説明

レーザ加工システム

【課題】本発明は、搬送される連続の加工媒体にレーザ光を照射して所定数の微小孔を形成する加工を行うレーザ加工システムに関し、連続加工媒体の加工表面に対して傾斜角度毎に制御を必要とせずに各傾斜角度の微小孔形成を容易とすることを目的とする。
【解決手段】連続加工媒体12を懸架する媒体懸架部22〜27における各一組のローラ部のローラ配置で当該連続加工媒体12を水平、右上がり又は左下がりの角度とさせ、これを所望角度毎に配置させてそれぞれの対応する角度の連続加工媒体12の加工領域に対応するそれぞれのレーザ照射手段32A〜32Cにより垂直方向からレーザ照射させて所定数の微小孔を当該連続加工媒体12の厚さ方向に対して対応角度で形成させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される連続の加工媒体にレーザ光を照射して所定数の微小孔を形成する加工を行うレーザ加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙等の加工媒体にレーザ光を照射してレーザ加工することが盛んになってきている。レーザ加工の適用例としては、例えば透かし形成や偽造防止加工等があり、当該加工媒体に厚さ方向の貫通孔を形成する場合の他に、当該厚さ方向に対して斜め方向に形成することも行われている。このような斜め方向の貫通孔の形成を容易とすることが望まれている。
【0003】
従来、用紙等の加工媒体にレーザ光を照射して所定の加工を行うものとして、例えば、偽造防止加工を行うものとして、以下の特許文献に記載されているものが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−11558号公報
【0005】
上記特許文献に記載されているレーザ加工は、真贋判定用の識別マークを3つの異なる角度でレーザ光を照射して透設した微小孔の集合体で形成するものであり、当該3つの異なる角度としては厚さ方向に対して、斜め(左下がり)、垂直、斜め(右下がり)とすることが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献において、真贋判定用の識別マークを3つの異なる角度で形成する場合に、固定されたレーザ照射角度(加工媒体の厚さ方向に対して垂直方向)に対して加工媒体(商品券)を当該角度で傾斜させることが示されている。加工媒体の所定角度での傾斜は実施可能であるが、重要なことは傾斜角度毎に制御を必要とせずに各傾斜角度の微小孔形成を容易とすることである。
【0007】
すなわち、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、連続加工媒体に対して傾斜角度毎に制御を必要とせずに各傾斜角度の微小孔形成を容易とするレーザ加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、搬送される連続加工媒体に対し、レーザ光を照射して当該連続加工媒体の厚さ方向に対して所定角度の微小孔を所定数形成するための加工を行うレーザ加工システムであって、前記連続加工媒体を一組のローラ部で懸架し、当該一組のローラ部のローラ配置で当該連続加工媒体を水平、右上がり又は左下がりの角度とさせるもので、所望の角度毎に所定数備えられる媒体懸架部と、前記媒体懸架部毎に配置され、各媒体懸架部で所定角度とされている前記連続加工媒体の加工領域に垂直方向からのレーザ照射により当該角度の前記微小孔を所定数形成する所定数のレーザ照射手段と、少なくとも、前記所定数のレーザ照射手段のそれぞれに対して加工データに基づいて駆動するものであり、対応の前記媒体懸架部で懸架される前記連続加工媒体の角度に応じた当該加工データでそれぞれの当該レーザ照射手段を駆動する制御処理手段と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続加工媒体を懸架する媒体懸架部における各一組のローラ部のローラ配置で当該連続加工媒体を水平、右上がり又は左下がりの角度とさせ、これを所望角度毎に配置させてそれぞれの対応する角度の連続加工媒体の加工領域に対応するそれぞれのレーザ照射手段により垂直方向からレーザ照射させて所定数の微小孔を対応角度で形成させる構成とすることにより、形成する微小孔に対する所望の角度毎のローラ配置によって連続加工媒体を構成簡易で所定角度とさせることができ、連続加工媒体に水平、右上がり又は左下がりの角度の微小孔を容易に形成させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態を図により説明する。
図1に、本発明に係るレーザ加工システムの概略構成図を示す。図1において、レーザ加工システム11は、用紙、フィルム等の連続状態の連続加工媒体12を供給する供給手段13より搬送手段31で駆動される巻取手段14(折り込みでもよい)の間で媒体懸架部22〜27が配置され、当該連続加工媒体12が各媒体懸架部22〜27に対応の角度(後述する)で支持されて懸架される。なお、連続加工媒体12には、加工領域毎にタイミングマークが付されている。
【0011】
また、媒体懸架部22,23間の加工領域S1の上方には第1レーザ照射手段32Aがレーザ光を垂直下方に照射させるべく配置され、媒体懸架部24,25間の加工領域S2の上方には第2レーザ照射手段32Bがレーザ光を垂直下方に照射させるべく配置され、媒体懸架部26,27間の加工領域S3の上方には第3レーザ照射手段32Cがレーザ光を垂直下方に照射させるべく配置される。
【0012】
上記各レーザ照射手段32A〜32Cは、連続加工媒体12にレーザ光を照射することにより厚さ方向に対して所定角度の微小孔を所定数形成するもので、図示しないが、レーザ発生機構およびスキャン機構を備えた既存のシステムを使用することができる。上記レーザ発生機構は、例えば既存のレーザ発生の機構によりCO2レーザ、YAGレーザ等の適宜選択されたレーザ光を発生させる。また、スキャン機構は、レーザ加工の種類により、例えば一次元的にレーザ光をスキャンする場合にはポリゴンミラースキャン機構やミラーおよび集光レンズ構成部の一次元移動機構等が採用され、二次元的にレーザ光をスキャンさせる場合にはガルバノスキャン機構が採用される。
【0013】
上記各媒体懸架部22〜27は、連続加工媒体12を互いの一組の角度設定ローラ部で懸架し、当該一組の角度設定ローラ部のローラ配置で当該連続加工媒体12を所定角度とさせるものである。すなわち、媒体懸架部22,23は、角度設定ガイドローラ22A,22B,23A,23Bで構成され、ガイドローラ22A,23A間で連続加工媒体12を左下がり斜め(例えば45度)に設定させる。そして、ガイドローラ22A,22B間に当該連続加工媒体12に付されたタイミングマークを検出する第1センサ35Aが設けられるものである。
【0014】
また、媒体懸架部24,25は、角度設定ガイドローラ24A,24B,25A,25Bで構成され、ガイドローラ24A,25A間で連続加工媒体12を水平状態に設定させる。そして、ガイドローラ24A,24B間に当該連続加工媒体12に付されたタイミングマークを検出する第2センサ35Bが設けられる。さらに、媒体懸架部26,27は、角度設定ガイドローラ26A,26B,27A,27Bで構成され、ガイドローラ26A,27A間で連続加工媒体12を右下がり斜め(例えば45度)に設定させる。そして、ガイドローラ26A,26B間に当該連続加工媒体12に付されたタイミングマークを検出する第3センサ35Cが設けられるものである。
【0015】
ここで、図2に、本システムを駆動制御するための制御処理手段のブロック構成図をします。図2において、制御処理手段41は、適宜設定加工データを入力するための入力手段42が接続されるもので、少なくとも、レーザ照射手段32(32A〜32C)を所定の加工データ及びセンサ35(35A〜35C)からの検出信号に基づいて駆動すると共に、連続加工媒体12の搬送を制御するもので、制御手段51、バス52、インタフェース(IF)53、加工データファイル作成手段54、レーザ照射制御手段55および搬送制御手段56を適宜備える。
【0016】
上記制御手段51は、このシステムの駆動制御を統括するもので、そのためのプログラムを格納する。上記IF53は搬送手段31、レーザ照射手段32(32A〜32C)及びセンサ35との信号授受、並びに入力手段42からのデータ入力との整合性をとるためのものである。上記加工データファイル作成手段54は、上記入力手段42より入力される加工位置等の設定加工データに基づく加工データファイルを作成する。上記レーザ照射制御手段55は、上記作成された加工データファイル及びセンサ35(35A〜35C)に基づいてレーザ照射位置、照射タイミング、レーザパワー等の加工データをレーザ照射手段32A〜32Cに送出する。そして、上記搬送処理手段58は、例えば予め設定された搬送速度で連続加工媒体12を搬送するための駆動制御信号を生成して上記搬送手段31に出力するものである。
【0017】
そこで、図3に、図2のシステムによるレーザ加工処理のフローチャートを示す。ここで、レーザ照射による加工データは、上記入力手段42より入力される設定加工データに基づいて、加工データファイル作成手段54が加工データファイルを作成し、レーザ照射制御手段55が当該加工データファイル及び各センサ35A〜35Cからの検出信号に基づいてレーザ照射手段32A〜32Cにレーザ照射制御信号を出力するものである。
【0018】
図3において、まず、搬送される連続加工媒体12に付されたタイミングマークが第1センサ35Aにより検出されると(S11)、所定時間後にレーザ照射制御手段55が、当該連続加工媒体12における第1搬送領域S1での加工領域P1に左下がり斜め(例えば45度)の微小孔を形成加工するための加工データを加工データファイルより抽出し、レーザ照射制御信号として第1レーザ照射手段32Aに出力することで垂直方向にレーザ光を照射させて、当該左下がり斜めの微小孔を順次形成させる(S12)。
【0019】
つづいて、搬送される連続加工媒体12に付されたタイミングマークが第2センサ35Bにより検出されると(S13)、所定時間後にレーザ照射制御手段55が、当該連続加工媒体12における第2搬送領域S2での加工領域P2に厚さ方向に対して垂直方向の微小孔を形成加工するための加工データを加工データファイルより抽出し、レーザ照射制御信号として第2レーザ照射手段32Bに出力することで垂直方向にレーザ光を照射させて、当該垂直方向の微小孔を順次形成させる(S14)。
【0020】
さらにつづいて、搬送される連続加工媒体12に付されたタイミングマークが第3センサ35Cにより検出されると(S15)、所定時間後にレーザ照射制御手段55が、当該連続加工媒体12における第3搬送領域S3での加工領域P3に右下がり斜め(例えば45度)の微小孔を形成加工するための加工データを加工データファイルより抽出し、レーザ照射制御信号として第3レーザ照射手段32Cに出力することで垂直方向にレーザ光を照射させて、当該右下がり斜めの微小孔を順次形成させるものである(S16)。
【0021】
このように、形成する微小孔の所望の角度毎にローラ配置によって連続加工媒体12を所定角度とさせることができ、レーザ照射手段32(32A〜32C)の内部構成の変更を行わずに、当該連続加工媒体12に対して所定角度の微小孔を容易に形成させることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のレーザ加工システムは、連続加工媒体への偽造防止用や透かし形成用等の微小孔を、レーザ光を照射して行うシステムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るレーザ加工システムの概略構成図である。
【図2】本システムを駆動制御するための制御処理手段のブロック構成図である。
【図3】図2のシステムによるレーザ加工処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0024】
11 レーザ加工システム
12 連続加工媒体
13 供給手段
14 巻取手段
22〜27 媒体件株
31 搬送手段
32 レーザ照射手段
35 センサ
41 制御処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される連続加工媒体に対し、レーザ光を照射して当該連続加工媒体の厚さ方向に対して所定角度の微小孔を所定数形成するための加工を行うレーザ加工システムであって、
前記連続加工媒体を一組のローラ部で懸架し、当該一組のローラ部のローラ配置で当該連続加工媒体を水平、右上がり又は左下がりの角度とさせるもので、所望の角度毎に所定数備えられる媒体懸架部と、
前記媒体懸架部毎に配置され、各媒体懸架部で所定角度とされている前記連続加工媒体の加工領域に垂直方向からのレーザ照射により当該角度の前記微小孔を所定数形成する所定数のレーザ照射手段と、
少なくとも、前記所定数のレーザ照射手段のそれぞれに対して加工データに基づいて駆動するものであり、対応の前記媒体懸架部で懸架される前記連続加工媒体の角度に応じた当該加工データでそれぞれの当該レーザ照射手段を駆動する制御処理手段と、
を有することを特徴とするレーザ加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−272833(P2008−272833A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208862(P2008−208862)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【分割の表示】特願2003−124789(P2003−124789)の分割
【原出願日】平成15年4月30日(2003.4.30)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】