説明

レンズの製造方法およびレンズの製造装置

【課題】紫外線硬化樹脂等を硬化させることにより製造されるレンズの製造方法において、欠陥が存在しないレンズを製造する。
【解決手段】流動体状の感光性材料3を、型5に形成されている凹部7に供給する感光性材料供給工程S1と、凹部7を蓋するように、型5に基板13を設置する基板設置工程S3と、凹部7に充填されている流動体状の感光性材料3を硬化させる感光性材料硬化工程S5とを有するレンズ1の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの製造方法およびレンズの製造装置に係り、たとえば、金型に供給された紫外線硬化樹脂を硬化させて、レンズを製造するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線硬化樹脂を硬化させてレンズを製造する場合、平板状の基板200の上面に、液体状の紫外線硬化樹脂202を滴下する(図8(a)参照)。続いて、金型204の凹部(キャビティ)206に液体状の紫外線硬化樹脂202が入り込むように、基板200の上方に存在している金型204を下降する。続いて、凹部206に充填されている液体状の紫外線硬化樹脂202に、紫外線発生装置208が発生する紫外線210を照射して紫外線硬化樹脂202を硬化している(図8(b)参照)。
【0003】
この後、金型204を基板200から離して、硬化した紫外線硬化樹脂202を取り出し(図8(c)参照)、この取り出した硬化済み紫外線硬化樹脂202をレンズ212としている。
【0004】
なお、上記従来の技術に関連する特許文献として、特許文献1を掲げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−228946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した製法で製造したレンズ212は、紫外線硬化樹脂202が硬化するときの紫外線硬化樹脂202自体の収縮や紫外線硬化樹脂202内へのエアーの咬み込みによって、レンズ212に(レンズ212の凸部のたとえば頂上やこの近傍に)微細な凹状の欠陥214が発生する場合があるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、紫外線硬化樹脂等を硬化させることにより製造されるレンズの製造方法およびレンズの製造装置において、欠陥が存在しないレンズを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、流動体状の感光性材料を、型に形成されている凹部に供給する感光性材料供給工程と、前記感光性材料供給工程で感光性材料が供給された後、前記凹部を蓋するように、前記型に基板を設置する基板設置工程と、前記基板設置工程で基板を設置した後、前記凹部に充填されている流動体状の感光性材料を硬化させる感光性材料硬化工程とを有するレンズの製造方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレンズの製造方法において、前記型の凹部は、前記型の下端に形成されており、前記基板は、前記型の下方に位置しているレンズの製造方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のレンズの製造方法において、
前記各工程を繰り返して行うことによって、前記基板に複数の硬化した感光性材料の塊を形成するレンズの製造方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、上面に基板を設置する基板設置体と、前記基板設置体の上側に設けられ、前記基板設置体に対して接近・離反する方向で前記基板設置体に対して相対的に移動自在であり、型の凹部が下端に位置するようにして前記型が設置される型設置体と、前記型の凹部に供給された流動体状の感光性材料を硬化するための所定の波長の電磁波を、前記型の凹部に供給された流動体状の感光性材料に向けて照射する紫外線発生装置とを有するレンズ製造装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、紫外線硬化樹脂等を硬化させることにより製造されるレンズの製造方法およびレンズの製造装置において、欠陥が存在しないレンズを製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るレンズの製造方法の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレンズの製造方法の概要を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態の変形例に係る製法で製造されたレンズを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るレンズの製造方法の変形例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレンズの製造方法の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るレンズの製造方法の変形例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るレンズの製造方法の変形例を示す図である。
【図8】従来のレンズの製造方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
レンズ1は、感光性材料(たとえば紫外線硬化樹脂)を硬化させることによって形成されるものであり、感光性材料供給工程(紫外線硬化樹脂供給工程;紫外線硬化樹脂設置
工程)S1と基板設置工程S3と感光性材料硬化工程(紫外線硬化樹脂硬化工程)S5とを経て製造されるものである(図2等参照)。
【0015】
紫外線硬化樹脂供給工程S1では、流動体状(粘度の高い液体状)の紫外線硬化樹脂3が、型(たとえば金型)5に形成されている凹部(キャビティ)7に供給される(図1(a)、(b)参照)。キャビティ7は、たとえば、平凸レンズ状の形成されており、金型5の1つの平面(たとえば下面)9で上方に凹んで形成されている。
【0016】
紫外線硬化樹脂供給工程S1での紫外線硬化樹脂3の供給は、たとえばディスペンサ等の装置を用い、流動体状の紫外線硬化樹脂3を金型5のキャビティ7の表面11に塗りつけるようにしてなされる。また、紫外線硬化樹脂供給工程S1での紫外線硬化樹脂3の供給は、流動体状の紫外線硬化樹脂3内とキャビティ7の表面11とに、流動体状の紫外線硬化樹脂3が非存在である部位(たとえば気泡)が存在しないようにしてなされる。
【0017】
紫外線硬化樹脂供給工程S1で供給される紫外線硬化樹脂3の体積は、キャビティ7の体積よりも僅かに大きい体積である。また、紫外線硬化樹脂供給工程S1で供給された紫外線硬化樹脂3は、表面張力等によって金型5(金型5のキャビティ7)に貼り付いており、たとえば、図1で示すように、金型5のキャビティ7型が下方に開口している状態であっても、重力によって金型5から離れ落下しないようになっている(垂れ落ちないようになっている)。
【0018】
具体例を掲げてさらに説明すると、流動体状の紫外線硬化樹脂3の粘度は、10,000cps(よく練った水飴程度の粘度)〜30,000cps程度である。また、レンズ1は、たとえば、携帯電話のカメラに使用されるものであり、レンズ1の直径(円形状のキャビティ7の直径)は、上記粘度の流動体状の紫外線硬化樹脂3を供給しても、この供給された紫外線硬化樹脂3が張り付く程度の大きさになっている。
【0019】
基板設置工程S3では、紫外線硬化樹脂供給工程S1で紫外線硬化樹脂3が供給された後、金型5のキャビティ7を蓋するように(たとえば、キャビティ7が紫外線硬化樹脂3で満たされた平凸レンズ状の閉空間になるように)、金型5に基板13が設置される(図1(c)参照)。
【0020】
基板13は、感光性材料を硬化させる所定の波長帯域の電磁波が透過する材料で構成されている。すなわち、たとえば、基板13は、紫外線が透過する材料である石英ガラス等のガラスや合成樹脂で構成されている。
【0021】
また、基板13は、たとえば、平板状に形成されており、基板設置工程S3での基板13の設置は、基板13の厚さ方向の一方の面(上面)15が、金型5の下面9と平行になり、基板13の上面15が金型5の下面9に接するか、基板13の上面15が金型5の下面9からごく僅かに離反して対向するようにしてなされる(図1(c)、図3(a)参照)。
【0022】
また、紫外線硬化樹脂供給工程S1で供給された紫外線硬化樹脂3の体積がキャビティ7の体積よりも僅かに大きいので、基板13を設置する前は、紫外線硬化樹脂3が金型5のキャビティ7から僅かに盛り上がっている(図1(b)で示すように下方に僅かに凸になっている)。そして、基板設置工程S3で基板13を設置すると、金型5のキャビティ7からはみ出した僅かな量の紫外線硬化樹脂3が、金型5の外部で金型5と基板13との境界に沿ってリング状部位17になるのである(図1(c)、図3(a)参照)。
【0023】
紫外線硬化樹脂硬化工程S5では、基板設置工程S3で基板13を設置した後、金型5のキャビティ7に充填されている流動体状の紫外線硬化樹脂3を硬化させる(図1(c)参照)。なお、紫外線硬化樹脂3等の感光性材料は、流動体状の感光性材料を硬化するための所定の波長の電磁波発生する装置(たとえば紫外線発生装置)19が発生する紫外線21の照射を受けて硬化する。このときに、はみ出したリング状の紫外線硬化樹脂17が硬化するようにしてもよいし、硬化しないようにしてもよいし、半硬化するようにしてもよい。
【0024】
紫外線硬化樹脂供給工程S1、基板設置工程S3、紫外線硬化樹脂硬化工程S5は、減圧環境下(たとえば真空に近い環境下)でさなれることが望ましいが、大気圧の下でなされてもよい。
【0025】
紫外線硬化樹脂硬化工程S5で、紫外線硬化樹脂3を硬化した後、金型5を基板13から離す(基板13を金型5から離してもよい;図1(d)と図2のステップS7とを参照)。このとき、硬化した紫外線硬化樹脂3は、金型5のキャビティ7から離れ、基板13にくっついている。このように、硬化した紫外線硬化樹脂3が基板13にくっつくようにするために、金型5の表面(特にキャビティ7の表面11)に、硬化した紫外線硬化樹脂3を離れやすくするためのコーティングがされているか剥離材が塗布されていることが望ましい。
【0026】
離型S7をした後(金型5を硬化した紫外線硬化樹脂3から離した後)、金型5の外部にリング状にはみ出して金型5や基板13にくっついている紫外線硬化樹脂17を除去する。なお、図1(d)では、リング状にはみ出した紫外線硬化樹脂17が、金型5にのみくっついているが、基板13にもくっついている場合、基板13のみにくっついている場合もある。
【0027】
また、離型S7をした後、紫外線硬化樹脂硬化工程S5で硬化した紫外線硬化樹脂3を基板13からはずし、このはずした硬化済み紫外線硬化樹脂3がレンズ(平凸レンズ)1になる。このレンズ1は、たとえば、可視光(たとえば可視光のみ)を透過させるものであるが、可視光以外の所定の波長帯域の電磁波(たとえば、赤外線のみ)を透過させるものであってもよい。
【0028】
なお、離型S7をした後、硬化した紫外線硬化樹脂3を基板13から離すことなく、基板13とこの基板13と一体になっている硬化済み紫外線硬化樹脂3とを、レンズ1としてもよい。次のレンズ1を成型する場合には、金型5はそのまま用いてたとえば基板13を交換するものとする。
【0029】
また、前述したように、金型5のキャビティ7は、金型5のたとえば下端(下面9)に形成されており、基板13は、金型5の下方に位置している。そして、紫外線硬化樹脂硬化工程S5では、基板13の下方から紫外線硬化樹脂3に紫外線21を照射して、紫外線硬化樹脂3を硬化するようになっている。紫外線21は、基板13を通過して紫外線硬化樹脂3に照射される。
【0030】
ところで、図6に示すように、1枚の基板13aに複数個の紫外線硬化樹脂3を設けてもよい。すなわち、紫外線硬化樹脂供給工程S1、基板設置工程S3、紫外線硬化樹脂硬化工程S5、離型S7等を繰り返して行うことによって、基板13に硬化した紫外線硬化樹脂3の複数の塊を、たとえば、基板13の横方向(図6の左右方向)と縦方向(図6の紙面に直交する方向)とに所定の間隔をあけて並べて形成し、アレイレンズ1aを製造するようにしてもよい。
【0031】
さらに詳しく説明すると、図6で示す基板13aは、図1等で示す基板13よりも、横方向および縦方向の寸法が大きくなっている。そして、まず、紫外線硬化樹脂供給工程S1、基板設置工程S3、紫外線硬化樹脂硬化工程S5、離型S7を1回行うことによって、基板13aに1つ目の硬化済み紫外線硬化樹脂3の塊を形成する。
【0032】
続いて、基板13aを、金型5や紫外線発生装置19に対して相対的に、基板13aの横方向や縦方向に移動して位置決めし(図6(b)参照)、2回目の紫外線硬化樹脂供給工程S1、基板設置工程S3、紫外線硬化樹脂硬化工程S5、離型S7を行うことによって、基板13aに2つ目の硬化済み紫外線硬化樹脂3の塊を形成する。同様にして、3回目以降の硬化済み紫外線硬化樹脂3の塊を形成する。
【0033】
ところで、図1や図2で示したレンズ1の製造は、たとえば、次に示すレンズ製造装置(図示せず)を用いてなされる。
【0034】
このレンズ製造装置は、基板設置体と型設置体と紫外線発生装置とを備えて構成されている。基板設置体は、この上面にたとえば真空吸着等によって基板13を着脱自在に一体的に設置することができるようになっている。
【0035】
型設置体は、基板設置体のたとえば上側(上方)に設けられており、基板設置体に対して接近・離反する方向で(たとえば上下方向で)基板設置体に対して相対的に移動自在になっている。
【0036】
また、型設置体には、金型5のキャビティ7が金型5の下端に位置するようにして、金型5がボルト等の締結具を用いて一体的に設置されるようになっている。
【0037】
基板設置体に基板13が設置され、型設置体に金型5が設置されている状態では、金型5が基板13の上側に位置して、金型5の下端(下面)9と基板13の上面15とがお互いに対向している(図1(a)等参照)。
【0038】
そして、型設置体に設置されている金型5が基板設置体に設置されている基板13から最も離れているときには、図1(a)や図1(b)で示すように、金型5と基板13とが所定の距離だけ離れている。また、型設置体に設置されている金型5が基板設置体に設置されている基板13に最も近づいたときには、図1(c)で示すように、金型5の下面9と基板13の上面15とがたとえばお互いに接触している。
【0039】
紫外線発生装置19は、基板設置体の下方で基板設置体から離れて設けられており(図1(a)等参照)、前述したように、金型5のキャビティ7に供給された流動体状の紫外線硬化樹脂3を硬化するための紫外線21を発生し、この発した紫外線21を、金型5のキャビティ7に供給された流動体状の紫外線硬化樹脂3に向けて照射するようになっている。
【0040】
なお、金型設置体はリニアガイドベアリングを介してレンズ製造装置のベース体に設けられていると共に、サーボモータ等のアクチュエータとボールネジとによって、ベース体に対して、図示しない制御装置の制御の下、移動位置決め自在になっている。基板設置体は、ベース体に一体的に設けられており、紫外線発生装置も、ベース体に一体的に設けられている。
【0041】
金型5は、たとえば、円柱状等の柱状に形成されており、金型5の平面状の下面9の中央にキャビティ7が形成されている。金型5が金型設置体に設置された状態では、金型5の高さ方向が上下方向になっており、キャビティ7が設けられている金型5の下面9が金型5の下部に位置している。キャビティ7をこの厚さ方向(図1(a)の下方向)から見ると、すでに理解されるように、キャビティ7は円形状になっている。
【0042】
基板13は、円形もしくは矩形等の平板状に形成されている。基板13が基板設置体に設置された状態では、基板13の厚さ方向が上下方向になっている。また、基板13が基板設置体に設置された状態で上下方向から見ると、基板13の中心と金型5の中心とはお互いに一致しており、基板13は、金型5よりも大きくなっている。なお、上下方向から見たときに、基板13が、金型5のキャビティ7よりも大きく金型5より小さくなっていてもよい。
【0043】
また、レンズ製造装置には、流動体状の紫外線硬化樹脂3を、金型設置体に設置された金型5のキャビティ7に供給するための、紫外線硬化樹脂供給装置(図示せず)が設けられているが、紫外線硬化樹脂供給装置を設けることなく、手動で流動体状の紫外線硬化樹脂3を金型5のキャビティ7に供給してもよい。
【0044】
また、レンズ製造装置に樹脂除去装置を設け、離型S7をした後、金型5の外部にリング状にはみ出した紫外線硬化樹脂17等を、樹脂除去装置を用いて除去するようにしてもよいが、はみ出した紫外線硬化樹脂17等を手動で除去してもよい。
【0045】
次に、レンズ製造装置の動作について説明する。
【0046】
初期状態として、金型5が金型設置体に設置されており、基板13が基板設置体に設置されており、金型5と基板13とは所定の距離だけ離れており、紫外線発生装置19は、紫外線は発生しておらず。金型5のキャビティ7には、紫外線硬化樹脂3が供給されていないものとする(図1(a)参照)。
【0047】
上記初期状態において、レンズ製造装置の制御装置の制御の下、金型5のキャビティ7に流動体状の紫外線硬化樹脂3を供給する(図1(b)参照)。
【0048】
続いて、金型設置体を下降して基板設置体側に移動し、金型5を基板13に近づけて、金型5のキャビティ7を基板13で蓋をし、紫外線発生装置19で紫外線21を紫外線硬化樹脂3に照射し、紫外線硬化樹脂を硬化する(図1(c)参照)。
【0049】
続いて、金型設置体を上昇させて基板設置体から離し離型する(図1(d)参照)。
【0050】
ところで、図6で示すように1枚の基板13aに複数個の紫外線硬化樹脂3の塊を形成する場合には、レンズ製造装置において、基板設置体をベース体に対して、図6の左右方向および図6の紙面に直交する方向で、移動位置決め自在にすればよい。
【0051】
本実施形態に係るレンズの製造方法によれば、基板13ではなく金型5のキャビティ7に流動体状の紫外線硬化樹脂3を供給し、この後、金型5に基板13を設置して、紫外線硬化樹脂3に紫外線21を照射して、紫外線硬化樹脂3を硬化させレンズ1を製造しているので、欠陥が存在(発生)しないレンズ1を製造することができる。
【0052】
すなわち、図8で示す従来の製造方法のように、紫外線硬化樹脂202を基板200に供給してレンズ212を製造すると、紫外線硬化樹脂202が金型204の凹部206に完全に入らず、レンズ212に空気の咬み込みが発生し、この空気の咬み込みでレンズ212に欠陥(微細な凹み)214が形成されることがある。
【0053】
また、減圧環境下でレンズ212の成型を行っても、基板200に供給された紫外線硬化樹脂202が、金型204が下降してくるとき(基板200に近づいてくるとき)に、金型204の縁で押し広げられ、レンズ212の中央上部(金型204の凹部206の中央部)まで紫外線硬化樹脂202が入り込まないことで金型204の凹部206の総てに紫外線硬化樹脂202が充填されず、レンズ212に欠陥214が存在してしまうおそれがある。
【0054】
しかし、本実施形態に係るレンズの製造方法によれば、金型5のキャビティ7に予め紫外線硬化樹脂3を供給してあるので、金型5のキャビティ7の表面11の全面に紫外線硬化樹脂3が密着し、上述した金型204の凹部206内の紫外線硬化樹脂202への空気の咬み込みが無くなり、また、金型204の縁による紫外線硬化樹脂202の押し広げがあっても、レンズ1での欠陥の発生を防止することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るレンズの製造方法によれば、金型5のキャビティ7を金型5の下端に位置させ、基板13を金型5の下方に位置させておいてレンズ1の成型をするので、金型5のキャビティ7に微細な塵埃等が入り込まなくなり、レンズ1を製造する際における不良の発生を防止することができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係るレンズの製造装置によれば、金型5が上方に設置され基板13が下方に設置されるように構成されているので、基板13の交換をする際、基板13の基板設置体への着脱が容易になり、装置の構成を簡素化することができ、レンズ製造装置の精度を向上させることができ、金型5の清掃(洗浄)を容易に行うことができる。
【0057】
すなわち、金型5が基板13の下方に存在していると、基板13の上方に紫外線発生装置19を設ける必要があり、レンズ製造装置の上部の質量が大きくなる。これにより、レンズ製造装置のベース体の剛性を高める必要がある。また、図6で示すように、基板13aにレンズをアレイ状に設ける場合には、基板13aが金型5に比べて大きくなり、基板設置体も大きくなる。これにより、レンズ製造装置の上部の質量がさらに大きくなる。
【0058】
しかし、本実施形態に係るレンズの製造装置によれば、紫外線発生装置19を基板13の下方に配置すればよいので、レンズ製造装置のベース体の剛性を高める必要が小さくなり、レンズ製造装置を軽量化することができる。
【0059】
また、図6で示すように1枚の基板13aに複数のレンズをアレイ状に成型する場合において、金型設置体をベース体に対して上下方向にのみ移動し、紫外線発生装置19をベース体に固定し、基板設置体を前後方向(図6の紙面に直交する方向)と左右方向(図6の左右方向)とにのみ移動する構成とすることで、レンズ製造装置の構成を効率良く簡素化することができる。このときに、基板設置体が型設置体の上方に存在している構成であると、基板設置体を駆動する機構(移動位置決めする機構)も煩雑になり、駆動機構を支持するためにベース体も大きくなってレンズ製造装置自体が大きくなり、レンズ製造装置の重心の位置も高くなってしまう。
【0060】
しかし、本実施形態に係るレンズの製造装置では、基板設置体が型設置体の下方に存在している構成であるので、基板設置体を駆動する機構を簡素化することができ、ベース体も大きくなることを防止することができ、レンズ製造装置の重心の位置が上方になってしまうことを防止することができ、レンズ製造装置の精度を良好な状態で維持することができる。
【0061】
また、多数のレンズを成型する場合、金型5は交換しないが、基板13は交換される。このときに、基板設置体が金型設置体の下方に位置していれば、基板13を基板設置体に着脱することが容易になる。
【0062】
さらに、金型5のキャビティ7を清掃する場合には、基板設置体から基板13を取り外しておき、下方に開口しているキャビティ7を清掃するので、キャビティ7の表面11に付着している不要物の下方への落下を許容でき、キャビティ7の表面11に付着している不要物の除去が容易になる。
【0063】
ところで、基板設置工程S3で基板13を金型5に設置したとき、図3(a)で示すように、金型5と基板13との間に、ごく僅かな隙間GPが形成されていてもよい。このような隙間GPが形成されていることにより、紫外線硬化樹脂硬化工程S5で紫外線硬化樹脂を硬化するとき、キャビティ7内の紫外線硬化樹脂3がごく僅かに収縮しても、隙間GPを通って流動体状の紫外線硬化樹脂が逆流し(部位17の紫外線硬化樹脂3がキャビティ7に向かってごく僅かに流れ)、レンズ1の欠陥が発生することを一層確実に防止することができる。
【0064】
隙間GPを設けて紫外線硬化樹脂3を硬化し離型S7をした後、図3(b)で示すように、円柱側面状の破断面L1のところで、硬化済み紫外線硬化樹脂3と基板13(硬化済み紫外線硬化樹脂3だけでもよい。)とを切断することにより、直径が「D1」であるレンズ1を得ることができる。
【0065】
また、紫外線硬化樹脂供給工程S1でのキャビティ7に供給する紫外線硬化樹脂3の体積を、図4(a)で示すように、キャビティ7の体積と同じにしてもよい。
【0066】
また、図4(b)で示すように、基板13に凹部(キャビティ)23を形成してもよい。これにより、両凸レンズを成型することができる。
【0067】
また、図4(c)で示すように、基板13に凸部25を形成してもよい。これにより、メニスカス凸レンズを成型することができる。
【0068】
さらに、上記説明では、凸レンズ例に掲げて説明したが、上述したレンズの成型方法やレンズの製造装置で、凹レンズを生成してもよい。
【0069】
また、図5(a)で示すように、金型5の上方に基板13を配置し、基板13の上方に紫外線発生装置19を配置してもよいし、図5(b)で示すように、紫外線硬化樹脂供給工程S1において、金型5のキャビティ7に流動体状の紫外線硬化樹脂3aを供給すると共に、基板13の上面にも流動体状の紫外線硬化樹脂3bを供給してもよい。なお、紫外線硬化樹脂3aの体積は、キャビティ7の体積よりも小さく、紫外線硬化樹脂3aの体積と紫外線硬化樹脂3bの体積との和が、キャビティ7の体積と等しいか、キャビティ7の体積よりも大きい。
【0070】
また、図7で示すように、金型5aの複数のキャビティ7を設けておいて、一度に複数個のレンズ1を成型してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 レンズ
3、3a、3b 紫外線硬化樹脂(感光性材料)
5、5a 金型(型)
7 キャビティ(凹部)
13、13a 基板
19 紫外線発生装置
21 紫外線
S1 紫外線硬化樹脂供給工程(感光性材料供給工程)
S3 基板設置工程
S5 紫外線硬化樹脂硬化工程(感光性材料硬化工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動体状の感光性材料を、型に形成されている凹部に供給する感光性材料供給工程と、
前記感光性材料供給工程で感光性材料が供給された後、前記凹部を蓋するように、前記型に基板を設置する基板設置工程と、
前記基板設置工程で基板を設置した後、前記凹部に充填されている流動体状の感光性材料を硬化させる感光性材料硬化工程と、
を有することを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズの製造方法において、
前記型の凹部は、前記型の下端に形成されており、前記基板は、前記型の下方に位置していることを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレンズの製造方法において、
前記各工程を繰り返して行うことによって、前記基板に複数の硬化した感光性材料の塊を形成することを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項4】
上面に基板を設置する基板設置体と、
前記基板設置体の上側に設けられ、前記基板設置体に対して接近・離反する方向で前記基板設置体に対して相対的に移動自在であり、型の凹部が下端に位置するようにして前記型が設置される型設置体と、
前記型の凹部に供給された流動体状の感光性材料を硬化するための所定の波長の電磁波を、前記型の凹部に供給された流動体状の感光性材料に向けて照射する紫外線発生装置と、
を有することを特徴とするレンズ製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−11720(P2012−11720A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152017(P2010−152017)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】