説明

レジスト添加剤及びそれを含有するレジスト組成物

【課題】 高いドライエッチング耐性と高い酸官能性を持ち、かつレジスト樹脂との相溶性やレジスト溶媒への溶解性が高く、添加量を増加することができるレジスト添加剤を提供する。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】


(式中、Z1は置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、XはZ1とカルボキシル基との間の連結基、Yはカルボキシル基との間で酸感応性がある置換基及び/又はカルボキシル基との間の連結基を有してもよい脂環式炭化水素基を示すが、X及びYの少なくとも一方は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を有し、かつ炭化水素基を含んでもよい。m及びnは1以上の整数、m×nが2以上である。−CO2Yが複数ある場合、−CO2Yは同一でも異なってもよい。)の脂環式炭化水素誘導体からなるレジスト添加剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式炭化水素誘導体からなるレジスト添加剤及び該レジスト添加剤を含有するレジスト組成物に関するものである。
詳しくは、フォトレジストの添加剤として有用な、特に好ましくはアダマンタン誘導体などからなるレジスト添加剤及び該レジスト添加剤を含有するレジスト組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アダマンタン類は非常に安定な炭素骨格を有すると共に、特異な機能を示すことから、様々用途に供せられ、特にその光学特性、耐熱性から光ディスク基盤、光ファイバー、レンズなどに用いられている(例えば、特許文献1及び2)。
また、アダマンタンエステル類は、ドライエッチング耐性、酸感応性と紫外線に対する透明性を利用して、フォトレジスト添加剤として利用されている。
【0003】
フォトレジスト添加剤としては、アダマンタン骨格などドライエッチング耐性のある置換基を多く含むと共に、酸官能性が優れる(単位重量当たりの酸分解性基が多い)ものが好ましく、又、レジスト樹脂との相溶性やレジスト溶媒への溶解性が高いものが添加量を増やすことができ好ましい。
3つのアダマンタン骨格が結合した誘導体(例えば、特許文献3)、4つのアダマンタン骨格が結合した誘導体(例えば、特許文献4)が公知であるが、これらの誘導体はアダマンタン骨格のような嵩高い基同士が直接エステル結合した構造をしており、レジスト樹脂との相溶性やレジスト溶媒への溶解性は十分ではなかった。
また、レジスト樹脂との相溶性やレジスト溶媒への溶解性を改良した化合物として、アダマンタン骨格が−CH(R)−(CH2m−CO2−結合を介して結合した化合物(例えば、特許文献5)が知られているが、データがなく、溶解性の改良効果は不明である。
【0004】
【特許文献1】特開9−302077号公報
【特許文献2】特開6−305044号公報
【特許文献3】特開2003−73339号公報
【特許文献4】特開2005−15350号公報
【特許文献5】特開2005−15356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記観点からなされたもので、レジスト溶媒やレジスト樹脂への相溶性に優れると共に、紫外線に対する透明性及びドライエッチング耐性の良好なレジスト添加剤及び該レジスト添加剤を含有するレジスト組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、3つ以上の脂環式炭化水素基が、酸感応性を有するエステル基の他に、特定の連結基で互いに結合した脂環式炭化水素誘導体が、レジスト添加剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、
1.一般式(I)
【化1】

(式中、Z1は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示し、XはZ1である脂環式炭化水素基とカルボキシル基との間の連結基を示し、Yはカルボキシル基との間で酸感応性がある、置換基及び/又はカルボキシル基との間の連結基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示すが、X及びYの少なくとも一方の連結基は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を有し、かつ炭化水素基を含んでいてもよい基である。m及びnは1以上の整数であり、m×nが2以上である。−CO2Yが複数ある場合、複数の−CO2Yは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされることを特徴とする脂環式炭化水素誘導体からなるレジスト添加剤。
2.Yが、一般式(II)、(III)及び(IV)
【化2】

(式中、Z2は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は−O−、−C(=O)−を有する基又は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。lは0〜3の整数を示す。)
で表される基から選ばれる上記1に記載のレジスト添加剤、
3.Z1の脂環式炭化水素基が、一般式(V)
【化3】

(式中、Wは炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基又は2つのWが一緒になって形成された=Oを示す。また、複数のWは同じでもよく、異なっていてもよい。kは0〜14の整数を示す。)
で表わされるアダマンチル基である上記1又は2に記載のレジスト添加剤、
4.一般式(II)、(III)及び(IV)で表される基が、各々、一般式(VI)、
(VII)及び(VIII)
【化4】

(式中、W1は炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基又は2つのW1が一緒になって形成された=Oを示す。また、複数のW1は同じでもよく、異なっていてもよい。kは0〜14の整数を示す。aは0〜14の整数を示し。R1、R2、R3及びlは前記と同じである。)
で表わされる上記2又は3に記載のレジスト添加剤、
5.上記1〜4のいずれかに記載のレジスト添加剤を含むことを特徴とするレジスト組成物、
6.溶媒中において、2個以上のカルボキシル基又はその酸ハライドを有する脂環式炭化水素化合物と、酸感応性がある部位を有する及び/又はカルボキシル基との反応により酸感応性がある脂環式炭化水素化合物とを、酸触媒又は塩基触媒の存在下に反応させることを特徴とする一般式(I)
【化5】

(式中、Z1は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示し、XはZ1である脂環式炭化水素基とカルボキシル基との間の連結基を示し、Yはカルボキシル基との間で酸感応性がある、置換基及び/又はカルボキシル基との間の連結基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示すが、X及びYの少なくとも一方の連結基は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を有し、かつ炭化水素基を含んでいてもよい基である。m及びnは1以上の整数であり、m×nが2以上である。−CO2Yが複数ある場合、複数の−CO2Yは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる脂環式炭化水素誘導体からなるレジスト添加剤の製造方法、
7.一般式(Ia)
【化6】

(式中、Z1aは置換基を有していてもよいアダマンチル基を示し、XaはZ1aであるアダマンチル基とカルボキシル基との間の連結基を示し、Yaはカルボキシル基との間で酸感応性がある、置換基及び/又はカルボキシル基との間の連結基を有していてもよいアダマンチル基を示すが、Xa及びYaの少なくとも一方の連結基は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を有し、かつ炭化水素基を含んでいてもよい基である。m及びnは1以上の整数であり、m×nが2以上である。−CO2aが複数ある場合、複数の−CO2aは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる構造を有するアダマンタン誘導体
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、3つ以上の脂環式炭化水素基が、酸感応性を有するエステル基の他に、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含む連結基で互いに結合した脂環式炭化水素からなるレジスト添加剤は、高いドライエッチング耐性と高い酸官能性を持ち、かつフレキシブルな結合基を有するため、レジスト樹脂との相溶性やレジスト溶媒への溶解性が高く、添加量を増加することができ、レジスト樹脂の性能向上に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一般式(I)で表わされる脂環式炭化水素誘導体において、Z1の置換基を
有していてもよい脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、パーヒドロナフタレン基、あるいはパーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、イソボルナン環、ピナン環、ノルピナン環、ボルナン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンカン環を有する基が挙げられ、2〜4環程度の橋かけ環式炭化水素基が好ましく、特に、前記一般式(V)で表されるアダマンチル基であることが好ましい。
脂環式炭化水素基の環を構成する炭素数としては、炭素数6〜10のものが好ましく、具体例としては、シクロヘキシル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基が挙げられる。
前記一般式(V)において、Wは、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基又は2つのWが一緒になって形成された=Oを示す。
kは0〜14の整数である。
ここで、複数のWは同じでもよく、異なっていてもよい。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
これらのアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基等によって置換されたものであってもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
Xは、Z1で示される脂環式炭化水素とカルボキシル基との間の連結基を示し、m=1の場合、例えば、Xは直結であるか、又は−O−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−S−、−NH−などを有する基及び炭素数1〜4のアルキレン基から選ばれる2価の連結基である。
また、m=2の場合、例えば、Xは炭素数1〜4のアルカントリイル基で示される3価の連結基である。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、各種ブチレン基などが挙げられ、アルカントリイル基としては、メチン基、各種のエタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基などが挙げられる。
Yは、一般式(II)、(III)及び(IV)で表される基が好ましく、特に(VI)、(VII)及び(VIII)で表わされる基が好ましい。
一般式(II)〜(IV)において、Z2の置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基としては、前述のZ1の説明で示したものと同じである。
一般式(II)、(III)、(IV)、(VI)、(VII)及び(VIII)において、R1、R3である炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
R2は−O−、−C(=O)−を有する基又は炭素数1〜4のアルキレン基である。
炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、各種ブチレン基などが挙げられ、lは0〜3の整数である。
また、一般式(VI)、(VII)及び(VIII)において、W1は、前述のWの説明で示したものと同じであり、aは0〜14の整数である。
尚、本発明においては、前記のX及びYの少なくとも一方の連結基は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を有し、かつ炭化水素基を含んでいてもよい基であることが必要である。
X及びYのどちらかの一方の連結基が、このような連結基であれば、脂環式炭化水素誘導体は、レジスト樹脂との相溶性やレジスト溶媒への溶解性が良好であり、レジスト添加剤として、良好な性能を有するものとなる。
前記連結基の例としては、−O−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−S−、−NH−などを有し、かつ炭化水素基を含んでいてもよい連結基を挙げることができる。
【0010】
本発明は、また、一般式(Ia)
【化7】

(式中、Z1a、Xa、Ya、m及びnは前記に同じ。)
で表わされる構造を有するアダマンタン誘導体を提供する。
【0011】
本発明の一般式(I)及び(Ia)で表わされる脂環式炭化水素誘導体の具体例とし
ては、1,3−アダマンタンジカルボン酸ビス{2−(2−アダマンチルオキシ)エチル}、1,3−アダマンタンジカルボン酸ビス{2−(2−メチルアダマンチルオキシカルボニルメチル)}等が挙げられる。
【0012】
本発明の一般式(I)で表わされる脂環式炭化水素誘導体の合成方法としては、複数
のカルボキシル基を有する脂環式炭化水素化合物と、酸感応性がある部位を有する及び/又はカルボキシル基との反応により酸感応性がある脂環式炭化水素化合物を、溶媒中、塩基の存在下又は酸の存在下で反応させ、フレキシブルな結合基を介して3つ以上の脂環式炭化水素化合物残基が結合した脂環式炭化水素誘導体を製造する方法が挙げられる。
複数のカルボキシル基を有する脂環式炭化水素化合物としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの単環脂環式炭化水素基を持つ化合物、パーヒドロナフタレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、イソボルナン環、ピナン環、ノルピナン環、ボルナン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンカン環などに対応する多環脂環式炭化水素基(特に、2〜4環程度の橋かけ環式炭化水素基)を持つ化合物のうち、2〜8個のカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。
脂環式炭化水素基の環を構成する炭素数としては、炭素数6〜10のものが好ましく、具体例としては、シクロヘキシル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基が挙げられる。
また、カルボキシル基は、酸ハライド基であってもよい。
中でもアダマンタン類としては、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸、2−アダマンチルマロン酸、2−アダマンチルコハク酸、1,3−ジカルボキシメチルアダマンタンなどが挙げられ、カルボキシル基は直接アダマンタン骨格に結合しても、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などを介してアダマンタン骨格に結合してもよく、その両方の結合があってもよい。
また、カルボキシル基は、酸ハライド基であってもよい。
【0013】
酸感応性部位を有する脂環式炭化水素化合物としては、塩基を用いる場合は、2−メチル−2−アダマンタノール、2−メチル−2−アダマンチルクロロ酢酸、2−メチル−2−アダマンチルヒドロキシ酢酸、2−アダマンチルクロロメチルエーテルなどの2−アルキル−2−アダマンチル基を有する化合物や、アセタール構造を含有するレジスト添加剤が好ましい。
また、酸を用いる場合は、メチリデンアダマンタン、2−メチル−2−アダマンチタノール、1−アダマンチルビニルエーテルなど、2−アルキル−2−アダマンチル基やアセタール構造が形成されるレジスト添加剤が好ましい。
【0014】
反応温度としては、−100〜250℃、好ましくは−20〜150℃である。
反応温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなり、反応温度が高すぎる場合は分解物などが副生する。
反応圧力としては、0.01〜10MPa(絶対圧力)程度、好ましくは常圧〜1MPaである。
反応圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となる。
反応時間としては、1分〜24時間程度、好ましくは10分〜24時間である。
【0015】
塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、酸化銀などが挙げられる。
酸としては、有機酸及び無機酸が挙げられる。
有機酸としては、メタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸などが挙げられる。
無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸などが挙げられる。
また、複数のカルボキシル基を含有する脂環式化合物をそのまま酸として活用することもできる。
【0016】
反応溶媒としては、反応基材に不活性な溶媒であれば制限はない。
具体的には、ヘキサン,ヘプタン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、及びこれらとジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒との混合溶媒などが挙げられる。
溶媒量としては、反応混合物中の反応基材の濃度が、通常0.5質量%以上、好ましくは5質量%以上となる量がよい。
反応基材は懸濁状態でもよいが、溶解していることが好ましい。
反応生成物の精製方法としては、蒸留、晶析、カラム分離などが用いられ、反応生成物の性状と不純物の種類により精製方法が選択される。
【0017】
本発明のレジスト組成物としては、一般式(I)で表わされる脂環式炭化水素誘導体
からなるレジスト添加剤を少なくとも1種類と、ベース樹脂と、活性光線の照射により酸を発生する化合物とを含有する組成物を挙げることができる。
一般式(I)で表わされる脂環式炭化水素誘導体の含有量は、通常1〜50質量%で
ある。
ベース樹脂としては、ポリ(アクリル酸)重合体、ポリ(メタクリル酸)重合体、ポリ(アクリル酸エステル−アクリル酸)共重合体、ポリ(メタクリル酸エステル−メタクリル酸)共重合体等が挙げられる。
ベース樹脂の含有量は、通常50〜95質量%である。
活性光線の照射により酸を発生する化合物としては、トリフェニルスルホニウム塩誘導体、オニウム塩、ジアゾジスルホン類、ジアゾケトスルホン類、イミノスルホネート類、ジスルホン類、光により酸を発生する基をポリマーの主鎖もしくは側鎖に導入した高分子化合物、2−オキソシクロヘキシル基を有する脂肪族アルキルスルホニウム塩類、N−ヒドロキシスクシンイミドスルホネート類等が挙げられる。
活性光線の照射により酸を発生する化合物の含有量は、通常0.001〜30質量%である。
また、本発明のレジスト組成物は、更に溶媒を含有することができる。
溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸2−エトキシエチル、酢酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル、トルエン、キシレン、酢酸シクロヘキシル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
本発明のレジスト組成物は、更にノニオン系界面活性剤を含有することができる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
本発明のレジスト組成物は、更にアミン類を含有することができる。
アミン類としては、ノニルアミン、デシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ジアミルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、ジ(4−メチルベンジル)アミン、ジフェニルアミン、トリベンジルアミン、へキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
更に、本発明のレジスト組成物には、必要に応じて溶解阻止剤、色素、安定剤、塗布性改良剤、染料などの他の成分を添加することもできる。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0019】
実施例1
200mLのガラス反応器に撹拌装置、温度計を取り付け、1,3−アダマンタンジカルボン酸1.5g(6.7mmol)、1−アダマンチルビニルエーテル2.4g(13.5mmol)、p−トルエンスルホン酸0.12g(0.7mmol)、テトラヒドロフラン(THF)20mLを入れ、60℃まで昇温し、1−アダマンチルビニルエーテルが消失するまで8時間攪拌した。
反応液を室温まで冷却後、エーテル30mL、水30mLを加え、分液ロートで水層を除去した。
有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mLで洗浄後、更に水20mLで2回水洗した。
有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、乳白色固体2.4gを得た。
この乳白色固体をアセトニトリルで再結晶して、目的の1,3−アダマンタンジカルボン酸ビス{2−(2−アダマンチルオキシ)エチル}1.7g(収率44%)を得た。
【0020】
【化8】

【0021】
<分光データ>
核磁気共鳴分光法(NMR):CDCl3溶媒
1H−NMR(500MHz):1.46(d,4H),1.52−1.70(m,16H),1.75−1.95(m,16H),2.00−2.10(m,10H),2.20(s,2H),3.80(s,2H),4.80(q,2H)
13C−NMR(125MHz):19.5,27.34,27.45,27.85,31.46,32.62,35.48,36.62,37.68,37.91,39.50,41.17,81.23,90.51,176.89
【0022】
実施例2
200mLのガラス反応器に撹拌装置、温度計を取り付け、1,3−アダマンタンジカルボン酸1.5g(6.7mmol)、クロロ酢酸2−メチル−2−アダマンチル3.2g(13.2mmol)、ジメチルホルムアミド(DMF)65mLを加え25℃で攪拌した。
この溶液に、炭酸カリウム2.8g(20.3mmol)、ヨウ化カリウム0.65g(3.9mmol)を添加し、25℃で激しく攪拌した。
8時間攪拌後、クロロ酢酸2−メチル−2−アダマンチルが消失したのを確認後、反応液にエーテル60mL、水60mLを加え、分液ロートで水層を除去した。
有機層を更に水50mlで2回水洗した。
有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、黄色固体4.0gを得た。
この黄色固体をメタノール/エーテル(70/30;質量比)で再結晶して、目的の1,3−アダマンタンジカルボン酸ビス{2−(2−メチルアダマンチルオキシカルボニルメチル)}2.5g(収率59%)を得た。
【0023】
【化9】

【0024】
<分光データ>
核磁気共鳴分光法(NMR):アセトン−d6溶媒
1H−NMR(500MHz):1.05(d,4H),1.09(s,6H),1.21(s,8H),1.23−1.30(br,6H),1.33−1.42(m,10H),1.50−1.57(m,8H),1.65(s,2H),1.75(s,4H),4.11(s,4H)
13C−NMR(125MHz):21.81,26.17,26.82,27.31,32.33,33.84,34.77,35.85,37.48,37.53,40.29,60.79,87.75,166.24,175.26
【0025】
比較例1
1,3−アダマンタンジカルボン酸ビス{2−(2−エチルアダマンチル)}を特開2003−73339号公報の実施例に従って合成した。
【0026】
【化10】

【0027】
試験例1
実施例1、実施例2及び比較例1で得られた化合物のレジスト溶媒への溶解度(25℃)を測定した。
レジスト溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチルを用いた。
得られた結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の脂環式炭化水素誘導体からなるレジスト添加剤は、透光性、耐熱性、酸感応性、耐水性、耐エッチング性、溶解性等の物性に優れ、フォトレジスト組成物に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Z1は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示し、XはZ1である脂環式炭化水素基とカルボキシル基との間の連結基を示し、Yはカルボキシル基との間で酸感応性がある、置換基及び/又はカルボキシル基との間の連結基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示すが、X及びYの少なくとも一方の連結基は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を有し、かつ炭化水素基を含んでいてもよい基である。m及びnは1以上の整数であり、m×nが2以上である。−CO2Yが複数ある場合、複数の−CO2Yは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされることを特徴とする脂環式炭化水素誘導体からなるレジスト添加剤。
【請求項2】
Yが、一般式(II)、(III)及び(IV)
【化2】

(式中、Z2は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は−O−、−C(=O)−を有する基又は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。lは0〜3の整数を示す。)
で表される基から選ばれる請求項1に記載のレジスト添加剤。
【請求項3】
Z1の脂環式炭化水素基が、一般式(V)
【化3】

(式中、Wは炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基又は2つのWが一緒になって形成された=Oを示す。また、複数のWは同じでもよく、異なっていてもよい。kは0〜14の整数を示す。)
で表わされるアダマンチル基である請求項1又は2に記載のレジスト添加剤。
【請求項4】
一般式(II)、(III)及び(IV)で表される基が、各々、一般式(VI)、
(VII)及び(VIII)
【化4】

(式中、W1は炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基又は2つのW1が一緒になって形成された=Oを示す。また、複数のW1は同じでもよく、異なっていてもよい。aは0〜14の整数を示し。R1、R2、R3及びlは前記と同じである。)
で表わされる請求項2又は3に記載のレジスト添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト添加剤を含むことを特徴とするレジスト組成物。
【請求項6】
溶媒中において、2個以上のカルボキシル基又はその酸ハライドを有する脂環式炭化水素化合物と、酸感応性がある部位を有する及び/又はカルボキシル基との反応により酸感応性がある脂環式炭化水素化合物とを、酸触媒又は塩基触媒の存在下に反応させることを特徴とする一般式(I)
【化5】

(式中、Z1は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示し、XはZ1である脂環式炭化水素基とカルボキシル基との間の連結基を示し、Yはカルボキシル基との間で酸感応性がある、置換基及び/又はカルボキシル基との間の連結基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示すが、X及びYの少なくとも一方の連結基は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を有し、かつ炭化水素基を含んでいてもよい基である。m及びnは1以上の整数であり、m×nが2以上である。−CO2Yが複数ある場合、複数の−CO2Yは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる脂環式炭化水素誘導体からなるレジスト添加剤の製造方法。
【請求項7】
一般式(Ia)
【化6】

(式中、Z1aは置換基を有していてもよいアダマンチル基を示し、XaはZ1aであるアダマンチル基とカルボキシル基との間の連結基を示し、Yaはカルボキシル基との間で酸感応性がある、置換基及び/又はカルボキシル基との間の連結基を有していてもよいアダマンチル基を示すが、Xa及びYaの少なくとも一方の連結基は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を有し、かつ炭化水素基を含んでいてもよい基である。m及びnは1以上の整数であり、m×nが2以上である。−CO2aが複数ある場合、複数の−CO2aは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる構造を有するアダマンタン誘導体。

【公開番号】特開2006−290799(P2006−290799A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113790(P2005−113790)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】