説明

レーザモジュール製造方法

【課題】レーザモジュールの波長と出力を容易に調整すること。
【解決手段】レーザモジュール製造方法において、レーザモジュールが所望の波長λのレーザ光を出射する際の半導体レーザ素子の光出力PLDを求める第1ステップ(ステップS11)と、半導体レーザ素子が光出力PLDを出力する場合に、光ファイバから出射されるレーザ光が目標光出力Pf_ratedとなるための光学系と光ファイバとの間の結合効率CEを求める第2ステップ(ステップS12)と、半導体レーザ素子に所定の電流Iを通じながら、光学系と光ファイバの結合状態を調整し、結合効率CEが得られる位置を探索して光学系と光ファイバの位置決めをする第3ステップ(ステップS16)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザモジュール製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体レーザ素子をペルチェ素子上に配置し、半導体レーザ素子から出力されるレーザ光を、光学系を介して光ファイバに導入し、光ファイバからレーザ光を取り出すレーザモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−090174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたレーザモジュールでは、レーザモジュールから出力されるレーザ光の強度と波長とを制御する必要がある。半導体レーザ素子から出力されるレーザ光の強度は、半導体レーザを駆動する駆動電流によって変化するが、駆動電流が変化すると、波長も変化してしまうため、レーザモジュールの製造工程において、波長と強度との調整が困難であった。
【0005】
そこで、本発明はレーザモジュールの波長と出力を容易に調整することが可能なレーザモジュール製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、レーザ光を射出する半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を出力用の光ファイバに光結合する光学系と、を有するレーザモジュール製造方法において、前記レーザモジュールが所望の波長λのレーザ光を出射する際の前記半導体レーザ素子の光出力PLDを求める第1ステップと、前記半導体レーザ素子が前記光出力PLDを出力する場合に、前記光ファイバから出射されるレーザ光が目標光出力Pf_ratedとなるための前記光学系と前記光ファイバとの間の結合効率CEを求める第2ステップと、前記半導体レーザ素子に所定の電流Iを通じながら、前記光学系と前記光ファイバの結合状態を調整し、前記結合効率CEが得られる位置を探索して前記光学系と前記光ファイバの位置決めをする第3ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、レーザモジュールの波長と出力を容易に調整することが可能となる。
【0007】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記第1ステップでは、前記レーザモジュールから所望の波長λのレーザ光を出射するために前記半導体レーザ素子に流す電流Iを求めるとともに、前記電流Iを流した場合の前記半導体レーザ素子の光出力PLDを求め、前記第2ステップでは、前記半導体レーザ素子の光出力がPLDである場合に、前記光ファイバからの光出力が目標出力Pf_ratedになるための前記光学系と前記光ファイバとの間の結合効率CEを求め、前記第3ステップでは、前記半導体レーザ素子に所定の電流Iを通じ、前記光学系と前記光ファイバの結合を調整して最大光出力を求め、その最大光出力から前記結合効率CEが得られる位置を探索して前記光学系と前記光ファイバの位置決めをする、ことを特徴とする。
このような方法によれば、半導体レーザ素子毎に最適な電流Iおよび結合効率CEを求めることができる。
【0008】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記第3ステップにおいて位置決めをした後、前記半導体レーザ素子に前記電流Iを通じ、前記光ファイバから出射されるレーザ光の波長がλであり、光出力がPf_ratedであるか判定し、λおよびPf_ratedでない場合には前記電流を調整するとともに、前記光学系と前記光ファイバの結合を調整することを特徴とする。
このような方法によれば、光出力と波長をさらに正確に調整することができる。
【0009】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記第1ステップでは、前記半導体レーザ素子に流れる電流の増加量ΔIに対する波長の増加量Δλの比を示す波長変化率をSとし、同じ電流を流した場合の前記半導体レーザ素子とレーザモジュールの波長の比をαとし、所定の電流Iを流したときに前記半導体レーザ素子から出力される波長をλLDとした場合に、Iを以下の式で求め、

前記半導体レーザ素子に流れる電流の増加量ΔIに対する光出力の増加量ΔPLDの比を示すスロープ効率をSEとし、閾値電流をIthとした場合に、光出力PLDを以下の式で求め、

前記第2ステップでは、結合効率CEを以下の式で求め、

前記第3ステップでは、所定の電流Iを流したときの光出力PLDをPLD(I)とした場合に、電流Iを流した際の前記光ファイバからの光出力P(I)を以下の式で求める、

ことを特徴とする。
このような方法によれば、計算によって半導体レーザ素子毎に最適な設定値を求めることができるとともに、事前計算によって半導体レーザ素子の適否を判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザモジュールの波長と出力を容易に調整することが可能なレーザモジュール製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によって製造されるレーザモジュールの構成例を示す図である。
【図2】図1に示すレーザモジュールの概略構成を示す図である。
【図3】図3(A)は駆動電流と発振波長等の関係を示す図であり、(B)は結合効率とモジュール出力波長との関係を示す図である。
【図4】本実施形態の製造方法の工程を示す図である。
【図5】環境温度とモジュール出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(A)本発明の実施形態の説明
図1は、本発明の実施形態に係るレーザモジュール製造方法によって製造されるレーザモジュールの一例の断面図を示している。この図において、レーザモジュールMは、内部を気密封止するパッケージ6と、パッケージ6内に設けられ、レーザ光を出射する半導体レーザ素子1と、半導体レーザ素子1の前側(図1の右側)の端部から出射されたレーザ光を入射して外部に送出する光ファイバ2とを有する。
【0014】
半導体レーザ素子1は、ヒートシンク7上に固定して取り付けられており、ヒートシンク7はチップキャリア8上に固定して取り付けられている。チップキャリア8は基台9に取り付けられ、基台9の下方にはペルチェ素子からなる冷却装置10が設けられる。半導体レーザ素子1の発熱による温度の上昇はチップキャリア8上に設けられたサーミスタ11によって検出され、サーミスタ11により検出される温度が一定になるように、冷却装置10が制御される。これによって、半導体レーザ素子1のレーザ出力を安定化させることができる。
【0015】
基台9上の半導体レーザ素子1の前側には半導体レーザ素子1から出射されたレーザ光を平行光にするための第1レンズ3が設置されている。第1レンズ3は、基台9上に設けられたレンズホルダ12によって保持されている。
【0016】
パッケージ6の側部に形成されたフランジ部6aの内部には、第1レンズ3を通過した光が入射する窓部14aと、レーザ光を集光する第2レンズ4が設けられている。第2レンズ4は、レンズホルダ13によって保持され、レンズホルダ13はフランジ部6aの端部において光軸と垂直な面内(XY平面)で位置を調整した後、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)を例とするレーザ溶接により両者の境界部において固定される。レンズホルダ13の端部には光ファイバ2が金属製のスライドリング14を介してYAGレーザ溶接により固定される。光ファイバ2はフェルール16によって保持され、フェルール16は、スライドリング14の内部にYAGレーザ溶接により固定され、スライドリング14は、レンズホルダ13の端部において、光ファイバ2の光軸と垂直な面内(XY平面)で、位置が調整された後、両者の境界部においてYAGレーザ溶接される。これにより光ファイバ2の光軸方向(Z軸方向)および光軸と垂直な面内(XY平面)において位置が固定される。また、半導体レーザ素子1と送出用の光ファイバ2との間に、光ファイバ2側からの反射戻り光を阻止するための光アイソレータ5が設けられる。
【0017】
半導体レーザ素子1の前側端部から出射されたレーザ光は、第1レンズ3によって平行光になり、光アイソレータ5を介して第2レンズ4によって集光され、フェルール15によって保持された光ファイバ2の端部に入射され外部に送出される。
【0018】
(B)実施形態の原理の説明
つぎに、本実施形態に係るレーザモジュール製造方法の概略について説明する。図2は、図1に示すレーザモジュールMの概略構成を示す図である。この図2に示すように、本発明の製造方法によって製造しようとするレーザモジュールMは、半導体レーザ素子1から出射される、波長がλLDで、光出力がPLDのレーザ光を第1レンズ3によって平行光にし、第2レンズ4によって集光し、光ファイバ2に一端入射する。光ファイバ2の他端には測定装置16が接続され、光ファイバ2から出射されるレーザ光の波長λおよび出力Pを測定する。
【0019】
本実施形態では、まず、レーザモジュールMが所望の波長λのレーザ光を出射する際の半導体レーザ素子1の出力PLDを計算によって求める。具体的には、レーザモジュールMから出力されるレーザ光の波長λは、図3(A)の破線LDMWに示すように、半導体レーザ素子1に流す電流Iによって変化する。そこで、個々の半導体レーザ素子1の予め分かっている特性に基づいて、所望の波長λがレーザモジュールMから出力される電流を流した場合の半導体レーザ素子1の光出力PLDを求める。なお、図3(A)の実線LDWは半導体レーザ素子1から出力されるレーザ光の波長と、駆動電流Iとの関係を示している。
【0020】
つぎに、以上のようにして求めた光出力PLDが半導体レーザ素子1から出力されている場合において、光ファイバ2から出力される目標出力Pf_ratedを得るための第2レンズ4と、光ファイバ2との間の結合効率CEを計算によって求める。具体的には、Pf_rated/PLD=CE(<1)を求める。なお、結合効率を調整することにより、図3(A)に示すように、電流と出力との関係を示すグラフの傾きが変化する。具体的には、半導体レーザ素子1から直接出力されるレーザ光の光出力と電流との関係は図3(A)に実線LDPで示すようなグラフで表される。また、結合が大きい場合にレーザモジュールMから出力されるレーザ光の光出力と電流との関係は図3(A)に破線LDMPで示すようなグラフで表される。また、結合が小さい場合にレーザモジュールMから出力されるレーザ光の光出力と電流との関係は図3(A)に一点鎖線LDMPで示すようなグラフで表される。すなわち、結合効率が大きい方がグラフの傾きが大きくなる。
【0021】
つづいて、半導体レーザ素子1に所定の電流(例えば、500mA)を通じながら、光ファイバ2からの光出力が最大となる位置を探索する。そして、そのときの光出力値に対して、上で求めた結合効率CEを乗算し、目的となる光出力を求め、その光出力値になるように第2レンズ4と光ファイバ2の結合効率を調整する。そして、目的となる光出力値が得られた位置に光ファイバ2の位置決めをする。
【0022】
そして、所望の波長λを出力する電流を半導体レーザ素子1に流し、そのとき、光ファイバ2から出力されるレーザ光の波長と光出力を測定装置16によって測定する。そして、波長と光出力が所望の値である場合には、YAGレーザ溶接によって光ファイバ2を固定する。また、波長と光出力が所望の値でない場合には、所望の波長になるように半導体レーザ素子1に流す電流を調整するとともに、光出力が所望の値になるように、光ファイバ2の位置を調整する。
【0023】
以上の工程により、レーザモジュールMから出力されるレーザ光の波長と光出力を適切に調整することが可能になる。
【0024】
(C)実施形態の詳細な工程の説明
つぎに、図4を参照して、本実施形態の製造方法の詳細について説明する。
まず、ステップS10では、以下の式(1)に基づいて、レーザモジュールMから所望の波長λが出力される場合の半導体レーザ素子1に流す電流Iを求める。なお、λLDは、電流Iを流したときに半導体レーザ素子1から出力されるレーザ光の波長(図3(A)参照)を示す。また、αは同じ電流を流した場合に半導体レーザ素子1から出力されるレーザ光の波長と、レーザモジュールMから出力されるレーザ光の波長の比(=レーザモジュールMのレーザ光の波長/半導体レーザ素子1のレーザ光の波長)を示す。レーザモジュールMに組み込まれた状態では半導体レーザ素子1の放熱性が高いことから、一般的にはα<1である。また、S並びにSは、半導体レーザ素子1から出力されるレーザ光と、レーザモジュールMから出力されるレーザ光の電流がΔI増加した場合のレーザ光の波長の増加量Δλの比を示す(Δλ/ΔI)。Sは、βSの関係で表すことができるが、通常は変化がないと仮定した場合にβ=1である。なお、S、S、βおよびαは、複数の半導体レーザ素子1に基づいて求められる統計データである。また、λLDは、個々の半導体レーザ素子単位で測定される個別データである。

【0025】
ステップS11では、半導体レーザ素子1にステップS10で求めた駆動電流Iを流した場合に半導体レーザ素子1から出力される光出力PLDを以下の式(2)に基づいて求める。なお、Ithは閾電流(半導体レーザ素子1が発光する閾値の電流)を示し、SEは電流がΔI増加した場合の半導体レーザ素子1の光出力の増加量ΔPLDを示すスロープ効率である(SE=ΔPLD/ΔI)。なお、SEおよびIthは、個々の半導体レーザ素子単位で測定される個別データである。

【0026】
ステップS12では、ステップS11で求めたPLDを以下の式(3)に適用して、第2レンズ4と光ファイバ2との結合効率CEを求める。なお、Pf_ratedは、レーザモジュールMの光ファイバ2から出力されるレーザ光の目的となる光出力である。なお、以上の式をまとめると式(4)になる。


【0027】
ステップS13では、半導体レーザ素子1に500mAの電流を通じる。その結果、半導体レーザ素子1から出射されたレーザ光は、第1レンズ3および第2レンズ4を介して光ファイバ2に入射され、測定装置16に入射される。
【0028】
ステップS14では、フェルール15のZ軸方向に移動させ、光ファイバ2から出力されるレーザ光の出力が最大になるように調整する。具体的には、測定装置16の出力を参照しながら、フェルール15をZ軸方向(光軸に平行な方向)およびXY平面(光軸と垂直な面内)に移動させ、出力が最大になる位置を求め、その位置における出力値(PLD@500mA)を測定装置16から読み取る。
【0029】
ステップS15では、以下の式(5)に基づいて、所定電流Iでの半導体レーザ素子1の光出力(PLD@500mA)に対してステップS12で求めたCEを乗算し、所望の結合効率における出力値P@500mAを求める。

【0030】
ステップS16では、半導体レーザ素子1に500mAの電流を流した状態で、光ファイバ2の出力が、ステップS15で求めた出力値P@500mAになるように、フェルール15をZ軸方向(光軸に平行な方向)に移動(デフォーカス)させる。なお、デフォーカスする方向としては、フェルール15が第2レンズ4から遠ざかる方向に移動させることが望ましい。なお、その理由については後述する。
【0031】
ステップS17では、ステップS10で求めた駆動電流Iを半導体レーザ素子1に通じる。
【0032】
ステップS18では、測定装置16によって光ファイバ2から出力されるレーザ光の波長を検出する。
【0033】
ステップS19では、測定装置16によって光ファイバ2から出力されるレーザ光の光出力を検出する。
【0034】
ステップS20では、ステップS18およびステップS19で測定された波長と光出力が所望の値であるか否かを判定し、所望の値でないと判定した場合(ステップS20:No)にはステップS21に進み、それ以外の場合(ステップS20:Yes)には処理を終了する。
【0035】
ステップS21では、位置の調整を行う。具体的には、ステップS18で検出した波長が所望の波長よりも短い場合にはフェルール15をデフォーカス方向(第2レンズ4からフェルール15が離れる方向)に移動させ、長い場合にはフェルール15をフォーカス方向(第2レンズ4にフェルール15が近付く方向)に移動させる。また、ステップS19で検出した光出力が所望の光出力よりも大きい場合にはフェルール15をデフォーカス方向(第2レンズ4からフェルール15が離れる方向)に移動させ、所望の光出力よりも小さい場合にはフェルール15をフォーカス方向(第2レンズ4にフェルール15が近付く方向)に移動させる。そして、ステップS18に進む。なお、ステップS18〜ステップS21の処理が繰り返されることにより、波長と光出力が所望の値となる。
【0036】
そして、以上の調整が終了すると、各部をYAGレーザ溶接によって固定し、調整を終了する。
【0037】
以上の工程により、レーザモジュールMから出力されるレーザ光が所定の波長となるとともに、所定の光出力になるように調整することができる。
【0038】
以上に説明したように本実施形態によれば、レーザモジュールMの波長と出力を簡易かつ正確に調整することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、ステップS10における波長λの設定を変更することで、出力される波長を調整することができる。図3(B)は結合効率とレーザモジュールMの出力波長との関係を示す図である。より詳細には、図3(B)では、半導体レーザ素子1の温度TLDを一定とし、レーザモジュールMから出力されるレーザ光の出力強度Pf_ratedを一定にした場合において、結合効率とレーザモジュールMからの出力波長との関係を示している。なお、各グラフは、スロープ効率SEが異なる半導体レーザ素子の測定結果である(0.25W/A〜0.5W/A)。この図に示すように、結合効率を変化させることで、波長を変化させることが可能となる。また、各グラフの比較から、半導体レーザ素子のスロープ効率SEが大きいほど、波長の調整範囲が広いことが分かる。この図の例では、最もスロープ効率SEが高い半導体レーザ素子(左端のグラフ)では、結合効率を調整することにより、約20nm以上の波長の調整を行うことが可能になる。
【0040】
また、本実施形態では、ステップS16におけるデフォーカスにおいて、フェルール15が第2レンズ4から遠ざかるように調整するようにした。これは、図5に示すように、フェルール15を第2レンズ4に近付くように調整するよりも、遠ざかるように調整する方が、環境温度変化によるレーザモジュールMからの出力光の変動が少ないためである。より詳細には、図5の黒丸は光ファイバ2をフォーカス位置に設定した場合の環境温度の変化とレーザモジュールMの出力の変化を示すグラフである。また、白丸はフォーカス位置から+50μmデフォーカスする方向(第2レンズ4から光ファイバ2が遠ざかる方向)に設定した場合の環境温度の変化とレーザモジュールMの出力の変化を示すグラフであり、白四角はフォーカス位置から−50μmデフォーカスする方向(第2レンズ4が光ファイバ2に近付く方向)に設定した場合の環境温度の変化とレーザモジュールMの出力の変化を示すグラフである。なお、図5の右側の出力変動規格は、使用可能な温度範囲である。これらのグラフの比較から、フォーカス位置よりもデフォーカスした方が使用可能な温度範囲が広くなり、また、第2レンズ4から光ファイバ2が離れる方向にデフォーカスした方が、近付く方向にデフォーカスするよりも、使用温度範囲が広くなることが分かる。
【0041】
(D)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、半導体レーザ素子1の前側端部から出射されるレーザ光を光ファイバ2に光結合される光学系は、図1に示すレンズ系に限定されるものではなく、集光レンズ系や、光ファイバ先端部に形成されるレンズで構成してもよい。また、光アイソレータ5が構成されなくてもよい。
【0042】
また、ステップS10では、所望の波長λを出力する電流Iを求めるようにしたが、例えば、光出力PLDを求めるようにしてもよい。また、ステップS13では500mAの電流を流すようにしたが、これ以外の電流であってもよいことは言うまでもない。また、ステップS16では、光ファイバ2が第2レンズ4から遠ざかる方向にデフォーカスするようにしたが、近付く方向にデフォーカスしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体レーザ素子
2 光ファイバ
3 第1レンズ
4 第2レンズ
5 光アイソレータ
6 パッケージ
6a フランジ部
7 ヒートシンク
8 チップキャリア
9 基台
10 冷却装置
11 サーミスタ
12 レンズホルダ
13 レンズホルダ
13a 窓部
14 スライドリング
15 フェルール
16 測定装置
M レーザモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出する半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を出力用の光ファイバに光結合する光学系と、を有するレーザモジュール製造方法において、
前記レーザモジュールが所望の波長λのレーザ光を出射する際の前記半導体レーザ素子の光出力PLDを求める第1ステップと、
前記半導体レーザ素子が前記光出力PLDを出力する場合に、前記光ファイバから出射されるレーザ光が目標光出力Pf_ratedとなるための前記光学系と前記光ファイバとの間の結合効率CEを求める第2ステップと、
前記半導体レーザ素子に所定の電流Iを通じながら、前記光学系と前記光ファイバの結合状態を調整し、前記結合効率CEが得られる位置を探索して前記光学系と前記光ファイバの位置決めをする第3ステップと、
を有することを特徴とするレーザモジュール製造方法。
【請求項2】
前記第1ステップでは、前記レーザモジュールから所望の波長λのレーザ光を出射するために前記半導体レーザ素子に流す電流Iを求めるとともに、前記電流Iを流した場合の前記半導体レーザ素子の光出力PLDを求め、
前記第2ステップでは、前記半導体レーザ素子の光出力がPLDである場合に、前記光ファイバからの光出力が目標出力Pf_ratedになるための前記光学系と前記光ファイバとの間の結合効率CEを求め、
前記第3ステップでは、前記半導体レーザ素子に所定の電流Iを通じ、前記光学系と前記光ファイバの結合を調整して最大光出力を求め、その最大光出力から前記結合効率CEが得られる位置を探索して前記光学系と前記光ファイバの位置決めをする、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザモジュール製造方法。
【請求項3】
前記第3ステップにおいて位置決めをした後、前記半導体レーザ素子に前記電流Iを通じ、前記光ファイバから出射されるレーザ光の波長がλであり、光出力がPf_ratedであるか判定し、λおよびPf_ratedでない場合には前記電流を調整するとともに、前記光学系と前記光ファイバの結合を調整することを特徴とする請求項2に記載のレーザモジュール製造方法。
【請求項4】
前記第1ステップでは、前記半導体レーザ素子に流れる電流の増加量ΔIに対する波長の増加量Δλの比を示す波長変化率をSとし、同じ電流を流した場合の前記半導体レーザ素子とレーザモジュールの波長の比をαとし、所定の電流Iを流したときに前記半導体レーザ素子から出力される波長をλLDとした場合に、Iを以下の式で求め、

前記半導体レーザ素子に流れる電流の増加量ΔIに対する光出力の増加量ΔPLDの比を示すスロープ効率をSEとし、閾値電流をIthとした場合に、光出力PLDを以下の式で求め、

前記第2ステップでは、結合効率CEを以下の式で求め、

前記第3ステップでは、所定の電流Iを流したときの光出力PLDをPLD(I)とした場合に、電流Iを流した際の前記光ファイバからの光出力P(I)を以下の式で求める、

ことを特徴とする請求項2または3に記載のレーザモジュール製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−21247(P2013−21247A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155432(P2011−155432)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(511172003)
【氏名又は名称原語表記】Furukawa Fitel(Thailand) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Rojana Industrial Park 1/71 Moo 5, Tambol Kanharm, Amphur U−Thai, Phranakorn Sri Ayutthaya 13210, Thailand
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】