説明

レジストパターン形成方法およびモールド製造方法

【課題】パターン微細化が進展する状況下においても、凸状部分の高さバラツキが抑制されたレジストパターンを形成できるようにする。
【解決手段】レジスト膜に凹凸パターンを形成するパターン形成工程(S2,S3,S4)と、前記凹凸パターンの凹状部分の底部に対してエッチングを行う除去工程(S6)と、を備えるレジストパターン形成方法において、前記パターン形成工程(S2,S3,S4)の後で前記除去工程(S6)の前に、化学的成膜処理により保護膜を形成する保護膜形成工程(S5)を備え、前記保護膜生成工程(S5)では、前記凹凸パターンの隣り合う凸状部分に形成される前記保護膜同士が接触して連続膜となるように当該保護膜を成長させるとともに、前記連続膜の膜表面側における段差の高さが前記凸状部分の高さバラツキの高低差より小さくなるように当該保護膜の成長を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターン形成方法およびモールド製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置(HDD)用の高密度記録媒体として知られるディスクリートトラック型(DTR)やビットパターンド型(BPM)等のディスク媒体(以下「パターンド媒体」という)は、ナノインプリント技術を用いて量産される。詳しくは、マスターモールドまたはその複製であるワーキングレプリカ(以下、これらを「モールド」と総称する)を原盤として、そのモールドにおける凹凸パターンを被転写体(具体的にはパターンド媒体の構成基板)に転写することにより、パターンド媒体が作製される。
【0003】
原盤となるモールドは、その基材となるマスクブランクの上面に側断面凹凸状のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとしてマスクブランクに対するエッチング加工を行うことによって製造される。
【0004】
このようなモールド製造のためのレジストパターンの形成は、例えばフォトリソグラフィ技術を利用して行うことが考えられる。具体的には、レジストパターンの形成手法として、被処理基板(例えばマスクブランク)の上面にレジスト材料を塗布してレジスト膜を形成した後、レジスト膜に対して電子線露光によるパターン描画を行い、さらにレジスト膜に現像剤を供給して描画パターンの現像を行い、現像を終えた後にスカム(scum)と呼ばれる現像残渣を除去するためのディスカム(descum)を行って、凹凸状のレジストパターンを形成するというものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−172960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年は、パターンド媒体におけるパターン微細化に伴って、例えばパターンピッチが40nm以下(さらに詳しくは30nm以下)といった超微細なレジストパターンが求められている。しかしながら、このような超微細なレジストパターンについては、従来技術によるレジストパターン形成方法を用いてパターン形成しても、良好なパターン形状が得られないおそれがある。
【0007】
例えば、パターンピッチが40nm以下(さらに詳しくは30nm以下)のBPMに対応する微細なドットパターンについて考える。このようなドットパターンをレジスト膜に対する電子線露光によるパターン描画を行って形成する場合には、電子線露光を行う描画機の性能やレジスト膜の内部におけるポリマーの分子量のバラツキ等により、パターン現像を終えた後のパターン高さ(凸状部分の高さ)が不均一になってしまう可能性がある。つまり、現像後のレジストパターンにおける凸状部分に高さバラツキが生じ得る。このことは、例えばパターンピッチが40nm以下(さらに詳しくは30nm以下)といった超微細なレジストパターンを形成する場合には、パターン微細化に伴ってレジスト膜も薄膜化する傾向にあることから、特に顕著となる。
【0008】
このような高さバラツキは、レジストパターンをマスクとしてマスクブランクにパターンを転写する場合に、高精度なパターン形成を困難にする要因となるおそれがある。例えば、パターン高さの低い部分がその後に行うエッチングの際に消失するといった事態を招き得るからである。さらには、高さバラツキが生じることによってレジストパターンが所望形状から乖離したものになっていると、当該乖離が転写パターンに直に反映されてしまうからである。これらのことは、特に、パターン微細化が進展している状況下では、その影響が大きなものとなる。
【0009】
そこで、本発明は、パターン微細化が進展する状況下においても、レジストパターンにおける凸状部分の高さバラツキを抑制することができ、所望形状のレジストパターン形成を確実に行うことのできるレジストパターン形成方法およびモールド製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。
本発明の第1の態様は、レジスト膜に凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、前記パターン形成工程で形成した前記凹凸パターンの凹状部分の底部に対してエッチングを行う除去工程と、を備えるレジストパターン形成方法において、前記パターン形成工程の後で前記除去工程の前に、前記パターン形成工程で形成した前記凹凸パターンにおける凸状部分の頂部を含む当該頂部の近傍領域に、化学的成膜処理により保護膜を形成する保護膜形成工程を備え、前記保護膜形成工程では、前記凹凸パターンの隣り合う凸状部分に形成される前記保護膜同士が接触して当該凹凸パターンにおける凹状部分を塞ぐ連続膜となるように当該保護膜を成長させるとともに、前記連続膜の膜表面側における段差の高さが前記凸状部分の高さバラツキの高低差より小さくなるように当該保護膜の成長を行い、前記除去工程では、前記連続膜の膜表面側から前記エッチングを行うことを特徴とするレジストパターン形成方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記保護膜形成工程では、前記連続膜が平坦膜であるとみなせるまで、前記保護膜を成長させることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、前記保護膜形成工程で行う前記化学的成膜処理は、前記除去工程での前記エッチングを行うエッチング装置を用いて行うことを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の発明において、前記エッチング装置は、前記保護膜形成工程において、前記保護膜の成分を含む原料ガス雰囲気にて、前記エッチングを行う際とは異なるバイアス電圧の印加により前記保護膜を形成することを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の発明において、前記原料ガスとしてCHFガスを用いることを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか1態様に記載のレジストパターン形成方法を用いて形成した前記レジストパターンをマスクにして被加工物である基体に対するエッチング加工を行うエッチング工程を備え、前記エッチング工程によるエッチング加工を経て、前記レジストパターンに対応する形状のパターンが前記基体に加工されてなるモールドを得ることを特徴とするモールド製造方法である。
本発明の第7の態様は、第5の態様に記載の発明において、前記モールドは、ナノインプリント用原盤となるモールドであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン微細化が進展する状況下においても、レジストパターンにおける凸状部分の高さバラツキを抑制することができ、所望形状のレジストパターン形成を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るモールド製造方法の手順の概要を示すフロー図である。
【図2】本発明に係るモールド製造方法の概要を示す断面概略図である。
【図3】本発明に係るレジストパターン形成方法の概要を示す断面概略図である。
【図4】本発明に係るレジストパターン形成方法におけるバイアス電力印加の一具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明に係るレジストパターン形成方法およびモールド製造方法について説明する。
【0014】
ここでは、以下の順序で説明を行う。
1.モールド製造方法
2.レジストパターン形成方法
3.本実施形態の効果
4.変形例
【0015】
<1.モールド製造方法の説明>
先ず、本発明に係るモールド製造方法について説明する。
ここでは、ナノインプリント用原盤となるモールド製造方法について、モールドへのパターン形成にあたり電子線露光によるパターン描画を経てレジストパターン形成を行う場合を例に挙げて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るモールド製造方法の手順の概要を示すフロー図である。
図例のモールド製造方法は、基板準備工程(ステップ1、以下ステップを「S」と略す)と、レジスト成膜工程(S2)と、露光工程(S3)と、現像工程(S4)と、保護膜形成工程(S5)と、除去工程(S6)と、ハードマスクエッチング工程(S7)と、基板エッチング工程(S8)と、HM除去・洗浄工程(S9)と、を含む。なお、図中では、ハードマスクを「HM」と略している。
これらの各工程のうち、レジスト成膜工程(S2)、露光工程(S3)および現像工程(S4)は、パターン形成工程を構成している。
【0017】
以下、これらの各工程につき、順に説明する。
図2は、本発明に係るモールド製造方法の概要を示す断面概略図である。
【0018】
(基板準備工程)
基板準備工程(S1)では、被加工物となる基体であるマスクブランク1を用意する。マスクブランク1は、基板2上にハードマスク膜3を有して構成されている。
基板2は、後述するように、ナノインプリント用のモールド7となるものである。このことから、基板2としては、石英基板等の透光性基板を用いることが考えられる。石英基板は、平坦度および平滑度に優れるため、例えばナノインプリント用のモールド7として用いてパターン転写を行う場合に、転写パターンの歪み等が生じないで高精度のパターン転写を行える。ただし、基板2は、石英基板に限定されることはなく、例えばシリコン基板のように、他の形成材料によって構成されたものでも構わない。基板2の平面形状は、矩形、多角形、半円形等であってもよいが、レジスト塗布の際に回転を利用した均一塗布が可能であることから、円盤形状とすることが考えられる。
ハードマスク膜3は、基板2に対するエッチングに用いられるものであり、例えばクロム(Cr)化合物による金属膜を用いて形成することが考えられる。このような金属膜であれば、十分な導電性、酸化防止性およびエッチング耐性が得られるからである。ただし、ハードマスク膜3は、ここで挙げた金属膜に限定されることはなく、他の形成材料によって構成されたものであっても構わない。さらには、必ずしも単一層からなる膜である必要はなく、複数層からなる積層膜であっても構わない。なお、ハードマスク膜3は、後述するレジストパターン5の形成材料との密着性が良好であり、かつ、当該形成材料とのエッチング選択性が良好であるものが好ましい。また、ハードマスク膜3の膜厚は、基板2に対するエッチングが完了するまで残存する厚さであることが好ましい。
【0019】
(レジスト成膜工程)
レジスト成膜工程(S2)では、マスクブランク1におけるハードマスク膜3の上面に、レジスト膜を形成する。レジスト膜の形成材料としては、例えばα−クロロメタクリレートとα−メチルスチレンとの重合体を含むレジスト材料のように、電子線描画用のレジスト材料として一般的なもの(具体的には日本ゼオン社製ZEP520A)を用いることが考えられる。そして、このようなレジスト材料をハードマスク膜3の上面にスピンコートにより所定の厚さに塗布し、ベーク処理を行うことで、レジスト膜を形成する。レジスト膜の形成厚さは、ハードマスク膜3に対するエッチングが完了するまで残存する厚さであればよい。
【0020】
(露光工程)
露光工程(S3)では、例えば、電子線描画機を用いた電子線露光によるパターン描画を行う。すなわち、レジスト膜に対してエネルギービームの一例である電子線ビームを照射して、当該レジスト膜に対するパターン描画を行う。このとき、レジスト膜がポジ型レジストであるならば、電子線描画した箇所が基板2上のホールまたは溝の位置に対応する。一方、レジスト膜がネガ型レジストであるならば、その逆の位置となる。以下の説明では、ポジ型レジストを用いた場合を例に挙げる。
【0021】
(現像工程)
現像工程(S4)では、パターン描画後のレジスト膜に対して現像剤を供給し、当該レジスト膜における電子線描画された部分を溶融除去することで、当該レジスト膜に対するパターニングを行う。現像剤としては、例えば、フルオロカーボンを含む溶媒(具体的には、バートレルXF(登録商標)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を含む溶液、酢酸−n−アミル、酢酸エチル若しくはそれらの混合物からなる溶媒(具体的には、ZED−N50(日本ゼオン社製))を含む溶液、または、これら溶液の混合液等を用いることが考えられる。このような現像剤によってレジスト溶解部を溶解除去することで、マスクブランク1上には、描画されたパターンに対応する凹凸パターン4が形成される。
【0022】
つまり、レジスト成膜工程(S2)、露光工程(S3)および現像工程(S4)から構成されるパターン形成工程を経ることで、マスクブランク1上には、図2(a)に示すように、レジスト膜をパターニングして得られる凹凸パターン4が形成されることになる。
【0023】
(保護膜形成工程)
保護膜形成工程(S5)では、凹凸パターン4上への保護膜形成を行う。保護膜形成の詳細については、詳細を後述する。
【0024】
(除去工程)
除去工程(S6)では、パターン形成工程(S2,S3,S4)で形成した凹凸パターン4の凹状部分の底部に対してエッチングを行い、当該底部におけるスカム(現像残渣)を除去する。これにより、マスクブランク1上には、側断面凹凸状で、かつ、凹状部分の底部ではハードマスク膜3が露出した状態のレジストパターン5が形成される。エッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)法によって、CHF等のフッ素系ガスを用いて行う。ただし、フッ素系ガスに代えて、例えば酸素ガスとアルゴン(Ar)ガスの混合ガスを用いることも考えられる。
【0025】
つまり、レジスト成膜工程(S2)から除去工程(S6)までの一連の各工程を経ることによって、マスクブランク1上には、図2(b)に示すように、側断面凹凸状のレジストパターン5が形成されることになる。換言すると、レジスト成膜工程(S2)から除去工程(S6)までの一連の各工程によって、レジストパターン形成方法が構成される。
【0026】
(ハードマスクエッチング工程)
ハードマスクエッチング工程(S7)では、図2(c)に示すように、レジストパターン5をマスクとして、ハードマスク膜3に対するエッチング加工を行い、ハードマスクパターン6を形成する。ハードマスク膜3に対するエッチングは、例えば、RIE法によって、当該ハードマスク膜3がCr化合物による金属膜であれば、塩素ガスと酸素ガスからなる混合ガスを用いて行うことが考えられる。これにより、ハードマスク膜3のレジストパターン5に覆われていない部分が除去されて、レジストパターン5のパターン形状に倣ってハードマスク膜3がパターニングされる。その結果、基板2上にハードマスクパターン6とレジストパターン5とが重なって形成された状態となる。
【0027】
(基板エッチング工程)
基板エッチング工程(S8)では、図2(d)に示すように、ハードマスクパターン6をマスクにして、基板2に対するエッチング加工を行う。基板2に対するエッチングは、例えば、RIE法によって、当該基板2が石英基板であればフッ素系ガスを用いて行うことが考えられる。具体的には、フッ素系ガスとして、CxFy(例えば、CF、C、C)、CHF、これらの混合ガスまたはこれらに添加ガスとして希ガス(He、Ar、Xe等)を含むものが挙げられる。これにより、ハードマスクパターン6の形状が基板2に転写されて、基板2には所望形状の凹凸パターンが加工されることになる。このとき、基板2の表面において、エッチングでへこんだ部分が凹状のパターン部分となり、それ以外の部分が凸状のパターン部分となる。そして、それらの組合せによって、全体的に側断面が凹凸状のパターンが形成される。
【0028】
(ハードマスク除去・洗浄工程)
ハードマスク除去・洗浄工程(S9)では、例えば硫酸と過酸化水素水の混合液からなるレジスト剥離剤により、残存したレジストパターン5を除去する。さらに、例えば塩素ガスと酸素ガスからなる混合ガスを用いたエッチングにより、または金属膜を溶解除去可能な薬液を用いて、残存したハードマスクパターン6を除去する。その後、必要に応じて、基板2の洗浄・乾燥等を行う。このようにして、図2(e)に示すようなパターンド媒体への転写パターンを有したナノインプリント用のモールド7が製造される。このモールド7は、例えばDTRやBPM等のパターンド媒体を量産するために用いられるナノインプリント用原盤となるものである。
【0029】
<2.レジストパターン形成方法の説明>
次に、上述した一連の工程(S1〜S9)のうち、特徴的な工程であるレジスト成膜工程(S2)から除去工程(S6)までの各工程(すなわち本実施形態におけるレジストパターン形成方法)について説明する。
図3は、本発明に係るレジストパターン形成方法の概要を示す断面概略図である。
【0030】
(レジストパターン形成方法の概要)
既に説明したように、パターンピッチが40nm以下(さらに詳しくは30nm以下)といった超微細なレジストパターン5について、レジスト成膜工程(S2)、露光工程(S3)および現像工程(S4)を経て形成する場合には、現像後の凹凸パターン4における凸状部分に高さバラツキが生じることが考えらえる。電子線露光を行う描画機の性能やレジスト膜の内部におけるポリマーの分子量のバラツキ等の影響が及び得るからである。このような高さバラツキは、高精度なパターン形成を困難にする要因となるおそれがあることから、その発生を抑制すべきである。
【0031】
高さバラツキの発生を抑制するためには、例えば、電子線露光によるパターン描画を行う描画機において、高位置精度の制御を行い、かつ、描画速度を遅くすることが考えられる。高さバラツキの要因は、主として、描画機の電子線ビームの位置精度に律速していると考えられるからである。しかしながら、このような対応策を採用すると、描画機の高コスト化を招いてしまい、またパターン描画の生産性が悪化してしまうおそれがある。つまり、描画機の高コスト化やパターン描画の生産性悪化等を招くことなく、レジストパターン5における凸状部分の高さバラツキを抑制できることが望ましい。
【0032】
また、これとは別に、パターンピッチが40nm以下(さらに詳しくは30nm以下)といった超微細なレジストパターン5については、パターン形成工程(S2,S3,S4)の後に直ちに除去工程(S6)を行うと、その除去工程(S6)において凹凸パターン4の凸状部分が部分的に消失してしまい、良好なパターン形状を得ることができないおそれがある。これは、除去工程(S6)におけるRIE法によるエッチングでは完全なエッチャントの異方性(基板に対する垂直性)が得られないため、凹凸パターン4の凸状部分が上方および両側方の三方向からエッチングされてしまい、当該凸状部分における角部のエッチングが速く進むからと考えられる。特に、パターンピッチが小さくなり、これに伴いレジスト膜の形成高さが低くなると、凹凸パターン4の凸状部分に対する影響が比率的に大きくなり、より凸状部分のパターン消失が生じ易い状態となる。つまり、パターン微細化が進展する状況下では、凹凸パターン4の凸状部分の消失等を抑制することができ、良好なパターン形状を確実に得られるようにすることが望ましい。
【0033】
これらの点につき、本願発明者は、鋭意検討を重ねた結果、以下に述べる知見を得るに至った。すなわち、パターン微細化に伴うパターン部分の消失等を抑制するためには、パターン形成工程(S2,S3,S4)で形成した凹凸パターン4の凸状部分の頂部を含む当該頂部の近傍領域に、除去工程(S6)でのエッチングによる凹凸パターン4のパターン消失を抑制する形状の保護膜を、生産性低下や成膜制御の困難性等を招くことなく、予め形成しておく。ここで、「凹凸パターン4のパターン消失を抑制する形状」とは、パターン消失を何らかの形で抑制し得る形状のことをいい、具体的には凹凸パターン4に保護膜8がない場合に除去工程(S6)でのエッチングにより凹凸パターン4の凸状部分が消失され得る分(すなわちパターン消失分)を補填する形状のことをいう。さらに、凹凸パターン4における凸状部分に高さバラツキが生じることを抑制するためには、凹凸パターン4を形成した後、その凹凸パターン4上に保護膜を形成するとともに、その保護膜を連続膜(平坦膜)となるまで成長させることで、凹凸パターン4のパターン高さ(凸状部分の高さ)の不均一さを是正するようにすればよい。
【0034】
このような態様の保護膜形成を可能にすべく、本願発明者は、さらに鋭意検討を重ねた結果、以下に述べる手順のレジストパターン形成方法に想到した。すなわち、レジストパターン5を形成する際には、パターン形成工程(S2,S3,S4)の後、除去工程(S6)の前に、保護膜形成工程(S5)を行う。そして、保護膜形成工程(S5)では、図3(a)に示すようなパターン形成工程(S2,S3,S4)で形成した凹凸パターン4に対して、図3(b)に示すように、その凹凸パターン4の凸状部分の頂部を含む当該頂部の近傍領域に保護膜8を形成する。ここで、保護膜8が形成される箇所のうち、「凸状部分の頂部」とは、凸状部分の一番高い部分のことをいい、具体的には側断面矩形状の凸状部分であれば当該凸状部分の上面のことをいう。このような頂部の「近傍領域」には、当該頂部に連なる角部と、その角部に連なる側面の一部が含まれる。したがって、「近傍領域」に形成される保護膜8は、凸状部分の頂部に連なる角部を覆うように配設されることになる。また、保護膜形成工程(S5)では、図3(c)に示すように、凹凸パターン4の隣り合う凸状部分に形成される保護膜8同士が接触して、当該凹凸パターン4における凹状部分を塞ぐ連続膜となるように、当該保護膜8を成長させる。さらに、保護膜形成工程(S5)では、図3(d)に示すように、連続膜である保護膜8の膜表面側における段差の高さD2が、凹凸パターン4の凸状部分の高さバラツキの高低差D1(図3(a)参照)より小さくなるように、当該保護膜8の成長を行う。このときの保護膜8の成長は、連続膜が平坦膜であるとみなせるまで行うことが好ましい。なお、保護膜8の形成は、化学的成膜処理によって行う。ここで「化学的成膜処理」とは、保護膜8の形成成分を堆積させて行う化学的な成膜処理のことをいい、その代表例としては化学気相成長法(CVD法)が広く知られている。
【0035】
このような手順のレジストパターン形成方法を用いてレジストパターン5を形成すれば、除去工程(S6)でRIE法によりエッチングを連続膜である保護膜8の膜表面側から行うことで、凹凸パターン4の高さバラツキ分が保護膜8によって相殺されることになり、図3(e)に示すように、レジストパターン5について良好なパターン形状(すなわち凸状部分のパターン高さの不均一さが是正されたパターン形状)を確実に得ることができるようになる。
【0036】
(保護膜形成工程の詳細)
続いて、保護膜形成工程(S5)の詳細について、具体的に説明する。
【0037】
保護膜形成工程(S5)では、除去工程(S6)でのエッチングを行うためのエッチング装置を用いる。さらに詳しくは、例えば誘導結合反応性イオンエッチング(ICPRIE)装置を用いる。ICPRIE装置は、ICPコイル側で高密度プラズマを発生するとともに、被加工物にイオンやラジカルを引き寄せるためにバイアス電極には可変周波数電源が接続されて構成されている。このような構成のICPRIE装置は、幅広いエッチング条件に対応することができ、また印加するバイアス電力をプラズマと独立して制御することが可能である。
【0038】
ICPRIE装置を用いて保護膜形成工程(S5)を行う場合には、先ず、ICPRIE装置のエッチング室内に、パターン形成工程(S2,S3,S4)にてレジスト膜に対する凹凸パターン形成がされた後のマスクブランク1をセットする。そして、真空排気したエッチング室に活性ガスを導入する。このとき、活性ガスとして、保護膜8の成分を含む原料ガスを用いる。具体的には、原料ガスとして、例えばフッ素系ガスであるCHF、CHF、C等が用いられる。CHFガスを用いた場合には、後述するように、CHFガスの分離によって生み出されるCFxが保護膜8の成分となる。
【0039】
このようにしてエッチング室内を保護膜8の成分を含む原料ガス雰囲気にした後は、エッチング室内で高密度プラズマを発生させる。すると、エッチング室内では、CHFガスの分離によって、CHFx+CFx+Fが反応物として生み出される。
【0040】
さらに、エッチング室内のバイアス電極には、エッチングを行う際とは異なるバイアス電力を印加する。これにより、被加工物であるマスクブランク1には、エッチングの際のようにFラジカルが引き寄せられるのではなく、保護膜8の成分であるCF系生成物(具体的にはCFx)が引き寄せられる。したがって、マスクブランク1に形成されている凹凸パターン4上には、保護膜8の成分であるCF系生成物が堆積され、これにより当該保護膜8が形成されることになる。つまり、印加するバイアス電力の大きさによっては、被加工物がエッチングされるのではなく、当該被加工物に対して反応生成物の堆積による成膜、すなわち化学的成膜処理が行われるのである。
【0041】
ここで、印加するバイアス電力について、具体例を挙げてさらに詳しく説明する。
図4は、本発明に係るレジストパターン形成方法におけるバイアス電力印加の一具体例を示す説明図である。
図例は、プロセス圧力2PaのCHFガス雰囲気でICP電力300W、電力印加時間3分という条件下にてバイアス電力を印加した場合について、バイアス電力の大きさ(単位:W)と膜堆積(デポ)レート(単位:Å/min)との関係を示している。
図例の関係によれば、バイアス電力が例えば17Wであるとき(図中A点参照)を境にして、デポレートの値の正負が切り替わる。すなわち、バイアス電力として例えば17W以上を印加すると、デポレートが負の値となり、被加工物がエッチングされることになるが、バイアス電力が例えば17W未満であれば、デポレートが正の値となり、被加工物に対して反応生成物の堆積による成膜が行われることがわかる。したがって、保護膜形成工程(S5)にて保護膜8を形成するためには、デポレートが正の値となる範囲内でバイアス電力の値を適宜決定し、その決定した値のバイアス電力をバイアス電極に印加すればよい。
【0042】
バイアス電力の大きさとデポレートとの関係は、実験やシミュレーション等によって得られる結果に基づいて予め特定しておけばよい。ただし、圧力、ICP電力、印加時間等の条件が変わると、バイアス電力の大きさとデポレートとの関係も変わることになる。具体的には、バイアス電力が所定値以上でデポレートが負の値となり、バイアス電力が所定値未満でデポレートが正の値となる点では共通するが、図中において互いの関係を特定する線分の傾きが条件次第で変化する。つまり、図4に示した関係は、バイアス電力の大きさとデポレートとの関係の一具体例に過ぎない。
【0043】
特に、原料ガスであるCHFガスを充填させた雰囲気圧力(すなわちエッチング室内のプロセス圧力)については、バイアス電力の大きさとデポレートとの関係に与える影響が大きい。例えば、プロセス圧力が高真空になるほど、互いの関係を特定する線分の傾きが緩やかになる傾向にある。このことは、プロセス圧力をコントロールすることによって、保護膜8を形成する際のデポレートをコントロールし得ることを意味する。
【0044】
以上のようなCF系生成物の堆積による保護膜8の形成は、化学的成膜処理によって行う。したがって、マスクブランク1に形成されている凹凸パターン4の凸状部分の頂部はCF系生成物が堆積し易い一方で、当該凹凸パターン4の凹状部分の底部にはCF系生成物が堆積し難くなる。このことは、凹凸パターン4における凸状部分のピッチが、例えば40nm以下、更には30nm以下といったように、超微細になるほど顕著となる。
【0045】
ところで、CF系生成物が堆積されるマスクブランク1上の凹凸パターン4は、図3(a)に示すように、パターン高さ(凸状部分の高さ)が不均一なことがあり得る。パターン高さが不均一であると、凹凸パターン4は、凸状部分に高さバラツキが生じることになる。その場合に、凹凸パターン4における高さバラツキの高低差は、凸状部分の最大高さと最小高さの差の値D1によって規定されるものとする。
【0046】
このような状況下でCF系生成物の堆積を継続的に行うと、当該CF系生成物は、凹凸パターン4におけるパターン高さの高低にかかわらず、主として、当該凹凸パターン4の凸状部分の頂部を含む当該頂部の近傍領域(すなわち、凸状部分の上面および上面に連なる角部を含む領域)に堆積して成長する。これにより、凹凸パターン4の凸状部分の頂部を含む当該頂部の近傍領域には、図3(b)に示すように、当該近傍領域を被覆するように成長した保護膜8が形成される。このようにして形成される保護膜8は、凹凸パターン4の凸状部分よりも幅広となるような形状を有する。
【0047】
このような状況下でさらにCF系生成物の堆積を継続的に行うと、保護膜8が上方および側方のそれぞれに向けて増大して、凹凸パターン4の隣り合う凸状部分に形成される保護膜8同士が接触する。そして、さらにその上面側にCF系生成物が堆積して、図3(c)に示すように、凹凸パターン4における凹状部分に空間領域を残したまま(すなわち凹状部分がCF系生成物で満たされることなく)、保護膜8同士の接触部分が当該凹状部分を塞ぐような連続膜となる。つまり、CF系生成物の継続的な堆積によって、凹凸パターン4における凹状部分を塞ぐ連続膜となるように、保護膜8が成長する。
【0048】
その後もCF系生成物の堆積を継続的に行うと、保護膜8の上面側、すなわち連続膜の膜表面側では、図3(d)に示すように、CF系生成物の堆積による膜表面の平坦化が進行する。つまり、保護膜8の成長に伴って、当該保護膜8が平坦化することになる。これは、CF系生成物の堆積作用、すなわち化学的成膜処理の特徴的な作用によるものである。
【0049】
保護膜8の成長は、少なくとも、連続膜である保護膜8の膜表面側における段差の高さD2が、凹凸パターン4における高さバラツキの高低差D1より小さくなるまで行う。ここで、段差の高さD2は、凹凸パターン4の凹状部分を塞いで形成される保護膜8の段差部分の高さのことをいい、当該段差部分が凹形状である場合には当該凹形状の膜厚方向の深さがこれに相当する。また、保護膜8の膜表面側の複数個所に段差が存在する場合には、当該複数個所の各段差の高さのうちの最大高さのことをいう。
【0050】
また、保護膜8の成長は、好ましくは、連続膜である保護膜8が、平坦膜であるとみなせるまで行う。ここで、「平坦膜であるとみなせる」とは、保護膜8の膜表面側における段差の高さD2が「0」であるか、または凹凸パターン4の高さバラツキの高低差D1より小さくかつ保護膜8の高さの5%以下である状態のことをいう。ここでいう「保護膜8の高さ」とは、凹凸パターン4の凸状部分の頂部から当該頂部の直上の保護膜8の膜表面までの高さ(すなわち凸状部分の頂部の直上における保護膜8の膜厚)のことを指す。
【0051】
このような保護膜8の成長は、凹凸パターン4のパターンピッチ、プロセス圧力、バイアス電力の大きさ、原料ガスとして使用するガス種類、反応生成物を堆積させる際のデポレート、処理時間(反応生成物の堆積時間)等の影響を受ける。つまり、これらの条件を適宜設定することによって、所望状態となるまで、保護膜8を成長させることが可能になると考えられる。ここでいう「所望状態」とは、保護膜8の段差の高さD2が凹凸パターン4の高さバラツキの高低差D1より小さくなる状態、さらに好ましくは保護膜8が平坦膜であるとみなせる状態のことをいう。保護膜8が所望状態であるか否かは、例えば反応生成物の堆積時間によって管理すること可能である。なお、どのような条件の場合にどの程度の保護膜8の成長が可能であるかについては、実験やシミュレーション等の経験則を通じて予め特定しておくことが考えられる。
【0052】
図3(d)に示すような所望状態の保護膜8を形成するための条件の一例としては、パターンピッチが30nmである凹凸パターン4に対して、プロセス圧力2PaのCHFガス雰囲気でICP電力300Wという条件下にて、17W未満(具体的には例えば0W)のバイアス電力を、予め設定された印加時間(具体的には例えば3分)だけ印加する、というものが挙げられる。ただし、ここで挙げた条件は、単なる一例に過ぎず、所望状態の保護膜8を形成できれば、他の条件による保護膜形成を行っても構わない。
【0053】
(除去工程)
以上のような保護膜形成を行った後は、除去工程(S6)を行って、マスクブランク1に形成されている凹凸パターン4の凹状部分の底部に対するエッチングにより、当該底部におけるスカム(現像残渣)を除去する。すなわち、除去工程(S6)にてディスカムを行う。
【0054】
具体的には、エッチング室内のバイアス電極に印加するバイアス電力を、デポレートが負の値となる範囲内の電力値に切り替える。これにより、被加工物であるマスクブランク1にはFラジカルが引き寄せられることになり、そのマスクブランク1を覆うように形成された保護膜8の膜表面側からエッチングが行われることになる。
【0055】
このときのエッチングは、連続膜である保護膜8の膜全体に対してほぼ均等に進行するため、保護膜8の膜表面側の形状が(当該膜表面側における段差の高さD2も含めて)そのまま反映される。したがって、エッチングが進行し、少なくとも保護膜8の連続部分が消失して、凹凸パターン4の凹状部分の底部が露出した状態になると、凹凸パターン4のパターン高さ(凸状部分の高さ)の不均一さが是正される。つまり、凹凸パターン4の各凸状部分のうち、他に比べてパターン高さが低い箇所には、図3(e)に示すように、保護膜8が部分的に残存することになり、これにより凹凸パターン4の高さバラツキ分が相殺されるのである。
【0056】
そして、凹凸パターン4の凹状部分の底部が露出し、当該底部のスカム除去が完了するまでエッチングを行うと、マスクブランク1上には、エッチング後の凹凸パターン4および部分的に残存する保護膜8によって構成されるレジストパターン5が形成される。このようにして形成されるレジストパターン5は、凹凸パターン4における高さバラツキの影響が排除されたものとなる。したがって、保護膜形成工程(S5)を経ないで形成される場合に比べると、良好なパターン形状(すなわち凸状部分のパターン高さの不均一さが是正されたパターン形状)が得られる。
【0057】
また、エッチングの過程において、保護膜8の連続部分が消失した後は、当該エッチングが凹凸パターン4の凸状部分の上方および両側方の三方向から進む。その場合であっても、凹凸パターン4の凸状部分の頂部を含む当該頂部の近傍領域には保護膜8が形成されているので、エッチングによる凹凸パターン4のパターン消失分が保護膜8によって補填されることになる。つまり、凸状部分の上方および両側方の三方向からエッチングが進んでも、当該凸状部分における角部ではなく、主に当該角部を覆うように形成されている保護膜8が消失するので、当該凸状部分が部分的に消失してしまうのを抑制することができる。したがって、マスクブランク1上に形成されるレジストパターン5は、保護膜形成工程(S5)を経ないで形成される場合に比べると、パターン消失部分がない所望通りのパターン形状(すなわち凸状部分の側断面がほぼ矩形状となるパターン形状)のものとなる。
【0058】
以上のような除去工程(S6)で行うエッチングは、スカム除去が完了するまで行うが、具体的にはバイアス電力の切り替えによるエッチング開始からの経過時間(すなわちエッチング処理時間)によって管理することが考えられる。このときのエッチング処理時間は、保護膜8の形成膜厚、凹凸パターン4および保護膜8に対するエッチングレート等を勘案して、予め設定しておけばよい。
【0059】
図3(d)に示す保護膜形成状態から図3(e)に示すレジストパターン5を形成するためのエッチング条件は、上述したエッチング処理時間を除けば、保護膜形成工程(S5)を経ないで除去工程(S6)を行う場合、すなわち従来技術によるレジストパターン形成方法においてディスカム処理を行う場合と同じ条件とすることが考えられる。ただし、ここで挙げた条件は、単なる一例に過ぎず、他の条件によるエッチングを行っても構わない。
【0060】
また、以上のような除去工程(S6)であれば、バイアス電力の切り替えによって、保護膜形成工程(S5)から除去工程(S6)へ遷移させることができる。したがって、除去工程(S6)への遷移を、迅速かつ簡便に行うことが実現可能である。
【0061】
ただし、除去工程(S6)を行う際のエッチング条件は、上述したものに限定されることはない。例えば、保護膜形成工程(S5)の後、エッチング室内をCHFガス雰囲気から酸素ガスとアルゴン(Ar)ガスの混合ガス雰囲気に置換して、エッチングレート向上に伴うディスカム処理の迅速化を図ることも考えられる。
【0062】
<3.本実施形態の効果>
本実施形態で説明したレジストパターン形成方法およびそのレジストパターン形成方法を用いたモールド製造方法によれば、以下に述べる効果が得られる。
【0063】
本実施形態によれば、パターン形成工程(S2,S3,S4)の後、除去工程(S6)の前に、保護膜形成工程(S5)を行う。詳しくは、保護膜形成工程(S5)を行うことで、パターン形成工程(S2,S3,S4)で形成した凹凸パターン4上に保護膜8を形成するとともに、当該保護膜8が凹凸パターン4の凹状部分を塞ぐ連続膜となり、膜表面側の段差の高さD2が凹凸パターン4の高さバラツキの高低差D1より小さくなるまで当該保護膜8を成長させる。そして、保護膜形成工程(S5)の後に行う除去工程(S6)では、保護膜8の膜表面側からエッチングを行う。したがって、除去工程(S6)の後に得られるレジストパターン5は、部分的に残存する保護膜8によって凹凸パターン4の高さバラツキ分が相殺され、凹凸パターン4のパターン高さ(凸状部分の高さ)の不均一さが是正されることになる。つまり、凹凸パターン4に高さバラツキが生じていても、保護膜形成工程(S5)および除去工程(S6)を経て形成されるレジストパターン5は、高さバラツキが保護膜8の段差の高さD2程度に抑えられたパターン形状(すなわち凸状部分のパターン高さの不均一さが是正されたパターン形状)のものとなる。
【0064】
しかも、本実施形態では、保護膜形成工程(S5)での保護膜8の形成を、化学的成膜処理によって行う。化学的成膜処理を用いて行うと、凹凸パターン4の凸状部分の頂部と当該凹凸パターン4の凹状部分の底部とを比べると、凸状部分の頂部のほうが成膜量(保護膜8の形成成分の堆積量)の比率が高くなる。このような反応生成物の堆積作用を利用することで、本実施形態では、凹凸パターン4の凸状部分の頂部の近傍領域に保護膜8を形成し、その保護膜8を連続膜となるまで成長させ、さらには保護膜8の膜表面側の段差の高さD2を小さくすること、すなわち連続膜である保護膜8を平坦化させることを、容易に実現することができる。このことは、凹凸パターン4における凸状部分のピッチが例えば40nm以下(さらに詳しくは30nm以下)といったように超微細になるほど顕著であり、特にパターンの超微細化が進展している状況下において非常に好適なものとなる。
また、化学的成膜処理により保護膜8を形成すれば、凹凸パターン4の凸状部分の頂部に対して高い比率で保護膜8の成分が堆積されるので、例えばパターン全体に均一に堆積されてしまう場合とは異なり、その後に等方エッチングがされても凸状部分の頂部の近傍領域における保護膜8が残存することになる。さらには、化学的成膜処理による保護膜成膜と等方エッチングとの縦横比率(縦方向への処理レートと横方向への処理レートとの割合)が互いに異なるので、その後に行う等方エッチングの際に凸状部分の頂部の近傍領域の消失が防げる。これらのことから、化学的成膜処理により保護膜8を形成すれば、保護膜8の連続部分が消失した後にエッチングを継続して行う場合であっても、凹凸パターン4の凸状部分におけるエッチング耐性を増加させて、当該凸状部分のパターン消失を確実に抑制することができると言える。このことも、特にパターンの超微細化が進展している状況下においては、非常に好適なものとなる。
【0065】
さらに、本実施形態では、保護膜形成工程(S5)にて連続膜である保護膜8の膜表面側の段差の高さD2が凹凸パターン4の高さバラツキの高低差D1より小さくなるまで当該保護膜8を成長させることで、レジストパターン5における凸状部分の高さバラツキを抑制する。つまり、レジストパターン5における凸状部分の高さバラツキを抑制するために、例えば、電子線露光によるパターン描画を行う描画機において、高位置精度の制御を行い、かつ、描画速度を遅くするといったことを行う必要がない。したがって、描画機の高コスト化やパターン描画の生産性悪化等を招くことなく、レジストパターン5における凸状部分の高さバラツキを抑制することができる。
【0066】
以上のことから、本実施形態によれば、パターン微細化が進展する状況下においても、描画機の高コスト化やパターン描画の生産性悪化等を招くことなく、レジストパターン5における凸状部分の高さバラツキを抑制することができ、その結果としてレジストパターン5が所望形状から乖離してしまうのを回避することができる。したがって、形成したレジストパターン5をマスクとしてマスクブランク1にパターンを転写する場合に、高精度なパターン形成を行うことができる。
【0067】
特に、本実施形態で説明したように、保護膜形成工程(S5)にて連続膜である保護膜8が平坦膜であるとみなせるまで当該保護膜8を成長させるようにした場合には、レジストパターン5における凸状部分の高さバラツキを確実に抑制し得るようになる。保護膜8の膜表面側の段差の高さD2が「0」または「0」に近い状態となるからである。つまり、保護膜8が平坦膜に近づくほど、レジストパターン5における凸状部分の高さバラツキを抑制する上では好ましいものとなる。
【0068】
また、本実施形態で説明したように、保護膜形成工程(S5)での化学的成膜処理を、除去工程(S6)でのエッチングを行うためのICPRIE装置を用いて行えば、保護膜形成工程(S5)と除去工程(S6)とを同一装置で行うことができる。したがって、保護膜形成工程(S5)から除去工程(S6)への遷移を迅速かつ容易に行うことが可能となり、その結果として保護膜形成工程(S5)を行うことによる生産性低下を極力抑制することが実現可能となる。
【0069】
特に、本実施形態で説明したように、エッチングを行う際とは異なるバイアス電力の印加により保護膜8を形成すれば、印加するバイアス電力の切り替えによって保護膜形成工程(S5)から除去工程(S6)への遷移が可能となる。つまり、バイアス電力の大きさによって化学的成膜処理とエッチング処理とを切り替えるようになるので、保護膜形成工程(S5)から除去工程(S6)への遷移がより一層迅速かつ容易に行えるようになり、生産性低下を抑制する上で非常に好適なものとなる。
【0070】
さらに、本実施形態で説明したように、エッチング室に導入する原料ガスとしてCHFガスを用いれば、化学的成膜処理に際にはCF系生成物(具体的にはCFx)がマスクブランク1に引き寄せられ、エッチングの際にはFラジカルがマスクブランク1に引き寄せられることになる。つまり、CHFガス雰囲気であれば、化学的成膜処理とエッチング処理との両方について、選択的に対応することができるようになる。したがって、保護膜形成工程(S5)から除去工程(S6)への遷移の迅速化および容易化を実現する上で非常に好適である。
【0071】
また、本実施形態では、除去工程(S6)でのエッチングにてディスカムを行う。したがって、例えばディスカムを行わないとレジストパターン5のパターン形状がバラツキを有したものとなり得ることが広く知られているが、そのような事態を招くことを未然に回避することができ、その結果としてレジストパターン5を所望形状に形成することが実現可能となる。
【0072】
また、本実施形態で説明したレジストパターン形成方法を用いてモールド7を製造すれば、パターン微細化が進展する状況下においても、凸状部分の高さバラツキが抑制されたレジストパターン5をマスクにして、基板2に対するパターン加工がされることになる。したがって、加工すべきパターンが微細なものであっても、高精度なパターン形成を行うことができ、特にナノインプリント用原盤となるモールド7の製造に適用した場合に非常に有用である。
【0073】
<4.変形例>
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の開示内容は本発明の例示的な実施形態であり、本発明の技術的範囲が上記の開示内容に限定されることはない。
以下に、上述した実施形態以外の変形例について説明する。
【0074】
上述した実施形態では、電子線露光によるパターン描画を経てレジストパターン形成を行う場合を例に挙げて説明したが、本発明がこれに限定されることはなく、例えばナノインプリント用原盤からのパターン転写を経てレジストパターン形成を行う場合についても、全く同様に適用することが可能である。その場合、除去工程(S6)では、パターン転写によって凹凸パターン4の凹状部分の底部に残存するレジスト膜の薄い残膜を、エッチングにより除去することになる。このような場合であっても、パターン転写の状況によっては凹凸パターン4の凸状部分に高さバラツキが生じてしまうことがあり得るが、除去工程(S6)に先立って保護膜形成工程(S5)で保護膜8を形成しておけば、部分的に残存する保護膜8によって凹凸パターン4の高さバラツキ分が相殺され得るので、凹凸パターン4のパターン高さ(凸状部分の高さ)の不均一さを是正することができる。
【0075】
また、上述した実施形態のように、露光工程(S3)および現像工程(S4)を経てレジストパターン形成を行う場合であっても、電子線露光によるパターン描画に限定されることはない。すなわち、レジスト膜に対して照射するエネルギービームは、当該レジスト膜が反応するものであれば、X線、イオンビーム、プロトンビーム等の他のエネルギービームであっても構わない。
【0076】
また、上述した実施形態では、除去工程(S6)にて凹凸パターン4の凹状底部に残存するスカムをエッチングにより除去する場合について説明したが、他のプロセス次第ではスカムの除去が不要であることもあり得る。その場合であっても、保護膜形成工程(S5)で保護膜8を形成しておけば、レジストパターン5をマスクにしてハードマスク膜3に対するエッチング加工を行う際に、凸状部分の高さバラツキの影響を排除することができ、その結果としてハードマスク膜3に対し高精度なパターン形成を行うことができる。つまり、本発明における「除去工程」は、凹凸パターン4の凹状底部に対してエッチングを行うものであれば、スカムまたは残膜の除去ではなく、マスクブランク1に対するパターン加工を行うためのものであってもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、保護膜形成工程(S5)での保護膜形成を行うための原料ガスおよび除去工程(S6)でのエッチングを行うための処理ガスとしてCHF等を用いる場合を例に挙げたが、例えばCFガスのようなCF系ガスであれば、他のガスであってもCHF等の場合と同様に保護膜形成およびエッチングを選択的に行うことが可能となる。また、保護膜形成工程(S5)と除去工程(S6)とは、必ずしも同一のガス雰囲気である必要はなく、例えば、保護膜形成工程(S5)ではCF系ガスを用い、除去工程(S6)では酸素ガスとアルゴン(Ar)ガスの混合ガスを用いる、といったことも実現可能である。
【0078】
また、上述した実施形態では、被加工物となる基体が基板2上にハードマスク膜3を有して構成されたマスクブランク1である場合について説明したが、ハードマスク膜3を必要とせずにレジストパターン5をマスクとして基板2をエッチングできる場合、基板2に直接レジスト膜を形成しても良い。
【0079】
また、上述した実施形態で説明したレジストパターン形成方法は、ナノインプリント用原盤となるモールド7の製造以外の用途にも適用可能である。すなわち、本発明に係るレジストパターン形成方法は、例えば、半導体装置用フォトマスク、半導体製造、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、回折格子や偏光素子等の光学部品、ナノデバイス、有機トランジスタ、カラーフィルター、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック結晶等の製造にも幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0080】
1…マスクブランク、2…基板、3…ハードマスク膜、4…凹凸パターン、5…レジストパターン、7…モールド、8…保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト膜に凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターン形成工程で形成した前記凹凸パターンの凹状部分の底部に対してエッチングを行う除去工程と、を備えるレジストパターン形成方法において、
前記パターン形成工程の後で前記除去工程の前に、前記パターン形成工程で形成した前記凹凸パターンにおける凸状部分の頂部を含む当該頂部の近傍領域に、化学的成膜処理により保護膜を形成する保護膜形成工程を備え、
前記保護膜形成工程では、前記凹凸パターンの隣り合う凸状部分に形成される前記保護膜同士が接触して当該凹凸パターンにおける凹状部分を塞ぐ連続膜となるように当該保護膜を成長させるとともに、前記連続膜の膜表面側における段差の高さが前記凸状部分の高さバラツキの高低差より小さくなるように当該保護膜の成長を行い、
前記除去工程では、前記連続膜の膜表面側から前記エッチングを行う
ことを特徴とするレジストパターン形成方法。
【請求項2】
前記保護膜形成工程では、前記連続膜が平坦膜であるとみなせるまで、前記保護膜を成長させる
ことを特徴とする請求項1記載のレジストパターン形成方法。
【請求項3】
前記保護膜形成工程で行う前記化学的成膜処理は、前記除去工程での前記エッチングを行うエッチング装置を用いて行う
ことを特徴とする請求項1または2記載のレジストパターン形成方法。
【請求項4】
前記エッチング装置は、前記保護膜形成工程において、前記保護膜の成分を含む原料ガス雰囲気にて、前記エッチングを行う際とは異なるバイアス電圧の印加により前記保護膜を形成する
ことを特徴とする請求項3記載のレジストパターン形成方法。
【請求項5】
前記原料ガスとしてCHF、CHF、Cのうち少なくとも一種を用いる
ことを特徴とする請求項4記載のレジストパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のレジストパターン形成方法を用いて形成した前記レジストパターンをマスクにして被加工物である基体に対するエッチング加工を行うエッチング工程を備え、
前記エッチング工程によるエッチング加工を経て、前記レジストパターンに対応する形状のパターンが前記基体に加工されてなるモールドを得る
ことを特徴とするモールド製造方法。
【請求項7】
前記モールドは、ナノインプリント用原盤となるモールドである
ことを特徴とする請求項6記載のモールド製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−216617(P2012−216617A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79881(P2011−79881)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】