説明

レーザー距離計とレーザーカメラを使用した艦船の海上衝突予防用補助監視装置

【課題】艦船が入出港時や他船で混み合う狭水道等を航行中、他船等の監視に対し船首中央から左右対称の一定角度内に限定した追加の監視手段を提供する。
【解決手段】船首最先端中央(下部)の船体に凹み又は追加の構造物を作り左右対称で放射線状にレーザービームが発射出来るように複数個のレーザー距離計を取り付け、支柱を常時往復移動させることでレーザービーム間の死角を無くすようにする。レーザービームの反射により得られた他船等との方位と距離を操船場所に表示、警報する。並行してレーザーカメラを同じ船首に固定装備し、船首前方を動画で撮影しその画面を同じ操船場所に表示する。両者の表示、警報及び映像を提供することで操船者に衝突回避の動作を起こさせるための艦船の海上衝突予防用補助監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自船が入出港時や他船で混み合う狭水道等を航行中に他船等の障害物に衝突する場合、前進する自船の船首から他船等に衝突することが通常であり、衝突を回避する場合も船首前方の情報が必須である。従って、本発明は船首中央から左右一定の限定した角度内の監視を行うこととしている。このため船首最先端中央下部から左右対称で放射線状にレーザービームを発射出来るように複数台のレーザー距離計を配置し、又これらのレーザービームを旋回させることにより隣り合うレーザービームとの探知のための平面的な死角を作らないようにしている。並行してレーザーカメラをレーザー距離計と同じ場所に設置し、船首最先端中央から左右一定の範囲が写るように固定し動画で連続して撮影する。これらの出力や映像を操船場所に表示することで操船者に正確な船首直近の海上情報を知らせるのを目的とした海上衝突予防用補助監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自船が入出港時や他船で混み合う狭水道等を航行中は衝突予防のため自船の航海用レーダーのディスプレイを監視することと併行して複数の乗組員の双眼鏡による前方の目視監視を行っていた。
航海用レーダーの場合は船上のレーダーマストに取り付けられたスキャナーアンテナから波長3cm〜10cmのパルス電波を発射し海上の他船等に跳ね返った電波を受信しその距離を時間から計算してディスプレイ画像に平面上の点として表示するものである。更にこのスキャナーアンテナを回転させることにより反射電波の方位も分かるようにその方位上に反射物の点を表示させている。この場合、スキャナーアンテナの高さは大型の艦船では海上から30m程度ある。一方、スキャナーアンテナから打ち出されるパルス電波は垂直ビーム幅が仰角10°、俯角10°程度の電波なので海上30mの高さから俯角10°の電波が海上に到達するのは、スキャナーアンテナの位置から約170m先である。日本の護衛艦クラスでは、スキャナーアンテナの位置から船首迄は70m程度あるので、船首から100m程度は垂直ビームの死角となり海上に存在する他船等は見えない状態になる。
【0003】
この事は、衝突する100m前になると相手船が見えなくなる事になる。
この場合、スキャナーアンテナの位置を船首から170m程度後方に変えたとしてもレーダービームの俯角部分が自船の船首部分の構造物を捉えることでその死角により直近の海上が探知出来ない。
従って、レーダーでは完全な船首付近の監視は出来ないと言える。
又、レーダーと併行して行なわれる乗組員の双眼鏡による目視監視については次の問題点がある。
1.自船と衝突の対象となる他船の2隻の位置関係がそれぞれ同じ速度で交差する方向に進んでいる場合、互いに相手が止まって見える「コリジョン(衝突)コース」と言う危険な位置関係になる。この場合は監視中でも衝突の危険がある。
「コリジョン(衝突)コース」について補足すると、例えば自船の船首から時計周りに30°の位置に相手船を確認した場合、自船の速度と相手船の速度が同じで両方の船が交差する方向に直進している場合、時間が経っても自船と相手船との位置関係、即ち自船の船首から時計周りに30°の位置に相手船を確認する状態が続き相手船が止まって見え続ける状態のコースを言う。この場合は衝突するまで分からない。
2.操船する高い艦橋(船橋)の内外から遥か前方の船首を見下ろしても船首に続く上甲板や自船の構造物が覆いとなって船首近傍の海上が見えない。
3.監視する乗組員の個人差による監視能力のバラツキや天候状態による監視場所のバラツキが大きく、危険な状態を見逃す場合がある。
4.監視義務を怠って全く見ない場合がある。
一方、レーザーレーダーやレーザーカメラを利用した海上衝突予防の装置も提案されているが、前者は回転ミラーを用いてレーザー距離計のビームをスキャンし距離情報を得ようとするものであるが、コンピュータを使い大型で高額な上、3次元画像分解能(特に距離)の不足等の課題があり普及していない状態であった。
又、後者を利用した海上衝突予防装置として下記の特許文献があるがこれも装置が複雑で障害となる対象物を一旦静止画に撮像する等、リアルタイムに外部状況を把握することに欠ける課題があった。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献】特開2001−27671
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダーによる監視には、垂直ビーム幅の制約による機構上の欠点があり、自船の船首直近の監視には万全ではない。
又、乗組員の双眼鏡による監視については思い違いや個人差があり、監視する場所が船体の中央部が多い関係で前方にある自船の構造物による死角が多く自船の船首直近の監視には万全ではない。
一方、レーザーレーダーやレーザーカメラを利用した海上衝突予防装置は装置が複雑で扱いが煩雑であるため、リアルタイムに外部状況を把握することに欠ける等の課題がある。
従って、現行の船首直近の海上の監視については万全の方策とは言えない危険な状態を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
自船が入出港時や他船で混み合う狭水道等を航行中に他船等の障害物と衝突するのを防止するための情報提供を目的として、船首中央最先端の吃水線近くの船体にこの装置を使用しないときは閉じることの出来る凹み又は追加の構造物を作り、この装置を必要とするとき船首を中心に左右対称に限定された角度内で放射線状のレーザービームが発射出来るようにその凹み又は追加の構造物の中に複数台のレーザー距離計を装備しかつ船首前方を撮影出来るレーザーカメラを備えたレーザー距離計とレーザーカメラを使用した艦船の海上衝突予防用補助監視装置である。
【0007】
レーザー距離計は船首を中心に扇状に複数個固定して取り付けるが1台のレーザービームは1本でありその線上にある反射物だけが検知され角度を変えて取り付けた隣のレーザー距離計のレーザービームとの間の平面的空間に存在する反射物が検知出来なくなるのでこの角度分だけレーザー距離計の支柱を絶えず旋回及び反転させ、移動中もレーザービームを放出し続け隣り合う2台のレーザービームの平面的死角を無くすようにしたレーザー距離計とレーザーカメラを使用した艦船の海上衝突予防用補助監視装置である。
【0008】
レーザー距離計が掴んだ他船等の海上障害物との距離出力を操船場所に電送し、扇状の棒グラフ表示等にして該当する角度に出力を表示し、かつその値が閾値より短いものであれば警報することで船首方向に存在する他船等を方位と距離で操船者に知らせ又レーザーカメラの映像を見せることで正確な船首直近の海上情報を提供することを目的としたレーザー距離計とレーザーカメラを使用した艦船の海上衝突予防用補助監視装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、船首最先端部に取り付けた複数台のレーザー距離計を船首中央から左右に一定の角度毎に放射状に同心円で取り付け、隣り合うレーザー距離計の角度分だけ取り付ける共通の垂直支柱を円弧上に沿って往復に旋回させる。旋回中もレーザー距離計からレーザービームを発射し自船の船首前方の他船や障害物をその反射によって探知するので従来のレーダーと目視のみによる監視に加えてより確実な船首方向の他船や障害物との方位と距離情報を提供出来る。
【0010】
これらのレーザー距離計が掴んだ他船等の海上障害物との距離出力を船(艦)橋の操船場所迄電送し、扇状の棒グラフ等で表示された「他船の方位、距離グラフ」の該当する角度に出力を表示することで操船者は自船の船首前方何度の角度に設定されたレーザー距離計が何mの距離に他船を発見したかを知ることとなる。又、その距離が予め設定された閾値より短い場合は衝突する危険があるということでブザー等の可聴信号を発し操船者に注意を喚起する。並行してレーザーカメラをレーザー距離計と同じ場所の船首中央に固定装備し、船首中央から左右対称に一定の角度を網羅するように動画で撮影する。そのディスプレイを船(艦)橋の操船場所で前述のレーザー距離計からの出力信号パネル「他船の方位、距離グラフ」の近くに表示することによって、操船者は「他船の方位、距離グラフ」の出力に相当する対象物をレーザーカメラの動画の中から特定し自船に向かってくると判断された場合は衝突回避に向けた迅速な行動を可能とするので的確な情報の提供が出来る。
【0011】
現存するレーザーレーダーを本発明の複数個のレーザー距離計に代えて装備する方法も考えられるがレーザーレーダーが高額でかつ1本のレーザービームをスキャンニングすることで生ずる探知時間の遅れによる信頼性の欠如があることに対し、本発明の複数個のレーザー距離計は1個のレーザー距離計が受け持つ角度が微小で今回の例では7.5°であり、殆どゼロスキャンの状態である。このことは直接的で時間遅れの無いリアルタイムな情報を確実に提供出来かつレーザーレーダーに比べて安価でシンプルな装置であるのでユーザーにとって使いやすい装置となっている。
【0012】
レーザーカメラの動画映像を一定時間連続して記録し、一定時間経過後は再び一定時間の頭に戻り前回記録した上から新しく記録する方法で絶えず最新の映像から一定時間前の映像が記録されている状態を作り出しておくことで後日の海難審判等にも対応できる。
この結果、本発明のレーザー距離計とレーザーカメラを使用した艦船の海上衝突予防用補助監視装置を備えることで自船の船首直近の海上に於ける他船等の存在情報を従来のレーダーと目視のみに頼った不確実な監視に加えるかたちででより確実に操船者に提供出来ることにより、他船等との衝突等の海難事故を未然に防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 本発明の船首部に凹みの場合の側面図
【図2】 本発明の船首部に凹みの場合の正面図
【図3】 本発明のレーザ−距離計平面配置図
【図4】 本発明のレーザ−距離計設置図
【図5】 本発明のレーザ−距離計が装備された船首部の区画にある制御図
【図6】 本発明のレーザ−距離計出力が装備された操船場所の区画にある制御図
【図7】 本発明のレーザ−距離計の出力パネル例「他船の方位、距離グラフ」
【図8】 本発明のレーザ−距離計出力制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
1.レーザー距離計(4)とレーザーカメラ(5)の装備場所
本発明は従来のレーダーを補佐する目的でレーザー距離計(4)とレーザーカメラ(5)を使って他船等の海上障害物を検知するものである。レーダーの場合発射する電波の垂直ビーム幅が20°であることからスキャナーアンテナの高さが大型の艦船では海上から30m程度上部の装備であるのに対しレーザービームはその垂直ビーム幅が0.5°程度であるため殆ど直線とみなされるので発射されるレーザービームは海面と平行に進行させる必要がある。本発明が衝突予防の対象としているものは小型の漁船等を含むものであるからそのビームが漁船等に反射出来る高さに装備出来るよう自船の船首中央最先端の吃水線(船舶が静水上に浮かんでいる時、船腹が水面に接する分界線)の近くの船体に凹み又は追加の構造物を作りこれらのレーザー距離計(4)とレーザーカメラを(5)装備することを提案する。
尚、この凹み又は追加の構造物は外海等を航海中でレーダーによる他船の監視ですまされる場合は波浪の衝撃を避けるためこの凹み又は追加の構造物の開口部を閉じるものとする。この凹み又は追加の構造物は具体的に適応される船舶の構造等により個別に実施されるものであるが特に船体に設ける凹みについて実施されたときの一般的なイメージを図1、図2に示す。
【0015】
2.レーザー距離計(4)
船首最先端中央下部から左右対称に放射線状にレーザービームが発射出来るように複数個のレーザー距離計(4)を配置する。平面配置の1例として図3に示すように船首を0°として±45°の範囲で7.5°の間隔で合計13個のレーザー距離計を3段積みで同心円上に装備する。この場合警報の閾値を距離1,000mとすれば7.5°のビーム間隔では1,000m前方の他船等の障害物は130mずつの間隔でいずれかのレーザービームに反射することになる。但し、このビームとビームの間の130m以内は他船等の障害物が探知出来ないことになる。従って、一本の支柱に取り付けられた各レーザー距離計(4)はブラインドとなるビームとビーム間の角度相当分、この場合は7.5°だけ水平に円弧上で往復動を行い往復動の間もビームを発射することにより盲目となる角度を作らないようにする。レーザービームを一定の角度分往復させる方法の1例としてモーター(7)と減速ギア(8)を用いて支柱(11)を回転させてその角度をエンコーダ(9)のパルスで読み取りながら目標値の角度にくれば直ちにモーターを停止し、反転して反転方向に回転させエンコーダのパルスで読み取りながら目標値の角度にくれば直ちにモーター(7)を停止し、又反転する制御を行う。図4にそのイメージ図を記す。
レーザービームの全体の放射角度及び個数は測定距離の閾値等によって個別に予め設定されるものとする。
【0016】
本発明はユーザーの希望により個別のレーザー距離計(4)を必要台数取り付けることとし、探知範囲の角度及び探知間隔を自由に選べて且つ動作が直接的で確実な情報をリアルタイムに提供することを可能にする。
レーザー距離計(4)が掴んだ他船等の海上障害物の距離情報を船(艦)橋の操船場所迄電送し、そこでこれらの距離情報を同心円状の棒グラフ等で表示された「他船の方位、距離グラフ」の該当する角度に個別に表示することで操船者は自船の船首前方何度の角度に設定されたレーザー距離計が何mの距離に他船を発見したかを知ることとなる。又、その距離が予め設定された閾値より短い場合は衝突する危険があるということでブザー等の可聴信号を発し操船者に注意を喚起する。
レーザー距離計の出力はJIS規格の「クラス2」相当品で測定距離は自船の標準旋回性能等を考慮して決定するものとし、限度を2,000m程度とする。
環境性能はIP55程度とする。
【0017】
具体的にレーザ−距離計(4)を用いたこの装置のメカニズムについて以下の通り説明する。
(イ)図5はレーザ−距離計(4)が装備された船首最先端の区画にある制御の関係図を示す。レーザ−距離計(4)はその出力信号に合せてRS232Cコネクター(15)で信号を取り出し、RS232Cケーブル(12)でRS232Cコネクター(15)を経て機側制御盤(13)に取り込む。尚、このRS232Cケーブル(12)は最長で15mの距離制限があるがこの区画内の装備であれば15m以内の長さで布設できるものである。
レーザ−距離計(4)は複数個、今回の例では13個の装備となる。これら全てのレーザ−距離計(4)の出力を同じ方法で機側制御盤(13)に取り込む。
機側制御盤(13)の内部ではそれぞれRS232トランシーバー(16)を介してシリアルI/O(17)のチャンネル1から13までのポートに接続する。
13個のパラレル信号を1本のシリアル信号に並び変えてCPU(18)に送る。
CPU(18)はシリアルI/O(17)を介してRS422トランシーバー(19)を経てRS422ケーブル(20)で操船場所に装備する図6の主制御盤(26)に信号を電送する。尚、この図5の区画でも液晶モニター(23)、ブザー(24)及びブザー停止釦(25)を装備するのでそれぞれ機側制御盤(13)内のパラレルI/O(22)を介してCPU(18)と接続している。
(ロ)図6は操船場所での制御の関係図を示す。
レーザ−距離計(4)が装備された区画の機側制御盤(13)からRS422ケーブル(20)で操船場所に装備した主制御盤(26)に送られてきた全てのレーザ−距離計(4)のシリアルデータをRS422トランシーバー(19)を介してシリアルI/O(17)を経てCPU(18)に送る。CPU(18)はROM(21)のプログラムに従って同心円状の棒グラフ等で表示された「他船の方位、距離グラフ」を作成し、パラレルI/O(22)を介して液晶モニター(23)とブザー(24)に出力する。同時に図5の機側制御盤(13)に接続する液晶モニター(23)とブザー(24)にもRS422ケーブル(20)を介して出力する。それぞれのブザーの近くにブザー停止釦(25)を装備し警報確認後この釦が押されたら直ちに全てのブザーを停止する。
(ハ)図7は操船場所での同心円状の棒グラフで表示された「他船の方位、距離グラフ」の表示例を示す。
同心円状の棒グラフを表示するためレーザ−距離計(4)からの距離出力を[r(m)]としレーザ−距離計(4)の設定角度を[θ(°)]とした時、レーザ−距離計(4)1個のデータを(r,θ)とする。これは平面極座標を表す。この場合、r(m)は船首中央で最先端の位置(0点)から反射物Pまでの直線距離OPとし、θ(°)は船首を上にして(0点)を始点とする右方向へXまでの水平線OXを0°として反時計回りにθ(°)の∠POXとする。
従って、レーザ−距離計(4)からの信号はその設定角度情報を入れて(r,θ)のシリアル信号とする。この(r,θ)のデータに基いて同心円状の棒グラフ等を表示する。この場合グラフの表示上は「船首中央」を0°とするが「船首中央」の位置にあるレーザ−距離計(4)のデータのθ°は∠POXであるため90°となる。
このようにレーザ−距離計(4)が設置される角度とグラフに表示される角度との間に上記のようなデータの置換が必要となる。
(ニ)図8はレーザ−距離計(4)の出力制御のフローチャートを示す。
レーザ−距離計(4)は最大探知距離を2,000m程度としているのでその距離以遠にある反射物は感知出来ない。その場合は出力が無いことになる。
従って、CPU(18)のメインルーチンはシリアルI/O(17)のチャンネル1からチャンネルN(今回の場合は13)迄、順次各チャンネルに出力が有るか無いかを調べるという作業を行う。このルーチンにおいて出力が有るチャンネルを見つけるとメインルーチンを飛び出しサブルーチンに行く。
サブルーチンでは出力を読取り、距離情報r(m)が閾値より大きいか小さいかの判定を行い閾値より大きい場合、橙色で該当する角度に棒グラフを表示する。
一方、閾値より小さい場合、赤色で該当する角度に棒グラフを表示し、ブザーを吹鳴する。次にブザー停止釦が押されたときは直ちにブザーを停止する。停止釦が押されなかったときは引き続きブザーの吹鳴を続ける。
このサブルーチン作業が済めば直ちにメインルーチンに戻る。
メインルーチンに戻る方法はサブルーチンで処理したチャンネル番号の次の番号のチャンネル番号から入るものとする。このようにしてメインルーチンの無限ループを形成する。
【0018】
3.レーザーカメラ(5)
船首前方を常時監視するカメラとしてレーザーカメラ(5)を採用する。
レーザーカメラ(5)の必要性はレーザ−距離計(4)が掴んだ距離にある他船等の進行方向が一つの反射データでは判断出来ないので並行して生の映像を見ることでレーザ−距離計(4)が掴んだ距離にある他船等の進行方向が自船に向かう危険なものであるかを瞬間的に理解する為である。この場合、危険なものと判断するのは操船者の責任において行う。
又、レーザーカメラ(5)の一定時間のビデオ映像を常時記録することで後日の海難審判にも対応できる。
一般的にカメラによる常時監視の場合、日中の晴天撮影のみならず雨や霧等の悪天候時や夜間の撮影能力が不可欠となる。高感度CCDカメラは雨や霧等の悪天候時や夜間等の光源が非常に少ない状況では明瞭な映像が得られない。照明付CCDカメラは照明用光源の到達距離が短く又光源の消費電力が大きく常時監視には不向きである。
赤外線カメラは雨や霧等の悪天候時や夜間の撮影で細部の識別等が出来ない。これらに対してレーザーカメラ(5)は日中の撮影は高感度CCDカメラとして働き、雨や霧等の悪天候時や夜間の撮影では低電力の高指向性レーザーカメラビームを対象物に照射することで鮮明な映像が認識できる。
レーザーカメラ(5)は一般的に市販されているものを採用し環境性能はIP55程度とする。
レーザー出力はJIS規格の「クラス2」相当品で測定距離は自船の標準旋回性能等を考慮して決定するものとし、限度を2,000m程度とする。
【符号の説明】
【0019】
1. 船首船体
2. 開閉扉
3. 吃水線
4. レーザー距離計
5. レーザーカメラ
6. 回転制御器
7. モーター
8. 減速ギア
9. エンコーダ
10.ボールベアリング
11.支柱
12.RS232Cケーブル
13.機側制御盤
14.電源ケーブル
15.RS232Cコネクター
16.RS232Cトランシーバー
17.シリアルI/O
18.CPU
19.RS422トランシーバー
20.RS422ケーブル
21.ROM
22.パラレルI/O
23.液晶モニター
24.ブザー
25.ブザー停止釦
26.主制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自船が入出港時や他船で混み合う狭水道等を航行中に他船等の障害物と衝突するのを防止するための情報提供を目的として、船首中央最先端の吃水線近くの船体にこの装置を使用しないときは閉じることの出来る凹み又は追加の構造物を作り、この装置を必要とするときは船首を中心に左右対称に限定された角度内で放射線状のレーザービームが発射出来るようにその凹み又は追加の構造物の中に複数台のレーザー距離計を装備しかつ船首前方を撮影出来るレーザーカメラを備えたレーザー距離計とレーザーカメラを使用した艦船の海上衝突予防用補助監視装置。
【請求項2】
レーザー距離計は船首を中心に扇状に複数個固定して取り付けるが1台のレーザービームは1本でありその線上にある反射物だけが検知され角度を変えて取り付けた隣のレーザー距離計のレーザービームとの間の平面的空間に存在する反射物が検知出来なくなるのでこの角度分だけレーザー距離計の支柱を絶えず旋回及び反転させ、移動中もレーザービームを放出し続け隣り合う2台のレーザービームの平面的死角を無くすようにした請求項1の艦船の海上衝突予防用補助監視装置。
【請求項3】
レーザー距離計とレーザーカメラはレーザー距離計が掴んだ他船等の海上障害物との距離出力を操船場所に電送し、扇状の棒グラフ表示等にして該当する角度に出力を表示し、かつその値が閾値より短いものであれば警報することで船首方向に存在する他船等を方位と距離で操船者に知らせ又レーザーカメラの映像を見せることで正確な船首直近の海上情報を提供することを目的としたレーザー距離計とレーザーカメラを使用した請求項1又は請求項2の艦船の海上衝突予防用補助監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−123853(P2011−123853A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299340(P2009−299340)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(508239643)
【Fターム(参考)】