説明

レシートプリンタ

【課題】搬送不良の発生前に使用中の用紙を回収して別のホッパの用紙を自動的に供給してレシート発行の処理動作を継続すること。
【解決手段】ロール状に巻回された用紙2,3,4を格納する複数のホッパ5,6,7毎に用紙送り出し手段8,9,10と用紙巻き戻し手段11,12,13を設ける。用紙をレシート取出口18に導く下流側用紙搬送経路19上で切断済みの用紙58の全長を測長し、適性状態で切断される用紙の全長と比較することにより搬送不良の発生の有無を予測し、搬送不良の発生が有ると予測された場合には其の時点で選択されているホッパの用紙巻き戻し手段を作動させて使用中の用紙をホッパに回収すると共に他のホッパの1つを選択して其の用紙送り出し手段を作動させることにより搬送不良の発生前に使用中の用紙を回収して別のホッパの用紙を自動的に供給してレシート発行の処理動作を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回された用紙を引き出して先端から順に印字処理を行ない切断して排出するようにしたレシートプリンタの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻回された用紙を複数個投入して利用するようにしたレシートプリンタとしては既に様々なものが公知である。
【0003】
特許文献1に開示されるレシートプリンタは、上下方向に連通するホッパにロール状の用紙を重ねて投入し、下段から順にロール状の用紙を消費していくものに過ぎず、用紙の搬送不良を検出するための手段は特に備えていない。
また、仮に、用紙の搬送不良を検出するための手段を併設したとしても、ホッパの下段側に位置するロールのみから用紙が送り出される構造であるため、下段側の用紙ロールに変形等の不都合が生じて用紙の送り出しに不都合が生じたような場合には、予備のロールがホッパ内に有るにも関わらず此れを有効に使用することは全くできない。
【0004】
特許文献2に開示される印刷装置は用紙を巻き取ることは可能だが、供給用のロール紙のスプールと回収用のスプールとが別体であり、ロール紙の搬送方向は一方向に制限されるので、ロール紙の使用中に搬送不良が生じたとしても、別のロール紙を使用して処理を継続するといったことはできない。
仮に、回収用のスプールに供給用のロール紙の全てを巻き取ることが可能であったとしても、もともと予備ロール紙をホッパ内に貯溜する構造ではないので、用紙の自動交換は不可能であり、そもそも、用紙の搬送不良が生じた状態で回収用のスプールに用紙を巻き取り続けることができないであろう。
ロール紙の残量を検出してロールの交換作業を利用者に促す点に関しては特許文献2に開示があるが、その交換作業は飽くまでも利用者の手動操作で行われるものに過ぎない。
特許文献2に開示される印刷装置は供給用のロール紙を回収用のスプールに巻き取る構造であるから、当然、印字処理を行なった部分を切断して排出するようにしたレシートプリンタに其の構造を転用することはできない。
【0005】
特許文献3に開示される処理装置では、搬送速度と搬送距離から予測される用紙の搬送所要時間に基いて用紙詰まりを検知する点に関しての記載が認められる。
但し、この処理装置はトレイに入れられた単票の用紙に対して処理を行なうものであるため、用紙詰まりが検出されても用紙を自動的に取り除いたり別の用紙を選択したりして処理を継続することはできず、処理装置を停止させて手動で用紙詰まりを解消する必要がある。
【0006】
特許文献4に開示されるロール紙の自動供給装置は、供給用のロール紙を回収用のスプールに巻き取りながら処理を行なう点で特許文献2に開示される印刷装置と同等であり、また、上下方向に連通するホッパにロール状の用紙を重ねて投入し、下段から順にロール状の用紙を消費していく点では特許文献1に開示されるレシートプリンタと同等である。
特許文献4に開示されるロール紙の自動供給装置はホッパ内に貯溜された予備のロール紙を新たな使用対象としてセットするためのオートローディング機構を備えているが、オートローディングが可能なのはホッパの下段側に位置するロールが使い切られた場合のみであり、下段側の用紙ロールに変形等の不都合が生じて用紙の送り出しに不都合が生じたような場合には、予備のロールがホッパ内に有っても此れを使用することはできない。
特許文献2に開示される印刷装置と同様に供給用のロール紙を回収用のスプールに巻き取る構造であるから、当然、印字処理を行なった部分を切断して排出するようにしたレシートプリンタに其の構造を転用することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−172828号公報(図1)
【特許文献2】特開2008−143605号公報(段落0028,0045)
【特許文献3】特開2009−28908号公報(段落0053)
【特許文献4】特開平4−310773号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、用紙の搬送不良の発生を未然に予測し、搬送不良が発生する可能性がある場合には搬送不良の発生前に使用中の用紙を回収して別のホッパの用紙を自動的に供給してレシート発行の処理動作を継続することのできるレシートプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレシートプリンタは、ロール状に巻回された用紙を引き出して先端から順に印字処理を行ない切断して排出するようにしたレシートプリンタであり、前記目的を達成するため、特に、
ロール状に巻回された用紙を格納する複数のホッパと、各ホッパに格納された用紙の先端を送り出す各ホッパ毎の用紙送り出し手段と、用紙をロールに巻回して巻き戻す各ホッパ毎の用紙巻き戻し手段と、選択されたホッパから送り出された用紙を印字ヘッドに導く上流側用紙搬送経路に配置された上流側用紙搬送手段と、上流側用紙搬送経路の下流側端部に設けられた用紙カッターと、用紙カッターで切断された用紙をレシート取出口に導く下流側用紙搬送経路に配置された下流側用紙搬送手段と、切断された用紙の全長を下流側用紙搬送経路上で測長する測長手段と、適性状態で切断される用紙の全長を記憶した基準長記憶手段と、前記測長手段で測長された用紙の全長と前記基準長記憶手段に記憶された用紙の全長を比較して搬送不良の発生の有無を予測する異常予測手段と、前記異常予測手段によって搬送不良の発生が有ると予測されると其の時点で選択されているホッパの用紙巻き戻し手段を作動させて使用中の用紙を上流側用紙搬送経路からホッパに回収すると共に他のホッパの1つを選択して其のホッパの用紙送り出し手段を作動させることにより当該ホッパに格納された用紙の先端を上流側用紙搬送経路に送り出す用紙再選択手段を備えたことを特徴とする構成を有する。
【0010】
また、前記と同様の目的を達成するため、前記測長手段と基準長記憶手段に代えて、印字ヘッドの駆動が開始されてから用紙カッターが作動するまでの間の上流側用紙搬送手段の送り速度の平均値を求める平均値算出手段と適性状態で検出される上流側用紙搬送手段の送り速度の平均値を記憶した平均値記憶手段とを設け、平均値算出手段で求められた平均値と平均値記憶手段に記憶された平均値を比較して異常予測手段が搬送不良の発生の有無を予測するように構成してもよい。
【0011】
あるいは、前記測長手段と基準長記憶手段に代えて、印字ヘッドの駆動が開始されてから用紙カッターが作動するまでの間の上流側用紙搬送手段の駆動トルクの平均値を求める平均値算出手段と適性状態で検出される上流側用紙搬送手段の駆動トルクの平均値を記憶した平均値記憶手段とを設け、平均値算出手段で求められた平均値と平均値記憶手段に記憶された平均値を比較して異常予測手段が搬送不良の発生の有無を予測するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレシートプリンタは、ロール状に巻回された用紙を格納する複数のホッパ毎に用紙送り出し手段と用紙巻き戻し手段を設け、用紙をレシート取出口に導く下流側用紙搬送経路上で切断済みの用紙の全長を測長して適性状態で切断される用紙の全長と比較すること、または、上流側用紙搬送手段の送り速度の平均値と適性状態で検出される上流側用紙搬送手段の送り速度の平均値とを比較すること、あるいは、上流側用紙搬送手段の駆動トルクの平均値と適性状態で検出される上流側用紙搬送手段の駆動トルクの平均値とを比較することにより搬送不良の発生の有無を予測し、搬送不良の発生が有ると予測された場合には、其の時点で選択されているホッパの用紙巻き戻し手段を作動させて使用中の用紙をホッパに回収すると共に他のホッパの1つを選択して其のホッパの用紙送り出し手段を作動させることにより当該ホッパに格納された用紙の先端を上流側用紙搬送経路に送り出すようにしたので、搬送不良の発生前に使用中の用紙を自動的に回収して別のホッパの用紙を供給してレシート発行の処理動作を継続することができる。
従って、ジャミングの発生を未然に防止してレシート発行の処理動作を継続することが可能となり、レシートプリンタや其の上位装置の機能が不用意に停止するといった不都合が改善され、また、レシートプリンタを継続して稼動させるためにオペレータが頻繁にレシートプリンタの動作状況をチェックするといった煩わしさもなくなる。
しかも、搬送不良が発生した状態で各部のモータや駆動機構に過剰な負荷が作用することもなくなるので、レシートプリンタの機械的なダメージも未然に防止され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した一実施形態のレシートプリンタのハードウェア構成について簡略化して示した側断面図である。
【図2】同実施形態のレシートプリンタの制御部について簡略化して示したブロック図である。
【図3】同実施形態のレシートプリンタの制御部に設けられたマイクロプロセッサによって実行される処理の概略について示したフローチャートである。
【図4】同実施形態のレシートプリンタの制御部に設けられたマイクロプロセッサによって実行される処理の概略について示したフローチャートの続きである。
【図5】同実施形態のレシートプリンタの制御部に設けられたマイクロプロセッサによって実行される処理の概略について示したフローチャートの続きである。
【図6】同実施形態のレシートプリンタの制御部に設けられたマイクロプロセッサによって実行される処理の概略について示したフローチャートの続きである。
【図7】選択順序記憶手段として機能する不揮発性メモリに設けられた選択順序記憶テーブルの構成を示した概念図である。
【図8】用紙の送りと印字および切断と測長ならびに用紙の巻き戻しに関わる動作の概要を示した作用原理図であり、図8(a)は印字開始位置に用紙の先端が位置決めされた状態、図8(b)は印字が完了した状態、図8(c)は印字ヘッドを基準として図8(b)の印字完了位置から用紙の全長Bと印字長Aの差分B−Aに相当する距離だけ用紙に送りを掛けた状態、図8(d)は印字ヘッドを基準として図8(b)の印字完了位置から用紙の全長Bと印字長Aの差分B−Aおよび印字ヘッドと用紙カッターの離間距離Cに相当する距離B−A+Cだけ用紙に送りを掛けて用紙の先端を切断した状態、図8(e)は切断された用紙が搬送されて測長されるときの状態、図8(f)は次の印字動作を開始するための位置決め動作が完了した状態、図8(g)は異常の発生が予測されて巻き戻される過程にある用紙の状態について示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について一例を挙げ、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明を適用した一実施形態のレシートプリンタのハードウェア構成について簡略化して示した側断面図、図2は同実施形態のレシートプリンタの制御部について簡略化して示したブロック図である。
【0016】
本実施形態のレシートプリンタ1は、ロール状に巻回された用紙を引き出して先端から順に印字処理を行ない切断して排出するレシートプリンタであり、図1に示されるように、ロール状に巻回された用紙2,3,4を格納する複数のホッパ5,6,7と、各ホッパ5,6,7に格納された用紙2,3,4の先端を送り出す各ホッパ5,6,7毎の用紙送り出し手段8,9,10と、用紙をロールに巻回して巻き戻す各ホッパ毎の用紙巻き戻し手段11,12,13と、選択された何れかのホッパから送り出された用紙を印字ヘッド14に導く略L字型の上流側用紙搬送経路15と、上流側用紙搬送経路15に沿って配置された上流側用紙搬送手段16と、上流側用紙搬送経路15の下流側端部に設けられた用紙カッター17と、用紙カッター17で切断された用紙をレシート取出口18に導く下流側用紙搬送経路19と、下流側用紙搬送経路19に沿って配置された下流側用紙搬送手段20を備える。
【0017】
このうち、用紙送り出し手段8,9,10の各々は、各ホッパ5,6,7に格納された用紙2,3,4の先端を上流側用紙搬送手段16に導くための接続路21,22,23の内部に突入して設けられた搬送ローラ24,25,26と、各搬送ローラ24,25,26を回転駆動する図2中の送り出しモータm1,m2,m3によって構成され、各搬送ローラ24,25,26よりも僅かに下流側の接続路21,22,23上の位置には、用紙2,3,4の有無を確認するための用紙確認センサSR1,SR2,SR3が配置されている。
【0018】
また、用紙巻き戻し手段11,12,13の各々は、各ホッパ5,6,7に格納されたロール状の用紙2,3,4の中空部に嵌合するスプール27,28,29と、各スプール27,28,29を回転駆動する図2中の巻き戻しモータM1,M2,M3によって構成される。
【0019】
上流側用紙搬送手段16は、プーリ30,31と、プーリ30,31に巻回されて上流側用紙搬送経路15の内部に突入する搬送ベルト32と、プーリ30,30を同方向に回転駆動する図2中の上流側搬送モータM02、および、上流側搬送モータM02とプーリ30,30との間の物理的な接続を係脱するクラッチCRによって構成される。
【0020】
上流側用紙搬送経路15の下流側端部に設けられた用紙カッター17は、図2のカッター駆動ソレノイドSOLによって上下方向に駆動され、先端のカッティングエッジで用紙を切断するようになっている。
【0021】
下流側用紙搬送手段20は、プーリ33,34と、プーリ33,34に巻回されて下流側用紙搬送経路19の内部に突入する搬送ベルト35と、プーリ33を回転駆動する図2中の下流側搬送モータM01によって構成される。
【0022】
図1中の符号S1は上流側用紙搬送経路15に沿って送られてくる用紙の先端を検出するための先端検出センサであり、印字ヘッド14よりも僅かに上流側に配置されている。
【0023】
また、図1中の符号S2は下流側用紙搬送経路19に沿って送られてくる切断済みの用紙の先端を検出するための用紙検出センサであり、用紙カッター17よりも下流に位置する下流側用紙搬送経路19上に配置されている。
用紙検出センサS2は、切断された用紙の全長を測長する測長手段の一部として機能する。
【0024】
この実施形態にあっては上流側用紙搬送手段16および下流側用紙搬送手段20をベルト式の搬送手段によって構成しているが、これらのものはローラ式の搬送手段であっても構わない。
【0025】
レシートプリンタ1の各部を駆動制御する制御部37はレシートプリンタ1のアウターケーシング36に内蔵されており、その主要部は、図2に示されるように、演算処理用のマイクロプロセッサ38(以下、単にCPU38という)と、CPU38の制御プログラムを格納したリード・オンリー・メモリ39(以下、単にROM39という)と、各種のパラメータを記憶するための不揮発性メモリ40と、データの一時記憶等に利用されるランダム・アクセス・メモリ(以下、単にRAM41という)等によって構成される。
【0026】
制御部37は、更に、上位装置たとえば銀行に配置されたホストコンピュータやATM本体等との間でデータの遣り取りを行なうための入出力インターフェイス43と、オペレータが簡単な入力操作を行なうための手動操作盤42(ディップスイッチ等でもよい)と、オペレータに注意を促すためのアラームランプ44等を備える。
【0027】
用紙送り出し手段8,9,10の搬送ローラ24,25,26を回転駆動する送り出しモータm1,m2,m3および用紙巻き戻し手段11,12,13のスプール27,28,29を回転駆動する巻き戻しモータM1,M2,M3は、各々のモータ駆動回路46,47,48,49,50,51と制御部37の入出力回路45を介してCPU38によって駆動制御される。
【0028】
下流側用紙搬送手段20のプーリ33,34と搬送ベルト35を回転駆動する下流側搬送モータM01、および、上流側用紙搬送手段16のプーリ30,31と搬送ベルト32を回転駆動する上流側搬送モータM02は、各々のモータ駆動回路52,53と制御部37の入出力回路45を介してCPU38によって駆動制御される。
【0029】
上流側搬送モータM02とプーリ30,30との間の物理的な接続を係脱するクラッチCRは、クラッチ駆動回路54と制御部37の入出力回路45を介してCPU38によってオン/オフ制御される。
この実施形態では、クラッチCRをオンとした状態で上流側搬送モータM02とプーリ30,30が物理的に接続され、クラッチCRをオフとした状態で上流側搬送モータM02とプーリ30,30との接続が切り離されるようになっている。
【0030】
また、印字ヘッド14はヘッド駆動回路55と制御部37の入出力回路45を介してCPU38によって駆動制御され、用紙カッター17を上下動させるカッター駆動ソレノイドSOLもソレノイド駆動回路56と制御部37の入出力回路45を介してCPU38によって駆動制御される。
【0031】
接続路21,22,23上に配置された用紙確認センサSR1,SR2,SR3が用紙の存在を確認した時に出力する各用紙確認センサSR1,SR2,SR3毎の用紙確認信号、上流側用紙搬送経路15上に配置された先端検出センサS1が用紙の先端を検出した時に出力する先端検出信号、下流側用紙搬送経路19上に配置された用紙検出センサS2が切断された用紙の存在を確認する間だけ出力する用紙検出信号の各々は、制御部37の入出力回路45を介してCPU38に読み込まれるようになっている。
【0032】
また、手動操作盤42を介して入力される設定は、入出力回路45を介してCPU38に読み込まれ、不揮発性メモリ40に記憶される。
【0033】
この実施形態にあっては、不揮発性メモリ40が、適性状態で切断される用紙の全長Bを記憶する基準長記憶手段、および、搬送異常の発生が予測された際に利用すべきホッパの選択順序を記憶する選択順序記憶手段としても機能する。
【0034】
図7は選択順序記憶手段として機能する不揮発性メモリ40に設けられた選択順序記憶テーブル57の構成を示した概念図である。
選択順序記憶テーブル57中ではホッパ番号1が図1中のホッパ5を表し、ホッパ番号2が図1中のホッパ6を表し、ホッパ番号3が図1中のホッパ7を表している。
フラグF1,F2,F3は各ホッパ5,6,7が使用可能状態にあるか否かを示すフラグであり、フラグがセットされた状態でホッパの使用可能状態を表し、フラグがリセットされた状態でホッパの使用不能状態を表す。
ホッパ5(ホッパ番号1),ホッパ6(ホッパ番号2),ホッパ7(ホッパ番号3)の選択順序は図示例では1,2,3となっているが、この選択順序は手動操作盤42からの入力操作で自由に設定が可能である。
【0035】
不揮発性メモリ40には、適性状態で切断される用紙の全長Bや選択順序記憶テーブル57の他、下流側用紙搬送手段20の設計上の用紙送り速度や、上流側用紙搬送経路15に沿って上流側から先端検出センサS1の位置まで送られた用紙の先端を更に印字ヘッド14の位置まで移動させるために必要とされる上流側用紙搬送手段16の駆動量つまり上流側搬送モータM02に与えるべき駆動指令パルスの値、更には、基準長記憶手段である不揮発性メモリ40に記憶された用紙の全長Bに対する切断済み用紙の実測長Dの比率D/Bに基いて異常予測手段が搬送不良の発生の有無を予測する際に利用する許容範囲の下限値ε1と上限値ε2、および、比率D/Bの値が連続的に許容範囲を外れても用紙の搬送に支障なしとして許容する連続逸脱回数の許容値nの値、印字ヘッド14と用紙カッター17の離間距離C等がパラメータとして記憶されている。
【0036】
アラームランプ44はCPU38からの指令によって点灯もしくは点滅される。
【0037】
図3〜図6は制御部37のCPU38によって実行される処理の概略について示したフローチャート、また、図8(a)〜図8(g)は用紙の送りと印字および切断と測長ならびに用紙の巻き戻しに関わる動作の概要を示した作用原理図である。
【0038】
次に、図3〜図6のフローチャートおよび図8(a)〜図8(g)の作用原理図を参照して本実施形態のレシートプリンタ1の全体的な処理動作、特に、測長手段の主要部,異常予測手段,用紙再選択手段として機能するCPU38の処理動作について具体的に説明する。
【0039】
レシートプリンタ1に電源が投入されると、CPU38は、まず、選択順序記憶手段として機能する不揮発性メモリ40にアクセスし、選択順序記憶テーブル57にホッパの選択順序が既に設定されているか否かを判定し(ステップa1)、ホッパの選択順序が設定されていなければ、更に、オペレータによる手動操作盤42の操作によって選択順序が入力されているか否かを判定する(ステップa2)。
【0040】
そして、選択順序も入力されていなければ、ステップa1〜ステップa2の判定処理を繰り返し実行しつつ、オペレータがホッパの選択順序を入力するのを待機し、手動操作盤42の操作によってオペレータがホッパの選択順序を入力すると、この操作をステップa2の判定処理で検知し、入力された選択順序を不揮発性メモリ40の選択順序記憶テーブル57に格納する(ステップa3,図7参照)。
【0041】
ホッパの選択順序の設定が完了してステップa1の判定結果が真となると、CPU38は、入出力回路45を介して用紙確認センサSR1,SR2,SR3からの用紙確認信号の全てが入力されているか否かを判定し(ステップa4)、用紙確認信号を入力していない用紙確認センサが1つでもあれば、入出力回路45を介してアラームランプ44を点灯もしくは点滅させて初期設定操作に不備があることをオペレータに知らせる(ステップa5)。
【0042】
これを受けたオペレータは、ホッパ5,6,7の各々にロール状に巻回された用紙2,3,4を正しくセットし、用紙2,3,4の先端を接続路21,22,23の内部に引き出し、更に、搬送ローラ24,25,26を経て用紙確認センサSR1,SR2,SR3の位置にまで用紙2,3,4の先端を導き出す。
用紙の先端を正しくセットしたときの状態は図1中の用紙3,4によって示される通りである(図1中の用紙2は上流側用紙搬送経路15の途中まで用紙が引き出された状態を示したものであって初期設定操作の完了状態を示したものではない)。
【0043】
ホッパ5,6,7の各々に用紙2,3,4が正しくセットされて用紙確認センサSR1,SR2,SR3からの用紙確認信号の全てが入力されたことがステップa4の判定処理で確認されると、CPU38は、アラームランプ44を消灯し(ステップa6)、不揮発性メモリ40の選択順序記憶テーブル57にフラグF1,F2,F3をセットして、ホッパ番号1,2,3で表される全てのホッパ5,6,7に用紙2,3,4が正しくセットされたことを記憶する(ステップa7,図7参照)。
【0044】
次いで、CPU38は、ホッパの選択順位の初期値である値1を選択順位特定指標jにセットし(ステップa8)、選択順位特定指標jの現在値に対応するホッパ番号を図7の選択順序記憶テーブル57から読み込み、選択ホッパ記憶レジスタR1に記憶させる(ステップa9)。
この段階ではj=1であるから、図7の選択順序記憶テーブル57の例に従えば、選択順位の初期値である値1に対応するホッパ番号1が選択ホッパ記憶レジスタR1に記憶されることになる。なお、ホッパ5(ホッパ番号1),ホッパ6(ホッパ番号2),ホッパ7(ホッパ番号3)の選択順序を自由に設定できることは既に述べた通りであり、仮に、図7の選択順序記憶テーブル57の第2行の欄に1,2,3ではなく2,1,3が記憶されていたとすれば、選択順位の初期値である値1に対応するホッパ番号2が選択ホッパ記憶レジスタR1に記憶されることになる。
【0045】
次いで、CPU38は、入出力回路45を介してクラッチCRをオン状態とすることで上流側搬送モータM02を上流側用紙搬送手段16のプーリ30,30に接続し(ステップa10)、選択ホッパ記憶レジスタR1の現在値に基いて送り出しモータm(R1)と上流側搬送モータM02の正転を開始させる(ステップa11)。
既に述べた通り、この実施形態にあっては各モータの駆動制御はCPU38が各モータ宛てに出力する駆動指令パルスに基いて行われるようになっており、各モータの回転速度は単位時間当たりにCPU38から出力される駆動指令パルスの値によって特定され、また、各モータの回転量は駆動指令パルスの値(積算値)によって特定される。
【0046】
この時点では選択ホッパ記憶レジスタR1の現在値は1であるから、送り出しモータm1と上流側搬送モータM02が正転され、結果的に、送り出しモータm1の正転によってホッパ番号が1であるホッパ5に設けられた用紙送り出し手段8の搬送ローラ24が図1中の反時計方向に回転駆動され、同時に、上流側搬送モータM02の正転によって上流側用紙搬送手段16を構成するプーリ30,31と搬送ベルト32が図1中の反時計方向に回転駆動されて、ホッパ5の用紙2の先端が接続路21を経て上流側用紙搬送経路15に導かれることになる。
【0047】
次いで、CPU38は、入出力回路45を介して先端検出センサS1からの先端検出信号が入力されているか否かを判定し(ステップa12)、先端検出信号の入力が検知されていなければ其のまま送り出しモータm(R1)と上流側搬送モータM02の正転を継続させる。
【0048】
そして、先端検出センサS1からの先端検出信号の入力がステップa12の判定処理で確認され、用紙2の先端が上流側用紙搬送経路15上の先端検出センサS1の位置に達したことが明らかになると、CPU38は、上流側搬送モータM02に出力する駆動指令パルスのカウントを開始する(ステップa13)。
【0049】
次いで、CPU38は、上流側搬送モータM02に出力した駆動指令パルスのカウント値が、先端検出センサS1の位置にある用紙2の先端を印字ヘッド14の位置まで移動させるために必要とされる上流側搬送モータM02の駆動指令パルスの設定値に達しているか否かを判定し(ステップa14)、達していなければ其のまま送り出しモータm(R1)と上流側搬送モータM02の正転を継続させる。
【0050】
そして、駆動指令パルスのカウント値が設定値に達したことがステップa14の判定処理で確認され、用紙2の先端が印字ヘッド14の位置に到達したことが明らかになると、CPU38は、上流側搬送モータM02と送り出しモータm(R1)の駆動を停止する(ステップa15)。
この状態で、図8(a)に示されるようにして用紙2の先端が印字ヘッド14の直下に位置決めされることになる。
【0051】
次いで、CPU38は、駆動指令パルスのカウントに用いるカウンタの値をリセットし(ステップa16)、ホストコンピュータやATM本体等の上位装置から入出力インターフェイス43を介して印字指令や印字データが入力されるのを待機する(ステップa17)。
【0052】
そして、印字指令や印字データが上位装置から入力されると、CPU38は、下流側用紙搬送手段20のプーリ33,34と搬送ベルト35を回転駆動する下流側搬送モータM01の正転を開始して下流側用紙搬送手段20を上流側用紙搬送手段16に同期させて作動させると共に(ステップa18)、入力された印字指令および印字データに基いて印字ヘッド14および上流側搬送モータM02と送り出しモータm(R1)を駆動制御し、従来と同様にして用紙2に送りを掛けながら印字処理を開始し(ステップa19)、併せて、上流側搬送モータM02に出力する駆動指令パルスのカウントを開始する(ステップa20)。
【0053】
最終的に、印字データの印字出力が全て完了したことがステップa21の判定処理で確認されると、CPU38は、駆動指令パルスのカウントに用いたカウンタの値に基いて、図8(b)に示される印字長Aすなわち用紙2の先端から印字完了位置までの距離Aを求める(ステップa22)。
印字長Aは用紙2に印字すべき印字データの量(行数)によって変動するが、駆動指令パルスのカウントに用いられるカウンタは用紙2の先端が印字ヘッド14の真下に位置決めされてから印字動作が完了するまでの間に上流側搬送モータM02に与えられる駆動指令パルスの値をカウントしているので、このカウント値に1パルス相当分の送り量を乗じることによって印字長Aを正確に求めることができる。
【0054】
次いで、CPU38は、基準長記憶手段として機能する不揮発性メモリ40から適性状態で切断される用紙の全長Bの値、および、印字ヘッド14と用紙カッター17の離間距離Cの値を読み込み、これらの値と測定された印字長Aの値に基いて、用紙カッター17で用紙2の先端をBの長さに切断するために必要とされる更なる用紙2の送り量B−A+Cの値を求める(ステップa23)。
送り量B−A+Cは、現在位置すなわち図8(b)に示される印字完了位置(印字ヘッド14の直下)を基準としたインクリメンタル量である。
既に述べた通り、Bはレシートプリンタ1が完全に調整された状態にあるとき、つまり、上流側用紙搬送手段16の搬送ベルト32と用紙との間に不用意な滑りがなく、且つ、ホッパからの用紙の引き出しが円滑に行われ、用紙にも弛みや過剰なテンションが作用せず、上流側搬送モータM02や送り出しモータにも脱調が生じていない状況下で用紙が切断された場合の用紙の全長つまり切断長の理論値である。上位装置から与えられる印字データの量は印字長Aが適性状態で切断される用紙の全長Bを超えない範囲に制限されているので両者の関係は必然的にA<Bとなる。
【0055】
そして、CPU38は、駆動指令パルスのカウントに用いるカウンタの値を一旦リセットした後(ステップa24)、送り出しモータm(R1)と上流側搬送モータM02および下流側搬送モータM01の正転を継続して(ステップa25)、上流側搬送モータM02に出力する駆動指令パルスのカウントを開始し(ステップa26)、上流側搬送モータM02に出力した駆動指令パルスのカウント値が、用紙カッター17によって用紙2の先端をBの長さに切断するために必要とされる更なる用紙2の送り量B−A+Cに相当する駆動指令パルスの値に達しているか否かを判定する(ステップa27)。
【0056】
そして、出力済みの駆動指令パルスの値が必要とされる駆動指令パルスの値に達していなければ其のまま送り出しモータm(R1)と上流側搬送モータM02および下流側搬送モータM01の正転を継続させる。
【0057】
このようにして、上流側搬送モータM02で駆動される上流側用紙搬送手段16と下流側搬送モータM01で駆動される下流側用紙搬送手段20によって用紙2に送りが掛けられる間に、用紙2の先端からBの長さに匹敵する用紙2上の箇所が、図8(c)に示されるようにして印字ヘッド14の下方位置を通過し、更に、用紙カッター17に向けて移動していく。
【0058】
そして、上流側搬送モータM02に出力した駆動指令パルスのカウント値が送り量B−A+Cに相当する駆動指令パルスの値に達したことがステップa27の判定処理で確認され、用紙2の先端からBの長さに匹敵する用紙2上の箇所が用紙カッター17の直下に到達した筈であることが明らかになると、CPU28は、送り出しモータm(R1)と上流側搬送モータM02の駆動を停止して用紙送り出し手段8と上流側用紙搬送手段16の作動を停止させ(ステップa28)、駆動指令パルスのカウントに用いるカウンタの値をリセットする(ステップa29)。
【0059】
次いで、CPU28は、入出力回路45を介してカッター駆動ソレノイドSOLを1回作動させ、用紙カッター17を上から下に下から上へと1往復させて、例えば、図8(d)に示されるような状況下で用紙2の先端部分を切断する(ステップa30)。
【0060】
ここで、仮に、レシートプリンタ1が完全に調整された状態にあり、上流側用紙搬送手段16の搬送ベルト32と用紙2との間に不用意な滑りがなく、且つ、ホッパ5からの用紙2の引き出しが円滑に行われ、用紙2にも弛みや過剰なテンションが作用せず、上流側搬送モータM02や送り出しモータm(R1)にも脱調が生じていないとすれば、まさしく、図8(d)に示される通りに用紙2は其の先端からBの箇所で切断されることになるが、用紙2のロール部分に変形が生じていてホッパ5の内壁との干渉のために引き出しが円滑に行なえない場合や用紙2に捩れ等が生じてジャミングに近い現象が生じていた場合、あるいは、用紙2の引き出しのために過剰なトルクが必要となる結果として上流側用紙搬送手段16の搬送ベルト32と用紙2との間に滑りが生じた場合、更には、上流側搬送モータM02や送り出しモータm(R1)の駆動自体が困難となって脱調等の現象が生じた場合には、実際に切断された部分の用紙58の長さは基準となる値Bよりも短くなる。
また、これとは逆に、用紙2のロール部分に巻きの甘い箇所があって用紙2の引き出しに要する力が急激に減少したような場合にあっては、実際に切断された部分の用紙58の長さが基準となる値Bよりも長くなることも有りえる。
【0061】
そして、用紙カッター17で切断された用紙58は、下流側搬送モータM01の正転によって駆動される下流側用紙搬送手段20によって送りを掛けられ、図8(e)に示されるようにして、そのままレシート取出口18に向けて移動していく。
【0062】
次いで、測長手段の主要部として機能するCPU38は、測長手段の一部を構成する用紙検出センサS2から用紙検出信号が入力されているか否か、つまり、下流側用紙搬送手段20によって送りを掛けられて下流側用紙搬送経路19に沿って移動する切断済みの用紙58の先端が用紙検出センサS2の位置にまで到達しているか否かを判定し(ステップa31)、達していなければ其のまま待機する。
【0063】
そして、用紙検出センサS2からの用紙検出信号の入力がステップa31の判定処理で確認され、切断済みの用紙58の先端が用紙検出センサS2の位置に到達したことが明らかになると、測長手段の主要部として機能するCPU38は、経過時間測定タイマを起動し、切断済みの用紙58の先端が用紙検出センサS2によって最初に検知されてからの経過時間の測定を開始する(ステップa32)。
【0064】
次いで、測長手段の主要部として機能するCPU38は、用紙検出センサS2からの用紙検出信号の入力が途絶えたか否かを判定するが(ステップa33)、途絶えていなければ其のまま待機して用紙検出センサS2からの用紙検出信号の入力が途絶えるのを待つ。
なお、ここでいう経過時間測定タイマはCPU38のクロック周期を利用してソフトウェア的に実現される手段であり、格別なハードウェアは必要としない。
【0065】
そして、用紙検出センサS2からの用紙検出信号の入力が途絶えたことがステップa33の判定処理で確認され、切断済みの用紙58の後端が用紙検出センサS2の位置を通過したことが明らかになると、測長手段の主要部として機能するCPU38は、経過時間測定タイマの作動を停止させて計時を終了し(ステップa34)、下流側搬送モータM01で駆動される下流側用紙搬送手段20の設計上の用紙送り速度を不揮発性メモリ40から読み込み、経過時間測定タイマで測定された経過時間すなわち下流側用紙搬送経路19上に設置された用紙検出センサS2が切断済みの用紙58を検出し続けた時間と下流側用紙搬送手段20の設計上の用紙送り速度とを乗じて、切断済みの用紙58の実測長Dを求める(ステップa35)。
【0066】
下流側用紙搬送手段20は切断済みの用紙58のみを独立して搬送する構成である。従って、ロールと一体化したままの用紙2の上流側の部分に捩れや滑り,弛み,ホッパとの干渉等の異常が生じていた場合であっても下流側用紙搬送手段20の用紙搬送速度が其の影響を受けることはない。よって、下流側用紙搬送手段20の設計上の用紙送り速度に経過時間測定タイマで測定された経過時間を乗じるといった簡単な処理によって、切断済みの用紙5の全長Dを極めて正確に求めることができる。
【0067】
次いで、異常予測手段として機能するCPU38は、測長された用紙58の全長Dと基準長記憶手段である不揮発性40に記憶された適性状態で切断される用紙の全長Bに基いて、適性状態で切断される用紙の全長B対する切断済みの用紙58の実測長Dの比率D/Bを求める(ステップa36)。
【0068】
そして、CPU38は、下流側用紙搬送手段20のプーリ33,34と搬送ベルト35を回転駆動する下流側搬送モータM01の正転を停止して下流側用紙搬送手段20による切断済みの用紙58の搬送を止め(ステップa37)、切断済みの用紙58を下流側用紙搬送経路19の最下流部すなわちレシート取出口18に保持させ、レシートプリンタ1の利用者が切断済みの用紙58を受け取れるようにする。
【0069】
次いで、異常予測手段として機能するCPU38は、適性状態で切断される用紙の全長Bに対する実測長Dの比率D/Bが予め決められた許容範囲の下限値ε1と上限値ε2の間にあるか否かを判定する(ステップa38)。
【0070】
ステップa38の判定結果が真となり、比率D/Bが許容範囲であるε1〜ε2の間にあることが明らかとなった場合には、異常予測手段として機能するCPU38は、選択順位特定指標jの値に対応したホッパ番号R1を有するホッパ内でのロール状の用紙の回転および当該ホッパと上流側用紙搬送経路15を接続する接続路内での用紙の搬送ならびに上流側用紙搬送経路15内での用紙の搬送が共に適切な状態で行なわれているものと見做し、切断された用紙58の全長Dに長さの異常が発生していることを記憶する異常記憶フラグFの値をリセットし(ステップa39)、比率D/Bの値が連続的に許容範囲を外れた回数を計数する連続逸脱回数カウンタiの値を0に初期化する(ステップa40)。
【0071】
次いで、CPU38は、入出力回路45を介してクラッチCRをオフ状態とすることで上流側搬送モータM02と上流側用紙搬送手段16のプーリ30,30との接続を解除し(ステップa49)、選択ホッパ記憶レジスタR1の現在値に基いて巻き戻しモータM(R1)を設定時間だけ回転させてから停止させることにより、使用中の用紙つまりホッパ番号R1を有するホッパから引き出されている用紙の先端を先端検出センサS1よりも僅かに上流側に巻き戻す(ステップa50)。
【0072】
ついで、CPU38は、ステップa10の処理に復帰し、前記と同様にしてステップa10以降の処理操作を繰り返し実行することにより、ホストコンピュータやATM本体等の上位装置から新たな印字指令や印字データが入力されるのを待ち受け、前記と同様にして用紙2の先端に印字処理を施して切断し、切断済みの用紙58をレシート取出口18に排出するといったレシート発行動作を繰り返す。
但し、この場合は電源投入直後の処理とは相違し、使用中の用紙の先端は先端検出センサS1よりも僅かに上流側に巻き戻されているに過ぎないので、用紙の先端を印字ヘッド14の直下に位置決めするために必要とされる所要時間(ステップa11の処理が行なわれてからステップa12の判定結果が真となるまでの所要時間)は非常に短い。
【0073】
同一の用紙を往復動作させてレシートの発行を繰り返す場合の用紙の動きの概要を図8(f)に示す。
【0074】
これに対し、ステップa38の判定結果が偽となった場合、つまり、適性状態で切断される用紙の全長Bに対する用紙58の実測長Dの比率D/Bが予め決められた許容範囲ε1〜ε2から外れていることが明らかとなった場合には、異常予測手段として機能するCPU38は、更に、適性状態で切断される用紙の全長Bに対する用紙58の実測長Dの比率D/Bが予め決められた許容範囲の下限値ε1に満たないか或いは上限値ε2を超えているかを判定する(ステップa41)。
【0075】
ここで、ステップa41の判定結果が真となった場合つまり適性状態で切断される用紙の全長Bに対する用紙58の実測長Dの比率D/Bが予め決められた許容範囲ε1に満たないことが明らかとなった場合には、異常予測手段として機能するCPU38は、異常記憶フラグFに値1が既にセットされているか否か、つまり、前回のレシート発行動作の時点で既にD/B<ε1となっていたか否かを判定する(ステップa42)。
【0076】
異常記憶フラグFに値1がセットされていなければ、前回のレシート発行動作の時点ではD/B<ε1とはなっておらず、今回のレシート発行動作に際して新たにD/B<ε1となる状況が発生したことを意味するので、異常予測手段として機能するCPU38は、異常記憶フラグFに改めて値1をセットすることによってD/B<ε1となる状況が発生したことを記憶し(ステップa43)、比率D/Bの値が連続的にε1を下回った回数を計数する連続逸脱回数カウンタiに初期値1をセットする(ステップa44)。
この実施形態にあっては、D/B<ε1となる状況が1回発生しただけでは、搬送不良の発生する可能性があるものとは予測しない。
【0077】
従って、この場合は、前記と同様、CPU38は、クラッチCRをオフ状態とすることで上流側搬送モータM02と上流側用紙搬送手段16のプーリ30,30との接続を解除し(ステップa49)、選択ホッパ記憶レジスタR1の現在値に基いて巻き戻しモータM(R1)を設定時間だけ回転させてから停止させることにより、使用中の用紙つまりホッパ番号R1を有するホッパから引き出されている用紙の先端を先端検出センサS1よりも僅かに上流側に巻き戻し(ステップa50)、改めてステップa10の処理に復帰し、前記と同様にしてステップa10以降の処理操作を繰り返し実行することにより、ホストコンピュータやATM本体等の上位装置から新たな印字指令や印字データが入力されるのを待ち受け、前記と同様にして用紙2の先端に印字処理を施して切断し、切断済みの用紙58をレシート取出口18に排出するといったレシート発行動作を繰り返す。
【0078】
また、ステップa42の判定結果が真となり、異常記憶フラグFに値1が既にセットされていた場合には、前回のレシート発行動作の時点で既にD/B<ε1となっていたことが明らかであるから、異常予測手段として機能するCPU38は、比率D/Bの値が連続的にε1を下回った回数を計数する連続逸脱回数カウンタiの値を1インクリメントした後(ステップa45)、該連続逸脱回数カウンタiの現在値が、用紙の搬送を許容する連続逸脱回数の許容値nの値を超えているか否かを判定する(ステップa48)。
【0079】
そして、連続逸脱回数カウンタiの現在値が許容値nの値を超えていなければ、前記と同様、用紙を交換せずにレシートプリンタ1を作動させ続けても支障はないものと見做し、CPU38は、クラッチCRをオフ状態とすることで上流側搬送モータM02と上流側用紙搬送手段16のプーリ30,30との接続を解除し(ステップa49)、選択ホッパ記憶レジスタR1の現在値に基いて巻き戻しモータM(R1)を設定時間だけ回転させてから停止させることにより、使用中の用紙つまりホッパ番号R1を有するホッパから引き出されている用紙の先端を先端検出センサS1よりも僅かに上流側に巻き戻し(ステップa50)、改めてステップa10の処理に復帰してから、前記と同様にしてステップa10以降の処理操作を繰り返し実行することにより、ホストコンピュータやATM本体等の上位装置から新たな印字指令や印字データが入力されるのを待ち受け、前記と同様にして用紙2の先端に印字処理を施して切断し、切断済みの用紙58をレシート取出口18に排出するといったレシート発行動作を繰り返す。
【0080】
また、ステップa41の判定結果が偽となった場合、つまり、適性状態で切断される用紙の全長Bに対する用紙58の実測長Dの比率D/Bが予め決められた許容範囲ε2を超えていることが明らかとなった場合には、異常予測手段として機能するCPU38は、異常記憶フラグFに値2が既にセットされているか否か、つまり、前回のレシート発行動作の時点で既にD/B>ε2となっていたか否かを判定し(ステップa46)、異常記憶フラグFに値2がセットされていなければ、異常記憶フラグFに改めて値2をセットすることによってD/B>ε2となる状況が新たに発生したことを記憶し(ステップa47)、連続逸脱回数カウンタiに初期値1をセットして(ステップa44)、前記と同様にしてステップa49,ステップa50の処理を実行した後、ステップa10以降の処理操作を繰り返し実行することにより、ホストコンピュータやATM本体等の上位装置から新たな印字指令や印字データが入力されるのを待ち受け、前記と同様にして用紙2の先端に印字処理を施して切断し、切断済みの用紙58をレシート取出口18に排出するといったレシート発行動作を繰り返す。また、異常記憶フラグFに値2が既にセットされていた場合には、比率D/Bの値が連続的にε2を上回った回数を計数する連続逸脱回数カウンタiの値を1インクリメントした後(ステップa45)、連続逸脱回数カウンタiの現在値が許容値nの値を超えているか否かを判定し(ステップa48)、連続逸脱回数カウンタiの現在値が許容値nの値を超えていなければ、前記と同様にステップa49,ステップa50の処理を実行した後、前記と同様にしてステップa10以降の処理操作を繰り返し実行することにより、ホストコンピュータやATM本体等の上位装置から新たな印字指令や印字データが入力されるのを待ち受け、前記と同様にして用紙2の先端に印字処理を施して切断し、切断済みの用紙58をレシート取出口18に排出するといったレシート発行動作を繰り返す。
【0081】
これに対し、ステップa48の判定結果が偽となった場合、つまり、適性状態で切断される用紙の全長Bに対する用紙58の実測長Dの比率D/Bの値が連続的にε1を下回った回数i、もしくは、全長Bに対する実測長Dの比率D/Bの値が連続的にε2を上回った回数iが許容値nを超えてしまった場合には、異常予測手段として機能するCPU38は、このままの状態でレシートプリンタ1の作動を継続すると深刻な搬送不良の発生する可能性があるものと予測して、用紙再選択手段を作動させる。
【0082】
ここで、比率D/Bの値がε1に満たないのは用紙58が相当に短くなっている場合であって、その異常原因としては、前述したように用紙のロール部分の変形によるホッパの内壁との干渉,上流側用紙搬送経路15内における用紙の捩れ等による引き出し抵抗の増大,上流側用紙搬送手段16の搬送ベルト32と用紙との間に生じる滑り,上流側搬送モータM02や送り出しモータm(R1)の脱調等が考えられ、また、比率D/Bの値がε2を超える場合の異常つまり用紙58が相対的に長くなる場合の異常原因としては、用紙のロール部分に巻きの甘い箇所があって用紙の引き出しが過剰となること等が考えられる。
このうち、特に、用紙のロール部分の変形や巻きの甘さ等を初めとするロール紙に固有の不都合、および、上流側用紙搬送経路15内における用紙の捩れ等に起因する異常は、使用中の用紙を巻き戻せるうちに巻き戻して他のホッパに格納された別の用紙を使用することで容易にジャミングの発生を防止することが可能である。
【0083】
そこで、ステップa48の判定結果が偽となり、異常予測手段によって搬送不良の発生が予測された場合、用紙再選択手段として機能するCPU38は、まず、クラッチCRをオフ状態とすることで上流側搬送モータM02と上流側用紙搬送手段16のプーリ30,30との接続を解除し(ステップa51)、選択ホッパ記憶レジスタR1の現在値に基いて巻き戻しモータM(R1)を回転させ、ホッパ番号R1を有するホッパの用紙巻き戻し手段を駆動し、使用中の用紙つまりホッパ番号R1を有するホッパから引き出されている用紙の巻き戻しを開始し(ステップa52)、ホッパ番号R1を有するホッパの用紙確認センサSR(R1)からの用紙確認信号が途絶えているか否かを判定する(ステップa53)。
【0084】
用紙確認センサSR(R1)からの用紙確認信号が途絶えていなければ、使用中の用紙つまりホッパ番号R1を有するホッパから引き出されている用紙の先端が用紙確認センサSR(R1)よりも下流側つまり上流側用紙搬送経路15内もしくは接続路内に位置することを意味するので、用紙再選択手段として機能するCPU38は其のまま巻き戻しモータM(R1)の回転を継続する。
【0085】
そして、ステップa53の判定結果が真となり、ホッパ番号R1を有するホッパから引き出されている用紙の先端が用紙確認センサSR(R1)よりも上流側つまりホッパ内に巻き戻されたことが確認されると、用紙再選択手段として機能するCPU38は、巻き戻しモータM(R1)の回転すなわちホッパ番号R1を有するホッパに対応した用紙巻き戻し手段の作動を終了させ(ステップa54)、不揮発性メモリ40にアクセスして、選択順序記憶テーブル57におけるフラグF(R1)つまりホッパ番号R1を有するホッパに対応した使用可能状態記憶フラグをリセットし、このホッパの用紙が使用できなくなったことを記憶する(ステップa55)。
従って、仮に、現時点でj=1,R1=1であって、図7の例に倣ってホッパ5の用紙2が使用されていたとすれば、巻き戻しモータM(1)で駆動されるホッパ5の用紙巻き戻し手段11が作動して使用中の用紙2がホッパ5に回収され、用紙確認センサSR(1)がオフとなり、図7に示される選択順序記憶テーブル57におけるフラグF(1)つまりホッパ番号1を有するホッパ5の使用可能状態記憶フラグF1がリセットされることになる。
【0086】
次いで、用紙再選択手段として機能するCPU38は、選択順位特定指標jの値を1インクリメントし(ステップa56)、指標jの現在値がホッパの総数k(本実施形態にあってはk=3)の範囲内にあるか否かを判定する(ステップa57)。
【0087】
ここで、指標jの現在値がホッパの総数kの範囲内にあれば、用紙の取り出し先として選択可能な別のホッパが存在することを意味するので、用紙再選択手段として機能するCPU38は、更新された選択順位特定指標jの現在値に対応するホッパ番号を選択ホッパ記憶レジスタR1に改めて記憶させ(ステップa58)、ステップa10の処理に復帰して、電源投入直後の際の処理と同様に、クラッチCRをオン状態とすることで上流側搬送モータM02を上流側用紙搬送手段16のプーリ30,30に接続した後、選択ホッパ記憶レジスタR1の現在値に基いて用紙送り出し手段の送り出しモータm(R1)と上流側搬送モータM02の正転を開始させる(ステップa11)。
従って、仮に、現時点でj=2,R1=2であって、図7の例に倣ってホッパ6の用紙3が改めて選択されたとすれば、送り出しモータm2の正転によってホッパ番号が2であるホッパ6に設けられた用紙送り出し手段9の搬送ローラ25が図1中の反時計方向に回転駆動され、同時に、上流側搬送モータM02の正転によって上流側用紙搬送手段16を構成するプーリ30,31と搬送ベルト32が図1中の反時計方向に回転駆動されて、ホッパ6の用紙3の先端が接続路22を経て上流側用紙搬送経路15に送り出され、ステップa12の判定処理において用紙3の先端が先端検出センサS1によって検出されることになる。
但し、この場合は、用紙確認センサSR(R1)よりも僅かに下流側にある用紙の先端を印字ヘッド14の位置まで搬送する必要があるので、用紙の先端を位置決めするために必要とされる所要時間(ステップa11の処理が行なわれてからステップa12の判定結果が真となるまでの所要時間)は、電源投入直後の処理と同等である。
【0088】
使用中の用紙を回収してから新たに別のホッパの用紙を選択してレシートの発行を継続する場合の用紙の動きの概要を図8(g)に示す。
【0089】
このように、用紙の搬送不良の発生を異常予測手段として機能するCPU38により未然に予測し、搬送不良が発生する可能性がある場合には、実質的な搬送不良が発生する前の段階、つまり、使用中の用紙を巻き戻せるうちに巻き戻して、他のホッパに格納された別の用紙を自動的に供給することで、ジャミングの発生を未然に防止してレシート発行の処理動作を継続することが可能となり、上位装置であるATM等の機能が不用意に停止するといった不都合が改善され、また、レシートプリンタ1を継続して稼動させるためにオペレータが頻繁にレシートプリンタ1の動作状況をチェックするといった煩わしさもなくなる。
【0090】
また、搬送不良が発生した状態で各部のモータや駆動機構、たとえば、上流側搬送モータM02や上流側用紙搬送手段16および巻き戻しモータM1,M2,M3や用紙巻き戻し手段11,12,13等に過剰な負荷が作用することもなくなるので、レシートプリンタ1の機械的なダメージも未然に防止され得る。
【0091】
なお、ステップa57の判定結果が偽となった場合、つまり、k個のホッパに貯溜されている用紙の全てが利用済みとなった場合にあっては、新たに別のホッパの用紙を選択してレシートの発行処理を継続することはできないので、CPU38は、入出力回路45を介してアラームランプ44を点灯もしくは点滅させてレシートの発行が不能となったことをオペレータに知らせ、全ての処理を停止する(ステップa59)。
【0092】
この実施形態にあってはホッパ5,6,7といったk=3個のホッパがあるので、異常予測手段によって搬送不良の発生が2回予測されてもオペレータの手を煩わすことなくレシートの発行を継続することが可能である。
【0093】
コスト等の問題を別にすれば、ホッパ,用紙送り出し手段,用紙巻き戻し手段に個数の制限はなく、幾つでも設けることが可能であり、仮にk個のホッパを設けた場合では、異常予測手段によって搬送不良の発生がk−1回予測されてもオペレータの手を煩わすことなくレシートの発行を継続することが可能となる。
【0094】
ここでは一例として下流側用紙搬送経路19上に設置された用紙検出センサS2が下流側用紙搬送経路19上を移動する切断済みの用紙58を検出し続ける時間と下流側用紙搬送手段20の用紙送り速度に基いて切断済みの用紙58の全長Dを求める例について述べたが(ステップa31〜ステップa35参照)、下流側用紙搬送経路19上に設置された用紙検出センサS2が下流側用紙搬送経路19上を移動する切断済みの用紙58を検出し続ける間に下流側用紙搬送手段20の回転部に設けられたパルスコーダから出力されるパルスの数に基いて切断済みの用紙58の全長Dを求めるようにしてもよい。
その場合、パルスコーダは、例えば、プーリ33やプーリ34と一体に回転する回転軸もしくは下流側搬送モータM01のモータシャフトに取り付けることが可能である。
プーリ33,プーリ34,下流側搬送モータM01の回転量は下流側用紙搬送手段20の送り量と一対一に対応するので、パルスコーダから出力されるパルス1つ分に相当する下流側用紙搬送手段20の送り量を予め不揮発性メモリ40に記憶しておき、用紙検出センサS2から用紙検出信号が入力されている間だけパルスコーダの出力パルスの数をCPU38で計数し、この計数値にパルス1つ分に相当する送り量を乗じれば、切断済みの用紙58の全長Dを容易に求めることができる。
下流側用紙搬送手段20は切断済みの用紙58のみを独立的に搬送する構成であり、ロールと一体化したままの用紙の上流側の部分にホッパの内壁との干渉あるいは捩れや滑り等の異常が生じていた場合であっても下流側用紙搬送手段20の搬送ベルト35によって切断済みの用紙58を滑りなく搬送することができるので、用紙検出センサS2が切断済みの用紙58を検出する間だけパルスコーダの出力パルスの数を計数し、この計数値にパルス1つ分に相当する送り量を乗じるといった簡単な処理で切断済みの用紙58の全長Dを的確に求めることができる。
【0095】
更には、印字ヘッド14の駆動が開始されてから用紙カッター17が作動するまでの間、つまり、図8(a)に示される位置から図8(d)に示される位置まで用紙が送られる間に亘って上流側用紙搬送手段16の送り速度の平均値Vaを求める平均値算出手段を設けると共に、適性状態で検出される上流側用紙搬送手段16の送り速度の平均値V0を平均値記憶手段として機能する不揮発性メモリ40に記憶させておき、平均値算出手段によって実際に求められた平均値Vaと不揮発性メモリ40に記憶された平均値V0を比較して搬送不良の発生の有無を予測するようにしてもよい。
平均値算出手段は、例えば、上流側用紙搬送手段16の回転部であるプーリ30,31等に接続したパルスコーダからの出力をF/V(Frequency to Voltage)変換するF/V変換器と、F/V変換器から出力される電圧すなわち送り速度を所定周期毎にサンプリングして平均化するCPU38によって構成することができる。
この場合、異常予測手段として機能するCPU38は、比率Va/V0の値と判定基準である許容範囲の下限値ε1’と上限値ε2’とを比較し、比率Va/V0が連続的にε1’を下回った回数もしくは比率Va/V0が連続的にε2’を上回った回数が連続逸脱回数の許容値nを超えた場合に搬送不良の発生を予測することになるが、全体的な処理の流れは図3〜図6に示したものと同様である。
この場合も、最初に述べた実施形態の場合と同様、比率Va/V0の値がε1’に満たないのは搬送速度の低下によって用紙58が短くなっている場合であり、その異常原因としては、用紙のロール部分の変形によるホッパの内壁との干渉,上流側用紙搬送経路15内における用紙の捩れ等による引き出し抵抗の増大,上流側搬送モータM02や送り出しモータm(R1)の脱調等が考えられる。但し、上流側用紙搬送手段16の搬送ベルト32と用紙との間に滑りが生じた場合であっても上流側用紙搬送手段16の回転部であるプーリ30,31等に接続したパルスコーダからは適正なパルスが出力され、上流側用紙搬送手段16の送り速度自体には異常がないと判定される場合があるので、上流側用紙搬送手段16の搬送ベルト32と用紙との間の滑りによる異常は必ずしも的確に検出されるとは限らない。また、比率Va/V0の値がε2’を超えるのは搬送速度の増大によって用紙58が相対的に長くなる場合であり、その異常原因としては、用紙のロール部分に巻きの甘い箇所があって用紙の引き出しが過剰となること等が考えられる。
【0096】
あるいは、印字ヘッド14の駆動が開始されてから用紙カッター17が作動するまでの間、つまり、図8(a)に示される位置から図8(d)に示される位置まで用紙が送られる間に亘って上流側用紙搬送手段16を駆動する上流側搬送モータM02の駆動トルクの平均値Iaを求める平均値算出手段を設けると共に、適性状態で検出される上流側搬送モータM02の駆動トルクの平均値I0を平均値記憶手段として機能する不揮発性メモリ40に記憶させておき、平均値算出手段によって実際に求められた平均値Iaと不揮発性メモリ40に記憶された平均値I0を比較して搬送不良の発生の有無を予測するようにしてもよい。
平均値算出手段は、例えば、上流側搬送モータM02の駆動トルクに比例したモータ駆動電流を検出する電流検出器と、その値を所定周期毎にサンプリングして平均化するCPU38によって構成することができる。
この場合、異常予測手段として機能するCPU38は、比率Ia/I0の値と判定基準である許容範囲の下限値ε1”と上限値ε2”とを比較し、比率Ia/I0が連続的にε1”を下回った回数もしくは比率Ia/I0が連続的にε2”を上回った回数が連続逸脱回数の許容値nを超えた場合に搬送不良の発生を予測することになるが、全体的な処理の流れは図3〜図6に示したものと同様である。
この場合は、比率Ia/I0がε2”を超えるのは搬送抵抗の増大によって用紙58が短くなっている場合であって、その異常原因としては、用紙のロール部分の変形によるホッパの内壁との干渉,上流側用紙搬送経路15内における用紙の捩れ等による引き出し抵抗の増大等が考えられる。また、比率Ia/I0の値がε1”に満たないのはロールの巻きの甘さ等によって搬送抵抗が減少して用紙58が相対的に長くなる場合であると考えることができる。
【0097】
更に、切断済み用紙の長さの比率D/B,上流側用紙搬送手段16における用紙の送り速度の比率Va/V0,上流側用紙搬送手段16の駆動トルクに比例したモータ駆動電流の比率Ia/I0を下限値や上限値と比較する代わりに、異常予測手段として機能するCPU38により、直前のレシートの払い出しの際に求められた此れらの比率と今回のレシートの払い出しの際に求められた比率との大小関係を比較し、予め決められた回数nを超えて連続的に比率が増大した場合と予め決められた回数nを超えて連続的に比率が減少した場合に搬送不良の発生を予測するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、レシートプリンタに限らず、ロール状に巻回された長尺の用紙を用いる各種の印字装置・印刷装置に転用が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 レシートプリンタ
2,3,4 ロール状に巻回された用紙
5,6,7 ホッパ
8,9,10 用紙送り出し手段
11,12,13 用紙巻き戻し手段
14 印字ヘッド
15 上流側用紙搬送経路
16 上流側用紙搬送手段
17 用紙カッター
18 レシート取出口
19 下流側用紙搬送経路
20 下流側用紙搬送手段
21,22,23 接続路
24,25,26 搬送ローラ
27,28,29 スプール
30,31 プーリ
32 搬送ベルト
33,34 プーリ
35 搬送ベルト
36 アウターケーシング
37 制御部
38 マイクロプロセッサ(測長手段の主要部,異常予測手段,用紙再選択手段)
39 リード・オンリー・メモリ
40 不揮発性メモリ(基準長記憶手段,選択順序記憶手段)
41 ランダム・アクセス・メモリ
42 手動操作盤
43 入出力インターフェイス
44 アラームランプ
45 入出力回路
46,47,48,49,50,51,52,53 モータ駆動回路
54 クラッチ駆動回路
55 ヘッド駆動回路
56 ソレノイド駆動回路
57 選択順序記憶テーブル
58 切断された用紙
A 印字長
B 適性状態で切断される用紙の全長
C 印字ヘッドと用紙カッターの離間距離
CR クラッチ
D 切断された用紙2の実際の全長
M01 下流側搬送モータ
M02 上流側搬送モータ
M1,M2,M3 巻き戻しモータ
m1,m2,m3 送り出しモータ
S1 先端検出センサ
S2 用紙検出センサ(測長手段の一部)
SR1,SR2,SR3 用紙確認センサ
SOL カッター駆動ソレノイド
ε1 許容範囲の下限値
ε2 許容範囲の上限値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された用紙を引き出して先端から順に印字処理を行ない切断して排出するようにしたレシートプリンタにおいて、
ロール状に巻回された用紙を格納する複数のホッパと、各ホッパに格納された用紙の先端を送り出す各ホッパ毎の用紙送り出し手段と、用紙をロールに巻回して巻き戻す各ホッパ毎の用紙巻き戻し手段と、選択されたホッパから送り出された用紙を印字ヘッドに導く上流側用紙搬送経路に配置された上流側用紙搬送手段と、上流側用紙搬送経路の下流側端部に設けられた用紙カッターと、用紙カッターで切断された用紙をレシート取出口に導く下流側用紙搬送経路に配置された下流側用紙搬送手段と、切断された用紙の全長を下流側用紙搬送経路上で測長する測長手段と、適性状態で切断される用紙の全長を記憶した基準長記憶手段と、前記測長手段で測長された用紙の全長と前記基準長記憶手段に記憶された用紙の全長を比較して搬送不良の発生の有無を予測する異常予測手段と、前記異常予測手段によって搬送不良の発生が有ると予測されると其の時点で選択されているホッパの用紙巻き戻し手段を作動させて使用中の用紙を上流側用紙搬送経路からホッパに回収すると共に他のホッパの1つを選択して其のホッパの用紙送り出し手段を作動させることにより当該ホッパに格納された用紙の先端を上流側用紙搬送経路に送り出す用紙再選択手段を備えたことを特徴とするレシートプリンタ。
【請求項2】
前記測長手段は、下流側用紙搬送経路上に設置された用紙検出センサが下流側用紙搬送経路上を移動する用紙を検出し続ける時間と前記下流側用紙搬送手段の用紙送り速度に基いて切断された用紙の全長を求めることを特徴とした請求項1記載のレシートプリンタ。
【請求項3】
前記測長手段は、下流側用紙搬送経路上に設置された用紙検出センサが下流側用紙搬送経路上を移動する用紙を検出し続ける間に前記下流側用紙搬送手段の回転部に設けられたパルスコーダから出力されるパルスの数に基いて切断された用紙の全長を求めることを特徴とした請求項1記載のレシートプリンタ。
【請求項4】
前記異常予測手段は、前記基準長記憶手段に記憶された用紙の全長に対する前記測長手段で測長された用紙の全長の比率を求め、この比率が予め決められた許容範囲から外れると搬送不良の発生が有ると予測するように構成されていることを特徴とする請求項1,請求項2または請求項3のうち何れか一項に記載のレシートプリンタ。
【請求項5】
ロール状に巻回された用紙を引き出して先端から順に印字処理を行ない切断して排出するようにしたレシートプリンタにおいて、
ロール状に巻回された用紙を格納する複数のホッパと、各ホッパに格納された用紙の先端を送り出す各ホッパ毎の用紙送り出し手段と、用紙をロールに巻回して巻き戻す各ホッパ毎の用紙巻き戻し手段と、選択されたホッパから送り出された用紙を印字ヘッドに導く上流側用紙搬送経路に配置された上流側用紙搬送手段と、上流側用紙搬送経路の下流側端部に設けられた用紙カッターと、用紙カッターで切断された用紙をレシート取出口に導く下流側用紙搬送経路に配置された下流側用紙搬送手段と、印字ヘッドの駆動が開始されてから用紙カッターが作動するまでの間の上流側用紙搬送手段の送り速度の平均値を求める平均値算出手段と、適性状態で検出される上流側用紙搬送手段の送り速度の平均値を記憶した平均値記憶手段と、前記平均値算出手段で求められた平均値と前記平均値記憶手段に記憶された平均値を比較して搬送不良の発生の有無を予測する異常予測手段と、前記異常予測手段によって搬送不良の発生が有ると予測されると其の時点で選択されているホッパの用紙巻き戻し手段を作動させて使用中の用紙を上流側用紙搬送経路からホッパに回収すると共に他のホッパの1つを選択して其のホッパの用紙送り出し手段を作動させることにより当該ホッパに格納された用紙の先端を上流側用紙搬送経路に送り出す用紙再選択手段を備えたことを特徴とするレシートプリンタ。
【請求項6】
ロール状に巻回された用紙を引き出して先端から順に印字処理を行ない切断して排出するようにしたレシートプリンタにおいて、
ロール状に巻回された用紙を格納する複数のホッパと、各ホッパに格納された用紙の先端を送り出す各ホッパ毎の用紙送り出し手段と、用紙をロールに巻回して巻き戻す各ホッパ毎の用紙巻き戻し手段と、選択されたホッパから送り出された用紙を印字ヘッドに導く上流側用紙搬送経路に配置された上流側用紙搬送手段と、上流側用紙搬送経路の下流側端部に設けられた用紙カッターと、用紙カッターで切断された用紙をレシート取出口に導く下流側用紙搬送経路に配置された下流側用紙搬送手段と、印字ヘッドの駆動が開始されてから用紙カッターが作動するまでの間の上流側用紙搬送手段の駆動トルクの平均値を求める平均値算出手段と、適性状態で検出される上流側用紙搬送手段の駆動トルクの平均値を記憶した平均値記憶手段と、前記平均値算出手段で求められた平均値と前記平均値記憶手段に記憶された平均値を比較して搬送不良の発生の有無を予測する異常予測手段と、前記異常予測手段によって搬送不良の発生が有ると予測されると其の時点で選択されているホッパの用紙巻き戻し手段を作動させて使用中の用紙を上流側用紙搬送経路からホッパに回収すると共に他のホッパの1つを選択して其のホッパの用紙送り出し手段を作動させることにより当該ホッパに格納された用紙の先端を上流側用紙搬送経路に送り出す用紙再選択手段を備えたことを特徴とするレシートプリンタ。
【請求項7】
前記異常予測手段は、前記平均値記憶手段に記憶された平均値に対する前記平均値算出手段で求められた平均値の比率を求め、この比率が予め決められた許容範囲から外れると搬送不良の発生が有ると予測するように構成されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載のレシートプリンタ。
【請求項8】
前記異常予測手段は、前記比率が予め決められた許容範囲の下限値を連続的に下回った場合と許容範囲の上限値を連続的に上回った場合に搬送不良の発生が有ると予測するように構成されていることを特徴とする請求項4または請求項7のうち何れか一項に記載のレシートプリンタ。
【請求項9】
ホッパの選択順序を記憶する選択順序記憶手段を備え、前記用紙再選択指令手段は、前記選択順序記憶手段に記憶された選択順序に従って用紙送り出し手段を作動させるホッパを選択することを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6,請求項7または請求項8のうち何れか一項に記載のレシートプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−37158(P2011−37158A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187226(P2009−187226)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】