説明

レーザー加工装置及びレーザー加工方法

【課題】ワークの厚さにかかわらず、レーザービームの集光点位置をリアルタイムで補正することができ、予めワークの表面変位の測定を行うことなく、レーザービーム照射領域の表面変位が一定でないワークに対しても、精度良く加工を施すことができるレーザー加工装置及びレーザー加工方法を提供する。
【解決手段】表面変位検出手段で検出されたワーク10の表面変位に基づき、集光点位置調整手段により加工手段に設けられた集光レンズ33の位置を調整しつつ、保持手段に保持されたワーク10に対して、加工手段から加工用レーザービームを照射するレーザ加工装置において、表面変位検出手段に設けられる検出用光源41をレーザービームとは異なる複数波長の光を発振可能なものとし、波長選択部45において、その複数波長から検出用光として使用する一の波長を選択し、この選択された波長の検出用光を集光レンズ33で集光してワーク10に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームを使用して半導体ウエーハなどのワークを加工するレーザー加工装置及びレーザー加工方法に関する。より詳しくは、レーザービームの集光点位置を補正するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、略円板形状の半導体ウエーハの表面に、IC(integrated circuit:集積回路)又はLSI(large-scale integration:大規模集積回路)などの回路をマトリクス状に形成し、その後、この複数の回路が形成されたウエーハを、所定のストリート(分割予定ライン)に沿って格子状に切断することにより、各回路を分離してチップ化している。
【0003】
また、電気機器などに広く利用されている発光ダイオード及びレーザダイオードなどの光デバイスの製造工程においても、サファイヤなどからなる基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体などが積層された光デバイスウエーハを、分割予定ラインに沿って切断することにより個々のデバイスに分割し、チップ化している。
【0004】
このような各種ウエーハの切断(ダイシング)には、ダイサーと称される切断装置が使用されている。また、近年、レーザービームを利用して、半導体ウエーハなどのワークを切断する方法も開発されている(例えば、特許文献1,2参照。)。例えば、特許文献1に記載の加工方法では、酸化物単結晶からなるワークにレーザービームを照射して、光化学的な反応によって酸化物単結晶の分子を解離及び蒸発させることで、ワークの所定位置に溝を形成し、この溝に沿ってワークを劈開している。
【0005】
また、特許文献2に記載の切断方法では、ワークに対して透過性を有するパルスレーザービームを、ワーク内部に集光点を合わせて照射し、分割予定ラインに沿って変質領域を形成している。この変質領域は、他の部分よりも強度が低いため、分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、変質層が起点となってワークが分割される。
【0006】
一方、加工対象のワークによっては、ダイシング工程に至るまでの過程で、反りやうねりが生じたり、表面が平坦ではなく凹凸が形成されていたりすることがある。このようなワークを加工する場合、加工面の表面変位が一定でないため、レーザービームの集光点位置が深さ方向でばらつき、加工精度が低下してしまう。前述したワーク内部に変質層を形成するレーザー加工においては、特に、加工対象のワークの反り、うねり及び凹凸の影響が大きい。
【0007】
そこで、従来、予めワークにおけるレーザービーム照射領域の表面変位を測定し、その結果に基づいて、集光点の深さ方向位置を調整しながら、レーザービームを照射するレーザー加工装置が提案されている(例えば、特許文献3,4参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2002−192370号公報(特許第3408805号)
【特許文献3】特開2007−152355号公報
【特許文献4】特開2008−16577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した特許文献3,4に記載された従来のレーザー加工装置には、加工位置、即ち、加工用レーザービームの集光点位置が、ワーク表面から離れていると、加工中に表面変位の測定を行い、レーザービームの集光点位置をリアルタイムで補正することはできず、加工効率が低下するという問題点がある。これは、特許文献3,4に記載のレーザー加工装置のように、検出用レーザービームの集光点と加工用レーザービームの集光点を同じ位置に設定すると、加工用レーザービームをワーク内部の深い位置に集光させて加工を行う際、ワーク表面における検出用レーザービームのスポット径が大きくなってしまうからである。
【0010】
これらの従来のレーザー加工装置では、検出用レーザービームのワーク表面における反射光の光量からワークの表面変位を検出しているが、このように検出用レーザービームのスポット径が大きくなると、その反射光の単位面積あたりの光量が低下し、ワークの表面変位を正確に測定することができなくなる。特に、厚いワークをその裏面近傍から複数回に分けてレーザービームを照射するような加工を行う場合には、加工用レーザービームの集光点位置とワーク表面との距離が長くなるため、表面変位の測定自体ができなくなることがある。このため、特許文献3,4に記載のレーザー加工装置では、予め検出用レーザービームを照射してワークの表面変位の測定を行った後、加工用レーザービームの集光点位置を調整して加工を行っている。
【0011】
そこで、本発明は、ワークの厚さにかかわらず、レーザービームの集光点位置をリアルタイムで補正することができ、予めワークの表面変位の測定を行うことなく、レーザービーム照射領域の表面変位が一定でないワークに対しても、精度良く加工を施すことができるレーザー加工装置及びレーザー加工方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るレーザー加工装置は、レーザービームによりワークを加工するレーザー加工装置であって、前記ワークを保持する保持手段と、少なくとも、前記レーザービームを発振する発振器と、前記レーザービームを前記ワークに向けて集光する集光レンズとを備え、前記ワークに向けて前記レーザービームを照射する加工手段と、前記ワークの表面変位を検出する表面変位検出手段と、前記表面変位検出手段における検出結果に基づいて前記集光レンズの位置を調整する集光点位置調整手段と、を有し、前記表面変位検出手段は、前記レーザービームとは異なる複数波長の光を発振可能な検出用光源と、該複数波長から検出用光として使用する一の波長を選択する波長選択部と、前記波長選択部で選択され前記検出用光源から出射された検出用光を前記集光レンズに導く検出用光照射部と、前記検出用光の照射により生じた前記ワークからの反射光を検出する検出部と、を備えるものである。
【0013】
本発明においては、表面変位検出手段の検出用光源を複数波長の光を発振可能なものとし、波長選択部において、この複数波長の中から検出用光として使用する一の波長を選択しているため、ワークの厚さや加工条件などにかかわらず、検出用光の集光点位置をワーク表面又はその近傍に設定することができる。これにより、加工中でも表面変位の測定が可能となるため、リアルタイムでレーザービームの集光点位置を補正することができる。
【0014】
このレーザー加工装置における前記波長選択部は、前記ワークの厚さ及び/又は前記レーザービームの集光点位置に基づいて、前記ワークの表面又はその近傍で集光される波長の光を選択することもできる。
【0015】
また、このレーザー加工装置には、前記表面変位検出手段での検出結果に基づいて、前記集光点位置調整手段を動作させる制御手段が設けられていてもよい。
【0016】
更に、前記表面変位検出手段には、前記反射光を前記検出部に導く光学部材が設けられていてもよく、その場合、少なくとも、前記集光レンズと前記ワークとの間は、前記レーザービーム、前記検出用光、及び前記反射光の光路を同軸状に配置することができる。
【0017】
一方、本発明に係るレーザー加工方法は、レーザービームを使用してワークを加工するレーザー加工方法であって、前記ワークの表面変位を検出する表面変位検出工程と、前記表面変位の検出結果に基づいて、前記レーザービームの集光点位置を調整しつつ、前記ワークにレーザービームを照射する工程と、を有し、前記表面変位検出工程において、前記ワークに対して、前記レーザービームと異なる波長でかつ前記ワークの表面又はその近傍で集光する波長の検出用光を、選択的に照射する。
【0018】
本発明においては、加工用のレーザービームとは異なる複数波長の中から、ワークの表面又はその近傍で集光する一の波長の光を検出用光として選択し、照射しているため、どのような厚さのワークでも、加工中に表面変位検出を実行することができ、リアルタイムでレーザービームの集光点位置を補正することができる。
【0019】
このレーザー加工方法では、前記ワークの厚さ及び/又は前記レーザービームの集光点位置に基づいて、前記検出用光を選択することができる。
【0020】
また、前記検出用光を照射することにより前記ワークで生じた反射光の光量の変化から、前記ワークの表面変位を算出してもよい。
【0021】
更に、前記レーザービーム、前記検出用光、及び前記反射光の光路の一部を同軸状に配置することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検出用光源から発振可能な複数波長のうち一の波長の光を、検出用光として選択的に照射しているため、ワークの厚さにかかわらず、レーザービームの集光点位置をリアルタイムで補正することができ、レーザービーム照射領域の表面変位が一定でないワークに対しても、精度良く加工を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。図1は本実施形態のレーザー加工装置の構成を示す斜視図であり、図2は図1に示すレーザー加工装置1の光学系の構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のレーザー加工装置1は、少なくとも、ワーク10を保持する保持手段2と、ワーク10の所定位置にレーザービームを照射する加工手段と、ワーク10の表面変位を検出する表面変位検出手段と、この表面変位検出手段による検出結果に基づいて加工手段から照射されるレーザービームの集光点位置を調整する集光点位置調整手段を備えている。そして、これら加工手段、表面変位検出手段及び集光点位置調整手段は、例えば保持手段2の上方に配置されたレーザービーム照射ユニット3内に設けられている。
【0025】
本実施形態のレーザー加工装置1が加工対象とするワーク10としては、例えば、半導体ウエーハ、DAF(Die Attach Film)などの粘着テープ、ガラス、シリコン及びサファイヤなどの無機材料、金属材料又はプラスチックなどからなる各種基板、半導体製品のパッケージ、並びにミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料などが挙げられる。このワーク10は、裏面に貼付された粘着テープ12を介してリングフレーム11の開口部に支持され、その状態で加工が施される。
【0026】
一方、本実施形態のレーザー加工装置1における保持手段2は、ワーク10を保持する保持面21を備えていればよく、例えば、負圧を利用してワークを吸着保持するチャックテーブルなどが挙げられる。また、この保持手段2には、必要に応じて、リングフレーム11を脱着自在に固定する複数のクランプ22を設けることもできる。
【0027】
上述した保持手段2は、送り手段によってx方向、及びこのx方向に直交するy方向に移動可能となっている。具体的には、台座51上に相互に平行に配置された1対の案内レール52a,52b間にボールねじ53aが配置され、このボールねじ53aの一方の端部にはモータ53bが取り付けられており、他方の端部は軸受けブロック53cに回転可能に支持されている。
【0028】
また、案内レール52a,52b及びボールねじ53aの上には、滑動ブロック54が載置されており、この滑動ブロック54上に、1対の案内レール55a,55b及びボールねじ56aが相互に平行に配置されている。このボールねじ56aも、一方の端部にモータ56bが取り付けられ、他方の端部は軸受けブロック56cに回転可能に支持されている。更に、案内レール55a,55b及びボールねじ56aの上には、滑動ブロック57が載置されており、この滑動ブロック57上に保持手段2が設置されている。
【0029】
そして、これらの部材により構成される送り手段においては、モータ53bによりボールねじ53aを駆動させると、滑動ブロック54が案内レール52a,52bによって案内されて移動し、これにより保持手段2がx方向に移動する。一方、モータ56bによりボールねじ56aを駆動させると、滑動ブロック57が案内レール55a,55bによって案内されて移動し、これにより保持手段2がy方向に移動する。
【0030】
一方、加工手段は、ワーク10にレーザービームを照射可能な位置に配置されていればよく、例えば、図1に示すように、保持手段2の上方のレーザービーム照射ユニット内に設けられる。また、その構成としては、少なくとも、図2に示すように、加工用のレーザービームを発振する発振器31と、レーザービームの進行方向を変えるための全反射ミラー32と、レーザービームを集光するための色収差が補正されていない集光レンズ33を備えていればよい。この場合、発振器31から発振されたレーザービームは、例えば全反射ミラー32により集光レンズ22に向けて反射され、集光レンズ22により集光されてワーク10に照射される。
【0031】
また、この加工手段に設けられる発振器31は、ワーク10の種類及び加工形態などに応じて適宜選択することができ、例えばYAGレーザー発振器やYVOレーザー発振器などを使用することができる。更に、全反射ミラー32は複数個設けられていてもよく、集光レンズ33はケース34に収容されていてもよい。
【0032】
本実施形態のレーザー加工装置1における集光点位置調整手段は、後述する表面変位検出手段の検出結果に基づいて、レーザービームの集光点位置を、ワーク10に対して垂直方向に調整可能な構成であればよく、例えば、図2に示すように、ケース34にアクチュエータ35を取付けることで実現することができる。このようなアクチュエータ35としては、例えば、印加する電圧値に対応して軸方向に延びる圧電素子により構成されたピエゾモータを使用することができる。
【0033】
更に、集光点位置調整手段として、上述したアクチュエータ35に加えて、レーザービーム照射ユニット3を、ワーク10に対して垂直方向に移動させるための案内レール及び駆動モータなどを設けてもよい。このように、レーザービーム照射ユニット3全体を移動可能とすることにより、レーザービーム照射ユニット3の位置を調整した後、アクチュエータ35で微調整することが可能となるため、レーザービームの集光点位置を高精度で調整することができる。
【0034】
本実施形態のレーザー加工装置1における表面変位検出手段は、検出用光源41からワーク10の表面で反射する波長の光(検出用光)を発振し、検出部44でワーク10からの反射光の光量の変化などを測定することで、ワーク10の表面変位を求めるものである。この表面変位検出手段に設けられる検出用光源41としては、発振器31から発振される加工用レーザービームとは異なる複数波長の光を発振可能なものであればよく、例えば光パラメトリック発振器などが挙げられる。
【0035】
また、光源から出射した光を、回折格子やプリズムで分光し、特定波長の光を取り出す構成としてもよい。この場合、光源からの光が回折格子やプリズムに入射する角度を調整することで、検出用光としてワーク10に照射される光の波長を、任意に変更することができる。更に、相互に異なる波長の光を発振する光源を複数設け、それらを適宜切り替えながら使用してもよい。
【0036】
また、検出用光源41には、複数波長の検出用光から一の波長を選択するための波長選択部45が接続されている。この波長選択部45において、一の波長の検出用光を選択する方法としては、例えば、予め、各波長の光が集光レンズからどれだけ離れた位置に集光されるかを後述する制御手段のリードオンメモリ(ROM)に記憶しておき、加工対象のワーク10の厚さ及び加工用レーザービームの集光点の設定位置などの情報に基づき、適正な波長を選択する方法がある。
【0037】
このように、検出用光源41から出射される光の波長を変えると、集光レンズ33での屈折率が変わるため、検出用光が集光する位置が変わる。そこで、ワーク10の厚さや加工条件などに応じて、検出用光の波長を任意に選択可能とすることで、どのような厚さのワーク10であっても、検出用光の集光点位置を、ワーク表面又はその近傍に設定することができる。これにより、レーザー加工中においてもワークの表面変位を検出することが可能となるため、レーザービームの集光点位置をリアルタイムで補正することができる。
【0038】
更に、表面変位検出手段には、ワーク10からの反射光を検出する検出部44と、検出用光源41から発振された光を集光レンズ33に導くと共に、ワーク10からの反射光を検出部44に導くための部分透過ミラー42及びビームスプリッター43が設けられている。具体的には、発振器31と全反射ミラー32との間に、部分透過ミラー42が配置されており、検出用光源41と部分透過ミラー42との間に、ビームスプリッター43配置されている。
【0039】
また、部分透過ミラー42は、加工用レーザービームは透過するが、検出用光及び反射光は反射するようになっていればよく、例えばダイクロイックミラーなどを使用することができる。一方、ビームスプリッター43は、検出用光源41から出射された検出用光は透過して部分透過ミラー42に導き、部分透過ミラー42で反射された反射光は反射して検出部44に導くようになっていればよく、例えばハーフミラーなどを使用することができる。
【0040】
この表面変位検出手段では、検出用光源41から発振され、ビームスプリッター43を透過した一部の検出用光は、部分透過ミラー42及び全反射ミラー32で反射された後、集光レンズ33で集光されて、ワーク10に照射される。そして、ワーク10の表面で反射した光(反射光)は、集光レンズ33を介して全反射ミラー32に入射し、この全反射ミラー32及び部分透過ミラー42で反射された後、その一部がビームスプリッター43で反射されて、検出部44に入射する。このように、本実施形態のレーザー加工装置1においては、部分透過ミラー42とワーク10との間では、加工用レーザービームの光路と、検出用光の光路と、反射光の光路とが同軸上に配置されている。これにより、構成を簡素化し、光学系をコンパクトにすることができる。
【0041】
一方、検出部44は、例えば、ワーク10からの反射光を任意の比率で反射と透過とに分けるハーフミラーなどのビームスプリッター441と、ビームスプリッター441で分割された光をそれぞれ検出する受光素子442a,442bと、ビームスプリッター441で反射された光を受光素子442aに向けて集光する集光レンズ443と、ビームスプリッター441を透過した光を一次元に集光するシリンドリカルレンズ444と、シリンドリカルレンズ444で集光された光を単位長さに規制する一次元マスク445を備える構成とすることができる。
【0042】
この場合、受光素子442aに受光される反射光は、集光レンズ443によって略100%集光されるため、その受光量は一定となる。一方、受光素子442bで受光される反射光は、シリンドリカルレンズ444によって一次元に集光された後、一次元マスク445によって所定の単位長さに規制されて受光される。このため、受光素子442bの受光量は、集光レンズ33からワーク10までの距離、即ち、ワーク10の表面変位に応じて変化する。
【0043】
そこで、本実施形態のレーザー加工装置1においては、各受光素子442a,442bでの受光量に対応した電圧信号を後述する制御手段に出力し、制御手段によりそれらの値に基づいて集光点位置調整手段を動作させ、加工用レーザービームの集光点位置を調整する。なお、検出部44は、ワーク10の表面変位が検出可能であればよく、図2に示す構成に限定されるものではない。
【0044】
本実施形態のレーザー加工装置1における制御手段は、例えばコンピュータにより構成されおり、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラムなどを格納するリードオンメモリ(ROM)と、演算結果などを格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、検出部44からの出力信号が入力される入力エンターフェース、及びアクチュエータ35に動作信号を出力する出力インターフェースを備えている。そして、この制御手段では、検出部44から出力された電圧信号に基づいて、アクチュエータ35などを動作させて、集光レンズ33の位置を調整する。
【0045】
更に、本実施形態のレーザー加工装置1においては、保持手段2の上方に、アライメント作業用の撮像手段4が設けられていてもよい。その場合、この撮像手段4により、ワーク10におけるレーザー加工すべき加工領域を検出する。
【0046】
次に、本実施形態のレーザー加工装置1の動作、即ち、レーザー加工装置1を使用してワーク10を加工する方法について説明する。本実施形態のレーザー加工方法においては、先ず、図1に示すように、加工対象のワーク10を、粘着テープ12を介してリングフレーム11の開口部に支持させる。このとき、ワーク10の裏面に粘着テープ12を貼付する。そして、ワーク10を保持手段2に載置し、リングフレーム11をクランプ22で固定すると共に、保持面21aによりワーク10を吸着保持する。
【0047】
次に、加工手段により、所定波長の加工用レーザービームを、分割予定ラインに沿ってワーク10に照射する。例えば、ワーク10がシリコン基板を使用した半導体ウエーハであり、その内部に変質層を形成する加工の場合は、波長が1064nmのパルスレーザービームを照射する。また、その際、表面変位検出手段により、加工用レーザービームを照射する部分、即ち、分割予定ラインの表面変位を測定し、その結果に基づいて制御手段により集光点位置調整手段を操作して、ワーク10の厚さ方向におけるレーザービームの集光点位置を補正する。
【0048】
具体的には、図2に示すように、発振器31から所定波長の加工用レーザービームを発振すると、そのレーザービームは、部分透過ミラー42を透過し、全反射ミラー32で反射された後、集光レンズ33で集光されて、ワーク10に照射される。一方、検出用光源41からは、波長選択部45において選択された加工用レーザービームとは波長が異なる一の光が出射する。この検出用光の一部は、ビームスプリッター43を透過し、部分透過ミラー42及び全反射ミラー32で反射した後、集光レンズ33で集光されてワーク10に照射される。
【0049】
このとき、集光レンズ33の位置は、この加工用レーザービームの集光点位置に応じて決定される。そこで、検出用光には、集光レンズ33がその位置にあるときにワーク10の表面又はその近傍で集光する波長の光を選択する。
【0050】
この検出用光の波長の選択は、前述したように制御手段のROMに記憶された情報に基づいて行うことができるが、それ以外にも、例えば、集光レンズ33を、加工用レーザービームの集光点位置に応じて決定された所定位置に配置し、加工を行う前に、先ず検出用光のみを照射して、適正な波長を選択することも可能である。具体的には、加工を開始する前に、低波長から高波長まで波長を変化させながら検出用光をワーク10に照射し、受光素子442aから出力された電圧値V1と、受光素子442bから出力された電圧値V2を測定する。そしてそれらの比(V1/V2)が、ワーク近傍で集光されたときの値となる波長を、検出用光として適正な波長であるとして選択する。これにより、各波長の光が集光する位置を、予め制御手段のROMに記憶しておく必要がなくなる。
【0051】
そして、検出用光を照射したことにより生じるワーク10の表面での反射光は、集光レンズ33を透過し、全反射ミラー32及び部分反射ミラー42で反射された後、その一部がビームスプリッター43で反射されて検出部44に入射する。この反射光は、検出部44のビームスプリッター441において、反射と透過とに分光され、反射された光は集光レンズ443で集光されて受光素子442aに入射する。一方、ビームスプリッター441を透過した光は、シリンドリカルレンズ444において一次元に集光された後、一次元マスク445で単位長さに規制された後、受光素子442bに入射する。
【0052】
受光素子442a,442bは、その受光量に応じた電圧信号を制御手段に出力する。そして、制御手段において、例えば、受光素子442aから出力された電圧値V1と、受光素子442bから出力された電圧値V2との比(V2/V1)から、ワーク10の表面変位量を求め、集光点位置調整手段であるアクチュエータ35に印加する電圧値を調節する。これにより、アクチュエータ35が伸縮するため、集光レンズ33がワーク10に対して垂直な方向に所定量だけ移動し、加工用レーザービームの集光点位置が調整される。
【0053】
このように、本実施形態のレーザー加工装置1では、表面変位検出手段によりワークの表面変位を測定し、その結果に基づいて加工用レーザービームの集光点位置を調整しているため、ワーク10に反りやうねりがある場合でも、加工位置を一定にすることができる。その結果、どのようなワークに対しても精度よく加工を施すことができる。
【0054】
また、表面変位検出手段の検出用光源41を複数波長の光を発振可能なものとし、波長選択部45において、加工用レーザービームの集光点位置(集光レンズ33の位置)やワーク10の厚さなどに応じて、複数波長の中から検出用光として使用する一の波長を選択しているため、ワーク10の厚さ及び加工条件にかかわらず、検出用光の集光点位置をワーク表面又はその近傍に設定することが可能となる。その結果、ワーク10の厚さが厚く、更に、加工用レーザービームの集光点位置がワークの裏面近傍に設定されているような場合でも、レーザー加工中にワーク10の表面変位検出を実施することができるため、レーザービームの集光点位置をリアルタイムで補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態のレーザー加工装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すレーザー加工装置1の光学系の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1 レーザー加工装置
2 保持手段
3 レーザービーム照射ユニット
4 撮像手段
10 ワーク
11 リングフレーム
12 粘着テープ
21 保持面
22 クランプ
31 発振器
32 全反射ミラー
33 集光レンズ
34 ケース
41 検出用光源
42 部分透過ミラー
43、441 ビームスプリッター
44 検出部
45 波長選択部
51 台座
52a、52b、55a、55b 案内レール
53a、56a ボールねじ
53b、56b モータ
53c、56c 軸受けブロック
54、57 滑動ブロック
442a、442b 受光素子
443 集光レンズ
444 シリンドリカルレンズ
445 一次元マスク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームによりワークを加工するレーザー加工装置であって、
前記ワークを保持する保持手段と、
少なくとも、前記レーザービームを発振する発振器と、前記レーザービームを前記ワークに向けて集光する集光レンズとを備え、前記ワークに向けて前記レーザービームを照射する加工手段と、
前記ワークの表面変位を検出する表面変位検出手段と、
前記表面変位検出手段における検出結果に基づいて前記集光レンズの位置を調整する集光点位置調整手段と、を有し、
前記表面変位検出手段は、
前記レーザービームとは異なる複数波長の光を発振可能な検出用光源と、
該複数波長から検出用光として使用する一の波長を選択する波長選択部と、
前記波長選択部で選択され前記検出用光源から出射された検出用光を前記集光レンズに導く検出用光照射部と、
前記検出用光の照射により生じた前記ワークからの反射光を検出する検出部と、
を備えるレーザー加工装置。
【請求項2】
前記波長選択部は、前記ワークの厚さ及び/又は前記レーザービームの集光点位置に基づいて、前記ワークの表面又はその近傍で集光される波長の光を選択することを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
更に、前記表面変位検出手段での検出結果に基づいて、前記集光点位置調整手段を動作させる制御手段を有する請求項1又は2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記表面変位検出手段には、前記反射光を前記検出部に導く光学部材が設けられており、少なくとも、前記集光レンズと前記ワークとの間は、前記レーザービーム、前記検出用光、及び前記反射光の光路が同軸状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
レーザービームを使用してワークを加工するレーザー加工方法であって、
前記ワークの表面変位を検出する表面変位検出工程と、
前記表面変位の検出結果に基づいて、前記レーザービームの集光点位置を調整しつつ、前記ワークにレーザービームを照射する工程と、を有し、
前記表面変位検出工程において、前記ワークに対して、前記レーザービームと異なる波長でかつ前記ワークの表面又はその近傍で集光する波長の検出用光を、選択的に照射するレーザー加工方法。
【請求項6】
前記ワークの厚さ及び/又は前記レーザービームの集光点位置に基づいて、前記検出用光を選択することを特徴とする請求項5に記載のレーザー加工方法。
【請求項7】
前記検出用光を照射することにより前記ワークで生じた反射光の光量の変化から、前記ワークの表面変位を算出することを特徴とする請求項5又は6に記載のレーザー加工方法。
【請求項8】
前記レーザービーム、前記検出用光、及び前記反射光の光路の一部を同軸状に配置することを特徴とする請求項7に記載のレーザー加工方法。


【図1】
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【図2】
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