説明

レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法

【課題】本発明の目的は、レジスト膜に対する高い屈折率と高い吸光係数とを有し、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、[A]下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(I)と、ラクトン構造を有する構造単位及び環状カーボネート構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む重合体を含有するレジスト下層膜形成用組成物である。式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。n1及びn2は、それぞれ独立して、0〜2の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造においては、レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。上記微細加工は、一般的には、基板上にレジスト組成物の薄膜を形成する工程、その上にマスクパターンを介して紫外線等の活性光線を照射する露光工程、現像工程、及び形成したレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理するエッチング工程を有する。
【0003】
近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線もKrFエキシマレーザー光(248nm)からArFエキシマレーザー光(193nm)、さらにはEUV(13.5nm)へと短波長化される傾向にある。この短波長化に伴い、活性光線の基板からの乱反射や定在波の影響がより顕在化してきている。そこで、レジスト膜と基板との間に反射防止膜等のレジスト下層膜を設ける技術が検討されている。
【0004】
このレジスト下層膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、α−シリコン等の無機レジスト下層膜や、吸光性物質と高分子化合物とからなる有機レジスト下層膜が知られている。前者はレジスト下層膜の形成に、真空蒸着装置、CVD装置、スパッタリング装置等の設備を必要とするのに対し、後者は特別の設備を必要としない点で有利とされている。かかる有機レジスト下層膜としては、例えば米国特許第5919599号明細書に記載の架橋反応基であるヒドロキシ基と吸光基とを同一分子内に有するアクリル樹脂型レジスト下層膜、米国特許第5693691号明細書に記載の架橋反応基であるヒドロキシ基と吸光基を同一分子内に有するノボラック樹脂型レジスト下層膜等が挙げられる。
【0005】
上述の有機レジスト下層膜では、例えば光や放射線に対して高い屈折率及び吸光係数を有し、反射防止効果が高く、レジスト膜とのインターミキシングが起こらないこと、レジスト膜に比べて高いエッチング選択比を有すること等の今日的に要求される物性が満足されるものではない。加えて、更なるパターンサイズの微細化が求められるリソグラフィー工程においては、耐パターン倒れ性に優れること等の特性も要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5919599号公報
【特許文献2】米国特許第5693691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、レジスト膜に対する高い屈折率と高い吸光係数とを有し、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(I)と、
ラクトン構造を有する構造単位及び環状カーボネート構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む重合体(以下、「[A]重合体」とも称する)
を含有するレジスト下層膜形成用組成物である。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。n1及びn2は、それぞれ独立して、0〜2の整数である。)
【0009】
[A]重合体が、上記特定化合物に由来する構造単位(I)を含むことで、高い屈折率と高い吸光係数とを有し、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。また、[A]重合体が、構造単位(II)を含むことで、形成されるレジスト下層膜のレジスト膜に対する密着性を高めることができ、結果として、耐パターン倒れ性に優れるものとすることができる。
【0010】
上記構造単位(I)は、下記式(1−1)で表されることが好ましい。
【化2】

(式(1−1)中、Rは、上記式(1)と同義である。)
【0011】
[A]重合体が、上記式(1−1)で表される構造単位(I)を含むことで、より高い屈折率と高い吸光係数とを有し、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。
【0012】
[A]重合体は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する構造単位(III)をさらに含むことが好ましい。[A]重合体が、上記構造単位(I)に加えてさらに上記構造単位(III)を含むことで、レジスト膜とインターミキシングを起こさないレジスト下層膜を形成できる。
【0013】
[A]重合体は、電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位(IV)をさらに含むことが好ましい。[A]重合体が、構造単位(IV)をさらに含むことで、レジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより高めることができる。
【0014】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[B]架橋剤をさらに含有することが好ましい。当該レジスト下層膜形成用組成物が、[B]架橋剤をさらに含有することで、形成されるレジスト下層膜とレジスト組成物とのインターミキシングが抑制される。
【0015】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[C]架橋触媒をさらに含有することが好ましい。[C]架橋触媒は、[A]重合体の架橋を促進する成分であり、当該組成物が[C]架橋触媒を含有することで、結果として高い屈折率を有するレジスト下層膜を形成できる。
【0016】
本発明のパターン形成方法は、
(1)当該レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(2)レジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、
(3)マスクを介した放射線の照射により、上記レジスト膜を露光する工程、
(4)上記露光されたレジスト膜の現像により、レジストパターンを形成する工程、並びに
(5)上記レジストパターンをマスクとして、レジスト下層膜及び基板を順次ドライエッチングする工程
を有する。
【0017】
当該パターン形成方法を用いると、レジスト膜に対する高い屈折率と高い吸光係数とを有し、耐パターン倒れ性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【0018】
ここで、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、レジスト膜に対する高い屈折率と高い吸光係数を有し、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法を提供することができる。従って、当該レジスト下層膜形成用組成物は、更なる微細化が求められるリソグラフィー工程において好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、[A]重合体を含有する。また、当該レジスト下層膜形成用組成物は、好適成分として[B]架橋剤、[C]架橋触媒、[D]溶媒及び[E]界面活性剤を含有することができる。さらに当該レジスト下層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限りその他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分を詳述する。
【0021】
<[A]重合体>
[A]重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)と、ラクトン構造を有する構造単位及び環状カーボネート構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む重合体である。また、[A]重合体は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する構造単位(III)及び/又は電子求引性基を有する芳香族構造を有する構造単位(IV)を含むことが好ましい。さらに、[A]重合体は、本発明の効果を損なわない限り、構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(III)及び構造単位(IV)以外のその他の構造単位(V)を有してもよい。なお、[A]重合体は、各構造単位を2種以上有してもよい。以下、各構造単位を詳述する。
【0022】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される構造単位である。[A]重合体が、上記特定構造を含む構造単位(I)を含むことで、より高い屈折率と高い吸光係数とを有し、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。
【0023】
上記式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。n1及びn2は、それぞれ独立して、0〜2の整数である。
【0024】
上記Rで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が挙げられる。例えば、但し、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アシル基等が挙げられる。
【0025】
炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又はこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0026】
上記炭素数1〜20の鎖状若しくは分岐状の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0027】
上記炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環式不飽和炭化水素基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0028】
上記炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0029】
炭素数1〜20の鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を組み合わせた基としては、例えばベンジル基、トリチル基等が挙げられる。
【0030】
n1及びn2としては、共に0であることが好ましい。
【0031】
構造単位(I)は、上記式(1−1)で表されることが好ましい。[A]重合体が、上記式(1−1)で表される構造単位(I)を含むことで、より高い屈折率と高い吸光係数とを有し、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。
【0032】
上記式(1−1)中、Rの定義は、上記式(1)と同様である。
【0033】
構造単位(I)を与える単量体としては、例えば下記式で表される(1−1−1)〜(1−1−7)等が挙げられる。
【0034】
【化3】

【0035】
上記単量体のうち、単量体(1−1−1)、(1−1−2)が好ましい。
【0036】
[A]重合体における構造単位(I)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して1モル%〜60モル%が好ましく、10モル%〜50モル%がより好ましい。構造単位(I)の含有率を上記特定範囲とすることで、高い屈折率と高い吸光係数を有し、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。
【0037】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、ラクトン構造を有する構造単位及び環状カーボネート構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位である。[A]重合体が、上記構造単位(II)を含むことで、形成されるレジスト下層膜のレジスト膜に対する密着性を高めることができ、結果として、耐パターン倒れ性に優れるものとすることができる。
【0038】
構造単位(II)を与える単量体としては、例えば下記式で表される単量体(2−1)〜(2−12)等が挙げられる。
【0039】
【化4】

【0040】
上記単量体のうち、単量体(2−1)、単量体(2−2)が好ましい。
【0041】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して5モル%〜50モル%が好ましく、10モル%〜40モル%がより好ましい。構造単位(II)の含有率を上記特定範囲とすることで、形成されるレジスト下層膜のレジスト膜に対する密着性を高めることができる。
【0042】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する構造単位である。[A]重合体が、さらに上記構造単位(III)を含むことで、架橋剤又は架橋性基との反応に優れ、レジスト膜とインターミキシングを起こさないレジスト下層膜を形成できる。
【0043】
構造単位(III)を与える単量体としては、例えば下記式で表される単量体(3−1)〜(3−4)等が挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
上記単量体のうち、単量体(3−1)が架橋剤又は架橋性基との反応に優れ、レジスト膜とインターミキシングを起こさない点で好ましい。
【0046】
[A]重合体における構造単位(III)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して5モル%〜〜50モル%が好ましく、10モル%〜40モル%がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記特定範囲とすることで、架橋剤又は架橋性基との反応に優れ、レジスト膜とインターミキシングを起こさないレジスト下層膜を形成できる。
【0047】
[構造単位(IV)]
構造単位(IV)は、電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位である。[A]重合体が、上記構造単位(IV)をさらに含むことで、レジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより高めることができる。
【0048】
構造単位(IV)を与える単量体としては、例えば下記式で表される単量体(4−1)〜(4−10)等が挙げられる。
【0049】
【化6】

【0050】
上記単量体のうち、単量体(4−1)が好ましい。
【0051】
[A]重合体における構造単位(IV)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して5モル%〜60モル%が好ましく、10モル%〜50モル%がより好ましい。構造単位(IV)の含有率を上記特定範囲とすることで、レジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより高めることができる。
【0052】
[構造単位V]
[A]重合体は、本発明の効果を損なわない限り、構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(III)及び構造単位(IV)以外の、構造単位(V)を有してもよい。
【0053】
構造単位(V)を与える単量体としては、例えば下記式で表される単量体(5−1)等が挙げられる。
【0054】
【化7】

【0055】
[A]重合体が構造単位(V)を含む場合、[A]重合体における構造単位(V)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して5モル%〜60モル%が好ましく、10モル%〜50モル%がより好ましい。構造単位(V)の含有率を上記特定範囲とすることで、レジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより高めることができる。
【0056】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。
【0057】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃であり、50℃〜150℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0058】
上記ラジカル開始剤としては、例えばジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。
【0059】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、2種以上を併用できる。
【0060】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することができる。再沈溶媒としては、アルコール系溶媒等を使用できる。
【0061】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、例えば500〜100,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましい。[A]重合体のMwが上記特定範囲未満の場合、レジスト下層膜のインターミキシング耐性が低下するおそれがある。一方、Mwが100,000超えると、レジスト下層膜の面内均一性が低下するおそれがある。
【0062】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常1以上3以下であり、1以上2.5以下が好ましい。
【0063】
<[B]架橋剤>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[B]架橋剤をさらに含有することが好ましい。当該レジスト下層膜形成用組成物が[B]架橋剤をさらに含有することで、[B]架橋剤と[A]重合体との架橋反応が起こり、形成されるレジスト下層膜とレジスト組成物とのインターミキシングが抑制される。
【0064】
[B]架橋剤としては、例えば多官能(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物等が挙げられる。
【0065】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
エポキシ化合物としては、例えばノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0067】
ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物としては、例えば2−ヒドロキシメチル−4,6−ジメチルフェノール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、3,5−ジヒドロキシメチル−4−メトキシトルエン[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール]等が挙げられる。
【0068】
アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物としては、例えばヘキサメトキシメチル化メラミン、テトラメトキシメチル化グリコールウリル等が挙げられ、ヘキサメトキシメチル化メラミン、テトラメトキシメチル化グリコールウリルが好ましい。
【0069】
これらの[B]架橋剤は、2種以上を併用してもよい。[B]架橋剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、通常0.1質量部〜50質量部であり、好ましくは1質量部〜30質量部である。[B]架橋剤の含有量が0.1質量部未満であると、得られるレジスト下層膜の硬度が不十分となるおそれがある。一方、[B]架橋剤の含有量が50質量部を超えると、レジスト下層膜中の架橋剤とレジスト膜との間で架橋反応が起きる可能性がある。
【0070】
<[C]架橋触媒>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[C]架橋触媒を含有することが好ましい。[C]架橋触媒は、[A]重合体の架橋を促進する成分であり、当該組成物が[C]架橋触媒を含有することで、結果として高い屈折率を有するレジスト下層膜を形成できる。
【0071】
[C]架橋触媒としては、例えば各種アミン化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メルカプタン系化合物、ヒドラジド類、ポリフェノール、多塩基酸、光酸発生剤、熱酸発生剤等が挙げられる。これらのうち、下記式(C−1)、(C−2)で表される化合物が好ましい。
【0072】
【化8】

【0073】
[C]架橋触媒の含有量は、[A]重合体100質量部に対して、通常0.1質量部以上20質量部以下であり、好ましくは1質量部以上10質量部以下である。[C]架橋触媒の含有量が0.1質量部未満であると、得られるレジスト下層膜の硬度が不十分となるおそれがある。一方、[C]架橋触媒の含有割合が20質量部を超えると、レジスト下層膜中の架橋剤とレジスト膜との間で架橋反応が起きるおそれがある。
【0074】
<[D]溶媒>
当該レジスト下層膜形成用組成物は[D]溶媒を含有することが好ましい。[D]溶媒は少なくとも上記の[A]重合体、[B]架橋剤、[C]架橋触媒、[E]界面活性剤及び必要に応じて加えられるその他の任意成分を溶解できれば特に限定されない。[D]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。なお、これらの[D]溶媒は、2種以上を併用することができる。
【0075】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0076】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0077】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0078】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる
【0079】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0080】
これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0081】
<[E]界面活性剤>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[E]界面活性剤を含有することが好ましい。[E]界面活性剤は、レジスト下層膜形成用組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸系共重合体類等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系共重合体類の市販品としては、例えばポリフローNo.57、同No.95(共栄社化学製)等が挙げられる。
【0083】
フッ素系界面活性剤としては、例えば1,1,2,2−テトラフルオロオクチル(1,1,2,2−テトラフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル等のフルオロエーテル類;パーフルオロドデシルスルホン酸ナトリウム;1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフルオロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロデカン等のフルオロアルカン類;フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類;フルオロアルキルオキシエチレンエーテル類;フルオロアルキルアンモニウムヨージド類;フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類;パーフルオロアルキルポリオキシエタノール類;パーフルオロアルキルアルコキシレート類;フッ素系アルキルエステル類等が挙げられる。
【0084】
これらのフッ素系界面活性剤の市販品としては、例えばエフトップEF301、303、352(新秋田化成製)、メガファックF171、172、173(大日本インキ製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC−101、102、103、104、105、106(旭硝子製)、FTX−218(ネオス製)等が挙げられる。
【0085】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えばSH200−100cs、SH28PA、SH30PA、ST89PA、SH190(東レダウコーニングシリコーン製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業製)等が挙げられる。
【0086】
[E]界面活性剤を使用する場合の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。[E]界面活性剤の含有量を0.1質量部以上5質量部以下とすることにより、レジスト下層膜形成用組成物の塗布性を最適なものとすることができる。
【0087】
<その他の任意成分>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分としては、例えば保存安定剤等が挙げられる。
【0088】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製方法>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、例えば[D]溶媒中で[A]重合体、[B]架橋剤、[C]架橋触媒、[E]界面活性剤及び必要に応じてその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製される。当該レジスト下層膜形成用組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用される。
【0089】
当該レジスト下層膜形成用組成物を溶液状態として調製する場合、[A]重合体、好適成分である[B]架橋剤、[C]架橋触媒、[D]溶媒、[E]界面活性剤及びその他の任意成分の合計量の割合は、使用目的や必要な膜厚の値等に応じて任意の濃度に設定することができる。
【0090】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、
(1)当該レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程(以下、「工程(1)」とも称する)、
(2)レジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程(以下、「工程(2)」とも称する)、
(3)マスクを介した放射線の照射により、上記レジスト膜を露光する工程(以下、「工程(3)」とも称する)、
(4)上記露光されたレジスト膜の現像により、レジストパターンを形成する工程(以下、「工程(4)」とも称する)、並びに
(5)上記レジストパターンをマスクとして、レジスト下層膜及び基板を順次ドライエッチングする工程(以下、「工程(5)」とも称する)
を有する。
【0091】
当該パターン形成方法を用いると、レジスト膜に対する高いエッチング選択比を有し、反射防止効果が高く、耐パターン倒れ性に優れるレジストパターンを形成することができる。以下、各工程を詳述する。
【0092】
[工程(1)]
本工程では、当該レジスト下層膜形成用組成物を用いて、基板上にレジスト下層膜を形成する。上記基板としては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等の絶縁膜、並びに市販品であるブラックダイヤモンド(AMAT製)、シルク(ダウケミカル製)、LKD5109(JSR製)等の低誘電体絶縁膜で被覆したウェハ等の層間絶縁膜等が挙げられる。また、この基板としては、配線講(トレンチ)、プラグ溝(ビア)等パターン化された基板を用いてもよい。
【0093】
当該レジスト下層膜の形成方法としては、例えば基板や他の下層膜等の表面に塗布することにより、当該組成物の塗膜を形成し、この塗膜を加熱処理、又は紫外光の照射及び加熱処理を行うことにより硬化させることで形成できる。レジスト下層膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、ディップ法等が挙げられる。また、加熱温度しては、通常50℃〜450℃である。加熱時間としては、通常30秒〜1,200秒であり、好ましくは45秒〜600秒である。
【0094】
また、上記基板には、予め本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いて得られるレジスト下層膜とは異なる他の下層膜(以下、「他の下層膜」とも称する)が形成されていてもよい。この他の下層膜は、反射防止機能、塗布膜平坦性、CF等のフッ素系ガスに対する高エッチング耐性等が付与された膜である。この他の下層膜としては、例えば「NFC HM8005」(JSR製)、「NFC CT08」(JSR製)等の市販品を使用することができる。
【0095】
当該レジスト下層膜の膜厚としては、通常5nm以上200nm以下であり、パターンニング性を高めるためには、10nm以上100nm以下が好ましい。
【0096】
[工程(2)]
本工程では、レジスト組成物を用いて、工程(1)にて得られたレジスト下層膜上にレジスト膜を形成する。
【0097】
上記レジスト組成物としては、例えば光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。また、上記レジスト組成物としては、孔径0.2μm程度のフィルターを用いてろ過したものを好適に用いることができる。なお、本発明のパターン形成方法においては、市販品のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0098】
レジスト組成物を塗布する方法は特に限定されず、例えばスピンコート法等の従来の方法によって塗布することができる。なお、レジスト組成物を塗布する際には、得られるレジスト膜が所定の膜厚となるように、塗布するレジスト組成物の量を調整する。
【0099】
上記レジスト膜は、上記レジスト組成物を塗布することによって形成された塗膜をプレベークすることにより、塗膜中の溶媒(即ち、レジスト組成物に含有される溶媒)を揮発させて形成することができる。プレベークする際の温度は、使用するレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、30℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは50℃〜150℃である。なお、このレジスト膜の表面にさらに他の塗膜を設けてもよい。プレベークする時間としては、20秒〜300秒が好ましく、40秒〜150秒がより好ましい。レジスト膜の膜厚としては、5nm〜500nmが好ましく、10nm〜300nmがより好ましい。
【0100】
[工程(3)]
本工程では、上記レジスト膜に、フォトマスクを介して選択的に放射線を照射して上記レジスト膜を露光する。
【0101】
本工程において用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用されている酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fエキシマレーザー光(157nm)、Krエキシマレーザー光(147nm)、ArKrエキシマレーザー光(134nm)、極紫外線(13.5nm等)がより好ましい。
【0102】
また、露光する方法についても特に制限はなく、従来公知のパターン形成において行われる方法に準じて行うことができる。また、液浸露光法も採用することができる。
【0103】
[工程(4)]
本工程では、工程(3)において露光したレジスト膜を現像して、レジストパターンを形成する。
【0104】
現像に用いる現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択することができる。ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物の場合には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液を用いることができる。また、これらのアルカリ性水溶液は、水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加したものであってもよい。
【0105】
また、ネガ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト組成物の場合には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液等が挙げられる。
【0106】
本工程においては、上記現像液で現像を行った後、洗浄し、乾燥することによって上記フォトマスクに対応した所定のレジストパターンを形成することができる。
【0107】
なお、本工程では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、現像を行う前(即ち、工程(3)における露光を行った後)にポストベークを行うことが好ましい。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、50℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜150℃である。ポストベークする時間としては、30秒〜300秒が好ましく、40秒〜150秒がより好ましい。
【0108】
[工程(5)]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとして、レジスト下層膜及び基板をドライエッチングしてパターンを形成する。ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチング物の元素組成にもよるが、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、CHF、CF等のフッ素系ガス、H、NHのガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【0109】
また、これらのプロセス後、基板上に残存するレジスト下層膜を除去する工程を有していてもよい。
【実施例】
【0110】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例に本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0111】
<[A]重合体の合成>
[A]重合体の合成に用いた各単量体を下記に示す。
【0112】
【化9】

【0113】
[合成例1]
構造単位(I)を与える化合物(M−2)6.81g(31モル%)、構造単位(II)を与える化合物(M−4)6.77g(31モル%)、構造単位(III)を与える化合物(M−5)6.43g(38モル%)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.54g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル40gを仕込み、窒素下、80℃で5時間攪拌し重合反応を行った。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。300gのメタノール:水(質量比8:2)の溶液中に冷却した重合溶液を投入し、重合体を沈殿させた。上澄みの溶液を除いた後、沈殿した重合体にメタノール60gを加え、重合体を洗浄した。上澄み液を除いた後に、60℃にて12時間真空乾燥して、重合体(A−1)を得た(収量18.1g、収率91%)。この共重合体は、Mwが20,110であり、Mw/Mnが2.01であった。13C−NMR分析の結果、(M−2)、(M−4)、(M−5)に由来する各構造単位の含有率はそれぞれ31.1モル%、30.8モル%、38.1モル%であった。なお、13C−NMR分析は、日本電子製JNM−EX400を使用し、測定溶媒として重クロロホルムを使用した。なお、[A]重合体のMw及びMnは下記の条件によるGPCにより測定した。
【0114】
カラム:G2000HXL2本、G3000HXL1本、及びG4000HXL1本(東ソー製)
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0115】
[合成例2〜8]
表1に示す種類及び量の単量体を用いた以外は、合成例1と同様に操作して、各重合体を合成した。合成した各重合体のMw及びMw/Mnを表1にあわせて示す。なお、「−」は、該当する単量体を使用しなかったことを示す。
【0116】
【表1】

【0117】
<レジスト組成物に含有される重合体の合成>
レジスト組成物に含有される重合体の合成に用いた各単量体を下記に示す。
【0118】
【化10】

【0119】
[合成例9]
化合物(M−8)18.60g(15モル%)、化合物(M−9)6.20g(35モル%)、及び化合物(M−11)25.20g(50モル%)を100gの2−ブタノンに溶解し、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.86gを添加して単量体溶液を調製した。引き続き、50gの2−ブタノンを入れた500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を、滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。1,000gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を200gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(P−1)を合成した(収量39g、収率78%)。重合体(P−1)のMwは6,300であり、Mw/Mnは1.4であった。
【0120】
[合成例10]
化合物(M−8)17.69g(40モル%)、化合物(M−10)5.35g(10モル%)、及び化合物(M−11)26.96g(50モル%)を100gの2−ブタノンに溶解し、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.99gを添加して単量体溶液を調製した。引き続き、50gの2−ブタノンを入れた500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を、滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。1,000gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を200gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(P−2)を合成した(収量41g、収率82%)。重合体(P−2)のMwは6,100であり、Mw/Mnは1.4であった。
【0121】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製>
各レジスト下層膜形成用組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
【0122】
<[B]架橋剤>
B−1:下記式(B−1)で表される化合物
B−2:下記式(B−2)で表される化合物
【0123】
【化11】

【0124】
<[C]架橋触媒>
C−1:下記式(C−1)で表される化合物
C−2:下記式(C−2)で表される化合物
【0125】
【化12】

【0126】
<[D]溶媒>
D−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
D−2:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0127】
<[E]界面活性剤>
E−1:FTX−218(ネオス製)
【0128】
[実施例1]
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B]架橋剤としての(B−1)20質量部、[C]架橋触媒としての(C−1)5質量部、並びに[D]溶媒としての(D−1)1,800質量部及び(D−2)1,800質量部を混合してレジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0129】
[実施例2〜9及び比較例1]
表2に示す種類、含有割合の各成分を混合したこと以外は実施例1と同様に操作して各レジスト下層膜形成用組成物を調製した。なお、「−」は、該当する単量体を使用しなかったことを示す。
【0130】
【表2】

【0131】
<レジスト組成物の調製>
[合成例11]
重合体(P−1)70質量部、重合体(P−2)30質量部、酸発生剤としてのトリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート4質量部及び4−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート5質量部、酸拡散制御剤としてのN−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン0.9質量部、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,250質量部及びシクロヘキサノン520質量部を混合してレジスト組成物を調製した。
【0132】
<レジスト下層膜の形成>
上記実施例及び比較例で調製した各レジスト下層膜形成用組成物を、8インチのシリコンウエハ表面に、スピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて205℃で60秒間ベークを行い、膜厚90nmの各レジスト下層膜を形成した。
【0133】
<レジスト膜の形成>
上記各レジスト下層膜の上にレジスト組成物をスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて120℃で60秒間ベークを行い、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。このとき、レジストとレジスト下層膜とのインターミキシングは認められなかった。
【0134】
<レジストパターンの形成>
各レジスト下層膜形成用組成物及びレジスト組成物を塗布したシリコンウェハをArFエキシマレーザー露光装置(NSRS306C、NIKON製)を用い、マスクパターンを介して露光した。露光後、115℃で60秒間ポストベークを行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水で洗浄、乾燥し、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0135】
<評価>
形成した各レジスト下層膜及び各レジストパターンを用いて以下の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0136】
[屈折率及び吸光係数]
形成した各レジスト下層膜について分光エリプソメーターを用い、波長193nmにおける屈折率及び吸光係数を測定した。
【0137】
[耐パターン倒れ性]
パターン設計寸法80nmの1対1ラインアンドスペースが9本並んだレジストパターンを有するマスクを用い、上記手順にて露光を行った。露光量を0.5mJ/cmずつ増やしていき、9本並んだレジストパターンのうち4本が倒れた時、残り5本の線幅の平均値を耐パターン倒れ性(nm)とした。レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(S9380、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0138】
[エッチング選択比]
調製したレジスト下層膜形成用組成物溶液をスピナーを用い、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上にて205℃で1分間焼成し、レジスト下層膜を形成した。ドライエッチングガスとしてCFを用い、ドライエッチング速度を測定した。レジスト組成物のドライエッチング速度を1とした場合のレジスト下層膜形成用組成物のドライエッチング速度をエッチング選択比とした。
【0139】
【表3】

【0140】
表3に示される結果から明らかなように、本発明のレジスト下層膜組成物は、波長193nmのレーザーについての屈折率及び吸光係数において、比較例より高い値を示し、反射防止膜としての性能に優れていることがわかった。また、当該レジスト下層膜はレジスト組成物とのインターミキシングを引き起こさないことがわかった。そして、本発明のレジスト下層膜組成物を用いてパターン形成を行った場合は、比較例と比べて耐パターン倒れ性により優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、レジスト膜に対する、反射防止効果が高く、耐パターン倒れ性に優れるレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法を提供することができる。従って、当該レジスト下層膜形成用組成物は、更なる微細化が求められるリソグラフィー工程において好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(I)と、
ラクトン構造を有する構造単位及び環状カーボネート構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む重合体
を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。n1及びn2は、それぞれ独立して、0〜2の整数である。)
【請求項2】
上記構造単位(I)が、下記式(1−1)で表される請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化2】

(式(1−1)中、Rは、上記式(1)と同義である。)
【請求項3】
[A]重合体が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する構造単位(III)をさらに含む請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
[A]重合体が、電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位(IV)をさらに含む請求項1、請求項2又は請求項3に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
[B]架橋剤をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項6】
[C]架橋触媒をさらに含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項7】
(1)請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(2)レジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、
(3)マスクを介した放射線の照射により、上記レジスト膜を露光する工程、
(4)上記露光されたレジスト膜の現像により、レジストパターンを形成する工程、並びに
(5)上記レジストパターンをマスクとして、レジスト下層膜及び基板を順次ドライエッチングする工程
を有するパターン形成方法。

【公開番号】特開2013−83947(P2013−83947A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202087(P2012−202087)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】