説明

レバー式コネクタ

【課題】両ハウジングが傾かずに正対して嵌合されるようにする。
【解決手段】第1ハウジング10と第2ハウジング30は、第1ハウジング10に回動可能に支持したレバー20のピニオン24と第2ハウジング30のラック33との係合によるテコ作用により嵌合される。レバー20の回動過程では、レバー20のカム溝25と第2ハウジング30のカムフォロア37との係合によるカム作用が発揮される。このカム作用により、ピニオン24とラック33との係合位置を支点として第1ハウジング10が第2ハウジング30に対して傾くことが規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー式コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レバーが回動可能に取り付けられた第1ハウジングと、第2ハウジングとを、レバーの回動操作により嵌合させるようにしたレバー式コネクタが開示されている。このレバー式コネクタでは、レバーにその回動中心と同心のピニオンが形成され、第2ハウジングには、両ハウジングの嵌合方向に沿ったラックが形成されている。レバーを回動させると、ピニオンとラックとの係合によりテコ作用が発揮され、両ハウジングが嵌合されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−317857公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のレバー式コネクタでは、レバーの回動中心と、ラックとピニオンとの係合位置とが、両ハウジングの嵌合方向と交差する幅方向において互いに異なる位置に配されている。そのため、嵌合の過程では、第2ハウジングのラックから第1ハウジング側のピニオンに作用する反力により、第1ハウジングが、第2ハウジングに対し、ラックとピニオンとの係合位置を支点として姿勢を傾けてしまうことが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、両ハウジングが傾かずに正対して嵌合されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、第1ハウジングと、ピニオンを有し、前記第1ハウジングに回動可能に取り付けたレバーと、前記第1ハウジングと嵌合可能であって、ラックを有する第2ハウジングとを備え、前記レバーの回動に伴う前記ピニオンと前記ラックとの係合により、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合されるようになっているレバー式コネクタにおいて、前記レバーと前記第2ハウジングのうちいずれか一方にカム溝を形成するとともに、他方にはカムフォロアを形成し、前記レバーの回動過程では、前記カム溝と前記カムフォロアとが係合することにより、前記ピニオンと前記ラックとの係合位置を支点として前記第1ハウジングが前記第2ハウジングに対して傾くことが規制されるところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ラックと前記ピニオンとの係合によるテコ作用は、前記レバーの回動開始から回動完了に至る全回動領域で発揮され、前記カム溝と前記カムフォロアとの係合によるカム作用は、前記レバーの回動途中から回動完了に至る一部の回動領域でのみ発揮されるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
<請求項1の発明>
両ハウジングの嵌合過程において、第2ハウジングのラックから第1ハウジング側のピニオンに作用する反力により、第1ハウジングが、第2ハウジングに対し、ラックとピニオンとの係合位置を支点として姿勢を傾けようとしても、カム溝とカムフォロアとの係合により、その姿勢の傾きが規制される。これにより、両ハウジングが傾かずに正対して嵌合される。
【0007】
<請求項2の発明>
レバーの回動終期においては、ラックとピニオンとの係合によるテコ作用とカム溝とカムフォロアとの係合によるカム作用の双方が発揮されるので、両ハウジングの嵌合完了時には、確実に両ハウジングを正対させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図9を参照して説明する。本実施形態のレバー式コネクタは、互いに嵌合・離脱が可能な第1ハウジング10と第2ハウジング30とを備えて構成されている。
【0009】
第1ハウジング10は、合成樹脂製であり、全体としてブロック状をなすハウジング本体11と、ハウジング本体11の背面(図1〜5における上面)に取り付けられた電線カバー12とを備えて構成され、一般に雌ハウジングと称されるものである。
【0010】
ハウジング本体11の内部には、周知形態の複数の雌端子金具(図示せず)が収容されている。電線カバー12は、各雌端子金具に接続されてハウジング本体11の背面から導出された電線(図示せず)を、ハウジング本体11の背面と略平行な向きとなるように曲げて側方へ導出させるものである。ハウジング本体11には、ハウジング本体11を全周に亘って包囲する角筒状をなす保護壁13が形成されている。保護壁13は、その両ハウジング10,30の嵌合・離脱方向と直角な幅方向における両端部において、ハウジング本体11に連なっている。保護壁13と保護壁13との間には、後述するレバー20と第2ハウジング30のフード部32とを収容するための収容空間14が構成されている。収容空間14は、収容空間14に対するフード部32の嵌入を可能にするために、全領域に亘って前方(第2ハウジング30側)に開放されている。また、収容空間14のうちハウジング本体11の上面壁の外面(図1〜5に現れる壁面)及び下面壁(図1〜5では隠れている壁面)の外面との間のスリット状空間は、レバー20のアーム部22を後方から組み付けるために後方にも開口されている。
【0011】
この収容空間14内においては、ハウジング本体11の上下両面(図1〜5に現れる面とその反対の隠された面)に、軸線を上下方向に向けた円柱状をなす上下対称な一対の支持軸15が突出形成されている。支持軸15は、レバー20の回動中心となるものであり、両ハウジング10,30の嵌合方向(前後方向)と直角に交差する幅方向(図1〜5における左右方向)においては略中央位置に配置されている。
【0012】
この第1ハウジング10には、レバー20が回動可能に取り付けられている。レバー20は、合成樹脂からなり、操作部21と、この操作部21の上下両端から互いに平行をなすように板状に延出した形態の上下対称な一対のアーム部22とを一体に形成したものである。両アーム部22には、上下方向に同軸状に貫通する略円形の軸受孔23が形成されており、レバー20は、この軸受孔23を支持軸15に嵌合させることにより支持され、アーム部22のほぼ全体を収容空間14内に収容した状態で、支持軸15を中心として待受位置と嵌合位置との間で約70°の角度範囲で回動し得るようになっている。
【0013】
レバー20が待受位置にある状態では、図1及び2に示すように、操作部21が、支持軸15の斜め後方の位置に配されている。レバー20が待受位置から嵌合位置に回動する過程では、図3及び図4に示すように、操作部21が、支持軸15の後方において円弧形の軌道に沿って概ね幅方向に変位する。そして、レバー20が嵌合位置にある状態では、図5に示すように、操作部21が、幅方向においては待受位置にあるときの操作部21の位置とは支持軸15を挟んで反対側であって、前後方向においては支持軸15よりも後方に位置する。
【0014】
両アーム部22は、上下対称な一対のピニオン24と上下対称な一対のカム溝25と上下対称な一対の板部26とを備えて構成されている。カム溝25は、アーム部22の内面(相手側のアーム部22と対向する面)を、外面側に貫通しないように切欠した形態であり、支持軸15を略中心とする弧状をなす。カム溝25の始端部はアーム部22の外周縁に開口され、カム溝25から支持軸15までの距離は、カム溝25の始端部から奥端部に向かって次第に接近するような形態となっている。カム溝25の弧状面のうち支持軸15から遠い側の弧状面は離脱用規制面27となっており、支持軸15に近い側の弧状面は嵌合用規制面28となっている。
【0015】
板部26は、支持軸15と直角、即ちレバー20の回動経路と平行な平板状をなし、カム溝25の外面側の壁面を構成している。この板部26の内面には、1片のピニオン24が突出した形態で形成されている。ピニオン24は、板部26に沿って支持軸15を中心とする径方向に突出した形態である。このピニオン24とカム溝25とは、レバー20の待受位置と嵌合位置との間の全回動領域の範囲内で、幅方向において支持軸15を挟んで反対側に配されている。
【0016】
レバー20が待受位置にある状態では、図1及び図2に示すように、ピニオン24が支持軸15を中心として斜め前方に突出した向きとなり、ピニオン24の突出端は、幅方向において最も支持軸15に接近した位置に配される。また、カム溝25の始端部は、後述するカムフォロア37の進入を可能とするために、前方に開口した向きで待機する。カム溝25の嵌合用規制面28と離脱用規制面27は、両ハウジング10,30の嵌合方向と略平行な向きとなる。
【0017】
レバー20が待受位置から嵌合位置へ回動する過程では、図3及び図4に示すように、ピニオン24は、両ハウジング10,30の嵌合方向と略平行な方向に沿って後方へ変位する。また、カム溝25は、その嵌合用規制面28及び離脱用規制面27を両ハウジング10,30の嵌合方向に対して次第に傾けていくように変位する。
【0018】
レバー20が嵌合位置にある状態では、図5に示すように、ピニオン24は、前後方向(両ハウジング10,30の嵌合・離脱方向と平行な方向)において最も後方に位置する。また、カム溝25の嵌合用規制面28と離脱用規制面27は、両ハウジング10,30の嵌合・離脱方向に対してなす角度が最大となるように傾く。
【0019】
第2ハウジング30は、合成樹脂製であり、幅方向に長いブロック状の端子収容部31と、端子収容部31から正面側(図1〜5における上方)へ角筒状に突出するフード部32とを一体に成形したものである。端子収容部31内には、図示しない周知形態の雄端子金具が取り付けられ、雄端子金具の前端部のタブが、端子収容部31の正面から突出してフード部32内に包囲された状態となっている。
【0020】
フード部32の上面壁の上面(外面)と下面壁の下面(外面)には、夫々、ラック33が上下対称に形成されている。ラック33は、幅方向において第2ハウジング30の中心から側方(支持軸15に対するピニオン24のずれ方向と同じ方向)へずれた位置に配されており、幅方向中央側に向けて側方(両ハウジング10,30の嵌合方向と略直角な方向)へ開口する溝部34を有する。溝部34を構成する前後両面のうち前側(図1〜5における上側)の面は嵌合用当接面35となっており、後側の面は離脱用当接面36となっている。
【0021】
同じくフード部32の上面壁の上面(外面)と下面壁の下面(外面)には、夫々、軸線を上下方向(支持軸15の軸線と平行な方向)に向けて円形に突出するカムフォロア37が上下対称に形成されている。カムフォロア37は、幅方向において、第2ハウジング30の中心からラック33とは反対側へずれた位置(即ち、支持軸15に対するカム溝25のずれ方向と同じ側にずれた位置)に配されている。換言すると、レバー20が待受位置にある状態では、カムフォロア37は、カム溝25の始端部の開口と対応する位置に配される。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。両ハウジング10,30を嵌合する際には、アーム部22のうち操作部21に近い位置から内面側に突出させた形態の係止孔29を、第1ハウジング10の上下両面に形成した第1ストッパ16に係止させることにより、レバー20を待受位置に保持し、この状態で、第2ハウジング30のフード部32内に第1ハウジング10を浅く嵌合させる。嵌合する際には、フード部32の上面壁と下面壁が、収容空間14内におけるハウジング本体11とアーム部22との隙間に進入する。また、両ハウジング10,30を浅く嵌合した状態では、図2に示すように、ピニオン24とラック33は係合しておらず、カムフォロア37とカム溝25も係合していない。
【0023】
この後、操作部21を摘んでレバー20を嵌合位置側へ回動させる。回動の過程では、図3に示すように、ピニオン24がラック33の嵌合用当接面35の開口側の縁部に係合し、この係合によるテコ作用が発揮される。このラック33とピニオン24との係合によるテコ作用により、両ハウジング10,30が引き寄せられて嵌合が進み始める。尚、ラック33とピニオン24との係合が開始した時点では、カムフォロア37とカム溝25とは係合していない。
【0024】
この後、更にレバー20の回動を進めると、図4に示すように、ピニオン24とラック33との係合状態が維持されたまま、カムフォロア37がカム溝25の始端部に進入し、カムフォロア37とカム溝25との係合が開始される。これ以降は、ラック33とピニオン24との係合によるテコ作用と、カムフォロア37とカム溝25との係合によるカム作用とにより、両ハウジング10,30の嵌合が更に進む。
【0025】
両ハウジング10,30の嵌合時におけるラック33とピニオン24との係合によるテコ作用においては、ピニオン24とラック33との係合位置を支点として、支持軸15が第1ハウジング10の前方へ押圧されることにより、第1ハウジング10が第2ハウジング30に対して相対的に接近するように前方へ変位するのであるが、ラック33とピニオン24の係合位置と、支持軸15の位置とは、両ハウジング10,30の嵌合方向と交差する幅方向において互いに離間した(ずれた)位置関係となっている。そのため、ラック33とピニオン24との係合位置を支点として、第1ハウジング10が、第2ハウジング30に対し支持軸15を前方へ変位させるように姿勢を傾けることが懸念される。しかし、幅方向において支持軸15を挟んでラック33及びピニオン24と反対側には、カム溝25の嵌合用規制面28が第1ハウジング10における斜め後方からカムフォロア37に当接して係合状態となっているので、この係合によるカム作用により、第1ハウジング10の傾きが規制される。
【0026】
また、端子金具間の摩擦抵抗等のために、第1ハウジング10が、ラック33とピニオン24との係合位置を支点として、上記とは逆に、第2ハウジング30に対して支持軸15を後方へ変位させるような向きに姿勢を傾けようとした場合には、嵌合用規制面28と対向している離脱用規制面27がカムフォロア37に対し第1ハウジング10における斜め前方から当接して係合状態となり、この係合によるカム作用により、第1ハウジング10の姿勢の傾きが規制される。
【0027】
このように、嵌合時にラック33とピニオン24との係合によるテコ作用によって第1ハウジング10を第2ハウジング30に対して傾かせるような力が生じても、カム溝25とカムフォロア37との係合によるカム作用によって第1ハウジング10の傾きを矯正しようとする力が生じるので、第1ハウジング10の傾きが防止され、第1ハウジング10と第2ハウジング30は正対した状態を保ちながら嵌合していく。このカム溝25とカムフォロア37との係合によるカム作用は、レバー20が嵌合完了位置に至るまで継続される。
【0028】
そして、レバー20が嵌合位置に到達すると、図5に示すように、両ハウジング10,30が傾くことなく正対した状態で正規の嵌合状態となり、雄端子金具と雌端子金具とが導通可能に接続される。このとき、レバー20は、その係止孔29を第1ハウジング10に形成した第2ストッパ17に係止させることにより、嵌合位置に保持される。また、カムフォロア37はカム溝25の奥端部に係合した状態になる。
【0029】
正規嵌合されている両ハウジング10,30を離脱する際には、操作部21を摘み、嵌合位置にあるレバー20を待受位置へ回動させる。この回動の過程では、ピニオン24がラック33の離脱用当接面36に当接して係合され、この係合によるテコ作用が発揮されるとともに、カム溝25とカムフォロア37との係合によるカム作用が発揮される。そして、このテコ作用とカム作用により、両ハウジング10,30が離間していく。
【0030】
両ハウジング10,30の離脱時におけるラック33とピニオン24との係合によるテコ作用においては、ピニオン24とラック33との係合位置を支点として、支持軸15が第1ハウジング10の後方へ押圧されることにより、第1ハウジング10が第2ハウジング30に対して相対的に離間するように後方へ変位するのであるが、ラック33とピニオン24の係合位置と、支持軸15の位置は、両ハウジング10,30の嵌合方向と交差する幅方向において互いに離間した(ずれた)位置関係となっている。そのため、ラック33とピニオン24との係合位置を支点として、第1ハウジング10が、第2ハウジング30に対し支持軸15を後方へ変位させるように姿勢を傾けることが懸念される。しかし、幅方向において支持軸15を挟んでラック33及びピニオン24と反対側には、カム溝25の離脱用規制面27が第1ハウジング10における斜め前方からカムフォロア37に当接して係合状態となるので、この係合によるカム作用により、第1ハウジング10の傾きが規制される。
【0031】
また、端子金具間の摩擦抵抗等のために、第1ハウジング10が、ラック33とピニオン24との係合位置を支点として、上記とは逆に、第2ハウジング30に対して支持軸15を前方へ変位させるような向きに姿勢を傾けようとした場合には、離脱用規制面27と対向している嵌合用規制面28がカムフォロア37に対し第1ハウジング10における斜め後方から当接して係合状態となり、この係合によるカム作用により、第1ハウジング10の姿勢の傾きが規制される。
【0032】
このように、離脱時にラック33とピニオン24との係合によるテコ作用によって第1ハウジング10を第2ハウジング30に対して傾かせるような力が生じても、カム溝25とカムフォロア37との係合によるカム作用によって第1ハウジング10の傾きを矯正しようとする力が生じるので、第1ハウジング10の傾きが防止され、第1ハウジング10と第2ハウジング30は正対した状態を保ちながら離脱していく。
【0033】
上述のように、第1ハウジング10と第2ハウジング30は、レバー20の回動中心(支持軸15)から幅方向にずれた位置において係合するラック33とピニオン24とのテコ作用によって嵌合されるため、第1ハウジング10の傾きが懸念されるが、本実施形態では、支持軸15を挟んでラック33及びピニオン24とは反対側の側方領域において、カム溝25とカムフォロア37との係合によるカム作用を発揮させ、このカム作用によって第1ハウジング10の傾きを規制するようにしている。これにより、両ハウジング10,30を傾かせることなく正対して嵌合させることができる。
【0034】
また、カム溝25とカムフォロア37との係合によるカム作用は、レバー20の回動領域における終期、即ち両ハウジング10,30が正規の嵌合状態に至るまで発揮され続けるようになっている。したがって、両ハウジング10,30の嵌合完了時には、確実に両ハウジング10,30を正対させた状態とすることができる。
【0035】
また、上記実施形態と異なる嵌合形態としては、両ハウジング10,30の嵌合過程において、ラック33とピニオン24との係合によるテコ作用と、カム溝25とカムフォロア37との係合によるカム作用とを、交互に発揮させながら嵌合を進めていく方法も考えられる。この場合でも、第1ハウジング10の姿勢の傾きが矯正されながら嵌合が進んでいくので、最終的には両ハウジング10,30を正対させた状態で嵌合させることが可能である。
【0036】
しかしながら、本実施形態のレバー式コネクタでは、複数の部品を相対的に可動する関係で組み付けられているため、各部品の寸法公差や部品間の組付公差を考慮し、組付け状態において部品間にクリアランスを空けることは避けられない。そのため、テコ作用とカム作用を、同時に発揮させず、交互に発揮させるようにしようとした場合、レバー20の回動過程において、テコ作用とカム作用のいずれの作用も発揮しない瞬間が発生する虞がある。この場合、レバー20が回動しても両ハウジング10,30の嵌合が停止することになる。これを回避するためには、公差を小さくして寸法精度を高めなければならならず、設計が困難となる。その点、本実施形態では、レバー20の回動過程においてテコ作用とカム作用の両作用が同時に発揮させるようにしているので、レバー20が回動しているにも拘わらず両ハウジング10,30の嵌合が進まない、という事態を回避できる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、レバーの回動終期においては、ラックとピニオンとの係合によるテコ作用とカム溝とカムフォロアとの係合によるカム作用の双方が発揮されるようにしたが、このテコ作用とカム作用がレバーの回動過程で発揮される形態としては、次のような3つの形態が可能である。
(a)テコ作用とカム作用のうちいずれか一方をレバーの全回動領域で発揮させ、他方を、レバーの回動途中から回動が完了する前までの一部の回動領域でのみ発揮させる。
(b)テコ作用とカム作用のうちいずれか一方をレバーの全回動領域で発揮させ、他方を、レバーの回動開始から回動が完了する前までの一部の回動領域でのみ発揮させる。
【0038】
(c)テコ作用とカム作用のうちいずれか一方を、レバーの回動開始から回動が完了する前までの一部の回動領域でのみ発揮させ、他方を、レバーの回動途中であって一方のテコ又はカム作用が終了する前からレバーの回動完了に至る一部の回動領域でのみ発揮させる。
【0039】
(2)上記実施形態では、ラックとピニオンとの係合によるテコ作用がレバーの全回動領域で発揮され、カム溝とカムフォロアとの係合によるカム作用がレバーの回動領域のうち一部のみてせ発揮させるようにしたが、これに替えて、ラックとピニオンとの係合によるテコ作用とカム溝とカムフォロアとの係合によるカム作用の双方が、いずれも、レバーの回動開始から回動完了に至る全回動領域で発揮されるようにしてもよい。
(3)上記実施形態ではレバーが取り付けられている第1ハウジングが雌ハウジングであり、第2ハウジングがフード部を有する雄ハウジングである場合について説明したが、本発明は、第2ハウジングが雌ハウジングであり、第1ハウジングがフード部を有する雄ハウジングである場合にも適用できる。
(4)上記実施形態ではレバーにカム溝を形成して、第2ハウジングにカムフォロアを形成したが、これとは逆に、レバーにカムフォロアを形成し、第2ハウジングにカム溝を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態1において第1ハウジングと第2ハウジングが離脱した状態をあらわす平面図
【図2】レバーを待受位置に保持して第1ハウジングと第2ハウジングを浅く嵌合した状態をあらわす平面図
【図3】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合が進んだ状態をあらわす平面図
【図4】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合が、更に進んだ状態をあらわす平面図
【図5】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合が完了した状態をあらわす平面図
【図6】レバーの側面図
【図7】図6のX−X線断面図
【図8】レバーの平面図
【図9】第2ハウジングの正面図
【符号の説明】
【0041】
10…第1ハウジング
20…レバー
24…ピニオン
25…カム溝
30…第2ハウジング
33…ラック
37…カムフォロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
ピニオンを有し、前記第1ハウジングに回動可能に取り付けたレバーと、
前記第1ハウジングと嵌合可能であって、ラックを有する第2ハウジングとを備え、
前記レバーの回動に伴う前記ピニオンと前記ラックとの係合により、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合されるようになっているレバー式コネクタにおいて、
前記レバーと前記第2ハウジングのうちいずれか一方にカム溝を形成するとともに、他方にはカムフォロアを形成し、
前記レバーの回動過程では、前記カム溝と前記カムフォロアとが係合することにより、前記ピニオンと前記ラックとの係合位置を支点として前記第1ハウジングが前記第2ハウジングに対して傾くことが規制されることを特徴とするレバー式コネクタ。
【請求項2】
前記ラックと前記ピニオンとの係合によるテコ作用は、前記レバーの回動開始から回動完了に至る全回動領域で発揮され、
前記カム溝と前記カムフォロアとの係合によるカム作用は、前記レバーの回動途中から回動完了に至る一部の回動領域でのみ発揮されることを特徴とする請求項1記載のレバー式コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−259683(P2009−259683A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108918(P2008−108918)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】