説明

レーザー溶接用の銅材料または銅合金材料

【課題】SnやNiなどによるめっきを必要とせず、また、接合部の電気抵抗の増加を最小限に抑えることが可能な、レーザー溶接し易い銅あるいは銅合金材料を提供すること。
【解決手段】本発明のレーザー溶接用の銅材料または銅合金材料は、板厚が0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面に、抵抗率100Ωcm以下の導電性コーティング層を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー溶接用の銅材料あるいは銅合金材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅(銅合金を含む、以下同じ。)板は、導電性及び熱伝導性に優れていることから電子材料や電気回路材料として、例えば端子や接点、あるいはバスバーにおいて広く用いられており、通常は他の導電材料と接合して用いられる。
【0003】
接合方法としては、半田付け、かしめ、抵抗溶接などが挙げられる。また、他の接合方法として、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー、ダイオードレーザー(LD)などを用いたレーザー溶接も導入されている。これは、端子や接点等の小型化に伴って必然的に接合部分も小さくなり、かかる小さな接合部位を高速に作製するにはレーザー溶接が最適であるからである。特に、小型で高出力が得られるYAGレーザーやファイバーレーザーが小型溶接に多用されるようになっており、多くのアルミ材料や鉄材料に適用されている。
【0004】
一方で、銅板はレーザー溶接に用いられる波長領域でのレーザーの反射率が高い(吸収率が低い)ため、他の材料に比べてレーザー溶接が難しいという問題がある。具体的には、YAGレーザーの波長は1064nm、ファイバーレーザーの波長は1075nm、ダイオードレーザー(LD)の波長は700〜1500nmである。そして、例えば900〜1100nmでのレーザーの吸収率は、鉄が35%、ニッケルが30%、アルミが28%前後、スズが45%程度であるのに対し、銅は10%以下である。
【0005】
このように、銅板は他の材料と比べて溶接が難しいことから、銅板のレーザー溶接には大きなエネルギーを必要とした。その一方で、高エネルギーのレーザーを銅板に用いると、銅板が溶融貫通してしまうという問題があった。その理由は以下の通りである。
【0006】
すなわち、一般的に、レーザー溶接では、レーザー照射で材料表面が溶融すると、キーホールと呼ばれる溶融穴がすぐに形成される。そして、レーザーはこのキーホール内部で複数反射を繰り返すことで吸収が増加されるため、一旦溶融した材料はレーザー溶接し易くなる。銅板の場合も、キーホールが形成されると溶融が進み易い。そうすると、一旦キーホールが形成された後の銅板は、照射されるレーザーが高エネルギーである分、一気に裏面まで溶融が進んでしまうこととなる。
【0007】
つまり、銅板をレーザー溶接する場合、レーザーのエネルギーが低いと銅板の高い反射性のために溶融することができず、一方、銅板を溶融できる高エネルギーのレーザーを銅板に照射すると表面溶融に続いてキーホール内部の溶融が急激に進んでしまい、容易に貫通してしまう。
【0008】
このような銅板の溶融貫通は、例えば二枚の銅板を重ね合わせて溶接を行う場合において、レーザー照射面である上側の銅板の板厚に比べてレーザー照射面でない下側の銅板の板厚が厚ければ、溶融は下側の銅板の途中で止まるため不都合はないが、下側の銅板の板厚が上側の銅板の板厚と同等もしくは薄いと、材料に穴が開いて種々の不都合が生じることとなる。
【0009】
より詳細には、例えば、自動車用の端子接続分野においては、光反射率を低下させた(光吸収率を向上させた)めっき銅を用いたYAGレーザー溶接が多用されている。かかるYAGレーザーを用いた溶接では、レーザー照射面である上側材料には0.1mm以下の薄い銅板が使われており、また、接合する下側の材料(銅板など)は板厚が厚い場合が多いため、下側の材料の途中で溶融が止まりやすく、レーザーによる溶融貫通を問題にする必要がない。また、得られる接合体は主に小電流用途で使用されるため、溶接部の接触電気抵抗による発熱を問題にすることもない。
【0010】
一方、近年、電極に数アンペアから数十アンペア、あるいは数百アンペアの大電流を通電する用途に接合体を使用するケースが増大しており、同時に、部品の大型化を抑制する動きも進んでいる。このため、接点や端子に用いられる銅板としては、接点の幅は小さく保ちつつ電気抵抗を低減するべく、レーザー照射面である上側の銅板の板厚を厚くする方向で設計が行われるようになっており、上側と下側の銅板の板厚が同程度になる場合がある。この場合、板厚の厚い上側の銅板を溶融するべく高エネルギーのレーザーを照射すると、下側の銅板ともども溶融貫通することとなる。
【0011】
レーザー加工が材料に穴を開けることを目的する場合には、上記現象は特に問題とはならない。しかしながら、溶接のように、二つ以上の材料を合わせて接合する場合、レーザーが材料を完全に貫通することは必ずしも望ましいものではなく、材料の内部で溶融を止めることが好ましい場合が多い。したがって、レーザー溶接によって溶融貫通し難い厚膜の銅板が望まれており、銅板の反射率を制御する重要性がますます高まっている。
【0012】
光反射率を低下させた(光吸収性を向上させた)上記めっき銅(銅材料)として、例えば特許文献1には、表面にSnめっき層を有する銅または銅合金が開示されている。また、特許文献2には、無酸素銅にNiめっきを施した銅材料が開示されている。
【0013】
しかしながら、銅材料の表面にSnやNiが存在すると、レーザー溶接時にSnやNiが銅と合金化して、接合部の電気抵抗が増加する場合があった。接合体を大電力用途で使用する場合には、接合部に大きな電流が流れ込むため、接合部の電気抵抗が増加すると極めて大きな問題となる。
【0014】
また、樹脂皮膜などの表面処理によって銅材料の表面の導電性が全くなくなると、他の材料との接合面などで電気的なコンタクトが取れなくなるため、絶縁性を付与する表面処理も好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8−218137号公報
【特許文献2】特開昭64−75699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記の様な状況の下でなされたものであり、本発明の目的は、SnやNiなどによるめっきを必要とせず、また、接合部の電気抵抗の増加を最小限に抑えることが可能な、レーザー溶接し易い銅材料あるいは銅合金材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、(1)銅板や銅合金板の表面の導電性はある程度確保しつつ、(2)レーザー溶接に用いられるYAGレーザーやファイバーレーザーなどの波長が1000nm付近のレーザーに対する銅板や銅合金板の反射率を低下させるとともに、(3)接合部の電気抵抗を増加させず、さらに(4)溶接後の接合部の強度を低下させない銅板や銅合金板の処理方法について鋭意研究を行った。その結果、銅板や銅合金板に所定の導電性コーティング層を設けることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0018】
すなわち、上記課題を解決し得た本発明のレーザー溶接用の銅材料または銅合金材料は、板厚が0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面に、抵抗率100Ωcm以下の導電性コーティング層を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明では、前記導電性コーティング層が、炭素材料を35質量%以上含有することや、前記導電性コーティング層の膜厚が1〜50μmであることが好ましい実施態様である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の銅材料または銅合金材料は、少なくとも片面に抵抗率100Ωcm以下の導電性コーティング層を有するため、銅板や銅合金板の表面の導電性をある程度確保しつつ、レーザー溶接を容易に行うことができる。また、Snめっき層やNiめっき層を設けないため、溶接時に銅材料または銅合金材料の表面が合金化して接合部の電気抵抗が増加するのを抑えることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のレーザー溶接用の銅材料または銅合金材料(以下、単に「銅材料」と称する場合がある。)は、板厚が0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面に、抵抗率100Ωcm以下の導電性コーティング層を有することを特徴とする。以下、本発明の銅材料または銅合金材料について詳細に説明する。
【0022】
(銅板、銅合金板)
本発明で用いる銅合金板の合金元素としては、当該銅合金板から得られる銅合金材料を電子材料や電気回路材料に用いることができれば特に限定されず、例えば、Zn、Al、Fe、Mn、Snなどが挙げられる。これらの合金元素は単独で含まれても、2種以上が組み合わせて含まれてもよい。合金元素の含有率は、得られる接合体に要求される機械特性や耐熱性、加工性に応じて適宜調整され、特に限定されるものではないが、例えば、Znなら50質量%以下、Alなら13質量%以下、Feなら7質量%以下、Mnなら3.0質量%以下、Snなら10質量%以下含まれることが好ましい。
【0023】
本発明で用いる銅板の板厚は0.05〜10.0mmである。板厚が0.05mm未満では銅板が薄くなり過ぎて箔の状態となって自立せず、何らかの基材に銅板を貼り付けて用いることとなる。その場合、基材の状態によって溶接状態が著しく変わるため、溶接を容易に行えない場合がある。また、レーザーのスポット径を小さくしても溶接が難しい場合がある。板厚が10.0mmを超えると、溶接するのに高いエネルギーを必要とするため、製造コストが上昇する。また、用いる溶接機によっては高いエネルギーを出力できずに溶接できない場合がある。銅板の板厚は、0.1mm以上(より好ましくは0.5mm以上)が好ましく、5.0mm以下(より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下)が好ましい。
【0024】
(導電性コーティング層)
本発明の銅材料は、銅板の少なくとも片面に導電性コーティング層を有してなる。これにより、本発明の銅材料は、導電性コーティング層が形成されていない未処理の銅板に比べて低いレーザー出力で溶接することが可能になる。また、本発明の銅材料を未処理の銅板と重ね合わせて溶接する際に、レーザー照射によりレーザー照射面が溶融し始めるエネルギー(溶融開始時レーザー出力)と、レーザー照射による溶融が接合体の裏面(照射面の裏面)に達するのに要するエネルギー(溶融貫通時レーザー出力)との差が大きくなるため、レーザーによる溶融を接合体の内部で留める(溶融貫通しない)照射条件を設定するのが容易になる。
【0025】
本発明では、銅材料が備える導電性コーティング層の抵抗率は100Ωcm以下とする。これにより、絶縁性の高い被覆に比べてある程度の導電性を確保することができ、他の材料との接合面などで電気的なコンタクトを取ることが可能になるので、例えば溶接部分の溶接不良などを、コーティング膜を通して電気的に検査できる。かかる抵抗率は、10Ωcm以下(より好ましくは1Ωcm以下、さらに好ましくは0.1Ωcm以下)であることが好ましい。抵抗率の下限は特に限定されるものではないが、技術的制限から0.02Ωcmとなる。抵抗率の測定方法については後述する。
【0026】
本発明の銅材料が備える導電性コーティング層は、炭素材料を35質量%以上含有することが好ましい。コーティング層が炭素材料を含有することにより、炭素材料は溶接時に銅材料と合金化しないため、接合部の電気抵抗が増加するのを最小限に抑えることができる。
【0027】
本発明で用いる炭素材料としては、コーティング層に導電性を付与できれば特に限定されるものではなく、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;コークス;天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイトなどが挙げられ、なかでもグラファイトが好ましい。これらの炭素材料は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
かかる炭素材料がコーティング層中に35質量%以上含まれることにより、コーティング層に導電性を十分に付与して、抵抗率100Ωcmの導電性コーティング層を得ることが容易になる。炭素材料の含有率は50質量%以上(より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上)であることが好ましい。炭素材料は、コーティング層に導電性を付与するために、コーティング層中に多く含まれていることが好ましいが、多過ぎる場合にはコーティング層が銅材料から剥離し易くなる場合もある。このため、炭素材料の含有率の上限は98質量%(より好ましくは95質量%)とすることが好ましい。
【0029】
本発明の銅材料が備える導電性コーティング層は、接合部の電気抵抗が増加するのを最小限に抑えることができれば、炭素材料以外の他の成分を含んでもよい。かかる他の成分としては、バインダー成分が挙げられる。コーティング層がバインダー成分を含むことにより、コーティング層の形成が容易になるとともに、銅材料からのコーティング層の剥離を防ぐことができる。かかるバインダー成分としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物;スチレン−ブタジエンゴム;石油ピッチ;フェノール樹脂;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、N−メチルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの水溶性バインダーが挙げられる。これらの中でも、炭素材料を分散させ易く、かつ成膜性に優れた水溶性バインダーを使用することが好ましく、メチルセルロースが好ましい。
【0030】
バインダー成分は、導電性コーティング層中に0.005質量%以上(より好ましくは0.01質量%以上)含まれていることが好ましく、10質量%以下(より好ましくは5量%以下)含まれていることが好ましい。バインダー成分が上記範囲内で含まれることにより、バインダーとしての機能を有効に発揮できるとともに、コーティング層の導電性を確保することができる。
【0031】
なお、バインダー成分は、導電性コーティング層形成用のペースト(後述する)中に、2質量%以上(より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上)含まれていることが好ましく、65質量%以下(より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下)含まれていることが好ましい。バインダー成分は、ペーストを銅板に塗布して乾燥した際にその多くが炭化して、導電性コーティング層に上記含有率で含まれることとなる。
【0032】
本発明の銅材料が備える導電性コーティング層は、膜厚が1〜100μmであることが好ましい。膜厚が1μm未満の場合には、溶融開始時レーザー出力を十分に低くすることができない場合がある。また、溶融開始時レーザー出力と溶融貫通時レーザー出力との差を大きくすることができない場合がある。また、膜厚100μmを超える場合には、銅材料からコーティング層が剥離し易くなる場合がある。上記膜厚は、5μm以上(より好ましくは10μm以上)が好ましく、50μm以下(より好ましくは30μm以下)が好ましい。なお、膜厚の測定方法については後述する。
【0033】
(銅材料または銅合金材料)
本発明の銅材料は、板厚が0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面に抵抗率100Ωcm以下の導電性コーティング層を有するものである。このため、本発明の銅材料は低いレーザー出力で溶接することができる。
【0034】
また、本発明の銅材料は、溶融開始時レーザー出力と溶融貫通時レーザー出力との差が大きく、具体的には以下の通りである。すなわち、板厚0.5mmの未処理の銅板に、板厚0.5mmの銅板の片面に導電性コーティング層を形成してなる本発明の銅材料を、コーティング層非形成面が接合面となるように重ね合わせ、コーティング層形成面に、Ybファイバーレーザーをスポット径0.1mmφ、速度2000mm/minで照射した際の、レーザー照射面が溶融し始めるのに要するレーザーのエネルギー(溶融開始時レーザー出力)と、レーザー照射による溶融が接合体の裏面(レーザー照射面の裏面)に到達するのに要するレーザーのエネルギー(溶融貫通時レーザー出力)との差を測定した場合に、200W以上となる。当該レーザー出力差が200W以上であれば、レーザーによる銅材料の溶融を接合体の内部で留めて、溶融貫通させない照射条件を設定するのが容易になる。かかるレーザー出力差は300W以上(より好ましくは400W以上、さらに好ましくは500W以上)であることが好ましい。レーザー出力差の上限については特に制限されるものではないが、技術的制限から本発明では600Wとなる。なお、本発明において、溶融開始時レーザー出力は、膜厚0.5mmの銅板(表面に導電性コーティング層が形成されていない銅板)に対して上記条件のレーザー照射を行った場合の溶融開始時レーザー出力に比して900W以下(好ましくは850W以下)となる。
【0035】
さらに、本発明の銅材料は、接合部の電気抵抗が増加するのを最小限に抑えることができる。
【0036】
以上のことから、本発明の銅材料によれば、YAGレーザーやファイバーレーザーなど、波長が1000nm付近のレーザーを用いたレーザー溶接を容易に行うことができる。
【0037】
以下、本発明の銅材料の製造方法(導電性コーティング層の形成方法)について詳細に説明する。
【0038】
(導電性コーティング層の形成方法)
銅板の少なくとも片面に導電性コーティング層を設ける方法としては、特に限定されず、例えば、前記炭素材料とバインダー成分とを混練し、溶媒を添加してペースト化し、このペーストを銅板に塗布した後、溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0039】
上記方法で用い得る溶媒としては、炭素材料やバインダー成分を変質させるおそれが無く、かつ加熱により溶媒の除去が容易に行える溶媒であれば特に限定されない。例えば、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルアセテート、エチルアセテートなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくはカルビトールアセテートである。
【0040】
ペーストの銅板への塗布方法も特に限定されず、例えば、グラビア印刷、平板印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、スクリーン印刷などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
(実施例1)
溶媒としてカルビトールアセテート100mlに、炭素材料としてグラファイト粉を50gと、バインダー成分としてメチルセルロース粉末を5g混合して撹拌し、ペーストを得た。
【0043】
板厚0.5mmの純銅板の片面に、上記ペーストをスクリーン印刷した後、150℃で2時間乾燥して、表面に導電性コーティング層を有する本発明の銅材料1を得た。
【0044】
(導電性コーティング層特性)
乾燥後のコーティング層の電気抵抗率を4探針法で計測したところ、3Ωcmであった。また、乾燥後のコーティング層の膜厚を触針式膜厚計で測定したところ、10μmであった。
【0045】
(レーザー溶接試験)
板厚0.5mmの純銅板の上に、銅材料1、あるいは、板厚0.5mmの純銅板をそれぞれ重ね合わせて、ファイバーレーザーで重ね合わせ溶接を行った。なお、銅材料1については、コーティング層非形成面を接合面とした。溶接装置は、住友機械エレクロトニクス社製のYbファイバーレーザーを用いた。スポット径は0.1mmφとし、前進角5度、加工速度2000mm/min、溶接長を20mmとした。
【0046】
銅材料1を用いた場合、レーザー出力を800W以上にすると溶接が可能となり、1300W以上にすると溶融貫通した。一方、板厚0.5mmの純銅板を用いた場合、レーザー出力が1300W以下では、表面に傷ひとつ付けることができなかった。1400Wにすると溶融貫通した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、レーザー溶接が容易な銅材料の提供に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚が0.05〜10.0mmの銅板または銅合金板の少なくとも片面に、抵抗率100Ωcm以下の導電性コーティング層を有することを特徴とするレーザー溶接用の銅材料または銅合金材料。
【請求項2】
前記導電性コーティング層が、炭素材料を35質量%以上含有する請求項1に記載の銅材料または銅合金材料。
【請求項3】
前記導電性コーティング層の膜厚が1〜50μmである請求項1または2に記載の銅材料または銅合金材料。



【公開番号】特開2011−117049(P2011−117049A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276757(P2009−276757)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】