患者は血中グルコースのより大きな低下を示した。
【0125】
本実験は、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口インスリンが、糖尿病患者において血中グルコースレベルを効果的にかつ用量−依存的に制御できることを示す。
【0126】
(実施例13)
腸溶被覆ヒト成長ホルモン(hGH)負荷リン酸カルシウムナノ粒子の製造
hGH試料を、Sephadex G25脱塩カラムにて、蒸留水に交換した。hGHの量をOD280測定および0.68の光学係数にて計算した。200mgのPEG(MW10000、Fluka)、84mgのhGH、12mMホスフェート、および320mgのデオキシコレートを40mLの溶液に溶解させた。OD280は1.307と測定された。攪拌下で、40mLの72mM CaClを混合し、沈殿を直ちに20nmのAnodisc膜(Whatman)に濾過した。濾液のOD280は0.039であった。粒子を真空下で乾燥し、捕獲効率は、粒子形成の前および後でのOD280測定に基づいて95%であった。
【0127】
腸溶被覆のために、300mgのhGH負荷リン酸カルシウムナノ粒子を、4mLの、95:5アセトン:エタノール中の10%セルロースアセテートフタレートに懸濁させた。混合の後に、6mLのパラフィン油を加え、混合し、続いて18mLのクロロホルムを加えた。粒子をWhatman紙(Chr 3mm)に濾過し、クロロホルムで洗浄した。粒子を真空下で乾燥し、均一なサイズまで粉砕した。
【0128】
1mgの粒子を1mLのPBSに加え、室温にて3時間インキュベートすることによって、hGH含有量を測定した。標準としてのhGHでのLowry蛋白質アッセイを用いて、放出媒体中のgGHの濃度を測定した。
【0129】
(実施例14)
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口ヒト成長ホルモンによる体重増加の促進
腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の経口hGH活性を下垂体切除ラットで試験し、これは成長ホルモン活性についての標準的なアッセイである。
【0130】
動物モデル。下垂体切除外科的処置を受けた20匹の6週齢Sprague−Dawleyラット(Taconic Farms)を換気された部屋に収容した。食物および水を自由に供給した。光サイクルを12時間毎に設定した。各ラットの体重を毎日モニターした。
【0131】
処理。20匹のラットを任意に3つの群に分けた。各々、ビヒクルおよび注射群に4匹の動物とした。処理群は12匹のラットを有した。ビヒクル群をパラフィン油で処理した。ラットを毎朝処理し、体重を毎夕方測定した。
【0132】
【表5−2】

図7は、下垂体切除ラットにおける経口または皮下hGHでの処理の後における正味の体重増加を示す。皮下hGHの結果、実質的に正味の体重増加が得られ、他方、ビヒクル処理は体重のわずかな低下を生じる。腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子で送達された経口hGHは有意な体重を生じ、これは、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子における経口hGHが生物学的に活性であることを示す。
【0133】
(実施例15)
副甲状腺ホルモン(PTH)負荷リン酸カルシウムナノ粒子の製造
副甲状腺ホルモン1−34(PTH)を、Sephadex G25脱塩カラムにて、蒸留水に交換した。400mgのPEG(MW 10000、Fluka)、6mLのBBS溶液、pH6.964、および2mLの125mMのNaHPOを40mLの溶液中で混合した。OD280は0.082として測定された。攪拌下で、600uLの2.5M CaClを加えた。沈殿が直ちに観察され、粒子を8000gにて10分間スピンダウンした。上清のOD280は0.033であった。粒子を真空下で乾燥した。捕獲効率は、粒子形成の前および後におけるOD280測定に基づいて59%と見積もられた。
【0134】
(実施例16)
BCG負荷リン酸カルシウムナノ粒子の多糖&核酸抽出物の製造
Bacillus Calmette−Guerin(BCG−PSN)の多糖および核酸抽出物は免疫変調活性を有する。BCG−PSNは多糖および核酸を共に含有し、これを用いて、化合物のこのクラスにおけるリン酸カルシウムナノ粒子の利用性を示す。
【0135】
BCG−PSNはChengdu Rongsheng Pharmaceutical Ltd.(Chengdu China)から粉末形態を得られた。1mgのBCG−PSN、50mgのPEG(Fluka、MW10000)0.25mLのBBS、pH6.964、および0.75mLの125mM NaHPOを20mLの溶液に混合した。OD260は0.22であって、多糖含有量はAnthrone方法によって測定した。
【0136】
攪拌下で、75uLの5M CaClを加え、室温にて1時間、攪拌を継続した。粒子を8000gにおいて10分間スピンダウンした。上清のOD260は0.0であって、多糖の濃度は22.1ug/mLであった。カプセル化効率は核酸成分については100%であって、多糖成分については約63%であった。粒子を真空下で乾燥した。
【0137】
前記実施例は説明目的のためだけに含め、本発明の範囲を限定する意図のものではない。前記したものに対する多くの変形は可能である。前記した実施例に対する修飾および変形は当業者に明らかであるため、本発明は添付の請求の範囲の範囲によってのみ制限されることを意図する。
【0138】
【表6−1】

【0139】
【表6−2】

【0140】
【表6−3】

【0141】
【表6−4】

【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子(「D」)中のビヒクル(「V」)、G−CSF sc注射(「G」)または経口G−CSFで処理されたラットにおける白血球細胞カウントを示すグラフである。
【図2】図2は、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子(「O16M」)中のインターフェロンsc注射(「SC1.6M」)または経口インターフェロンでの処理の後における、ラットでの血清中インターフェロン濃度を示すグラフである。
【図3】図3は、走査型電子顕微鏡下でのリン酸カルシウムナノ粒子のイメージを示す。図3Aは、5000倍率におけるブランクリン酸カルシウムナノ粒子のイメージを示す。図3Bは、5000倍率におけるインスリン負荷リン酸カルシウムナノ粒子のイメージを示す。
【図4】図4は、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子(「Oral」)中の経口インスリン溶液(「Control」)、皮下インスリン注射(「Injection」)および経口インスリンで処理された糖尿病ラットにおけるパーセント血中グルコース変化を示すグラフである。
【図5】図5Aは、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の200IUを含む(「Oral Insulin」)または含まない(「No Rx」)68g経口グルコース摂取後の健康なボランティア1での血中グルコース変化を示すグラフである。図5Bは、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の200IU経口インスリンを含む(「Oral Insulin」)または含まない(「No Rx」)68g経口グルコース摂取後における健康なボランティア2でのパーセント血中グルコース変化を示すグラフである。
【図6】図6は、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子中の処理無し(「Blank」)、10 IUインスリン注射(「SC10」)、または100IU(「PO100」)または200IU(「PO200」)経口インスリンを受けた糖尿病を持つボランティアでのパーセント血中グルコースを示すグラフである。
【図7】図7は、腸溶被覆リン酸カルシウムナノ粒子(「PO50」)中のビヒクル(「V」)、成長ホルモン注射(「SC20」)または経口成長ホルモンで処理された下垂体切除ラットでの正味の体重増加を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)リン酸カルシウムナノ粒子のコア;
b)該コア粒子にカプセル化された生物学的に活性なマクロ分子;および
c)該コア粒子にカプセル化された胆汁酸を含む表面修飾剤;
を含む粒子。
【請求項2】
該コア粒子の直径が約300nm未満である請求項1記載の粒子である。
【請求項3】
該胆汁酸がコレート、デオキシコレート、タウロコレート、グリココレート、タウロデオキシコレート、ウルソデオキシコレート、タウロウルソデオキシコレート、およびケノデオキシコレートよりなる群から選択される請求項1記載の粒子。
【請求項4】
該粒子が、さらに、腸溶コーティングを含む請求項1記載の粒子。
【請求項5】
該生物学的に活性なマクロ分が、蛋白質、ポリペプチド、多糖、核酸、ポリヌクレオチド、脂質、および炭水化物よりなる群から選択される請求項1記載の粒子。
【請求項6】
該蛋白質または該ポリペプチドが、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、および顆粒球コロニー−刺激因子(G−CSF)よりなる群から選択される請求項5記載の粒子。
【請求項7】
該生物学的に活性なマクロ分子が、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、およびG−CSFよりなる群から選択される請求項4記載の粒子。
【請求項8】
該生物学的に活性なマクロ分子が、家塵ダニ、動物フケ、黴、花粉、ブタクサ、ラテックス、スズメバチ毒および昆虫−由来アレルゲン、およびそのいずれかの組合せよりなる群から選択されるアレルゲンである請求項1記載の粒子。
【請求項9】
該粒子がエアロゾルの形態に適合される請求項1記載の粒子。
【請求項10】
該粒子が、生物学的に活性なマクロ分子を粘膜表面に送達するように適合される請求項1記載の粒子。
【請求項11】
該粒子が、目の障害の治療のためにそれを必要とする対象の目の表面に生物学的に活性なマクロ分子を送達するように適合される請求項1記載の粒子。
【請求項12】
請求項1記載の粒子および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項4記載の粒子および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項7記載の粒子および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
リン酸カルシウムの1以上の粒子の製造方法であって、該方法は:
a)胆汁酸を含む表面修飾剤の存在下でカルシウム塩の水溶液をリン酸塩の水溶液と接触させ;
b)所望のサイズのリン酸カルシウム粒子が得られるまで溶液を混合し;次いで、
c)粒子を回収する;
ことを含む該製法。
【請求項16】
該カルシウム塩の濃度が約5mMおよび約200mMの間である請求項15記載の製法。
【請求項17】
該リン酸塩の濃度が約5mMおよび約200mMの間である請求項15記載の方法。
【請求項18】
該粒子が300nm未満の直径を有する請求項15記載の方法。
【請求項19】
さらに、胆汁酸を含む表面修飾剤の存在下で、カルシウム塩の水溶液をリン酸塩の水溶液と接触させる前に、リン酸塩の水溶液またはカルシウム塩の水溶液に生物学的に活性なマクロ分子を加えることを含み、ここで、リン酸カルシウム粒子はマクロ分子と共結晶化される請求項15記載の方法。
【請求項20】
該胆汁酸が、コレート、デオキシコレート、タウロコレート、グリココレート、タウロデオキシコレート、ウルソデオキシコレート、タウロウルソデオキシコレート、またはケノデオキシコレートよりなる群から選択される請求項14記載の製法。
【請求項21】
生物学的に活性なマクロ分子を必要とする対象を治療する方法であって、該方法は、請求項1記載の医薬組成物を対象に投与することを含む該方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−522228(P2007−522228A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553232(P2006−553232)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/004247
【国際公開番号】WO2005/084637
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506274305)ノッド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】