レンズ測定機及びその制御方法
【課題】 レンズ特性(分光透過率特性と絞り特性)の測定と書き込み作業を効率化することのできるレンズ測定機及びその制御方法を提供する。
【解決手段】 被検レンズ(11)を装着するマウント部(1)と、光束を発する光源(2)と、被検レンズを介して入射した光束、及び、被検レンズを介さずに入射した光束について、波長毎の光強度を測定する測光手段(3)と、測光出力に基づいて分光透過率を検出する分光透過率検出手段(6b)と、波長毎の光強度とカメラボディ内に設けられた他の測光手段の分光特性とから輝度データを算出する輝度算出手段(6c)と、被検レンズ内の絞りを複数の位置に移動させて輝度データを測定して実効絞り値を検出する実行絞り値検出手段(6d)と、分光透過率と実効絞り値を、被検レンズ内に設けられた記憶手段に記憶させる記憶制御手段(6e)とを具備するレンズ測定機である。
【解決手段】 被検レンズ(11)を装着するマウント部(1)と、光束を発する光源(2)と、被検レンズを介して入射した光束、及び、被検レンズを介さずに入射した光束について、波長毎の光強度を測定する測光手段(3)と、測光出力に基づいて分光透過率を検出する分光透過率検出手段(6b)と、波長毎の光強度とカメラボディ内に設けられた他の測光手段の分光特性とから輝度データを算出する輝度算出手段(6c)と、被検レンズ内の絞りを複数の位置に移動させて輝度データを測定して実効絞り値を検出する実行絞り値検出手段(6d)と、分光透過率と実効絞り値を、被検レンズ内に設けられた記憶手段に記憶させる記憶制御手段(6e)とを具備するレンズ測定機である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの特性データを測定するための技術に関し、特に分光透過率と絞り特性を測定するためのレンズ測定機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影レンズは、完全な無色透明ではなく、レンズの素材は固有の色(固有の分光透過率)を有し、またコーティングによっても分光透過率が変化する。そこで、電子カメラにおいて、撮影レンズの分光透過率特性などの必要な情報をレンズに持たせ、その情報に基づいて、固体撮像素子で捉えたカラー画像を補正する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−39363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、レンズの特性には、上述の分光透過率特性とともに絞り特性がある。この絞り特性は、絞り駆動用アクチュエータの駆動量と絞り値の関係を示すもので、レンズ毎に異なる値を持つ。
【0004】
一般に、CCDなどの固体撮像素子はフィルムに比較してラチチュードが狭いため、露光量、即ち絞り値とシャッタ秒時値を正確に制御することが必要である。従って、上述の絞り特性に関する情報もレンズ毎に持つ必要がある。
【0005】
しかしながら、これらのレンズ特性を測定し、その情報をレンズに組み込む作業は時間を要する作業であり、また、これらのレンズ特性の測定は独立して個別に行われている。このためカメラの組立ラインの効率を向上させるためには、これらのレンズ特性の測定と情報の組み込み作業の効率化が必要である。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであって、レンズ特性(分光透過率特性と絞り特性)の測定と書き込み作業を効率化することのできるレンズ測定機及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る請求項1に記載のレンズ測定機は、被検レンズを装着するためのマウント部と、測定用光束を発する光源と、上記マウント部に装着された上記被検レンズを介して入射した上記測定用光束について、及び、上記被検レンズを介さずに入射した上記測定用光束について、波長毎の光強度を測定する測光手段と、上記それぞれの場合における上記測光手段の出力データに基づいて、上記被検レンズの分光透過率を検出する分光透過率検出手段と、上記測光手段の出力と、上記被検レンズが装着されるカメラボディ内に設けられた他の測光手段の分光特性とから輝度データを算出する輝度算出手段と、上記マウント部に装着された上記被検レンズ内に設けられた絞りを、開放位置を含む複数の位置に移動させ、そのそれぞれの位置における上記輝度データに基づいて、実効絞り値を検出する実行絞り値検出手段と、上記分光透過率検出手段の出力に基づくデータと、上記実効絞り値検出手段の出力に基づく絞り位置と実効絞り値との対応データを、上記被検レンズ内に設けられた記憶手段に記憶させる記憶制御手段とを具備する。
【0008】
また本発明に係る請求項2に記載のレンズ測定機は、上記記載の発明であるレンズ測定機において、上記分光透過率検出手段は、上記被検レンズを介して入射した上記測定光束の分光データと、上記被検レンズを介さずに入射した上記測定光束の分光データの比演算と、その比演算結果に対する正規化演算を行って上記分光透過率を出力する。
【0009】
また本発明に係る請求項3に記載のレンズ測定機は、上記記載の発明であるレンズ測定機において、上記実効絞り値検出手段は、以下の式によって上記実効絞り値(AVR)を演算する。
【0010】
AVR = AV0 − log2{S(P)/S(0)}
AV0:上記被検レンズの設計上の開放絞り値
S(P):絞り込み位置Pにおける輝度データ
S(0):開放位置における輝度データ
また本発明に係る請求項4に記載のレンズ測定機の制御方法は、入射光束の分光特性データを出力可能な分光器を具備するレンズ測定機の制御方法において、被検レンズを介さずに分光特性データを得るステップと、上記被検レンズを介して分光特性データを得るステップと、それぞれの分光特性データを比較して分光透過率データを演算するステップと、上記被検レンズの絞りを開放位置を含む複数の予定絞り値に設定し、それぞれの位置における上記分光器の出力から、それぞれの絞り値における輝度データを得るステップと、上記予定絞り値と上記それぞれの絞り値における輝度データとの対応データを作成するステップと、上記分光透過率データと、上記対応データとを上記被検レンズ内の記憶手段に記憶させるステップとを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレンズ測定機を用いれば、レンズ特性(分光透過率特性と絞り特性)の測定とそれらの情報の書き込み作業を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[電子カメラの構成及び動作]
本発明の実施の形態に係るレンズ測定機を説明する前に、電子カメラの構成及び動作について説明する。図1は、電子カメラの構成を示すブロック図である。
【0013】
電子カメラは、交換レンズユニット10と、ボディーユニット30とを備えている。そして、交換レンズユニット10は、レンズマウント8とボディーマウント31を介して、ボディーユニット30に着脱可能に構成されている。
【0014】
交換レンズユニット10は、撮影レンズ11、レンズモータ12、レンズ駆動機構13、レンズモータ駆動回路14、フォトインタラプタ15、絞りモータ16、絞り駆動機構17、絞りモータ駆動回路18、絞り20、切片21、位置検知基板22及びマイクロプロセッサ25を備えている。
【0015】
レンズモータ12は、DCモータで構成され、レンズ駆動機構13を介して撮影レンズ11の位置を前後に移動する。このレンズモータ12の回転量は、レンズモータ12の回転軸に設けられたフォトインタラプタ15によってパルス信号に変換される。また、撮影レンズ11の基準位置は、切片21と位置検知基板22によって構成される回路によって検知される。
【0016】
絞りモータ16は、ステッピングモータで構成され、絞りモータ駆動回路18から入力されるパルス信号に従って回転し、絞り駆動機構17を介して絞り20の開度を制御する。
【0017】
マイクロプロセッサ25は、交換レンズユニット10を統括的に制御する。即ち、レンズモータ駆動回路14、絞りモータ駆動回路18に駆動信号を出力すると共に、フォトインタラプタ15からレンズモータ12の回転量を示すパルス信号を受取り、また撮像レンズ11の位置を検出する。さらに、マイクロプロセッサ25は、ボディーユニット30と信号授受を行って、交換レンズユニット10の各部の動作を制御するための情報を受信する。
【0018】
ボディーユニット30には、クイックリターンミラー32、シャッタ33、撮像素子34、撮像素子IF回路35、制御部36、画像表示部37、データ記録部38、操作SW39、記憶装置40、ペンタプリズム41、接眼レンズ42、測光回路43、サブミラー44、AFセンサ45、焦点検出回路46、シャッタ駆動機構47及びミラー駆動機構48が設けられている。
【0019】
クイックリターンミラー32は、非撮影動作時において被写体像をペンタプリズム41とAFセンサに導く。撮像素子34は、例えばCCDを用いて被写体の光像を電気信号である画像データに変換する。制御部36は、電子カメラの動作を統括的に制御すると共に、画像データに種々の画像処理を施す。また、交換レンズユニット10内のマイクロプロセッサ25との通信により当該撮影レンズ11のレンズ特性情報を獲得する。
【0020】
画像表示部37は、画像データを変換して液晶モニタなどに表示する。データ記録部38は、スマートメディアなどの記録媒体に画像データを記録する。操作SW39は、撮影者が電子カメラを操作するためのSWである。
【0021】
測光回路43は、ペンタプリズム41からの被写体光像の一部を光電変換素子(不図示)によって受光して輝度を測定する。制御部36はこの測定データに基づいて露出条件を算出する。AFセンサ45は、サブミラー44によって分割された被写体像を受光する。焦点検出回路46は、AFセンサ44の出力に基づいて合焦状態を検出する。
【0022】
続いて、電子カメラの動作について説明する。
【0023】
撮影者が、操作SW39よりレリーズボタン(不図示)を一段階押し込むと、制御部36は、測光回路43で測定した被写体輝度のデータに基づいて適正な露出を得るための絞り値を計算し、その結果をマイクロプロセッサ25に送信する。マイクロプロセッサ25は、撮影レンズ11の絞り特性に基づいて所望の絞りになるように絞りモータ16を駆動するパルス数を制御する。
【0024】
また、制御部36は、焦点検出回路46の検出結果から、合焦のための撮影レンズ11の駆動信号をマイクロプロセッサ25に送信する。マイクロプロセッサ25は、レンズモータ駆動回路14を介してレンズモータ12を回転して撮影レンズ11を合焦位置に移動させる。
【0025】
撮影者が、操作SW39よりレリーズボタン(不図示)を二段階押し込むと、制御部36はクイックリターンミラー32とシャッタ33を動作させて被写体の光像を撮像素子34に導き、撮像素子34から得られる画像データに画像処理を施す。この際、制御部36は、予めマイクロプロセッサ25から受信した撮像レンズ11の分光透過率特性に基づいて色補正等の処理を施す。
【0026】
[レンズ測定機の構成及び動作]
次に、本発明の実施の形態に係るレンズ測定機について説明する。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態に係るレンズ測定機の構成を示す図である。
【0028】
レンズ測定機は、レンズ保持冶具1、輝度箱2、分光器3、光ファイバ4、CCDインターフェース回路5、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という)6及び通信インターフェース回路7で構成されている。
【0029】
レンズ保持冶具1は、レンズマウント8を介して上述のレンズ交換ユニット10を保持する。輝度箱2は、レンズ特性を測定するための光源を格納する。分光器3には、スリット3a、コリメイトミラー3b、回折格子3c、フォーカスミラー3d及びCCDラインセンサ3eが設けられており、光ファイバ4を介して導かれる光の分光強度を測定する。CCDインターフェース回路5は、測定した分光強度をPC6に受け渡す。PC6は、分光器3の測定値に基づいて分光透過特性を算出し通信インターフェース7を介して交換レンズユニット10に情報を送信する。更に、PC6は、交換レンズユニット10から受信した絞り値と分光透過特性とに基づいてレンズの絞り特性を算出し、通信インターフェース7を介して交換レンズユニット10に当該情報を送信する。
【0030】
交換レンズユニット10の構成は、図1で説明したものと同じであるため、その詳細の説明は省略し、以下同一機能を示す部分には同一の符号を付して参照する。交換レンズユニット10内のマイクロプロセッサ25は、PC6と信号授受を行って、PC6より送信されたレンズ特性データを内部の記憶手段であるフラッシュロム25aに記憶する機能を備えている。
【0031】
図3は、PC6の構成を示す図である。
【0032】
PC6は、入出力制御部6a、分光透過率検出部6b、輝度算出部6c、実効絞り値算出部6d及び記憶制御部6eを備えている。
【0033】
入出力制御部6aは、レンズ測定機との間で情報の授受を行う情報インターフェースである。分光透過率検出部6bは、分光器3の測定値に基づいて撮影レンズ11の分光透過率を演算する。輝度算出部6cは、分光器3の測定値に基づいて輝度データを算出する。実効絞り値算出部6dは、輝度データと、交換レンズユニット10内の絞り20の絞り値とから実効絞り値を算出する。ここで、実効絞り値とは、設計値ではなく、撮像レンズ11が実際に持っている絞り特性値のことをいう。記憶制御部6eは、レンズ特性値を、交換レンズユニット10内のマイクロプロセッサ25に記憶させる。
【0034】
次に、レンズ測定機の動作について説明する。
【0035】
図4は、本実施の形態に係るレンズ測定機を用いたレンズ特性の測定・組み込み作業の概略の手順を示すフロー図であり、図5、6は、PCのレンズ特性の測定・組み込み処理手順を示すフロー図である。以下、図4乃至6を参照しつつレンズ測定機の動作について説明する。
【0036】
カメラ組み立てラインのオペレータは、レンズ交換ユニット10を装備しない状態で、PC6内の分光透過率検出部6bを起動して、輝度箱2の光源の分光感度データを取り込む(T100)。
【0037】
光源の分光感度特性の測定が指示された場合(S200 Yes)、分光透過率検出部6bは、分光器3からCCDラインセンサ3eのデータを読出し(S203)、そのデータを撮影レンズ11の分光透過率を測定する際に必要な基準分光データとして記憶する(S204)。
【0038】
次にオペレータは、交換レンズユニット10をレンズ保持冶具1に取り付け(T101)、PC6内の分光透過率検出部6bを起動して分光透過率を算出し、その結果を交換レンズユニット10内に記憶させる(T102)。
【0039】
光源の分光透過率特性の測定が指示された場合(S201 Yes)、分光透過率検出部6bは、撮影レンズを基準位置に移動させる(S210)。即ち、マイクロプロセッサ25に対して撮影レンズを基準位置へ移動させる指示を出力する。マイクロプロセッサ25は、レンズモータ12を駆動して撮影レンズ11を移動させ、切片21が位置検知基板22上の所定の位置に移動した時点で撮影レンズ11の移動を停止する。
【0040】
そして、分光透過率検出部6bは、絞りを開放位置へ設定する(S211)。即ち、マイクロプロセッサ25に対して絞り20を開放させる指示を出力する。マイクロプロセッサ25は、絞りモータ16にパルスを与えて回転させ、絞りを全開とする。
【0041】
続いて、分光透過率検出部6bは、分光器3からCCDラインセンサ3eのデータを読出し(S212)、CCDラインセンサ3eのデータと、ステップS204で記憶した基準分光データとの比を算出して分光透過率を算出する(S213)。
【0042】
図7は、分光特性を示す図である。図7において、Ref(n)は、輝度箱2の光源の分光特性を示し、Lns(n)は、撮影レンズ11を通過した光の分光特性を示している。尚、nはCCDラインセンサ3eの受光エレメント番号、即ち、光の波長と対応した値である。
【0043】
図8は、撮影レンズの分光透過率特性を示す図である。分光透過率T(n)は、式(1)で表わされる。
T(n)= Lns(n)/Ref(n) …式(1)
そして、分光透過率検出部6bは、図8に示す分光透過率T(n)の曲線を、分光透過率表の形式に変換する。図9は、分光透過率表の例を示す図である。この表では、波長の刻みを10nmとし、透過率はその最大値(Tmax)をHex表示で#FFとする規格化した値(出力比)で表わしている。
【0044】
次に、PC6では記憶制御部6eが起動して算出された分光透過率の表をマイクロプロセッサ25に送信して、内部のフラッシュロム25aに記憶させる(S214)。
【0045】
次にオペレータは、PC6内の輝度算出部6cと実効絞り値算出部6dを起動して実効絞り値を算出し、その結果を交換レンズユニット10内に記憶させる(T103)。
【0046】
実効絞り値の測定が指示された場合(S202 Yes)、輝度算出部6cは、撮影レンズを基準位置に移動させる(S220)。即ち、マイクロプロセッサ25に対して撮影レンズを基準位置へ移動させる指示を出力する。マイクロプロセッサ25は、レンズモータ12を駆動して撮影レンズ11を移動させ、切片21が位置検知基板22上の所定の位置に移動した時点で撮影レンズ11の移動を停止する。
【0047】
そして、輝度算出部6cは、絞りを開放位置へ設定する(S221)。即ち、マイクロプロセッサ25に対して絞り20を開放させる指示を出力する。マイクロプロセッサ25は、絞りモータ16にパルスを与えて回転させ、絞りを全開とする。
【0048】
続いて、輝度算出部6cは、分光器3からCCDラインセンサ3eのデータを読出し(S222)、CCDラインセンサ3eのデータを測光センサの特性に基いて補正する(S223)。測光センサは、電子カメラの測光回路43内に設置されているフォトダイオード等の光電変換素子のことである。
【0049】
図10の(A)は、撮影レンズの分光特性と補正曲線を示す図である。補正曲線α(n)は、測光センサの感度特性を用いる。補正された分光特性LNS(n)を、式(2)に従って計算する。
【0050】
LNS(n)= Lns(n)×α(n) …式(2)
そして、輝度算出部6cは、補正された分光特性から輝度データを算出してPC6内部の記憶装置40に記憶する(S224)。
【0051】
図10の(B)は、輝度データの算出方法を示す図である。輝度データS(pls)は、補正された分光特性LNS(n)を全波長域で積分した値である。即ち、図10の(B)において、曲線LNS(n)の内部の面積として表わされる。ここで、plsは、絞りを開放状態から絞っていくときの絞りモータ16に与えるパルス数を示している。従って、S(0)は絞り開放状態における輝度を表わしている。
【0052】
絞り20がまだ最大位置まで絞られていない場合(S225 No)は、絞りモータ16を所定量駆動して、絞り20を変化させた状態で、ステップS222からステップS224の処理を繰り返して実行する。図10の(C)は、絞りを変化させた後の輝度データを示す図である。絞りを変化させることによって、輝度データS(pls)が減少している様子が示されている。
【0053】
絞り20が既に最大位置まで絞られている場合(S225 Yes)は、絞りモータ16を所定量駆動して絞り20を基準位置まで開く(S227)。
【0054】
次に、実効絞り値算出部6dが起動して、輝度データに基づいて実効絞り値を算出し、絞りモータ16の駆動パルス数と実効絞り値の対応表を作成する(S228)。
【0055】
実効絞り値は上述の輝度データを用いて式(3)で表わされる。
実効絞り値=AV0 −log2{S(pls)/S(0)} …式(3)
ここで、AV0は、絞り開放時の絞り値であり、設計値を採用する。
【0056】
尚、式(3)は、駆動パルス数plsに代えて上位の概念である絞り込み位置Pを用いて式(4)で表わすこともできる。
【0057】
実効絞り値= AV0 − log2{S(P)/S(0)} …式(4)
AV0:被検レンズの設計上の開放絞り値
S(P):絞り込み位置Pにおける輝度データ
S(0):開放位置における輝度データ
図11は、絞りモータ16の駆動パルス数と実効絞り値の対応表を示す図である。図11の「絞り値の変化」欄には、式(3)の右辺第2項のlog2{S(pls)/S(0)}を計算した値を記載している。また、AV0は、F=5.6のレンズの設計値(=5)を採用している。
【0058】
そして、PC6では記憶制御部6eが起動して絞りモータ16の駆動パルス数とそれに対応して算出された実効絞り値をマイクロプロセッサ25に送信して、内部のフラッシュロム25aに記憶させる(S229)。
【0059】
以上の動作により、分光透過率と実効絞り値のレンズ特性の関する情報をレンズに格納した後、オペレータは、それぞれの値が規格値内に入っているかどうかをPC6の表示装置(不図示)に表示された値で判断する(T105、T106)。そして、いずれかの値が規格値を外れている場合(T105、T106 No)は、そのレンズを組立工程へ返却する(T107)。共に規格値内にある場合(T105、T106 Yes)は、そのレンズを次の調整工程へ送出す(T108)。
【0060】
本実施の形態によれば、レンズ特性の測定作業と、そのレンズ特性情報をレンズに組み込む作業とを自動化することができるため、作業者の負担を軽減し作業の効率を高めることができる。
【0061】
また、これらのレンズ特性の測定を一連の作業として実施できるためカメラの組立ラインの効率を向上させることができる。
【0062】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】電子カメラの構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係るレンズ測定機の構成を示す図。
【図3】PCの構成を示す図。
【図4】レンズ測定機を用いたレンズ特性の測定・組み込み作業の概略の手順を示すフロー図。
【図5】PCのレンズ特性の測定・組み込み手順を示すフロー図。
【図6】PCのレンズ特性の測定・組み込み手順を示すフロー図。
【図7】分光特性を示す図。
【図8】撮影レンズの分光透過率特性を示す図。
【図9】分光透過率表を示す図。
【図10】輝度データの算出を説明する図。
【図11】絞りモータの駆動パルス数と実効絞り値の対応表を示す図。
【符号の説明】
【0064】
1…レンズ保持冶具、2…輝度箱、3…分光器、3e…CCDランイセンサ、6…PC、6b…分光透過率検出部、6c…輝度算出部、6d…実効絞り値算出部、6e…記憶制御部、11…撮影レンズ、12…レンズモータ、16…絞りモータ、20…絞り、25…マイクロコンピュータ、25a…フラッシュロム、43…測光回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの特性データを測定するための技術に関し、特に分光透過率と絞り特性を測定するためのレンズ測定機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影レンズは、完全な無色透明ではなく、レンズの素材は固有の色(固有の分光透過率)を有し、またコーティングによっても分光透過率が変化する。そこで、電子カメラにおいて、撮影レンズの分光透過率特性などの必要な情報をレンズに持たせ、その情報に基づいて、固体撮像素子で捉えたカラー画像を補正する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−39363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、レンズの特性には、上述の分光透過率特性とともに絞り特性がある。この絞り特性は、絞り駆動用アクチュエータの駆動量と絞り値の関係を示すもので、レンズ毎に異なる値を持つ。
【0004】
一般に、CCDなどの固体撮像素子はフィルムに比較してラチチュードが狭いため、露光量、即ち絞り値とシャッタ秒時値を正確に制御することが必要である。従って、上述の絞り特性に関する情報もレンズ毎に持つ必要がある。
【0005】
しかしながら、これらのレンズ特性を測定し、その情報をレンズに組み込む作業は時間を要する作業であり、また、これらのレンズ特性の測定は独立して個別に行われている。このためカメラの組立ラインの効率を向上させるためには、これらのレンズ特性の測定と情報の組み込み作業の効率化が必要である。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであって、レンズ特性(分光透過率特性と絞り特性)の測定と書き込み作業を効率化することのできるレンズ測定機及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る請求項1に記載のレンズ測定機は、被検レンズを装着するためのマウント部と、測定用光束を発する光源と、上記マウント部に装着された上記被検レンズを介して入射した上記測定用光束について、及び、上記被検レンズを介さずに入射した上記測定用光束について、波長毎の光強度を測定する測光手段と、上記それぞれの場合における上記測光手段の出力データに基づいて、上記被検レンズの分光透過率を検出する分光透過率検出手段と、上記測光手段の出力と、上記被検レンズが装着されるカメラボディ内に設けられた他の測光手段の分光特性とから輝度データを算出する輝度算出手段と、上記マウント部に装着された上記被検レンズ内に設けられた絞りを、開放位置を含む複数の位置に移動させ、そのそれぞれの位置における上記輝度データに基づいて、実効絞り値を検出する実行絞り値検出手段と、上記分光透過率検出手段の出力に基づくデータと、上記実効絞り値検出手段の出力に基づく絞り位置と実効絞り値との対応データを、上記被検レンズ内に設けられた記憶手段に記憶させる記憶制御手段とを具備する。
【0008】
また本発明に係る請求項2に記載のレンズ測定機は、上記記載の発明であるレンズ測定機において、上記分光透過率検出手段は、上記被検レンズを介して入射した上記測定光束の分光データと、上記被検レンズを介さずに入射した上記測定光束の分光データの比演算と、その比演算結果に対する正規化演算を行って上記分光透過率を出力する。
【0009】
また本発明に係る請求項3に記載のレンズ測定機は、上記記載の発明であるレンズ測定機において、上記実効絞り値検出手段は、以下の式によって上記実効絞り値(AVR)を演算する。
【0010】
AVR = AV0 − log2{S(P)/S(0)}
AV0:上記被検レンズの設計上の開放絞り値
S(P):絞り込み位置Pにおける輝度データ
S(0):開放位置における輝度データ
また本発明に係る請求項4に記載のレンズ測定機の制御方法は、入射光束の分光特性データを出力可能な分光器を具備するレンズ測定機の制御方法において、被検レンズを介さずに分光特性データを得るステップと、上記被検レンズを介して分光特性データを得るステップと、それぞれの分光特性データを比較して分光透過率データを演算するステップと、上記被検レンズの絞りを開放位置を含む複数の予定絞り値に設定し、それぞれの位置における上記分光器の出力から、それぞれの絞り値における輝度データを得るステップと、上記予定絞り値と上記それぞれの絞り値における輝度データとの対応データを作成するステップと、上記分光透過率データと、上記対応データとを上記被検レンズ内の記憶手段に記憶させるステップとを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレンズ測定機を用いれば、レンズ特性(分光透過率特性と絞り特性)の測定とそれらの情報の書き込み作業を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[電子カメラの構成及び動作]
本発明の実施の形態に係るレンズ測定機を説明する前に、電子カメラの構成及び動作について説明する。図1は、電子カメラの構成を示すブロック図である。
【0013】
電子カメラは、交換レンズユニット10と、ボディーユニット30とを備えている。そして、交換レンズユニット10は、レンズマウント8とボディーマウント31を介して、ボディーユニット30に着脱可能に構成されている。
【0014】
交換レンズユニット10は、撮影レンズ11、レンズモータ12、レンズ駆動機構13、レンズモータ駆動回路14、フォトインタラプタ15、絞りモータ16、絞り駆動機構17、絞りモータ駆動回路18、絞り20、切片21、位置検知基板22及びマイクロプロセッサ25を備えている。
【0015】
レンズモータ12は、DCモータで構成され、レンズ駆動機構13を介して撮影レンズ11の位置を前後に移動する。このレンズモータ12の回転量は、レンズモータ12の回転軸に設けられたフォトインタラプタ15によってパルス信号に変換される。また、撮影レンズ11の基準位置は、切片21と位置検知基板22によって構成される回路によって検知される。
【0016】
絞りモータ16は、ステッピングモータで構成され、絞りモータ駆動回路18から入力されるパルス信号に従って回転し、絞り駆動機構17を介して絞り20の開度を制御する。
【0017】
マイクロプロセッサ25は、交換レンズユニット10を統括的に制御する。即ち、レンズモータ駆動回路14、絞りモータ駆動回路18に駆動信号を出力すると共に、フォトインタラプタ15からレンズモータ12の回転量を示すパルス信号を受取り、また撮像レンズ11の位置を検出する。さらに、マイクロプロセッサ25は、ボディーユニット30と信号授受を行って、交換レンズユニット10の各部の動作を制御するための情報を受信する。
【0018】
ボディーユニット30には、クイックリターンミラー32、シャッタ33、撮像素子34、撮像素子IF回路35、制御部36、画像表示部37、データ記録部38、操作SW39、記憶装置40、ペンタプリズム41、接眼レンズ42、測光回路43、サブミラー44、AFセンサ45、焦点検出回路46、シャッタ駆動機構47及びミラー駆動機構48が設けられている。
【0019】
クイックリターンミラー32は、非撮影動作時において被写体像をペンタプリズム41とAFセンサに導く。撮像素子34は、例えばCCDを用いて被写体の光像を電気信号である画像データに変換する。制御部36は、電子カメラの動作を統括的に制御すると共に、画像データに種々の画像処理を施す。また、交換レンズユニット10内のマイクロプロセッサ25との通信により当該撮影レンズ11のレンズ特性情報を獲得する。
【0020】
画像表示部37は、画像データを変換して液晶モニタなどに表示する。データ記録部38は、スマートメディアなどの記録媒体に画像データを記録する。操作SW39は、撮影者が電子カメラを操作するためのSWである。
【0021】
測光回路43は、ペンタプリズム41からの被写体光像の一部を光電変換素子(不図示)によって受光して輝度を測定する。制御部36はこの測定データに基づいて露出条件を算出する。AFセンサ45は、サブミラー44によって分割された被写体像を受光する。焦点検出回路46は、AFセンサ44の出力に基づいて合焦状態を検出する。
【0022】
続いて、電子カメラの動作について説明する。
【0023】
撮影者が、操作SW39よりレリーズボタン(不図示)を一段階押し込むと、制御部36は、測光回路43で測定した被写体輝度のデータに基づいて適正な露出を得るための絞り値を計算し、その結果をマイクロプロセッサ25に送信する。マイクロプロセッサ25は、撮影レンズ11の絞り特性に基づいて所望の絞りになるように絞りモータ16を駆動するパルス数を制御する。
【0024】
また、制御部36は、焦点検出回路46の検出結果から、合焦のための撮影レンズ11の駆動信号をマイクロプロセッサ25に送信する。マイクロプロセッサ25は、レンズモータ駆動回路14を介してレンズモータ12を回転して撮影レンズ11を合焦位置に移動させる。
【0025】
撮影者が、操作SW39よりレリーズボタン(不図示)を二段階押し込むと、制御部36はクイックリターンミラー32とシャッタ33を動作させて被写体の光像を撮像素子34に導き、撮像素子34から得られる画像データに画像処理を施す。この際、制御部36は、予めマイクロプロセッサ25から受信した撮像レンズ11の分光透過率特性に基づいて色補正等の処理を施す。
【0026】
[レンズ測定機の構成及び動作]
次に、本発明の実施の形態に係るレンズ測定機について説明する。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態に係るレンズ測定機の構成を示す図である。
【0028】
レンズ測定機は、レンズ保持冶具1、輝度箱2、分光器3、光ファイバ4、CCDインターフェース回路5、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という)6及び通信インターフェース回路7で構成されている。
【0029】
レンズ保持冶具1は、レンズマウント8を介して上述のレンズ交換ユニット10を保持する。輝度箱2は、レンズ特性を測定するための光源を格納する。分光器3には、スリット3a、コリメイトミラー3b、回折格子3c、フォーカスミラー3d及びCCDラインセンサ3eが設けられており、光ファイバ4を介して導かれる光の分光強度を測定する。CCDインターフェース回路5は、測定した分光強度をPC6に受け渡す。PC6は、分光器3の測定値に基づいて分光透過特性を算出し通信インターフェース7を介して交換レンズユニット10に情報を送信する。更に、PC6は、交換レンズユニット10から受信した絞り値と分光透過特性とに基づいてレンズの絞り特性を算出し、通信インターフェース7を介して交換レンズユニット10に当該情報を送信する。
【0030】
交換レンズユニット10の構成は、図1で説明したものと同じであるため、その詳細の説明は省略し、以下同一機能を示す部分には同一の符号を付して参照する。交換レンズユニット10内のマイクロプロセッサ25は、PC6と信号授受を行って、PC6より送信されたレンズ特性データを内部の記憶手段であるフラッシュロム25aに記憶する機能を備えている。
【0031】
図3は、PC6の構成を示す図である。
【0032】
PC6は、入出力制御部6a、分光透過率検出部6b、輝度算出部6c、実効絞り値算出部6d及び記憶制御部6eを備えている。
【0033】
入出力制御部6aは、レンズ測定機との間で情報の授受を行う情報インターフェースである。分光透過率検出部6bは、分光器3の測定値に基づいて撮影レンズ11の分光透過率を演算する。輝度算出部6cは、分光器3の測定値に基づいて輝度データを算出する。実効絞り値算出部6dは、輝度データと、交換レンズユニット10内の絞り20の絞り値とから実効絞り値を算出する。ここで、実効絞り値とは、設計値ではなく、撮像レンズ11が実際に持っている絞り特性値のことをいう。記憶制御部6eは、レンズ特性値を、交換レンズユニット10内のマイクロプロセッサ25に記憶させる。
【0034】
次に、レンズ測定機の動作について説明する。
【0035】
図4は、本実施の形態に係るレンズ測定機を用いたレンズ特性の測定・組み込み作業の概略の手順を示すフロー図であり、図5、6は、PCのレンズ特性の測定・組み込み処理手順を示すフロー図である。以下、図4乃至6を参照しつつレンズ測定機の動作について説明する。
【0036】
カメラ組み立てラインのオペレータは、レンズ交換ユニット10を装備しない状態で、PC6内の分光透過率検出部6bを起動して、輝度箱2の光源の分光感度データを取り込む(T100)。
【0037】
光源の分光感度特性の測定が指示された場合(S200 Yes)、分光透過率検出部6bは、分光器3からCCDラインセンサ3eのデータを読出し(S203)、そのデータを撮影レンズ11の分光透過率を測定する際に必要な基準分光データとして記憶する(S204)。
【0038】
次にオペレータは、交換レンズユニット10をレンズ保持冶具1に取り付け(T101)、PC6内の分光透過率検出部6bを起動して分光透過率を算出し、その結果を交換レンズユニット10内に記憶させる(T102)。
【0039】
光源の分光透過率特性の測定が指示された場合(S201 Yes)、分光透過率検出部6bは、撮影レンズを基準位置に移動させる(S210)。即ち、マイクロプロセッサ25に対して撮影レンズを基準位置へ移動させる指示を出力する。マイクロプロセッサ25は、レンズモータ12を駆動して撮影レンズ11を移動させ、切片21が位置検知基板22上の所定の位置に移動した時点で撮影レンズ11の移動を停止する。
【0040】
そして、分光透過率検出部6bは、絞りを開放位置へ設定する(S211)。即ち、マイクロプロセッサ25に対して絞り20を開放させる指示を出力する。マイクロプロセッサ25は、絞りモータ16にパルスを与えて回転させ、絞りを全開とする。
【0041】
続いて、分光透過率検出部6bは、分光器3からCCDラインセンサ3eのデータを読出し(S212)、CCDラインセンサ3eのデータと、ステップS204で記憶した基準分光データとの比を算出して分光透過率を算出する(S213)。
【0042】
図7は、分光特性を示す図である。図7において、Ref(n)は、輝度箱2の光源の分光特性を示し、Lns(n)は、撮影レンズ11を通過した光の分光特性を示している。尚、nはCCDラインセンサ3eの受光エレメント番号、即ち、光の波長と対応した値である。
【0043】
図8は、撮影レンズの分光透過率特性を示す図である。分光透過率T(n)は、式(1)で表わされる。
T(n)= Lns(n)/Ref(n) …式(1)
そして、分光透過率検出部6bは、図8に示す分光透過率T(n)の曲線を、分光透過率表の形式に変換する。図9は、分光透過率表の例を示す図である。この表では、波長の刻みを10nmとし、透過率はその最大値(Tmax)をHex表示で#FFとする規格化した値(出力比)で表わしている。
【0044】
次に、PC6では記憶制御部6eが起動して算出された分光透過率の表をマイクロプロセッサ25に送信して、内部のフラッシュロム25aに記憶させる(S214)。
【0045】
次にオペレータは、PC6内の輝度算出部6cと実効絞り値算出部6dを起動して実効絞り値を算出し、その結果を交換レンズユニット10内に記憶させる(T103)。
【0046】
実効絞り値の測定が指示された場合(S202 Yes)、輝度算出部6cは、撮影レンズを基準位置に移動させる(S220)。即ち、マイクロプロセッサ25に対して撮影レンズを基準位置へ移動させる指示を出力する。マイクロプロセッサ25は、レンズモータ12を駆動して撮影レンズ11を移動させ、切片21が位置検知基板22上の所定の位置に移動した時点で撮影レンズ11の移動を停止する。
【0047】
そして、輝度算出部6cは、絞りを開放位置へ設定する(S221)。即ち、マイクロプロセッサ25に対して絞り20を開放させる指示を出力する。マイクロプロセッサ25は、絞りモータ16にパルスを与えて回転させ、絞りを全開とする。
【0048】
続いて、輝度算出部6cは、分光器3からCCDラインセンサ3eのデータを読出し(S222)、CCDラインセンサ3eのデータを測光センサの特性に基いて補正する(S223)。測光センサは、電子カメラの測光回路43内に設置されているフォトダイオード等の光電変換素子のことである。
【0049】
図10の(A)は、撮影レンズの分光特性と補正曲線を示す図である。補正曲線α(n)は、測光センサの感度特性を用いる。補正された分光特性LNS(n)を、式(2)に従って計算する。
【0050】
LNS(n)= Lns(n)×α(n) …式(2)
そして、輝度算出部6cは、補正された分光特性から輝度データを算出してPC6内部の記憶装置40に記憶する(S224)。
【0051】
図10の(B)は、輝度データの算出方法を示す図である。輝度データS(pls)は、補正された分光特性LNS(n)を全波長域で積分した値である。即ち、図10の(B)において、曲線LNS(n)の内部の面積として表わされる。ここで、plsは、絞りを開放状態から絞っていくときの絞りモータ16に与えるパルス数を示している。従って、S(0)は絞り開放状態における輝度を表わしている。
【0052】
絞り20がまだ最大位置まで絞られていない場合(S225 No)は、絞りモータ16を所定量駆動して、絞り20を変化させた状態で、ステップS222からステップS224の処理を繰り返して実行する。図10の(C)は、絞りを変化させた後の輝度データを示す図である。絞りを変化させることによって、輝度データS(pls)が減少している様子が示されている。
【0053】
絞り20が既に最大位置まで絞られている場合(S225 Yes)は、絞りモータ16を所定量駆動して絞り20を基準位置まで開く(S227)。
【0054】
次に、実効絞り値算出部6dが起動して、輝度データに基づいて実効絞り値を算出し、絞りモータ16の駆動パルス数と実効絞り値の対応表を作成する(S228)。
【0055】
実効絞り値は上述の輝度データを用いて式(3)で表わされる。
実効絞り値=AV0 −log2{S(pls)/S(0)} …式(3)
ここで、AV0は、絞り開放時の絞り値であり、設計値を採用する。
【0056】
尚、式(3)は、駆動パルス数plsに代えて上位の概念である絞り込み位置Pを用いて式(4)で表わすこともできる。
【0057】
実効絞り値= AV0 − log2{S(P)/S(0)} …式(4)
AV0:被検レンズの設計上の開放絞り値
S(P):絞り込み位置Pにおける輝度データ
S(0):開放位置における輝度データ
図11は、絞りモータ16の駆動パルス数と実効絞り値の対応表を示す図である。図11の「絞り値の変化」欄には、式(3)の右辺第2項のlog2{S(pls)/S(0)}を計算した値を記載している。また、AV0は、F=5.6のレンズの設計値(=5)を採用している。
【0058】
そして、PC6では記憶制御部6eが起動して絞りモータ16の駆動パルス数とそれに対応して算出された実効絞り値をマイクロプロセッサ25に送信して、内部のフラッシュロム25aに記憶させる(S229)。
【0059】
以上の動作により、分光透過率と実効絞り値のレンズ特性の関する情報をレンズに格納した後、オペレータは、それぞれの値が規格値内に入っているかどうかをPC6の表示装置(不図示)に表示された値で判断する(T105、T106)。そして、いずれかの値が規格値を外れている場合(T105、T106 No)は、そのレンズを組立工程へ返却する(T107)。共に規格値内にある場合(T105、T106 Yes)は、そのレンズを次の調整工程へ送出す(T108)。
【0060】
本実施の形態によれば、レンズ特性の測定作業と、そのレンズ特性情報をレンズに組み込む作業とを自動化することができるため、作業者の負担を軽減し作業の効率を高めることができる。
【0061】
また、これらのレンズ特性の測定を一連の作業として実施できるためカメラの組立ラインの効率を向上させることができる。
【0062】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】電子カメラの構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係るレンズ測定機の構成を示す図。
【図3】PCの構成を示す図。
【図4】レンズ測定機を用いたレンズ特性の測定・組み込み作業の概略の手順を示すフロー図。
【図5】PCのレンズ特性の測定・組み込み手順を示すフロー図。
【図6】PCのレンズ特性の測定・組み込み手順を示すフロー図。
【図7】分光特性を示す図。
【図8】撮影レンズの分光透過率特性を示す図。
【図9】分光透過率表を示す図。
【図10】輝度データの算出を説明する図。
【図11】絞りモータの駆動パルス数と実効絞り値の対応表を示す図。
【符号の説明】
【0064】
1…レンズ保持冶具、2…輝度箱、3…分光器、3e…CCDランイセンサ、6…PC、6b…分光透過率検出部、6c…輝度算出部、6d…実効絞り値算出部、6e…記憶制御部、11…撮影レンズ、12…レンズモータ、16…絞りモータ、20…絞り、25…マイクロコンピュータ、25a…フラッシュロム、43…測光回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検レンズを装着するためのマウント部と、
測定用光束を発する光源と、
上記マウント部に装着された上記被検レンズを介して入射した上記測定用光束について、及び、上記被検レンズを介さずに入射した上記測定用光束について、波長毎の光強度を測定する測光手段と、
上記それぞれの場合における上記測光手段の出力データに基づいて、上記被検レンズの分光透過率を検出する分光透過率検出手段と、
上記測光手段の出力と、上記被検レンズが装着されるカメラボディ内に設けられた他の測光手段の分光特性とから輝度データを算出する輝度算出手段と、
上記マウント部に装着された上記被検レンズ内に設けられた絞りを、開放位置を含む複数の位置に移動させ、そのそれぞれの位置における上記輝度データに基づいて、実効絞り値を検出する実行絞り値検出手段と、
上記分光透過率検出手段の出力に基づくデータと、上記実効絞り値検出手段の出力に基づく絞り位置と実効絞り値との対応データを、上記被検レンズ内に設けられた記憶手段に記憶させる記憶制御手段と
を具備することを特徴とするレンズ測定機。
【請求項2】
上記分光透過率検出手段は、上記被検レンズを介して入射した上記測定光束の分光データと、上記被検レンズを介さずに入射した上記測定光束の分光データの比演算と、その比演算結果に対する正規化演算を行って上記分光透過率を出力することを特徴とする請求項1に記載のレンズ測定機。
【請求項3】
上記実効絞り値検出手段は、以下の式によって上記実効絞り値(AVR)を演算する請求項1に記載のレンズ測定機。
AVR = AV0 − log2{S(P)/S(0)}
AV0:上記被検レンズの設計上の開放絞り値
S(P):絞り込み位置Pにおける輝度データ
S(0):開放位置における輝度データ
【請求項4】
入射光束の分光特性データを出力可能な分光器を具備するレンズ測定機の制御方法において、
被検レンズを介さずに分光特性データを得るステップと、
上記被検レンズを介して分光特性データを得るステップと、
それぞれの分光特性データを比較して分光透過率データを演算するステップと、
上記被検レンズの絞りを開放位置を含む複数の予定絞り値に設定し、それぞれの位置における上記分光器の出力から、それぞれの絞り値における輝度データを得るステップと、
上記予定絞り値と上記それぞれの絞り値における輝度データとの対応データを作成するステップと、
上記分光透過率データと、上記対応データとを上記被検レンズ内の記憶手段に記憶させるステップと
を具備することを特徴とするレンズ測定機の制御方法。
【請求項1】
被検レンズを装着するためのマウント部と、
測定用光束を発する光源と、
上記マウント部に装着された上記被検レンズを介して入射した上記測定用光束について、及び、上記被検レンズを介さずに入射した上記測定用光束について、波長毎の光強度を測定する測光手段と、
上記それぞれの場合における上記測光手段の出力データに基づいて、上記被検レンズの分光透過率を検出する分光透過率検出手段と、
上記測光手段の出力と、上記被検レンズが装着されるカメラボディ内に設けられた他の測光手段の分光特性とから輝度データを算出する輝度算出手段と、
上記マウント部に装着された上記被検レンズ内に設けられた絞りを、開放位置を含む複数の位置に移動させ、そのそれぞれの位置における上記輝度データに基づいて、実効絞り値を検出する実行絞り値検出手段と、
上記分光透過率検出手段の出力に基づくデータと、上記実効絞り値検出手段の出力に基づく絞り位置と実効絞り値との対応データを、上記被検レンズ内に設けられた記憶手段に記憶させる記憶制御手段と
を具備することを特徴とするレンズ測定機。
【請求項2】
上記分光透過率検出手段は、上記被検レンズを介して入射した上記測定光束の分光データと、上記被検レンズを介さずに入射した上記測定光束の分光データの比演算と、その比演算結果に対する正規化演算を行って上記分光透過率を出力することを特徴とする請求項1に記載のレンズ測定機。
【請求項3】
上記実効絞り値検出手段は、以下の式によって上記実効絞り値(AVR)を演算する請求項1に記載のレンズ測定機。
AVR = AV0 − log2{S(P)/S(0)}
AV0:上記被検レンズの設計上の開放絞り値
S(P):絞り込み位置Pにおける輝度データ
S(0):開放位置における輝度データ
【請求項4】
入射光束の分光特性データを出力可能な分光器を具備するレンズ測定機の制御方法において、
被検レンズを介さずに分光特性データを得るステップと、
上記被検レンズを介して分光特性データを得るステップと、
それぞれの分光特性データを比較して分光透過率データを演算するステップと、
上記被検レンズの絞りを開放位置を含む複数の予定絞り値に設定し、それぞれの位置における上記分光器の出力から、それぞれの絞り値における輝度データを得るステップと、
上記予定絞り値と上記それぞれの絞り値における輝度データとの対応データを作成するステップと、
上記分光透過率データと、上記対応データとを上記被検レンズ内の記憶手段に記憶させるステップと
を具備することを特徴とするレンズ測定機の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2005−55397(P2005−55397A)
【公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−288947(P2003−288947)
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]