説明

レジスト下層膜用組成物及びこれを用いたレジスト下層膜

【課題】本発明はレジストパターンの裾引きを低減させるとともに、該パターンの形状を改善することが可能なレジスト下層膜用組成物、及びこれを用いたレジスト下層膜を提供する。
【解決手段】レジスト下層膜用組成物中に、質量平均分子量が3000以下の(A)シロキサン系化合物と、(B)シロキサン系重合体と、を含有した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にレジストパターンを形成する際に、反射防止膜として使用されるレジスト下層膜に使用するレジスト下層膜用組成物、これを用いたレジスト下層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、基板へのパターン形成は、リソグラフィープロセスにより行なわれている。
近年では回路基板における半導体素子の高集積化が進むにつれ、露光工程中に発生する定常波が、パターンの寸法変動を引き起こしていた。この定常波を抑える方法として、レジスト組成物中に吸光剤を添加したり、形成されたレジスト層の上面、或いは、レジスト層の下層に反射防止膜を敷いたりする方法が提案されている。
【0003】
また、より微細なパターンを形成するためには、反射防止膜とレジスト層を薄膜化することが求められている。しかしながら、レジスト層の薄膜化に伴い、正確なエッチングを行うことが困難であるために、基板の高精度な加工が困難となっている。そこで、加工対象である基板等の被加工膜とレジスト層との間に、反射防止膜としての機能を備えたレジスト下層膜(ハードマスク)及び/又は有機系ボトムレイヤーを形成して、基板、酸化膜や層間絶縁膜等の被加工膜をドライエッチングするプロセスが行われている。
【0004】
このレジスト下層膜用組成物には、レジスト層とのエッチング選択比の問題からケイ素系の材料を用いることが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2004−310019号公報
【特許文献2】特開2005−18054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示されているレジスト下層膜材料では、該レジスト下層膜材料から形成されたレジスト下層膜上に形成されたレジストパターンにおいて、裾引きが発生するという問題が生じている。このような裾引きが発生した場合には、レジスト下層膜をエッチングする際に所望の形状にパターンを転写できないという問題が生じる。
【0006】
以上の課題に鑑み、本発明はレジストパターンの裾引きを低減させるとともに、該パターンの形状を改善することが可能なレジスト下層膜用組成物、及びこれを用いたレジスト下層膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、質量平均分子量が3000以下の(A)シロキサン系化合物と、(B)シロキサン系重合体と、を含有するレジスト下層膜用組成物を提供する。
また、上記レジスト下層膜用組成物を、塗布して、所定の温度でベークして得られたレジスト下層膜を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レジスト下層膜中の重合体として、質量平均分子量が3000以下の(A)シロキサン系化合物を含有することによって、レジスト下層膜上に形成されたレジストパターンの裾引きを低減するとともに、パターン形状を改善することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明に係るレジスト下層膜用組成物は、(B)シロキサン系重合体(以下、(B)成分ともいう)と、質量平均分子量が3000以下の(A)シロキサン系化合物(以下、(A)成分ともいう)を含有する。
【0010】
[(A)シロキサン系化合物]
本発明に係るレジスト下層膜用組成物は、(A)シロキサン系化合物を含有する。この(A)シロキサン系共重合体は、質量平均分子量が3000以下である。質量平均分子量をこのような範囲とすることによって、レジスト下層膜上に形成されたレジストパターンの裾引きを低減させるとともに、パターンの形状を改善することも可能となる。
【0011】
上記(A)シロキサン系化合物としては、下記の一般式(a−1)及び(a−2)で示されるようなラダー状構造、環状構造もしくはかご型構造のいずれかの構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。
【0012】
【化1】

[式中、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又はアルキル基、アルコキシ基であり、Rはそれぞれ独立して直鎖状、分岐状あるいは環状の炭化水素基であり、(a−1)においてはRとR及び/又はRとRとが一緒になって−O−であってもよく、mは1から8であり、nは2から8である。]
【0013】
ここで、R、R、R、R、Rの「アルキル基」及び「アルコキシ基」としては、炭素数1から3のものであることが好ましい。
これらのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
これらのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
上記一般式(a−1)(a−2)の化合物においては、R、R、RおよびRの合計の25モル%以上が水酸基であることが好ましい。
また、一般式(a−3)の化合物においては、Rの25モル%以上が水酸基であることが好ましい。
【0014】
さらに、Rの炭化水素基としては、直鎖状、分岐状あるいは環状の炭素数1から18の脂肪族炭化水素、又は芳香族炭化水素基であることが好ましい。上記直鎖状又は分岐状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、アダマンチル基等の環状アルキル基;等が挙げられる。上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、トリル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、1−メチル−1−フェニルエチル基等のアラルキル基;等が挙げられる。これらの炭化水素基は、置換基を有していてもよく、この置換基としては、例えば、水酸基、炭素数1から3のアルコキシ基等が挙げられる。
このうち、Rとして好ましいものとしては、ノルボルニル基、または下記式(a−4)で表される基である。
【化2】

[式中、pは0又は1であり、qは0から5である。]
特に、式(a−4)で表される基は、後述の(B)成分、有機溶媒との相溶性に優れ好ましい。
式(a−1)(a−2)で表されるシロキサン系化合物においては、式(a−4)で表される基が、Rの10モル%以上、より好ましくは25モル%以上含まれることが好ましい。また、式(a−3)で表されるシロキサン系化合物においては、式(a−4)で表される基が、Rの12.5モル%以上、より好ましくは25モル%以上含まれることが好ましい。上記値以上にすることにより、(A)シロキサン系化合物の有機溶媒との相溶性を特に向上させることができる。
【0015】
また、式(a−1)の化合物において、RとR及び/又はRとRとが一緒になって−O−であってもよい。この場合、かご型構造となる。かご型構造の場合には、mは、2から4であることが好ましく、略立方体形状のT8構造、略五角柱形状のT10構造、略六角柱形状のT12構造となる。
【0016】
上記一般式(a−1)及び(a−3)で示されるシロキサン系化合物としては、具体的には下記の構造式(a−1−1)、(a−1−2)及び(a−3−1)で示されるものが好ましい。
【化3】

さらに、上記(a−1−1)、(a−1−2)及び(a−3−1)における水酸基の25%以上が、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基に置換されたものも好ましいものとして挙げられる。
【0017】
(A)シロキサン系化合物の質量平均分子量の上限値は、3000以下であり、2800以下であることが好ましい。また、下限値としては、300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。下限値を300以上にすることにより、このシロキサン系化合物の蒸発を抑制することができ、本発明に係るレジスト下層膜用組成物の成膜性を向上させることができる。
【0018】
<(A)シロキサン化合物の製造方法>
(A)シロキサン系化合物は、それぞれの構造単位を誘導する各モノマーを加水分解して、縮重合させることにより得られる。加水分解反応における水の量は、モノマー1モル当たり0.2モルから10モルであることが好ましい。この際に金属キレート化合物や有機酸、無機酸、有機塩基及び無機塩基等の公知の触媒を適宜添加してもよい。
上記モノマーとしては、各構造単位を誘導するアルコキシシラン類またはクロロシラン類が好適に用いられる。
【0019】
金属キレート化合物としては、具体的にはテトラアルコキシチタン、トリアルコキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等が挙げられる。また、有機酸としては酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。また、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、スルホン酸、メチルスルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0020】
また、有機塩基としては、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。また、無機塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0021】
これらのうち、架橋基としてエポキシ基やオキセタニル基等を導入する場合には、重合時にエポキシ基やオキセタニル基を開環させないように、また、アルカリや金属の不純物を混入しないようにアンモニア、有機アミン類等の塩基性触媒を用いることが好ましい。中でも、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを用いることが好ましい。また、エポキシ基やオキセタニル基を開環させないようにするには、系をpH7以上の雰囲気にすることが好ましい。これらの触媒は、1種或いは2種以上を併用することができる。
【0022】
反応操作としては、まず、各モノマーを有機溶媒に溶解させ、水を添加し加水分解反応を開始させる。触媒は水に添加していても、有機溶媒中に添加しておいても良い。
【0023】
反応時に用いる有機溶媒としては、水に難溶あるいは不溶のものが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びこれらの混合物などが好ましい。
【0024】
次いで、触媒の中和反応を行い、有機溶媒層を分別して脱水する。水分の残存は、残存したシラノールの縮合反応を進行させてしまうためである。硫酸マグネシウムなどの塩やモレキュラーシーブによる吸着法や、溶媒を除去しながらの共沸脱水法等公知の脱水法を用いてよい。
【0025】
次いで、上記の水に難溶又は不溶の有機溶媒を添加し、有機溶媒層を分別、水洗して加水分解縮合に使用した触媒を除去する。このとき、必要に応じて中和してもよい。続いて、分液した有機溶媒層を脱水して本発明に係る(A)シロキサン系共重合体を得る。
【0026】
[(B)シロキサン系重合体]
本発明に係るレジスト下層膜用組成物は、(B)シロキサン系重合体を含有する。
【0027】
この(B)シロキサン系重合体は、一般式(b−1)で示される構造単位を有する。
【化4】

[式中、Rは、光吸収基を示し、Rは、水素原子、水酸基、炭素数1から6のアルキル基、アルコキシ基を示し、rは0又は1である。]
【0028】
上記光吸収基とは、波長150nmから300nmの範囲で吸収を有する基である。この光吸収基としては、例えばベンゼン環、アントラセン環、ナフタレン環等の光吸収部を有する基が挙げられる。上記光吸収部は、1個以上の−O−、−O(CO)−で中断されていてもよい炭素数1から20のアルキレン基を介して主骨格のSi原子に結合されていてもよい。また、ベンゼン環、アントラセン環、ナフタレン環等の光吸収部は、炭素数1から6のアルキル基、アルコキシ基、またはヒドロキシ基等の置換基で1個以上置換されていてもよい。これら光吸収基の中でも、ベンゼン環が好ましい。また、上記吸収基の他に、Si−Si結合を持つ光吸収部を有する基を用いることもできる。さらに、これらの光吸収部は、シロキサン系重合体の主骨格に含まれていてよい。上記光吸収基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、トリル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、1−メチル−1−フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。中でも、フェニル基が好ましい。特にフェニル基にする場合には、光吸収を良好にすることができるとともに、下層膜としたときの酸素系プラズマに対するエッチング耐性を向上させることができる。
さらに、上記(B)シロキサン系重合体は、一般式(b−2)で表される構成単位の少なくとも1種を有することが好ましい。
【化5】

[式中、Rは、水素原子、アルキル基、またはカルボニル、エステル、ラクトン、アミド、エーテル、ニトリルから選択される少なくとも1つの官能基を有する1価の有機基を示し、R10は、水素原子、水酸基、炭素数1から6のアルキル基、アルコキシ基を示し、sは0または1である。]
【0029】
(B)シロキサン系共重合体の質量平均分子量の下限値は、8000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。(B)成分の質量平均分子量を8000以上にすることにより、本発明のレジスト下層膜用組成物から形成されたレジスト下層膜の成膜性を向上させることができる。また、(B)成分の質量平均分子量の上限値は、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。(B)成分の質量平均分子量を50000以下にすることにより、本発明のレジスト下層膜用組成物の塗布性を向上させることができる。
【0030】
<(B)シロキサン系重合体の製造方法>
(B)シロキサン系共重合体は、(A)成分と同様に、それぞれの構造単位を含有する各モノマーを加水分解して、共重合することにより製造される。
【0031】
本発明に係るレジスト下層膜用組成物における(A)成分と(B)成分との比率は、質量比で1:9から7:3であることが好ましく、3:7から6:4であることがより好ましく、5:5であることが最も好ましい。(A)成分および(B)成分の比率を上記の範囲にすることにより、上記レジスト下層膜用組成物から形成されたレジスト下層膜上に形成されるレジストパターンにおける裾引きを低減することができる。
さらに、(A)成分と(B)成分の含有量を、上記の範囲とすることによって、酸発生剤を添加しなくても良好な形状のパターンを形成することが可能なレジスト下層膜を形成することが可能となる。
【0032】
[(C)溶剤]
本発明に係るレジスト下層膜用組成物は、(C)溶剤(以下、(C)成分ともいう)も含有する。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等のアルコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールのモノエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロアルキルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル(PGDM)、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のアルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化させたアルコールエーテル類等が挙げられる。
【0033】
これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この溶剤は、(A)成分及び(B)成分の合計質量の、1から100倍量であり、2から20倍量用いられることがより好ましい。この範囲内にすることにより、レジスト下層膜用組成物の塗布性を向上させることができる。
【0034】
[(D)架橋剤]
本発明に係るレジスト下層膜用組成物は、(D)架橋剤(以下、(D)成分ともいう)を含有してもよい。(D)架橋剤を添加することにより、レジスト下層膜の成膜性を向上させることができる。架橋剤としては、一般的に用いられているものを用いてよい。
【0035】
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物等が挙げられる。また、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、トリアクリルホルマール、グリオキザールや多価アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等も用いられる。
【0036】
また、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリルのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基又は低級アルコキシメチル基で置換された化合物等の2個以上の反応性基をもつ化合物等が挙げられる。
【0037】
メラミンのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基又は低級アルコキシメチル基で置換された化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1個から6個がメトキシメチル化した化合物及びその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1個から5個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0038】
尿素のアミノ基の少なくとも2つがメチロール基又は低級アルコキシメチル基で置換された化合物としては、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメトキシエチルウレア、テトラメチロールウレアの1個から4個のメチロール基がメトキシメチル基化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0039】
ベンゾグアナミンのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基又は低級アルコキシメチル基で置換された化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1個から4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物及びその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1個から4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物及びその混合物等が挙げられる。
【0040】
グリコールウリルのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基又は低級アルコキシメチル基で置換された化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1個から4個がメトキシメチル基化した化合物、又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1個から4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0041】
これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この架橋剤の添加量は、(A)成分及びシロキサン系重合体を合わせて100質量部に対して、0.1質量部から50質量部であり、0.5質量部から40質量部であることがより好ましい。
【0042】
[(E)酸発生剤]
本発明に係るレジスト下層膜用組成物は、(E)酸発生剤(以下、(E)成分ともいう)を含有していてもよい。
【0043】
酸発生剤としては、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、ビススルホン誘導体、β−ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体など、公知の酸発生剤を用いることができる。
【0044】
オニウム塩としては、トリフロオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラフェニルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等が挙げられる。
【0045】
ジアゾメタン誘導体としては、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0046】
グリオキシム誘導体としては、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
【0047】
ビススルホン誘導体としては、ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、ビスベンゼンスルホニルメタン等が挙げられる。
【0048】
β−ケトスルホン誘導体としては、2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等が挙げられる。
【0049】
ジスルホン誘導体としては、ジフェニルジスルホン誘導体、ジシクロヘキシルジスルホン誘導体等のジスルホン誘導体等が挙げられる。
【0050】
ニトロベンジルスルホネート誘導体としては、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体等が挙げられる。
【0051】
スルホン酸エステル誘導体としては、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体等が挙げられる。
【0052】
N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体としては、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0053】
これらの酸発生剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この酸発生剤の添加量は、(A)成分及び(B)成分を合わせて100質量部に対して、0.1質量部から50質量部であり、0.5質量部から40質量部であることがより好ましい。
【0054】
本発明に係るレジスト下層膜用組成物は、上記の(A)成分から(E)成分の必要な成分を混合することにより得られる。なお、得られたレジスト下層膜組成物は、フィルターで濾過することが好ましい。
【0055】
[レジスト下層膜形成方法]
本発明に係るレジスト下層膜用組成物を用いてレジスト下層膜を形成するには、被加工膜上(場合によっては、被加工膜上に形成されたボトムレイヤー)にスピンコーター、スリットノズルコーター等を用いて塗布し、乾燥後、加熱すればよい。加熱は、一段階の加熱又は多段加熱法を用いることができる。多段加熱法を用いる場合には、例えば、まず100℃から120℃において、60秒間から120秒間、次いで200℃から250℃において、60秒間から120秒間加熱することが好ましい
【0056】
このようにして形成されたレジスト下層膜の厚さは、15nmから200nmであることが好ましい。その後このレジスト下層膜の上にレジスト膜用組成物を例えば100nmから300nmの厚さで設けてレジスト膜を製造する。
【0057】
[パターン形成方法]
本発明に係るレジスト下層膜用組成物より形成されたレジスト下層膜は例えば3層レジストプロセスのような多層レジストプロセスの中間層として使用することが好ましい。
本発明に係るレジスト下層膜を用いたパターンの形成方法としては、以下のような方法が挙げられる。
【0058】
図1(a)に示すように、基板20上に下層膜用組成物を、スピンコート法等を用いて塗布し、所定の温度でベークして下層膜26(ボトムレイヤー)を形成する。次いで、下層膜26上に、レジスト下層膜用組成物を、スピンコート法等を用いて塗布して、所定の温度でベークしてレジスト下層膜24を形成する。次いで、レジスト膜用組成物を上記と同様にスピンコート法等を用いて塗布する。次いで、所定の温度でプリベークを行ない、レジスト膜22を形成する(図1(a)参照)。なお、プリベークの条件は150℃から300℃で、30秒から300秒であることが好ましい。
【0059】
次いで、パターンが形成されたレジスト膜24をマスクとしてレジスト下層膜22のエッチングを行い、レジストパターンをレジスト下層膜22に転写する(図1(b)参照)。レジスト膜24及びレジスト下層膜22をマスクとして、下層膜26をエッチングを行い、レジストパターンを下層膜26に転写する(図1(c)参照)。この時、レジスト膜24も同時にエッチング除去されてもよい。次いで、上記と同様の方法でエッチングを行い、基板20にパターンを形成する(図1(d)参照)。
【0060】
この下層膜26は、基板20をエッチングするときのマスクとして作用するので、エッチング耐性が高いことが望ましく、上層のレジスト下層膜22とミキシングしないことが求められるため、スピンコート等で塗布した後に熱あるいは酸によって架橋することが望ましい。具体的には、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、カトールジシクロペンタジエンノボラック、アモルファスカーボン、ポリヒドロキシスチレン、(メタ)アクリレート、ポリイミド、ポリスルフォン等の樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
また、レジスト膜24の形成に用いるレジスト組成物としては、例えば、ベース樹脂と有機溶媒と酸発生剤との混合物のように公知のものを用いることができる。
【0062】
ベース樹脂としては、ポリヒドロキシスチレン及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリル酸及びその誘導体、ヒドロキシスチレンとアクリル酸とメタクリル酸とそれらの誘導体から選択される共重合体、シクロオレフィン及びその誘導体とマレイミドとアクリル酸及びその誘導体から選択される3種以上の共重合体、ポリノルボルネン、及びメタセシス開環重合体からなる群から選択される1種以上の高分子重合体が挙げられる。なお、ここにいう誘導体は、アクリル酸誘導体にはアクリル酸エステル等、メタクリル酸誘導体にはメタクリル酸エステル等、ヒドロキシスチレン誘導体にはアルコキシスチレン等が含まれるように、主要な骨格が誘導後に残っているものを意味する。
【0063】
また、KrFエキシマレーザー用レジスト用としては、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン、スチレンのいずれか1種と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミドNカルボン酸エステルのいずれか1種との共重合体が挙げられる。また、ArFエキシマレーザー用レジストとしては、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系、ノルボルネンと無水マレイン酸との交互共重合系、テトラシクロドデセンと無水マレイン酸との交互共重合系、ポリノルボルネン系、開環重合によるメタセシス重合系が挙げられるが、これらの重合系ポリマーに限定されることはない。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により限定されるものではない。
[合成例1]
(A)成分としてのシロキサン系化合物(a−2−1)を以下のようにして合成した。
温度計、撹拌装置、還流冷却管、排出用コックを取り付けた1Lのジャケット付きフラスコにフェニルトリエトキシシラン300.0g(1.25mol)を仕込み、系内温度を25℃に調整した。次いで、塩酸0.23g(0.006mol)と水67.5g(3.75mol)からなる塩酸水を滴下し、25℃で8時間保温した。途中、反応マスは分散状態から均一層に変化し、48℃まで急激な発熱が見られた。その後、トルエンを300g加えて溶解し、反応マスが中性になるまで水で分液洗浄し、得られたトルエン層を5℃以下で48時間静置した。その後、析出した白色結晶をろ別して、更にトルエンで懸濁精製を行い、乾燥して白色結晶13.2gを得た。
【0065】
得られた白色結晶の分子量をゲルパーエミーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が550であり、GPCスペクトル(図2参照)、IRスペクトル(図3参照)及び、1H−NMRスペクトル(図4参照)等の解析によって、当該白色結晶は、環状4量体である1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン−1,3,5,7−テトラオールであることが確認された。
【0066】
[合成例2]
(A)成分としてのシロキサン系化合物(a−3−1)を以下のようにして合成した。
温度計、撹拌装置、還流冷却管、排出用コックを取り付けた1Lのジャケット付きフラスコにフェニルトリエトキシシラン300.0g(1.25mol)を仕込み、系内温度を25℃に調整した。次いで、塩酸0.23g(0.006mol)と水67.5g(3.74mol)からなる塩酸水を滴下し、25℃で8時間保温した。途中、反応マスは分散状態から均一層に変化し、48℃まで急激な発熱が見られた。その後、トルエンを300g加えて溶解し、反応マスが中性になるまで水で分液洗浄し、得られたトルエン層からトルエンを減圧回収して、白色粉末のシリコーン組成物152.5gを得た。
得られたシロキサン系化合物の分子量をゲルパーエミーションクロマトグラフィーにより求めたところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量が920であった。また、環状フェニルシロキサン類も含まれていた。
(B)成分としてのシロキサン系重合体を以下のようにして合成した。
【0067】
[合成例3]
(B)成分としてのシロキサン系重合体(b−1−1)を以下のようにして合成した。
1リットルの4つ口フラスコに、メチルトリエトキシシラン379.8g(2.13モル)、フェニルトリエトキシシラン6.5g(0.027モル)、トリエトキシシラン98.6g(0.6モル)塩酸0.0004モル、水108g(6モル)を仕込み、攪拌しながら反応させた。その後、エバポレーターを用いて水及びアルコールを除いて、シロキサン系重合体(b−1−1)を得た。
このシロキサン系重合体の分子量をGPCにより求めたところ、質量平均分子量は9700であった。
【0068】
[実施例1から5]
<レジスト下層膜用組成物の調製>
表1に示した質量比の(A)成分および(B)成分と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:乳酸エチル=6:4の混合溶剤とを混合してレジスト下層膜用組成物を得た。(A)成分と(B)成分とを合わせた固形分濃度を、2.5質量%に調整した。
(A)成分として合成例1で合成した下記の構造式(a−2−1)で表されるシロキサン系化合物、ならびに合成例2で合成した(a−3−1)で示されるシロキサン系化合物(環状シロキサン化合物との混合物)を用いた。また、(B)成分として上記合成例3で合成した下記の構造式(b−1−1)で示されるシロキサン系重合体(質量平均分子量:9700)を用いた。
【化6】

【化7】

【化8】

【0069】
[比較例1]
表1に示すように、(A)成分を用いず、(B)成分のみを用いて上記実施例と同様にしてレジスト下層膜用組成物を得た。
[比較例2]
表1に示すように、(A)成分を用いず、(B)成分のみを用い、さらに架橋剤として三和ケミカル社製MX−270を(A)成分に対し3質量%用いて上記実施例と同様にしてレジスト下層膜用組成物を得た。
【表1】

【0070】
<レジストパターンの形成>
シリコンウェハ上に慣用のレジストコーターを用いてノボラック樹脂を含む下層膜形成用組成物を塗布し、250℃で90秒の条件にて加熱処理を行うことにより、厚さ220nmのボトムレイヤー(下層膜)を形成した。
次に、ボトムレイヤー上に上記の実施例1から5及び比較例1、2のレジスト下層膜用組成物を塗布し、250℃で90秒の条件にて加熱処理を行うことにより、厚さ600Åのレジスト下層膜を形成した。さらに、上記レジスト下層膜(反射防止膜)上にレジスト組成物を塗布してレジスト層を形成し、ArFエキシマレーザーで露光、現像することにより、ラインパターンを形成した。
実施例1から5及び比較例1で使用したレジスト組成物としては、以下の各成分を混合し、調製したものを用いた。
樹脂:下記式で表されるユニット(C1:C2:C3=3:5:2、分子量10000)を有する樹脂 100質量%
【化9】

酸発生剤:1)下記式の化合物 1.6質量%
【化10】

2)下記式の化合物 3.5質量%
【化11】

酸失活剤:トリエタノールアミン 0.3質量%
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:乳酸エチル=8:2
【0071】
<レジストパターンの評価>
上記で形成されたレジストパターンの形状について評価を行った。この評価は、レジストパターンにおいてパターン及び裾引きの状態をSEM(透過型電子顕微鏡)にて観察することにより行った。その結果、実施例1から5はいずれも比較例1、2と比べてレジストパターンにおける裾引きが低減され、良好なパターン形状を示した。中でも実施例4、5、6は特に良好な形状のパターンを形成することが可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るレジスト下層膜用組成物を用いてレジストパターンを形成する工程を示した図である。
【図2】合成例1の環状フェニルシロキサンのGPCスペクトルである。
【図3】合成例1の環状フェニルシロキサンのIRスペクトルである。
【図4】合成例1の環状フェニルシロキサンの1H−NMRスペクトルである。
【符号の説明】
【0073】
10,20 基板
12,22 レジスト下層膜
14,24 レジスト膜
26 下層膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量平均分子量が3000以下の(A)シロキサン系化合物と、(B)シロキサン系重合体と、を含有するレジスト下層膜用組成物。
【請求項2】
前記(B)シロキサン系重合体は、質量平均分子量が8000以上である請求項1に記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項3】
前記(A)シロキサン系化合物と前記(B)シロキサン系重合体との質量比は、1:9から7:3である請求項1又は2に記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項4】
前記(A)シロキサン系化合物は、環状又はかご型構造を有する請求項1から3いずれかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項5】
前記(A)シロキサン系化合物は、下記の一般式(a−1)、(a−2)、(a−3)で示される構造を有する化合物の少なくとも1種を含む請求項1から4いずれかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【化1】

[式中、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルキル基又はアルコキシ基であり、Rはそれぞれ独立して置換又は非置換の炭化水素基、であり、(a−1)においてはRとR及び/又はRとRとが一緒になって−O−であってもよく、mは1から8であり、nは2から8である。]
【請求項6】
前記(B)シロキサン系重合体は、下記の一般式(b−1)で表される構造単位を有する請求項1から5いずれかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【化2】

[式中、Rは、光吸収基を有する1価の有機基を示し、Rは、水素原子、水酸基、炭素数1から6のアルキル基、アルコキシ基を示し、rは0または1である。]
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載のレジスト下層膜用組成物を、塗布して、所定の温度でベークして得られたレジスト下層膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−272168(P2007−272168A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149670(P2006−149670)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】