説明

レドームの製造方法

【課題】製造工程を短縮し、且つ不良品の発生率を抑制することで、製造に掛かる手間やコストを抑えることのできるレドームの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に設けられるレドーム10の製造方法であって、一面11aに凹部11bを備えた透明部材11を成形する成形工程と、凹部11b内の空間を満たす形状を備え凹部11bの内面に接する接触面Sが光輝性を備えた光輝部材12を凹部11b内に設置する設置工程と、上記一面11aを覆い透明部材11及び光輝部材12を一体的に保持するベース部材16を設置する第2設置工程とを有するという方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に配置されるレドームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載され電波を用いて車両周囲の障害物を検知することで車両と障害物との距離や相対速度を計測するミリ波レーダが使用されている。レーダの検知側には、合成樹脂製のラジエータグリルが設けられ、その中央部にはエンブレム等の識別マークが設けられているが、一般的なラジエータグリルやエンブレム等には、高級感・質感を付与するためにクロムめっき等の金属光輝面が形成されていることが多い。しかしながら、クロムめっきは電波の透過を妨げることが知られているので、ラジエータグリルの中央部に電波が透過する開口部を設け、金属光輝性を有し電波透過可能に形成されたレドームを上記開口部に設けることが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
ここで、特許文献1及び2には、透明樹脂層の裏側(レーダと対向する側)に凹部を設け、金属光輝性を呈する金属層としてインジウムの蒸着層又はスパッタリング層を凹部に形成し、その裏側に、凹部に対応した凸部を有する樹脂層を形成することにより肉厚が略一定となるレドームが開示されている。このようなレドームは、ラジエータグリルと並んで配置されても違和感のない金属光輝性と、レーダが障害物を検知するに十分な電波透過性能とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−49522号公報
【特許文献2】特開2000−159039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような課題が存在する。
上述したレドームの透明樹脂層には、蒸着・スパッタリングによって形成される金属層を保護するための塗装膜(いわゆるベースコート及びトップコート)や、凹部のみを金属光輝面とするためのマスクとしての有色層が塗装・印刷工程等により形成されている。また、レドームの肉厚を略一定とするための樹脂層は、透明樹脂層における金属層や有色層が形成されている側に射出成形を用いて成形される。
【0006】
このように、レドームを成形するためには、蒸着やスパッタリングの工程の他に、塗装工程や射出成形工程等の多数の工程を必要としており、製造工程が煩雑で各工程において一定の不良品が発生するため製造全体の歩留まりが低下し、不良率を低く抑えることが困難であるという課題があった。
特に、射出成形工程では、射出圧力及び溶融した樹脂の熱により、金属層や塗装膜等が損傷を受け、金属層・塗装膜の剥離や圧痕等の不良が多く発生していた。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、製造工程を短縮し、且つ不良品の発生率を抑制することで、製造に掛かる手間やコストを抑えることのできるレドームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に設けられるレドームの製造方法であって、一面に凹部を備えた透明部材を成形する成形工程と、凹部内の空間を満たす形状を備え凹部の内面に接する接触面が光輝性を備えた光輝部材を凹部内に設置する設置工程と、上記一面を覆い透明部材及び光輝部材を一体的に保持するベース部材を設置する第2設置工程とを有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、光輝部材が光輝性を備えており、透明部材に光輝性を呈する金属層及びそれを保護する保護層等を形成する必要がないことから、レドームの製造工程が短縮される。そして、製造工程が短縮されることで、製造全体の歩留まりが向上し、不良品の発生率が抑制される。
また、光輝部材は上記凹部内の空間を満たす厚みのある形状となっており、且つ第2設置工程では光輝部材の上記接触面と逆側の面にベース部材が設置されるので、光輝性を備えた上記接触面が損傷を受ける可能性が少ない。
【0009】
また、本発明は、凹部内の空間を満たす形状を備えた光輝部材本体を成形する工程と、凹部の内面に対応する光輝部材本体の表面に金属蒸着処理を施す工程とを備え、上記設置工程より前に光輝部材を成形する第2成形工程を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、光輝部材本体の上記表面に金属蒸着処理により金属層を形成するが、光輝部材を成形する第2成形工程は透明部材の成形と平行して実施することができるため、レドームの製造に掛かる時間を短縮することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、第2設置工程が、凹部内に光輝部材が設置された透明部材を金型内に配置し、ベース部材を射出成形により成形する工程を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、射出成形時に光輝部材に対して射出圧力及び溶融した樹脂の熱が加えられるが、光輝部材は上記凹部内の空間を満たす厚みのある形状となっており、且つ光輝部材の上記接触面と逆側の面に溶融した樹脂が射出されるので、光輝部材における光輝性を備えた上記接触面が損傷を受ける可能性が少ない。
【0011】
また、本発明は、ベース部材が有色であり、第2設置工程では、上記一面において透明部材とベース部材とを互いに溶着させるという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、上記一面において透明部材とベース部材とが互いに溶着するため、透明部材とベース部材との間に接着剤等を設ける必要がない。また、ベース部材が有色であることから、透明部材を上記一面の逆側から見たときに、上記凹部以外の部分はベース部材の色となっているため、有色層を設ける必要がない。
【0012】
また、本発明は、第2設置工程では、透明部材及び光輝部材とベース部材とを接着剤を介して接着するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、予め成形されたベース部材を、接着剤を介して透明部材及び光輝部材に接着するため、透明部材や光輝部材に損傷が生じない。また、ベース部材を射出成形によって成形する場合に比べ、製造の手間やコストが抑制される。
【0013】
また、本発明は、上記成形工程後且つ上記配置工程より前に、上記一面に有色層を形成する工程を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、例えベース部材が有色であったとしても、上記一面に有色層を形成することで、透明部材を上記一面の逆側から見たときの、上記凹部以外の部分の色味を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レドームの製造工程を短縮でき、且つ不良品の発生率を抑制できることから、レドームの製造に掛かる手間やコストを抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】レドーム10が設けられたラジエータグリル1の正面図である。
【図2】レドーム10の正面図である。
【図3】図2のA−A線視断面図である。
【図4】レドーム10の製造方法を示す概略図である。
【図5】レドーム10Aの断面図である。
【図6】レドーム10Aの製造方法を示す概略図である。
【図7】レドーム10の変形例を示す概略図である。
【図8】レドーム10Aの変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のレドームの製造方法に係る実施の形態を、図1から図8を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、各図面における矢印Fは前方向を示している。
【0017】
〔第1実施形態〕
本発明の第1の実施形態におけるレドーム10の構成を、図1から図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるレドーム10が設けられたラジエータグリル1の正面図である。
図2は、本実施形態におけるレドーム10の正面図である。
図3は、図2のA−A線視断面図であって、(a)はレドーム10の断面図、(b)は(a)における光輝部材12の拡大図である。
【0018】
図3に示すように、本実施形態におけるレドーム10は、車両に搭載され電波を用いて車両周囲の障害物を検知するレーダ20の検知側に配置されるものである。なお、以下の説明において、レドーム10のレーダ20に対向する面を背面、その反対側で車両前方に対向する面を前面と称する。
【0019】
まず、レドーム10が設けられているラジエータグリル1の構成を、図1を参照して説明する。
ラジエータグリル1は、車両の前面に設けられる車両構成体であり、水平方向に延びる複数の部材及び垂直方向に延びる複数の部材が一体となって構成されている。また、ラジエータグリル1は、その前面中央部にレドーム10を備えている。なお、レドーム10の背面側にはレーダ20(図3参照)が設置されている。
【0020】
レーダ20は、車両に搭載され電波を用いて車両周囲の障害物を検知するものであり、より具体的には、車両と車両前方の障害物との距離や相対速度等を計測するものである。
また、レーダ20は、車間距離検知用レーダの適用周波数である76GHz〜77GHzの電波(ミリ波)を出射する発信部と、障害物からの反射電波を受信する受信部とを有している。なお、レーダ20が出射した電波がレドーム10を透過すると電波の減衰が生じるが、レーダ20が安定して動作し車両と障害物との距離等を正しく計測するために、上記減衰はできるだけ低く抑える必要がある。
【0021】
次に、レドーム10の構成を、図2及び図3を参照して説明する。
図2に示すように、レドーム10は、レーダ20(図3参照)の検知側に設けられ略矩形板状に成形された部材であって、前面側から見た場合に金属光輝性を備える金属部10Mと、黒色等の色を呈する有色部10Pとを有している。金属部10Mは、レドーム10内に2箇所設けられ、互いに水平方向で平行して延在している。また、金属部10Mによって、車両のエンブレム等が構成されている。有色部10Pは、レドーム10の金属部10M以外の領域に設けられている。
【0022】
図3に示すように、レドーム10は、透明部材11と、光輝部材12と、ベース部材16とを有している。
透明部材11は、前面側から見て略矩形を呈する板状の部材であり、例えばPC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明合成樹脂から射出成形等を用いて成形され、その部材厚みは1.5mmから10mm程度となっている。透明部材11の前面には、傷付き防止のためのハードコート処理、又はウレタン系塗料のクリヤーコート処理が施されている。なお、耐傷付き性を備える透明合成樹脂であれば、これらの傷付き防止処理は不要である。透明部材11の背面(一面)11aには、金属部10Mに対応する箇所に凹部11bが形成されている。この凹部11bは、後述する光輝部材12をその内部に設置すると共に、レドーム10を前面側から見た場合に金属部10Mを立体的に視認させるためのものである。
【0023】
光輝部材12は、凹部11bを満たす形状に成形されると共に凹部11b内に設置され、凹部11bの内面と接する接触面Sが金属光輝性を備えた部材であって、光輝部材本体12aと、光輝層13とを有している。
【0024】
光輝部材本体12aは、凹部11bを満たす形状に成形され、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、PC又はPET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂から射出成形等を用いて成形されている。光輝部材本体12aは、凹部11b内に設置されたときに、透明部材11の背面11aと略面一となる形状となっている。
【0025】
光輝層13は、光輝部材12の接触面Sに金属光輝性を備えさせるための層であって、金属蒸着処理を用いて形成された金属層と、該金属層を保護するためのベースコート層及びトップコート層(いずれも図示せず)とを有している。蒸着処理としては真空蒸着法やスパッタリングが用いられ、蒸着される金属としてはインジウム、アルミ又は錫等が使用される。ベースコート層及びトップコート層は、蒸着処理によって形成され薄く脆い金属層を保護するためのものである。ベースコート層及びトップコート層は、透明(着色透明を含む)な合成樹脂を用いたクリヤー塗装によって形成されている。光輝層13の金属層は非常に薄く、レーダ20が障害物を検知するに十分な電波透過性能を備えている。
なお、本実施形態の光輝層13は金属蒸着処理を用いて形成されているが、これに限定されるものではなく、十分な電波透過性能を持ち、且つ金属光輝性を備えることのできる塗装その他の方法によって形成してもよい。
【0026】
ベース部材16は、透明部材11の背面11aを覆い、透明部材11と光輝部材12とを一体的に保持すると共に、レドーム10のラジエータグリル1への取り付けに用いられるものである。ベース部材16は、例えばABS、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC、PET等の合成樹脂、又はこれらの複合樹脂からなり、その部材厚みは0.5mm〜10mm程度である。また、ベース部材16は有色(黒色等)であり、ベース部材16の色がレドーム10における有色部10Pの色となっている。なお、ベース部材16の背面側には、ラジエータグリル1と接続するための複数の取付片16aが設けられている。
【0027】
ベース部材16は、射出成形を用いて成形される。より詳細には、凹部11b内に光輝部材12が設置された透明部材11を射出成形用の金型内に配置した状態で射出成形を行う、いわゆるインサート成形を用いて成形される。なお、ベース部材16の成形時に、透明部材11の背面11aには溶融した高温の樹脂が接触するため、透明部材11は背面11aにおいて僅かに溶解する。そのため、ベース部材16の成形後には、背面11aにおいて透明部材11とベース部材16とは互いに溶着しており、接着剤等を用いずとも透明部材11とベース部材16とを接合することができる。
【0028】
続いて、本実施形態におけるレドーム10の製造方法を、図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態におけるレドーム10の製造方法を示す概略図である。
レドーム10の製造方法は、透明部材11を成形する成形工程と、光輝部材12を成形する第2成形工程と、光輝部材12を凹部11b内に設置する設置工程と、ベース部材16を成形しつつ透明部材11の背面11a側に設置する第2設置工程とを有する。
以下、各工程について説明する。
【0029】
まず、図4(a)に示すように、透明部材11を成形する。
透明部材11を射出成形によって成形し、その背面11aには凹部11bを形成する。なお、背面11a及び凹部11bの内面は、平滑面となっている。また、透明部材11の前面には擦過等に対する耐久性を向上させ傷の発生を防止するハードコート処理が施される。
【0030】
次に、図4(b)及び(c)に示すように、光輝部材12を成形する。
最初に、光輝部材本体12aを、射出成形等によって成形する。次に、凹部11bの内面に対応する光輝部材本体12aの表面12sに、光輝層13を形成する。光輝層13は、ベースコート層、金属層及びトップコート層を光輝部材本体12a側から順に積層することによって形成され、ベースコート層及びトップコート層は透明合成樹脂を用いたクリヤー塗装によって形成され、金属層は金属蒸着処理により形成される。
本実施形態において、レドーム10の金属部10Mに金属光輝性を付与するための光輝層13は、光輝部材本体12aに形成される。そのため、光輝部材12及び透明部材11の成形を、それぞれ平行して実施することができるため、レドーム10の製造に掛かる時間を短縮することができる。
【0031】
次に、図4(d)に示すように、光輝部材12を凹部11b内に設置する。なお、図4(d)及び後述する図4(e)では、光輝層13を省略している。
透明部材11の凹部11b内に光輝部材12を設置する。このとき、光輝部材12の接触面Sを、凹部11bの内面に隙間なく接触させておく。
【0032】
最後に、図4(e)に示すように、ベース部材16を成形する。
凹部11b内に光輝部材12が設置された透明部材11を、射出成形用の金型内に配置し、透明部材11の背面11a側に溶融した樹脂を射出するインサート成形を行うことで、ベース部材16を成形する。ベース部材16は、背面11aを覆うため、透明部材11と光輝部材12とを一体的に保持することができる。なお、溶融した樹脂の熱により、透明部材11は背面11aにおいて僅かに溶解する。そのため、ベース部材16の成形後には、背面11aにおいて透明部材11とベース部材16とが互いに溶着しており、接着剤等を用いずとも透明部材11とベース部材16とを接合することができる。
【0033】
また、ベース部材16を成形するための樹脂には有色(黒色等)の樹脂を用いており、成形後にはベース部材16の色がレドーム10における有色部10Pの色となっている。そのため、有色部10Pの色を形成するための有色層等を背面11aに形成する必要がない。
さらに、ベース部材16の射出成形時には、光輝部材12に対して射出圧力及び溶融した樹脂の熱が加えられるが、光輝部材12は凹部11b内の空間を満たす厚みのある形状となっており、且つ光輝部材12の接触面S(光輝層13)と逆側の面に溶融した樹脂が射出されるので、光輝部材12における光輝層13が損傷を受ける可能性が少ない。
【0034】
以上で、本実施形態におけるレドーム10の製造が完了する。
上述した製造方法によってレドーム10を製造した場合、光輝部材12が光輝層13を有することで光輝性を備えており、透明部材11に光輝性を呈する金属層及びそれを保護するベースコート層及びトップコート層等を形成する必要がないことから、レドーム10の製造工程が短縮される。そして、製造工程が短縮されることで、製造全体の歩留まりが向上し、不良品の発生率が抑制される。
【0035】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、レドーム10の製造工程を短縮でき、且つ不良品の発生率を抑制できることから、レドーム10の製造に掛かる手間やコストを抑えることができるという効果がある。
【0036】
〔第2実施形態〕
本発明の第2の実施形態におけるレドーム10Aの構成を、図5を参照して説明する。なお、図5において、図3に示す第1の実施形態における構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5は、本実施形態におけるレドーム10Aの断面図である。
【0037】
透明部材11の背面11aには、レドーム10Aの有色部10Pの色味を調整する、黒色等の有色層14が形成されている。有色層14は、シルク印刷、ホットスタンプ又はタンポ印刷等を用いて形成される。
【0038】
透明部材11及び光輝部材12と、ベース部材16との間には、接着剤15が配置されている。すなわち、透明部材11及び光輝部材12と、ベース部材16とは、接着剤15を介して接着されている。接着剤15には、液状・ゲル状から硬化して接着する接着剤若しくは粘着剤、又は両面テープ等が用いられる。
【0039】
続いて、本実施形態におけるレドーム10Aの製造方法を、図6を参照して説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の工程についてはその説明を省略する。
図6は、本実施形態におけるレドーム10Aの製造方法を示す概略図である。
レドーム10Aの製造方法は、透明部材11を成形する成形工程と、有色層14を透明部材11に形成する工程と、光輝部材12を成形する第2成形工程と、光輝部材12を凹部11b内に設置する設置工程と、ベース部材16を成形し接着剤15を塗布する工程と、接着剤15を介してベース部材16を透明部材11の背面11a側に設置する第2設置工程とを有する。
【0040】
まず、図6(a)に示すように、透明部材11を成形する。
次に、図6(b)に示すように、有色層14を形成する。
有色層14を、透明部材11の背面11aに形成する。このとき、有色層14は、凹部11bの内面には形成されない。有色層14は、シルク印刷、ホットスタンプ又はタンポ印刷等を用いて形成される。有色層14を形成することで、レドーム10Aの有色部10Pの色味を調整することができる。
【0041】
次に、図6(c)及び(d)に示すように、光輝部材12を形成する。
次に、図6(e)に示すように、光輝部材12を凹部11b内に設置する。なお、図6(e)及び後述する図6(g)では、光輝層13を省略している。
【0042】
次に、図6(f)に示すように、ベース部材16を成形し接着剤15を塗布する。
最初に、射出成形等を用いてベース部材16を成形する。次に、ベース部材16の透明部材11と接着される面に接着剤15を塗布する。本実施形態における接着剤15には、液状・ゲル状から硬化して接着する接着剤若しくは粘着剤、又は両面テープ等を使用する。
【0043】
最後に、図6(g)に示すように、接着剤15を介してベース部材16を透明部材11の背面11a側に接着して設置する。
ベース部材16は、背面11aを覆うため、透明部材11と光輝部材12とを一体的に保持することができる。また、本実施形態では、予め成形されたベース部材16を、接着剤15を介して透明部材11及び光輝部材12に接着するため、透明部材11や光輝部材12、特に光輝層13に損傷が生じない。また、ベース部材16を射出成形によって成形する場合に比べ、製造の手間やコストが抑制される。
以上で、本実施形態におけるレドーム10Aの製造が完了する。
【0044】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、レドーム10Aの有色部10Pの色味を有色層14によって調整できると共に、ベース部材16を射出成形によって成形する場合に比べ製造の手間やコストを抑制することができるという効果がある。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0046】
例えば、第1の実施形態では、ベース部材16はインサート成形によって成形されているが、これに限定されるものではなく、成形した透明部材11を金型内に配置したまま、凹部11b内に光輝部材12を設置すると共に、ベース部材16用の金型のみを交換して連続してベース部材16を成形する、いわゆる二色成形(ダブルモールド)又はDSI(Die Slide Injection)を用いて成形してもよい。このような製造方法によれば、製造工程を更に短縮することができる。
【0047】
また、第1の実施形態では、背面11aにおいて透明部材11とベース部材16とが直接に接し且つ溶着しているが、これに限定されるものではなく、図7に示すレドーム10の変形例を採用してもよい。
図7に示すように、レドーム10の有色部10Pの色味を調整するため、透明部材11の背面11aには有色層14が形成されている。なお、有色層14を設けることで透明部材11とベース部材16との十分な接合力が確保できない場合には、接着剤(図7では不図示)を透明部材11とベース部材16との間に設けてもよい。
【0048】
また、第2の実施形態では、ベース部材16にはラジエータグリル1と接続するための複数の取付片16aが設けられているが、これに限定されるものではなく、図8に示すレドーム10Aの変形例を採用してもよい。
図8に示すように、取付片16aの替わりに第2接着剤17が設けられ、この第2接着剤17を介してレドーム10がラジエータグリル1に接続される。なお、第2接着剤17を、第1の実施形態におけるレドーム10に適用してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、レドーム10(10A)はラジエータグリル1に設けられているが、これに限定されるものではなく、レーダ20の検知側に設けられればよく、例えば車両のバンパー等に設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10(10A)…レドーム、10a…背面(一面)、10b…凹部、11…透明部材、12…光輝部材、12a…光輝部材本体、12s…表面、14…有色層、15…接着剤、16…ベース部材、20…レーダ、S…接触面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に設けられるレドームの製造方法であって、
一面に凹部を備えた透明部材を成形する成形工程と、
前記凹部内の空間を満たす形状を備え、前記凹部の内面に接する接触面が光輝性を備えた光輝部材を前記凹部内に設置する設置工程と、
前記一面を覆い、前記透明部材及び前記光輝部材を一体的に保持するベース部材を設置する第2設置工程とを有することを特徴とするレドームの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレドームの製造方法において、
前記凹部内の空間を満たす形状を備えた光輝部材本体を成形する工程と、前記凹部の内面に対応する前記光輝部材本体の表面に金属蒸着処理を施す工程とを備え、前記設置工程より前に前記光輝部材を成形する第2成形工程を有することを特徴とするレドームの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレドームの製造方法において、
前記第2設置工程は、前記凹部内に前記光輝部材が設置された前記透明部材を金型内に配置し、前記ベース部材を射出成形により成形する工程を有することを特徴とするレドームの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレドームの製造方法において、
前記ベース部材は、有色であり、
前記第2設置工程では、前記一面において前記透明部材と前記ベース部材とを互いに溶着させることを特徴とするレドームの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のレドームの製造方法において、
前記第2設置工程では、前記透明部材及び前記光輝部材と、前記ベース部材とを接着剤を介して接着することを特徴とするレドームの製造方法。
【請求項6】
請求項3又は5に記載のレドームの製造方法において、
前記成形工程後且つ前記配置工程より前に、前記一面に有色層を形成する工程を有することを特徴とするレドームの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−46183(P2011−46183A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199040(P2009−199040)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
【Fターム(参考)】