説明

レーザー加工用粘着シート及びレーザー加工方法

【課題】被加工物のダイシングにレーザー光を用いる場合、個片化された被加工物をレーザー加工用粘着シート上に保持し、チップ飛びを抑制するとともに効率よく個片化された被加工物を回収することが出来るレーザー加工用粘着シート及びレーザー加工方法を提供する。
【解決手段】波長が紫外線域のレーザー光、又は多光子吸収過程を経由した光吸収を可能とするレーザー光により被加工物をレーザー加工する際に用いるレーザー加工用粘着シートであって、基材と、該基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを有しており、前記粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数が50cm-1〜900cm-1であり、前記粘着剤層に含まれる光吸収剤の0.01重量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度が0.01〜1.20であるレーザー加工用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長が紫外線域のレーザー光、又は多光子吸収過程を経由した光吸収を可能とするレーザー光により被加工物をレーザー加工する際に用いるレーザー加工用粘着シート及びレーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電気・電子機器の小型化等に伴って部品の小型化・高精細化が進んでいる。そのため、各種材料の切断加工においても高精細・高精度化が求められてきている。特に、小型化・高密度化が強く求められている半導体分野では、近年、熱ダメージが少なく、高精細の加工が可能であるレーザー光を用いた半導体ウエハの切断方法が注目されている。
【0003】
上記技術としては、例えば、基板に様々な回路形成及び表面処理を行った被加工物をダイシングシートに固定し、レーザー光により被加工物をダイシングして、小片にチップ化する方法が提案されている。そのような方法に使うダイシングシートとしては、基材フィルムを含む基材と、この基材の表面に形成された粘着剤層とから構成され、レーザー光により粘着剤層は切断されるが、基材フィルムは切断されないダイシングシートが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、被加工物のダイシングにレーザー光を用いる場合、レーザー光のアブレーションにより、被加工物に応力が掛かり、個片化された被加工物をレーザー加工用粘着シート上に保持できず、被加工物を失う、いわゆるチップ飛びが発生している。このことにより、効率よく個片化された被加工物を回収することが出来ない問題がある。
【0005】
特許文献1に記載のダイシングシートを使用した場合、粘着剤層は使用されるYAGレーザーの基本波(波長1064nm)やルビーレーザー(波長694nm)のレーザー光線により熱加工的に切断される。この為、レーザー切断に伴って、粘着剤層上層のみならず粘着剤層の内部或いは基材と粘着剤層の界面からも粘着剤層の熱加工による分解が起こり、粘着剤層の横方向への加工が起こりやすくなる。よって、個片化された被加工物のチップ飛びを抑制するには不十分であった。
【特許文献1】特開2002−343747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、被加工物のダイシングにレーザー光を用いる場合、個片化された被加工物をレーザー加工用粘着シート上に保持し、チップ飛びを抑制するとともに効率よく個片化された被加工物を回収することが出来るレーザー加工用粘着シート及びレーザー加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記レーザー加工用粘着シートにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明におけるレーザー加工用粘着シートは、波長が紫外線域のレーザー光、又は多光子吸収過程を経由した光吸収を可能とするレーザー光により被加工物をレーザー加工する際に用いるレーザー加工用粘着シートであって、基材と、該基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを有しており、前記粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数が50cm-1〜900cm-1であり、前記粘着剤層に含まれる光吸収剤の0.01重量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度が0.01〜1.20であることを特徴とする。
【0009】
前記レーザー加工用粘着シートは、レーザー光の紫外吸収アブレーションにより被加工物をレーザー加工する前に、被加工物の吸着ステージ面側(レーザー光出射面側)に積層され、加工時及びその後の各工程で被加工物(レーザー加工品)を支持固定するために用いられる。
【0010】
前記粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数は、50cm-1〜900cm-1であることが好ましく、より好ましくは70cm-1〜800cm-1、さらに好ましくは、90cm-1〜600cm-1、さらに好ましくは、100cm-1〜400cm-1である。粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数がこの範囲にあることで、レーザー光が被加工物を切断し粘着剤層まで到達した後も、粘着剤層が適度にレーザー光を吸収し、アブレーション加工が粘着剤層の上層部から下層部にかけて順々に進行する。このとき、加工された粘着剤成分は加工ラインに沿って系外に放出されるため、アブレーションによる応力が被加工物に掛からず、チップ飛び防止を確実なものとすることが出来る。なお、粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数が50cm-1未満の場合、レーザー光は粘着剤層を透過し、粘着剤層と基材の界面で基材のアブレーションが発生し、粘着剤層を破裂させる。この為、粘着剤層は横方向への加工をも受け、被加工物にも横方向の応力がかかり、チップ飛びが発生しやすくなる。また、粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数が900cm-1より大きい場合、粘着剤層のレーザー光吸収性が高く、被加工物側の粘着剤層表面での熱エネルギーへの変換効率が大きくなり、粘着剤層のアブレーションが過多となる。この為、粘着剤層は横方向への応力をも受け、被加工物にも横方向の応力がかかり、チップ飛びが発生しやすくなる。
【0011】
前記粘着剤層に含まれる光吸収剤は、その配合量の過多、過少を防止するため、0.01重量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度が0.01〜1.20が好ましく、より好ましくは、0.02〜1.00、さらに好ましくは、0.03〜0.95である。
【0012】
また、光吸収剤は、光反応型重合開始剤であることが好ましい。
【0013】
前記光反応型重合開始剤は、アルキルフェノン系化合物、α−アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物のいずれかであることが好ましい。波長355nmの吸光度が異なるこれらの光反応型重合開始剤の添加量を変更することで、粘着剤層のレーザー吸収性を容易にコントロールすることができる。これら光吸収剤は1種のみの添加しても、2種以上添加しても良い。
【0014】
粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含有することが好ましい。アクリル系ポリマーを使用することで、粘着剤層による汚染などを容易にコントロールすることが出来る。
【0015】
粘着剤層は、紫外線により硬化する粘着剤からなることが好ましい。紫外線硬化性粘着剤とすることで、加工時の保持性と、紫外線照射後の剥離によって、被加工物からの剥離を容易にすることが出来る。
【0016】
粘着剤層は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有するアクリルポリマーを含有する粘着剤からなることが好ましい。
【0017】
基材は、波長355nmにおける吸光係数が10cm-1以下であることが好ましい。
【0018】
前記基材は、ポリエチレンもしくは、ポリプロピレンからなる層を有する基材が好ましい。
【0019】
前記基材は、エチレンを含有する共重合体からなる層を少なくとも一層有する基材が好ましい。このことにより、基材がレーザー光を吸収しにくくなり、レーザー光によるアブレーションが起こりにくくなる。この為、基材のアブレーションを起因とする被加工物にかかる力を極小化することができ、チップ飛びを防止することが出来る。
【0020】
前記被加工物は半導体素子であることが好ましい。
【0021】
本発明は、前記レーザー加工用粘着シートを被加工物に貼り付けた後、前記被加工物にレーザー加工用粘着シートを貼り付けた面の反対面から、波長が紫外線域のレーザー光、又は多光子吸収過程を経由した光吸収を可能とするレーザー光を被加工物に照射し、該被加工物をアブレーションにより加工するレーザー加工方法である。
【0022】
本発明は、前記レーザー光の照射により前記半導体素子を個片化して半導体チップを形成することを特徴とするレーザー加工方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明で用いられるレーザーとしては、レーザー加工時の熱的なダメージにより被加工物の孔のエッジや切断壁面の精度及び外見を悪化させないために、熱加工プロセスを経由しない非熱的加工である紫外光吸収によるアブレーション加工が可能なレーザーを用いる。
【0024】
具体的には、400nm以下に発振波長を持つレーザー、例えば、発振波長248nmのKrFエキシマレーザー、308nmのXeCIエキシマレーザー、YAGレーザーの第三高調波(355nm)や第四高調波(266nm)、又は400nm以上の波長を持つレーザーの場合には、多光子吸収過程を経由した紫外線領域の光吸収が可能で、かつ多光子吸収アブレーションにより20μm以下の幅の切断加工などが可能である波長750〜800nm付近のチタンサファイヤレーザー等でパルス幅が1e-9秒(0.000000001秒)以下のレーザーなどが挙げられる。特に、レーザー光を20μm以下の細い幅に集光でき、355nmの紫外線を放射するレーザーを用いることが好ましい。
【0025】
被加工物としては、上記レーザーにより出力されたレーザー光の紫外吸収アブレーションにより加工できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、各種シート材料、回路基板、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、半導体レーザー等の発光あるいは受光素子基板、MEMS(Micro Electro Mechanical System)基板、半導体パッケージ、布、皮、及び紙などが挙げられる。
【0026】
本発明のレーザー加工用粘着シートは、特にシート材料、回路基板、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、半導体レーザーの発光あるいは受光素子基板、MEMS基板、又は半導体パッケージの加工に好適に用いることができる。
【0027】
前記各種シ−ト材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等からなる高分子フィルムや不織布、それらの樹脂を延伸加工、含浸加工等により物理的あるいは光学的な機能を付与したシート、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属シート、又は上記高分子フィルム及び/又は金属シートを直接あるいは接着剤等を介して積層したものなどが挙げられる。
【0028】
前記回路基板としては、片面、両面あるいは多層フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ、セラミック、又は金属コア基板等からなるリジッド基板、ガラスまたはポリマー上に形成された光回路あるいは光−電気混成回路基板などが挙げられる。
【0029】
基材の形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール系樹脂、シリコーン系ゴム、及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
これらのうち、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、特にエチレンサクンサンビニル共重合体、乃至、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの直鎖状飽和炭化水素系樹脂を用いることが好ましい。側鎖に官能基を有しないポリエチレンのエッチング率は極めて小さく、レーザー加工性が特に低いため、ポリエチレン分解物の発生を効果的に抑制することができる。
【0031】
基材は単層であってもよく複層であってもよい。また、膜状やメッシュ状など種々の形状を取り得る。特に、前記樹脂の繊維状体、不織布、織布、ポーラス多孔体などの空隙率の大きい基材が好適である。
【0032】
基材の厚さは、被加工物への貼り合わせ、被加工物の切断や孔あけ、及びレーザー加工品の剥離や回収などの各工程における操作性や作業性を損なわない範囲で適宜調整することができるが、通常500μm以下であり、好ましくは5μm〜300μm程度であり、さらに好ましくは10μm〜250μmである。基材の表面は、吸着板などの隣接する材料との密着性、保持性などを高めるために慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン曝露、火炎曝露、高圧電撃曝露、及びイオン化放射線処理などの化学的又は物理的処理、あるいは下塗り剤(例えば、後述の粘着物質)によるコーティング処理が施されていてもよい。
【0033】
本発明の基材としては、波長355nmにおける吸光係数が10cm-1以下であることが好ましい。また、前記基材は、ポリエチレンもしくは、ポリプロピレンからなる層を有する基材が好ましい。さらに、エチレンを含有する共重合体からなる層を少なくとも一層有する基材が好ましい。
【0034】
粘着剤層の形成材料としては、(メタ)アクリル系ポリマーやゴム系ポリマーなどを含む公知の粘着剤を用いることができる。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、及びドデシル基などの炭素数30以下、好ましくは炭素数3〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記以外のモノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸などの酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマーなどが挙げられる。これらモノマー成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋処理等を目的に多官能モノマーなども必要に応じて共重合モノマー成分として用いることができる。
【0038】
多官能モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら多官能モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
多官能モノマーの使用量は、粘着特性等の観点より全モノマー成分の30重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20重量%以下である。
【0040】
(メタ)アクリル系ポリマーの調製は、例えば1種又は2種以上のモノマー成分を含む混合物を溶液重合方式、乳化重合方式、塊状重合方式、又は懸濁重合方式等の適宜な方式を適用して行うことができる。
【0041】
重合開始剤としては、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物系が挙げられる。単独で用いるのが望ましいが、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することもできる。還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルト塩などのイオン化の塩、トリエタノールアミン等のアミン類、アルドース、ケトース等の還元糖などを挙げることができる。また、アゾ化合物も好ましい重合開始剤であり、2,2'−アゾビス−2−メチルプロピオアミジン酸塩、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス−N,N'−ジメチレンイソブチルアミジン酸塩、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド等を使用することができる。また、上記重合開始剤を2種以上併用して使用することも可能である。
【0042】
反応温度は通常50℃〜85℃程度、反応時間は1時間〜24時間程度とされる。また、前記製造法のなかでも溶液重合法が好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等の極性溶剤が用いられる。溶液濃度は通常20重量%〜80重量%程度とされる。
【0043】
前記粘着剤には、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーの数平均分子量を高めるため、架橋剤を適宜に加えることもできる。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマーなどがあげられる。該架橋剤を使用する場合、その使用量は引き剥がし粘着力が下がり過ぎないことを考慮し、一般的には、上記ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部程度配合するのが好ましい。また粘着剤層を形成する粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、老化防止剤、着色剤等の慣用の添加剤を含有させることができる。
【0044】
被加工物からの剥離性をさらに向上させるため、粘着剤は、紫外線、電子線等の放射線により硬化する放射線硬化型粘着剤としてもよい。なお、粘着剤として放射線硬化型粘着剤を用いる場合には、レーザー加工後に粘着剤層に放射線が照射されるため、前記基材は十分な放射線透過性を有するものが好ましい。
【0045】
放射線硬化型粘着剤としては、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前述の(メタ)アクリル系ポリマーに放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
【0046】
配合する放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及び1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、特に制限されるものではないが、粘着性を考慮すると、粘着剤を構成する (メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、5重量部〜500重量部程度であることが好ましく、さらに好ましくは70重量部〜150重量部程度である。
【0048】
また、放射線硬化型粘着剤としては、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いることもできる。このようなベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。この場合においては、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を特に加えなくてもよく、その使用は任意である。
【0049】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線線等により硬化させる場合には光反応型重合開始剤を含有させる。光反応型重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンなどのアルキルフェノン系化合物、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどのα−アルキルフェノン系化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系化合物などが挙げられる。
【0050】
光反応型重合開始剤の配合量は、各種光反応型重合開始剤毎に波長355nmにおける吸光度が異なるので、粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数が50cm-1〜900cm-1となる範囲で便宜選択する。好ましくは、ベースポリマー100重量部に対して0.5重量部〜20重量部である。放射線硬化型粘着剤において、光反応型重合開始剤量が0.5重量部未満であれば、放射線照射による粘着剤硬化が不十分または不均一となり、粘着力の低下が限定的となる。また、20重量部を超えると、粘着剤の安定性の低下、被切断物への汚染が多くなるなどの問題がある。ベースポリマー100重量部に対して0.5重量部〜20重量部の光反応型重合開始剤にて、粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数が50cm-1〜900cm-1とするために、光反応型重合開始剤の0.01重量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度が0.01〜1.20であることが好ましい。
【0051】
本発明のレーザー加工用粘着シートは、例えば、前記基材の表面に粘着剤溶液を塗布し、乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)粘着剤層を形成することにより製造することができる。また、別途、剥離ライナーに粘着剤層を形成した後、それを基材に貼り合せる方法等を採用することができる。必要に応じて粘着剤層の表面にセパレータを設けてもよい。
【0052】
粘着剤層は、被加工物への汚染防止等の点より低分子量物質の含有量が少ないことが好ましい。かかる点より(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は30万以上であることが好ましく、さらに好ましくは40万〜300万である。
【0053】
粘着剤層の厚さは、被加工物から剥離しない範囲で適宜選択できるが、通常2μm〜300μm程度、好ましくは5μm〜100μm程度、さらに好ましくは10μm〜50μm程度である。
【0054】
レーザー加工用粘着シートの紫外線照射後の粘着力が0.05N/20mm〜2.0N/20mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.20N/20mm〜1.50N/20mm、特に好ましくは0.40N/20mm〜1.00N/20mm程度である。
【0055】
前記セパレータは、ラベル加工または粘着剤層を保護するために必要に応じて設けられる。
セパレータの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等が挙げられる。セパレータの表面には粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていてもよい。また、必要に応じて、レーザー加工用粘着シートが環境紫外線によって反応してしまわないように、紫外線透過防止処理等が施されていてもよい。セパレータの厚みは、通常10μm〜200μm、好ましくは25μm〜100μm程度である。
【0056】
以下、前記レーザー加工用粘着シートを用いたレーザー光の紫外吸収アブレーションによるレーザー加工品の製造方法を説明する。例えば、切断加工の場合、図1に示した如くレーザー加工用粘着シート2と被加工物1とをロールラミネーターやプレスといった公知の手段で貼り合わせて得られた被加工物−粘着シートの積層体3を吸着ステージ4の吸着板5上に配置し、所定のレーザー発振器より出力されるレーザー光6をレンズにて被加工物1上に集光・照射するとともに、そのレーザー照射位置を所定の加工ライン上に沿って移動させることにより被加工物1の切断加工を行う。被加工物1のレーザー光出射面側に設けられるレーザー加工用粘着シート2は、レーザー加工前は被加工物1を支持固定する役割を果たし、レーザー加工後は、切断物の落下を防止する役割を果たす。なお、前記被加工物1のレーザー光入射面側には保護シートが設けられていてもよい。保護シートは、被加工物1のレーザー加工により発生する分解物や飛散物が被加工物1の表面に付着するのを防止するために用いられる。
【0057】
レーザー光の移動手段としては、ガルバノスキャンあるいはX−Yステージスキャン、マスクイメージング加工といった公知のレーザー加工方法が用いられる。
【0058】
レーザーの加工条件は、被加工物1が完全に切断される条件であれば特に限定はされないが、レーザー加工用粘着シート2まで切断されることを回避するため、被加工物1が切断されるエネルギー条件の2倍以内とすることが好ましい。
【0059】
また、切りしろ(切断溝)はレーザー光の集光部のビーム径を絞ることにより細くできるが、切断端面の精度を出すために、ビーム径(μm)>2×(レーザー光移動速度(μm/sec)/レーザー光の繰り返し周波数(Hz))を満たしていることが好ましい。
【0060】
また、半導体ウエハの切断加工(ダイシング加工)の場合は、図2の如く半導体ウエハ7の片面を吸着ステージ4上に設けられたレーザー加工用粘着シート2に貼り合わせ、所定のレーザー発振器より出力されるレーザー光6をレンズにて半導体ウエハ7上に集光・照射するとともに、そのレーザー照射位置を所定の加工ライン上に沿って移動させることにより切断加工を行う。レーザー光の移動手段としては、ガルバノスキャンあるいはX−Yステージスキャン、マスク、イメーソング加工といった公知のレーザー加工方法が用いられる。かかる半導体ウエハの加工条件は、半導体ウエハ7が切断されかつレーザー加工用粘着シート2が切断されない条件であれば特に限定されない。なお、半導体ウエハ7のレーザー光入射面側には保護シートが設けられていてもよい。
【0061】
このような半導体ウエハのダイシング加工においては、個々の半導体チップ(レーザー加工品)に切断後、従来より知られるダイボンダーなどの装置によりニードルと呼ばれる突き上げピンを用いてピックアップする方法、或いは、特開2001−118862号公報に示される方式など公知の方法で個々の半導体チップをピックアップして回収することができる。
【0062】
本発明のレーザー加工品の製造方法においては、レーザー加工終了後に粘着シート上のレーザー加工品を回収する。剥離する方法は特に制限されず、剥離時にレーザー加工品が永久変形するような応力がかからないようにすることが肝要である。本発明の粘着シートは粘着力が小さいため、剥離時にレーザー加工品が永久変形することがなく、容易に剥離することができる。また、レーザー加工用粘着シート2の粘着剤層に放射線硬化型粘着剤を用いた場合には、粘着剤の種類に応じて放射線照射により粘着剤層を硬化させ粘着性を低下させる。放射線照射により、粘着剤層の粘着性が硬化により低下して剥離を容易化させることができる。放射線照射の手段は特に制限されないが、例えば、紫外線照射等により行われる。
【0063】
また、ヘリウム、窒素、酸素等のガスをレーザー加工部に吹き付けることにより、分解物の飛散除去を効率化することもできる。なお、被加工物1のレーザー光入射面側には保護シートが設けられていてもよい。
【0064】
また、本発明のレーザー加工用粘着シートはレーザー光の紫外吸収アブレーションによる孔あけ加工など、様々な形状のレーザー加工品の製造にも使用される。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0066】
〔吸光係数の測定〕
シート状の粘着剤および基材の波長355nmにおける吸光係数は以下の方法で測定した。紫外可視分光光度計UV−2550(SHIMADZU社製)を用いて、シート状の粘着剤もしくは基材を治具にとりつけ、波長355nmにおける透過率T%及び反射率R%を測定し以下の式により計算を行った。
【0067】
【数1】

【0068】
【数2】

【0069】
〔光吸収剤の吸光度の測定〕
光吸収剤の波長355nmにおける吸光度は以下の方法で測定した。測定検体は、スペクトル用アセトニトリル(キシダ化学製)にて0.01重量%に希釈した溶液を用いた。紫外可視分光光度計UV−2550(SHIMADZU社製)に、希釈溶液を入れた石英ガラスセル(光路長1cm)を取り付け、波長355nmにおける透過率T%を測定し以下の式により計算を行った。
【0070】
【数3】

【0071】
実施例1
エチレン酢酸ビニルコポリマーからなる基材(厚さ100μm、吸光係数6.8cm-1、酢酸ビニル含有量10%、メルトマスフローレイト9g/10min)上に、アクリル系粘着剤(1)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成してレーザー加工用粘着シートを得た。ここで、粘着剤層の厚さは20μm、波長355nmにおける吸光係数は102.6cm-1であった。
【0072】
なお、アクリル系粘着剤(1)は以下の方法で調整した。2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)50重量部、メチルアクリレート(MA)50重量部、アクリル酸(AA)10重量部を酢酸エチル中にて、重合開始剤過酸化ベンゾイル(BPO)0.2重量部を用いて重合させ、アクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー100重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)3.5重量部、及びUV硬化型ウレタンアクリレートオリゴマー(UV−1700B)50重量部、光反応型重合開始剤2,2−ジメトキシ−1,2-ジフェニルエタン-1-オン(0.01重量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度:0.06)の5重量部をトルエンに加え、均一に溶解混合した。
【0073】
厚さ100μmのシリコンウエハの片面に、上記作製したレーザー加工用粘着シートをハンドローラーで貼り合わせて粘着シート付きシリコンウエハを作製した。そして、ガラスエポキシ樹脂製吸着板をのせたXYステージ上に、被加工物が上になるように配置した。波長355nm、平均出力2.5W、繰り返し周波数1kHzのYAGレーザーの第三高調波(355nm)をfθレンズによりシリコンウエハ表面に25μm径に集光して、ガルバノスキャナーによりレーザー光を2.5mm/秒の速度でスキャンして、1ラインあたり3回のレーザー照射を繰り返すことでシリコンウエハを切断し、0.3mm×0.3mmのチップサイズにダイシングを行った。このときのチップ飛び率(レーザーダイシング後のチップの消失率)は0%だった。
【0074】
実施例2
実施例1において、粘着剤に添加する光反応型重合開始剤の添加量を9重量部とした以外は実施例1と同様の方法により粘着シート付きシリコンウエハにレーザー加工を施した。ここで、粘着剤層の厚さは20μm、波長355nmにおける吸光係数は197.9cm-1であった。なお、チップ飛び率は0%だった。
【0075】
実施例3
実施例1において、粘着剤に添加する光反応型重合開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(0.01重量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度:0.81)の0.5重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法により粘着シート付きシリコンウエハにレーザー加工を施した。ここで、粘着剤層の厚さは20μm、波長355nmにおける吸光係数は245.9cm-1であった。なお、チップ飛び率は0%だった。
【0076】
実施例4
実施例1において、アクリル系粘着剤(2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により粘着シート付きシリコンウエハにレーザー加工を施した。ここで、粘着剤層の厚さは20μm、波長355nmにおける吸光係数は833.1cm-1であった。なお、チップ飛び率は0%だった。
【0077】
なお、アクリル系粘着剤(2)は以下の方法で調整した。2メトキシエチルアクリレート(2MEA)70重量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)30重量部、2ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)15重量部を酢酸エチル中にて、重合開始剤過酸化ベンゾイル(BPO)0.2重量部を用いて重合させ、アクリル系ポリマー溶液を得た。これに、2メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を16重量部反応させ、側差に炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー100重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)1重量部、光反応型重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を2重量部トルエンに加え、均一に溶解混合した。
【0078】
実施例5
実施例1において、アクリル系粘着剤(3)を用いた以外は実施例1と同様の方法により粘着シート付きシリコンウエハにレーザー加工を施した。ここで、粘着剤層の厚さは20μm、波長355nmにおける吸光係数は499cm-1であった。なお、チップ飛び率は0%だった。
【0079】
なお、アクリル系粘着剤(3)は以下の方法で調整した。2エチルヘキシルアクリレート(2EHA)70重量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)30重量部、2ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)15重量部をトルエン中にて、重合開始剤過酸化ベンゾイル(BPO)0.2重量部を用いて重合させ、アクリル系ポリマー溶液を得た。これに、2メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を10重量部反応させ、側差に炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー100重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)1重量部、光反応型重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を2重量部トルエンに加え、均一に溶解混合した。
【0080】
比較例1
実施例1において、粘着剤に添加する光反応型重合開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1の3重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法により粘着シート付きシリコンウエハにレーザー加工を施した。ここで、粘着剤層の厚さは20μm、波長355nmにおける吸光係数は1006.8cm-1であった。なお、チップ飛び率は78%だった。
【0081】
比較例2
実施例1において、アクリル系粘着剤(1)中の光反応型重合開始剤を1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(0.01重量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度:0.005)の0.5重量部とした以外は実施例1と同様の方法により粘着シート付きシリコンウエハにレーザー加工を施した。ここで、粘着剤層の厚さは20μm、波長355nmにおける吸光係数は15.4cm-1であった。なお、チップ飛び率は19%だった。
【0082】
上記実施例及び比較例から明らかなように、粘着剤層の吸光係数が波長355nmにおいて50cm-1〜900cm-1の範囲にあり、粘着剤層に含まれる光吸収剤の0.01質量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度が0.01〜1.20であるとき、レーザー光が被加工物を切断し粘着剤層まで到達した後も、紫外光吸収によるアブレーション加工が粘着剤層の上層部から下層部にかけて順々に進む。このため、粘着剤層や基材の爆発が粘着剤層の横方向への加工が起こりにくくなり、レーザーダイシング時のチップ飛びを防止できる。その結果、レーザーの高パワー化によるスループットの向上を図ることができる。また、加工後にレーザー加工品が脱落することがないためハンドリングが容易であり、さらに紫外線硬化により低粘着性となるため加工後の剥離も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】レーザー光の紫外吸収アブレーションにより加工された積層体の断面を示す概略図である。
【図2】本発明における半導体ウエハのダイシング方法の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0084】
1 被加工物
2 レーザー加工用粘着シート
2a 粘着剤層
2b 基材
3 積層体
4 吸着ステージ
5 吸着板
6 レーザー光
7 半導体ウエハ
8 ダイシングフレーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が紫外線域のレーザー光、又は多光子吸収過程を経由した光吸収を可能とするレーザー光により被加工物をレーザー加工する際に用いるレーザー加工用粘着シートであって、基材と、該基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを有しており、前記粘着剤層の波長355nmにおける吸光係数が50cm-1〜900cm-1であり、前記粘着剤層に含まれる光吸収剤の0.01重量%アセトニトリル溶液中での波長355nmにおける吸光度が0.01〜1.20であるレーザー加工用粘着シート。
【請求項2】
前記光吸収剤が光反応型重合開始剤である請求項1記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項3】
前記光反応型重合開始剤がアルキルフェノン系化合物、α−アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物のいずれかである請求項2記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含有する粘着剤からなる請求項1〜3のいずれかに記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層は、紫外線により硬化する粘着剤からなる請求項1〜4のいずれかに記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有するアクリルポリマーを含有する粘着剤からなる請求項1〜5のいずれかに記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項7】
前記基材の波長355nmにおける吸光係数が10cm-1以下である請求項1〜6のいずれかに記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項8】
前記基材は、ポリエチレンもしくは、ポリプロピレンからなる層を有する請求項1〜7のいずれかに記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項9】
前記基材は、エチレンを含有する共重合体からなる層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項10】
前記被加工物が半導体素子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のレーザー加工用粘着シート。
【請求項11】
請求項1〜10記載のレーザー加工用粘着シートを被加工物に貼り付けた後、前記被加工物にレーザー加工用粘着シートを貼り付けた面の反対面から、波長が紫外線域のレーザー光、又は多光子吸収過程を経由した光吸収を可能とするレーザー光を被加工物に照射し、該被加工物をアブレーションにより加工するレーザー加工方法。
【請求項12】
前記レーザー光の照射により前記半導体素子を個片化して半導体チップを形成することを特徴とする請求項11に記載のレーザー加工方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−84047(P2010−84047A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255896(P2008−255896)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】