説明

レーザ光源装置

【課題】半導体レーザを用いたレーザ光源装置において、装置のコストアップや大型化を防止しつつ、固体レーザ結晶の発熱が、相対的に温度特性の悪い波長変換素子へ熱伝達してしまうことを防止し、この結果、常に安定した半導体レーザを供給することができるレーザ光源装置を得ることを目的とする。
【解決手段】励起光を出射する半導体レーザと、この半導体レーザにより出射される励起光により基本波光を発振する固体レーザ結晶と、前記基本波光を波長変換して高調波光を発生させる分極反転部を含む波長変換素子を備えたレーザ光源装置において、前記固体レーザ結晶と、波長変換素子と接合部に、固体レーザ結晶と波長変換素子を断熱する断熱部材があることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体レーザを用いたレーザ光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、固体レーザ結晶と非線形光学結晶である波長変換素子を用いた波長変換技術が盛んに行われている。特に、固体レーザ結晶から出射される基本波の第2高調波発生は、固体レーザ基本波の良好なビーム特性を損なわず波長のみを半分に変換できる。(特許文献1)には、固体レーザ結晶と波長変換素子と、その接合部に熱拡散板を用いたレーザ光源装置が示されている。ここで示されているレーザ光源装置の熱拡散板は固体レーザ結晶、波長変換素子より断面積が大きく、周囲に張出しており、張出し部分の波長変換素子側に、ペルチェ素子とヒートシンクが取り付けられている。固体レーザ結晶の入射面、出射面、波長変換素子の入射面、出射面には、それぞれ膜が形成されている。
【0003】
固体レーザ結晶の入射面には、半導体レーザからの励起光のAR膜(反射防止膜)、基本波光用のHR膜(高反射膜)が形成され、出射面には、基本波光用のAR膜が形成される。波長変換素子の入射面には、基本波光用のAR膜、高調波光用のHR膜が形成され、出射面には、高調波光用のAR膜、基本波光用のHR膜が形成される。
【0004】
固体レーザ結晶に、不図示の半導体レーザから励起光が照射されると、固体レーザ結晶により基本波光が発振される。波長変換素子の出射面と、固体レーザ結晶の入射面間でポンピング、増幅される。また、基本波光は波長変換素子によって高調波に変換される。ここで、固体レーザ結晶は、励起光により基本波光が発振されることによって発熱する。また、基本波光が波長変換素子で高調波に変換することによって発熱する。固体レーザ結晶、波長変換素子の熱は、熱拡散板に熱伝達し、さらに張出し部分に熱伝達し、ペルチェ素子により冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−286735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の半導体レーザを用いたレーザ光源装置に、固体レーザ結晶と波長変換素子と、固体レーザ結晶と波長変換素子間に熱拡散板を用いる構成には以下の課題がある。すなわち、固体レーザ結晶と波長変換素子は、それぞれ発熱するが、励起光を吸収して基本波光を発振する固体レーザ結晶の方が、基本波光を高調波光に変換する波長変換素子より発熱量は多くなる。また、固体レーザ結晶の方は波長変換素子より温度特性が優れているため、固体レーザ結晶の方は波長変換素子よりも高温になっても、出力特性にはほとんど影響がない。そのため、固体レーザ結晶で発熱した熱は、熱拡散板を介して放熱板に熱伝達されるが、その熱は、相対的に温度が低い波長変換素子にも熱伝達される可能性がある。放熱板をペルチェで冷却することにより、その可能性を低減することができるものの、構造が複雑になることや、コストアップ、レーザ光源装置が大きくなるといった課題も生じる。
【0007】
この課題を避けるために、ペルチェを用いない方法を取ると、固体レーザ結晶で発熱した熱が、熱拡散板を介して波長変換素子に熱伝達されてしまうと、波長変換素子の変換効率が低下して、さらに波長変換素子、また固体レーザ結晶が加熱されていくといった悪循環を起こしてしまう。
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は半導体レーザを用いたレーザ光源装置において、装置のコストアップや大型化を防止しつつ、固体レーザ結晶の発熱が、相対的に温度特性の悪い波長変換素子へ熱伝達してしまうことを防止し、この結果、常に安定した半導体レーザを供給することができるレーザ光源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するために本発明のレーザ光源装置は、励起光を出射する半導体レーザと、この半導体レーザにより出射される励起光により基本波光を発振する固体レーザ結晶と、前記基本波光を波長変換して高調波光を発生させる分極反転部を含む波長変換素子と、前記固体レーザ結晶と前記波長変換素子との接合部に設けられ、前記固体レーザ結晶と前記波長変換素子を断熱する断熱部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように構成されるため、固体レーザ結晶で発熱した熱が熱拡散板を介して波長変換素子に熱伝達して、波長変換素子の変換効率が低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1におけるレーザ光源装置を搭載する画像表示装置の概略構成図
【図2】本発明の実施例1におけるレーザ光源装置の概略構成図
【図3】本発明の実施例1におけるレーザ光源装置における共振器を構成する部品の膜に関して説明する概略構成図
【図4】本発明の実施例1におけるレーザ光源装置の固体レーザ結晶入射面から見た断熱部材の形状を説明する概略構成図
【図5】本発明の実施例2におけるレーザ光源装置の概略構成図
【図6】本発明の実施例2におけるレーザ光源装置の固体レーザ結晶入射面から見た断熱部材の形状を説明する概略構成図
【図7】本発明の実施例3におけるレーザ光源装置の概略構成図
【図8】本発明の実施例4におけるレーザ光源装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における第1の発明は、励起光を出射する半導体レーザと、この半導体レーザにより出射される励起光により基本波光を発振する固体レーザ結晶と、前記基本波光を波長変換して高調波光を発生させる分極反転部を含む波長変換素子と、前記固体レーザ結晶と前記波長変換素子との接合部に設けられ、前記固体レーザ結晶と前記波長変換素子を断熱する断熱部材とを備えたものである。これにより、固体レーザ結晶と、波長変換素子の間に断熱部材があることにより、固体レーザ結晶で発熱した熱が、固体レーザ結晶と相対的に比較して温度特性が悪い波長変換素子に熱伝達されることを防ぐことができる。
【0013】
本発明における第2の発明によれば、前記固体レーザ結晶の入射面に、前記固体レーザ結晶で発生する熱を放熱する固体レーザ結晶放熱部材を備えたものである。これにより、固体レーザ結晶で発熱した熱が、固体レーザ結晶放熱部材に熱伝達される。そのため、温度特性の悪い波長変換素子に熱伝達しにくくなる。しかも、固体レーザ結晶の入射面に近い方が半導体レーザの励起光が吸収されやすい。つまり、固体レーザ入射面が最も高温になるため、固体レーザ結晶放熱部材が、固体レーザ結晶の入射面に接触配置されることで、固体レーザ結晶の温度上昇を効果的に防ぐことができる。
【0014】
本発明における第3の発明によれば、前記波長変換素子の出射面に、前記波長変換素子で発生する熱を放熱する波長変換素子放熱部材を備えたものである。これにより、波長変換素子で発熱した熱を効果的に防ぐことができる。しかも、波長変換素子で最も発熱する位置は光路上であり、波長変換素子の厚みを薄くすることで、波長変換素子の発熱部と波長変換素子放熱部材の距離を短くすることができ、波長変換素子の温度上昇を効果的に防ぐことができる。
【0015】
本発明における第4の発明によれば、前記固体レーザ結晶放熱部材と前記波長変換素子放熱部材とで、前記固体レーザ結晶、前記波長変換素子及び前記断熱部材を狭持するようにしたものである。これにより、固体レーザ結晶放熱部材と、波長変換素子放熱部材で、固体レーザ結晶、断熱部材、波長変換素子を狭持するので、固体レーザ結晶と固体レーザ結晶放熱部材、波長変換素子と波長変換素子放熱部材をそれぞれ確実に接触配置することができる。そのため、固体レーザ結晶で発熱した熱を固体レーザ結晶放熱部材へ効果的に放熱でき、波長変換素子で発熱した熱を波長変換素子放熱部材へ効果的に放熱できる状態を簡単に構成することができる。
【0016】
本発明における第5の発明によれば、前記固体レーザ結晶、前記波長変換素子の少なくとも1つから発生する熱を放熱する放熱筐体を備えたものである。これにより、固体レーザ結晶、波長変換素子の少なくとも1つから放熱筐体に熱伝達することにより、固体レーザ結晶、波長変換素子の少なくとも1つの温度上昇を効果的に防ぐことができる。
【0017】
本発明における第6の発明によれば、前記固体レーザ結晶放熱部材が、前記放熱筐体と接触しているものである。これにより、固体レーザ結晶で発熱する熱を、波長変換素子に熱伝達しない構成を実現でき、かつ相対的に発熱の大きい固体レーザ結晶の温度上昇を効果的に防ぐことができる。
【0018】
本発明における第7の発明によれば、前記断熱部材は、光路部分に光路孔が形成されており、その光路孔は外部と繋がっているものである。これにより、断熱部材が光路にないことにより、基本波光の偏光などに影響を与えることがない。しかも、光路孔が外部と繋がっていることにより、光路孔が密閉されることがないため、固体レーザ結晶で発熱した熱が光路孔近傍の空気を熱膨張して、固体レーザ結晶もしくは波長変換素子、または断熱部材が変形することを防ぐことができる。
【0019】
本発明における第8の発明によれば、前記固体レーザ結晶の入射面に第1誘電体反射膜、出射面に第2誘電体反射膜、前記波長変換素子の入射面に第3誘電体反射膜、出射面に第4誘電体反射膜がそれぞれ形成されており、前記第2誘電体反射膜は、少なくとも光路部分には形成されており、かつ前記断熱部材と接触する部分には形成されておらず、前記第3誘電体反射膜は、少なくとも光路部分には形成されており、かつ前記断熱部材と接触する部分には形成されていないものである。これにより、固体レーザ結晶、波長変換素子の両方が断熱部材と接触する部分に誘電体反射膜を形成しないことにより、誘電体反射膜を間に介することによる固体レーザ結晶の入射面と、波長変換素子の出射面の平行度を、設計値として狙った値を実現することが容易となる。そして、基本波光の高出力化を容易とすることができ、即ち高調波光の高出力化を実現することが容易となる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
以下、実施例1について図1、図2、図3、図4を用いて説明する。図1は本発明の実施例1におけるレーザ光源装置を搭載する画像表示装置の概略構成図である。図2は本発明の実施例1におけるレーザ光源装置の概略構成図である。図3は本発明の実施例1におけるレーザ光源装置における共振器を構成する部品の膜に関して説明する概略構成図である。図4は本発明の実施例1におけるレーザ光源装置の固体レーザ結晶入射面から見た断熱部材の形状を説明する概略構成図である。
【0021】
まず図1を用いて画像表示装置の概要について説明する。
【0022】
画像表示装置100はレーザ光を光源とし、スクリーンに拡大化して投影する画像表示装置である。画像表示装置100の光源は緑色レーザ光源装置1と、赤色レーザ光源装置2と、青色レーザ光源装置3との3つであり、3色のレーザ光源装置1〜3によって画像を表示する。
【0023】
緑色レーザ光源装置1は非可視光である赤外基本レーザ光を半波長に変換することで、主として緑色レーザ光51を出力し、非可視光としての赤外変調レーザ光55を付随的に出力する(詳細については後述する)。赤色レーザ光源装置2は赤色レーザ光52を出力し、青色レーザ光源装置3は青色レーザ光53を出力する。
【0024】
コリメータレンズ7〜9は各色レーザ光源装置1〜3から出力されるレーザ光51〜53を平行ビームに変化させることができる。光路分離手段としてのダイクロイックミラー10及び光路変更手段としてのダイクロイックミラー11aは表面に所定の波長のレーザ光を透過あるいは反射させるための膜を形成して構成される。拡散板14は通過するレーザ光を拡散させ、フィールドレンズ15は拡散されたレーザ光を収束レーザに変換する。PBS16(Polarized Beam Spritter)は各色レーザ光51〜53を反射させ、空間光変調素子17によって反射されたレーザ光を透過する。空間光変調素子17は反射型の液晶である。
【0025】
非可視光検出手段としてのサーモスタット20はダイクロイックミラー10によって分離された非可視光である赤外変調レーザ光55で照射される。これにより、サーモスタット20は赤外変調レーザ光55を吸収すると共に加熱されることで、サーモスタット20の温度は上昇する。このサーモスタット20の温度上昇によって緑色レーザ光源装置1の赤外変調レーザ光55の漏洩を検出することができる。
【0026】
各色レーザ光源装置1〜3からの各色レーザ光51〜53はコリメータレンズ7〜9によってそれぞれ平行光束され、平行光束された各色レーザ光51〜53はダイクロイックミラー10及び11aによって拡散板14に導かれ、拡散板14、フィールドレンズ15、PBS16の順に介し、空間光変調素子17で反射し、投射レンズ18によって拡大化されてスクリーン30に投影される。
【0027】
次に、各色レーザ光源1〜3からのレーザ光51〜53がどのようにして所定の方向に導かれるかを具体的に説明する。
【0028】
緑色レーザ光源装置1は緑色レーザ光51を出力すると共に非可視光である赤外変調レーザ光55を漏洩する。赤外変調レーザ光55はコリメータレンズ7で平行光束され、ダイクロイックミラー10を透過し、サーモスタット20を照射する(詳細については後述する)。一方、緑色レーザ光51はコリメータレンズ7で平行光束され、ダイクロイックミラー10によってダイクロイックミラー11aの方向に反射し、反射した緑色レーザ光51はさらにダイクロイックミラー11aでも反射することで拡散板14の方向に導かれる。
【0029】
赤色レーザ光源装置2から出力される赤色レーザ光52は同様にコリメータレンズ8で平行光束され、ダイクロイックミラー11aを透過することで、拡散板14に導かれる。青色レーザ光源装置3から出力される青色レーザ光53は同様にコリメータレンズ9によって平行光束され、ダイクロイックミラー10を透過し、透過した青色レーザ光53はさらにダイクイロックミラー11aで反射することで拡散板14の方向に導かれる。
【0030】
つまり、ダイクロイックミラー10は緑色レーザ光51を反射させる緑色反射膜と、青色レーザ光53を透過させる青色透過膜と、赤外変調レーザ光55を透過させる赤外透過膜とを塗布される。よって、ダイクロイックミラー10は緑色レーザ光51と赤外変調レーザ光55との光路を分離する本実施例における光路分離手段である。
【0031】
また、ダイクロイックミラー11aは緑色レーザ光51を反射させる緑色反射膜と赤色レーザ光52を透過させる赤色透過膜と青色レーザ光53を反射させる青色反射膜とを塗布される。よってダイクロイックミラー11aは各色レーザ光51〜53を所定の方向に導くための光路変更手段である。以上より、図1の構成において非可視光である赤外変調レーザ光55以外の各色レーザ光51〜53は拡散板14の方向へと導かれる。
【0032】
緑色レーザ光51、赤色レーザ光52、青色レーザ光53は拡散板14で拡散し、フィールドレンズ15で照度分布を均一化し、PBS16で反射し、空間光変調素子17へ照射される。空間光変調素子17は反射型の液晶であり、上記のようにして導かれる各色レーザ光51〜53をもとに画像を形成するように反射する。形成された画像は投射レンズ18によって拡大化されスクリーン30に投影される。ここで、緑色レーザ光51、赤色レーザ光52、青色レーザ光53は時間分割制御をされており、各色レーザ光源装置1〜3は順々に出力される。従って、投射レンズ18からも各色レーザ光51〜53は順々に投射されるため、スクリーン30上では各色レーザ光51〜53の残像によって画像を形成する。
【0033】
なお、赤色レーザ光源装置2は波長640nmの赤色レーザ光52を出力するのが好ましいが、赤色と認識できるものであれば、ピーク波長が610〜750nmの範囲で異なる波長領域のものを用いてもよい。同様に、青色レーザ光源装置3は波長450nmの青色レーザ光53を出力するのが好ましいが、青色と認識できるものであれば、ピーク波長が435〜480nmの範囲で異なる波長領域のものを用いてもよい。
【0034】
次に、図2、図3、図4を用いて緑色レーザ光源装置1について説明する。緑色レーザ光源装置1は求める色の2倍の波長となるレーザ光を半波長に変換することで、緑色レーザ光51として出力するものである。以下、具体的に説明する。
【0035】
筐体40は各部材を収納する放熱筐体である。なお、筐体40は熱伝導率の高いアルミや銅などで構成されることが好ましいが、熱伝導率の高い金属と樹脂を組み合わせて形成してもよい。筐体40に接触配置される半導体レーザ41は波長808nmの非可視光である励起光50を出力し、励起光50はコリメートレンズ42によって平行ビームに変更され、フォーカシングレンズ43により固体レーザ結晶45に集光される。固体レーザ結晶45は励起光50を吸収することによって、波長1064nmの非可視光の赤外変調レーザ光55を励起する。赤外変調レーザ光55は波長変換素子であるSHG(Second Harmonics Generation)素子48で半波長に変換され、波長532nmの可視光としての緑色レーザ光51となり、緑色レーザ光51は筐体40の開口部に設けられるガラスカバー49を透過して緑色レーザ光源装置1の外部へと出力される。ガラスカバー49は非可視光である励起光50及び赤外変調レーザ光55を透過しない膜を形成される。これにより、励起光50及び赤外変調レーザ光55が外部に漏洩することを防止する。
【0036】
ここで、本実施例において固体レーザ結晶45はY(イットリウム)VO4(バナデート)からなる厚み2mmの無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)を1%ドープしたものである。さらに具体的には固体レーザ結晶45は母材であるYVO4のYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0037】
また、固体レーザ結晶45の入射面45aは励起光50に対して無反射コート(ARコート)を施されると共に、赤外変調レーザ光55に対して高反射コート(HRコート)を施される。
【0038】
固体レーザ結晶45の出射面45bは赤外変調レーザ光55に対して無反射コート(ARコート)を施される。
【0039】
本実施例においてSHG素子48は、周期状の分極反転構造を構成しており、高い非線形光学定数と、ノンクリティカルな位相整合条件による長い作用長により高効率の波長変換が可能である。具体的には、Mg等をドーピングしたニオブ酸リチウム(LiNbO3)であり、可視領域で最大の非線形光学定数を有する透明材料であり、光損傷耐性にも優れるため、高効率変換が実現されている。
【0040】
また、SHG素子48の入射面48aは緑色レーザ光51に対して高反射コートを施されると共に、赤外変調レーザ光55に対して無反射コートを施される。
【0041】
SHG素子48の出射面48bは緑色レーザ光51に対して無反射コートを施されると共に、赤外変調レーザ光55に対して高反射コートを施される。
【0042】
励起光50は固体レーザ結晶45の入射面45aを透過し、固体レーザ結晶45によって赤外変調レーザ光55が発振される。赤外変調レーザ光55は固体レーザ結晶45の入射面と、SHG素子48の出射面によって反射を繰り返し、共振することで高い光強度のレーザ光となり、SHG素子48で半波長に変換され、緑色レーザ光源装置1の外部へと出力される。つまり、固体レーザ結晶45の入射面45aとSHG素子48の出射面48bによって共振器を構成しており、本実施例では、固体レーザ結晶45の厚み2mm、断熱部材の厚み0.5mm、SHG素子48の厚み0.5mmとし、共振器長を3mmとした。なお、固体レーザ結晶入射面45a及びSHG素子出射面48bにゴミが付着すると、高い反射率を維持できなくなる。このため、赤外変調レーザ光55の光強度も低下してしまい、高い光強度の緑色レーザ光51へと変換することもできなくなる。よって、緑色レーザ光51の内部にゴミの侵入などを防ぐため、筐体40と、カバー65でこれらの素子を覆う構成とすると共に緑色レーザ光51の出射される開口部は透明なガラスカバー49で覆う。
【0043】
以上のように構成することで、緑色レーザ光源装置1は高い光強度の緑色レーザ光51を出力できる。しかし、SHG素子48は赤外変調レーザ光55を緑色レーザ光51に100%の変換効率を実現することができないため、赤外変調レーザ光55はSHG素子48から緑色レーザ光51と共に出力される。このため、緑色レーザ光源装置1はガラスカバー49を設け、ガラスカバー49は非可視光としての赤外変調レーザ光55の漏洩を防止する。
【0044】
固体レーザ結晶45とSHG素子48の間には断熱部材46としてのガラス基板が挿入されている。ガラス基板であれば、熱伝導率は0.6W/(m・K)程度であり、十分に断熱することが可能となる。また、高平行度のガラス基板を用いることにより、固体レーザ結晶45の入射面とSHG素子48の出射面の高平行度を維持することが可能となる。
【0045】
具体的には、シグマ光機株式会社製の平行平面基板(品名)を、固体レーザ結晶45とSHG素子48の形状に合わせて加工(カット)して使用すればよい。
【0046】
また、断熱部材46については、図4に示すようにコ字型形状に加工することで、固体レーザ結晶45とSHG素子48と断熱部材46により空気が密閉されることがないため、内部の空気が熱膨張して、固体レーザ結晶45、SHG素子48、断熱部材46が圧縮され、変形したり破損したりといったことを確実に防止することができる。断熱部材46は固体レーザ結晶45とSHG素子48を断熱することができれば、他の部材であってもよい。なお、断熱部材46は、固体レーザ結晶45とSHG素子48の平行度を構成する部材になるため、断熱部材46の入射面と出射面の平行度が高いものの方が好ましい。
【0047】
固体レーザ結晶45は、固体レーザ結晶45の熱を放熱させるための固体レーザ放熱部材に接触配置されている。固体レーザ結晶放熱部材44は、筐体に固定されている。そのため、固体レーザ結晶45の熱は、固体レーザ結晶放熱部材44を介して筐体へと放熱される。固体レーザ結晶放熱部材44は、固体レーザ結晶45の熱を効率良く筐体へと伝えるため、熱伝導率の高い銅やアルミなどで構成している。
【0048】
また、固体レーザ結晶45は、半導体レーザからの励起光を吸収することによって、基本波光を発振している。固体レーザ結晶45の入射面は、半導体レーザからの励起光を最も吸収するため高温となる。そのため、固体レーザ結晶放熱部材44を固体レーザ結晶45の入射面に接触配置することによって、効率良く固体レーザ結晶45の熱を、固体レーザ結晶放熱部材44、筐体へと熱伝達させることができる。固体レーザ結晶放熱部材44は、固体レーザ結晶45の光路に最も近づけるように配置する方が好ましい。
【0049】
固体レーザ結晶45の入射面45aは励起光50に対して無反射コートを施されると共に、赤外変調レーザ光55に対して高反射コートを施されているが、それぞれのコートは、できるだけ薄く塗布するとよい。そうすることによって、固体レーザ結晶45から固体レーザ結晶放熱部材44への熱抵抗をできるだけ小さくすることができる。具体的には、コートの厚みは3μm以下にするほうがよい。
【0050】
SHG素子48は、SHG素子48の熱を放熱させるためのSHG素子放熱部材47に接触配置されている。本構成においては、SHG素子放熱部材47は、筐体には接触していないが、SHG素子48は、固体レーザ結晶45と比較すると発熱量が小さいため、筐体に接触していなくても、SHG素子48の熱を十分に放熱することが可能となる。但し、筐体に接触させることによって、SHG素子48の放熱特性をより効果的に行うことができることは言うまでもない。SHG素子放熱部材47は、SHG素子48の熱を効率良く伝えるため、熱伝導率の高い銅やアルミなどで構成している。
【0051】
また、SHG素子48は、基本波光を緑色レーザ光に変換する際に熱を発生している。そのため、SHG素子48の光路上が最も高温となる。本構成においてSHG素子48は、厚み0.5mmと薄いため、SHG素子48の出射面とSHG素子放熱部材47を接触配置することによって、効率良くSHG素子48の熱を、SHG素子放熱部材47へと熱伝達させることができる。
【0052】
SHG素子48の出射面は基本波光に対して高反射コートを施されると共に、緑色レーザ光に対して無反射コートを施されているが、それぞれのコートは、できるだけ薄く塗布するとよい。そうすることによって、SHG素子48からSHG素子放熱部材47への熱抵抗をできるだけ小さくすることができる。具体的には、コートの厚みは3μm以下にするほうがよい。
【0053】
固体レーザ結晶45の入射面と、SHG素子48の出射面の平行度を決める要因としては、固体レーザ結晶45の入射面と出射面の平行度、断熱部材46の入射面と出射面の平行度、SHG素子48の入射面と出射面の平行度、固体レーザ結晶45と断熱部材46の取付け精度、断熱部材46とSHG素子48の取付け精度が大きな要因となっている。
【0054】
各部材の平行度に関しては、それぞれの加工条件、製膜条件などで決まってくる。断熱部材46と固体レーザ結晶45、断熱部材46とSHG素子48との取付け精度に関しては、各部材の平面度、組立工程などで決まってくる。
【0055】
断熱部材46と固体レーザ結晶45の取付け面は平面度のよいものが好ましい。断熱部材46としては、例えばシグマ光機株式会社製の平行平面基板(品名)を用いれば、平面度λ以下のものも一般的に入手可能である。
【0056】
固体レーザ結晶45の出射面45bは赤外変調レーザ光55に対して無反射コート(ARコート)を施されている。ここで、光路上には前記コートを施すが、少なくとも断熱部材46と接触する部分にはコートをしないようにする。
【0057】
もし、固体レーザ結晶45の出射面全面、つまり断熱部材46との接触面に前記コートがコーティングされている場合は、このコーティングにより固体レーザ結晶45の表面粗さが大きくなってしまい、断熱部材46との取付け精度が悪くなり、結果として固体レーザ結晶45の入射面と、SHG素子48の出射面との平行度を狂わす原因となってしまう。
【0058】
前記方法を実現することによって、オプティカルコンタクトを容易に実現することができ、固体レーザ結晶45の入射面と、SHG素子48の出射面の平行度を維持することが可能となる。
【0059】
なお、オプティカルコンタクトとは、固体レーザ結晶45の出射面と、ガラス基板の入射面が共に精密研磨された状態で、互いの面を密着させることで強固な接合状態を実現することを言う。
【0060】
なお、固体レーザ結晶45の出射面にコートをしたくない部分にはマスキングをすることで容易に、コートをする部分とコートをしたくない部分を分けることが可能となる。
【0061】
SHG素子48の入射面48aは緑色レーザ光51に対して高反射コートを施されると共に、赤外変調レーザ光55に対して無反射コートを施されるが、少なくとも断熱部材46と接触する部分にはコートをしないようにする。
【0062】
もし、SHG素子48の入射面全面、つまり断熱部材46との接触面に前記コートがコーティングされている場合は、このコーティングによりSHG素子48の表面粗さが大きくなってしまい、断熱部材46との取付け精度が悪くなり、結果として固体レーザ結晶45の入射面と、SHG素子48の出射面との平行度を狂わす原因となってしまう。
【0063】
前記方法を実現することによって、オプティカルコンタクトを容易に実現することができ、固体レーザ結晶45の入射面と、SHG素子48の出射面の平行度を維持することが可能となる。
【0064】
なお、SHG素子48の出射面にコートをしたくない部分にはマスキングをすることで容易に、コートをする部分とコートをしたくない部分を分けることが可能となる。
【0065】
前記構成を実現することにより、固体レーザ結晶45、断熱部材46、SHG素子48はそれぞれがオプティカルコンタクトで強固な接合力を持った1つのアセンブリ部品となっている。これにより、部品を単体で扱うよりも作業性が上がり、効率良く緑色レーザ光源の組立を実施することが可能となる。
【0066】
次に、固体レーザ結晶放熱部材44、SHG素子放熱部材47に関して詳細な説明を行う。
【0067】
固体レーザ結晶放熱部材44は筐体に接触配置もしくは一体物となっている。SHG素子放熱部材47は、出射面側からネジ60とバネワッシャー61で固体レーザ結晶放熱部材44に固定されている。このような構成にすることによって、固体レーザ結晶45と固体レーザ結晶放熱部材44、SHG素子48とSHG素子放熱部材47の表面を圧力を掛けた状態で接触配置することができるため、固体レーザ結晶45、SHG素子48の熱を効率良く放熱部材に熱伝達することができる。
【0068】
また、固体レーザ結晶45やSHG素子48などは温度上昇することによって熱膨張する。本構成において、ネジ60とSHG素子放熱部材47の間にバネワッシャー61を挟んでいる。このバネワッシャー61が固体レーザ結晶45やSHG素子48の熱膨張分を吸収して、固体レーザ結晶45や、SHG素子48が割れたり変形したりするのを防いでいる。なお、固体レーザ結晶45、SHG素子48などの温度上昇による熱膨張を緩和することができれば、バネワッシャー61がなくてもよいことは言うまでもない。なお、固体レーザ結晶放熱部材44、SHG素子放熱部材47で十分に放熱することができれば、バネワッシャー61などの熱膨張緩和機構は当然必要ない。
【0069】
なお、固体レーザ結晶45から固体レーザ結晶放熱部材44へ放熱でき、SHG素子48からSHG素子放熱部材47へ放熱できる構成であれば、ネジ固定でなくても何でもよい。
【0070】
また、ネジ60に関しては、固体レーザ結晶45の熱が固体レーザ結晶放熱部材44へ放熱し、ネジ60を介してSHG素子放熱部材47へ熱伝達しなければ、何でもよい。熱伝導率の低い樹脂ネジを使うのが最も好ましいが、SUSなど熱伝導率の低い金属ネジであっても問題ない。
【0071】
次に、サーモスタットに関して詳細な動作説明を行う。
【0072】
次のような場合において、非可視光としての赤外変調レーザ光55あるいは励起光50を緑色レーザ光源装置1の外部に漏洩する可能性がある。例えば、画像表示装置100の落下などにより、半導体レーザ41の光軸から固体レーザ結晶45及びSHG素子48が外れる場合、このとき励起光50が直接緑色レーザ光源装置1の外部に漏れる危険性がある。しかしこの場合、励起光50はダイクロイックミラー10を透過し、サーモスタット20を照射することで吸収される。
【0073】
また半導体レーザ41の光軸からSHG素子48のみが外れる場合、このとき固体レーザ結晶45によって励起された赤外変調レーザ光55が直接緑色レーザ光源装置1の外部に漏れる危険性がある。しかしこの場合、赤外変調レーザ光55はダイクロイックミラー10を透過し、サーモスタット20を照射することで吸収される。
【0074】
また励起光50、赤外変調レーザ光55が設計した光軸から少しずれることにより、SHG素子48の変換効率が悪化する。これにより、ガラスカバー49だけでは防止しきれず、励起光50あるいは赤外変調レーザ光55が漏洩するということも考えられる。しかしこの場合においても、励起光50あるいは赤外変調レーザ光55は共にダイクロイックミラー10を透過し、サーモスタット20を照射することで吸収される。
【0075】
よって、ダイクロイックミラー10は励起光50でも赤外変調レーザ光55でも透過することができる。なお、ダイクロイックミラー10は赤外透過膜を塗布されており、入射する光の波長が赤外光の領域であれば、透過することができる。つまり、ダイクロイックミラー10が緑色レーザ光51との光路を分離できるレーザ光は波長808nmの励起光50及び波長1064nmの赤外変調レーザ光55に限定されないわけではない。
【0076】
また、サーモスタット20は半導体レーザ41の電源部と電気的に接続され、非可視光検出手段と半導体レーザ41の動作を停止する停止手段を兼ねている。
【0077】
以上の構成により、ダイクロイックミラー10は緑色レーザ光源装置1から出力される緑色レーザ光51と赤外変調レーザ光55との光路を緑色レーザ光源装置1の外部で分離し、赤外変調レーザ光55はサーモスタット20に吸収される。
【0078】
このため、赤外変調レーザ光55は筐体40などに反射及び吸収することはないため、緑色レーザ光源装置1を加熱しない。よって、緑色レーザ光源装置1に内蔵する半導体レーザ41も同様に加熱されず高温とならないため、半導体レーザ41の発光効率の低下を防止することができる。従って、半導体レーザ41は長時間連続で動作しても、発光効率の低下を防止する。よって、半導体レーザ41の長寿命化も図ることができる。さらに、半導体レーザ41は筐体40と接触配置されるため、半導体レーザ41の熱はカバー65を介して外部に放熱することができる。
【0079】
さらに、図1における緑色レーザ光源装置1の出力方向の直線上にダイクロイックミラー10及びサーモスタット20は配置される。このため、ダイクロイックミラー10が仮に外れたとしても、赤外変調レーザ光55は確実にサーモスタット20に照射される。またあるいは、ダイクロイックミラー10がずれることにより赤外変調レーザ光55の入射位置が変わるとしても、ダイクロイックミラー10が傾くことにより赤外変調レーザ光55の入射角度が変わるとしても、赤外変調レーザ光55はサーモスタット20に照射される。つまり、赤外変調レーザ光55はダイクロイックミラー10で反射せず透過するため、サーモスタット20を照射することになる。よって、ダイクロイックミラー10がずれたり、傾いたり、外れたりしても、赤外変調レーザ光55は各色レーザ光51〜53の光路へ進むことはない。従って、赤外変調レーザ光55及び励起光50が画像表示装置100の外部に漏洩することを防止することができる。
【0080】
また、本実施例におけるサーモスタット20は非可視光検出手段でもあり、サーモスタット20は半導体レーザ41の電源部と電気的に接続されることにより、停止手段としての機能も備える。非可視光検出手段としては上述の通り、サーモスタット20の温度上昇によって赤外変調レーザ光55の漏洩を検出する。つまり、所定量以上の赤外変調レーザ光55あるいは励起光50が漏洩し、サーモスタット20が加熱されすぎると、サーモスタットのスイッチはオンからオフに切り替わり、それと同時に半導体レーザ41への電力供給を遮断することができる。よって、画像表示装置100の安全性はより向上する。
【0081】
ここで、サーモスタットは、赤外変調レーザ光55あるいは励起光50が100mW以上出力されたときに動作するように設定されている。
【0082】
さらに例えば、サーモスタットではなく、フォトダイオードを用いることにより、赤外変調レーザ光55がある出力以上照射されると、それを検知して、画像表示装置100の外部に異常を知らせるランプを点滅させるなどの構成にすることによって、画像表示装置100の異常をユーザに伝えることができる。これにより、ユーザは画像表示装置100の故障を知ることができ、修理するなどの適切な対策を講じることができるため、画像表示装置100の安全性はより向上する。
【0083】
なお、サーモスタット20は少なくともレーザ光から照射される部分を黒色にしておくことで、レーザ光を吸収しやすく、励起光50及び赤外変調レーザ光55が漏洩したときに、より確実にサーモスタット20を動作させることができる。さらに、サーモスタット20はできるだけ小型で低熱容量であることが好ましい。その方が、異常時にサーモスタット20が加熱されるが、異常が発生してから動作するまでの時間をより早くすることができる。なお、サーモスタット20に限らず、ヒューズ、サーミスタなどで代用してもよい。異常時において緑色レーザ光源装置1あるいは半導体レーザ41の電力供給を絶つことができればよい。
【0084】
また、本実施例ではダイクロイックミラー10及び11aを用いたが、これに限定する必要はなく、その他のミラーや、あるいはプリズムなどでもよい。
【0085】
(実施例2)
以下、実施例2について図5、図6を用いて説明する。図5は本発明の実施例2におけるレーザ光源の概略構成図である。図6は本発明の実施例2におけるレーザ光源装置の固体レーザ結晶入射面から見た断熱部材の形状を説明する概略構成図である。ここでは、実施例1と同一の構成、機能を備えた部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
本実施例は、固体レーザ結晶45を固体レーザ結晶放熱部材44に固定し、SHG素子48はSHG素子放熱部材47に固定し、固体レーザ結晶45と、SHG素子の間に空気層(断熱部材)を介在させることによって、固体レーザ結晶45で発熱した熱がSHG素子48に熱伝達しない構成としている。
【0087】
固体レーザ結晶45の入射面と、SHG素子48の出射面は、基本波光が共振する面であるため、高い平行度を要求される。そこで、固体レーザ結晶45と接触配置している固体レーザ結晶放熱部材44と、SHG素子48と接触配置しているSHG素子放熱部材47を断熱スペーサを用いて把持する。こうすることによって、固体レーザ結晶45から発熱する熱がSHG素子48に熱伝達することなく、固体レーザ結晶45の入射面とSHG素子48の反射面の平行度を維持することができ、高出力が得られる共振器を構成することができる。
【0088】
断熱スペーサとして、例えば、シグマ光機株式会社製の平行平面基板(品名)をコ字型にカットしたものを使用することができる。
【0089】
なお、固体レーザ結晶45と固体レーザ結晶放熱部材44は、それぞれが接触する部分(面)の平面度を高い状態に維持されている。また、SHG素子48とSHG素子放熱部材47も、それぞれが接触する部分(面)の平面度を高い状態に維持されている。そうすることで、基本波の共振器を構成する、固体レーザ結晶45の入射面とSHG素子48の出射面の平行度を高い状態にすることが容易となる。
【0090】
固体レーザ結晶45と固体レーザ結晶放熱部材44、SHG素子48とSHG素子放熱部材47との保持方法に関しては、接着剤などで固定すればよい。その際、接着剤が固体レーザ結晶45と固体レーザ結晶放熱部材44の接合部、SHG素子とSHG素子放熱部材47の接合部に侵入しないようにすればよい。そうすることで、やはり基本波の共振器を構成する、固体レーザ結晶45の入射面とSHG素子48の出射面の平行度を高い状態にすることが容易となる。
【0091】
なお、固体レーザ結晶45と固体レーザ結晶放熱部材44、SHG素子48とSHG素子放熱部材47を接触配置することができれば、どのような固定方法でも問題ない。
【0092】
本実施例2においても、実施例1と同様に、固体レーザ結晶45で発熱する熱がSHG素子48に熱伝達することを防いでいる。さらに、固体レーザ結晶45の入射面とSHG素子48の出射面の平行度を高い状態に維持することを容易に実現できる構成である。
【0093】
(実施例3)
以下、実施例3について図7を用いて説明する。図7は本発明の実施例3におけるレーザ光源の概略構成図である。ここでは、実施例1と同一の構成、機能を備えた部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0094】
本実施例は、固体レーザ結晶45を固体レーザ結晶放熱部材44に固定し、SHG素子48はSHG素子放熱部材47に固定し、固体レーザ結晶45の熱が固体レーザ結晶放熱部材44を介して、筐体に放熱されることによって、固体レーザ結晶45で発熱した熱がSHG素子48に熱伝達しにくい構成としている。
【0095】
つまり、固体レーザ結晶45が最も加熱される部分は、固体レーザ結晶45の入射面近傍であり、固体レーザ結晶45の入射面の光路上の部分である。そのため、SHG素子48より熱伝導率の高い固体レーザ結晶放熱部材44を固体レーザ結晶45の入射面に接触配置することによって、固体レーザ結晶45に発生した熱は、熱伝導率の高い固体レーザ結晶放熱部材44側から放熱されるので、SHG素子48側に熱が伝達することを防ぐことができる。
【0096】
本実施例3においても、実施例1、実施例2と同様に、固体レーザ結晶45で発熱する熱がSHG素子48に熱伝達することを防いでいる。さらに、固体レーザ結晶45の入射面とSHG素子48の出射面の平行度を高い状態に維持することを容易に実現できる構成である。
【0097】
(実施例4)
以下、実施例4について図8を用いて説明する。図8は本発明の実施例4におけるレーザ光源の概略構成図である。ここでは、実施例1と同一の構成、機能を備えた部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0098】
本実施例は、固体レーザ結晶45と断熱部材46、断熱部材46とSHG素子48がそれぞれオプティカルコンタクトを実現しているものを固体レーザ結晶放熱部材44で保持している構成である。固体レーザ結晶45と断熱部材46、断熱部材46とSHG素子48はそれぞれ強固な接合を実現している。その状態で、相対的に温度上昇の大きい固体レーザ結晶45を固体レーザ結晶放熱部材44で保持し、固体レーザ結晶45の熱がSHG素子48に熱伝達しにくい構成をしている。
【0099】
そうすることで、固体レーザ結晶45で発熱した熱が、SHG素子48に熱伝達することなく、固体レーザ結晶放熱部材44、また筐体に熱伝達することが可能となり、SHG素子48が温度上昇し、SHG素子48の変換効率が低下することを防止することができる。
【0100】
また、固体レーザ結晶45の入射面だけでなく、固体レーザ結晶45の側面(入射面、出射面でない面)も固体レーザ結晶放熱部材44と接触させることで、効率良く固体レーザ結晶45の熱を固体レーザ結晶放熱部材44に熱伝達することができ、固体レーザ結晶45の温度上昇を防ぐことができる。
【0101】
固体レーザ結晶45と、固体レーザ結晶45の保持方法としては接着剤などで固定すればよい。その際、接着剤が固体レーザ結晶45と固体レーザ結晶放熱部材44の接合部に侵入しないようにすればよい。そうすることで、固体レーザ結晶45と固体レーザ結晶放熱部材44の接触を密にすることができるため、固体レーザ結晶45で発熱した熱が効果的に固体レーザ結晶放熱部材44に熱伝達することが可能となる。
【0102】
なお、固体レーザ結晶45と固体レーザ結晶放熱部材44を接触配置することができれば、どのような固定方法でも問題ない。
【0103】
本実施例4においても、実施例1、実施例2、実施例3と同様に、固体レーザ結晶45で発熱する熱がSHG素子48に熱伝達することを防いでいる。さらに、固体レーザ結晶45の入射面とSHG素子48の出射面の平行度を高い状態に維持することを容易に実現できる構成である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、半導体レーザの発光効率の低下を防止することができ、非可視光を外部に漏洩しない安全性の高い画像表示装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 緑色レーザ光源装置
2 赤色レーザ光源装置
3 青色レーザ光源装置
7、8、9 コリメータレンズ
10 ダイクロイックミラー
11a ダイクロイックミラー
14 拡散板
15 フィールドレンズ
16 PBS
17 空間光変調素子
18 投射レンズ
20 サーモスタット
30 スクリーン
40 筐体
41 半導体レーザ
42 コリメートレンズ
43 フォーカシングレンズ
44 固体レーザ結晶放熱部材
45 固体レーザ結晶
45a 固体レーザ結晶の入射面
45b 固体レーザ結晶の出射面
46 断熱部材
47 SHG素子放熱部材
48 SHG素子
48a SHG素子の入射面
48b SHG素子の出射面
49 ガラスカバー
50 励起光
51 緑色レーザ光
52 赤色レーザ光
53 青色レーザ光
55 赤外変調レーザ光
60 ネジ
61 バネワッシャー
65 カバー
100 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する半導体レーザと、この半導体レーザにより出射される励起光により基本波光を発振する固体レーザ結晶と、前記基本波光を波長変換して高調波光を発生させる分極反転部を含む波長変換素子と、前記固体レーザ結晶と前記波長変換素子との接合部に設けられ、前記固体レーザ結晶と前記波長変換素子を断熱する断熱部材とを備えたことを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
前記固体レーザ結晶の入射面に、前記固体レーザ結晶で発生する熱を放熱する固体レーザ結晶放熱部材を備えたことを特徴とする請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記波長変換素子の出射面に、前記波長変換素子で発生する熱を放熱する波長変換素子放熱部材を備えたことを特徴とする請求項2記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
前記固体レーザ結晶放熱部材と前記波長変換素子放熱部材とで、前記固体レーザ結晶、前記波長変換素子及び前記断熱部材を狭持していることを特徴とする請求項3記載のレーザ光源装置。
【請求項5】
前記固体レーザ結晶、前記波長変換素子の少なくとも1つから発生する熱を放熱する放熱筐体を備えたことを特徴とする請求項4記載のレーザ光源装置。
【請求項6】
前記固体レーザ結晶放熱部材が、前記放熱筐体と接触していることを特徴とする請求項5記載のレーザ光源装置。
【請求項7】
前記断熱部材は、光路部分に光路孔が形成されており、その光路孔は外部と繋がっていることを特徴とする請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項8】
前記固体レーザ結晶の入射面に第1誘電体反射膜、出射面に第2誘電体反射膜、前記波長変換素子の入射面に第3誘電体反射膜、出射面に第4誘電体反射膜がそれぞれ形成されており、
前記第2誘電体反射膜は、少なくとも光路部分には形成されており、かつ前記断熱部材と接触する部分には形成されておらず、
前記第3誘電体反射膜は、少なくとも光路部分には形成されており、かつ前記断熱部材と接触する部分には形成されていないことを特徴とする請求項1記載のレーザ光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−233741(P2011−233741A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103285(P2010−103285)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】