説明

レジスト処理装置、レジスト塗布現像装置、およびレジスト処理方法

【課題】レジストパターンの側面を平坦化することによりLER又はLWRを低減することができるレジスト処理装置、レジスト塗布現像装置、およびレジスト処理方法を提供する。
【解決手段】開示するレジスト処理装置10は、基板W上に形成したレジストパターンに対して所定の処理を行うレジスト処理装置10であって、内部を真空に維持することができる処理容器12と、この処理容器12内に設けられ、レジストパターンが形成された基板Wが載置される載置台14と、化学的に不活性な第1のガスおよび第2のガスを含む混合ガスを、載置台14に対して所定の傾斜角で所定の流量にて載置台14に向けて噴出するガス供給部16と、ガス供給部16から所定の流量で噴出される上記の混合ガスが処理容器12内で分子線になり得る真空度に処理容器12を排気することが可能な排気部18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に形成されたレジストパターンを処理するレジスト処理装置、レジスト塗布現像装置、およびレジスト処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンの更なる微細化に伴って、微細パターンの側面の凹凸やパターン幅のバラツキが大きな問題として顕在化している。例えばゲート電極や配線などのパターンの側面に生じた凹凸を示す指標としてLER(Line Edge Roughness)が、パターン幅のバラツキを示す指標としてLWR(Line Width Roughness)が知られている。ゲート電極においてLER且つ/又はLWRが大きい場合には、ゲート電極の長さ方向に沿ってゲート長がばらつくため、トランジスタのオン/オフ特性が劣化したり、しきい値電圧のバラツキを通したトランジスタの性能劣化が生じたりする。
【0003】
LER(LWR)は、種々の要因により生じると考えられるが、その要因の一つにレジストマスクの形成時に生じるレジストパターンの側面の凹凸がある。これを防止するため、レジスト材料の改良が進められている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−41313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般に、レジスト液を変更しようとすれば、あらゆるプロセスにおいてプロセス条件を見直さなければならず、プロセス確立のため、数多くのテストが必要となり、長い期間と費用がかかる。また、適切なレジストが開発されるのを待ってばかりもいられないという事情もあり、既存のレジスト液から形成されるレジストパターンの側面を平坦化することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、レジストパターンの側面を平坦化することによりLER又はLWRを低減することができるレジスト処理装置、レジスト塗布現像装置、およびレジスト処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を実現するため、本発明の第1の態様は、基板上に形成したレジストパターンに対して所定の処理を行うレジスト処理装置であって、内部を真空に維持することができる処理容器と、この処理容器内に設けられ、レジストパターンが形成された基板が載置される載置台と、化学的に不活性な第1のガスおよび第2のガスを含む混合ガスを、当該載置台に対して所定の傾斜角で所定の流量にて載置台に向けて噴出するガス供給部と、ガス供給部から所定の流量で噴出される混合ガスが処理容器内で分子線になり得る真空度に処理容器を排気することが可能な排気部と、を備えるレジスト処理装置を提供する。
【0007】
上記のガス供給部は、所定の傾斜角を変更することができるように処理容器に取り付けられると好ましい。
【0008】
また、第1および第2のガスが希ガスであると好適である。さらに、第1のガスがヘリウムガスであり、第2のガスがキセノンガスであると尚好適である。
また、上記のレジストパターンは化学増幅型レジストから形成することができる。
【0009】
さらにまた、上記のレジスト処理装置は、基板の通り抜けを許容する2つのバルブを有し、当該2つのバルブの一方を介して処理容器に接続するロードロック室を更に備えると有用である。
【0010】
本発明の第2の態様は、基板上にレジスト膜を塗布するレジスト塗布部と、露光処理が行われた当該レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する現像部と、このレジストパターンに対して所定の処理を行うレジスト処理装置であって、上記のいずれかのレジスト処理装置と、を備えるレジスト塗布現像装置を提供する。
【0011】
上記のレジスト塗布現像装置は、露光処理が行われる露光装置との間で、レジスト膜が塗布された基板を搬入出するインターフェース部を更に備えると好ましい。
【0012】
本発明の第3の態様は、レジストパターンが形成された基板を処理容器内に設けられた載置台に載置するステップと、処理容器内に分子線を形成することができるように処理容器内を排気するステップと、化学的に不活性な第1のガスおよび第2のガスを含む混合ガスを処理容器内に噴出して分子線を形成し、当該分子線を載置台に載置される基板に所定の傾斜角で照射するステップと、を含むレジスト処理方法を提供する。
【0013】
上記のレジスト処理方法において、第1および第2のガスが希ガスであると好適である。また、第1のガスがヘリウムガスであり、第2のガスがキセノンガスであると尚好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、レジストパターンの側面を平坦化することによりLER又はLWRを低減することができるレジスト処理装置、レジスト塗布現像装置、およびレジスト処理方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態によるレジスト処理装置を示す概略断面図である。このレジスト処理装置(以下、処理装置)10は、後述するように、露光装置が接続されたレジスト塗布現像装置(レジストトラック)内に設けられると好ましい。ウエハ上に塗布されたレジスト膜が露光装置内で露光され、レジスト塗布現像装置内で現像処理が行われた後、ウエハが処理装置10内へ搬送され、当該ウエハに対して後述する処理が行われる。
【0017】
図1を参照すると、処理装置10は、内部を真空に保持可能なチャンバ12と、チャンバ12内に配置され、レジストパターンが形成されたウエハWが載置される載置台14と、載置台14上に載置されたウエハWに向けてガスを噴出するためのガスノズル16と、チャンバ12内を所定の真空度に減圧する真空システム18とを有している。
【0018】
チャンバ12の側壁には、ウエハWをチャンバ12内へ搬入出するため、チャンバ12内へ搬入され、また、チャンバ12から搬出されるウエハWが通り抜ける搬送口12bが設けられている。搬送口12bは、チャンバ12の側壁に取り付けられたゲートバルブ12cにより開閉される。また、ウエハWの搬入出は、搬送アームAMにより行われる。
【0019】
チャンバ12の底部には排気口12dが設けられ、排気口12dにはバルブ12eを介して真空システム18が接続されている。バルブ12eは、開閉により、チャンバ12と真空システム18とを遮断し、また連通させることができる。
【0020】
真空システム18は、バルブ12eに接続される排気管18aに設けられ、チャンバ12内の真空度を調整するための圧力調整バルブ18bと、圧力調整バルブ18bの下流側において排気管18aに設けられ、チャンバ12を高真空度に排気することが可能なターボ分子ポンプなどの高真空ポンプ18cと、高真空ポンプ18cの補助ポンプとして機能するドライポンプ18dと、チャンバ12の側面に設けられた貫通孔に気密に挿入され、チャンバ12内の真空度を測定する圧力センサ18eと、圧力センサ18eにより測定された真空度に基づいて圧力調整バルブ18dを制御してチャンバ12内を所定の真空度に維持する圧力調整器18fと、を有している。また、ドライポンプ18dは、バルブ18gが設けられた分岐管18hによりチャンバ12に接続され、粗引きポンプとしても機能する。
【0021】
ガスノズル16は、図1に示すように、チャンバ12の天井部に設けられた貫通孔12aからチャンバ12内へ挿入されている。また、ガスノズル16の側周面には円板16a及び16bが取り付けられている。円板16aはチャンバ12内に在り、円板16aとチャンバ12の貫通孔12aの下内周との間にベローズ16dが取り付けられている。また、円板16bはチャンバ12の外に在り、円板16bとチャンバ12の貫通孔12aの上内周との間にベローズ16eが取り付けられている。ガスノズル16は、チャンバ12に対してこのように取り付けられているため、ベローズ16d、16eが一方に片寄って収縮又は伸張することによって載置台14の上面に対するガスノズル16の傾斜の向きと傾斜角度とを所定の範囲内で変更できる。また、特に、円板16bの内周をガスノズル16に溶接し、円板16bの外周をベローズ16eの一端に溶接し、ベローズ16eの他端をチャンバ12に溶接すれば、ガスノズル16をチャンバ12に対して確実に気密に取り付けることが可能となる。
【0022】
なお、ガスノズル16の角度は、図示しない駆動機構により自在に変更することができる。本実施形態においては、ガスノズル16は、載置台14(又はこれに載置されるウエハW)の法線Nに対して約20°の傾斜角θ(図1)で傾斜している。これにより、レジストパターンの表面だけでなく側面に対して分子線を照射することが可能となる。レジストパターンの側面への分子線照射の効果については、後に詳述する。
【0023】
また、チャンバ12の大きさにもよるが、ガスノズル16の内径は、例えば約1mm〜約10mmとすることができ、ガスノズル16の長さは、例えば約30mm〜約200mmとすることができる。また、ガスノズル16の前端16Fには、これに限定されないが例えば、約50μmから約100μmの直径を有する複数のオリフィス16hが形成されている。
【0024】
ガスノズル16の前端16Fと、載置台14に載置されるウエハWとの間の距離は、チャンバ12内の真空度を考慮して決定してすることができ、例えば、所定の真空度の下でのガス分子の平均自由工程以下に設定される。このようにすれば、ガスノズル16のオリフィス16hから噴出したガスは、分子線となって、載置台14上に載置されたウエハWに照射される。分子線は、チャンバ12中で空間分布が線状(または帯状)となって略直進する気体分子の流れである。例えば、ガスノズル16の前端16Fと載置台14上のウエハWとの間の距離が、所定の真空度の下での平均自由行程よりも短いか、ほぼ等しい場合、ガスノズル16からウエハWに至るガスの流れは分子線となっていると考えることができる。具体的には、約0.1Pa(約7.5×10−4Torr)の真空度の下で、窒素ガス分子が約6cmの平均自由行程を有していることを考慮すると、チャンバ12の大きさにもよるが、チャンバ12内の圧力が約0.5Paから約1×10−5Paの範囲の真空度であれば、分子線が形成されると考えられる。
【0025】
図1を参照すると、ガスノズル16の後端16Rはガス供給システム17に接続されている。ガス供給システム17は、これに限定されないが、ヘリウム(He)ガスシリンダ17AHと、ガスシリンダ17AHに接続される配管17BHに設けられ、ガスシリンダ17AHからのHeガスの流量を調整する質量流量調整器(MFC)17CHと、キセノン(Xe)ガスシリンダ17AXと、ガスシリンダ17AXに接続される配管17BXに設けられ、ガスシリンダ17AXからのXeガスの流量を調整する質量流量調整器(MFC)17CXと、HeガスとXeガスとを一時的に保留し、混合させるバッファタンク17Dと、バッファタンク17Dとガスノズル16を繋ぐ配管17Eに設けられたバルブ17Fと、を有している。なお、配管17Eは、ガスノズル16とバルブ17Fとの間においてフレキシブルに構成されている。これにより、載置台14に対するガスノズル16の傾斜の向きと傾斜角とを変更する場合であっても、ガスノズル16と配管17Eとの接続を維持することができる。
【0026】
載置台14は、その上面に、ウエハWが載置されるウエハ載置部を提供する。ウエハ載置部は、例えば、静電チャックを有していて良い。また、ウエハ載置部には、複数の位置決めピンが配置され、これらにより、載置台14の上面に載置されるウエハWを位置決めしても良い。また、載置台14は、搬送アームAMによりチャンバ12内に搬送されたウエハWをウエハ載置部(載置台14の上面)に降ろすための昇降ピン(図示せず)を有することができる。さらに、載置台14は、内部にヒータを有し、これによりウエハWを加熱しても良い。さらにまた、載置台14は、冷媒の流通を許容する流路を有し、この流路を流れる温度調整された媒体により、ウエハWを冷却しても良い。また、載置台14に、載置台14の温度を所定の温度に維持する温度調整器を設けても良い。
【0027】
載置台14は、チャンバ12の底部に設けられた載置台支持部15により支持されている。載置台支持部15は、載置台14の回転角度の制御が可能なサーボモータなどを備え、載置台14の内部に配置される駆動部15aと、載置台14をX方向に移動可能に支持するX方向レール15xと、載置台14をX方向と直交するY方向に移動可能に支持するY方向レール15yと、を有している。また、載置台支持部15は、例えばリニアモータなどの駆動機構(図示せず)を有し、これによって、載置台14は、X方向レール15x上をX方向に移動することができ、Y方向レール15y上をY方向に移動することができる。
【0028】
次に、本実施形態の処理装置10におけるレジスト処理方法について説明する。まず、所定のレジスト塗布装置により、ウエハW上にレジスト膜が塗布され、レジスト膜に対してプリベークが行われる。このレジスト膜は、例えば半導体デバイスの製造工程における特定のフォトリソグラフィ工程のために用意されるものに限定されず、どのフォトリソグラフィ工程のために用意されるものであっても良い。また、微細パターンを有するエッチングマスクを形成するためEUVリソグラフィにより露光が行われる場合、レジスト膜は化学増幅型のレジストにより形成することができる。
【0029】
プリベーク後の冷却の後、ウエハWは所定の露光装置へ搬送される。露光装置内において、ウエハW上のレジスト膜が所定のフォトマスクを用いて露光される。この後、ウエハWは再びレジスト塗布装置へ搬送されて、熱処理(ポストエクスポージャベーク(PEB)、冷却処理、現像処理、ベーキング、及び冷却処理がこの順でウエハWに対して行われる。以上の手順により、ウエハW上にはフォトマスクによって決まるレジストパターンが形成されている。
【0030】
次いで、搬送アームAMによって搬送口12bを通して処理装置10のチャンバ12内へ搬入される(図1)。このウエハWは、図示しない昇降ピンにより受け取られ、搬送アームAMがチャンバ12から引き抜かれた後に、昇降ピンが昇降機構(図示せず)により駆動されてウエハWが載置台14の上に載置される。次いで、静電チャック(図示せず)により載置台14の上に保持される。また、載置台14は、駆動部15aおよび駆動機構(図示せず)により、所定の位置(以下、初期位置)に移動される。
【0031】
この後、ドライポンプ18dにより、分岐管18hを通してチャンバ12を粗引きする。チャンバ12内の真空度が所定の値となった時点で、バルブ12eを開き、高真空ポンプ18cによりチャンバ12を高真空引きする。チャンバ12内の真空度が、チャンバ12内で分子線が形成される程度の真空度となったことが圧力センサ18eによって確認された後、ガス供給システム17から供給されるHeとXeの混合ガスをガスノズル16のオリフィス16hを通して、載置台14上に載置されたウエハWに向けて噴出する。オリフィス16hから噴出した混合ガスは、分子線となり、ウエハW上のレジスト膜の所定の領域(以下、照射領域と称す)に照射される。このとき、ガスノズル16はウエハWの法線Nに対して約20°の傾斜角で傾斜しているため、分子線もこの傾斜角でウエハWに対して照射される。また、チャンバ12内は、圧力センサ18e、圧力調整器18f、および圧力調整バルブ18dにより、所定の真空度に維持される。
【0032】
次いで、載置台14を駆動部15aおよび駆動機構(図示せず)により移動することによりウエハWをスキャンし、ガスノズル16のオリフィス16hから噴出される分子線がウエハW上のレジストパターンの全体に照射される。以下に、載置台14の移動の一例について、図2(a)〜(d)および図3(a)〜(c)を参照しながら説明する。
【0033】
図2(a)〜(d)および図3(a)〜(c)は、載置台14に載置されたウエハWとガスノズル16の位置関係を示す上面図である。これらの図において、ガスノズル16の傾斜を示すため、ガスノズル16の前端(オリフィス16hが形成された部分)16Fと後端(配管17Eが接続される部分)16Rとを模式的に示している。
【0034】
図2(a)は、ウエハWの初期位置を示している。初期位置おいては、ウエハWは、ウエハWのX方向接線TLxとY方向接線TLyとの交点にガスノズル16が位置するように配置されている。また、このとき、ガスノズル16はY方向接線TLyに沿って−Y方向に傾斜している。換言すると、ガスノズル16の前端16Fが後端16dよりも−Y側に位置している。傾斜角は、載置台14(図1)の法線Nに対し、例えば約20°であって良い。
【0035】
次に、図2(b)に示すように、載置台14(図1)の移動によりウエハWを+X方向にスキャンする。これにより、図2(b)中に斜線で示す部分に対して、ガスノズル16からHeとXeの混合ガスの分子線が照射される。次いで、図2(c)に示すように、載置台14(図1)の移動により、ウエハWを+Y方向に所定の距離だけ移動する。この距離は、混合ガスの分子線の未照射部分が発生しないように、上述の照射領域の幅とほぼ等しいか、僅かに短い距離とされる。続けて、ウエハWを−Y方向にスキャンする。これにより、図2(d)中に斜線で示すように、分子線が照射された領域が拡大される。
【0036】
この後、図3(a)に示すように、ウエハWの半分に分子線が照射されるまで、上記の動作を繰り返す。次に、図3(b)に示すように、ウエハWを時計回りに180°回転させて、照射済みの部分と未照射の部分とを入れ替えるとともに、ガスノズル16の傾斜方向を反転させる。ここで、ガスノズル16は、前端16Fが後端16Rよりも+Y側に位置する。次いで、載置台14が上述した軌跡を戻るようにして、ウエハWをX方向、Y方向に移動させながら、未照射部分に分子線を照射する(図3(c))。なお、この未照射部分に対して分子線を照射する場合、ウエハWの180°の回転と共にガスノズル16の傾斜方向を反転させているため、先に照射した部分におけるレジストパターンの側面と同じ側の側面に分子線が照射されることになる。
【0037】
以上により、ガスノズルから噴出したHeとXeの混合ガスの分子線が、ウエハW上に形成されたレジストパターンに一様に照射されたことになる。具体的には、レジストレジストパターンの上面と、レジストパターンの一の方向の側面とに分子線が照射されている。続けて、ウエハWを時計回りに90°回転し、図2(a)から図3(c)までを参照しながら説明した分子線照射手順を繰り返す。さらに、ウエハWの90°回転と分子線照射手順とが合計4回となるまで繰り返す。以上により、レジストパターンの全ての方向の側面に対して分子線を照射することができる。
【0038】
次に、レジストパターンの側面への分子線照射の効果について説明する。ガス供給システム17からガスノズル16へ流入したHeとXeの混合ガスは、ガスノズル16内では、粘性流に近い状態で流れる。このため、He分子とXe分子(単原子分子)は、互いに衝突しながら、同じ方向に、同じ速度でガスノズル16内を流れるようになる。この後、混合ガスがガスノズル16のオリフィス16h(図1)から処理容器12内へ噴出すると、混合ガスの分子線が形成され、分子量によらずにHe分子もXe分子もほぼ一定の方向に同じ速度で移動することとなる。また、このときガス分子間には分子間力は殆ど働かない。このような状況の下では、ガス分子の温度は、ガス分子の分子量と定圧比熱により決定される。HeとXeの混合ガスの分子線においては、平均分子量より軽いHe分子は低い温度を有し、平均分子量より重いXe分子は高い温度を有する。換言すると、分子線中のXe分子は、He分子と同じ速度で移動していても、He分子よりも高い運動エネルギーを有し、しかも、分子間の相互作用が無いため、Xe分子から周囲のHe分子へエネルギーが伝達されることが殆どない。
【0039】
このような分子線がレジストパターンに照射されると、高いエネルギーを有するXe分子が照射した部分では、Xe分子からその部分へ比較的大きいエネルギーが移動し、その部分のレジスト分子の温度が上昇し、分子運動が活発化される。これにより、レジスト分子はより安定な状態へと移行し、その結果、当該部分においては自由体積(高分子鎖間に存在する空隙)が減少する。また、レジストパターンの凸状部に分子線が照射されてXe分子が有するエネルギーが凸状部に移動すると、凸状部のレジスト分子は、平坦部分のレジスト分子に比べて、周囲のレジスト分子からの束縛力が小さいため、Xe分子からのエネルギーにより比較的容易に移動することが可能となる。したがって、レジスト分子が移動してレジストパターン中の凹部に捕らえられれば、レジストパターンが平坦化されることとなる。処理装置10においては、ガスノズル16が載置台14(ウエハW)の法線Nに対して約20°傾斜しているため、図4に示すように、分子線BはレジストパターンPの表面Uだけでなく側面Sにも照射される。したがって、レジストパターンPの側面SにおいてXe分子が有する高いエネルギー(温度)がレジスト分子へと移動し、上述のように側面Sが平坦化される。これにより、レジストパターンの側面の凹凸に起因するLERを低減することが可能となる。
【0040】
ここで、ガスノズル16の傾斜角θについて説明する。上述のとおり、本実施形態においては、傾斜角θは約20°と設定されているが、これは以下の理由による。65nmのデザインルールにおいては、トランジスタのゲート長は例えば約30nmであり、このようなゲート電極を形成するためウエハ上に塗布されるレジスト膜の厚さは約100nmである。ゲート電極の間隔がゲート長と同じく約30nmであるか、これよりも僅かに大きいとすると、レジストパターンの開口(ゲート電極用のレジストパターンであって隣接する2つのレジストパターンの間の隙間)のアスペクト比は3程度となる。このようなアスペクト比を有するレジストパターンの側面に未照射部分が生じないように分子線を照射するためには、傾斜角θを約20°とする必要がある。もちろん、傾斜角θは約20°に限られることなく、レジストパターンの側面の全体に分子線を照射することができるような角度に設定して良い。予想される他のアスペクト比を考慮すると、傾斜角θは例えば約0°から45°までの範囲であると好ましい。ただし、この範囲に限らず、ウエハ上に形成するレジストパターンの寸法(厚さ、間隔)によって傾斜角θを適宜変更して良いことは言うまでもない。
【0041】
なお、Xe分子が有するエネルギー(温度)は、混合ガス中のXeガスの濃度により適宜調整することができ、したがって、レジストパターン側面の平坦化の効果もXeガスの濃度により調整することが可能となる。以下に、混合ガス中のXeガスの濃度により、Xe分子の温度がどのように変化するかについて説明する。
【0042】
He分子やXe分子は単原子分子であって、振動と回転のエネルギーを無視することができるため、このような分子が有するエネルギーは、xyzの3方向の運動エネルギーのみを考慮し、
(1/2)mv = (3/2)kT ・・・(1)
となる(mは分子量、vは分子速度、kはボルツマン定数、Tは分子の温度)。ここで、Xe分子の分子量をmXeとし、Xe分子の温度をTXeとすると、Xe分子のエネルギーは、
(1/2)mXe = (3/2)kTXe ・・・(2)
と表すことができる。また、混合ガスの平均分子量をmaveとし、平均温度をTaveとすると、混合ガスの分子のエネルギーは、
(1/2)mave = (3/2)kTave ・・・(3)
と表すことができる。
【0043】
式(2)と式(3)から、
Xe = (mXe/mave)×Tave ・・・(4)
という関係式が得られる。
【0044】
一方、混合ガス中のHeのモル濃度をCHe%とし、Xeのモル濃度をCXe%とすると、Heの分子量mHeが4であり、Xeの分子量mXeが132であるから、混合ガスの平均分子量maveは、
ave =(CHe×4+CXe×132)/100 ・・・(5)
で表すことができる。
【0045】
したがって、Xe分子の温度TXeは、以下のとおりとなる。
【0046】
Xe = mXe/((CHe×4+CXe×132)/100)×Tave ・・・(6)
混合ガスの平均温度Tave(チャンバ12内の温度)を23℃とした場合における式(6)の関係を図5に示す。図示のとおり、HeとXeの混合ガス中のXe濃度を変えることにより、Xe分子の温度を広い範囲で変えることができる。例えば、HeとXeの混合ガス中のXe濃度が5%の場合、Xe分子はチャンバ12内の温度よりも約12.7倍高い温度を有することができる。なお、図5には、窒素(N)ガスとXeガスの混合ガスにおいて、Xeガスの濃度によってXe分子の温度がどのように変化するかを示している。このような混合ガスであっても、Xe分子の温度を高くすることができることが分かる。
【0047】
なお、上述のとおり、分子線の照射の結果、レジスト中の自由体積(高分子鎖間に存在する空隙)が減少するときに、レジスト分子は安定した位置に移動しようとする。すなわち、突起した箇所のレジスト分子は平滑な面を形成しようとするため、結果的にLERが低減されることになる。また、分子線が照射されたレジストは、高密度化されることとなり、分子線照射前よりも高い耐エッチング性を有すると考えられる。レジストパターンのLERが改善され、エッチング耐性も向上することで、ゲート電極や配線層でのLERも低減することが可能となる。
【0048】
上述のとおり、本実施形態によるレジスト処理装置および処理方法によれば、HeとXeの混合ガスを加熱することなく、分子線が照射される、レジストパターンの側面の温度を局所的に上昇させることができ、その結果、レジストパターンの側面が平坦化される。このため、レジストパターン側面の凹凸により生じるLERの悪化を低減することができる。
【0049】
また、本実施形態によるレジスト処理装置および処理方法においては、分子線を照射するだけで良いため、ウエハへのダメージは小さく、また、分子線が照射される部分の表層部が加熱されるに過ぎないため、レジストパターンに対する温度の影響は殆どない。さらに、HeガスやXeガスは高純度化が比較的容易であるため、分子線によるウエハへの汚染の心配がない。また、真空中での分子線照射であるため、レジストパターンが倒れることもない。
【0050】
なお、載置台14の移動によるウエハWの移動例によれば、ウエハWを180°回転するようにしているため、ウエハWの移動範囲を狭くすることができる。図2および図3から明らかなように、ウエハWの移動に必要なスペースSとしては、X方向にはウエハWの直径の約2倍が必要であるが、Y方向にはウエハWの直径の約1.5倍で足りる。したがって、レジスト処理装置10のフットプリントを低減することができる。
【0051】
次に、上述のレジスト処理装置10が組み込まれた、本発明の実施形態による塗布現像装置について図6から図8を参照しながら説明する。図6に示すように、塗布現像装置50は、例えば25枚のウエハWを収容するカセットCから処理対象のウエハWを搬出し、処理済みのウエハWをカセットCに搬入するカセットステーション52と、塗布現像処理工程においてウエハWに対して枚葉式に所定の処理を行う各種処理装置を多段配置してなる処理ステーション53と、この処理ステーション53に隣接して設けられている図示しない露光装置との間でウエハWの受け渡しをするインターフェイスステーション54と、を有している。
【0052】
カセットステーション52では、カセット保持台52a上の所定の位置に、複数のカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置することができる。カセット保持台52aに隣接してウエハ搬送体52bが設けられている。ウエハ搬送体52bは、カセットCの配列方向(X方向)に搬送路52cに沿って移動自在であり、また、カセットCに収容されたウエハWのウエハ配列方向(Z方向)に対しても移動自在である。これにより、ウエハ搬送体52bは各カセットC内のウエハWに対し選択的にアクセスすることができる。
【0053】
また、ウエハ搬送体52bは、後述するように処理ステーション53の第3の処理装置群G3に属するアライメント装置G3cとエクステンション装置G3dに対してもアクセスすることができるように構成されている。
【0054】
処理ステーション53では、その中心部に主搬送装置53aが設けられている。また、主搬送装置53aを取り囲むように、各種処理装置が多段に配置された5つの処理装置群G1、G2、G3、G4と上述のレジスト処理装置10とが配置されている。主搬送装置53aは、処理装置群G1、G2、G3、G4の各種処理装置とレジスト処理装置10へウエハを搬入出することができる。
【0055】
図7を参照すると、第1の処理装置群G1では、ウエハW上にレジスト液を滴下し回転塗布することができるレジスト塗布装置G1aと、レジスト塗布装置G1aの上方に配置され、ウエハWに塗布され露光されたレジスト膜に対して現像液を供給して現像処理を行う現像処理装置G1bとが配置されている。第2の処理装置群G2の場合も同様に、レジスト塗布装置G2aと、現像処理装置G2bとが下から順に2段に積み重ねられている。
【0056】
図8を参照すると、第3の処理装置群G3では、ウエハWを冷却処理するクーリング装置G3a、レジスト液とウエハWとの定着性を高めるためのアドヒージョン装置G3b、ウエハWの位置合わせを行うアライメント装置G3c、ウエハWを待機させるエクステンション装置G3d、レジスト塗布後の溶剤を乾燥させるプリベーキング装置G3e、G3fおよび現像処理後の加熱処理を施すポストベーキング装置G3g、G3h等が下から順に例えば8段に重ねられている。
【0057】
また、第4の処理装置群G4では、例えばクーリング装置G4a、載置したウエハWを自然冷却させるエクステンション・クーリング装置G4b、エクステンション装置G4c、クーリング装置G4d、露光処理後の加熱処理を行うポストエクスポージャベーキング装置G4e、G4f、ポストベーキング装置G4g、G4h等が下から順に例えば8段に積み重ねられている。
【0058】
再び図6を参照すると、インターフェイスステーション54の中央部にはウエハ搬送体55が設けられている。このウエハ搬送体55は、X方向およびZ方向に移動自在であり、また、回転自在に構成されている。ウエハ搬送体55は、第4の処理装置群G4に属するエクステンション・クーリング装置G4b、エクステンション装置G4c、周辺露光装置56および図示しない露光装置に対してアクセスすることができる。
【0059】
次に、以上のように構成された塗布現像装置50において行われるウエハWに対するレジスト塗布/露光/現像/処理プロセスを説明する。
先ず、ウエハ搬送体52b(図6)がカセットCから未処理のウエハWを1枚取りだし、第3の処理装置群G3に属するアライメント装置G3cに搬入する(図8)。次いで、アライメント装置G3cにて位置合わせされたウエハWは、主搬送装置53aによって、アドヒージョン装置G3b、クーリング装置G3a、レジスト塗布装置G1a(G2a)(図7)、プリベーキング装置G3e(G3f)に順次搬送され、各装置において所定の処理が行われる。プリベーキングの後、ウエハWは、ウエハ搬送体53aによって、図8に示すエクステンション・クーリング装置G4bに搬送されて所定の温度まで冷却される。
【0060】
次いで、ウエハWはウエハ搬送体53aによってエクステンション・クーリング装置G4bから取り出されてエクステンション装置G4cに搬入され、エクステンション装置G4cにおいてウエハ搬送体55(図6)に受け渡されて、インターフェイスステーション54の周辺露光装置56を経て図示しない露光装置に搬送される。この露光装置は、例えばEUV露光装置あり、露光装置に搬送されたウエハWは真空中で露光される。露光されたウエハWは、ウエハ搬送体55によりエクステンション装置G4cに搬送された後、主搬送装置53aによって、ポストエクスポージャベーキング装置G4e(G4f)、現像処理装置G1b(G2b)(図7)、ポストベーキング装置G4g(G4h)、クーリング装置G4d(図8)に順次搬送され、各装置において所定の処理が行われる。
【0061】
次いで、ウエハWは、ウエハ搬送体53aによりレジスト処理装置10へ搬送され、レジスト処理装置10において上述のレジスト処理が行われる。この後、ウエハWは、ウエハ搬送体53aによりレジスト処理装置10から搬出され、第3の処理装置群G3に属するクーリング装置G3aへ搬入されて、クーリング装置G3aにおいて冷却される。続けて、ウエハWは、ウエハ搬送体52bによりクーリング装置G3aから取り出されて、元のカセットCへ搬入され、一連のレジスト塗布/露光/現像/処理プロセスが終了する。
【0062】
以上説明したとおり、本発明の実施形態による塗布現像装置は、レジスト処理装置10を組み込んでいるため、レジスト処理装置10が有する効果を発揮することができる。したがって、レジストパターンの側面が平坦化され、レジストパターン側面の凹凸により生じるLERを低減することができる。
【0063】
以上、幾つかの実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変更することが可能である。
【0064】
例えば、上記の実施形態においてはHeとXeの混合ガスを例示したが、化学的に不活性なガスの混合ガスであれば、HeとXeの混合ガスに限定されない。例えば、Heとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスであっても良い。ただし、この場合、HeとArの分子量の差がHeとXeの分子量差よりも小さいため、Ar分子はXe分子ほどには大きなエネルギーを有することができない。このため、レジストパターン側面の平坦化効果も比較的低くなるが、ArガスはXeガスに比べ安価であるため、Arガスの使用はコストの点で有利である。したがって、使用するレジストの特性等により、ガスを選択することにより、所望の効果を発揮させるようにすると好ましい。また、2種類のガスに限らず、3種類以上のガスの混合ガスを用いても良い。3種類以上のガスの混合ガスを用いれば、上述した平坦化の効果をより適切に調整することが可能となる。なお、化学的に不活性なガスは、混合ガス中の他のガスおよびレジストパターンとの反応性が低いガスであって、典型的には、He、ネオン(Ne)、Ar、クリプトン(Kr)、Xeなどの希ガスであり、チッ素ガスであっても良い。また、使用するレジストにもよるが、混合ガスは水素ガスを含んで良い。換言すると、レジストパターンと反応してレジストの性質を損ねたり、除去が困難な膜がレジストパターン上に堆積されたりするようなガスでなければ、レジスト処理装置10において使用することが可能である。
【0065】
また、ガスノズル16を載置台14の上面に対して垂直に配置する一方で、ガスノズル16の前端16Fに形成されるオリフィス16hをガスノズル16の長手方向に対して所定の角度で傾斜させても良い。例えば、図9(a)に示すように、複数のオリフィス16hをガスノズル16の中心線に対して所定の傾斜角θで傾斜させると、オリフィス16hから噴出される分子線は、略同一の角度で、載置台14上に載置されるウエハWに照射される。すなわち、この構成により、ガスノズル16を傾斜させることなく、所定の傾斜角θで分子線を照射することが可能となる。
【0066】
また、図9(b)に示すように、複数のオリフィス16hをガスノズル16の中心線に対して外向きに所定の傾斜角θで対称に傾斜させれば、一回のスキャンで、露光及び現像によりウエハW上に形成されたレジストパターンの一側面とこれに対向する側面とに分子線を照射することができる。この結果、スループットを向上することが可能となる。
【0067】
さらに、図9(b)の傾斜したオリフィス16hとは傾斜の方向を反対にしても良い。すなわち、図9(c)に示すように、複数のオリフィス16hをガスノズル16の中心線に対して内向きに所定の傾斜角θで対称に傾斜させて良い。このようにしても、図9(b)に示す例と同様の効果が発揮される。
【0068】
さらにまた、ガスノズル16の前端16Fの平面図である図9(d)に示すように、例えば約90°の角度間隔で配置される4つの傾斜したオリフィス16h(図9(a)から図9(c))をガスノズル16の前端16Fに形成しても良い。特に、4つのオリフィス16hが、ガスノズル16の中心線に対して対称に傾斜している場合(図9(b)又は図9(c))には、レジストパターンに対して4つの分子線を異なる4つの角度で照射することができる。これにより、スループットを更に向上することが可能となる。なお、内向きに傾斜する4つのオリフィス16hをガスノズル16に形成した場合であっても、チャンバ12内が真空であるため、4つの分子線の内の一の分子線が他の分子線の障害となることは殆どない。また、オリフィス16hの数は4つに限られず、使用するガスノズル16の内径や、チャンバ12内の圧力と混合ガスの供給量との関係を考慮して決定して良いことは言うまでもない。
【0069】
さらに、ガスノズル16を載置台14に対して所定の傾斜角θとなるように固定しても良い。この場合、ウエハを一筆書きのように移動させることによりレジストパターンの全体に分子線を照射し、その後に、ウエハを90°回転し、再び一筆書きのような仕方でレジストパターンの全体に分子線を照射するといった方法で、レジストパターンの側面の全体に分子線を照射することができる。ただし、ウエハWの移動のために、ウエハの面積の4倍以上に相当するスペースが必要となる。
【0070】
さらに、ガスノズル16を載置台14に対して垂直に配置し、載置台14を所定の角度でチルトさせるように、載置台14を構成しても良い。この場合、載置台支持部15がチルト機構を有すると好ましい。
【0071】
また、ガスノズル16は、他の実施形態においては、チャンバ12の側面からチャンバ12内へ挿入されて、載置台14に対して所定の角度で対向するように屈曲して良い。このようにすれば、省スペース化の点で有利である。
【0072】
また、上記の実施形態において、ウエハW上のレジストパターンへ分子線を照射するため、載置台14を図2(a)から図3(c)に示すように移動する例を説明したが、載置台14を図10に示すように移動しても良い。すなわち、ウエハWに分子線を照射しつつ、ウエハWを初期位置から+X方向にウエハWの半径分移動させ、+Y方向に照射領域の幅の分だけずらし、−X方向にウエハWの半径分移動させる。以上の作業を繰り返し、ウエハWの4分の1のエリアIに対して分子線を照射させる(図10(a))。なお、このとき、 ガスノズル16は、図10中の−Y方向に所定の傾斜角θで傾斜している。
【0073】
次に、ウエハWを90度回転させて、照射済みのエリアIと未照射のエリアIIを入れ替えると共に、ガスノズル16を図10中の+X方向に傾斜角θで傾斜させる。そして、ウエハWに分子線を照射しつつ、図10(a)の経路と逆の経路をたどるようにウエハWを移動させ、ウエハWの次の4分の1のエリアIIに対して分子線を照射する(図10(b))。以上により、ウエハWの半分に対して分子線が照射されたことになる。
【0074】
次いで、ウエハWを更に90度回転させると共に、ガスノズル16を+Y方向に傾斜角θで傾斜させた後、同様に、ウエハWを移動させてウエハWの次の4分の1のエリアIIIに対して分子線を照射する(図10(c))。さらに、ウエハWを再度90度回転させると共に、ガスノズル16を−X方向に傾斜させた後、図10(c)の経路と逆の経路をたどりながら、ウエハWの4分の1のエリアIVに対して分子線を照射する(図10(d))。以上により、ウエハW上のレジストパターンの全ての側面に対して分子線が照射されたことになる。
【0075】
このようにすれば、ウエハWの移動に必要なスペースSは、X方向およびY方向にウエハWの直径の約1.5倍で良く、一層の省スペース化が可能となる。
【0076】
また、上記の実施形態におけるウエハWを一様にスキャンすることによってレジストパターンの全体に混合ガスの分子線を照射させるようにしたが、分子線の照射領域がウエハWに作り込まれるチップに対応するようにステップ・バイ・ステップに載置台14を移動させても良い。また、チップ内のクリティカルな部位(LERをより一層低減する必要がある部位)にのみ照射するようにしても良い。そのような部位を把握するため、ウエハマップデータや画像処理を利用しても良い。
【0077】
また、ガスノズル16をX方向及びY方向に移動可能に設け、載置台14を移動させる代わりに、移動させることによりウエハW上のレジストパターンのほぼ全面に混合ガスの分子線を照射させるようにしても良い。
【0078】
さらに、レジスト処理装置10のチャンバ12内において分子線が形成される限り、レジスト処理装置10に複数のガスノズル16を設けても良い。これによれば、ウエハWのスキャン時間を低減することができ、スループットを向上することができる。
【0079】
上記の塗布現像装置50において、レジスト処理装置10は処理ステーション53に設置されていたが(図6)、設置位置はこれに限定されず、他の位置であっても良い。例えば、レジスト処理装置10は、処理装置群G4又は処理装置群G3内に設置することも可能である。
【0080】
さらに、レジスト処理装置10を塗布現像装置50とは独立に構成することも可能である。そのようなレジスト処理装置の一例を図11を参照しながら説明する。図示のとおり、レジスト処理装置100は、処理容器101と、ゲートバルブ102cを介して処理容器101と接続されるロードロック室102と、ゲートバルブ103cを介して処理容器101と接続されるロードロック室103と、を備える。
【0081】
処理容器101は、レジストパターンが形成されたウエハが載置される載置台12と、載置台12に載置されたウエハに対して分子線を照射するためのガスノズル16と、載置台12に対してウエハを搬入出する搬送体101aと、を含んでいる(図11(a))。載置台12は、所定のステージによって、図11(a)中に一点鎖線の矢印で示すように、X方向およびY方向に移動することが可能である。ガスノズル16には、図1に示すガス供給システム17と同様なガス供給システム(図示せず)が接続され、これにより、例えばHeガスとXeガスの混合ガスの分子線を、載置台12に載置されたウエハに対して照射することができる。また、搬送体101aは、図中、点線の矢印で示すように、X方向およびY方向に移動することができる。これにより、ゲートバルブ102cが開いたときにロードロック室102内へアクセスすることができ、ゲートバルブ103cが開いたときにロードロック室103内へアクセスすることができ、また、載置台12へアクセスすることができる。
【0082】
また、処理容器101には、レジスト処理装置10と同様に、バルブ12eを介して真空システム18が接続されている(図11(b))。真空システム18により、処理容器101内を高真空に維持することができ、これにより、ガスノズル16からの混合ガスを分子線とすることが可能となる。
【0083】
ロードロック室103は、ウエハを一時的に保持する保持台103bと、ゲートバルブ103cと保持台103bを挟んで反対側に他のゲートバルブ103aとを有している。また、ロードロック室103の下部には、バルブ103dを介してロードロック室103と接続されるターボ分子ポンプなどの高真空ポンプ103eと、高真空ポンプ103eの補助ポンプとして、且つ、高真空ポンプ103eを介してロードロック室103内を排気する粗挽きポンプとして機能するドライポンプ103fが設けられている。
なお、ロードロック室102もロードロック室103と同様に構成されている。
【0084】
このような構成を有するレジスト処理装置100においては、処理容器12内を真空に保持することができ、以下のようにしてウエハ上のレジストパターンが処理される。まず、大気圧のロードロック室102のゲートバルブ102aが開いた後、所定の搬送アームによって、ロードロック室102の保持台102bにウエハが載置される。ゲートバルブ102aが閉った後に、ロードロック室102内が所定の真空度まで真空引きされる。次いで、ゲートバルブ103cが開き、搬送体101aによりウエハがロードロック室102から処理容器101内へ搬入されて載置台12上に載置される。続けて、処理容器101内で上述のレジスト処理が行われる。この間にロードロック室103が真空引きされ、レジスト処理が終了した後、ゲートバルブ103cが開き、ウエハが搬送体101aによってウエハがロードロック室103の保持台103bに載置され、ゲートバルブ103cが閉まる。次に、ロードロック室103内が大気圧に戻されて、ゲートバルブ103aが開いて、ウエハWが所定の搬送アームによって搬出される。
【0085】
このようにロードロック室を設けることにより、処理容器101内を高真空に維持することができ、処理容器101内の真空排気に要する時間を短縮することができる。このため、スループットを向上することが可能となる。
【0086】
また、レジスト処理装置100は、所定のインターフェース部を介して、レジスト塗布現像装置50と接続することが可能であり、これにより、レジスト処理装置100と塗布現像装置50との間でウエハを受け渡すことができる。なお、上述の種々の変形は、レジスト処理装置100に対しても適用することができる。また、ロードロック室は、塗布現像装置50内に設けられるレジスト装置10に対しても適用することができることは言うまでもない。
【0087】
また、ウエハWは、半導体ウエハに限らず、FPD用のガラス基板であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施形態によるレジスト処理装置を示す概略断面図である。
【図2】(a)から(d)は、図1のレジスト処理装置におけるウエハのスキャンを説明する図であって、当該レジスト処理装置の載置台に載置されたウエハとガスノズルとの位置関係を示している。
【図3】(a)から(c)は、図1のレジスト処理装置におけるウエハのスキャンを説明する図であって、当該レジスト処理装置の載置台に載置されたウエハとガスノズルとの位置関係を示している。
【図4】レジストパターンに照射される分子線を示す模式図である。
【図5】HeとXeの混合ガス中のXe分子が有する温度のXe濃度依存性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態による塗布現像装置を示す概略上面図である。
【図7】本発明の実施形態による塗布現像装置を示す概略側面図である。
【図8】本発明の実施形態による塗布現像装置を示す他の概略側面図である。
【図9】(a)から(b)は、図1のレジスト処理装置と図6の塗布現像装置におけるガスノズルの変形例を示す図である。
【図10】(a)から(d)は、レジスト処理装置におけるウエハのスキャンを説明する図であって、当該レジスト処理装置の載置台に載置されたウエハとガスノズルとの位置関係を示している。
【図11】本発明の他の実施形態によるレジスト処理装置の概略を示す(a)上面図および(b)側面図である。
【符号の説明】
【0089】
10、100・・・レジスト処理装置、12・・・チャンバ、14・・・載置台、16・・・ガスノズル、17・・・ガス供給システム、18・・・真空システム、50・・・レジスト塗布現像装置、52・・・カセットステーション、53・・・処理ステーション、54・・・インターフェイスステーション、102、103・・・ロードロック室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成したレジストパターンに対して所定の処理を行うレジスト処理装置であって、
内部を真空に維持することができる処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、レジストパターンが形成された基板が載置される載置台と、
化学的に不活性な第1のガスおよび第2のガスを含む混合ガスを、当該載置台に対して所定の傾斜角で所定の流量にて前記載置台に向けて噴出するガス供給部と、
前記ガス供給部から前記所定の流量で噴出される前記混合ガスが前記処理容器内で分子線になり得る真空度に前記処理容器を排気することが可能な排気部と、
を備えるレジスト処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給部が、前記所定の傾斜角を変更することができるように前記処理容器に取り付けられる、請求項1に記載のレジスト処理装置。
【請求項3】
前記第1および前記第2のガスが希ガスである、請求項1又は2に記載のレジスト処理装置。
【請求項4】
前記第1のガスがヘリウムガスであり、前記第2のガスがキセノンガスである、請求項1から3のいずれか一項に記載のレジスト処理装置。
【請求項5】
前記レジストパターンが化学増幅型レジストから形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のレジスト処理装置。
【請求項6】
前記基板の通り抜けを許容する2つのバルブを有し、当該2つのバルブの一方を介して前記処理容器に接続するロードロック室を更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のレジスト処理装置。
【請求項7】
基板上にレジスト膜を塗布するレジスト塗布部と、
露光処理が行われた当該レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する現像部と、
前記レジストパターンに対して所定の処理を行うレジスト処理装置であって、請求項1から6のいずれ一項に記載のレジスト処理装置と、
を備えるレジスト塗布現像装置。
【請求項8】
前記露光処理が行われる露光装置との間で、前記レジスト膜が塗布された前記基板を搬入出するインターフェース部を更に備える、請求項7に記載のレジスト塗布現像装置。
【請求項9】
レジストパターンが形成された基板を処理容器内に設けられた載置台に載置するステップと、
前記処理容器内に分子線を形成することができるように前記処理容器内を排気するステップと、
化学的に不活性な第1のガスおよび第2のガスを含む混合ガスを前記処理容器内に噴出して分子線を形成し、当該分子線を前記載置台に載置される前記基板に所定の傾斜角で照射するステップと、
を含むレジスト処理方法。
【請求項10】
前記第1および前記第2のガスが希ガスである、請求項9に記載のレジスト処理方法。
【請求項11】
前記第1のガスがヘリウムガスであり、前記第2のガスがキセノンガスである、請求項10に記載のレジスト処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−45244(P2010−45244A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208999(P2008−208999)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】