説明

レンズシート用積層二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】ファインピッチ化・連続生産化・大面積化されたレンズシート製造に適した紫外線透過性とレンズ層成形樹脂との接着性を有するレンズシート用積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】アクリル樹脂を主成分とする屈折率が1.55以下、膜厚が30nmから80nmである積層膜を両面に有し、330nmから380nmにおける分光反射率が両面8%以下であることを特徴とする積層二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシートの基材として用いられる積層二軸延伸ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、レンズ層を硬化させるに十分な紫外線透過性を示し、レンズ層との接着性に優れ、レンズシート製造に好適な積層二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、光学シートは、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、プロジェクションテレビなどの部材として多用されている。この中で、例えば、液晶ディスプレイのプリズムシートやプロジェクションテレビのスクリーンなどに用いられるレンチキュラーシート、フレネルレンズシートなどのレンズシートは、ディスプレイ発光部からの光を収束したり拡散したりするレンズ層を加圧成形加工により形成するが、昨今のディスプレイの高解像度化により、レンズ層のファインピッチ化が求められる一方、低コスト化も求められている。レンズ層の形成方法としては、熱可塑性樹脂シートに対してプレス成形する方法、溶融押出と同時に成型を行う方法があるが、熱成型後の冷却時の温度不均一による成型斑が発生するため近年のファインピッチ化に対応できなかった。また、枚葉での加工は、連続生産できないため低コスト化が図れなかった。そこで、ファインピッチなレンズシートを低コストで製造するのに好適な製造方法が特許文献1や特許文献2に挙げられている。これらは、ロールから供給される基材フィルムの片面にレンズ層形成用紫外線硬化性樹脂を塗布し、金型ロールにてレンズを成型し、レンズ面とは反対面(基材側)から紫外線を照射してレンズを硬化させるものである。この製造方法に限られるものではないが、基材側から基材を通して紫外線を照射する場合、基材フィルムには紫外線透過性が高く、紫外線硬化樹脂との接着性が高いことが重要であり、特許文献1や特許文献2において好適な材質としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)が例示されている。中でも、PETに代表されるポリエステルフィルム、特に二軸延伸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、耐熱性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有する上に、他のプラスチックフィルムに比べて、汎用性が高く、コストメリットに大きな優位性があるため最も好適である。しかし、表面処理がされていない二軸延伸ポリエステルフィルムの場合、表面が高度に結晶化されているためレンズ層成型用樹脂との接着性が不足するという問題がある。そこで、特許文献3にあるように、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に接着性を高めるための積層膜を設けることが知られている。
【特許文献1】特開2002−268148 号公報
【特許文献2】特開2002−210758 号公報
【特許文献3】特開2000−141574 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1や特許文献2にあるとおり、レンズ層のファインピッチ化や製造コスト低減の目的で、金型ロールの精密化・ロールでの連続生産が必要となっており、更に、特にテレビ用液晶ディスプレイのプリズムシートやプロジェクションテレビのスクリーンに用いられるフレネルレンズシートやレンチキュラーレンズシートは大面積加工になるため、基材の紫外線透過性や接着性の向上がより要求されているが、特許文献3に記載の手法では不十分となっていた。そこで、本発明においては、かかるファインピッチ化・連続生産・大面積化に耐えうる紫外線透過性とレンズ層成形樹脂との接着性を向上させた積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決する本発明の積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、レンズシートの基材であって、アクリル樹脂を主成分とする屈折率が1.55以下、膜厚が30nmから80nmの積層膜を両面に有し、330nmから380nmにおける分光反射率が両面8%以下であることを特徴とする積層二軸延伸ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、以下に示すとおり、ファインピッチ化・連続生産・大面積化に耐えうる紫外線透過性とレンズ層成形樹脂との接着性を向上させたレンズシート、更には、外観が優れた液晶ディスプレイのプリズムシート、スクリーンのレンチキュラーシートまたはフレネルレンズシート用の積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、更に詳しく本発明の積層フィルムについて説明する。
【0007】
本発明の積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、図1に示されるとおり、基材側から照射された紫外線にて硬化された紫外線硬化樹脂からなるレンズ層を形成することを特徴とするレンズシート、特に、大面積加工であるテレビ用液晶ディスプレイのプリズムシート、プロジェクションテレビのスクリーンに用いられるフレネルレンズシートやレンチキュラーレンズシート用の基材として用いられる。レンズ層成型用紫外線硬化性アクリル樹脂としては、特に限定されず、モノマー成分としては、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートの多官能(メタ)アクリル系化合物を用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いられる。添加する光重合開始剤としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物、あるいは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メチルフェニルグリオキシレート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフォスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタールなどを用いることができる。
【0008】
かかるレンズシート製造時においてレンズ層の成形性を向上させるためには、基材が紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線を効率的に透過させる必要がある。積層二軸延伸ポリエステルフィルムのベース部に用いられる原料には、ベンゼン環やナフタレン環といった芳香環が存在するが、ナフタレン環はベンゼン環よりも広い領域に渡って紫外線を吸収してしまうため好ましくない。本発明における積層二軸延伸ポリエステルフィルムのベース部に用いられる好ましい原料としては、紫外線透過性、強度、熱特性、透明度、汎用性といった点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が最も好適である。ポリエステルを重合する際の触媒として、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物などを使用することが好ましい。また、フィルムの走行性(易滑性)や耐候性、耐熱性などの機能を持たせるため、前記ポリエステル樹脂を主体としたフィルム原料に紫外線透過性を阻害しない程度に添加剤を混入してもよい。添加剤としてはとくに限定されず、添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、易滑剤などが使用できるが、本発明の必要特性である紫外線透過性、透明性やヘイズに影響を与えないように添加量を考慮することが好ましく、実質的に添加剤を含まないことがより好ましい。
【0009】
かかる二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜方法は、従来既知の方法で行えばよい。すなわち、例えば、溶融押出した結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5倍〜4倍程度延伸し、続いて幅方向に2.5倍〜4倍程度延伸する。さらに連続的に150℃〜250℃の加熱ゾーンに導き結晶配向を完了させ、30℃〜200℃で長手方向や幅方向に1%〜5%に弛緩させ熱寸法安定性を付与する方法である。二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、50μm〜300μmが好ましく、より好ましくは75μm〜250μmである。50μmを下回ると、基材としての腰強さが得られず、積層フィルムのカール、シワ・折れが発生し取り扱い性が大幅に悪化するため好ましくなく、300μmを越えると、紫外線透過性が下がると共に、腰が強すぎて貼り付け時などの作業性が悪化し、ロール状態での巻き長さも短くなるためコストが増大するため好ましくない。
【0010】
本発明の本発明の積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、330nmから380nmの紫外領域における表面反射率を両面で8%以下であることが必要である。好ましくは7%以下、より好ましくは6%以下である。これにより、レンズ層成型のための紫外線照射時の紫外線透過量を増加させることができる。二軸延伸ポリエステルフィルムがかかる特性を有するためには、二軸延伸ポリエステルフィルムの両表面に各々積層膜を設置する必要がある。すなわち、二軸延伸ポリエステルフィルムの両表面に屈折率の低い樹脂を積層することで表面反射率を下げ、結果透過率が向上させる効果がある。表面反射率を8%以下とするには、積層膜の屈折率は1.55以下、膜厚は30nmから80nmである必要があり、表面反射率を7%以下とするには、積層膜の屈折率は1.53以下、膜厚は40nmから70nmである必要があり、6%以下とするには、屈折率は1.52以下、膜厚は50nmから60nmであることが好ましい。かかる屈折率を達成するための積層膜の樹脂は分極率の低い樹脂が好ましく、アクリル系樹脂を主成分とすることが必要である。なお、アクリル系が主成分とは、積層膜成分の内、アクリル系樹脂が60重量%程度以上含むことをいう。また、膜厚が30nmより小さいと可視光領域の反射率が全体に高くなり透過性が下がり、さらには、レンズ層成型用樹脂との好ましい接着性が得られない。膜厚が80nmより大きいと、紫外領域での反射率が高くなり、レンズ層成型時に照射される紫外線を透過しにくくなるうえに、可視光領域における青色領域(380〜450nm)をも強く反射してしまい(図2)、透過b値が大きくなり黄色く着色して見えるため問題となる。つまり、積層膜の屈折率と膜厚を上述のとおりとすることで、本発明において好ましい全光線透過率(90%程度以上)、好ましい透過b値(1.0程度以下)を達成することができる。
【0011】
本発明における積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、レンズ層成型用のアクリル系紫外線硬化樹脂との接着性を有する必要があるため、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの積層膜は、レンズ層成形用紫外線硬化樹脂と同じアクリル系樹脂である必要がある。積層二軸延伸ポリエステルフィルムの表面の内、片面はレンズ層との接着性のため、反対面は前述の紫外線透過性のため、両面とも積層膜を有する必要がある。積層膜のアクリル樹脂は、該アクリル樹脂を構成するモノマー成分として、上述の屈折率を満たすものであれば特に限定はないが、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマ、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有モノマ、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマ、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマ、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。更に、これらは他種のモノマーと併用することができる。他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸及びそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル等を用いることができる。
【0012】
本発明の積層二軸延伸ポリエステルフィルムの好ましいヘイズは2%以下である。2%を越えると、外観が曇って見えるこのことに加え、光の散乱により紫外線の透過性が下がるためである。ヘイズは、原料であるポリエステルや積層膜中に添加する滑剤の種類や量によって変化するが、本発明の実施例に従えば好適な値になる。
【0013】
本発明において、レンズ層成型用樹脂と積層二軸延伸ポリエステルフィルム表面の親和性を高めるため、積層膜表面のヌレ張力は50mN/m以上であることが好ましく、55mN/mであることがより好ましい。ヌレ張力を向上させる方法として、積層膜設置後に、コロナ処理やプラズマ処理といった電気的処理を施して極性を高める方法や、極性の高いポリエステル系やウレタン系の易接着樹脂を屈折率に影響がない程度で添加する方法やポリスチレンスルホン酸またはその塩などに代表される親水基を付加する方法などがあるが、前者二つは、電気的処理による発塵、ポリエステル系やウレタン系樹脂による本発明の要件(光学特性・接着性)が阻害される懸念があるため、また、ヌレ張力向上の効果も小さいため、ポリスチレンスルホン酸またはその塩を添加する方法が好ましい。ポリスチレンスルホン酸塩とは、ポリスチレンをスルホン化後、1価のアルカリ金属またはアンモニアで中和したもの、あるいは、スチレンスルホン酸塩を重合したアニオン性高分子である。ポリスチレンスルホン酸またはその塩の添加量は、積層膜の主成分であるアクリル樹脂に対し、5〜25重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜20重量部である。5重量部より少ないと、ヌレ張力向上の効果が発現しにくく、25重量部より大きいと、塗布外観不良(白化)を起こしたり、吸水によるブロッキングが発生する可能性が高くなるため好ましくない。ヌレ張力が55mN/m以上となるためには、10重量部程度以上添加することが好ましい。
【0014】
本発明における積層二軸延伸ポリエステルフィルムの積層膜、特に前述のポリスチレンスルホン酸塩を添加した時のブロッキングを抑制する方法として、積層膜に架橋剤を添加する方法がある。用いられる架橋剤は、架橋反応をおこす化合物であれば特に限定されないが、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、ウレタン系、アクリルアミド系、ポリアミド系化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。架橋剤の添加量は、積層膜の主成分であるアクリル樹脂に対し、1〜20重量部であることが好ましい。1重量部より少ないと、耐ブロッキング効果が発現しにくく、20重量部より大きいと、架橋が進みすぎ、レンズ層成型用樹脂との接着性が低下するため好ましくない。
【0015】
本発明の積層二軸延伸ポリエステルフィルムに易滑性を付与するために、積層膜に無機粒子を添加することが好ましい。添加する無機粒子としては、代表的には、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等を用いることができる。平均粒径としては、積層膜の厚みの1.2倍〜3倍が好ましい。1.2倍より小さい場合は、粒子が表面に突出せず易滑性が悪化し、3倍より大きい場合は、粒子が積層膜から滑落するため好ましくない。粒子の添加量は、積層膜の主成分であるアクリル樹脂に対し、重量比で0.05〜8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。0.05重量部に満たないと易滑性が発現しにくく、8重量部を越えるとヘイズが上昇し、フィルムの透明感が悪化するため好ましくない。
【0016】
積層膜の設置方法としては特に限定はないが、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに水系樹脂塗液を塗布し、延伸、熱処理により結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)がコスト、環境の点から好適に用いられている。塗布の方法は、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法などを用いることができる。積層膜の厚みは、塗液の濃度や塗布量によって調整できる。
【0017】
本発明において、レンズ層の設置方法としては、図1のように、基材側から紫外線を照射する方法であれば限定はない。例えば、プリズムシートやレンチキュラーシート、フレネルレンズシートなどの成形加工の場合、成形金型を適宜、丸形、矩形、三角形とすることで任意の形状を持ったレンズシートを作成することができる。
【0018】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法及び効果の評価方法を以下に示す。
(1)積層二軸延伸ポリエステルフィルムの厚み
ソニー社製、デジタルマイクロメーターを使用し、JIS−C−2151(1990)に従って測定した。
【0019】
(2)積層膜に含まれる滑剤粒子の粒径
積層膜表面にPt−Pdをイオンスパッタしてサンプルを調整し、日立製作所製社製走査電子顕微鏡S−800を用い、積層膜(A)表面の観察、写真撮影を行った。その写真から滑剤粒子の粒径を測定した。
【0020】
(3)積層膜の厚み
積層二軸延伸ポリエステルフィルムの断面を凍結超薄切片法にて切り出し、RuO4染色による染色超薄切片法により、日立製作所製透過型電子顕微鏡H−7100FA型を用い、加速電圧100kVにて積層膜部の観察、写真撮影を行った。その断面写真から積層膜の厚みを測定した。
【0021】
(4)二軸延伸ポリエステルフィルムの面方向平均屈折率
アタゴ社製アッベ屈折計を用い、JIS−K−7105(1981)に従って測定した。すなわち、光源をナトリウムランプ(Na−D線)として、マウント液はヨウ化メチレンを用い、23℃、相対湿度65%下で、長手方向と幅方向の複屈折率を測定し、長手方向と幅方向の屈折率の平均値を面方向平均屈折率とした。なお、積層膜は薄いため、積層二軸延伸ポリエステルフィルムを用いたとしても、二軸延伸ポリエステルフィルムの屈折率が本測定にて判明する。
【0022】
(5)積層膜の屈折率
用いる樹脂を乾燥固化または活性線硬化させた膜厚1mm程度の膜について、アタゴ社製アッベ屈折計を用い、JIS−K−7105(1981)に従って測定した。すなわち、光源をナトリウムランプ(Na−D線)として、マウント液はヨウ化メチレンを用い、23℃、相対湿度65%下で、直交する2つの方向の複屈折率を測定し、その平均値を屈折率とした。
【0023】
また積層膜の屈折率を測定する他の方法として、積層膜設置後の積層二軸延伸ポリエステルフィルムの分光反射率を下記(6)の方法で測定し、積層膜の厚みを上記(3)の方法で測定し、二軸延伸ポリエステルフィルムの面方向平均屈折率を上記(4)の方法で測
定し、下式にフィッティングすることで光学的に検証することができる。
【0024】
【数1】

【0025】
n0:二軸延伸ポリエステルフィルムの面方向平均屈折率
n1:積層膜の屈折率
d1:積層膜の膜厚
λ:波長(入射角は0度と近似)
R:λにおける積層ポリエステルフィルムの分光反射率。
【0026】
(6)分光反射率
JIS−Z−8722(2000)に従って、島津製作所製分光光度計「UV−2450PC」(受光部に積分球使用)を用いて、紫外領域、および可視光領域における入射角5度の分光絶対正反射率を測定した。
【0027】
(7)ヘイズと全光線透過率
スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて、JIS−K−7105(1981)に従って行った。
【0028】
(8)透過b値
JIS−Z−8722(2000)に従って、島津製作所製分光光度計「UV−2450PC」(受光部に積分球を使用)を用いて積層フィルムの入射角0度の分光透過率を測定し、透過b値を計算した。このとき、光源はC、視野角は2度にて計算した。
【0029】
(9)ヌレ張力
ヌレ規定液にエチレングリコールモノエチルエーテル、ホルムアミドおよびこれらの混合液を用い、JIS−K−6768(1999)に従って測定した。
【0030】
(10)レンズ層の密着力
レンズ層に2mm2のクロスカットを25個入れ、ニチバン社製セロハンテープをその上に貼り付け、指で強く押し付けた後、90度方向に急速に剥離し、残存した個数により評価を行った。(◎)、(○)を密着性良好、(△)を使用可能限度、(×)を使用不可とした。
◎:25/25(残存個数/測定個数)
○:20/25以上、25/25未満
△:10/25以上、20/25未満
×:10/25未満。
【0031】
(11)外観
レンズシートを透過光・反射光で観察し、(◎)、(○)を外観が良好、(△)が使用可能限度、(×)を使用不可とした。
【0032】
(12)取り扱い性
積層フィルムの取り扱いやすさを次の基準で評価した。(◎)、(○)を取り扱い性が良好、(△)が使用可能限度、(×)を使用不可とした。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
実質的に外部添加粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸フィルムを85℃に加熱して長手方向に3.2倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、両面に後述の塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子A=100/2.5/20/1(重量部)で構成される積層膜形成用水分散液を塗布した。塗布された1軸延伸フィルムをクリップで把持して予熱ゾーンに導き、90℃/100℃で乾燥、引き続き連続的に115℃の加熱ゾーンで幅方向に3.4倍延伸し、続いて230℃の加熱ゾーンで20秒間熱処理を施し、160℃〜60℃で幅方向に4%弛緩処理して結晶配向の完了した表1に示す積層二軸延伸PETフィルム(二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが125μm、各積層膜の厚みが60nm)ロールを作成した。得られた積層二軸延伸PETフィルムを巻出し、後述のレンズ層形成用紫外線硬化樹脂組成物をダイコーターなどで0.2mmの厚さで塗布し、レンズ層の逆形状(0.3mmピッチ)が形成されたレンズ層成型用金型ロール(幅50cm)に圧着させて上記レンズ層に凹凸を成形すると同時に、レンズ層とは反対側(基材側)から紫外線を照射し、レンズ層を硬化してレンズシートを作成した。得られたレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表1に示す。
【0034】
(実施例2)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子B=100/5/20/1(重量部)とし、二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みを250μm、各積層膜の厚みを70nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表1に示す。
【0035】
(実施例3)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子A=100/0/20/1(重量部)とし、二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みを75μmとした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表1に示す。
【0036】
(実施例4)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子A=100/20/5/1(重量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表1に示す。
【0037】
(実施例5)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子A=100/2.5/0/1(重量部)とし、各積層膜の厚みを40nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表1に示す。
【0038】
(実施例6)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子A=100/2.5/0/1(重量部)とし、積層膜形成後にインラインで積層膜をコロナ処理した以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表1に示す。
【0039】
(実施例7)
積層膜形成用水分散液を塗液A/塗液B/架橋剤A/添加剤A/粒子A=70/30/2.5/5/1(重量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表1に示す。
【0040】
(実施例8)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子A=100/2.5/20/20(重量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表2に示す。
【0041】
(実施例9)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子A=100/2.5/50/1(重量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表2に示す。
【0042】
(比較例1)
積層膜形成用水分散液を塗液B/架橋剤A/添加剤A/粒子A=100/2.5/20/1(重量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表2に示す。
【0043】
(比較例2)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子C=100/2.5/20/1(重量部)、各積層膜の厚みを120nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表2に示す。
【0044】
(比較例3)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子B=100/5/0/1(重量部)、二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みを100μm、各積層膜の厚みを90nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表2に示す。
【0045】
(比較例4)
積層膜形成用水分散液を塗液A/架橋剤A/添加剤A/粒子D=100/2.5/20/1(重量部)、各積層膜の厚みを20nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表2に示す。
【0046】
(比較例5)
平均粒径1.4μmのコロイダルシリカを0.03重量%を含有するPETペレットを用いたことと、積層膜を設けなかったこと以外は実施例1と同様にした。得られた積層二軸延伸フィルムの性質とレンズシートの密着力、外観、取り扱い性を表2に示す。
【0047】
表1に示したとおり、実施例1から実施例9の積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、かかるレンズシート用基材として好適であったが、表2のとおり、比較例1から比較例5の積層二軸延伸ポリエステルフィルムは密着力、光学特性、取り扱い性などにおいて、かかるレンズシート用基材として不適格であった。
【0048】
なお、実施例および比較例で用いた塗液、架橋剤、添加剤、粒子、紫外線硬化樹脂組成物は下記の通りである。
塗液A:メタクリル酸メチル(42モル%)、アクリル酸エチル(30モル%)、アクリル酸(2モル%)、N−メチロールアクリルアミド(1モル%)、エチレンオキシドの繰り返し単位が16のポリエチレングリコールモノメタクリレート(3モル%)、2−スルホエチルアクリレート(2モル%)からなるアクリル樹脂(エマルジョン径50nm)のエマルジョン溶液
塗液B:テレフタル酸(28モル%)、イソフタル酸(9モル%)、トリメリット酸(10モル%)、セバシン酸(3モル%)、エチレングリコール(15モル%)、ネオペンチルグリコール(18モル%)、1,4−ブタンジオール(17モル%)
架橋剤A:メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル社製“ニカラック”MW12LF)
添加剤A:ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(重量平均分子量1万)の水溶液
粒子A:粒子径80nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
粒子B:粒子径140nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
粒子C:粒子径200nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
粒子D:粒子径40nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
紫外線硬化樹脂組成物:ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社性NK−オリゴU−4HA)(45重量%)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(31重量%)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(20重量%)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(3重量%)を混合したもの。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、上述のディスプレイ部材に限らず、アクリル系紫外線硬化性樹脂を基材側か照射される紫外線で硬化する他のシートにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明におけるレンズシートの概略断面図の一例である。
【図2】積層二軸延伸ポリエステルフィルムの330nmから780nmにおける両面分光反射率の一例である。
【符号の説明】
【0053】
1 紫外線硬化性アクリル樹脂からなるレンズ層
2 積層膜
3 二軸延伸ポリエステルフィルム
4 積層二軸延伸ポリエステルフィルム(基材)
5 レンズシート
6 紫外線照射機
7 積層膜(屈折率1.51)の厚みが50nmである積層二軸延伸ポリエステルフィルムの分光反射率チャート
8 積層膜(屈折率1.51)の厚みが120nmである積層二軸延伸ポリエステルフィルムの分光反射率チャート
9 積層膜(屈折率1.51)の厚みが20nmである積層二軸延伸ポリエステルフィルムの分光反射率チャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂を主成分とする屈折率が1.55以下、膜厚が30nmから80nmである積層膜を両面に有し、330nmから380nmにおける分光反射率が両面で8%以下であることを特徴とするレンズシート用積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
アクリル樹脂を主成分とする積層膜のヌレ張力が50mN/m以上であることを特徴とする請求項1記載のレンズシート用積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
アクリル樹脂を主成分とする積層膜がポリスチレンスルホン酸またはその塩を5〜25重量部含むことを特徴とする請求項2記載のレンズシート用積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
レンズシートが液晶ディスプレイのプリズムシートまたはスクリーンのレンチキュラーレンズシートまたはフレネルレンズシートであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレンズシート用積層二軸延伸ポリエステルフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−137046(P2006−137046A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327415(P2004−327415)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】