説明

レーザビーム投影マスク及びそれを用いたレーザ加工方法、レーザ加工装置

【課題】 被照射物に照射するレーザ光の分布と被照射物の温度分布との不一致に起因して結晶性が悪くなるのを抑えて、良好な結晶性が得られるレーザビーム投影マスクを提供する。
【解決手段】 このレーザビーム投影マスク14は、透過エリアとしての長方形状の3つのスリット25,26,27を有する。この3つのスリット25,26,27は、図2(C)において矢印Xで示すX方向に所定の間隔を隔てて順次形成されており、スリット25、スリット26、スリット27の順に上記X方向の幅が小さくなっている。すなわち、上記透過エリアの透過率は、図2(B)に示すシリコン膜4の温度分布曲線V1に対応して変化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、半導体デバイスなどに半導体材料として用いられる非晶質材料をレーザビーム照射によって結晶化するのに用いられるレーザビーム投影マスク、レーザ加工方法およびレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体デバイスの製造方法として、単結晶シリコン(Si)材料を用いる方法があるが、この製造方法の他にもガラス基板上にシリコン薄膜を形成したシリコン薄膜を用いる製造方法がある。ガラス基板上に形成したシリコン薄膜を用いることによって製造された半導体デバイスは、イメージセンサやアクティブマトリクス液晶表示装置の一部として用いられる。
【0003】
ここで、液晶表示装置において、半導体デバイスは、透明な基板上に規則的なアレイとして配列されるTFT(Thin Film Transistor,薄膜トランジスタ)として用いられる。そして、上記TFTの各トランジスタは、液晶表示装置における画素コントローラとして作用する。なお、従来、液晶表示装置のTFTは、非晶質シリコン膜により形成されている。
【0004】
ところが、近年、電子の移動度の低い非晶質シリコン膜の代わりに、電子の移動度の高い多結晶シリコン膜を用いて、TFTのスイッチング特性を増強し、表示速度を高速化したTFT液晶表示装置が製造されるようになってきている。ここで、多結晶シリコン膜を製造する方法として、例えば、基板上に堆積している非晶質または微結晶シリコン膜にエキシマレーザを照射して結晶化(ELC,Excimer Laser Crystallization)する方法がある。
【0005】
上記ELC法は、サンプルに対し、一定速度で走査しながら、長さ200〜400mm、幅0.2〜1.0mm程度の線状レーザビームを半導体膜上に連続的に照射する方法が一般的である。このとき、レーザを照射した部分の半導体膜は、厚さ方向全域に亘って溶融するのではなく、一部の半導体膜領域を残したまま溶融する。
【0006】
このため、未溶融領域/溶融領域界面の全面において、いたるところに結晶核が発生し、半導体膜最表層に向かって結晶が成長し、ランダムな方位の結晶粒が形成されるため、結晶粒径は100〜200nmと非常に小さくなる。
【0007】
多結晶シリコン膜の結晶粒界には、不対電子が多数存在するためポテンシャル障壁を形成し、キャリアの強い散乱体として作用する。従って結晶粒界が少ない、つまり結晶粒径が大きい多結晶シリコン膜で形成されたTFTほど、一般に電界効果移動度は高くなる。
【0008】
しかしながら、従来のELC法では、前述のように、未溶融領域/溶融領域界面のランダムな位置において結晶化が起こる縦方向結晶成長であるので、大粒径の多結晶シリコン膜を得ることは難しい。このため、電界効果移動度の高いTFTを得ることが困難であった。また、ランダムに結晶化するので、このような場合、各TFT相互間で構造の不均一性が生じると共に、TFTアレイにスイッチング特性の不均一性が生じてしまうという不具合が生じる。また、このような不具合が生じると、TFT液晶表示装置において、1つの表示画面中に表示速度の速い画素と表示速度の遅い画素とが並存するという問題が生じる。
【0009】
そこで、さらに高性能なTFT液晶表示装置を得るためには、上記の多結晶シリコン膜の結晶粒径を大きくすることや、シリコン結晶の方位を制御することなどが必要である。そこで、単結晶シリコンに近い性能を有する多結晶シリコン膜を得ることを目的として、数多くの提案がなされている。
【0010】
その中でも特に、「ラテラル成長法」に分類されるレーザ結晶化技術は、結晶の成長方向に方位の揃った長結晶が得られるため、注目を集めている(たとえば、特表2000−505241号)。
【0011】
この方法は、図11に示すようなレーザ加工装置によって、微細幅のパルスレーザを半導体に照射し、半導体膜をレーザ照射領域の厚さ方向全域にわたって溶融、凝固させて結晶化を行うものである。このレーザ加工装置によれば、光源211から出射したエキシマレーザが、可変減衰器212、可変焦点視野レンズ213、投影マスク214、結像レンズ215を経由して、半導体素子101の上面に照射される。この半導体素子101は、光透過性を有する透明基板を含んでいる。ここで、半導体素子101は、図9に示すように、透明基板102とこの透明基板102上に形成された下地膜103とシリコン膜104とから構成される。
【0012】
以下、上記方法の手順を示す。まず、図9に示すように、透明基板102上の半導体膜104の延設方向(図中AB方向)に沿って結晶領域を形成するに当たり、半導体膜104内の領域Cに熱を誘導する。この熱の誘導は、半導体膜104の領域C以外の領域をマスキングした後、半導体膜104をレーザ露光することにより行われる。これにより、領域Cに照射されたレーザ光105のエネルギーが熱エネルギーに変換され、半導体膜104内の領域Cに熱を誘導することができると共に、その半導体膜104の厚さにわたって溶融することができる。
【0013】
次に、領域Cにおいて溶融されている半導体膜104を冷却することにより凝固させると、図10(A)に示すように、領域Cとそれ以外の領域との境界C1,C2から、領域Cの中心に向かうようにして、結晶が成長する。なお、図10(A)は、図9における半導体膜104の上面図である。
【0014】
さらに、図9(B)に示すように、領域C内の結晶が形成されていない部分が含まれるように、領域Cと隣り合う新たな領域Dを設定し、上記手順と同様に領域Dを溶融する。そして、上記同様、領域Dにて溶融されている半導体膜103を凝固させると、図10(C)に示すように、領域D内に結晶が成長する。
このような手順を繰り返し、所望の結晶を半導体膜104の延設方向に沿って段階的に形成させることで、図10(D)に示すように、多結晶構造の半導体結晶を拡大させることができる。これにより、結晶粒の大きい多結晶シリコン膜を形成することができる。
【0015】
ところで、半導体膜104に入射されるレーザ光105のエネルギーは、理想的には、図12(A)に示すように、所定の方向に関する位置において均一になる。つまり、レーザビームは均一光学系によって均一なビーム形状に変形されて、レーザ光105として半導体膜104に入射される。また、図12(B)に示すように、投影マスク214に形成される3つのスリット225は所定の間隔を隔てて配置され、各スリット225の幅は一定であり、各スリット225は、所定の方向に関して、略均一に形成されている。また、図12(C)に示すもう1つの投影マスク231でも、各スリット232の形状(特にスリット幅)は同一であり、各スリット232は、所定の方向に略均一に配列されている。
【0016】
これらの投影マスク214、231のスリット225、232を透過したレーザ光105を半導体膜104に照射することにより、均一な結晶粒長を得ることを目的としており、半導体素子101の等速もしくは等幅のステップ移動を可能にしている。
【0017】
しかしながら、前述した従来の技術では、以下のような問題がある。すなわち、レーザビームは均一光学系によって均一なビーム形状に変形されて入射されることにより、均一な結晶粒長を得ることを目的として設計されている。
【0018】
ところが、結晶化そのものに関わるパラメータはレーザ光によって発生した熱である。したがって、結晶化領域を引き継ぐために、半導体素子101に対してレーザ光を高速で走査すると、半導体膜104の表面におけるレーザ光の分布と熱の分布とが必ずしも一致せず、これに起因して均一な結晶粒長が得られないという問題がある。
【0019】
なお、このように均一な結晶粒長が得られない場合には、上記結晶化領域の引継ぎを問題なく行なうために、スリット幅を結晶粒長の最小値に合わせる必要があるが、この状態で結晶粒長が拡大されると結晶性が悪くなるという問題点がある。
【0020】
さらに、上記従来技術では、均一光学系によってレーザビームが均一なビーム形状に変形されているが、レーザビームを完全に均一にするためには光学部品点数の増加に伴う調整の困難さ、利用効率の低下等の問題が発生する。また、基板及び半導体材料を効率的に昇温するために第1、第2の2つのレーザビームを用いることがあるが、第1のレーザビーム及び第2のレーザビームの双方に対しては、通常のマスクでは対応できないという問題もある。
【特許文献1】特表2000−505241号公報(第15から16頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そこで、この発明の課題は、被照射物に照射するレーザ光の分布と被照射物の温度分布との不一致に起因して結晶性が悪くなるのを抑えて、良好な結晶性が得られるレーザビーム投影マスク及びそれを用いたレーザ加工方法、レーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、この発明のレーザビーム投影マスクは、レーザ光を透過する透過エリアを有し、
上記透過エリアは、透過したレーザ光が被照射物に照射される照射領域が上記被照射物に対して所定の方向に相対移動されるときに上記被照射物に生じる上記所定の方向の温度分布に対応して、上記レーザ光の透過率が分布するように形成されていることを特徴としている。
【0023】
この発明のレーザビーム投影マスクによれば、被照射物に照射するレーザ光の分布と被照射物の温度分布との不一致を抑制できる。したがって、均一な結晶粒長が得られない場合でも、結晶化領域の引継ぎを支障なく行うことができ、結晶性が悪くならず、良好な結晶性が得られる。さらに、本発明のレーザビーム投影マスクによれば、入射されるレーザビームを完全に均一にする必要はなく、光学系の調整の困難さを軽減でき、かつ、レーザ光の利用効率の低下を軽減できる。
【0024】
また、一実施形態のレーザビーム投影マスクでは、上記透過エリアは、所定の方向に向かって階段状のパターンに形成されている。
【0025】
この実施形態のレーザビーム投影マスクでは、上記透過エリアの階段状のパターンによって、上記相対移動速度を上げてスループットを向上させることが可能となる。
【0026】
また、一実施形態のレーザビーム投影マスクでは、上記透過エリアは、所定の方向に向かって拡大している。
【0027】
この実施形態のレーザビーム投影マスクでは、所定の方向に向かって被照射物に生じる温度が所定の方向に向かって上昇している場合に、被照射物に照射するレーザ光の分布と被照射物の温度分布との不一致を抑制できる。
【0028】
また、一実施形態のレーザビーム投影マスクでは、上記透過エリアは、所定の方向に向かって縮小している。したがって、この実施形態のレーザビーム投影マスクでは、所定の方向に向かって被照射物に生じる温度が所定の方向に向かって低下している場合に、被照射物に照射するレーザ光の分布と被照射物の温度分布との不一致を抑制できる。
【0029】
また、一実施形態のレーザビーム投影マスクは、上記透過エリアは、上記所定の方向における端部から中央部に向かって拡大している。
【0030】
この実施形態では、所定の方向における端部から中央部に向かって、被照射物に生じる温度が上昇している場合に、被照射物に照射するレーザ光の分布と被照射物の温度分布との不一致を抑制できる。
【0031】
また、一実施形態は、上記のレーザビーム投影マスクを用い、基板を形成する非晶質材料層または基板上に形成される非晶質材料層に、上記レーザビーム投影マスクを経由してレーザビームを投影して照射することによって、上記非晶質材料層を結晶化させるレーザ加工方法であって、
上記レーザビーム投影マスクを経由して上記レーザビームを上記非晶質材料層の表面に画される第1領域内に対して照射して、上記第1領域内の非晶質材料を溶融し、溶融した上記第1領域内の非晶質材料を凝固させて結晶化する第1の結晶化工程と、
上記レーザビームが照射される領域を上記第1領域から所定の方向に所定の距離だけ移動させ、この移動の直前の上記第1領域と部分的に重畳するように上記非晶質材料層の表面に画される第2領域を定める領域移動工程と、
上記第2領域内に対して上記レーザビーム投影マスクを経由して上記レーザビームを照射して、上記第2領域内の非晶質材料を溶融し、溶融した上記第2領域内の非晶質材料を凝固させて結晶化する第2の結晶化工程とを備え、
上記非晶質材料の結晶化される領域が所定の大きさに達するまで、非晶質材料からなる層の表面への上記レーザビームの照射と上記レーザビームを照射する領域の移動とを繰返し行う。
【0032】
この実施形態のレーザ加工方法では、上記レーザビーム投影マスクを経由して、非晶質材料層にレーザビームを投影して照射することによって、上記非晶質材料層を結晶化させる。これにより、上記非晶質材料層に照射するレーザ光の分布と上記非晶質材料層の温度分布との不一致を抑制できる。したがって、均一な結晶粒長が得られない場合でも、結晶化領域の引継ぎを支障なく行うことができ、結晶性が悪くならず、良好な結晶性が得られる。
【0033】
また、一実施形態のレーザ加工方法は、上記レーザビーム投影マスクを経由して上記非晶質材料に照射する上記レーザビームを第1のレーザビームとし、上記第1のレーザビームを上記非晶質材料に照射している期間に、上記レーザビーム投影マスクを経由せずに上記非晶質材料に第2のレーザビームを照射する。
【0034】
この実施形態のレーザ加工方法では、上記レーザビーム投影マスクを経由せずに上記非晶質材料に第2のレーザビームを照射するので、上記非晶質材料層の温度低下速度を低下させることができ、半導体多結晶のラテラル成長距離を大幅に延ばすことができる。
【0035】
また、一実施形態のレーザ加工方法では、上記基板を形成する非晶質材料層または基板上に形成される非晶質材料層の温度の空間分布を、上記レーザビームが照射される領域の移動の進行方向に関して後半の領域の温度を前半の領域の温度に比べて高くする。
【0036】
この実施形態のレーザ加工方法では、上記レーザビームの空間分布が上記進行方向の後半にピークを有する場合に対応して、非晶質材料層に照射するレーザ光の分布と非晶質材料層の温度分布との不一致を抑制できる。したがって、均一な結晶粒長が得られない場合でも、結晶化領域の引継ぎを支障なく行うことができ、結晶性が悪くならず、良好な結晶性が得られる。
【0037】
また、一実施形態のレーザ加工方法は、上記第2のレーザビームの強度の空間分布を、所定の方向に関して先頭が高くてこの先頭よりも後の部分が低くなる分布とし、
上記基板を形成する非晶質材料層または基板上に形成される非晶質材料層の温度の空間分布を、上記レーザビームが照射される領域の移動の進行方向に関して後半の領域の温度を前半の領域の温度に比べて低くする。
【0038】
この実施形態のレーザ加工方法では、非晶質材料層に照射するレーザ光の分布と非晶質材料層の温度分布との不一致を抑制できる。したがって、均一な結晶粒長が得られない場合でも、結晶化領域の引継ぎを支障なく行うことができ、結晶性が悪くならず、良好な結晶性が得られる。
【0039】
また、一実施形態のレーザ加工方法は、上記基板を形成する非晶質材料層または基板上に形成される非晶質材料層の温度の空間分布が、中央部の温度がこの中央部の周辺部の温度よりも高く、かつ、上記周辺部の温度分布が略均一になるように、上記第2のレーザビームの強度の空間分布を設定する。
【0040】
この実施形態のレーザ加工方法では、上記非晶質材料層の温度の空間分布が、中央部の温度がこの中央部の周辺部の温度よりも高く、かつ、上記周辺部の温度分布が略均一になる場合に、非晶質材料層に照射するレーザ光の分布と非晶質材料層の温度分布との不一致を抑制できる。
【0041】
また、一実施形態のレーザ加工装置は、レーザ光源と、請求項1に記載のレーザビーム投影マスクとを備え、基板を形成する非晶質材料からなる層または基板上に形成される非晶質材料からなる層に、上記レーザビーム投影マスクを経由してレーザビームを投影して照射することによって、上記非晶質材料を結晶化させるレーザ加工装置であって、
上記レーザビーム投影マスクを経由して上記レーザビームを上記非晶質材料からなる層の表面に画される第1領域内に対して照射して、上記第1領域内の非晶質材料を溶融し、溶融した上記第1領域内の非晶質材料を凝固させて結晶化する第1の結晶化工程と、
上記レーザビームが照射される領域を上記第1領域から所定の方向に所定の距離だけ移動させ、この移動の直前の上記第1領域と部分的に重畳するように上記非晶質材料からなる層の表面に画される第2領域を定める領域移動工程と、
上記第2領域内に対して上記レーザビーム投影マスクを経由して上記レーザビームを照射して、上記第2領域内の非晶質材料を溶融し、溶融した上記第2領域内の非晶質材料を凝固させて結晶化する第2の結晶化工程とを行い、
上記非晶質材料の結晶化される領域が所定の大きさに達するまで、非晶質材料からなる層の表面への上記レーザビームの照射と上記レーザビームを照射する領域の移動とを繰返し行うことによって、上記非晶質材料の結晶化領域を非対称形状にするように制御する制御部を備えた。
【0042】
この実施形態のレーザ加工装置によれば、上記レーザビーム投影マスクを経由して、非晶質材料層にレーザビームを投影して照射することによって、上記非晶質材料層を結晶化させる。これにより、上記非晶質材料層に照射するレーザ光の分布と上記非晶質材料層の温度分布との不一致を抑制できる。したがって、均一な結晶粒長が得られない場合でも、結晶化領域の引継ぎを支障なく行うことができ、結晶性が悪くならず、良好な結晶性が得られる。
【0043】
また、上記レーザ加工方法並びに上記レーザ加工装置でもって作製された結晶化デバイスによれば、繰り返し結晶化プロセスにより形成された結晶化エリアの形状が非対称であるので、より大きな結晶化エリア側にスイッチング素子等を作り込むことにより、結晶粒界が少なくデバイス特性を向上できる。特に、上記結晶化エリアに配置したスイッチング素子を備えた情報表示装置によれば、結晶粒界が少ないためデバイス特性を向上でき、消費電力を低減できる。
【発明の効果】
【0044】
この発明のレーザビーム投影マスクによれば、透過エリアは、透過したレーザ光が被照射物に照射される照射領域が上記被照射物に対して所定の方向に相対移動されるときに、上記被照射物に生じる上記所定の方向の温度分布に対応して、上記レーザ光の透過率が分布するように形成されている。
【0045】
したがって、被照射物に照射するレーザ光の分布と被照射物の温度分布との不一致を抑制できる。したがって、均一な結晶粒長が得られない場合でも、結晶化領域の引継ぎを支障なく行うことができ、結晶性が悪くならず、良好な結晶性が得られる。さらに、本発明のレーザビーム投影マスクによれば、入射されるレーザビームを完全に均一にする必要はなく、光学系の調整の困難さを軽減でき、かつ、レーザ光の利用効率の低下を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0047】
(第1の実施の形態)
図2(C)に、本発明の第1実施形態としてのレーザビーム投影マスク14を示す。このレーザビーム投影マスク14は、透過エリアとしての長方形状の3つのスリット25,26,27を有する。また、このレーザビーム投影マスク14の枠部分14aは、レーザ光を透過しない非透過エリアである。上記3つのスリット25,26,27は、図2(C)において矢印Xで示すX方向に所定の間隔を隔てて順次形成されており、スリット25、スリット26、スリット27の順に上記X方向の幅が小さくなっている。
【0048】
また、図3に、上記レーザビーム投影マスク14とレーザ光源11を備えるレーザ加工装置を示す。このレーザ加工装置は、本発明のレーザ加工装置の実施形態をなす。このレーザ加工装置は、上記レーザ光源11から出射されたレーザビームが、可変減衰器12、反射ミラー7,8、可変焦点視野レンズ13、投影マスク14、結像レンズ15、反射ミラー9を経由して、ステージ16上に搭載された半導体装置1の上面に照射されるようになっている。また、このレーザ加工装置は、コントローラ17を備え、このコントローラ17でステージ16およびレーザ光源11を制御する。
【0049】
図2(A)に、上記レーザ光源11が出射するエキシマレーザのビーム形状を示す。この実施形態では、レーザ光源11が出射するエキシマレーザを短パルスレーザとして、波長308nm(XeCl),パルス幅30nsのエキシマレーザとした。なお、レーザ光源11が出射するレーザ光は、上記エキシマレーザに限定されず、他のレーザであってもよい。
【0050】
図1には、上記半導体装置1を示す。この半導体装置1は、基板としての透明基板2上に、下地膜3、シリコン膜4が順次積層されて構成されている。ここで、下地膜3として用いられる材料は、SiO、SiON、SiN、AlN等からなる誘電体材料である。なお、この実施形態では、下地膜3の膜厚を100nm、シリコン膜4の膜厚を50nmとしたが、これらの数値に限定されるものではない。また、下地膜3は、蒸着、イオンプレーティング、またはスパッタリングなどにより透明基板2上に積層される。そして、シリコン膜4は、プラズマエンハンスド化学気相堆積(PECVD,Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、蒸着、またはスパッタリングなどによって下地膜3上に積層される。この時点で、シリコン膜4は、アモルファス(非晶質)の状態である。
【0051】
次に、上記レーザ加工装置によって、上記シリコン膜4を結晶化する工程を説明する。
【0052】
レーザ光源11から出射されたレーザビーム5は、可変減衰器12、反射ミラー7,8、可変焦点視野レンズ13、投影マスク14、結像レンズ15、反射ミラー9を経由して、ステージ16上に搭載された半導体装置1のシリコン膜4の上面に照射される。このレーザビーム5は、投影マスク14によるマスキングでもって、微細幅のパルスレーザとして、図1に示す照射領域Cに照射される。これにより、半導体膜としてのシリコン膜4をレーザ照射領域Cの厚さ方向全域にわたって溶融、凝固させて結晶化を行う(第1の結晶化工程)。
【0053】
上述のように、レーザビーム5のビーム形状は、図2(A)に示すように、レーザ出力が一定のパルス波形である。このレーザビーム5を上記投影マスク14を経由してシリコン膜4のレーザ照射領域Cに照射する。
【0054】
次に、コントローラ17は、ステージ16を制御して、矢印22の左方向に所定の距離だけ移動させる。この移動により、シリコン膜4は、図1の矢印ABの左方向に所定の距離だけ移動する(領域移動工程)。これにより、図2(C)の各スリット25、26、27を経由して、レーザ光5がシリコン膜4の表面に照射される領域は、上記第1領域からX方向(図1の矢印ABの右方向)に所定の距離だけ移動した第2領域となる。なお、この第2領域は、上記第1領域と部分的に重複している領域とする。この実施形態では、上記ステージ16の移動を3回行った。また、上記所定の距離は、一例として、投影マスク14の枠部分14aの柱部14a-1の幅Wよりも大きい値である。
【0055】
上記ステージ16を3回移動させて、上記レーザビーム投影マスク14を経由して、上記シリコン膜4の上面にレーザ光5を照射することによって、図2(D)の模式図に示すように、結晶粒が横方向(図1の矢印ABの方向)に非対称形状に形成される。
【0056】
上記3回の移動による4回のレーザ照射によって、レーザ照射領域Cに生じる温度分布の概略を、図2(B)に示す。図2(B)に、温度分布曲線V1で示すように、所定の方向に関する位置S1、S2、S3、S4、S5、S6の順に、シリコン膜4の温度は下がっており、位置S2では温度T4であり、位置S3では温度T3であり、位置S4では温度T2であり、位置S5では温度T1である(T1<T2<T3<T4)。上記所定の方向とは、図1に示す照射領域Cの上方に描かれた矢印ABの方向であり、図1において左から右に向かう方向である。
【0057】
そして、上記シリコン膜4の温度分布曲線V1が上記所定の方向に向かって低下しているのに対応して、図2(C)に示すように、上記レーザビーム投影マスク14は、スリット25の幅W1がスリット26の幅W2よりも大きい。また、スリット26の幅W2はスリット27の幅W3よりも大きい。なお、図2(C)におけるX方向は、図1における矢印ABの方向に対応している。
【0058】
また、図2(C)の各スリット25、26、27内には、各スリット25、26、27を透過して上記シリコン膜4の上記照射領域Cに照射されたレーザ光5によって、横方向(つまりAB方向)に成長した結晶粒を模式的に示している。すなわち、上記各スリット25、26、27内に描かれた各結晶粒は、各スリット25、26、27を経由して、レーザ光5をシリコン膜4の表面に画される第1領域内に照射して溶融させ、凝固させて結晶化させた結晶粒を示している。
【0059】
上述のように、上記第1実施形態のレーザビーム投影マスク14を備えたレーザ加工装置によれば、透過エリアをなすスリット25〜27は、透過したレーザ光5が被照射物としてのシリコン膜4に照射される照射領域(第1領域,第2領域)が上記シリコン膜4に対して所定の方向ABに相対移動されるときに、上記シリコン膜4に照射されるレーザ光5の上記所定の方向ABの分布が、上記シリコン膜4の上記所定の方向ABの温度分布に対応するように形成されている。
【0060】
したがって、シリコン膜4に照射するレーザ光5の分布とシリコン膜4の温度分布との不一致を抑制できる。したがって、均一な結晶粒長が得られない場合でも、結晶化領域の引継ぎを支障なく行うことができ、結晶性が悪くならず、良好な結晶性が得られる。さらに、上記レーザビーム投影マスク14によれば、マスク14に入射されるレーザビームを完全に均一にする必要はなく、光学系の調整の困難さを軽減でき、かつ、レーザ光の利用効率の低下を軽減できる。
【0061】
(第2の実施の形態)
次に、図4B(A)に、この発明の第2実施形態としてのレーザビーム投影マスク34を示す。このレーザビーム投影マスク34は、図4B(A)に示すX方向に、所定の間隔を隔てて形成された4つのスリット35〜38を有する。また、各スリット35〜38は、X方向と直交するY方向に所定の間隔を隔てて3個ずつ形成されている。
【0062】
各スリット35〜38のX方向の寸法Uは同じであるが、スリット35のY方向の寸法W4はスリット36のY方向の寸法W3よりも長く、スリット36のY方向の寸法W3はスリット37のY方向の寸法W2よりも長い。また、スリット37のY方向の寸法W2はスリット38のY方向の寸法W1よりも長い。
【0063】
また、図4B(A)に示すように、Y方向において、上段、中段、下段の各4つのスリット35〜38は、X方向への配列の仕方が同様である。すなわち、スリット36のY方向の端の辺は、スリット35のY方向の端の辺に比べて、距離G3だけY方向に位置ずれしている。また、スリット37のY方向の端の辺は、スリット36のY方向の端の辺に比べて、距離G2だけY方向に位置ずれしている。また、スリット38のY方向の端の辺は、スリット37のY方向の端の辺に比べて、距離G1だけY方向に位置ずれしている。
【0064】
次に、図7に、上記投影マスク34を備えるレーザ加工装置の構成を示す。このレーザ加工装置は、第1レーザ光源11と第2レーザ光源20を備える。上記第1レーザ光源11から出射された第1レーザビーム18は、図3に示したレーザ加工装置と同様、可変減衰器12、反射ミラー7,8、可変焦点視野レンズ13、投影マスク34、結像レンズ15、反射ミラー9を経由して、ステージ16上に搭載された半導体装置1の上面に照射される。また、このレーザ加工装置は、コントローラ17を備え、このコントローラ17でステージ16およびレーザ光源11を制御する。また、このレーザ加工装置が備える第2レーザ光源20が出射して第2レーザビーム19は、均一照射光学系21と反射ミラーを経由して半導体装置1の上面に照射される。
【0065】
なお、上記半導体装置1の構造は、前述の第1実施形態において説明した図1に示す半導体装置1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
上記第1のレーザビーム18は、上記第2のレーザビーム19に比べて、固体状態にあるシリコン膜4への吸収率が高い範囲の波長を有する。より具体的には、上記第1のレーザビーム18は、紫外域の波長を有することが好ましい。
【0067】
このような紫外域の波長を有する第1のレーザビーム18としては、たとえば、波長308nmのエキシマレーザパルスがあげられる。また、上記第1のレーザビーム18は、固体状態にあるシリコン膜4を溶融させるエネルギー量を有することが好ましい。このエネルギー量は、シリコン膜4の材質の種類、シリコン膜4の膜厚、シリコン膜4の結晶化領域の面積などにより変化し、一義的に定めることはできない。したがって、上記シリコン膜4における上記各条件に合わせて適宜適当なエネルギー量を有する第1のレーザビーム18を用いることが望ましい。シリコン膜4に替えて他の種類の半導体膜を結晶化する場合も同様である。具体的には、半導体膜としてのシリコン膜4を、全膜厚において融点以上の温度に加熱することのできるエネルギー量を有する第1のレーザビーム18を用いることが推奨される。
【0068】
さらに、上記第2のレーザビーム19は、第1のレーザビーム18に比べて、液体状態にあるシリコン膜4への吸収率が高い範囲の波長を有することが好ましい。具体的には、上記第2のレーザビーム19は、可視域から赤外域の波長を有することが好ましい。たとえば、波長532nmのYAGレーザ、波長1064nmのYAGレーザ、波長10.6μmの炭酸ガスレーザなどがあげられる。また、上記第2のレーザビーム19は、固体状態にあるシリコン膜4を溶融させないエネルギー量を有することが好ましい。このエネルギー量は、半導体膜としてのシリコン膜4の材質の種類、半導体膜としてのシリコン膜4の膜厚、結晶化領域の面積などにより変化し、一義的に定めることはできない。このため、上記シリコン膜4の態様に合わせて適宜適当なエネルギー量を有する第2のレーザビーム19を用いることが望ましい。具体的には、第2のレーザビーム19を単独で照射した場合には、シリコン膜4を、融点以上の温度に加熱することのできないエネルギー量を有する第2のレーザビーム19を用いることが推奨される。このことは、シリコン膜4に替えて他の種類の半導体膜を採用した場合も同様である。
【0069】
また、図7に示すレーザ加工装置では、たとえば、第1のレーザビーム18を半導体装置1のシリコン膜4の上面に対して垂直方向から入射させると共に、第2のレーザビーム19をシリコン膜4の上面に対して斜め方向から入射させることができる。
【0070】
なお、図7に示す第1のレーザ光源11は、レーザビームを放出し、シリコンを溶融することが可能であるレーザ発振器であればよく、特に限定されるものでないが、たとえば、エキシマレーザ、YAGレーザに代表される各種固体レーザなどの紫外域の波長を有するレーザ発振器であることが望ましい。また、上記第1のレーザ光源11を構成するレーザ発振器としては、上述した中でも、パルス放射可能な波長308nmのエキシマレーザ発振器が特に好ましい。一方、第2のレーザ光源20をなす発振器としては、溶融シリコンをはじめとする溶融状態の半導体膜に吸収される波長を有する第2レーザビーム19を放射できることが望ましい。
【0071】
ここで、図8に、第1、第2のレーザビーム18、19の出力波形の一例を示す。図8では、上記第1のレーザ光源11が第1のレーザビーム18を出射する時刻と出力を特性V1で示し、第2のレーザ光源20が第2のレーザビーム19を出射する時刻と出力を特性V2で示す。特性V1とV2を比較すれば分かるように、第2のレーザビーム19は、時刻t0からt2にわたって出射されるが、第1のレーザビーム18が出射されるのは、時刻t0の後の時刻t1から時刻t2以前までの期間である。つまり、第1のレーザビーム18の出射期間は、第2のレーザビーム19の出射期間に比べて、半分以下程度である。一方、第1のレーザビーム18の出力のピーク値は、第2のレーザビーム19の出力のピーク値の数倍の値である。第1のレーザビーム18と第2のレーザビーム19の照射時刻と出力との関係は、図8に示す関係に限定されないが、図8に示した特性と同様の関係にあることが好ましい。
【0072】
なお、以下に説明するように、図8の時刻t1からt2において、半導体膜としてのシリコン膜4は溶融状態にある。
【0073】
この液体状態にある前駆体半導体薄膜であるシリコン膜4に対して、第1のレーザビーム18に加えて第2のレーザビーム19の照射を行うことにより、上記前駆体半導体となっているシリコン膜4の温度低下速度を低下させることができ、固化するまでの時間を延長することができる。このため、液体状態にある前駆体半導体薄膜となっているシリコン膜4が固化することによって生成する半導体多結晶のラテラル成長距離を大幅に延ばすことができる。
【0074】
ここで、図7に示すレーザ加工装置によって、図1に示す半導体装置1のシリコン膜4に、第1のレーザビーム18と第2のレーザビーム19を照射して、シリコン膜4に結晶化領域を形成する工程を説明する。
【0075】
まず、第1の結晶化工程では、図8の特性V1に示すようなタイミングで、第1レーザ光源11から出射された第1のレーザビーム18を上記レーザビーム投影マスク34の各スリット35〜38を経由して、シリコン膜4の表面に画される第1領域内に照射する。また、図8の特性V2に示すようなタイミングで、第2レーザ光源20から出射された第2のレーザビーム19も上記シリコン膜4の表面に照射される。これらの照射により、上記第1領域内のシリコン膜4を溶融し、溶融した上記第1領域内のシリコン膜4を凝固させて結晶化する。
【0076】
次に、領域移動工程では、コントローラ17は、ステージ16を図7の矢印22の左方向に所定の距離だけ移動させる。この移動により、シリコン膜4は、図1の矢印ABの左方向に所定の距離だけ移動する。
【0077】
次に、第2の結晶化工程では、上記特性V1のタイミングで、第1のレーザ光源11から第1のレーザビーム18が出射され、図4B(A)の投影マスク34の各スリット35〜38を透過して、第1のレーザビーム18によるレーザ光5がシリコン膜4の表面に照射される。この照射の領域は第2の領域であり、上記第1の領域と部分的に重なっている。また、上記移動の距離は、一例として、各スリット35〜38のX方向の寸法Uとしてもよい。また、第1の結晶化工程と同様に、図8の特性V2に示すようなタイミングで、第2レーザ光源20から出射された第2のレーザビーム19も上記シリコン膜4の表面に照射される。これらの照射により、上記第1領域内のシリコン膜4を溶融し、溶融した上記第1領域内のシリコン膜4を凝固させて結晶化する。
【0078】
さらに、上記シリコン膜4の結晶化される領域が所定の大きさに達するまで、上述のシリコン膜4の表面への上記第1,第2のレーザビーム18,19の照射と、上記ステージ16の移動とを繰り返して複数回行う。これにより、一例として、図4B(B)に模式的に示すように、投影マスク34のY方向に相当する縦方向に非対称形状に成長した結晶化エリアARを形成できる。なお、図4B(B)では、投影マスク34の各スリット35〜38と、この各スリット35〜38を通ってシリコン膜4の表面に照射されるレーザ光の照射エリアに形成される結晶化エリアARとを、両者の対応関係が分かり易いように模式的に合成して描いている。
【0079】
ラテラル成長距離を大幅に延ばすためには、レーザ照射時のシリコン膜4の温度が高くなり、これに伴って、第1のレーザビーム18と第2のレーザビーム19をシリコン膜4に複数回照射した後の温度分布が高くなる。このことを、図4A(A),(B)に示す一例を参照して説明する。例えば、図4A(A)には、上記第1のレーザビーム18をなすエキシマレーザのビーム形状を示す。また、図4A(B)は、上述の工程でもって、上記第1のレーザビーム18が上記投影マスク34を透過してシリコン膜4の表面に複数回照射されることにより、この照射エリアに生じる概略温度分布を示している。図4A(B)では、シリコン膜4の表面での位置が、図1に示すAB方向の左から右に向かって、順に、S1、S2、S3、S4、S5、S6で表されている。この位置S1からS6に向かって(図4B(A)のX方向に対応)、シリコン膜4の表面温度は低下している。なお、この図4A(B)に示す温度分布は、図2(B)に示す温度分布に比べて、大幅に高くなっている。
【0080】
また、図4A(C)は、図4A(B)の温度分布T11〜T14に対応して、ラテラル成長距離がどのように変化するかを示している。シリコン膜4の表面温度T11、T12、T13、T14に、それぞれ、ラテラル成長距離L1、L2、L3、L4が対応しており、温度が高くなるのに応じてラテラル成長距離が増大している。
【0081】
これに対応して、この第2実施形態のレーザビーム投影マスク34は、図4B(A)を参照して上述した如く、スリット35〜38で構成される透過エリアによって、X方向に向かって、レーザ光の透過率が低下している。すなわち、各スリット35〜38のY方向の寸法W4〜W1は、ラテラル成長距離L4〜L1に対応している。
【0082】
また、図4B(A)に示すように、この第2実施形態のレーザビーム投影マスク34は、上述の如く、スリット36,37,38は、それぞれ、スリット35,36,37に対して、距離G3,G2,G1だけ、順次、Y方向に位置ずれしている。このように、投影マスク34では、スリット36〜38が、階段状に配置されている。このスリット36〜38の階段状の配置によって、ステージ16の移動速度を上げてスループットを向上させることが可能となる。
【0083】
ここで、図4B(A)に示すレーザビーム投影マスク34において、スリット35〜スリット38のY方向の寸法(スリット幅)W4〜W1と、各スリット幅W4〜W1に対応するラテラル成長距離L4〜L1の関係を次式(1)に示す。また、ラテラル成長距離L4〜L2とスリット間位置ずれ距離G3〜G1との関係を次式(2)に示す。
Wn=2×Ln (n=1〜4) … (1)
0.5Ln<G(n-1)<Ln (n=2〜4) … (2)
【0084】
図4B(B)に一例を示すように、上述したような繰り返し結晶化プロセスにより形成された結晶化エリアARの形状は、X方向の軸線J1に関して非対称になる。また、この一例では、結晶化エリアARをなすエリアARとエリアARのうちの大きい方のエリアARに、H形を横に倒した形状の半導体デバイス40を形成した場合の配置の様子を示している。したがって、上記結晶化エリアARによれば、結晶化エリアが軸線J1に関して対称である場合に比べて、より大きな結晶化エリアARにスイッチング素子のような半導体デバイス40を配置することによって、結晶粒界が少なくてデバイス特性を向上でき、消費電力を低減できる。
【0085】
なお、上記第2実施形態を備えたレーザ加工装置において、上記投影マスク34を通過した第1のレーザビーム18が表すマスクの像をシリコン膜4上に縮小投影するような照射領域に第1のレーザビーム18を照射してもよい。この場合、上記第2のレーザビーム19の照射領域を上記第1のレーザビーム18の照射領域よりも広くして、第2のレーザビーム19の照射領域が第1のレーザビーム18の照射領域を包含することが望ましい。さらに、この場合には、第2のレーザビーム19は、少なくともシリコン膜4が溶融している間にも照射することが望ましい。
【0086】
(第3の実施の形態)
次に、図5Bに、この発明の第3実施形態としてのレーザビーム投影マスク54を示す。このレーザビーム投影マスク54は、図5Bに示すX方向に、所定の間隔を隔てて形成された4つのスリット55〜58を有する。また、各スリット55〜58は、X方向と直交するY方向に所定の間隔を隔てて3個ずつ形成されている。各スリット55〜58のX方向の寸法U11は同じであるが、スリット55のY方向寸法W11はスリット56のY方向寸法W12よりも短く、スリット56のY方向寸法W12はスリット57のY方向寸法W13よりも短い。また、スリット57のY方向寸法W13はスリット58のY方向寸法W14よりも短い。
【0087】
また、図5Bに示すように、Y方向において、上段、中段、下段の各4つのスリット55〜58は、X方向への配列の仕方が同様である。すなわち、スリット56のY方向の端の辺は、スリット55のY方向の端の辺に比べて、距離G12だけY方向に位置ずれしている。また、スリット57のY方向の端の辺は、スリット56のY方向の端の辺に比べて、距離G13だけY方向に位置ずれしている。また、スリット58のY方向の端の辺は、スリット57のY方向の端の辺に比べて、距離G14だけY方向に位置ずれしている。
【0088】
図7に示す上述のレーザ加工装置において、前述の第2実施形態のレーザビーム投影マスク34に替えて、この第3実施形態のレーザビーム投影マスク54を備えてもよい。この場合のレーザ加工装置によって、第1,第2のレーザビーム18,19をシリコン膜4へ照射する工程については、前述の第2実施形態における説明と同様である部分については省略する。
【0089】
この第3実施形態を備えたレーザ加工装置では、第2レーザ光源20が出射する第2のレーザビーム19のビーム形状が、前述の第2実施形態でのレーザ加工装置と異なっている。つまり、この第3実施形態を備えたレーザ加工装置では、第2レーザ光源20の出射する第2のレーザビーム19のビーム形状は、図5A(A)に示すように、シリコン膜4における照射領域の進行方向に向かって先頭側の位置Spにピークを有する非対称形状のビーム形状である。なお、第1のレーザビーム18のビーム形状は、前述の第2実施形態におけるレーザ加工装置と同様である。
【0090】
この第1のレーザビーム18と図5A(A)に示すビーム形状の第2のレーザビーム19とを用いて、前述の第2実施形態におけるレーザ加工装置による工程と同様にして、投影マスク54を透過した第1のレーザビーム18と上記第2のレーザビーム19をシリコン膜4の表面に複数回照射する。これにより、シリコン膜4の表面には、図5A(B)に示すような温度分布が発生する。図5A(B)では、シリコン膜4の表面での位置が、図1に示すAB方向の左から右に向かって、順に、S1、S2、S3、S4、S5、S6で表されている。この位置S1からS6に向かって(図5BのX方向に対応)、シリコン膜4の表面温度は上昇している。なお、この図5A(B)に示す温度分布は、図4A(B)に示す温度分布とは逆に、進行方向の先頭部分の温度が高くなっている。
【0091】
また、図5A(C)には、図5A(B)の温度分布T11〜T14に対して、ラテラル成長距離がどのように変化するかを示している。シリコン膜4の表面温度T11、T12、T13、T14に、それぞれ、ラテラル成長距離L1、L2、L3、L4が対応しており、温度が高くなるのに応じてラテラル成長距離が増大している。
【0092】
これに対して、この第3実施形態のレーザビーム投影マスク54は、図5Bを参照して上述した如く、スリット55〜58で構成される透過エリアによって、X方向に向かって、レーザ光の透過率が増大している。すなわち、各スリット55〜58のY方向の寸法W11〜W14は、ラテラル成長距離L4〜L1に対応している。
【0093】
また、図5Bに示すように、この第3実施形態のレーザビーム投影マスク54は、上述の如く、スリット56,57,58は、それぞれ、スリット55,56,57に対して、距離G12,G13,G14だけ、順次、Y方向に位置ずれしている。このように、投影マスク54では、スリット55〜58が、階段状に配置されている。このスリット55〜58の階段状の配置によって、ステージ16の移動速度を上げてスループットを向上させることが可能となる。
【0094】
ここで、図5Bに示すレーザビーム投影マスク54において、スリット55〜スリット58のY方向の寸法(スリット幅)W11〜W14と、各スリット幅W11〜W14に対応するラテラル成長距離L4〜L1の関係を次式(3)に示す。また、ラテラル成長距離L4〜L2とスリット間位置ずれ距離G14〜G12との関係を次式(4)に示す。
W1n=2×Ln (n=1〜4) … (3)
0.5Ln<G1n)<Ln (n=2〜4) … (4)
【0095】
(第4の実施の形態)
次に、図6Bに、この発明の第4実施形態としてのレーザビーム投影マスク74を示す。このレーザビーム投影マスク74は、図6Bに示すX方向に、所定の間隔を隔てて形成された4つのスリット75〜78を有する。また、各スリット75〜78は、X方向と直交するY方向に所定の間隔を隔てて3個ずつ形成されている。各スリット75〜78のX方向の寸法U11は同じである。
【0096】
スリット75のY方向寸法W21はスリット78のY方向寸法W24と略同じであり、スリット76のY方向寸法W22はスリット77のY方向寸法W23と略同じである。また、Y方向寸法W22はY方向寸法W21の略2倍である。
【0097】
また、図6Bに示すように、Y方向において、上段、中段、下段の各4つのスリット75〜78は、X方向への配列の仕方が同様である。すなわち、スリット76のY方向の端の辺は、スリット75のY方向の端の辺に比べて、距離G22だけY方向に位置ずれしている。また、スリット77のY方向の端の辺は、スリット76のY方向の端の辺に比べて、距離G23だけY方向に位置ずれしている。また、スリット78のY方向の端の辺は、スリット77のY方向の端の辺に比べて、距離G24だけY方向に位置ずれしている。
【0098】
図7に示す上述のレーザ加工装置において、前述の第2実施形態のレーザビーム投影マスク34に替えて、この第4実施形態のレーザビーム投影マスク74を備えてもよい。この場合のレーザ加工装置によって、第1,第2のレーザビーム18,19をシリコン膜4へ照射する工程については、前述の第2実施形態における説明と同様である部分については省略する。
【0099】
この第4実施形態を備えたレーザ加工装置では、第2レーザ光源20が出射する第2のレーザビーム19のビーム形状が、前述の第2実施形態でのレーザ加工装置と異なっている。つまり、この第4実施形態を備えたレーザ加工装置では、第2レーザ光源20の出射する第2のレーザビーム19のビーム形状は、図6A(A)に示すように、シリコン膜4における照射領域の進行方向に向かって先頭側の位置Sqにピークを有する非対称形状のビーム形状である。図6A(A)に示す第2のレーザビーム19のビーム形状は、図5A(A)に示す第2のレーザビーム19のビーム形状に比べると、フラット化されている。なお、第1のレーザビーム18のビーム形状は、前述の第2実施形態におけるレーザ加工装置と同様である。
【0100】
この第1のレーザビーム18と図6A(A)に示すビーム形状の第2のレーザビーム19とを用いて、前述の第2実施形態におけるレーザ加工装置による工程と同様にして、投影マスク74を透過した第1のレーザビーム18と上記第2のレーザビーム19をシリコン膜4の表面に複数回照射する。これにより、シリコン膜4の表面には、図6A(B)に示すような温度分布が発生する。図6A(B)では、シリコン膜4の表面での位置が、図1に示すAB方向の左から右に向かって、順に、S1、S4で表されている。この位置S1から、位置S1と位置S4との略中央に向かって(図6BのX方向に対応)、シリコン膜4の表面温度は上昇している。また、この略中央の部分から上記位置S4に向かって、シリコン膜4の表面温度は低下している。また、位置S1での温度T11と位置S4での温度T11とは略等しくなっている。なお、この図6A(B)に示す温度分布は、図4A(B)や図5A(B)に示す温度分布と比べると、フラット化されているものの、中央部分の温度が高くなっている。
【0101】
また、図6A(C)には、図6A(B)に示す温度分布T11〜T14に対して、ラテラル成長距離がどのように変化するかを示している。シリコン膜4の表面温度T11、T12、T13、T14に、それぞれ、ラテラル成長距離L1、L2、L3、L4が対応しており、温度が高くなるのに応じてラテラル成長距離が増大している。
【0102】
これに対応して、この第4実施形態のレーザビーム投影マスク57は、図6Bを参照して上述した如く、スリット75〜78で構成される透過エリアによって、X方向の両端部分から中央部分に向かって、レーザ光の透過率が増大している。すなわち、各スリット75〜78のY方向の寸法W21〜W24は、図6A(B)に示す温度曲線に対応している。
【0103】
また、図6Bに示すように、この第4実施形態のレーザビーム投影マスク74は、上述の如く、スリット76,77,78は、それぞれ、スリット75,76,77に対して、距離G22,G23,G24だけ、順次、Y方向に位置ずれしている。このように、投影マスク74では、スリット75〜78が、階段状に配置されている。このスリット75〜78の階段状の配置によって、ステージ16の移動速度を上げてスループットを向上させることが可能となる。
【0104】
上記第1乃至第4の実施形態のレーザビーム投影マスク14、34、54、74を備えたレーザ加工装置によれば、上述のような工程でもって、シリコン膜4に結晶化領域を形成できる。そして、このようにして形成した半導体膜について適当な処理を行うことでトランジスタを形成することができ、液晶パネルなどの表示素子として用いることが可能である。この場合、本発明のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置によるレーザ加工方法によれば、半導体膜に形成された結晶粒が、従来例に比べて格段に大きいので、トランジスタのチャネルを流れるキャリアの移動度が高く、高性能の素子が得られる。
【0105】
尚、上記第1〜第4実施形態においては、非晶質材料層がアモルファスシリコン膜4である場合を説明したが、これに限定されることなく、非晶質材料層は非晶質のゲルマニウムやそれらの合金であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1〜4実施形態のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置によってレーザビームが照射される半導体装置1の断面図である。
【図2】図2(A)は本発明の第1実施形態のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置で発生するレーザビームのビーム形状を示す波形図であり、図2(B)は上記レーザ加工装置によって半導体装置1にレーザ光を照射した結果、シリコン膜に形成される温度分布を示す温度分布図であり、図2(C)は上記第1実施形態のレーザビーム投影マスクおよびこのマスクに対応して成長される結晶粒を模式的に示す模式図であり、図2(D)は結晶粒が横方向に非対称形状に形成された様子を示す模式図である。
【図3】上記第1実施形態のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図4A】図4A(A)は上記第2実施形態のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置で発生するレーザビームのビーム形状を示す波形図であり、図4A(B)は上記レーザ加工装置によって半導体装置1にレーザ光を照射した結果、シリコン膜に形成される温度分布を示す温度分布図であり、図4A(C)は図4A(B)の温度分布に対応してラテラル成長距離が変化する様子を示す特性図である。
【図4B】図4B(A)は上記第2実施形態のレーザビーム投影マスクを示す平面図であり、図4B(B)は結晶化エリアARの形状とスリット35〜38とを対応付けて描いた合成模式図である。
【図5A】図5A(A)は上記第3実施形態のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置で発生するレーザビームのビーム形状を示す波形図であり、図5A(B)は上記レーザ加工装置によって半導体装置1にレーザ光を照射した結果、シリコン膜に形成される温度分布を示す温度分布図であり、図5A(C)は図5A(B)の温度分布に対応してラテラル成長距離が変化する様子を示す特性図である。
【図5B】上記第3実施形態のレーザビーム投影マスクを示す平面図である。
【図6A】図6A(A)は上記第4実施形態のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置で発生するレーザビームのビーム形状を示す波形図であり、図6A(B)は上記レーザ加工装置によって半導体装置1にレーザ光を照射した結果、シリコン膜に形成される温度分布を示す温度分布図であり、図6A(C)は図6A(B)の温度分布に対応してラテラル成長距離が変化する様子を示す特性図である。
【図6B】上記第4実施形態のレーザビーム投影マスクを示す平面図である。
【図7】上記第2実施形態のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図8】図7のレーザ加工装置における第1のレーザビームと第2のレーザビームの照射タイミングを示す波形図である。
【図9】従来例のレーザビーム投影マスクを備えたレーザ加工装置によってレーザビームが照射される半導体装置101の断面図である。
【図10】図10(A)〜図10(D)は上記従来のレーザ加工装置によって、半導体膜に結晶を成長させる様子を順に示す模式図である。
【図11】上記従来のレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図12】図12(A)は上記従来のレーザ加工装置で発生するレーザビームの形状を示す波形図であり、図12(B)は上記従来のレーザ加工装置が備えるレーザビーム投影マスク214を示す平面図であり、図12(C)は従来のレーザビーム投影マスク231およびこのマスクのスリットとこのスリットに対応して成長した結晶粒を模式的に描いた合成模式図である。
【符号の説明】
【0107】
1 半導体デバイス
2 透明基板
3 下地膜
4 シリコン膜
5 レーザビーム
11 レーザ光源
12 可変減衰器
13 可変減焦点視野レンズ
14、34、54、74 レーザビーム投影マスク
15 結像レンズ
16 ステージ
17 コントローラ
18 第1レーザビーム
19 第2レーザビーム
20 第2レーザ光源
25〜27、35〜38、55〜58、75〜78 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を透過する透過エリアを有し、
上記透過エリアは、
透過したレーザ光が被照射物に照射される照射領域が上記被照射物に対して所定の方向に相対移動されるときに上記被照射物に生じる上記所定の方向の温度分布に対応して、上記レーザ光の透過率が分布するように形成されていることを特徴とするレーザビーム投影マスク。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザビーム投影マスクにおいて、
上記透過エリアは、所定の方向に向かって階段状のパターンに形成されていることを特徴とするレーザビーム投影マスク。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザビーム投影マスクにおいて、
上記透過エリアは、所定の方向に向かって拡大していることを特徴とするレーザビーム投影マスク。
【請求項4】
請求項2に記載のレーザビーム投影マスクにおいて、
上記透過エリアは、所定の方向に向かって縮小していることを特徴とするレーザビーム投影マスク。
【請求項5】
請求項2に記載のレーザビーム投影マスクにおいて、
上記透過エリアは、上記所定の方向における端部から中央部に向かって拡大していることを特徴とするレーザビーム投影マスク。
【請求項6】
請求項1に記載のレーザビーム投影マスクを用い、基板を形成する非晶質材料層または基板上に形成される非晶質材料層に、上記レーザビーム投影マスクを経由してレーザビームを投影して照射することによって、上記非晶質材料層を結晶化させるレーザ加工方法であって、
上記レーザビーム投影マスクを経由して上記レーザビームを上記非晶質材料層の表面に画される第1領域内に対して照射して、上記第1領域内の非晶質材料を溶融し、溶融した上記第1領域内の非晶質材料を凝固させて結晶化する第1の結晶化工程と、
上記レーザビームが照射される領域を上記第1領域から所定の方向に所定の距離だけ移動させ、この移動の直前の上記第1領域と部分的に重畳するように上記非晶質材料層の表面に画される第2領域を定める領域移動工程と、
上記第2領域内に対して上記レーザビーム投影マスクを経由して上記レーザビームを照射して、上記第2領域内の非晶質材料を溶融し、溶融した上記第2領域内の非晶質材料を凝固させて結晶化する第2の結晶化工程とを備え、
上記非晶質材料の結晶化される領域が所定の大きさに達するまで、非晶質材料層の表面への上記レーザビームの照射と上記レーザビームを照射する領域の移動とを繰返し行うことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ加工方法において、
上記レーザビーム投影マスクを経由して上記非晶質材料に照射する上記レーザビームを第1のレーザビームとし、
上記第1のレーザビームを上記非晶質材料に照射している期間に、上記レーザビーム投影マスクを経由せずに上記非晶質材料に第2のレーザビームを照射することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザ加工方法であって、
上記基板を形成する非晶質材料層または基板上に形成される非晶質材料層の温度の空間分布を、上記レーザビームが照射される領域の移動の進行方向に関して後半の領域の温度を前半の領域の温度に比べて高くすることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項9】
請求項7に記載のレーザ加工方法において、
上記第2のレーザビームの強度の空間分布を、所定の方向に関して先頭が高くてこの先頭よりも後の部分が低くなる分布とし、
上記基板を形成する非晶質材料層または基板上に形成される非晶質材料層の温度の空間分布を、上記レーザビームが照射される領域の移動の進行方向に関して後半の領域の温度を前半の領域の温度に比べて低くすることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項10】
請求項7に記載のレーザ加工方法であって、
上記基板を形成する非晶質材料層または基板上に形成される非晶質材料層の温度の空間分布が、中央部の温度がこの中央部の周辺部の温度よりも高く、かつ、上記周辺部の温度分布が略均一になるように、上記第2のレーザビームの強度の空間分布を設定することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項11】
レーザ光源と、請求項1に記載のレーザビーム投影マスクとを備え、基板を形成する非晶質材料からなる層または基板上に形成される非晶質材料からなる層に、上記レーザビーム投影マスクを経由してレーザビームを投影して照射することによって、上記非晶質材料を結晶化させるレーザ加工装置であって、
上記レーザビーム投影マスクを経由して上記レーザビームを上記非晶質材料からなる層の表面に画される第1領域内に対して照射して、上記第1領域内の非晶質材料を溶融し、溶融した上記第1領域内の非晶質材料を凝固させて結晶化する第1の結晶化工程と、
上記レーザビームが照射される領域を上記第1領域から所定の方向に所定の距離だけ移動させ、この移動の直前の上記第1領域と部分的に重畳するように上記非晶質材料からなる層の表面に画される第2領域を定める領域移動工程と、
上記第2領域内に対して上記レーザビーム投影マスクを経由して上記レーザビームを照射して、上記第2領域内の非晶質材料を溶融し、溶融した上記第2領域内の非晶質材料を凝固させて結晶化する第2の結晶化工程とを行い、
上記非晶質材料の結晶化される領域が所定の大きさに達するまで、非晶質材料からなる層の表面への上記レーザビームの照射と上記レーザビームを照射する領域の移動とを繰返し行うことによって、上記非晶質材料の結晶化領域を非対称形状にするように制御する制御部を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−13050(P2006−13050A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186525(P2004−186525)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】