説明

レニウム含有合金粉末の製造方法、レニウム含有合金粉末、及び導体ペースト

【課題】特に、積層セラミック電子部品の内部電極層形成用導体ペーストに好適に用いることのできるレニウム含有合金粉末の製造法と、該製造法により得られたレニウム含有合金粉末、並びに該合金粉末を含み、デラミネーションやクラック等の構造欠陥を生ずることなく緻密で連続性の優れた内部電極を形成し得る導体ペーストを提供する。
【解決手段】気相中に主成分としてレニウムと合金化可能な金属粒子を分散させ、当該粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気を存在させ、前記レニウム酸化物を還元し、前記還元によって前記主成分の金属粒子の表面に析出したレニウムを、高温下で当該主成分金属粒子中に拡散させることにより主成分金属及びレニウムを含むレニウム含有合金粉末を得る。得られた粉末は、好ましくはレニウムを0.01〜50重量%含み、平均粒径が0.01〜10μmであり、必要に応じてその他の添加剤と共に有機ビヒクル中に均一に混合分散させて導体ペーストとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルや白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム等のレニウムと合金化可能な金属を主成分とするレニウム含有合金粉末の製造方法に関し、より詳細には、積層セラミック電子部品の内部導体形成用の導体ペースト等に好適に用いることができるレニウム含有合金粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野において、電子回路や抵抗、コンデンサ、ICパッケージ等の部品を製造するために、導体ペーストや抵抗ペースト等の厚膜ペーストが使用されている。これは金属、合金や金属酸化物等の導電性粒子を、必要に応じてガラス質結合剤やその他の添加剤と共に有機ビヒクル中に均一に混合分散させてペースト状としたものであり、基板上に適用した後高温で焼成することによって導体被膜や抵抗体被膜を形成する。
【0003】
積層コンデンサ、積層インダクタ等の積層セラミック電子部品や、セラミック多層基板は、一般に誘電体、磁性体等の未焼成セラミックグリーンシートと内部導体ペースト層とを交互に複数層積層し、高温で同時焼成することにより製造される。内部導体としては、従来パラジウム、銀−パラジウム、白金等の貴金属を用いるのが主流であったが、近年、省資源や、又パラジウムや銀−パラジウムの焼成時の酸化膨脹に起因するデラミネーション、クラック等の改善の要求から、ニッケル等の卑金属材料が注目されている。
【0004】
これらの積層部品や多層基板では、より積層数を増加させる傾向にあり、例えば積層コンデンサでは積層数が数百層にも及ぶものが製造されるようになってきた。このためセラミック層を薄膜化することと、これに伴って内部導体層を更に薄膜化することが要求されている。例えばセラミック層の厚さが3μm程度になると、内部導体膜厚は1μm以下、望ましくは0.5μm程度でないと、積層体の中央部が厚くなり、構造欠陥や信頼性の低下に繋がる。
【0005】
しかし、内部導体ペーストに通常のニッケル粒子を用いた場合、焼成時に、ニッケル粒子の過焼結によってニッケル粒子の凝集、異常粒成長が生じ、内部導体が不連続膜となって抵抗値の上昇を招いたり、断線を引き起こしたりするばかりか、導体厚みが厚くなってしまう問題があり、薄膜化には限界があった。すなわち、ニッケル粒子は、酸化防止のために不活性雰囲気や還元性雰囲気等の非酸化性雰囲気中で焼成した場合、焼結が早く、比較的活性の低い単結晶粒子であっても400℃以下の低温で焼結、収縮を開始する。
【0006】
一方、セラミック層が焼結を始める温度は一般にこれよりはるかに高温であって、例えばチタン酸バリウムでは約1200℃であり、該セラミックグリーンシートとニッケル内部導体ペースト層とを交互に複数層積層し、これを高温で同時焼成した場合にはセラミック層はニッケル膜と一緒に収縮しないことから、ニッケル膜が面方向に引っ張られる形になる。このため比較的低温での焼結によってニッケル膜中に生じた小さい空隙が、高温域での焼結の進行に伴って拡がって大きな穴になり易く、又それと共に膜が厚み方向に成長し易くなるものと考えられる。
【0007】
従って、ニッケル内部導体層を薄膜化するためには、ニッケル粒子をより微細化し、かつ分散性の良いものにして、焼成時にできるだけ空隙を作りにくくすると共に、セラミック層との焼結収縮挙動を一致させることが必要と考えられる。又、膜厚を厚く形成する場合にも、前述のような導体層とセラミック層の焼結収縮挙動の不一致はデラミネーションやクラック等の構造欠陥を生じる原因ともなり、歩留り、信頼性を低下させるので問題となっていた。
【0008】
従来、セラミック層の焼結開始温度まで導体層の焼結を抑制するために、種々検討がなされてきた。例えば種々の金属酸化物や、セラミック層に用いられるものと同一組成のセラミック粒子を導体ペーストに添加することにより、見掛け上800℃付近まで導体層の収縮開始を遅らせることができる。しかし、導体層中の金属粒子自身の焼結が抑制されるわけではないので、1300℃程度の高温で焼成した場合には、やはり導体層の連続性及び導電性を損なう。又、これらの添加剤は多量に配合しないと効果がないため、抵抗値が増大する等の問題がある。
【0009】
特許文献1には、積層セラミックコンデンサの内部導体形成に用いられる導体ペースト用の金属粉末として、ニッケルと、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステンから選択される何れか1種以上の元素とからなる合金粉末を用いることにより、導体ペーストの焼結開始温度を高くすることができると記載されている。しかしながら、特許文献1で開示されている元素は何れもニッケルよりも卑な金属であり、そのためニッケルが酸化しない条件下で焼成を行っている場合でも、これらの金属が選択的に酸化されてしまうことが多い。その結果、周囲のセラミックスと反応して積層セラミック電子部品の電子特性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0010】
そこで、ニッケルと合金化する最適な金属元素として様々な検討が行われた結果、レニウムが注目されつつある。レニウムは高融点金属の一つであり、積層セラミック電子部品の内部導体形成用途に用いた場合には、高い焼結抑制効果を期待できる。例えば、特許文献2にはニッケルにレニウムを被覆した複合粉末が開示されている。
【0011】
しかしながら、レニウムは、ニッケルに比べれば貴であるが、化学的な反応性は低いとは言えず、特に酸化レニウムは数百℃程度の低温で昇華する。それ故、レニウム粉末やレニウム被覆金属粉末を電子部品の導体形成用途に用いる場合は、その焼成等においてレニウムが酸化しないよう、取り扱いは困難を極める。こうしたレニウムの反応性を抑える為には、ニッケルとレニウムとを合金化することが有利と考えられる。
【0012】
しかしながら、従来知られている合金粉末の製造方法では、均質且つ小粒径の合金粉末を安定的に作ることが困難であり、特にニッケルとレニウムとの合金粉末はその製造が極めて困難であった。
【0013】
例えば、特許文献1においては、合金粉末に含まれる金属元素の塩化物を共に加熱して蒸発させ、これらの蒸気を混合して水素還元することによって合金粉末を製造しているが、このようなCVD法(化学気相析出法)では、一般的に各金属元素の粒子が合金化せず個別に生成されてしまうことが多い。
【0014】
また、CVD法に限らず、PVD法(物理気相析出法)も、合金を構成する金属同士の蒸気圧が近ければ利用できる可能性はあるが、ニッケルとレニウムのように蒸気圧が大きく異なる場合、合金比率の制御が非常に難しく、均質なニッケル−レニウム合金粉末を安定的に得ることは出来ない。そのため、従来の気相法によって得られる粉末は、一般的に各金属元素の粒子が合金化せず個別に生成されることが多く、各金属元素の粒子が混在する混合粉末であるか、仮にうまく合金化した場合でも、その粒形や平均粒径、合金比率等の不均質な、バラツキの大きい粉末であった。このような粉末を用いて積層セラミック電子部品の導体を形成しても、その不均質さのため良好な電子特性を得ることはできない。
【0015】
合金粒子を構成する金属イオンの水溶液を混合した後、これを還元して粉末を析出させる湿式還元法(共沈法)も知られているが、析出する粉末の多くは各金属元素の微小粒子が凝集したものであり、これを合金化するためには更に別途の熱処理を必要とする。この熱処理において更に凝集が進むため、粒度の揃った微細な粉末がますます得にくくなる。更には、加熱時に合金化前の凝集粉末の表面が酸化して酸化レニウムが生成されると、酸化レニウムは比較的低温でも昇華してしまうことから、レニウムを含む合金の製造には向いていない。
【0016】
その他、アトマイズ法や粉砕法といった方法も知られてはいるが、いずれも得られる粉末の大きさに限界があり、昨今、積層セラミック電子部品の内部導体形成用に求められる平均粒径0.05〜1.0μmオーダーの粉末を得ることが極めて困難であった。
【0017】
また、合金粉末の製造方法として噴霧熱分解法が知られている。噴霧熱分解法は、特許文献3や特許文献4、特許文献5等に記載されているように、1種又は2種以上の金属化合物を含む溶液又はこれらを分散させた懸濁液を噴霧して微細な液滴にし、その液滴を該金属化合物の分解温度より高い温度、望ましくは該金属の融点近傍又はそれ以上の高温で加熱し、金属化合物を熱分解することにより金属又は合金の粉末を析出させる方法である。この方法によれば、高結晶性又は単結晶で、高密度、高分散性の真球状金属粉末や合金粉末が得られる。また湿式還元法と異なり固液分離の必要がないので製造が容易であり、また純度に影響を及ぼすような添加剤や溶媒を使用しないので、不純物を含まない高純度の粉末が得られる利点がある。更に粒径のコントロールが容易であり、また生成粒子の組成は基本的に溶液中の出発金属化合物の組成と一致するので、組成の制御が容易であるという利点もある。
【0018】
しかしながら、この製造方法でニッケル−レニウム合金粉末を製造する場合、ニッケルとレニウムを含む溶液を噴霧し、熱分解することになるが、前述したレニウムの特性により、加熱によってレニウム成分だけが気化して分離してしまうため、実際に熱分解によって得られるのは単体のニッケル粉末のみである。そのため、噴霧熱分解のプロセスによってはニッケル−レニウム合金粉末を得ることは出来ない。
【0019】
また、特許文献6や特許文献7に記載されている製造方法が知られている。ここに記載されている方法は、熱分解性の金属化合物粉末の1種又は2種以上を、キャリアガスを用いて反応容器に供給し、該金属化合物粉末を10g/L以下の濃度で気相中に分散させた状態で、その分解温度より高く、かつ該金属の融点をTm℃としたとき(Tm−200)℃以上の温度で加熱することにより金属粉末を生成させるものである。この方法によれば、球状で、結晶性が良く、かつ高分散性の金属粉末が容易に得られる。また原料化合物粉末を金属の融点以上の温度で加熱することにより、単結晶金属粉末を得ることが可能である。純度に影響を及ぼす添加剤や溶媒を使用しないので、不純物を含まない高純度の粉末が得られる。更に、原料粉末の粒度コントロールにより粒径が揃った金属粉末を得ることができ、粒度の調整も容易である。従って分級工程の必要がなく、粒度分布の狭い、極めて微細な、厚膜ペーストに適した粉末を得ることができる。また原料を溶液、懸濁液状としないため、通常の噴霧熱分解法と比べて溶媒の蒸発によるエネルギーロスが少なく、ローコストで簡単に製造できる。しかも液滴の合着の問題がなく、比較的高濃度で気相中に分散させることができるため、効率が高い。
【0020】
しかしながら、この製造方法でニッケル−レニウム合金粉末を製造する場合、原料粉末としてニッケルとレニウムを含む熱分解性の金属化合物粉末を準備しなければならない。熱分解性の原料粉末としては塩化物、硝酸塩、カルボニル等の比較的構造の簡単な化合物等が考えられるが、これらの化合物は熱分解温度が低いために合金化を定量的にコントロールするのが困難である。これを改善するためには蟻酸塩、酢酸塩、蓚酸塩等の比較的分解温度が高い有機酸が適していると思われるが、レニウムに関しては合成が極めて難しく、その製造が困難であった。
【0021】
以上のように、従来知られていた合金粉末の製造方法では、レニウムを含有する合金粉末を製造しようとした場合に、平均粒径が小さく、分散性に優れ、且つ、均質な合金比率の合金粉末を得ることが困難であった。
【特許文献1】特開2002−60877号公報
【特許文献2】特開2004−319435号公報
【特許文献3】特公昭63−31522号公報
【特許文献4】特開平6−172802号公報
【特許文献5】特開平7−216417号公報
【特許文献6】特開2002−20809号公報
【特許文献7】特開2004−99992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、従来の製造技術では困難であったニッケルーレニウム合金粉末、更にはレニウム及びこのレニウムと合金化可能な白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム等の金属を主成分とするレニウム含有合金粉末を、簡単且つ安定的に得ることのできる新規で優れたレニウム含有合金粉末の製造方法を提供することを目的とするものであり、より詳細には、レニウムと、ニッケル等のレニウムと合金化可能な主成分金属と、を含有し、好ましくは平均粒径が0.01〜10μmであり、組成的に均質なレニウム含有合金粉末を、簡単且つ安定的に得ることのできる製造方法を提供することを目的とするものである。更には、該製造方法で得られたレニウム含有合金粉末、並びに該レニウム含有合金粉末を含む導体ペーストを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の課題を解決するために、本発明は以下の構成よりなる。
(1)レニウムと、レニウム以外の主成分金属と、を含むレニウム含有合金粉末の製造方法であって、
気相中に前記主成分金属粒子を分散させ、当該粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気を存在させる工程と、
前記レニウム酸化物を還元する工程と、
前記還元によって前記主成分金属粒子の表面に析出したレニウムを、高温下で当該主成分金属粒子中に拡散させることによりレニウム含有合金粉末を生成する工程と、
を備えることを特徴とする、製造方法。
(2)前記レニウムを主成分金属粒子中に拡散する工程において、当該主成分金属粒子が、少なくとも一部が溶融した粒子であることを特徴とする、前記(1)記載の製造方法。
(3)少なくとも前記レニウム含有合金粉末を生成する工程を、非酸化性雰囲気で行うことを特徴とする、前記(1)又は(2)記載の製造方法。
(4)前記主成分金属粒子を分散させる工程の前に、当該主成分金属粒子を生成する工程を備えることを特徴とする、前記(1)1乃至(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記主成分金属粒子が、物理気相析出法、化学気相析出法、噴霧熱分解法、気相中で熱分解性主成分金属化合物粉末を熱分解する方法から選択される製造方法によって生成されたものであることを特徴とする、前記(4)記載の製造方法。
(6)前記主成分金属及びレニウムを溶解した原料溶液を液滴化し、これを加熱することによって、気相中に当該主成分金属粒子を分散させると共に、当該粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気を存在させることを特徴とする、前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の製造方法。
(7)前記レニウム含有合金粉末の平均粒径が0.01〜10μmであることを特徴とする、前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)前記レニウム含有合金粉末中のレニウム含有量が0.01〜50重量%であることを特徴とする、前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)前記主成分金属が、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム及びロジウムからなる群から選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする、前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)前記主成分金属がニッケルを含むことを特徴とする、前記(9)記載の製造方法。
(11)前記(1)乃至(10)のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする、レニウム含有合金粉末。
(12)前記(11)記載のレニウム含有合金粉末を含むことを特徴とする、導体ペースト。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造方法によれば、得られるレニウム含有合金粉末の平均粒径や分散性は、原料となるニッケル等の主成分金属粒子の平均粒径、分散性に依存する。それ故、主成分金属粒子として適宜なものを用いれば、小粒径且つ粒径の揃った分散性の良いレニウム含有合金粉末を得ることができる。
【0025】
また、本発明の製造方法によれば、主成分金属粒子の表面に析出したレニウムは、再び酸化される前に主成分金属粒子と完全に合金化されるため、安定的に合金比率等の均質なレニウム含有合金粉末を得ることができる。
【0026】
また、本発明の製造方法は、金属ニッケル粒子等の主成分の金属粒子と気相のレニウム酸化物を使用するため、レニウム粉末が単独で析出しない。それ故、合金比率の制御が容易であり、且つ、組成的にも均質なニッケル−レニウム合金粉末等のレニウム含有合金粉末を得ることができる。
【0027】
また、レニウム含有合金粉末の製造に用いる主成分金属粒子を、CVD法やPVD法といった気相法や、特許文献3等に記載されている噴霧熱分解法や、特許文献6等に記載されている気相中で熱分解性の主成分金属化合物粉末を熱分解する方法で生成するようにした場合には、主成分金属粒子を生成後、そのままレニウム酸化物蒸気の供給される反応容器に導入することにより連続してレニウム含有合金粉末を製造することもできるため生産効率が向上する。
【0028】
上記のレニウム含有合金粉末は、組成的に均質且つ粒径の揃った微細粒子で得られることから、積層セラミック電子部品の内部導体形成用の導体ペーストを始め、各種の用途の導体ペーストとして好適に用いることができる。特にニッケル−レニウム合金粉末は、それを積層セラミック電子部品の内部導体形成用の導体ペーストとして用いた場合には、レニウムとの合金化によりニッケル粒子の焼結が効果的に抑制され、その焼結収縮挙動を誘電体層とできる限り近似させることができるため、導体層とセラミック層の焼結収縮挙動の不一致による構造欠陥や電極の不連続化を生ずることなく、極めて薄い膜厚の内部電極を形成することが可能な導体ペーストを得ることができる。本発明において、ニッケルーレニウム合金粉末を製造する場合、セラミック積層電子部品等への適用という観点で特に優れた効果を有するニッケルーレニウム合金粉末が得られるが、本発明はこれに限定されるものではなく、主成分金属として、ニッケル以外の金属をレニウムと組合せた合金粉末を製造する場合にも、従来知られていた先行技術では得られなかった優れた作用効果を有するレニウム含有合金粉末を得ることができる。
【0029】
また、本発明の製造方法で得たレニウム含有合金粉末は耐酸化性にも優れていることから、上記導体ペーストは、焼成中に酸化して、導電性等の特性劣化を来すことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明において、レニウム含有合金粉末とは、主成分金属と金属レニウムとの合金粉末を言い、前記主成分金属には、少なくとも、金属ニッケルや白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム等といった、レニウムと合金化可能な金属の1種又は2種以上が含まれる。特に本発明のレニウム合金粉末を積層セラミック電子部品の内部導体形成に用いる場合には、前記主成分金属は金属ニッケルであることが好ましい。また後述するように、前記主成分には第3の成分が含まれていても良い。
【0031】
レニウムの含有量は、合金粉末全量に対して0.01〜50wt%の範囲で含まれていることが好ましく、更に好ましくは1.0〜10wt%である。含有量が0.01wt%を下回ると、例えば積層セラミック電子部品の内部導体用として使用した場合に焼結抑制効果が小さくなるなど、合金化することにより得られる効果が小さくなる。また、含有量が50wt%を超えるとレニウム相が析出しやすくなり、均質な合金粉末が得られにくい。
【0032】
本発明においてレニウム含有合金粉末は、前記合金化可能な金属と、金属レニウム以外の第3の成分が含まれることを除外するものではなく、必要に応じて例えばAu、Ag、Cu、W、Nb、Mo、V、Cr、Zr、Ta等の金属元素が含まれていても良い。さらには、前記主成分金属が、ニッケルや白金等のように触媒能の高い金属を含む場合には、第3の成分として、S、O、P、Si等のニッケルの触媒能を低下させる軽元素を適切な範囲で含有しても良い。これらの第3の成分は、レニウムと合金化する前の原料として主成分金属粒子に含まれていても良い。以下においては、主成分の金属粒子中に前記第3の成分を予め含有させた粒子も主成分金属粒子と称する。例えば、金属ニッケル粒子中に前記第3の成分を予め含有させた粒子も、金属ニッケル粒子と称する。また、第3の成分は、レニウム酸化物蒸気中に第3の成分の蒸気を混在させる等適宜な方法によりニッケル−レニウム合金粉末の製造工程中で、レニウム含有合金粉末に含有させることができる。前記第3の成分は1種又は2種以上であっても良い。
【0033】
本発明のレニウム含有合金粉末の平均粒径は、その用途によって適宜のものとすることができるが、好ましくは、平均粒径は0.01〜10μmの範囲内にある。特に、高積層セラミック電子部品の内部導体形成用として好適なニッケルーレニウム合金粉末については、その平均粒径が0.05〜1.0μmの範囲内にあることが好ましく、これを下回ると粉末が凝集しやすくなったり、活性が高くなり過ぎて焼結が早くなったりするといった問題が生じやすくなる。また、これを上回ると高積層セラミック電子部品の内部導体形成用途としての使用が困難になる。
【0034】
本発明のレニウム含有合金におけるニッケル等の主成分金属の含有量は、合金粉末全量に対して50〜99.99wt%、好ましくは90〜99.0wt%の範囲であり、主成分金属はそれぞれを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。主成分金属として2種以上の金属を組合せ使用する場合はそれらの合計含有量を前記の含有量範囲とし、この範囲内において、各金属が合金粉末全量に対して wt%以上となるようにする。
【0035】
本発明の製造方法により製造されたレニウム含有合金粉末は、高積層セラミック電子部品の内部導体形成用の導体ペーストやヴィアホール用導体ペースト等のセラミック層と同時焼成される導体ペーストをはじめ、各種電極形成用、回路導体形成用、接続用導体形成用といった導体ペーストの他、抵抗ペースト等の用途に応じて適宜に用いることができる。
【0036】
<製造方法>
(1)ニッケル−レニウム合金粉末
以下、ニッケル原料として固相の金属ニッケル粒子を用いた場合について説明する。
【0037】
この例においては、金属ニッケル粒子は固相のまま気相中に分散される。
ここで金属ニッケル粒子は事前に、予め製造されたものを準備して用いても良いし、また、上記分散に先立って金属ニッケル粒子を生成し、連続して合金化するように構成しても良い。
【0038】
金属ニッケル粒子を予め準備する場合、その製造方法は特に限定ないが、例えば、従来知られているアトマイズ法、湿式還元法、PVD法、CVD法、噴霧熱分解法や、特許文献6等に記載されている気相中で熱分解性ニッケル化合物を熱分解する方法によって製造することができる。
【0039】
また、金属ニッケル粒子の生成から連続して合金粉末を製造する場合には、金属ニッケル粒子は、PVD法、CVD法、特許文献3等に記載されている噴霧熱分解法や、特許文献6等に記載されている方法によって生成することが好ましい。これらの製造方法においては、いずれも気相中で金属ニッケル粒子を生成するため、生成した金属ニッケル粒子を、キャリアガスと共に以下に説明する工程にそのまま連続して移行することができ、生産効率が向上する。特に、特許文献3等に記載されている噴霧熱分解法や、特許文献6等に記載されている方法によって製造された金属ニッケル粒子は、粒径の小さい球状で、結晶性が良く、かつ分散性が良く、積層セラミック電子部品の導体形成に好ましく用いることができる。
【0040】
一方、本発明においてレニウム原料としては好ましくはレニウム酸化物の蒸気が使用される。特に、7価の酸化レニウム(Re)は比較的低温で昇華し蒸気となりやすくかつ有害な物質を含まないため、本発明の製造方法には好適に用いることができる。
【0041】
レニウム酸化物としては、その前駆体を使用しても良い。例えば、金属レニウムを硝酸水溶液に溶解した水溶液(以下単に「レニウム硝酸溶液」と称する)を用いる場合、超音波式や二流体ノズル式等の噴霧器により微細な液滴を発生させ、これを後述する反応容器内で加熱することによってレニウム酸化物を生成するようにしても良い。また、溶液を定量ポンプで系内に送り込むようにすると、定量性に優れ、合金化率が安定する。
【0042】
また、金属ニッケル粒子を製造する原料として塩化ニッケルを用いるCVD法等では、前駆体として塩化レニウム等も用いることができる。
【0043】
レニウム酸化物の蒸気は、前述の金属ニッケル粒子の気相中への分散と同時、或いは、それと前後して当該気相中に供給される。ここで、レニウム酸化物蒸気の供給量は、所望の合金比率に基づいて適宜制御を行う。
【0044】
本発明においては、後述するレニウム酸化物を還元する時点で金属ニッケル粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気が均一に存在するようになっていれば良く、金属ニッケル粒子とレニウム酸化物蒸気を気相中に分散/供給する時間的な前後関係は問わない。すなわち、以下においては金属ニッケル粒子を分散させた気相中にレニウム酸化物蒸気を供給する例で説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、レニウム酸化物蒸気を含む気相中に金属ニッケル粒子を分散させるようにしても良く、また金属ニッケル粒子とレニウム酸化物蒸気を同時に気相中に分散/供給するようにしても良い。
【0045】
次に、気相中に分散された金属ニッケル粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気が均一に存在している状態で、当該レニウム酸化物蒸気の還元反応が行われる。このため、この還元反応が行われる際には、気相中には還元剤が存在していることが望ましい。還元剤としては水素ガスや一酸化炭素等の還元ガス、カーボン、炭化水素、アルコール等を好適に用いることができる。この還元反応により、当該気相中に分散された金属ニッケル粒子の表面には、レニウム酸化物蒸気が還元されて金属レニウムが析出する。
【0046】
そして更に、前述の還元工程で表面に金属レニウムが析出した金属ニッケル粒子は、気相中に分散されたままの状態で加熱されて、レニウムが金属ニッケル粒子中に拡散し、ニッケルとレニウムとが完全に合金化する。完全に合金化された後は、金属レニウムが単独で酸化されることはないため、化学的にも安定な合金粉末が得られる。なお、前記還元工程から前記合金化工程までは、析出したレニウムが合金化される前に酸化されて昇華しないよう、非酸化性雰囲気で行われることが好ましい。また、合金化工程に至るまでに金属ニッケル粒子が十分加熱され、析出したレニウムが金属ニッケル粒子中に完全に拡散し得る程度の高温状態になっている場合には、合金化させるための積極的な加熱は必ずしも必要ない。
【0047】
また、前記還元工程及び前記合金化工程は、時間的に独立している必要はない。例えば、前記還元工程及び前記合金化工程において、予め準備されたレニウム全量が金属ニッケル粒子の表面に析出した後、加熱してニッケルとレニウムとを合金化するようにしても良いが、より好ましくは、還元工程において金属ニッケル粒子の少なくとも一部が溶融した状態になっており、レニウムの析出と同時に、析出した分量のレニウムから順次、金属ニッケル粒子内に拡散して合金化されるようにすれば、レニウムの酸化並びに昇華を更に抑えることができる。この場合、上述還元工程と合金化工程は同時、或いは、繰り返し行われることになる。
【0048】
上記の説明では、ニッケル原料として固相の金属ニッケル粒子を用いた例で説明したが、本発明はこれに限定されず、少なくとも一部が溶融した金属ニッケル粒子を用いても良い。例えば、固相の金属ニッケル粒子を予め加熱して、粒子としての分散状態を保ったまま、一部又は全体が溶融した状態にして、酸化レニウムを同様に導入しても良い。このように、金属ニッケル粒子がその融点以上の温度に加熱され、溶融した状態でレニウムを拡散させるようにすると、当該粒子中へのレニウムの拡散が速やかで生産効率が向上する他、レニウムが当該粒子内部まで十分に拡散した均質な合金粉末を得ることができるため好ましい。本発明において金属ニッケル粒子とは、このような溶融状態にある粒子も含む。
【0049】
また、ニッケル原料として加熱により熱分解するニッケル化合物粉末を用い、金属ニッケル粒子の析出と合金化とを、ほぼ同時に行うようにしても良い。熱分解性のニッケル化合物粉末としては、ニッケルの水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、オキシ硝酸塩、オキシ硫酸塩、ハロゲン化物、酸化物、アンモニウム錯体等の無機化合物や、カルボン酸塩、樹脂酸塩、スルホン酸塩、アセチルアセトナート、金属の1価又は多価アルコラート、アミド化合物、イミド化合物、尿素化合物等の有機化合物の1種又は2種以上が使用される。ことに水酸化物、炭酸塩、酸化物、カルボン酸塩、樹脂酸塩、アセチルアセトナート、アルコラート等は、熱分解後有害な副生成物を生成しないので好ましい。
【0050】
なお、ニッケル化合物粉末として、熱分解によって還元雰囲気を作る材料を用いた場合には、気相中に分散させる還元剤を不要、或いはその量を低減することも可能である。例えば、ニッケル化合物粉末として酢酸ニッケル等のカルボン酸塩粉末を用い、これを窒素雰囲気中で熱分解すると、カルボン酸根の分解により一酸化炭素と水素を発生するため、還元性雰囲気が得られる。
【0051】
熱分解性のニッケル化合物粉末を用いる場合も、金属ニッケル粒子を用いる場合と同様に、気相中に分散され、当該ニッケル化合物粉末の分散と同時、又はそれに前後してレニウム酸化物蒸気が気相中に供給される。そして、ニッケル化合物粉末とレニウム酸化物蒸気が均一になっている状態で加熱すると、ニッケル化合物粉末は分散状態を保ったまま熱分解され、固相の金属ニッケル粒子、または、少なくとも一部が溶融した金属ニッケル粒子が析出する。その後、レニウム酸化物蒸気が還元され、当該気相中の金属ニッケル粒子の表面に金属レニウムが析出し、更なる加熱により合金化される。
【0052】
以上に説明したように、本発明は、固相または少なくとも一部が融解した状態の金属ニッケル粒子と、レニウム酸化物蒸気とを含む気相中において、当該レニウム酸化物蒸気が還元され、析出したレニウムがニッケル粒子中に拡散することによってニッケル−レニウム合金粉末を製造するものであるが、上述した以外にも、多様な態様が考えられる。一例としては、気相中に硝酸ニッケル溶液及びレニウム硝酸溶液を含む液滴を生成し、これを加熱することによっても、レニウム酸化物蒸気を含む気相中に金属ニッケル粒子が分散した雰囲気を得ることができ、その後、上述した還元工程、合金化工程を経るプロセスによってニッケル−レニウム合金粉末を生成することもできる。
【0053】
なお、当該プロセスにおいては、合金粉末は、合金原料を含む液滴が直接熱分解されることによって生成しているのではなく、合金材料を含む液滴からは、一旦、金属ニッケル粒子とレニウム酸化物蒸気が別個に生成し、その後、レニウム酸化物が還元され、析出し合金化する、というプロセスを経ていることから、従来知られている噴霧熱分解法とは明確に区別される。但し、その製造装置に関しては従来の噴霧熱分解法の製造装置を利用することが可能である。
【0054】
上記の製造方法において、例えば、金属ニッケル粒子を上記の第3の成分を含有する粒子とする、或いはレニウム酸化物蒸気を第3の成分との混合蒸気とすることにより、前記第3の成分を含有するニッケル−レニウム合金粉末を得ることもできる。
【0055】
(2)ニッケル以外の主成分金属とレニウムとを含むレニウム含有合金粉末
レニウムと合金化する金属として、ニッケル以外の金属を用いる場合も、上述したニッケル−レニウム合金粉末と同様にして製造することができる。
【0056】
すなわち、レニウムと合金化する主成分金属粒子は気相中に分散され、それと同時または前後して、レニウム酸化物の蒸気が当該気相中に供給される。主成分金属粒子は、予め製造されたものでも良く、該分散に先立って生成されるものでも良い。主成分金属粒子は固相のものでも良いが、レニウムが当該主成分金属粒子中に拡散するまでには、少なくとも一部が溶融した状態となっていることが好ましい。
【0057】
主成分金属粒子の製造方法は特に限定されないが、PVD法、CVD法、特許文献3等に記載されている噴霧熱分解法や、特許文献6等に記載されている方法によって生成することが好ましく、生成した主成分金属粒子をキャリアガスと共に以下に説明する工程にそのまま連続して移行することが望ましい。
【0058】
またレニウム酸化物は7価の酸化レニウム(Re)が好ましく、レニウム硝酸溶液や塩化レニウム等の前駆体を使用しても良い。
【0059】
気相中に分散された主成分金属粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気が均一に存在している状態で、当該レニウム酸化物蒸気の還元反応が行われ、主成分金属粒子表面にレニウムが析出し、これが当該粒子中に拡散することで、主成分金属とレニウムとが完全に合金化する。主成分金属粒子中へのレニウムの拡散は、レニウムが当該粒子の表面に析出した後の加熱によるものでも良いし、それまでの主成分金属粒子に対する十分な加熱によるものでも良い。また、レニウムの還元工程と主成分金属とレニウムとの合金化工程は、時間的に独立している必要はなく、レニウムの析出と同時に、析出した分量のレニウムから順次、主成分金属粒子内に拡散して合金化されることが好ましい。
【0060】
また、熱分解性の主成分金属化合物粉末を用いて、主成分金属粒子の析出と合金化とを、ほぼ同時に行うようにしても良く、この時、熱分解により還元雰囲気を作る主成分金属化合物粉末材料を用いても良い。
【0061】
更に、主成分金属粒子として前記第3の成分を含有する粒子を使用したり、レニウム酸化物蒸気を第3の成分との混合蒸気とすることにより、前記第3の成分を含有する合金粉末を得ることもできる。
【0062】
以上のように、固相または少なくとも一部が融解した状態の主成分金属粒子と、レニウム酸化物蒸気とを含む気相中において、当該レニウム酸化物蒸気が還元され、析出したレニウムが主成分金属粒子中に拡散することによって主成分金属−レニウム合金粉末が製造される。
【0063】
<本発明の好ましい態様>
本発明の好ましい態様として、ニッケル−レニウム合金粉末について以下説明を行う。
本製造方法においては、気相中に金属ニッケル粒子或いはその前駆体としての熱分解性ニッケル化合物粉末(以下、「ニッケル原料粒子」と総称する)を分散させるために、窒素、アルゴン等の不活性ガス、或いは、これらの混合ガス等をキャリアガスとして用いることが好ましい。また、キャリアガス中には必要に応じて還元工程で使用される水素ガス等の還元剤が含まれていることが好ましい。
【0064】
このキャリアガス中に、分散機を用いてニッケル原料粒子を分散する。分散機としては特別なものは必要なく、エジェクタ型、ベンチュリ型、オリフィス型等、公知の気流式分散機や、公知の気流式粉砕機を使用することができる。この場合、キャリアガス中においてニッケル原料粒子は、互いに衝突を起こさないような低い濃度で分散されていることが望ましい。そのためには、例えばキャリアガス中での濃度が10g/L以下であると良い。また、予め製造されたニッケル原料粒子を準備して用いる場合には、ニッケル原料粒子自体に凝集が生じていることがあるため、キャリアガス中に分散する前に、予め十分な粉砕、解砕、分級等を行っておくことが望ましい。
【0065】
なお、噴霧熱分解法やPVD法等の気相法で生成したニッケル原料粒子を、そのまま連続して合金粉末にする場合には、気相中に生成されたニッケル原料粒子が充分分散しているならば、そのままキャリアガスと共に反応容器内に送っても良い。この場合は、分散機を不要とすることもできるが、気流式粉砕機等を用いてキャリアガス中で粒度調整を行うようにしても良い。
【0066】
一方、キャリアガスにはレニウム酸化物蒸気が適宜のタイミングで供給される。キャリアガス中に分散/供給されたニッケル原料粒子とレニウム酸化物蒸気は、分散状態を保ったまま、キャリアガスと共に反応容器内に送られる。低濃度の分散状態を保ったまま合金化するためには、例えば外側から加熱された管状の反応容器を用い、反応容器の原料導入側の開口部からニッケル原料粒子及びレニウム酸化物蒸気をキャリアガスと共に一定の流速で供給して反応容器内を通過させるようにすることが望ましい。
【0067】
ニッケル原料として金属ニッケル粒子を使用した場合は、反応容器内では、金属ニッケル粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気が均一に存在する状態となっている。また、ニッケル原料として、熱分解性ニッケル化合物粉末を使用する場合は、加熱された反応容器内で熱分解され、金属ニッケル粒子が析出し、金属ニッケル粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気が均一に存在する状態となる。
【0068】
そして反応容器内では、加熱下でレニウム酸化物の蒸気が還元されて金属レニウムが析出し、ニッケル粒子の表面に被着する。反応容器内での温度制御によって合金化プロセスは異なるが、この時点で金属ニッケル粒子の温度が低い場合は、ニッケル粒子の表面の少なくとも一部は金属レニウムで被覆され、その後、このレニウム被覆ニッケル粒子は更なる加熱によって溶融し、合金化するプロセスを経ていると考えられる。一方、この時点で既にニッケル粒子が融点近い温度にまで加熱されている場合、或いは融点以上に加熱されて金属ニッケル粒子の少なくとも一部が溶融している場合には、還元により析出した金属レニウムは金属ニッケル粒子の表面への被着と同時に金属ニッケル粒子内に拡散して合金化するプロセスを経ていると考えられる。そして、生成した合金粉末は冷却され、最終的にバグフィルター等によって回収される。
【0069】
ニッケル原料粒子、酸化レニウム蒸気及びキャリアガスの混合物の流速及び通過時間は、粒子が所定の温度、好ましくは800℃以上、更に好ましくは金属ニッケル粒子の融点以上で十分に加熱されるように、用いる装置に応じて設定される。加熱温度の上限は、ニッケルが気化しないような温度であれば限定はされないが、温度が高くなると製造コストが高くなる。加熱は電気炉やガス炉等で反応容器の外側から行う他、燃料ガスを反応容器に供給しその燃焼炎を用いてもよい。
【0070】
なお、ニッケル粒子に対する加熱温度が十分に高くない場合には、ニッケル粒子中への金属レニウムの拡散が均質に行われず、例えば、粒子の表面から中心部に向かってレニウム濃度の勾配が生じることがある。本発明の製造方法によって製造される合金粉末としては、このような濃度勾配を持った粉末粒子を除外するものではないが、濃度勾配のない均質な合金粉末が望まれる場合には、ニッケル粒子に対して十分高い温度(例えば融点以上)で加熱を行うか、或いは、加熱時間をコントロールすることが望ましい。
【0071】
上述のように製造した場合、気相中にニッケル原料粒子を高度に分散させた状態で加熱するため、ニッケル原料の1粒子あたり、ほぼ1粒子の合金粒子が生成すると考えられる。このため生成する合金粉末の粒度は、ニッケル原料粒子の粒度にほぼ比例する。従って、積層セラミック電子部品の内部導体形成用途として好ましい平均粒径0.05〜1.0μmの合金粉末を得るためには、気相中に分散した状態でほぼ同程度の粒度のニッケル原料粒子を用いることが望ましい。また、より均一な粒径の合金粉末を得るためには、粒度の揃ったニッケル原料粒子を用いることが望ましい。ニッケル原料粒子の粒度分布が広い場合は、粉砕機や分級機で粉砕、解砕又は分級を行うことにより、予め粒度調整をしておくことが望ましい。
【0072】
本発明のニッケル−レニウム合金粉末を含む導体ペーストは、常法に従って、樹脂バインダおよび溶剤を含むビヒクル成分と均一に混合分散させることにより、製造される。
【0073】
樹脂バインダとしては特に制限はなく、導体ペーストに通常使用されているもの、例えばエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ロジンなどが使用される。樹脂バインダの配合量は、特に限定されないが、通常導電性粉末100重量部に対して1〜15重量部程度である。
【0074】
溶剤としては、前記バインダ樹脂を溶解するものであれば特に限定はなく、通常内部電極用ペーストに使用されているものを適宜選択して配合する。例えばアルコール系、エーテル系、エステル系、炭化水素系等の有機溶剤や水、またはこれらの混合溶剤が挙げられる。溶剤の量は、通常使用される量であれば制限はなく、導電性粉末の性状や樹脂の種類、塗布法等に応じて適宜配合される。通常は導電性粉末100重量部に対して40〜150重量部程度である。
【0075】
前記成分の他に、導体ペーストには、通常配合されることのある成分、即ち、セラミックグリーンシートに含有されるセラミックと同一または組成が近似した成分を含むセラミックや、ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化銅、酸化マンガン、酸化チタン等の金属酸化物、モンモリロナイトなどの無機粉末や、金属有機化合物、可塑剤、分散剤、界面活性剤等を、目的に応じて適宜配合することができる。
【0076】
導体ペーストは、常法に従って、導電性粉末を、他の添加成分と共に、バインダ樹脂および溶剤を含むビヒクル中に均一に分散させることにより製造される。本発明の導体ペーストは、特に積層コンデンサや積層PTC素子等のセラミック積層電子部品、これらを組込んだ複合部品、複合基板等の内部導体ペーストとして有用であるが、その他の通常の厚膜導体ペーストとしても用いることもできる。
【0077】
以上、本発明を代表してニッケル−レニウム合金粉末の製造する場合を説明したが、主成分金属をニッケル以外としたレニウム含有合金粉末を製造する場合も同様である。但し、使用原料等の違いに基づく加熱温度等諸条件の変更が適宜行われるべきであることは勿論である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0079】
〔実施例1〕
PVD法で製造された平均粒径0.2μmの固相の金属ニッケル粒子(ニッケル粉末)を、500g/hrの供給速度で気流式粉砕機に供給し、200L/minの流速の窒素ガスで分散させた。
【0080】
これとは別に、レニウム酸化物(Re)を300℃に加熱してレニウム酸化物蒸気を発生させ、10L/minの窒素ガスをキャリアとして、レニウム金属換算で約30g/hrの速度で、前記ニッケル粉末を分散させた気流中に供給した。さらに、この分散気流中に10L/minの水素ガスを供給して還元雰囲気とし、1200℃に加熱した電気炉内の反応管に導入した。電気炉内を通過した気流を100℃程度まで冷却した後に、バグフィルターで生成粉末を回収した。
【0081】
生成した粉末の組成をICP(誘導結合高周波プラズマ分光分析)で測定したところ、レニウムを6wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、ニッケルの回折線がわずかに低角側にシフトしていることが確認され、ニッケル以外の回折線は確認されなかった。
以上の結果から、生成した粒子はニッケルにレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0082】
また、走査型電子顕微鏡による観察により、原料ニッケル粒子と生成粒子の粒径、形状にほとんど変化がなく、粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。
【0083】
生成した合金粉末の焼結挙動を、TMA(熱機械分析)により調査した。粉末を直径5mm、高さ約2mmの円柱状試料に成型し、4%の水素を含む窒素ガス中、5℃/minの昇温速度で加熱しながら、試料の高さ方向の収縮率を測定した。得られたTMAチャートから、収縮開始温度と収縮終了温度を外挿法で求めた。その結果、収縮開始温度は530℃、収縮終了温度は730℃であった。
【0084】
また、粉末の空気中での酸化挙動をTG(熱重量分析)で調べた。測定条件は、昇温速度5℃/minで300℃まで加熱し、300℃で2時間保持した。得られたTGチャートから、酸化開始温度と300℃で2時間保持後の重量増加率を測定した。その結果、酸化開始温度は290℃、重量増加率は0.8%であった。
【0085】
〔比較例1〕
実施例1でニッケル原料として用いた純ニッケル粉末について、焼結挙動と酸化挙動について同様の測定を行った結果、収縮開始温度は320℃、収縮終了温度は580℃、酸化開始温度は250℃、重量増加率は1.5%となった。
【0086】
実施例1と比較例1の測定結果の比較から、実施例1の本発明合金粉末は、ニッケルとレニウムとの合金化により粉末の焼結収縮開始が効果的に高温側にシフトしていると共に、耐酸化性も向上していることが確認された。
【0087】
〔実施例2〕
実施例1において、レニウム酸化物(Re)の蒸気を供給する代わりに、レニウム硝酸溶液を、二流体ノズルを用いて10L/minの窒素ガスで噴霧し、発生した微少液滴を、レニウム金属換算で約30g/hrの速度で、ニッケル粉末を分散させた気流中に供給した。他の条件は実施例1と同等とした。
【0088】
走査電子顕微鏡での観察により、生成した粉末は平均粒径0.2μmの粒子からなる粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを6wt%含有していることが確認された。粉末のX線回折計による分析では、ニッケルの回折線がわずかに低角側にシフトしていることが確認され、ニッケル以外の回折線は確認されなかった。以上の結果から、生成した粒子はニッケルにレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0089】
〔実施例3〕
酢酸ニッケル四水和物の粉末を2000g/hrの供給速度で気流式粉砕機に供給し、200L/minの流速の窒素ガスで粉砕、分散させた。
【0090】
これとは別に、レニウム酸化物(Re)を300℃に加熱してレニウム酸化物蒸気を発生させ、10L/minの窒素ガスをキャリアとして、レニウム金属換算で約50g/hrの速度で、酢酸ニッケル粉末を分散させた気流中に供給した。この分散気流を、1550℃に加熱した電気炉内の反応管に導入した。電気炉内を通過した気流を100℃程度まで冷却した後に、バグフィルターで生成粉末を回収した。
【0091】
走査電子顕微鏡での観察により、生成した粉末は平均粒径0.3μmの球形粒子からなる粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。
生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを10wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、ニッケルの回折線がわずかに低角側にシフトしていることが確認され、ニッケル以外の回折線は確認されなかった。
以上の結果から、生成した粒子はニッケルにレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0092】
〔実施例4〕
実施例3において、レニウム酸化物(Re)の供給速度を、レニウム金属換算で約5g/hrとする以外は同様にして粉末を製造した。
【0093】
走査電子顕微鏡での観察により、生成した粉末は平均粒径0.3μmの球形粒子からなる粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。
生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを1wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、ニッケルの回折線がわずかに低角側にシフトしていることが確認され、ニッケル以外の回折線は確認されなかった。
以上の結果から、生成した粒子はニッケルにレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0094】
〔実施例5〕
金属ニッケルを約10000℃のプラズマ状態にある高温ガスにより加熱、蒸発させ、発生した蒸気を100L/minの4%水素−窒素混合ガスをキャリアとして管状の冷却器の中に送り込んで金属ニッケル粒子を生成した。
【0095】
これとは別に、レニウム酸化物(Re)を300℃に加熱してレニウム酸化物蒸気を発生させ、5L/minの窒素ガスをキャリアとして、冷却器に送り込んだ。レニウム酸化物蒸気を送り込んだ部分の冷却器内の温度は1700℃であった。その後100℃程度まで冷却して粉末をバグフィルターで回収した。
【0096】
走査電子顕微鏡での観察により、生成した粉末は平均粒径0.08μmの球形粒子からなる粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。
生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを5wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、ニッケルの回折線がわずかに低角側にシフトしていることが確認され、ニッケル以外の回折線は確認されなかった。
以上の結果から、生成した粒子はニッケルにレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0097】
〔実施例6〕
3台の電気炉を直列に配置して反応管を加熱できるようにした反応装置を用い、反応管の一端から10L/minの速度で窒素ガスを流し、温度を600℃に設定した最も上流側の電気炉部分に、磁性ルツボに入れた無水塩化ニッケルを設置して塩化ニッケル蒸気を発生させて、窒素ガスとともに、下流側の二段目の電気炉で1100℃に加熱された部分に送り込んだ。二段目の電気炉の入口に、5L/minの速度で水素ガスを供給し、塩化ニッケル蒸気を含む窒素ガスと混合して塩化ニッケルを還元して金属ニッケル粒子を生成させた。
【0098】
これとは別に、レニウム酸化物(Re)を300℃に加熱してレニウム酸化物蒸気を発生させ、1L/minの窒素ガスをキャリアとして、二段目の電気炉の出口部分に送り込んで、生成したニッケル粒子とともに、1000℃に加熱した三段目の電気炉に送り込んだ。レニウム酸化物蒸気は、塩化ニッケル蒸気の還元のために供給した水素の余剰分により還元され、ニッケル粒子表面に金属レニウムが析出して合金化される。加熱部から出てきた粒子は、100℃程度まで冷却された後に捕集用のフィルターで回収した。
【0099】
走査電子顕微鏡での観察により、生成した粉末は平均粒径0.2μmの球形粒子からなる粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。
生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを7wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、ニッケルの回折線がわずかに低角側にシフトしていることが確認され、ニッケル以外の回折線は確認されなかった。以上の結果から、生成した粒子はニッケルにレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0100】
〔実施例7〕
硝酸ニッケル六水和物を水に溶解し、さらにレニウム硝酸溶液を加えて、ニッケル濃度45g/L、レニウム濃度5g/Lの水溶液を調製した。さらに、この水溶液に、還元剤として1Lあたり100mLのエチレングリコールを加えて原料溶液とした。この原料溶液を、超音波噴霧器を用いて霧状にし、10L/minの窒素ガスをキャリアとして、1550℃に電気炉で加熱したセラミックス反応管に送り込んだ。加熱により、水の蒸発と原料化合物の熱分解が起こって酸化物が生成し、酸化レニウム成分は揮発して蒸気となる。次に、エチレングリコールの分解によって発生した還元性ガスによって、酸化ニッケル粒子は金属ニッケル粒子となり、酸化レニウム蒸気は金属レニウムとして金属ニッケル粒子表面に析出する。析出したレニウムはニッケル粒子中に拡散して合金化し、さらに合金化した粒子は融点以上に加熱されて球形の粒子が生成する。生成した粒子は、100℃程度まで冷却された後に捕集用フィルターで回収した。
【0101】
走査電子顕微鏡での観察により、生成した粉末は平均粒径0.5μmの球形粒子からなる粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。
生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを10wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、ニッケルの回折線がわずかに低角側にシフトしていることが確認され、ニッケル以外の回折線は確認されなかった。以上の結果から、生成した粒子はニッケルにレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0102】
〔実施例8〕
ジニトロジアンミン白金錯体の硝酸水溶液にレニウム硝酸溶液を加え、白金濃度27g/L、レニウム濃度3g/Lの水溶液を調製した。さらに、この水溶液に、還元剤として1Lあたり100mLのエチングリコールを加えて原料溶液とした。この原料溶液を、超音波噴霧器を用いて霧状にし、10L/minの窒素ガスをキャリアとして、カーボンヒーターを用いた電気炉で1900℃に加熱したカーボン製反応管に送り込んだ。加熱により、水の蒸発と原料化合物の熱分解が起こって酸化レニウムが生成し、揮発して蒸気となる。一方、原料化合物の熱分解によって生成する金属白金粒子は、融点以上に加熱されることにより、少なくともその一部が溶融し、その表面に酸化レニウム蒸気が金属レニウムとして析出する。析出したレニウムは白金粒子中に拡散して合金化し、球形の粒子が生成する。カーボン製反応炉の加熱部分を通過後、反応管内で粒子温度が300〜400℃まで冷却したところで1000L/min程度の流速の空気流と混合し、急速に100℃以下にまで冷却してから捕集用フィルターで回収した。
【0103】
走査電子顕微鏡での観察により、生成した粉末は平均粒径0.4μmの球形粒子からなる粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。
生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを10wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、白金に相当する回折線のみが観察されたことから、生成した粒子は白金にレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0104】
〔実施例9〕
硝酸パラジウム水溶液にレニウム硝酸溶液を加えて希釈して、パラジウム濃度95g/L、レニウム濃度5g/Lの水溶液を調製した。さらに、この水溶液に、還元剤として1Lあたり100mLのエチレングリコールを加えて原料溶液とした。この原料溶液を、超音波噴霧器を用いて霧状にし、10L/minの窒素ガスをキャリアとして、電気炉で1600℃に加熱したセラミック製反応管に送り込んだ。加熱により、水の蒸発と原料化合物の熱分解が起こって酸化レニウムが生成し、揮発して蒸気となる。一方、原料化合物の熱分解によって生成する金属パラジウム粒子は、融点以上に加熱されることにより、少なくともその一部が溶融し、その表面に酸化レニウム蒸気が金属レニウムとして析出する。析出したレニウムはパラジウムと合金化し、球形の粒子が生成する。電気炉の加熱部分を通過後、反応管内で粒子温度が300〜400℃まで冷却したところで1000L/min程度の空気と混合し、急速に100℃以下にまで冷却してから捕集用フィルターで回収した。
【0105】
走査電子顕微鏡での観察により、生成した粉末は平均粒径0.6μmの球形粒子からなる粒径の揃った分散性の良い粉末であることを確認した。
生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを5wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、パラジウムに相当する回折線のみが観察されたことから、生成した粒子はパラジウムにレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。
【0106】
〔実施例10〕
カーボニル法で製造された平均粒径3.5μmの球形の金属鉄粉末を、100g/hrの供給速度で気流式粉砕機に供給し、200L/minの流速の窒素ガスで分散させた。
【0107】
これとは別に、レニウム酸化物(Re)を300℃に加熱してレニウム酸化物蒸気を発生させ、10L/minの窒素ガスをキャリアとして、レニウム金属換算で約5g/hrの速度で、前記鉄粉末を分散させた気流中に供給した。さらに、この分散気流中に10L/minの水素ガスを供給して還元雰囲気とし、1600℃に加熱した電気炉内の反応管に導入した。電気炉内を通過した気流を100℃程度まで冷却した後に、バグフィルターで生成粉末を回収した。
【0108】
生成した粉末の組成をICPで測定したところ、レニウムを5wt%含有していることが確認された。
粉末のX線回折計による分析では、鉄に相当する回折線のみが観察されたことから、生成した粒子は鉄にレニウムが固溶した合金粉末であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レニウムと、レニウム以外の主成分金属と、を含むレニウム含有合金粉末の製造方法であって、
気相中に前記主成分金属粒子を分散させ、当該粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気を存在させる工程と、
前記レニウム酸化物を還元する工程と、
前記還元によって前記主成分金属粒子の表面に析出したレニウムを、高温下で当該主成分金属粒子中に拡散させることによりレニウム含有合金粉末を生成する工程と、
を備えることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記レニウムを主成分金属粒子中に拡散する工程において、当該主成分金属粒子が、少なくとも一部が溶融した粒子であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
少なくとも前記レニウム含有合金粉末を生成する工程を、非酸化性雰囲気で行うことを特徴とする、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記主成分金属粒子を分散させる工程の前に、当該主成分金属粒子を生成する工程を備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記主成分金属粒子が、物理気相析出法、化学気相析出法、噴霧熱分解法、気相中で熱分解性主成分金属化合物粉末を熱分解する方法から選択される製造方法によって生成されたものであることを特徴とする、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記主成分金属及びレニウムを溶解した原料溶液を液滴化し、これを加熱することによって、気相中に当該主成分金属粒子を分散させると共に、当該粒子の周囲にレニウム酸化物蒸気を存在させることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記レニウム含有合金粉末の平均粒径が0.01〜10μmであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記レニウム含有合金粉末中のレニウム含有量が0.01〜50重量%であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記主成分金属が、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、ルテニウム及びロジウムからなる群から選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記主成分金属がニッケルを含むことを特徴とする、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする、レニウム含有合金粉末。
【請求項12】
請求項11記載のレニウム含有合金粉末を含むことを特徴とする、導体ペースト。

【公開番号】特開2007−138280(P2007−138280A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71018(P2006−71018)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000186762)昭栄化学工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】