レンズ製造方法およびレンズ
【課題】レンズ中間体を金型に対して精度よく位置決めできるとともに、光学歪をレンズ外周部に発生させる。
【解決手段】
レンズ中間体300は、コバ部303を有するとともに、このコバ部303の一部が不連続となるように外周部を切り欠いたカット部306を有する。下型200は、第2転写面203の周りに、コバ部303と係合する嵌合部202を備える。コバ部303を嵌合部202に係合させることにより、レンズ中間体300が下型200に対し位置決めされる。プレス工程において、レンズ中間体300が変形すると、コバ部303に囲まれた空間の空気がカット部306から外部に排出される。また、レンズ中間体300の外周部が、上型100と下型200の間の隙間に逃げる。
【解決手段】
レンズ中間体300は、コバ部303を有するとともに、このコバ部303の一部が不連続となるように外周部を切り欠いたカット部306を有する。下型200は、第2転写面203の周りに、コバ部303と係合する嵌合部202を備える。コバ部303を嵌合部202に係合させることにより、レンズ中間体300が下型200に対し位置決めされる。プレス工程において、レンズ中間体300が変形すると、コバ部303に囲まれた空間の空気がカット部306から外部に排出される。また、レンズ中間体300の外周部が、上型100と下型200の間の隙間に逃げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置等に搭載されるレンズの製造方法およびこれにより製造されたレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置等の光学機器には、樹脂製のレンズが搭載されるようになっている。樹脂製のレンズはガラスレンズに比べ軽量であるため、レンズの駆動レスポンスを高めることができる。また、樹脂製のレンズは安価であるため、機器のコスト削減を図ることができる。
【0003】
かかるレンズの製造方法として、射出成形等により予備成形されたレンズ中間体を、加熱しながらプレス成形する方法が知られている(たとえば、特許文献1、2)。この方法によれば、レンズの面精度を高めることができ、光学特性の良いレンズを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−230142号公報
【特許文献2】特開2002−79539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにプレス成形によりレンズを成形する場合には、レンズ中間体を金型に対して精度よく位置決めする必要がある。レンズ中間体が金型に対して精度よく位置決めされていないと、レンズ面に転写不良等の不具合が生じる惧れがある。また、金型側の転写面とレンズ側の主面との間に空気が溜まった状態でプレス成形が行われると、転写不良が生じる。よって、プレス成形においては、金型側の転写面とレンズ側の主面との間に溜まった空気を円滑に取り除く必要がある。
【0006】
なお、上記特許文献1には、レンズ中間体(プリフォーム)の主面と金型側の転写面(光学機能転写部)との間の空気を抜くための構成が示されている。しかし、特許文献1では、レンズ中間体(プリフォーム)の外周が外枠に当接した状態でプレス成形が行われるため、プレス成形による変形時に、ゴム状となったレンズ中間体が外周方向に逃げることができず、外周部に比較的大きな圧力が加わり、この部分に光学歪が生じる。また、特許文献1では、レンズ中間体の外周部がレンズ主面に接近しているため、この圧力による光学歪が、少なからずレンズ主面に及び、レンズの特性に劣化が起こり得る。
【0007】
本発明は、かかる課題を解消するために為されたものであり、レンズ中間体を金型に対して位置決めできるとともに、圧力による光学歪の発生を円滑に抑制し得るレンズ製造方法およびこれにより製造されたレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、第1金型と第2金型とを用いてレンズを製造するレンズ製造方法に関する。本態様に係るレンズ製造方法は、変形可能なレンズ中間体を前記第2金型に設置する設置工程と、前記第1金型と前記第2金型とを相対的に接近させて、前記レンズ中間体の第1主面と第2主面を、それぞれ、前記第1金型の第1転写面と前記第2金型の第2転写面に圧接させる圧接工程と、前記圧接工程によって前記第1転写面の形状と前記
第2転写面の形状がそれぞれ前記第1主面と前記第2主面に転写された前記レンズ中間体を冷却固化し、レンズを形成する固化工程と、前記第1金型と前記第2金型とを相対的に離間させて、前記レンズを前記第1の金型と前記第2金型から剥離する剥離工程とを備える。前記第2金型は、前記レンズ中間体と嵌合して前記レンズ中間体を位置決めする嵌合部を備える。また、前記レンズ中間体は、前記第2金型との間に隙間が生じるように前記嵌合部と嵌合する形状を有するとともに、前記圧接工程において前記レンズ中間体が変形するときに、前記隙間の空気を外部に導く通風部を具備する。前記圧縮工程は、前記第1金型と前記第2金型とが接触せずに所定の間隔でもって離間した状態で終了する。
【0009】
第1の態様に係るレンズ製造方法によれば、レンズ中間体を嵌合部に係合させることにより、レンズ中間体を第2金型に対して精度よく位置決めできる。また、通風部を形成することにより、レンズ中間体と第2金型との間に隙間に溜まった空気を円滑に取り除くことができる。さらに、第1金型と第2金型とが接触せずに所定の間隔でもって離間した状態で圧縮工程が終了するため、圧縮による変形時に、ゴム状となったレンズ中間体の外周部がこの隙間に逃げ、大きな圧力が掛かる部分をより外周方向に遠ざけることができる。よって、成形後のレンズでは、圧力による光学歪の発生箇所をより外周部に遠ざけることができ、レンズ主面に対する光学歪の影響を抑制することができる。
【0010】
第1の態様において、前記嵌合部は、前記レンズ中間体に形成された所定の側面と嵌合し、前記通風部は、前記嵌合部と嵌合する側面の一部を切欠いた切欠きを備える構成とされ得る。
【0011】
また、第1の態様において、前記第1主面と前記第1転写面はそれぞれ曲面であり、前記第1主面の中央部と前記第1転写面との間に第1隙間が生じるよう、前記第1主面の曲率と前記第1転写面の曲率が調整され、前記圧接工程において、前記レンズ中間体が変形すると、この変形により前記第1隙間内の空気がこの隙間から押し出されるよう構成され得る。こうすると、圧縮工程において第1隙間内の空気が取り除かれるため、第1主面に対する転写精度を高めることができる。
【0012】
この場合、前記第1転写面と、前記第1転写面に続く前記第1金型の面との間の境界部分に、第1面取りが施されるよう構成され得る。こうすると、第1面取によって空気がスムーズに流れるため、第1隙間内の空気をより円滑に取り除くことができる。
【0013】
また、第1の態様において、前記第2主面と前記第2転写面はそれぞれ曲面であり、前記第2主面の中央部と前記第2転写面との間に第2隙間が生じるよう、前記第2主面の曲率と前記第2転写面の曲率が調整され、前記圧接工程において、前記レンズ中間体が変形すると、この変形により前記第2隙間内の空気がこの隙間から押し出され、前記通風部を通って外部に排出されるよう構成され得る。こうすると、圧縮工程において第2隙間の空気が取り除かれるため、第2主面に対する転写精度を高めることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、レンズ中間体をプレス成形して形成されるレンズに関する。本態様に係るレンズは、レンズ部と、最外縁に形成され、他の部分に比べて光学歪が大きい端片部とを有する。本態様において、端片部は、プレス成形時に、上下の金型の間の隙間にレンズ中間体の外周部が逃げた部分である。
【0015】
本態様によれば、被転写部分ではない端片部に、光学歪が大きい部分が集中するものの、それより内側に光学歪が大きな部分はない。よって、レンズの光学特性を高めることができる。
【0016】
第2の態様に係るレンズは、前記レンズ部と前記端片部との間にさらに中間部が形成さ
れた構成とされ得る。こうすると、レンズ部と端片部との間に中間部があり、レンズ部と端片部とが離れているため、端片部における光学歪の影響がレンズ部に及びにくい。よって、レンズの光学特性を高めることができる。
【0017】
第2の態様において、前記レンズ部は、第1レンズ面と、前記第1レンズ面に対して反対側に形成された第2レンズ面とを備え、前記第2レンズ面の周りに段差部が形成されているよう構成され得る。この構成において、段差部は、レンズ中間体を位置決めするために金型に形成された嵌合部に対応するものである。
【0018】
また、第2の態様に係るレンズは、前記第1レンズ面と、該第1レンズ面に続く平面との間の境界が、R付け面または面取り面となるよう構成され得る。この構成において、R付け面または面取り面は、金型の転写面とレンズ中間体のレンズ主面との間の空気を円滑に排除するために金型に形成された面取りに対応するものである。
【0019】
また、第2の態様に係るレンズは、外周部が部分的に切り欠かれたカット部をさらに有する構成とされ得る。この構成において、カット部は、レンズ中間体と金型との間の隙間に溜まった空気を取り除くために、レンズ中間体に形成された切欠きに対応するものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、レンズ中間体を金型に対して位置決めできるとともに、圧力による光学歪の発生を円滑に抑制し得るレンズ製造方法およびこれにより製造されたレンズを提供することができる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る金型(上型、下型)の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るレンズ中間体の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係るレンズ製造方法の工程を示す図である。
【図4】第1実施形態に係るレンズ製造方法の効果を説明する図である。
【図5】第1実施形態に係るレンズの構成を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る金型とレンズの変更例を示す図である。
【図7】第1実施形態に係る金型とレンズの他の変更例を示す図である。
【図8】第1実施形態に係るレンズ中間体の変更例を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る金型(上型、下型)の構成を示す図である。
【図10】第2実施形態に係るレンズ中間体およびレンズの構成を示す図である。
【図11】第2実施形態に係るレンズ製造方法の工程を示す図である。
【図12】第2実施形態に係るレンズ製造方法の効果を説明する図である。
【図13】第3実施形態に係る金型(上型、下型)の構成を示す図である。
【図14】第3実施形態に係るレンズ中間体およびレンズの構成を示す図である。
【図15】第3実施形態に係るレンズ製造方法の工程を示す図である。
【図16】第2実施形態に係るレンズ製造方法の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るレンズ製造方法に用いる金型の構成を示す図である。同図(a)は、上型100の構成を示し、同図(b)は、下型200の構成を示す。各図において、中央には、上型100と下型200の平面図が示され、この平面図の下と右に、A−A’線およびB−B’線で紙面垂直に上型100と下型200を切断したときの切断面が示されている。
【0025】
同図(a)を参照して、上型100は平面視において真円の形状を有している。上型100には、平面視において上型100の中心と同心円状に、段部101と第1転写面102が形成されている。段部101は、上型100の上面よりも一段低いリング状の平面となっている。また、第1転写面102は、非球面形状の凹部となっている。
【0026】
同図(b)を参照して、下型200は平面視において真円の形状を有している。下型200には、平面視において下型200の中心と同心円状に、平面部201と、嵌合部202と、第2転写面203が形成されている。平面部201は、リング状の平面となっている。嵌合部202は、平面部201より一段高いリング状の平面となっている。また、第2転写面203は、非球面形状の凹部となっている。
【0027】
なお、第1転写面102は、後述するレンズの一方の面の設計に則した形状となっている。また、第2転写面203は、レンズの他方の面の設計に則した形状となっている。
【0028】
図2は、第1実施形態に係るレンズ成形方法に用いるレンズ中間体300の構成を示す図である。同図(a)は、レンズ中間体300の上面図、同図(b)は、レンズ中間体300の下面図である。同図(a)、(b)の中央には、それぞれ、レンズ中間体300を上および下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、C−C’線およびD−D’線で紙面垂直にレンズ中間体300を切断したときの切断面が示されている。
【0029】
同図(a)を参照して、レンズ中間体300は、平面視において真円の一部が切り欠かれた形状を有している。レンズ中間体300の上面には、平面視においてレンズ中間体300の中心と同心円状に、平坦部301と第1主面302が形成されている。平坦部301は、リング状の平面となっている。また、第1主面302は、非球面形状の凸部となっている。
【0030】
同図(b)を参照して、レンズ中間体300の下面には、平面視においてレンズ中間体300の中心と同心円状に、コバ部303と、凹部304と、第2主面305が形成されている。コバ部303は、リング状の平面となっている。凹部304は、コバ部303の上面よりも一段低いリング状の平面となっている。また、第2主面305は、非球面形状の凸部となっている。
【0031】
なお、光軸に垂直な方向の第1主面302の幅は、図1(a)に示す上型100の第1転写面102の幅よりも大きく、また、第1主面302の高さは、第1転写面102の深さよりも大きくなっている。第1主面302の曲率は、第1転写面102の曲率よりも大きい。このため、第1主面302を第1転写面102に接触させると、第1主面302と第1転写面102の間に隙間が生じる。
【0032】
また、光軸に垂直な方向の第2主面305の幅は、図1(b)に示す下型200の第2転写面203の幅よりも大きく、また、第2主面305の高さは、第2転写面203の深さよりも大きくなっている。第2主面305の曲率は、第2転写面203の曲率よりも大きい。このため、第2主面305を第2転写面203に載せると、第2主面305と第2転写面203の間に隙間が生じる。
【0033】
同図(a)、(b)に示すように、レンズ中間体300の同図右側面には、真円形状が切り欠かれたカット部306が形成されている。同図(b)を参照して、このカット部306により、コバ部303が右側面において不連続となり、この不連続部分において、凹部304が右側に開放されている。このカット部306は、特許請求の範囲に記載の「通風部」の一例である。
【0034】
カット部306には、ゲート部307が形成されている。ゲート部307の上面は平坦部301の平面に繋がっており、ゲート部307の下面は凹部304の底面に繋がっている。
【0035】
レンズ中間体300は、プレス成形前の射出成型レンズである。射出成形の際、ゲート部307の部分から、樹脂が射出成形用の金型に、図2のC−C’線に平行な方向に注入される。ゲート部307は、樹脂注入用のノズルの部分に相当する。
【0036】
このレンズ中間体300を図1に示す下型200に装着し、装着されたレンズ中間体300の上面から上型100を押し付ける。これにより、上型100と下型200の第1転写面102と第2転写面203の形状が、それぞれ、レンズ中間体300の第1主面302と第2主面305に転写され、所望のレンズ形状のレンズが形成される。
【0037】
なお、図2(b)に示すコバ部303の内側面の径φ1は、図1(b)に示す嵌合部202の外側面の径φ2と略同じである。レンズ中間体300は、コバ部303の内側面を嵌合部202の外側面に嵌め込むようにして、下型200に装着される。これにより、レンズ中間体300の中心と下型200の中心とが整合する。このように第1実施形態では、コバ部303を嵌合部202に嵌め込むことで、レンズ中間体300を下型200に精度良く位置づけることができる。
【0038】
図3は、プレス成形の工程を示す図である。同図(a)〜(c)は、図2のD−D’線でレンズ中間体300と上型100および下型200を切断したときの切断面図であり、同図(d)〜(f)は、図2のC−C’線でレンズ中間体300と上型100および下型200を切断したときの切断面図である。同図(d)〜(f)のタイミングは、それぞれ、同図(a)〜(c)のタイミングと同じである。
【0039】
なお、上型100と下型200は、それぞれの中心が上下に一列に並ぶように配置される。プレス成形時には、下型200は固定され、上型100が下方向に移動する。また、上型100と下型200には、それぞれ、加熱器Hが配置される。レンズ中間体300をプレス成形する間、上型100と下型200は加熱器Hにより加熱される。また、レンズ中間体300をプレスした後は、加熱が中止され、上型100および下型200とレンズ中間体300は、自然冷却される。
【0040】
プレス成形時には、まず、上記のようにして下型200にレンズ中間体300が装着される。これにより、レンズ中間体300の第1主面302および第2主面305の中心と、上型100および下型200の第1転写面102および第2転写面203の中心とが、互いに整合する。また、レンズ中間体300の温度がガラス転移温度Tgよりも大きくなるように、上型100と下型200が加熱器100によって加熱される。
【0041】
この状態で、上型100が降下される。やがて、図3(a)、(d)に示すように、上型100の第1転写面102が、レンズ中間体300の第1主面302に当接し、レンズ中間体300の変形が始まる。その後、上型100の降下がさらに進むと、図3(b)、(e)に示すように、レンズ中間体300の第1主面302と第2主面305が、それぞれ、上型100の第1転写面102と下型200の第2転写面203に徐々に沿うように
、レンズ中間体300が変形する。この変形は、図3(c)、(f)に示すように、上型100の下面と下型200の上面との間の隙間がG1になるまで続く。
【0042】
その後、上型100の下面と下型200の上面との間の隙間がG1になると、上型100の降下が止められ、レンズ中間体300の変形が終了する。この状態で、レンズ中間体300の第1主面302と第2主面305には、上型100の第1転写面102と下型200の第2転写面203の形状が完全に転写される。また、レンズ中間体300の外周部は、上型100の下面と下型200の上面との間の隙間を通って、外周部側に逃げる。
【0043】
こうして、レンズ中間体300に対するプレス成形工程が終了すると、ヒータHが停止され、上型100と下型200に対する加熱が中止される。その後、上型100と下型200は自然冷却される。かかる自然冷却は、レンズ中間体300の温度がガラス転移温度Tg以下になるのに要する時間だけ継続される。
【0044】
しかる後、上型100が上昇され、固化したレンズ中間体300が第1転写面102と第2転写面203から剥がされる。こうして、固化したレンズ中間体300が上型100および下型200から取り出され、所望の形状のレンズが取得される。
【0045】
図4は、プレス成形時の空気の流れを説明する図である。同図(a)には、レンズ中間体300の下面と下型200の切断面が示され、同図(b)には、図3(d)から圧縮工程が進んだときの空気の流れが模式的に描画されている。
【0046】
同図(a)を参照して、レンズ中間体300のコバ部303の内側面の径φ1は、下型200の嵌合部202の外側面の径φ2と略同じである。ここで、仮に、カット部306が形成されずに、コバ部303が全周に亘って連続していると仮定すると、コバ部303を嵌合部202に嵌めてレンズ中間端300を下型200に装着した状態では、径φ1の領域において、レンズ中間体300の下面と下型200の上面の間に密閉空間が生じる。この場合、上記プレス成形工程が進められると、この密閉空間の空気が外部に抜けず、この空気によって、転写不良が生じ得る。
【0047】
これに対し、第1実施形態では、既に図2(a)、(b)を参照して説明したように、レンズ中間体300の側面に形成されたカット部306によって、コバ部303が不連続となり、この不連続部分において、凹部304が側方に開放されている。よって、第1実施形態では、上記プレス成形工程が進められても、図4(a)に示すように、径φ1の領域に溜まった空気がカット部306から外部に抜けるようになる。このため、プレス工程が進められても、径φ2の領域に空気が溜まらず、転写不良が生じることがない。
【0048】
なお、第1実施形態では、図4(b)に示すように、レンズ中間体の第1主面302と上型100の第1転写面102との間にも隙間が生じるが、この隙間の空気は、プレス成形の際に外部に抜ける。すなわち、同図(b)に示すように、第1主面302の曲率は第1転写面102の曲率より大きいため、上記のようにレンズ中間体300が下型200に正確に位置決めされると、プレス成形工程において、第1主面302の最高点が、最初に、第1転写面102の最深点に接触するようになる。その後、上型100の降下が進むと、第1主面302は、最高点から順に下方向に第1転写面102に接触する。よって、このように両者の接触が上から順次に進むことで、第1主面302と第1転写面102との間の隙間の空気が下方向に押し出される。
【0049】
これと同様に、レンズ中間体300の第2主面305と下型200の第2転写面203との間の隙間の空気も、嵌合部202と凹部304との間の隙間に押し出される。こうして押し出された空気は、上記のように、カット部306を通って外部に排出される。
【0050】
このように、第1実施形態では、プレス成形時に、第1主面302と第1転写面102との間の隙間の空気と、第2主面305と第2転写面203との間の隙間の空気が円滑に排出されるため、転写不良が生じることがない。
【0051】
図5は、上記プレス成形工程および冷却工程を経てレンズ中間体300から形成されたレンズ400の構成を示す図である。同図(a)は、レンズ400の上面図、同図(b)は、レンズ400の下面図である。同図(a)、(b)の中央には、それぞれ、レンズ400を上および下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、E−E’線およびF−F’線で紙面垂直にレンズ400を切断したときの切断面が示されている。
【0052】
同図(a)を参照して、レンズ400の上面には、平面視において真円の第1レンズ面401が形成されている。また、第1レンズ面401の周りには、リング状の平坦部402が形成され、さらに、平坦部402の周りに、段部403が形成されている。段部403は、図3(c)、(f)に示すように、プレス成形時に樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。段部403の外周側には、樹脂が押されてはみ出した端片部403aが形成されている。また、レンズ400には、レンズ中間体300のカット部306とゲート部307がプレス成形時に変形して生じたカット部404とゲート部405が形成される。
【0053】
同図(b)を参照して、レンズ400の下面には、平面視において真円の第2レンズ面406が形成されている。また、第2レンズ面406の周りには、リング状の凹部407が形成されている。凹部407は、下型200の嵌合部202との嵌合によって形成されたものである。なお、レンズ400の下面には段部は形成されず、レンズ中間体300のコバ部303に相当する部分は、リング状の平坦部408となっている。
【0054】
レンズ400の第1レンズ面401と第2レンズ面406は、それぞれ、上型100の第1転写面102と下型200の第2転写面203が転写された形状となっている。第1実施形態では、第1レンズ面401の有効径は、第2レンズ面406の有効径よりも大きくなっている。また、第1レンズ面401と第2レンズ面406とは光軸が一致している。
【0055】
かかるレンズ400は、たとえば、ブルーレイディスクに青紫色レーザ光を収束させるための対物レンズとして用いられる。この場合、レーザ光の入射面は、第1レンズ面401であり、第2レンズ面406がディスクに対向するよう、レンズ400が光ピックアップ装置に装着される。
【0056】
以上、本実施の形態によれば、コバ部303を嵌合部202に嵌め込むことにより、下型200に対してレンズ中間体300が位置決めされるため、レンズ中間体300の位置決め精度を高めることができる。また、このようにコバ部303を嵌合部202に嵌め込んでも、コバ部303と嵌合部202との間の空間はカット部404によって外部に開放されるため、プレス成形時に、この空間に溜まった空気を外部に排出することができる。よって、転写不良が生じるのを防ぐことができる。
【0057】
さらに、本実施の形態によれば、プレス成形時に、レンズ中間体300の外周部が、上型100と下型200との間の隙間を通って外周方向に逃げるため、この部分に大きな圧力が掛かる。このため、この部分(図5の端片部403a)には、光学歪が生じる。しかし、本実施の形態では、図5に示すように、端片部403aが第1レンズ面401と第2レンズ面407から離れているため、端片部403に光学歪が生じても、その影響が第1レンズ面401と第2レンズ面407に及び難い。よって、レンズの光学特性を高めるこ
とができる。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、レンズ中間体300の位置決め精度を高めつつ、同時に、プレス成形時に、嵌合部分の空間に溜まった空気を外部に排出でき、成形後のレンズに転写不良が発生するのを防止することができる。また、レンズ有効径内における光学歪の影響を抑制することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、このようにレンズ中間体300の位置決め精度が高められるため、上記の如く、第1主面302と第1転写面102の間の隙間の空気と、第2主面305と第2転写面203の間の隙間の空気を、プレス成形工程における第1主面302と第2主面305の変形によって、各隙間から円滑に追い出すことができ、転写不良を抑制することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0061】
たとえば、上記実施の形態では、上型100の段部101と第1転写面102の境界に、角状のエッジ部分があったが、たとえば、図6(a)に示すように、このエッジ部分を全周に亘って曲面状に面取りして、曲面部分103を形成しても良い。この場合、成形後のレンズ400には、図6(b)に示すように、第1レンズ面401と平坦部402との間に、R付け面409が形成される。こうすると、第1主面302と第1転写面102との間に溜まった空気を、より円滑に排出することができる。なお、ここでは、エッジ部分を曲面状に面取りしたが、平面状に面取りしても良い。この場合、第1レンズ面401と平坦部402との間に、平面状の面取り面が形成される。
【0062】
また、上記実施の形態では、嵌合部202の上面と外側面との境界が角状であったが、図7(a)に示すように、この境界部分を全周に亘って面取りして、傾斜面204を形成して良い。この場合、成形後のレンズ400には、図7(b)に示すように、第2レンズ面406と凹部407との間に、傾斜部409が形成される。こうすると、第2主面305と第2転写面203との間に溜まった空気を、より円滑に排出することができる。また、コバ部303を嵌合部202に、より嵌め込み易くなる。なお、傾斜面204は、平面の他、曲面としても良い。
【0063】
また、上記実施の形態では、レンズ中間体300にカット部306を一つだけ形成したが、2つ以上のカット部をレンズ中間体に形成しても良い。
【0064】
また、上記実施の形態では、ゲート部307をレンズ中間体300の側面から突出させたが、たとえば、図8のように、ゲート部307をレンズ中間体300の上面から突出させても良い。この場合、射出成形は、レンズ中間体300の上方向から樹脂を金型に注入することにより行われる。
【0065】
さらに、上記実施の形態では、第1レンズ面401と第2レンズ面402がともに凸面である例を示したが、第1レンズ面401と第2レンズ面402の何れか一方または両方が凹面である場合も、本発明を適用可能である。
【0066】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、レンズ中間体300の上側の第1主面302の方が下側第2主面305よりも大きく突出していたが、第2実施形態では、レンズ中間体の下側の第2主面の方が上側の第1主面よりも大きく突出する場合の構成およびレンズ製造方法が示されている。
【0067】
図9は、第2実施形態に係るレンズ製造方法に用いる金型の構成を示す図である。同図(a)は、上型110の構成を示し、同図(b)は、下型210の構成を示す。各図において、中央には、上型110と下型210の平面図が示され、この平面図の下と右に、I−I’線およびJ−J’線で紙面垂直に上型100と下型200を切断したときの切断面が示されている。
【0068】
同図(a)を参照して、上型110は平面視において真円の形状を有している。上型110には、平面視において上型110の中心と同心円状に、平坦部111と第1転写面112が形成されている。平坦部111は、リング状の平面となっている。また、第1転写面112は、非球面形状の凹部となっている。
【0069】
同図(b)を参照して、下型210は平面視において真円の形状を有している。下型210には、平面視において下型210の中心と同心円状に、凹部211と、嵌合部212と、第2転写面213が形成されている。凹部211は、下型210の上面よりも一段低いリング状の平面となっている。嵌合部212は、下型210の上面よりも低く凹部211より高いリング状の平面となっている。また、第2転写面213は、非球面形状の凹部となっている。
【0070】
なお、第1転写面112は、後述するレンズの一方の面の設計に則した形状となっている。また、第2転写面213は、レンズの他方の面の設計に則した形状となっている。
【0071】
図10(a)は、第2実施形態に係るレンズ成形方法に用いるレンズ中間体310の構成を示す図である。図10(a)の中央には、レンズ中間体310を下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、L−L’線およびK−K’線で紙面垂直にレンズ中間体310を切断したときの切断面が示されている。
【0072】
図10(a)を参照して、レンズ中間体310には、平面視において真円の一部が切り欠かれた形状を有している。レンズ中間体310の上面には、平面視においてレンズ中間体310の中心と同心円状に、平坦部311と第1主面312が形成されている。平坦部311は、リング状の平面となっている。また、第1主面312は、非球面形状の凸部となっている。
【0073】
レンズ中間体310の下面には、平面視においてレンズ中間体310の中心と同心円状に、コバ部313と、凹部314と、第2主面315が形成されている。コバ部313は、リング状の平面となっている。凹部314は、コバ部313の上面よりも一段低いリング状の平面となっている。また、第2主面315は、非球面形状の凸部となっている。
【0074】
なお、光軸に垂直な方向の第1主面312の幅は、図9(a)に示す上型110の第1転写面112の幅よりも大きく、また、第1主面312の高さは、第1転写面112の深さよりも大きくなっている。第1主面312の曲率は、第1転写面112の曲率よりも大きい。このため、第1主面312を第1転写面112に接触させると、第1主面312と第1転写面112の間に隙間が生じる。
【0075】
また、光軸に垂直な方向の第2主面315の幅は、図9(b)に示す下型210の第2転写面213の幅よりも大きく、また、第2主面315の高さは、第2転写面213の深さよりも大きくなっている。第2主面315の曲率は、第2転写面213の曲率よりも大きい。このため、第2主面315を第2転写面213に載せると、第2主面315と第2転写面213の間に隙間が生じる。
【0076】
図10(a)に示すように、レンズ中間体310の同図右側面には、真円形状が切り欠かれたカット部316が形成されている。このカット部316により、コバ部313が右側面において不連続となり、この不連続部分において、凹部314が右側に開放されている。このカット部316は、特許請求の範囲に記載の「通風部」の一例である。
【0077】
カット部316には、ゲート部317が形成されている。ゲート部317の上面は平坦部311の平面に繋がっており、ゲート部317の下面は凹部314の底面に繋がっている。
【0078】
レンズ中間体310は、プレス成形前の射出成型レンズである。射出成形の際、ゲート部317の部分から、樹脂が射出成形用の金型に、図10(a)のK−K’線に平行な方向に注入される。ゲート部317は、樹脂注入用のノズルの部分に相当する。
【0079】
このレンズ中間体310を図9に示す下型210に装着し、装着されたレンズ中間体310の上面から上型110を押し付ける。これにより、上型110と下型210の第1転写面112と第2転写面213の形状が、それぞれ、レンズ中間体310の第1主面312と第2主面315に転写され、所望のレンズ形状のレンズが形成される。
【0080】
なお、図10(a)に示すコバ部313の内側面の径φ3は、図9(b)に示す嵌合部212の外側面の径φ4と略同じである。レンズ中間体310は、コバ部313の内側面を嵌合部212の外側面に嵌め込むようにして、下型210に装着される。これにより、レンズ中間体310の中心と下型210の中心とが整合する。このように第2実施形態では、コバ部313を嵌合部212に嵌め込むことで、レンズ中間体310を下型210に精度良く位置づけることができる。
【0081】
図11は、プレス成形の工程を示す図である。同図(a)〜(c)は、図10(a)のK−K’線でレンズ中間体310と上型110および下型210を切断したときの切断面図であり、同図(d)〜(f)は、図10(a)のK−K’線でレンズ中間体310と上型110および下型210を切断したときの切断面図である。同図(d)〜(f)のタイミングは、それぞれ、同図(a)〜(c)のタイミングと同じである。
【0082】
なお、上型110と下型210は、それぞれの中心が上下に一列に並ぶように配置される。プレス成形時には、下型210は固定され、上型110が下方向に移動する。また、上記第1実施形態と同様、上型110と下型210には、それぞれ、加熱器Hが配置される。レンズ中間体310をプレス成形する間、上型110と下型210は加熱器Hにより加熱される。また、レンズ中間体310をプレスした後は、加熱が中止され、上型110および下型210とレンズ中間体310は、自然冷却される。
【0083】
プレス成形時には、まず、上記のようにして下型210にレンズ中間体310が装着される。これにより、レンズ中間体310の第1主面312および第2主面315の中心と、上型110および下型210の第1転写面112および第2転写面213の中心とが、互いに整合する。また、レンズ中間体310の温度がガラス転移温度Tgよりも大きくなるように、上型110と下型210が加熱器100によって加熱される。
【0084】
この状態で、上型100が降下される。やがて、図11(b)、(e)に示すように、上型110の第1転写面112が、レンズ中間体310の第1主面312に当接し、レンズ中間体310の変形が始まる。その後、上型110の降下がさらに進むと、レンズ中間体310の第1主面312と第2主面315が、それぞれ、上型110の第1転写面112と下型210の第2転写面213に徐々に沿うように、レンズ中間体310が変形する。この変形は、図11(c)、(f)に示すように、上型110の下面と下型210の上
面との間の隙間がG2になるまで続く。
【0085】
その後、上型110の下面と下型210の上面との間の隙間がG2になると、上型110の降下が止められ、レンズ中間体310の変形が終了する。この状態で、レンズ中間体310の第1主面312と第2主面315には、上型110の第1転写面112と下型210の第2転写面213の形状が完全に転写される。また、レンズ中間体310の外周部は、上型110の下面と下型210の上面との間の隙間を通って、外周部側に逃げる。
【0086】
こうして、レンズ中間体310に対するプレス成形工程が終了すると、ヒータHが停止され、上型110と下型210に対する加熱が中止される。その後、上型110と下型210は自然冷却される。かかる自然冷却は、レンズ中間体310の温度がガラス転移温度Tg以下になるのに要する時間だけ継続される。
【0087】
しかる後、上型110が上昇され、固化したレンズ中間体310が第1転写面112と第2転写面213から剥がされる。こうして、固化したレンズ中間体310が上型110および下型210から取り出され、所望の形状のレンズが取得される。
【0088】
図12は、プレス成形時の空気の流れを説明する図である。同図(a)には、レンズ中間体310の下面と下型210の切断面が示され、同図(b)には、図11(e)から圧縮工程が進んだときの空気の流れが模式的に描画されている。
【0089】
同図(a)を参照して、レンズ中間体310のコバ部313の内側面の径φ3は、下型210の嵌合部212の外側面の径φ4と略同じである。上記第1実施形態と同様、仮に、カット部306が形成されていないと仮定すると、径φ3の領域において、レンズ中間体310の下面と下型210の上面の間に密閉空間が生じる。この場合、上記プレス成形工程が進められると、この密閉空間の空気が外部に抜けず、転写不良が生じ得る。
【0090】
これに対し、本実施の形態では、レンズ中間体310の側面に形成されたカット部316によって、コバ部313が不連続となり、この不連続部分において、凹部304が側方に開放されている。よって、プレス成形工程が進められても、図12(a)に示すように、径φ3の領域に溜まった空気がカット部316から外部に抜けるようになる。このため、プレス工程が進められても、転写不良が生じることがない。
【0091】
なお、本実施の形態では、図12(b)に示すように、レンズ中間体の第1主面312と上型110の第1転写面112との間にも隙間が生じるが、この隙間の空気は、上記第1実施形態と同様、プレス成形の際に外部に抜ける。同様に、レンズ中間体310の第2主面315と下型210の第2転写面213との間の隙間の空気も、嵌合部212と凹部314との間の隙間に押し出される。こうして押し出された空気は、上記のように、カット部316を通って外部に排出される。
【0092】
このように、本実施の形態では、プレス成形時に、第1主面312と第1転写面112との間の隙間の空気と、第2主面315と第2転写面213との間の隙間の空気が円滑に排出されるため、転写不良が生じることがない。
【0093】
図10(b)は、上記プレス成形工程および冷却工程を経てレンズ中間体310から形成されたレンズ410の構成を示す図である。図10(b)の中央には、レンズ400を下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、K−K’線およびL−L’線で紙面垂直にレンズ410を切断したときの切断面が示されている。
【0094】
図10(b)を参照して、レンズ410の上面には、平面視において真円の第1レンズ
面411が形成されている。また、第1レンズ面411の周りには、リング状の平坦部412が形成され、さらに、平坦部412の周りに、端片部413が形成されている。端片部413は、図11(c)、(f)に示すように、プレス成形時にレンズ中間体310の外周部の樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。また、レンズ410には、レンズ中間体310のカット部316とゲート部317がプレス成形時に変形して生じたカット部414とゲート部415が形成される。
【0095】
レンズ410の下面には、平面視において真円の第2レンズ面416が形成されている。また、第2レンズ面416の周りには、リング状の凹部417が形成されている。凹部417は、下型210の嵌合部212との嵌合によって形成されたものである。さらに、凹部417の周りにリング状の凸部418が形成され、凸部418の周りに段部419が形成されている。凸部418は、下型210の凹部211が転写されたものである。また、段部419は、プレス成形時にレンズ中間体310の外周部の樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。
【0096】
レンズ410の第1レンズ面411と第2レンズ面416は、それぞれ、上型110の第1転写面112と下型210の第2転写面213が転写された形状となっている。本実施の形態では、第1レンズ面411の有効径よりも、第2レンズ面416の有効径が大きくなっている。また、第1レンズ面411と第2レンズ面416とは光軸が一致している。
【0097】
かかるレンズ410は、上記第1実施形態と同様、たとえば、ブルーレイディスクに青紫色レーザ光を収束させるための対物レンズとして用いられる。この場合、レーザ光の入射面は、第2レンズ面416であり、第1レンズ面411がディスクに対向するよう、レンズ410が光ピックアップ装置に装着される。
【0098】
本実施の形態においても、上記第1実施形態と同様、レンズ中間体310の位置決め精度を高めつつ、同時に、プレス成形時に、嵌合部分の空間に溜まった空気を外部に排出でき、転写不良が発生するのを防止することができる。また、上型110と下型210との間の隙間G2により、より外周部側の端片部413に光学歪を発生させることができるため、レンズ有効径内における光学歪の影響を抑制することができる。
【0099】
本実施の形態においても、第1実施形態と同様、端片部413が第1レンズ面411と第2レンズ面416から離れているため、端片部413に光学歪が生じても、その影響が第1レンズ面411と第2レンズ面416に及び難い。よって、レンズ410の光学特性を高めることができる。
【0100】
なお、本実施の形態においても、上記第1実施形態と同様の変更が可能である。たとえば、図12(b)におけるエッジ部214を面取りして、空気の流れを良くするようにしても良い。
【0101】
<第3実施形態>
第3実施形態は、上記第2実施形態と同様、レンズ中間体の下側の第2主面の方が上側の第1主面よりも大きく突出する場合の構成およびレンズ製造方法に関する。第3実施形態では、上記第2実施形態に比べ、レンズ中間体の位置決めのための構成が相違している。かかる構成の相違により、レンズ中間体の構成が、上記第2実施形態から変更されている。
【0102】
図13は、第3実施形態に係るレンズ製造方法に用いる金型の構成を示す図である。同図(a)は、上型120の構成を示し、同図(b)は、下型220の構成を示す。各図に
おいて、中央には、上型120と下型220の平面図が示され、この平面図の下と右に、M−M’線およびN−N’線で紙面垂直に上型110と下型210を切断したときの切断面が示されている。
【0103】
上型120の構成は、上記第2実施形態の上型110と同じである。上型120の平坦部121と第1転写面122は、それぞれ、図9に示す平坦部111と第1転写面112に対応する。
【0104】
下型220の構成は、上記第2実施形態の下型210と略同じである。下型220の凹部221、嵌合部222および第2転写面223は、それぞれ、図9に示す凹部211、嵌合部212および第2転写面213に対応する。ただし、凹部221は、図9の凹部211よりも幅広になっており、また、嵌合部222は、図9の嵌合部212よりも幅狭になっている。
【0105】
図14(a)は、第3実施形態に係るレンズ成形方法に用いるレンズ中間体320の構成を示す図である。図14(a)の中央には、レンズ中間体320を下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、O−O’線およびP−P’線で紙面垂直にレンズ中間体320を切断したときの切断面が示されている。
【0106】
図14(a)を参照して、レンズ中間体320には、平面視において真円の一部が切り欠かれた形状を有している。レンズ中間体320の上面には、平面視においてレンズ中間体320の中心と同心円状に、平坦部321と第1主面322が形成されている。平坦部321は、リング状の平面となっている。また、第1主面322は、非球面形状の凸部となっている。
【0107】
レンズ中間体320の下面には、平面視においてレンズ中間体320の中心と同心円状に、平坦部323と、第2主面324が形成されている。平坦部323は、リング状の平面がカット部325により切り欠かれた形状となっている。第2主面324は、非球面形状の凸部となっている。このカット部325は、特許請求の範囲に記載の「通風部」の一例である。
【0108】
なお、第1主面322と、図13(a)に示す上型120の第1転写面122のとの関係は、上記第2実施形態の第1主面312と第1転写面112の関係と同じである。よって、第1主面322を第1転写面122に接触させると、第1主面322と第1転写面122の間に隙間が生じる。
【0109】
また、第2主面324と、図13(b)に示す下型220の第2転写面222のとの関係も、上記第2実施形態の第2主面315と第2転写面213の関係と同じである。よって、第2主面324を第2転写面222に載せると、第2主面324と第2転写面222の間に隙間が生じる。
【0110】
図14(a)に示すように、レンズ中間体320には、真円形状が切り欠かれた3つのカット部325が形成されている。また、各カット部325の近傍には、それぞれ、半円柱形状の脚部326が形成されている。各脚部326の幅は、対応するカット部325の幅よりも狭くなっている。また、3つの脚部326の高さは同じである。3つの脚部326の半円柱の頂点は、第2主面324と同心円となる円(以下、「内接円」という)を通る。この内接円の径は、図13(b)の嵌合部222の外形と略同じである。3つの脚部326を嵌合部222に嵌合させることにより、レンズ中間体320が下型220に対して位置決めされる。
【0111】
図14(a)の最右の脚部326には、ゲート部327が形成されている。ゲート部327の上面は平坦部323の平面と同じ高さであり、ゲート部327の下面は脚部326の下面に繋がっている。
【0112】
レンズ中間体320は、プレス成形前の射出成型レンズである。射出成形の際、ゲート部327の部分から、樹脂が射出成形用の金型に、図14(a)のO−O’線に平行な方向に注入される。ゲート部327は、樹脂注入用のノズルの部分に相当する。
【0113】
このレンズ中間体320を図13(b)に示す下型220に装着し、装着されたレンズ中間体320の上面から上型120を押し付ける。これにより、上型120と下型220の第1転写面122と第2転写面223の形状が、それぞれ、レンズ中間体320の第1主面322と第2主面324に転写され、所望のレンズ形状のレンズが形成される。
【0114】
なお、図14(a)に示す平坦部323の外径φ5は、図13(b)に示す凹部221の外径φ6と略同じである。レンズ中間体320は、上記のように3つの脚部326の内側面を嵌合部222の外側面に嵌め込むようにして、下型220に装着される。これにより、レンズ中間体320の中心と下型220の中心とが整合する。このようにレンズ中間体320を装着すると、レンズ中間体320の平坦部323が、下型220の凹部221を覆い、レンズ中間体320と下型220との間の空間は、3つのカット部325により外部に開放されるようになる。
【0115】
図15は、プレス成形の工程を示す図である。同図(a)〜(c)は、図14(a)のO−O’線でレンズ中間体320と上型120および下型220を切断したときの切断面図であり、同図(d)〜(f)は、図14(a)のK−K’線でレンズ中間体320と上型120および下型220を切断したときの切断面図である。同図(d)〜(f)のタイミングは、それぞれ、同図(a)〜(c)のタイミングと同じである。
【0116】
なお、上型120と下型220は、それぞれの中心が上下に一列に並ぶように配置される。プレス成形時には、下型220は固定され、上型120が下方向に移動する。また、上記第1、第2実施形態と同様、上型120と下型220には、それぞれ、加熱器Hが配置される。レンズ中間体320をプレス成形する間、上型120と下型220は加熱器Hにより加熱される。また、レンズ中間体320をプレスした後は、加熱が中止され、上型120および下型220とレンズ中間体320は、自然冷却される。
【0117】
上記第2実施形態と同様、プレス成形では、レンズ中間体320が下型220に装着された後、上型120と下型220との間の隙間がG3になるまで、上型120が降下される。この状態で、レンズ中間体320の第1主面322と第2主面324には、上型120の第1転写面122と下型220の第2転写面223の形状が完全に転写される。また、レンズ中間体320の外周部は、上型120の下面と下型220の上面との間の隙間を通って、外周部側に逃げる。
【0118】
こうして、レンズ中間体320に対するプレス成形工程が終了すると、ヒータHが停止され、上型120と下型220が自然冷却される。かかる自然冷却は、レンズ中間体320の温度がガラス転移温度Tg以下になるのに要する時間だけ継続される。しかる後、上型120が上昇され、固化したレンズ中間体320が第1転写面122と第2転写面223から剥がされる。こうして、固化したレンズ中間体320が上型120および下型220から取り出され、所望の形状のレンズが取得される。
【0119】
図16は、プレス成形時の空気の流れを説明する図である。同図(a)には、レンズ中間体320の下面と下型220の切断面が示され、同図(b)には、図11(e)から圧
縮工程が進んだときの空気の流れが模式的に描画されている。
【0120】
同図(a)を参照して、レンズ中間体310の平坦部313の径φ5は、下型220の凹部221の外側面の径φ6と略同じである。仮に、カット部325が形成されていないと仮定すると、径φ5の領域において、レンズ中間体320の下面と下型220の上面の間に密閉空間が生じる。この場合、上記プレス成形工程が進められると、この密閉空間の空気が円滑に外部に抜けず、転写不良が生じ得る。
【0121】
これに対し、本実施の形態では、図16(a)に示すように、3つのカット部325により、隙間Sが生じ、この隙間Sによって、レンズ中間体320の下面と下型220の上面の間の空間が、外部に開放されている。よって、プレス成形工程が進められても、径φ5の領域に溜まった空気がカット部325から外部に抜けるようになる。このため、プレス工程が進められても、転写不良が生じることがない。
【0122】
また、本実施の形態では、図16(b)に示すように、レンズ中間体320の第1主面322と上型120の第1転写面122との間にも隙間が生じるが、この隙間の空気は、上記第1、第2実施形態と同様、プレス成形の際に外部に抜ける。同様に、レンズ中間体320の第2主面324と下型220の第2転写面223との間の隙間の空気も、レンズ中間体320の下面と下型220の上面の間の空間に押し出される。こうして押し出された空気は、脚部326の脇を通り、さらに、カット部316により生じた隙間Sを通って外部に排出される。
【0123】
このように、本実施の形態では、プレス成形時に、第1主面322と第1転写面122との間の隙間の空気と、第2主面324と第2転写面223との間の隙間の空気が円滑に排出されるため、これら隙間の空気による圧力によって、レンズ中間体320の第1主面322および第2主面325の付近に転写不良や光学歪が生じることがない。
【0124】
図14(b)は、上記プレス成形工程および冷却工程を経てレンズ中間体320から形成されたレンズ420の構成を示す図である。図14(b)の中央には、レンズ420を下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、O−O’線およびP−P’線で紙面垂直にレンズ420を切断したときの切断面が示されている。
【0125】
図14(b)を参照して、レンズ420の上面には、平面視において真円の第1レンズ面421が形成されている。また、第1レンズ面421の周りには、リング状の平坦部422が形成され、さらに、平坦部422の周りに、端片部423が形成されている。端片部423は、図15(c)、(f)に示すように、プレス成形時にレンズ中間体320の外周部の樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。また、レンズ420には、レンズ中間体320のカット部325とゲート部327がプレス成形時に変形して生じたカット部424とゲート部425が形成される。
【0126】
レンズ420の下面には、平面視において真円の第2レンズ面426が形成されている。また、第2レンズ面426の周りには、リング状の凹部427が形成されている。凹部427は、下型220の嵌合部222との嵌合によって形成されたものである。さらに、凹部427の周りにリング状の凸部428が形成され、凸部428の周りに段部429が形成されている。凸部428は、下型220の凹部221が転写されたものである。また、段部429は、プレス成形時にレンズ中間体320の外周部の樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。
【0127】
なお、3つのカット部424の位置では、リング状の凸部428が切り欠かれた形状となっており、また、この位置には、段部429および端片部423は存在しない。
【0128】
レンズ420の第1レンズ面421と第2レンズ面426は、それぞれ、上型120の第1転写面122と下型220の第2転写面223が転写された形状となっている。本実施の形態では、上記第2実施形態と同様、第1レンズ面421の有効径よりも、第2レンズ面426の有効径が大きくなっている。また、第1レンズ面421と第2レンズ面426とは光軸が一致している。
【0129】
かかるレンズ420は、上記第1、第2実施形態と同様、たとえば、ブルーレイディスクに青紫色レーザ光を収束させるための対物レンズとして用いられる。この場合、レーザ光の入射面は、第2レンズ面426であり、第1レンズ面421がディスクに対向するよう、レンズ420が光ピックアップ装置に装着される。
【0130】
本実施の形態においても、上記第1、第2実施形態と同様、レンズ中間体320の位置決め精度を高めつつ、同時に、プレス成形時に、レンズ中間体320と上型120、下型220との間の空間に溜まった空気を外部に排出でき、成形後のレンズに転写不良が発生するのを防止することができる。また、上型120と下型220との間の隙間G3によりレンズ中間体320に加わる圧力を逃がすことができるため、圧力による光学歪の影響を抑制することができる。
【0131】
また、本実施の形態においても、第1、第2実施形態と同様、端片部423が第1レンズ面421と第2レンズ面426から離れているため、端片部423に光学歪が生じても、その影響が第1レンズ面421と第2レンズ面426に及び難い。よって、レンズ420の光学特性を高めることができる。
【0132】
なお、本実施の形態においても、上記第1、第2実施形態と同様の変更が可能である。たとえば、図16(b)におけるエッジ部224を面取りして、空気の流れを良くするようにしても良い。
【0133】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら制限されるものではない。また、本発明の実施形態も、上記以外に、種々の変更が可能である。
【0134】
たとえば、上記実施形態では、レンズ中間体の冷却固化を、自然冷却により行ったが、冷却装置を金型に配置して、積極的にレンズ中間体を冷却するようにしても良い。
【0135】
また、上記実施形態では、上型と下型の周りには、特に、他の部材が示されなかったが、上型と下型の周面に接する円筒状の枠部材がさらに配されていても良い。
【0136】
また、上記第3実施形態では、レンズ中間体320の外径φ5を下型220の凹部221の外径φ6と略同じとしたが、レンズ中間体320の外径φ5を下型220の凹部221の外径φ6よりも小さくし、レンズ中間体320の外周と凹部221の外側面との間に隙間が生じるようにしても良い。
【0137】
さらに、レンズ中間体に形成されるカット部の配置、形状、個数や、レンズの有効径等も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0138】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0139】
100、110、120 … 上型(第1金型)
102、112、122 … 第1転写面
103 … 曲面部分(第1面取り)
200、210、220 … 下型(第2金型)
202、212、222 … 嵌合部
203、213、223 … 第2転写面
204 … 傾斜面(第2面取り)
300、310、320 … レンズ中間体
302、312、322 … 第1主面
303、313 … コバ部
305、315、324 … 第2主面
306、316、325 … カット部(通風部)
326 … 脚部
400、410、420 … レンズ
401、411、421 … 第1レンズ面
403a、413、423 … 端片部
403、419、429 … 段部(段差部)
409 … 曲面部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置等に搭載されるレンズの製造方法およびこれにより製造されたレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置等の光学機器には、樹脂製のレンズが搭載されるようになっている。樹脂製のレンズはガラスレンズに比べ軽量であるため、レンズの駆動レスポンスを高めることができる。また、樹脂製のレンズは安価であるため、機器のコスト削減を図ることができる。
【0003】
かかるレンズの製造方法として、射出成形等により予備成形されたレンズ中間体を、加熱しながらプレス成形する方法が知られている(たとえば、特許文献1、2)。この方法によれば、レンズの面精度を高めることができ、光学特性の良いレンズを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−230142号公報
【特許文献2】特開2002−79539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにプレス成形によりレンズを成形する場合には、レンズ中間体を金型に対して精度よく位置決めする必要がある。レンズ中間体が金型に対して精度よく位置決めされていないと、レンズ面に転写不良等の不具合が生じる惧れがある。また、金型側の転写面とレンズ側の主面との間に空気が溜まった状態でプレス成形が行われると、転写不良が生じる。よって、プレス成形においては、金型側の転写面とレンズ側の主面との間に溜まった空気を円滑に取り除く必要がある。
【0006】
なお、上記特許文献1には、レンズ中間体(プリフォーム)の主面と金型側の転写面(光学機能転写部)との間の空気を抜くための構成が示されている。しかし、特許文献1では、レンズ中間体(プリフォーム)の外周が外枠に当接した状態でプレス成形が行われるため、プレス成形による変形時に、ゴム状となったレンズ中間体が外周方向に逃げることができず、外周部に比較的大きな圧力が加わり、この部分に光学歪が生じる。また、特許文献1では、レンズ中間体の外周部がレンズ主面に接近しているため、この圧力による光学歪が、少なからずレンズ主面に及び、レンズの特性に劣化が起こり得る。
【0007】
本発明は、かかる課題を解消するために為されたものであり、レンズ中間体を金型に対して位置決めできるとともに、圧力による光学歪の発生を円滑に抑制し得るレンズ製造方法およびこれにより製造されたレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、第1金型と第2金型とを用いてレンズを製造するレンズ製造方法に関する。本態様に係るレンズ製造方法は、変形可能なレンズ中間体を前記第2金型に設置する設置工程と、前記第1金型と前記第2金型とを相対的に接近させて、前記レンズ中間体の第1主面と第2主面を、それぞれ、前記第1金型の第1転写面と前記第2金型の第2転写面に圧接させる圧接工程と、前記圧接工程によって前記第1転写面の形状と前記
第2転写面の形状がそれぞれ前記第1主面と前記第2主面に転写された前記レンズ中間体を冷却固化し、レンズを形成する固化工程と、前記第1金型と前記第2金型とを相対的に離間させて、前記レンズを前記第1の金型と前記第2金型から剥離する剥離工程とを備える。前記第2金型は、前記レンズ中間体と嵌合して前記レンズ中間体を位置決めする嵌合部を備える。また、前記レンズ中間体は、前記第2金型との間に隙間が生じるように前記嵌合部と嵌合する形状を有するとともに、前記圧接工程において前記レンズ中間体が変形するときに、前記隙間の空気を外部に導く通風部を具備する。前記圧縮工程は、前記第1金型と前記第2金型とが接触せずに所定の間隔でもって離間した状態で終了する。
【0009】
第1の態様に係るレンズ製造方法によれば、レンズ中間体を嵌合部に係合させることにより、レンズ中間体を第2金型に対して精度よく位置決めできる。また、通風部を形成することにより、レンズ中間体と第2金型との間に隙間に溜まった空気を円滑に取り除くことができる。さらに、第1金型と第2金型とが接触せずに所定の間隔でもって離間した状態で圧縮工程が終了するため、圧縮による変形時に、ゴム状となったレンズ中間体の外周部がこの隙間に逃げ、大きな圧力が掛かる部分をより外周方向に遠ざけることができる。よって、成形後のレンズでは、圧力による光学歪の発生箇所をより外周部に遠ざけることができ、レンズ主面に対する光学歪の影響を抑制することができる。
【0010】
第1の態様において、前記嵌合部は、前記レンズ中間体に形成された所定の側面と嵌合し、前記通風部は、前記嵌合部と嵌合する側面の一部を切欠いた切欠きを備える構成とされ得る。
【0011】
また、第1の態様において、前記第1主面と前記第1転写面はそれぞれ曲面であり、前記第1主面の中央部と前記第1転写面との間に第1隙間が生じるよう、前記第1主面の曲率と前記第1転写面の曲率が調整され、前記圧接工程において、前記レンズ中間体が変形すると、この変形により前記第1隙間内の空気がこの隙間から押し出されるよう構成され得る。こうすると、圧縮工程において第1隙間内の空気が取り除かれるため、第1主面に対する転写精度を高めることができる。
【0012】
この場合、前記第1転写面と、前記第1転写面に続く前記第1金型の面との間の境界部分に、第1面取りが施されるよう構成され得る。こうすると、第1面取によって空気がスムーズに流れるため、第1隙間内の空気をより円滑に取り除くことができる。
【0013】
また、第1の態様において、前記第2主面と前記第2転写面はそれぞれ曲面であり、前記第2主面の中央部と前記第2転写面との間に第2隙間が生じるよう、前記第2主面の曲率と前記第2転写面の曲率が調整され、前記圧接工程において、前記レンズ中間体が変形すると、この変形により前記第2隙間内の空気がこの隙間から押し出され、前記通風部を通って外部に排出されるよう構成され得る。こうすると、圧縮工程において第2隙間の空気が取り除かれるため、第2主面に対する転写精度を高めることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、レンズ中間体をプレス成形して形成されるレンズに関する。本態様に係るレンズは、レンズ部と、最外縁に形成され、他の部分に比べて光学歪が大きい端片部とを有する。本態様において、端片部は、プレス成形時に、上下の金型の間の隙間にレンズ中間体の外周部が逃げた部分である。
【0015】
本態様によれば、被転写部分ではない端片部に、光学歪が大きい部分が集中するものの、それより内側に光学歪が大きな部分はない。よって、レンズの光学特性を高めることができる。
【0016】
第2の態様に係るレンズは、前記レンズ部と前記端片部との間にさらに中間部が形成さ
れた構成とされ得る。こうすると、レンズ部と端片部との間に中間部があり、レンズ部と端片部とが離れているため、端片部における光学歪の影響がレンズ部に及びにくい。よって、レンズの光学特性を高めることができる。
【0017】
第2の態様において、前記レンズ部は、第1レンズ面と、前記第1レンズ面に対して反対側に形成された第2レンズ面とを備え、前記第2レンズ面の周りに段差部が形成されているよう構成され得る。この構成において、段差部は、レンズ中間体を位置決めするために金型に形成された嵌合部に対応するものである。
【0018】
また、第2の態様に係るレンズは、前記第1レンズ面と、該第1レンズ面に続く平面との間の境界が、R付け面または面取り面となるよう構成され得る。この構成において、R付け面または面取り面は、金型の転写面とレンズ中間体のレンズ主面との間の空気を円滑に排除するために金型に形成された面取りに対応するものである。
【0019】
また、第2の態様に係るレンズは、外周部が部分的に切り欠かれたカット部をさらに有する構成とされ得る。この構成において、カット部は、レンズ中間体と金型との間の隙間に溜まった空気を取り除くために、レンズ中間体に形成された切欠きに対応するものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、レンズ中間体を金型に対して位置決めできるとともに、圧力による光学歪の発生を円滑に抑制し得るレンズ製造方法およびこれにより製造されたレンズを提供することができる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る金型(上型、下型)の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るレンズ中間体の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係るレンズ製造方法の工程を示す図である。
【図4】第1実施形態に係るレンズ製造方法の効果を説明する図である。
【図5】第1実施形態に係るレンズの構成を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る金型とレンズの変更例を示す図である。
【図7】第1実施形態に係る金型とレンズの他の変更例を示す図である。
【図8】第1実施形態に係るレンズ中間体の変更例を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る金型(上型、下型)の構成を示す図である。
【図10】第2実施形態に係るレンズ中間体およびレンズの構成を示す図である。
【図11】第2実施形態に係るレンズ製造方法の工程を示す図である。
【図12】第2実施形態に係るレンズ製造方法の効果を説明する図である。
【図13】第3実施形態に係る金型(上型、下型)の構成を示す図である。
【図14】第3実施形態に係るレンズ中間体およびレンズの構成を示す図である。
【図15】第3実施形態に係るレンズ製造方法の工程を示す図である。
【図16】第2実施形態に係るレンズ製造方法の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るレンズ製造方法に用いる金型の構成を示す図である。同図(a)は、上型100の構成を示し、同図(b)は、下型200の構成を示す。各図において、中央には、上型100と下型200の平面図が示され、この平面図の下と右に、A−A’線およびB−B’線で紙面垂直に上型100と下型200を切断したときの切断面が示されている。
【0025】
同図(a)を参照して、上型100は平面視において真円の形状を有している。上型100には、平面視において上型100の中心と同心円状に、段部101と第1転写面102が形成されている。段部101は、上型100の上面よりも一段低いリング状の平面となっている。また、第1転写面102は、非球面形状の凹部となっている。
【0026】
同図(b)を参照して、下型200は平面視において真円の形状を有している。下型200には、平面視において下型200の中心と同心円状に、平面部201と、嵌合部202と、第2転写面203が形成されている。平面部201は、リング状の平面となっている。嵌合部202は、平面部201より一段高いリング状の平面となっている。また、第2転写面203は、非球面形状の凹部となっている。
【0027】
なお、第1転写面102は、後述するレンズの一方の面の設計に則した形状となっている。また、第2転写面203は、レンズの他方の面の設計に則した形状となっている。
【0028】
図2は、第1実施形態に係るレンズ成形方法に用いるレンズ中間体300の構成を示す図である。同図(a)は、レンズ中間体300の上面図、同図(b)は、レンズ中間体300の下面図である。同図(a)、(b)の中央には、それぞれ、レンズ中間体300を上および下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、C−C’線およびD−D’線で紙面垂直にレンズ中間体300を切断したときの切断面が示されている。
【0029】
同図(a)を参照して、レンズ中間体300は、平面視において真円の一部が切り欠かれた形状を有している。レンズ中間体300の上面には、平面視においてレンズ中間体300の中心と同心円状に、平坦部301と第1主面302が形成されている。平坦部301は、リング状の平面となっている。また、第1主面302は、非球面形状の凸部となっている。
【0030】
同図(b)を参照して、レンズ中間体300の下面には、平面視においてレンズ中間体300の中心と同心円状に、コバ部303と、凹部304と、第2主面305が形成されている。コバ部303は、リング状の平面となっている。凹部304は、コバ部303の上面よりも一段低いリング状の平面となっている。また、第2主面305は、非球面形状の凸部となっている。
【0031】
なお、光軸に垂直な方向の第1主面302の幅は、図1(a)に示す上型100の第1転写面102の幅よりも大きく、また、第1主面302の高さは、第1転写面102の深さよりも大きくなっている。第1主面302の曲率は、第1転写面102の曲率よりも大きい。このため、第1主面302を第1転写面102に接触させると、第1主面302と第1転写面102の間に隙間が生じる。
【0032】
また、光軸に垂直な方向の第2主面305の幅は、図1(b)に示す下型200の第2転写面203の幅よりも大きく、また、第2主面305の高さは、第2転写面203の深さよりも大きくなっている。第2主面305の曲率は、第2転写面203の曲率よりも大きい。このため、第2主面305を第2転写面203に載せると、第2主面305と第2転写面203の間に隙間が生じる。
【0033】
同図(a)、(b)に示すように、レンズ中間体300の同図右側面には、真円形状が切り欠かれたカット部306が形成されている。同図(b)を参照して、このカット部306により、コバ部303が右側面において不連続となり、この不連続部分において、凹部304が右側に開放されている。このカット部306は、特許請求の範囲に記載の「通風部」の一例である。
【0034】
カット部306には、ゲート部307が形成されている。ゲート部307の上面は平坦部301の平面に繋がっており、ゲート部307の下面は凹部304の底面に繋がっている。
【0035】
レンズ中間体300は、プレス成形前の射出成型レンズである。射出成形の際、ゲート部307の部分から、樹脂が射出成形用の金型に、図2のC−C’線に平行な方向に注入される。ゲート部307は、樹脂注入用のノズルの部分に相当する。
【0036】
このレンズ中間体300を図1に示す下型200に装着し、装着されたレンズ中間体300の上面から上型100を押し付ける。これにより、上型100と下型200の第1転写面102と第2転写面203の形状が、それぞれ、レンズ中間体300の第1主面302と第2主面305に転写され、所望のレンズ形状のレンズが形成される。
【0037】
なお、図2(b)に示すコバ部303の内側面の径φ1は、図1(b)に示す嵌合部202の外側面の径φ2と略同じである。レンズ中間体300は、コバ部303の内側面を嵌合部202の外側面に嵌め込むようにして、下型200に装着される。これにより、レンズ中間体300の中心と下型200の中心とが整合する。このように第1実施形態では、コバ部303を嵌合部202に嵌め込むことで、レンズ中間体300を下型200に精度良く位置づけることができる。
【0038】
図3は、プレス成形の工程を示す図である。同図(a)〜(c)は、図2のD−D’線でレンズ中間体300と上型100および下型200を切断したときの切断面図であり、同図(d)〜(f)は、図2のC−C’線でレンズ中間体300と上型100および下型200を切断したときの切断面図である。同図(d)〜(f)のタイミングは、それぞれ、同図(a)〜(c)のタイミングと同じである。
【0039】
なお、上型100と下型200は、それぞれの中心が上下に一列に並ぶように配置される。プレス成形時には、下型200は固定され、上型100が下方向に移動する。また、上型100と下型200には、それぞれ、加熱器Hが配置される。レンズ中間体300をプレス成形する間、上型100と下型200は加熱器Hにより加熱される。また、レンズ中間体300をプレスした後は、加熱が中止され、上型100および下型200とレンズ中間体300は、自然冷却される。
【0040】
プレス成形時には、まず、上記のようにして下型200にレンズ中間体300が装着される。これにより、レンズ中間体300の第1主面302および第2主面305の中心と、上型100および下型200の第1転写面102および第2転写面203の中心とが、互いに整合する。また、レンズ中間体300の温度がガラス転移温度Tgよりも大きくなるように、上型100と下型200が加熱器100によって加熱される。
【0041】
この状態で、上型100が降下される。やがて、図3(a)、(d)に示すように、上型100の第1転写面102が、レンズ中間体300の第1主面302に当接し、レンズ中間体300の変形が始まる。その後、上型100の降下がさらに進むと、図3(b)、(e)に示すように、レンズ中間体300の第1主面302と第2主面305が、それぞれ、上型100の第1転写面102と下型200の第2転写面203に徐々に沿うように
、レンズ中間体300が変形する。この変形は、図3(c)、(f)に示すように、上型100の下面と下型200の上面との間の隙間がG1になるまで続く。
【0042】
その後、上型100の下面と下型200の上面との間の隙間がG1になると、上型100の降下が止められ、レンズ中間体300の変形が終了する。この状態で、レンズ中間体300の第1主面302と第2主面305には、上型100の第1転写面102と下型200の第2転写面203の形状が完全に転写される。また、レンズ中間体300の外周部は、上型100の下面と下型200の上面との間の隙間を通って、外周部側に逃げる。
【0043】
こうして、レンズ中間体300に対するプレス成形工程が終了すると、ヒータHが停止され、上型100と下型200に対する加熱が中止される。その後、上型100と下型200は自然冷却される。かかる自然冷却は、レンズ中間体300の温度がガラス転移温度Tg以下になるのに要する時間だけ継続される。
【0044】
しかる後、上型100が上昇され、固化したレンズ中間体300が第1転写面102と第2転写面203から剥がされる。こうして、固化したレンズ中間体300が上型100および下型200から取り出され、所望の形状のレンズが取得される。
【0045】
図4は、プレス成形時の空気の流れを説明する図である。同図(a)には、レンズ中間体300の下面と下型200の切断面が示され、同図(b)には、図3(d)から圧縮工程が進んだときの空気の流れが模式的に描画されている。
【0046】
同図(a)を参照して、レンズ中間体300のコバ部303の内側面の径φ1は、下型200の嵌合部202の外側面の径φ2と略同じである。ここで、仮に、カット部306が形成されずに、コバ部303が全周に亘って連続していると仮定すると、コバ部303を嵌合部202に嵌めてレンズ中間端300を下型200に装着した状態では、径φ1の領域において、レンズ中間体300の下面と下型200の上面の間に密閉空間が生じる。この場合、上記プレス成形工程が進められると、この密閉空間の空気が外部に抜けず、この空気によって、転写不良が生じ得る。
【0047】
これに対し、第1実施形態では、既に図2(a)、(b)を参照して説明したように、レンズ中間体300の側面に形成されたカット部306によって、コバ部303が不連続となり、この不連続部分において、凹部304が側方に開放されている。よって、第1実施形態では、上記プレス成形工程が進められても、図4(a)に示すように、径φ1の領域に溜まった空気がカット部306から外部に抜けるようになる。このため、プレス工程が進められても、径φ2の領域に空気が溜まらず、転写不良が生じることがない。
【0048】
なお、第1実施形態では、図4(b)に示すように、レンズ中間体の第1主面302と上型100の第1転写面102との間にも隙間が生じるが、この隙間の空気は、プレス成形の際に外部に抜ける。すなわち、同図(b)に示すように、第1主面302の曲率は第1転写面102の曲率より大きいため、上記のようにレンズ中間体300が下型200に正確に位置決めされると、プレス成形工程において、第1主面302の最高点が、最初に、第1転写面102の最深点に接触するようになる。その後、上型100の降下が進むと、第1主面302は、最高点から順に下方向に第1転写面102に接触する。よって、このように両者の接触が上から順次に進むことで、第1主面302と第1転写面102との間の隙間の空気が下方向に押し出される。
【0049】
これと同様に、レンズ中間体300の第2主面305と下型200の第2転写面203との間の隙間の空気も、嵌合部202と凹部304との間の隙間に押し出される。こうして押し出された空気は、上記のように、カット部306を通って外部に排出される。
【0050】
このように、第1実施形態では、プレス成形時に、第1主面302と第1転写面102との間の隙間の空気と、第2主面305と第2転写面203との間の隙間の空気が円滑に排出されるため、転写不良が生じることがない。
【0051】
図5は、上記プレス成形工程および冷却工程を経てレンズ中間体300から形成されたレンズ400の構成を示す図である。同図(a)は、レンズ400の上面図、同図(b)は、レンズ400の下面図である。同図(a)、(b)の中央には、それぞれ、レンズ400を上および下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、E−E’線およびF−F’線で紙面垂直にレンズ400を切断したときの切断面が示されている。
【0052】
同図(a)を参照して、レンズ400の上面には、平面視において真円の第1レンズ面401が形成されている。また、第1レンズ面401の周りには、リング状の平坦部402が形成され、さらに、平坦部402の周りに、段部403が形成されている。段部403は、図3(c)、(f)に示すように、プレス成形時に樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。段部403の外周側には、樹脂が押されてはみ出した端片部403aが形成されている。また、レンズ400には、レンズ中間体300のカット部306とゲート部307がプレス成形時に変形して生じたカット部404とゲート部405が形成される。
【0053】
同図(b)を参照して、レンズ400の下面には、平面視において真円の第2レンズ面406が形成されている。また、第2レンズ面406の周りには、リング状の凹部407が形成されている。凹部407は、下型200の嵌合部202との嵌合によって形成されたものである。なお、レンズ400の下面には段部は形成されず、レンズ中間体300のコバ部303に相当する部分は、リング状の平坦部408となっている。
【0054】
レンズ400の第1レンズ面401と第2レンズ面406は、それぞれ、上型100の第1転写面102と下型200の第2転写面203が転写された形状となっている。第1実施形態では、第1レンズ面401の有効径は、第2レンズ面406の有効径よりも大きくなっている。また、第1レンズ面401と第2レンズ面406とは光軸が一致している。
【0055】
かかるレンズ400は、たとえば、ブルーレイディスクに青紫色レーザ光を収束させるための対物レンズとして用いられる。この場合、レーザ光の入射面は、第1レンズ面401であり、第2レンズ面406がディスクに対向するよう、レンズ400が光ピックアップ装置に装着される。
【0056】
以上、本実施の形態によれば、コバ部303を嵌合部202に嵌め込むことにより、下型200に対してレンズ中間体300が位置決めされるため、レンズ中間体300の位置決め精度を高めることができる。また、このようにコバ部303を嵌合部202に嵌め込んでも、コバ部303と嵌合部202との間の空間はカット部404によって外部に開放されるため、プレス成形時に、この空間に溜まった空気を外部に排出することができる。よって、転写不良が生じるのを防ぐことができる。
【0057】
さらに、本実施の形態によれば、プレス成形時に、レンズ中間体300の外周部が、上型100と下型200との間の隙間を通って外周方向に逃げるため、この部分に大きな圧力が掛かる。このため、この部分(図5の端片部403a)には、光学歪が生じる。しかし、本実施の形態では、図5に示すように、端片部403aが第1レンズ面401と第2レンズ面407から離れているため、端片部403に光学歪が生じても、その影響が第1レンズ面401と第2レンズ面407に及び難い。よって、レンズの光学特性を高めるこ
とができる。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、レンズ中間体300の位置決め精度を高めつつ、同時に、プレス成形時に、嵌合部分の空間に溜まった空気を外部に排出でき、成形後のレンズに転写不良が発生するのを防止することができる。また、レンズ有効径内における光学歪の影響を抑制することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、このようにレンズ中間体300の位置決め精度が高められるため、上記の如く、第1主面302と第1転写面102の間の隙間の空気と、第2主面305と第2転写面203の間の隙間の空気を、プレス成形工程における第1主面302と第2主面305の変形によって、各隙間から円滑に追い出すことができ、転写不良を抑制することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0061】
たとえば、上記実施の形態では、上型100の段部101と第1転写面102の境界に、角状のエッジ部分があったが、たとえば、図6(a)に示すように、このエッジ部分を全周に亘って曲面状に面取りして、曲面部分103を形成しても良い。この場合、成形後のレンズ400には、図6(b)に示すように、第1レンズ面401と平坦部402との間に、R付け面409が形成される。こうすると、第1主面302と第1転写面102との間に溜まった空気を、より円滑に排出することができる。なお、ここでは、エッジ部分を曲面状に面取りしたが、平面状に面取りしても良い。この場合、第1レンズ面401と平坦部402との間に、平面状の面取り面が形成される。
【0062】
また、上記実施の形態では、嵌合部202の上面と外側面との境界が角状であったが、図7(a)に示すように、この境界部分を全周に亘って面取りして、傾斜面204を形成して良い。この場合、成形後のレンズ400には、図7(b)に示すように、第2レンズ面406と凹部407との間に、傾斜部409が形成される。こうすると、第2主面305と第2転写面203との間に溜まった空気を、より円滑に排出することができる。また、コバ部303を嵌合部202に、より嵌め込み易くなる。なお、傾斜面204は、平面の他、曲面としても良い。
【0063】
また、上記実施の形態では、レンズ中間体300にカット部306を一つだけ形成したが、2つ以上のカット部をレンズ中間体に形成しても良い。
【0064】
また、上記実施の形態では、ゲート部307をレンズ中間体300の側面から突出させたが、たとえば、図8のように、ゲート部307をレンズ中間体300の上面から突出させても良い。この場合、射出成形は、レンズ中間体300の上方向から樹脂を金型に注入することにより行われる。
【0065】
さらに、上記実施の形態では、第1レンズ面401と第2レンズ面402がともに凸面である例を示したが、第1レンズ面401と第2レンズ面402の何れか一方または両方が凹面である場合も、本発明を適用可能である。
【0066】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、レンズ中間体300の上側の第1主面302の方が下側第2主面305よりも大きく突出していたが、第2実施形態では、レンズ中間体の下側の第2主面の方が上側の第1主面よりも大きく突出する場合の構成およびレンズ製造方法が示されている。
【0067】
図9は、第2実施形態に係るレンズ製造方法に用いる金型の構成を示す図である。同図(a)は、上型110の構成を示し、同図(b)は、下型210の構成を示す。各図において、中央には、上型110と下型210の平面図が示され、この平面図の下と右に、I−I’線およびJ−J’線で紙面垂直に上型100と下型200を切断したときの切断面が示されている。
【0068】
同図(a)を参照して、上型110は平面視において真円の形状を有している。上型110には、平面視において上型110の中心と同心円状に、平坦部111と第1転写面112が形成されている。平坦部111は、リング状の平面となっている。また、第1転写面112は、非球面形状の凹部となっている。
【0069】
同図(b)を参照して、下型210は平面視において真円の形状を有している。下型210には、平面視において下型210の中心と同心円状に、凹部211と、嵌合部212と、第2転写面213が形成されている。凹部211は、下型210の上面よりも一段低いリング状の平面となっている。嵌合部212は、下型210の上面よりも低く凹部211より高いリング状の平面となっている。また、第2転写面213は、非球面形状の凹部となっている。
【0070】
なお、第1転写面112は、後述するレンズの一方の面の設計に則した形状となっている。また、第2転写面213は、レンズの他方の面の設計に則した形状となっている。
【0071】
図10(a)は、第2実施形態に係るレンズ成形方法に用いるレンズ中間体310の構成を示す図である。図10(a)の中央には、レンズ中間体310を下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、L−L’線およびK−K’線で紙面垂直にレンズ中間体310を切断したときの切断面が示されている。
【0072】
図10(a)を参照して、レンズ中間体310には、平面視において真円の一部が切り欠かれた形状を有している。レンズ中間体310の上面には、平面視においてレンズ中間体310の中心と同心円状に、平坦部311と第1主面312が形成されている。平坦部311は、リング状の平面となっている。また、第1主面312は、非球面形状の凸部となっている。
【0073】
レンズ中間体310の下面には、平面視においてレンズ中間体310の中心と同心円状に、コバ部313と、凹部314と、第2主面315が形成されている。コバ部313は、リング状の平面となっている。凹部314は、コバ部313の上面よりも一段低いリング状の平面となっている。また、第2主面315は、非球面形状の凸部となっている。
【0074】
なお、光軸に垂直な方向の第1主面312の幅は、図9(a)に示す上型110の第1転写面112の幅よりも大きく、また、第1主面312の高さは、第1転写面112の深さよりも大きくなっている。第1主面312の曲率は、第1転写面112の曲率よりも大きい。このため、第1主面312を第1転写面112に接触させると、第1主面312と第1転写面112の間に隙間が生じる。
【0075】
また、光軸に垂直な方向の第2主面315の幅は、図9(b)に示す下型210の第2転写面213の幅よりも大きく、また、第2主面315の高さは、第2転写面213の深さよりも大きくなっている。第2主面315の曲率は、第2転写面213の曲率よりも大きい。このため、第2主面315を第2転写面213に載せると、第2主面315と第2転写面213の間に隙間が生じる。
【0076】
図10(a)に示すように、レンズ中間体310の同図右側面には、真円形状が切り欠かれたカット部316が形成されている。このカット部316により、コバ部313が右側面において不連続となり、この不連続部分において、凹部314が右側に開放されている。このカット部316は、特許請求の範囲に記載の「通風部」の一例である。
【0077】
カット部316には、ゲート部317が形成されている。ゲート部317の上面は平坦部311の平面に繋がっており、ゲート部317の下面は凹部314の底面に繋がっている。
【0078】
レンズ中間体310は、プレス成形前の射出成型レンズである。射出成形の際、ゲート部317の部分から、樹脂が射出成形用の金型に、図10(a)のK−K’線に平行な方向に注入される。ゲート部317は、樹脂注入用のノズルの部分に相当する。
【0079】
このレンズ中間体310を図9に示す下型210に装着し、装着されたレンズ中間体310の上面から上型110を押し付ける。これにより、上型110と下型210の第1転写面112と第2転写面213の形状が、それぞれ、レンズ中間体310の第1主面312と第2主面315に転写され、所望のレンズ形状のレンズが形成される。
【0080】
なお、図10(a)に示すコバ部313の内側面の径φ3は、図9(b)に示す嵌合部212の外側面の径φ4と略同じである。レンズ中間体310は、コバ部313の内側面を嵌合部212の外側面に嵌め込むようにして、下型210に装着される。これにより、レンズ中間体310の中心と下型210の中心とが整合する。このように第2実施形態では、コバ部313を嵌合部212に嵌め込むことで、レンズ中間体310を下型210に精度良く位置づけることができる。
【0081】
図11は、プレス成形の工程を示す図である。同図(a)〜(c)は、図10(a)のK−K’線でレンズ中間体310と上型110および下型210を切断したときの切断面図であり、同図(d)〜(f)は、図10(a)のK−K’線でレンズ中間体310と上型110および下型210を切断したときの切断面図である。同図(d)〜(f)のタイミングは、それぞれ、同図(a)〜(c)のタイミングと同じである。
【0082】
なお、上型110と下型210は、それぞれの中心が上下に一列に並ぶように配置される。プレス成形時には、下型210は固定され、上型110が下方向に移動する。また、上記第1実施形態と同様、上型110と下型210には、それぞれ、加熱器Hが配置される。レンズ中間体310をプレス成形する間、上型110と下型210は加熱器Hにより加熱される。また、レンズ中間体310をプレスした後は、加熱が中止され、上型110および下型210とレンズ中間体310は、自然冷却される。
【0083】
プレス成形時には、まず、上記のようにして下型210にレンズ中間体310が装着される。これにより、レンズ中間体310の第1主面312および第2主面315の中心と、上型110および下型210の第1転写面112および第2転写面213の中心とが、互いに整合する。また、レンズ中間体310の温度がガラス転移温度Tgよりも大きくなるように、上型110と下型210が加熱器100によって加熱される。
【0084】
この状態で、上型100が降下される。やがて、図11(b)、(e)に示すように、上型110の第1転写面112が、レンズ中間体310の第1主面312に当接し、レンズ中間体310の変形が始まる。その後、上型110の降下がさらに進むと、レンズ中間体310の第1主面312と第2主面315が、それぞれ、上型110の第1転写面112と下型210の第2転写面213に徐々に沿うように、レンズ中間体310が変形する。この変形は、図11(c)、(f)に示すように、上型110の下面と下型210の上
面との間の隙間がG2になるまで続く。
【0085】
その後、上型110の下面と下型210の上面との間の隙間がG2になると、上型110の降下が止められ、レンズ中間体310の変形が終了する。この状態で、レンズ中間体310の第1主面312と第2主面315には、上型110の第1転写面112と下型210の第2転写面213の形状が完全に転写される。また、レンズ中間体310の外周部は、上型110の下面と下型210の上面との間の隙間を通って、外周部側に逃げる。
【0086】
こうして、レンズ中間体310に対するプレス成形工程が終了すると、ヒータHが停止され、上型110と下型210に対する加熱が中止される。その後、上型110と下型210は自然冷却される。かかる自然冷却は、レンズ中間体310の温度がガラス転移温度Tg以下になるのに要する時間だけ継続される。
【0087】
しかる後、上型110が上昇され、固化したレンズ中間体310が第1転写面112と第2転写面213から剥がされる。こうして、固化したレンズ中間体310が上型110および下型210から取り出され、所望の形状のレンズが取得される。
【0088】
図12は、プレス成形時の空気の流れを説明する図である。同図(a)には、レンズ中間体310の下面と下型210の切断面が示され、同図(b)には、図11(e)から圧縮工程が進んだときの空気の流れが模式的に描画されている。
【0089】
同図(a)を参照して、レンズ中間体310のコバ部313の内側面の径φ3は、下型210の嵌合部212の外側面の径φ4と略同じである。上記第1実施形態と同様、仮に、カット部306が形成されていないと仮定すると、径φ3の領域において、レンズ中間体310の下面と下型210の上面の間に密閉空間が生じる。この場合、上記プレス成形工程が進められると、この密閉空間の空気が外部に抜けず、転写不良が生じ得る。
【0090】
これに対し、本実施の形態では、レンズ中間体310の側面に形成されたカット部316によって、コバ部313が不連続となり、この不連続部分において、凹部304が側方に開放されている。よって、プレス成形工程が進められても、図12(a)に示すように、径φ3の領域に溜まった空気がカット部316から外部に抜けるようになる。このため、プレス工程が進められても、転写不良が生じることがない。
【0091】
なお、本実施の形態では、図12(b)に示すように、レンズ中間体の第1主面312と上型110の第1転写面112との間にも隙間が生じるが、この隙間の空気は、上記第1実施形態と同様、プレス成形の際に外部に抜ける。同様に、レンズ中間体310の第2主面315と下型210の第2転写面213との間の隙間の空気も、嵌合部212と凹部314との間の隙間に押し出される。こうして押し出された空気は、上記のように、カット部316を通って外部に排出される。
【0092】
このように、本実施の形態では、プレス成形時に、第1主面312と第1転写面112との間の隙間の空気と、第2主面315と第2転写面213との間の隙間の空気が円滑に排出されるため、転写不良が生じることがない。
【0093】
図10(b)は、上記プレス成形工程および冷却工程を経てレンズ中間体310から形成されたレンズ410の構成を示す図である。図10(b)の中央には、レンズ400を下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、K−K’線およびL−L’線で紙面垂直にレンズ410を切断したときの切断面が示されている。
【0094】
図10(b)を参照して、レンズ410の上面には、平面視において真円の第1レンズ
面411が形成されている。また、第1レンズ面411の周りには、リング状の平坦部412が形成され、さらに、平坦部412の周りに、端片部413が形成されている。端片部413は、図11(c)、(f)に示すように、プレス成形時にレンズ中間体310の外周部の樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。また、レンズ410には、レンズ中間体310のカット部316とゲート部317がプレス成形時に変形して生じたカット部414とゲート部415が形成される。
【0095】
レンズ410の下面には、平面視において真円の第2レンズ面416が形成されている。また、第2レンズ面416の周りには、リング状の凹部417が形成されている。凹部417は、下型210の嵌合部212との嵌合によって形成されたものである。さらに、凹部417の周りにリング状の凸部418が形成され、凸部418の周りに段部419が形成されている。凸部418は、下型210の凹部211が転写されたものである。また、段部419は、プレス成形時にレンズ中間体310の外周部の樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。
【0096】
レンズ410の第1レンズ面411と第2レンズ面416は、それぞれ、上型110の第1転写面112と下型210の第2転写面213が転写された形状となっている。本実施の形態では、第1レンズ面411の有効径よりも、第2レンズ面416の有効径が大きくなっている。また、第1レンズ面411と第2レンズ面416とは光軸が一致している。
【0097】
かかるレンズ410は、上記第1実施形態と同様、たとえば、ブルーレイディスクに青紫色レーザ光を収束させるための対物レンズとして用いられる。この場合、レーザ光の入射面は、第2レンズ面416であり、第1レンズ面411がディスクに対向するよう、レンズ410が光ピックアップ装置に装着される。
【0098】
本実施の形態においても、上記第1実施形態と同様、レンズ中間体310の位置決め精度を高めつつ、同時に、プレス成形時に、嵌合部分の空間に溜まった空気を外部に排出でき、転写不良が発生するのを防止することができる。また、上型110と下型210との間の隙間G2により、より外周部側の端片部413に光学歪を発生させることができるため、レンズ有効径内における光学歪の影響を抑制することができる。
【0099】
本実施の形態においても、第1実施形態と同様、端片部413が第1レンズ面411と第2レンズ面416から離れているため、端片部413に光学歪が生じても、その影響が第1レンズ面411と第2レンズ面416に及び難い。よって、レンズ410の光学特性を高めることができる。
【0100】
なお、本実施の形態においても、上記第1実施形態と同様の変更が可能である。たとえば、図12(b)におけるエッジ部214を面取りして、空気の流れを良くするようにしても良い。
【0101】
<第3実施形態>
第3実施形態は、上記第2実施形態と同様、レンズ中間体の下側の第2主面の方が上側の第1主面よりも大きく突出する場合の構成およびレンズ製造方法に関する。第3実施形態では、上記第2実施形態に比べ、レンズ中間体の位置決めのための構成が相違している。かかる構成の相違により、レンズ中間体の構成が、上記第2実施形態から変更されている。
【0102】
図13は、第3実施形態に係るレンズ製造方法に用いる金型の構成を示す図である。同図(a)は、上型120の構成を示し、同図(b)は、下型220の構成を示す。各図に
おいて、中央には、上型120と下型220の平面図が示され、この平面図の下と右に、M−M’線およびN−N’線で紙面垂直に上型110と下型210を切断したときの切断面が示されている。
【0103】
上型120の構成は、上記第2実施形態の上型110と同じである。上型120の平坦部121と第1転写面122は、それぞれ、図9に示す平坦部111と第1転写面112に対応する。
【0104】
下型220の構成は、上記第2実施形態の下型210と略同じである。下型220の凹部221、嵌合部222および第2転写面223は、それぞれ、図9に示す凹部211、嵌合部212および第2転写面213に対応する。ただし、凹部221は、図9の凹部211よりも幅広になっており、また、嵌合部222は、図9の嵌合部212よりも幅狭になっている。
【0105】
図14(a)は、第3実施形態に係るレンズ成形方法に用いるレンズ中間体320の構成を示す図である。図14(a)の中央には、レンズ中間体320を下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、O−O’線およびP−P’線で紙面垂直にレンズ中間体320を切断したときの切断面が示されている。
【0106】
図14(a)を参照して、レンズ中間体320には、平面視において真円の一部が切り欠かれた形状を有している。レンズ中間体320の上面には、平面視においてレンズ中間体320の中心と同心円状に、平坦部321と第1主面322が形成されている。平坦部321は、リング状の平面となっている。また、第1主面322は、非球面形状の凸部となっている。
【0107】
レンズ中間体320の下面には、平面視においてレンズ中間体320の中心と同心円状に、平坦部323と、第2主面324が形成されている。平坦部323は、リング状の平面がカット部325により切り欠かれた形状となっている。第2主面324は、非球面形状の凸部となっている。このカット部325は、特許請求の範囲に記載の「通風部」の一例である。
【0108】
なお、第1主面322と、図13(a)に示す上型120の第1転写面122のとの関係は、上記第2実施形態の第1主面312と第1転写面112の関係と同じである。よって、第1主面322を第1転写面122に接触させると、第1主面322と第1転写面122の間に隙間が生じる。
【0109】
また、第2主面324と、図13(b)に示す下型220の第2転写面222のとの関係も、上記第2実施形態の第2主面315と第2転写面213の関係と同じである。よって、第2主面324を第2転写面222に載せると、第2主面324と第2転写面222の間に隙間が生じる。
【0110】
図14(a)に示すように、レンズ中間体320には、真円形状が切り欠かれた3つのカット部325が形成されている。また、各カット部325の近傍には、それぞれ、半円柱形状の脚部326が形成されている。各脚部326の幅は、対応するカット部325の幅よりも狭くなっている。また、3つの脚部326の高さは同じである。3つの脚部326の半円柱の頂点は、第2主面324と同心円となる円(以下、「内接円」という)を通る。この内接円の径は、図13(b)の嵌合部222の外形と略同じである。3つの脚部326を嵌合部222に嵌合させることにより、レンズ中間体320が下型220に対して位置決めされる。
【0111】
図14(a)の最右の脚部326には、ゲート部327が形成されている。ゲート部327の上面は平坦部323の平面と同じ高さであり、ゲート部327の下面は脚部326の下面に繋がっている。
【0112】
レンズ中間体320は、プレス成形前の射出成型レンズである。射出成形の際、ゲート部327の部分から、樹脂が射出成形用の金型に、図14(a)のO−O’線に平行な方向に注入される。ゲート部327は、樹脂注入用のノズルの部分に相当する。
【0113】
このレンズ中間体320を図13(b)に示す下型220に装着し、装着されたレンズ中間体320の上面から上型120を押し付ける。これにより、上型120と下型220の第1転写面122と第2転写面223の形状が、それぞれ、レンズ中間体320の第1主面322と第2主面324に転写され、所望のレンズ形状のレンズが形成される。
【0114】
なお、図14(a)に示す平坦部323の外径φ5は、図13(b)に示す凹部221の外径φ6と略同じである。レンズ中間体320は、上記のように3つの脚部326の内側面を嵌合部222の外側面に嵌め込むようにして、下型220に装着される。これにより、レンズ中間体320の中心と下型220の中心とが整合する。このようにレンズ中間体320を装着すると、レンズ中間体320の平坦部323が、下型220の凹部221を覆い、レンズ中間体320と下型220との間の空間は、3つのカット部325により外部に開放されるようになる。
【0115】
図15は、プレス成形の工程を示す図である。同図(a)〜(c)は、図14(a)のO−O’線でレンズ中間体320と上型120および下型220を切断したときの切断面図であり、同図(d)〜(f)は、図14(a)のK−K’線でレンズ中間体320と上型120および下型220を切断したときの切断面図である。同図(d)〜(f)のタイミングは、それぞれ、同図(a)〜(c)のタイミングと同じである。
【0116】
なお、上型120と下型220は、それぞれの中心が上下に一列に並ぶように配置される。プレス成形時には、下型220は固定され、上型120が下方向に移動する。また、上記第1、第2実施形態と同様、上型120と下型220には、それぞれ、加熱器Hが配置される。レンズ中間体320をプレス成形する間、上型120と下型220は加熱器Hにより加熱される。また、レンズ中間体320をプレスした後は、加熱が中止され、上型120および下型220とレンズ中間体320は、自然冷却される。
【0117】
上記第2実施形態と同様、プレス成形では、レンズ中間体320が下型220に装着された後、上型120と下型220との間の隙間がG3になるまで、上型120が降下される。この状態で、レンズ中間体320の第1主面322と第2主面324には、上型120の第1転写面122と下型220の第2転写面223の形状が完全に転写される。また、レンズ中間体320の外周部は、上型120の下面と下型220の上面との間の隙間を通って、外周部側に逃げる。
【0118】
こうして、レンズ中間体320に対するプレス成形工程が終了すると、ヒータHが停止され、上型120と下型220が自然冷却される。かかる自然冷却は、レンズ中間体320の温度がガラス転移温度Tg以下になるのに要する時間だけ継続される。しかる後、上型120が上昇され、固化したレンズ中間体320が第1転写面122と第2転写面223から剥がされる。こうして、固化したレンズ中間体320が上型120および下型220から取り出され、所望の形状のレンズが取得される。
【0119】
図16は、プレス成形時の空気の流れを説明する図である。同図(a)には、レンズ中間体320の下面と下型220の切断面が示され、同図(b)には、図11(e)から圧
縮工程が進んだときの空気の流れが模式的に描画されている。
【0120】
同図(a)を参照して、レンズ中間体310の平坦部313の径φ5は、下型220の凹部221の外側面の径φ6と略同じである。仮に、カット部325が形成されていないと仮定すると、径φ5の領域において、レンズ中間体320の下面と下型220の上面の間に密閉空間が生じる。この場合、上記プレス成形工程が進められると、この密閉空間の空気が円滑に外部に抜けず、転写不良が生じ得る。
【0121】
これに対し、本実施の形態では、図16(a)に示すように、3つのカット部325により、隙間Sが生じ、この隙間Sによって、レンズ中間体320の下面と下型220の上面の間の空間が、外部に開放されている。よって、プレス成形工程が進められても、径φ5の領域に溜まった空気がカット部325から外部に抜けるようになる。このため、プレス工程が進められても、転写不良が生じることがない。
【0122】
また、本実施の形態では、図16(b)に示すように、レンズ中間体320の第1主面322と上型120の第1転写面122との間にも隙間が生じるが、この隙間の空気は、上記第1、第2実施形態と同様、プレス成形の際に外部に抜ける。同様に、レンズ中間体320の第2主面324と下型220の第2転写面223との間の隙間の空気も、レンズ中間体320の下面と下型220の上面の間の空間に押し出される。こうして押し出された空気は、脚部326の脇を通り、さらに、カット部316により生じた隙間Sを通って外部に排出される。
【0123】
このように、本実施の形態では、プレス成形時に、第1主面322と第1転写面122との間の隙間の空気と、第2主面324と第2転写面223との間の隙間の空気が円滑に排出されるため、これら隙間の空気による圧力によって、レンズ中間体320の第1主面322および第2主面325の付近に転写不良や光学歪が生じることがない。
【0124】
図14(b)は、上記プレス成形工程および冷却工程を経てレンズ中間体320から形成されたレンズ420の構成を示す図である。図14(b)の中央には、レンズ420を下から見たときの平面図が示され、この平面図の下と右に、O−O’線およびP−P’線で紙面垂直にレンズ420を切断したときの切断面が示されている。
【0125】
図14(b)を参照して、レンズ420の上面には、平面視において真円の第1レンズ面421が形成されている。また、第1レンズ面421の周りには、リング状の平坦部422が形成され、さらに、平坦部422の周りに、端片部423が形成されている。端片部423は、図15(c)、(f)に示すように、プレス成形時にレンズ中間体320の外周部の樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。また、レンズ420には、レンズ中間体320のカット部325とゲート部327がプレス成形時に変形して生じたカット部424とゲート部425が形成される。
【0126】
レンズ420の下面には、平面視において真円の第2レンズ面426が形成されている。また、第2レンズ面426の周りには、リング状の凹部427が形成されている。凹部427は、下型220の嵌合部222との嵌合によって形成されたものである。さらに、凹部427の周りにリング状の凸部428が形成され、凸部428の周りに段部429が形成されている。凸部428は、下型220の凹部221が転写されたものである。また、段部429は、プレス成形時にレンズ中間体320の外周部の樹脂が押されて外方向に移動することにより形成されたものである。
【0127】
なお、3つのカット部424の位置では、リング状の凸部428が切り欠かれた形状となっており、また、この位置には、段部429および端片部423は存在しない。
【0128】
レンズ420の第1レンズ面421と第2レンズ面426は、それぞれ、上型120の第1転写面122と下型220の第2転写面223が転写された形状となっている。本実施の形態では、上記第2実施形態と同様、第1レンズ面421の有効径よりも、第2レンズ面426の有効径が大きくなっている。また、第1レンズ面421と第2レンズ面426とは光軸が一致している。
【0129】
かかるレンズ420は、上記第1、第2実施形態と同様、たとえば、ブルーレイディスクに青紫色レーザ光を収束させるための対物レンズとして用いられる。この場合、レーザ光の入射面は、第2レンズ面426であり、第1レンズ面421がディスクに対向するよう、レンズ420が光ピックアップ装置に装着される。
【0130】
本実施の形態においても、上記第1、第2実施形態と同様、レンズ中間体320の位置決め精度を高めつつ、同時に、プレス成形時に、レンズ中間体320と上型120、下型220との間の空間に溜まった空気を外部に排出でき、成形後のレンズに転写不良が発生するのを防止することができる。また、上型120と下型220との間の隙間G3によりレンズ中間体320に加わる圧力を逃がすことができるため、圧力による光学歪の影響を抑制することができる。
【0131】
また、本実施の形態においても、第1、第2実施形態と同様、端片部423が第1レンズ面421と第2レンズ面426から離れているため、端片部423に光学歪が生じても、その影響が第1レンズ面421と第2レンズ面426に及び難い。よって、レンズ420の光学特性を高めることができる。
【0132】
なお、本実施の形態においても、上記第1、第2実施形態と同様の変更が可能である。たとえば、図16(b)におけるエッジ部224を面取りして、空気の流れを良くするようにしても良い。
【0133】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら制限されるものではない。また、本発明の実施形態も、上記以外に、種々の変更が可能である。
【0134】
たとえば、上記実施形態では、レンズ中間体の冷却固化を、自然冷却により行ったが、冷却装置を金型に配置して、積極的にレンズ中間体を冷却するようにしても良い。
【0135】
また、上記実施形態では、上型と下型の周りには、特に、他の部材が示されなかったが、上型と下型の周面に接する円筒状の枠部材がさらに配されていても良い。
【0136】
また、上記第3実施形態では、レンズ中間体320の外径φ5を下型220の凹部221の外径φ6と略同じとしたが、レンズ中間体320の外径φ5を下型220の凹部221の外径φ6よりも小さくし、レンズ中間体320の外周と凹部221の外側面との間に隙間が生じるようにしても良い。
【0137】
さらに、レンズ中間体に形成されるカット部の配置、形状、個数や、レンズの有効径等も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0138】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0139】
100、110、120 … 上型(第1金型)
102、112、122 … 第1転写面
103 … 曲面部分(第1面取り)
200、210、220 … 下型(第2金型)
202、212、222 … 嵌合部
203、213、223 … 第2転写面
204 … 傾斜面(第2面取り)
300、310、320 … レンズ中間体
302、312、322 … 第1主面
303、313 … コバ部
305、315、324 … 第2主面
306、316、325 … カット部(通風部)
326 … 脚部
400、410、420 … レンズ
401、411、421 … 第1レンズ面
403a、413、423 … 端片部
403、419、429 … 段部(段差部)
409 … 曲面部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と第2金型とを用いてレンズを製造するレンズ製造方法であって、
変形可能なレンズ中間体を前記第2金型に設置する設置工程と、
前記第1金型と前記第2金型とを相対的に接近させて、前記レンズ中間体の第1主面と第2主面を、それぞれ、前記第1金型の第1転写面と前記第2金型の第2転写面に圧接させる圧接工程と、
前記圧接工程によって前記第1転写面の形状と前記第2転写面の形状がそれぞれ前記第1主面と前記第2主面に転写された前記レンズ中間体を冷却固化し、レンズを形成する固化工程と、
前記第1金型と前記第2金型とを相対的に離間させて、前記レンズを前記第1の金型と前記第2金型から剥離する剥離工程とを備え、
前記第2金型は、前記レンズ中間体と嵌合して前記レンズ中間体を位置決めする嵌合部を備え、
前記レンズ中間体は、前記第2金型との間に隙間が生じるように前記嵌合部と嵌合する形状を有するとともに、前記圧接工程において前記レンズ中間体が変形するときに、前記隙間の空気を外部に導く通風部を具備し、
前記圧縮工程は、前記第1金型と前記第2金型とが接触せずに所定の間隔でもって離間した状態で終了する、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ製造方法において、
前記嵌合部は、前記レンズ中間体に形成された所定の側面と嵌合し、
前記通風部は、前記嵌合部と嵌合する側面の一部を切欠いた切欠きを備える、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズ製造方法において、
前記第1主面と前記第1転写面はそれぞれ曲面であり、
前記第1主面の中央部と前記第1転写面との間に第1隙間が生じるよう、前記第1主面の曲率と前記第1転写面の曲率が調整され、
前記圧接工程において、前記レンズ中間体が変形すると、この変形により前記第1隙間内の空気がこの隙間から押し出される、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズ製造方法において、
前記第1転写面と、前記第1転写面に続く前記第1金型の面との間の境界部分に、第1面取りが施されている、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のレンズ製造方法において、
前記第2主面と前記第2転写面はそれぞれ曲面であり、
前記第2主面の中央部と前記第2転写面との間に第2隙間が生じるよう、前記第2主面の曲率と前記第2転写面の曲率が調整され、
前記圧接工程において、前記レンズ中間体が変形すると、この変形により前記第2隙間内の空気がこの隙間から押し出され、前記通風部を通って外部に排出される、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項6】
レンズ中間体をプレス成形して形成されるレンズあって、
レンズ部と、
最外縁に形成され、他の部分に比べて光学歪が大きい端片部と、を有する、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項7】
請求項6に記載のレンズにおいて、
前記レンズ部と前記端片部との間にさらに中間部が形成されている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のレンズにおいて、
前記レンズ部は、第1レンズ面と、前記第1レンズ面に対して反対側に形成された第2レンズ面とを備え、
前記第2レンズ面の周りに段差部が形成されている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズあって、
前記第1レンズ面と、該第1レンズ面に続く平面との間の境界が、R付け面または面取り面となっている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項10】
請求項6ないし9の何れか一項に記載のレンズあって、
外周部が部分的に切り欠かれたカット部をさらに有する、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項1】
第1金型と第2金型とを用いてレンズを製造するレンズ製造方法であって、
変形可能なレンズ中間体を前記第2金型に設置する設置工程と、
前記第1金型と前記第2金型とを相対的に接近させて、前記レンズ中間体の第1主面と第2主面を、それぞれ、前記第1金型の第1転写面と前記第2金型の第2転写面に圧接させる圧接工程と、
前記圧接工程によって前記第1転写面の形状と前記第2転写面の形状がそれぞれ前記第1主面と前記第2主面に転写された前記レンズ中間体を冷却固化し、レンズを形成する固化工程と、
前記第1金型と前記第2金型とを相対的に離間させて、前記レンズを前記第1の金型と前記第2金型から剥離する剥離工程とを備え、
前記第2金型は、前記レンズ中間体と嵌合して前記レンズ中間体を位置決めする嵌合部を備え、
前記レンズ中間体は、前記第2金型との間に隙間が生じるように前記嵌合部と嵌合する形状を有するとともに、前記圧接工程において前記レンズ中間体が変形するときに、前記隙間の空気を外部に導く通風部を具備し、
前記圧縮工程は、前記第1金型と前記第2金型とが接触せずに所定の間隔でもって離間した状態で終了する、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ製造方法において、
前記嵌合部は、前記レンズ中間体に形成された所定の側面と嵌合し、
前記通風部は、前記嵌合部と嵌合する側面の一部を切欠いた切欠きを備える、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズ製造方法において、
前記第1主面と前記第1転写面はそれぞれ曲面であり、
前記第1主面の中央部と前記第1転写面との間に第1隙間が生じるよう、前記第1主面の曲率と前記第1転写面の曲率が調整され、
前記圧接工程において、前記レンズ中間体が変形すると、この変形により前記第1隙間内の空気がこの隙間から押し出される、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズ製造方法において、
前記第1転写面と、前記第1転写面に続く前記第1金型の面との間の境界部分に、第1面取りが施されている、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のレンズ製造方法において、
前記第2主面と前記第2転写面はそれぞれ曲面であり、
前記第2主面の中央部と前記第2転写面との間に第2隙間が生じるよう、前記第2主面の曲率と前記第2転写面の曲率が調整され、
前記圧接工程において、前記レンズ中間体が変形すると、この変形により前記第2隙間内の空気がこの隙間から押し出され、前記通風部を通って外部に排出される、
ことを特徴とするレンズ製造方法。
【請求項6】
レンズ中間体をプレス成形して形成されるレンズあって、
レンズ部と、
最外縁に形成され、他の部分に比べて光学歪が大きい端片部と、を有する、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項7】
請求項6に記載のレンズにおいて、
前記レンズ部と前記端片部との間にさらに中間部が形成されている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のレンズにおいて、
前記レンズ部は、第1レンズ面と、前記第1レンズ面に対して反対側に形成された第2レンズ面とを備え、
前記第2レンズ面の周りに段差部が形成されている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズあって、
前記第1レンズ面と、該第1レンズ面に続く平面との間の境界が、R付け面または面取り面となっている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項10】
請求項6ないし9の何れか一項に記載のレンズあって、
外周部が部分的に切り欠かれたカット部をさらに有する、
ことを特徴とするレンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−6314(P2012−6314A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145646(P2010−145646)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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