説明

レーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工装置

【課題】 反射ミラーなどを要しない簡易な構成とし、ヘッドのコンパクト化、高集光性及び長焦点化が可能であり、また、アーク電極や切断ガスなどの供給が容易なレーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】 レーザ光を平行にするコリメート光学系62と、半割れレンズ67を有し、この半割れレンズ67の光軸位置をコリメート光学系の光軸位置に対してこれらの光軸と直交する方向へずらしてコリメート光学系を出たレーザ光52が全て半割れレンズに入射するようにし、この半割れレンズによって前記レーザ光をワーク55に集光照射する集光光学系62と、半割れレンズの分割面67c側に半割れレンズの光軸に沿って配設されたMIG電極57などの加工手段とを備えてレーザ加工ヘッド54を構成し、このレーザ加工ヘッドを備えてレーザ加工装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はレーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工装置に関し、例えばレーザ溶接とアーク溶接とを同時に行う場合などに適用して有用なものである。
【0002】
【従来の技術】例えば金属同士を接合する場合、溶接技術の一種としてレーザ溶接とアーク溶接とがある。レーザ溶接はCO2 レーザ発振器やYAGレーザ発振器を用いて行われる。なお、CO2 レーザ光はミラー伝送しなければならないため、その調整に手間がかかるのに対し、YAGレーザ光は光ファイバによる伝送が可能であるため、YAGレーザ発振器を用いたレーザ溶接に対する期待が高まっている。一方、アーク溶接としては、MIG(GMA)溶接などのガスシールド消耗電極式アーク溶接や、TIG溶接などのガスシールド非消耗電極式アーク溶接などがある。
【0003】そして、レーザ溶接では、レーザ光を光学機器により集光して高いエネルギー密度が得られることから、狭い溶融範囲において深溶け込みの溶接を行うことができる一方、MIG溶接やTIG溶接などのアーク溶接では、アークが比較的広範囲に広がるため、ビード幅の広い溶接となり、開先裕度の高い溶接が可能である。このため、近年では開先裕度が高く且つ溶け込み深さの深い溶接を行うことなどを目的として、レーザ溶接とアーク溶接とを同時に行う方法が研究されている。
【0004】この場合、図示は省略するが、レーザ溶接ヘッドとMIG溶接ヘッドとが独立していると、ヘッド全体が非常に大型となり、しかも、溶接位置や溶接姿勢の変化に対応してレーザ溶接ヘッドとMIG溶接ヘッドの相対位置関係を常に一定に保持するのが面倒であり、特にロボットによる3次元加工には適さない。
【0005】そこで、これらの問題点等を解決するため、図6に示すようなレーザ加工ヘッドを開発した。このレーザ加工ヘッドでは、光ファイバ11で伝送してきたレーザ光12を凸型ルーフミラー13と凹型ルーフミラー14とで反射して第1分割レーザ光12aと第2分割レーザ光12bとに2分割することにより、両者間に空間部17を形成し、これらの分割レーザ光12a,12bを集光光学系15で集光してワーク16に照射するようになっている。そして、図示しないワイヤ送り装置から送給されるMIG電極(フィラワイヤ)18を、分割レーザ光12a,12bの空間部17に挿入することにより、レーザ光12a,12bとMIG電極18とが同軸状になるようにしている。このレーザ加工ヘッドによれば、レーザ光12a,12bとMIG電極18とが同軸状になっているため、面倒な相対位置関係の調節を必要とせず、ロボットによる3次元加工なども容易に行うことができる。
【0006】また、レーザ光は切断にも用いられる。図7R>7はレーザ切断を行う従来のレーザ加工ヘッドの構成図である。この図7に示すレーザ加工ヘッドでは、集光光学系20によって集光されたレーザ光21の周囲を囲むようにテーパ状の切断ガスノズル22を設け、この切断ガスノズル22の先端開口部22aから切断ガス(アシストガス)24をワーク23の被切断部23aに噴射する構成となっている。このため、切断ガスの流速を増加させたり、切断ガス24を被切断部23a内に効率よく送り込むために切断ガスノズル22の先端開口部22aを細くしようとしても、レーザ光21と干渉してしまうため、限界があった。
【0007】そこで、このような問題点等を解決するため、図示は省略するが、図7に示すように2分割された分割レーザ光12a,12bの空間部17に細管状の切断ガスノズルを挿入することにより、この切断ガスノズルとレーザ光12a,12bとが同軸状になるようにしたレーザ加工ヘッドの開発を行った。このレーザ加工ヘッドでは、細管状の切断ガスノズルから切断ガスを噴射しながら、分割レーザ光12a,12bを集光照射することにより、ワークの切断を行う。
【0008】また、インプロセスモニタリングシステムとして、レーザ溶接やレーザ切断などにおける加工状況の監視などを行うためにCCDカメラやモニタリングファイバをレーザ加工ヘッドに設けることがある。この場合、従来は図8のような構成としていた。即ち、ワーク28における被加工部28aの画像抽出と発光抽出とを集光光学系24の光軸方向から(前記被加工部の真上から)行うことができるようにするため、即ち、同軸の画像を可視化するため、YAGレーザ光26を伝送する光ファイバ25をヘッドの側方に配置し、この光ファイバ25から集光光学系24の光軸に対して90°の方向にレーザ光26を出射し、このレーザ光26を45°に傾斜したミラー27で反射して集光光学系24へと導くように構成していた。
【0009】ミラー27はYAGレーザ光26を全反射し、被加工部28aの発光などを透過するミラーである。そして、このミラー27の上方にミラー31、CCDカメラ29及びモニタリングファイバ(光ファイバ)30を配置している。ミラー31は可視光を反射し、赤外光などの特定波長の光を透過するミラーである。CCDカメラ29ではミラー27を透過しミラー31で反射して得られる被加工部28aの光(画像)をモニタ32へ伝送し、モニタ32では遠隔監視のために前記画像を画面に映し出す。モニタリングファイバ30ではミラー27,31を透過して得られる被加工部28aの発光を光電変換装置33へ伝送する。光電変換装置33では前記発光を光電変換してパーソナルコンピュータ34へ伝送し、パーソナルコンピュータ34では光電変換された前記発光の強度分布などを分析して加工品質の確認を行う。例えば溶接の場合には溶け込み深さの確認をしたり、切断の場合には確実に切断されているか否かの確認などをする。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の同軸レーザ加工ヘッドでは、一度レーザ光(レーザビーム)を分割し、その中央にアーク電極や切断ガスノズルなどを設置するため、レーザ光の収束のNA(開口数)を押さえるには物理的に限界があり(ビーム中央部に種々設置する故)、従来のレーザビーム単体の場合と同様の小NAの収束ビームを作り出すには、集光光学系のレンズ口径を大きくする必要があるため、ヘッドの大型化が避けられなかった。このため、十分な集光エネルギ密度が得られず、溶け込み能力を従来のレーザビーム単体のレーザ加工ヘッド並にあげることはできなかった。また、厚板切断に適する長焦点ヘッドの構成が難しかった。
【0011】付言すると、レーザ光の焦点スポット径を小さくして高い集光エネルギ密度を確保しつつ長焦点化を図るには、レンズ口径を大きくする必要があるため、ヘッドが大型化してしまう。レーザ加工ヘッドが大型化すると、ヘッドとワークとの干渉が生じやすくなるため、特に、複雑形状のワークに対しては適用が難しくなる。一方、ヘッドの大型化を避けるために長焦点化が図れない場合には、厚板の切断が難しくなり、また、ヘッドがワークに近づくことにもなるため、スパッタによって光学系が損傷し易くなり、且つ、ワークと干渉し易くなることから、やはり複雑形状のワークへの適用が難しくなる。
【0012】また、レーザ光12を分割するために凹凸のルーフミラー13,14を用いるため、光学系素子が増えて、損傷の可能性が増え、また、レーザ光の損失も招くことになる。
【0013】また、分割レーザ光12a,12bの間にMIG電極18を配置する場合には、MIG電極18を屈曲させる必要があることから、ワイヤ送給抵抗が大きくなる。このため、図6に示すように送給ローラ19を用いた高価なプッシュプル装置を設けてMIG電極18の送給力を補わなければならなかった。分割レーザ光12a,12bの間に切断ガスノズルを配置する場合にも、やはり切断ガスノズルを屈曲させる必要があるため、圧力損失が大きくなり、切断ガス供給装置の送出圧力を高くする必要があった。
【0014】また、図8に示すレーザ加工ヘッドの場合には側方からレーザ光26を入射させる構成であるため、ヘッドの大型化が避けさられなかった。しかも、ミラー27,31を用いることから、光学系素子が増えて損傷の可能性が増え、また、レーザ光26の損失やCCDカメラ29及びモニタリングファイバ30に入射する光の損失も招くことになる。
【0015】従って、本発明は上記のような事情に鑑み、ミラーを要しない簡易な構成とし、ヘッドのコンパクト化、高集光性及び長焦点化が可能であり、また、アーク電極や切断ガスなどの供給が容易なレーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工装置を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する第1発明のレーザ加工ヘッドは、レーザ光を平行にするコリメート光学系と、半割れレンズを有し、この半割れレンズの光軸位置を前記コリメート光学系の光軸位置に対してこれらの光軸と直交する方向へずらして前記コリメート光学系を出たレーザ光が全て半割れレンズに入射するようにし、この半割れレンズによって前記レーザ光をワークに集光照射する集光光学系と、前記半割れレンズの分割面側に半割れレンズの光軸に沿って配設された加工手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】また、第2発明のレーザ加工ヘッドは、第1発明のレーザ加工ヘッドにおいて、前記加工手段は、MIG電極、TIG電極、フィラワイヤ、細管状の切断ガスノズル又は粉末ノズルであることを特徴とする。
【0018】また、第3発明のレーザ加工ヘッドは、第1又は第2発明のレーザ加工ヘッドにおいて、前記半割れレンズは、レーザ光が通過しない部分を切断除去したものであることを特徴とする。
【0019】また、第4発明のレーザ加工ヘッドは、第1又は第2発明のレーザ加工ヘッドにおいて、前記加工手段は細管状の切断ガスノズルであり、且つ、この切断ガスノズルはダイバージェントノズルであることを特徴とする。
【0020】また、第5発明のレーザ加工ヘッドは、第1,第2,第3又は第4発明のレーザ加工ヘッドにおいて、前記ワークの被加工部を撮像してモニタへ画像を伝送するCCDカメラと、前記被加工部の発光を加工品質解析手段へと伝送するモニタリングファイバの何れか一方又は両方を、前記半割れレンズの分割面側に配設したことを特徴とする。
【0021】また、第6発明のレーザ加工装置は、第1,第2,第3,第4又は第5発明のレーザ加工ヘッドと、レーザ光を出力するレーザ発振器と、このレーザ発振器から出力されたレーザ光を前記レーザ加工ヘッドへと伝送するレーザ光伝送手段と、前記レーザ加工ヘッドを移動して位置決めするヘッド移動手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0023】図1は本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置のシステム構成図、図2は前記レーザ加工装置に備えたレーザ加工ヘッドの構成を示す断面図、図3は図2R>2のA−A線矢視断面拡大図である。また、図4は各種の加工手段を備えたレーザ加工ヘッドの構成図、図5はCCDカメラ及びモニタリングファイバを備えたレーザ加工ヘッドの構成図((a)は(b)のB−B線矢視断面拡大図)である。
【0024】<構成>図1に示すように、YAGレーザ発振器51から出力されたレーザ光(レーザビーム)52は、レーザ光伝送手段としての光ファイバ53により遠隔のレーザ加工ヘッド54まで伝送され、詳細は後述するが、このレーザ加工ヘッド54で集光されてワーク55へと照射される。同時に、加工手段としてのMIG(GMA)電極(フィラワイヤ)57が、ワイヤ送り装置56からレーザ加工ヘッド54へ送給され、溶接電源58からの印加電圧により、MIG電極57からワーク55へアーク放電74が行われる。
【0025】レーザ加工ヘッド54はNC制御などによって駆動制御されるロボット等のヘッド移動装置59により、例えば3次元的に移動して位置決めされる。制御系60では、ヘッド移動装置59、YAGレーザ発振器51、ワイヤ送り装置56及び溶接電源58の制御を行う。例えば、レーザ加工ヘッド59の移動に応じてYAGレーザ発振器51からのレーザ光出力やMIG電極57からのアーク放電のタイミング制御などを行う。
【0026】ここでレーザ加工ヘッド54の構成を図2及び図3に基づき詳細に説明する。図2に示すように、レーザ加工ヘッド54は、そのケース61内において図中の上から下へ順に光ファイバ53と、コリメート光学系62と、集光光学系63とが配設されている。なお、図中の64,65は保護ガラスである。
【0027】コリメート光学系62は1枚又は複数枚(図示例では3枚)の小口径レンズ66を有しており、光ファイバ53の先端から出射されたレーザ光52を、レンズ66によって平行光にする。集光光学系63はコリメート光学系62のレンズ66よりも口径の大きな1枚又は複数枚(図示例では4枚)の半割れレンズ67を有しており、コリメート光学系62で平行にされたレーザ光52を、半割れレンズ67により集光してワーク55に照射する。
【0028】半割れレンズ67は円形の大口径レンズを中央部で2分割して(レンズ中央で切断して2等分する場合に限らず、レンズ中央よりも少しずれた位置で切断して2等分よりも少し小さく或いは少し大きくしてもよい)、その一方の分割片を用いたものであり、コリメート光学系62を出たレーザ光52が全て入射するように配置されている。つまり、半割れレンズ67の光軸71の位置(半割れレンズ67の図中左端位置)を、コリメート光学系62の光軸72の位置(レンズ66の中央位置)に対して、これらの光軸71,72と直交する方向(図中左方向)へずらすことにより、コリメート光学系62のレンズ66から出たレーザ光52が全て集光光学系63の半割れレンズ67に入射して(半割れレンズ67を通過して)、集光されるようにしている。このときレーザ光52の焦点位置は、半割れレンズ67の光軸71上に位置するため、半割れレンズ67の図中左端に位置することになる。
【0029】また、図3に示すように、半割れレンズ67は、図中に一点鎖線で示したレーザ光52の通過しない部分67a,67bが切断除去されて、実際には図中に実線で示す部分のみとなっており、非常にコンパクトである。従って、この半割れレンズ67を収容するケース61も非常にコンパクトになっている。
【0030】そして、図2に示すように、半割れレンズ67の分割面67c側に案内管73が光軸71に沿うようにして固定されており、この案内管73にMIG電極57が挿通されている。即ち、ワイヤ送り装置56から送出されたMIG電極57は、レーザ加工ヘッド54において、半割れレンズ67の分割面67c側に半割れレンズ67の光軸71に沿うように設けられた状態となるため、従来のように屈曲してはおらず(図7参照)、ほぼ真直ぐな状態となる。
【0031】また、このMIG電極57に代えて、図4に示す他の加工手段を半割れレンズ67の分割面67c側に配設するようにしてもよい。
【0032】図4(a)では、加工手段としてのTIG(タングステン)電極81を、半割れレンズ67の分割面67c側に半割れレンズ67の光軸に沿って配設している。この場合には、溶接電源82からの印加電圧により、TIG電極81からワーク84の被溶接部へアーク放電83を行い、同時に、前記被溶接部へレーザ光52も照射して溶接を行う。
【0033】図4(b)では、加工手段としてのフィラワイヤ91を、半割れレンズ67の分割面67c側に半割れレンズ67の光軸に沿って配設している。半割れレンズ67の分割面67c側には案内管93が前記光軸に沿うようにして固定されており、この案内管93にフィラワイヤ91が挿通されている。この場合には、ワイヤ送り装置92によってフィラワイヤ91をワーク94の被溶接部に供給しながら、レーザ光52を前記被溶接部に照射してレーザ溶接を行う。
【0034】図4(c)では、加工手段としての細管状の切断ガスノズル101を、半割れレンズ67の分割面67側に半割れレンズ67の光軸に沿って配設している。この場合には、切断ガス供給装置102から送出される切断ガス(アシストガス)103を、切断ガスノズル101の先端からワーク103の被切断部へと噴射しながら、前記被切断部へレーザ光52を照射してレーザ切断を行う。また、この場合には、切断ガスノズル101として、図4(d)に示すように流路が一旦狭まった後に広がるような形状のノズル(ダイバージェントノズル)を採用することができる。ダイバージェントノズルとすることにより、切断ガス103は超音速となり、且つ、非常に細長いガス流動形状となるため、カーフ幅の狭い切断を高速で行うことができる。
【0035】図4(e)では、加工手段としての粉末ノズル111を、半割れレンズ67の分割面67側に半割れレンズ67の光軸に沿って配設している。この場合には、粉末供給装置112から送出される金属粉末113を、粉末ノズル111の先端から吐出し、この金属粉末113にレーザ光52を照射して任意の3次元形状物114を成形する。
【0036】また、インプロセスモニタリングシステムとして、CCDカメラ及びモニタリングファイバを設けた場合の構成を図5に基づいて説明する。図5に示すレーザ加工ヘッドでは、図2及び図3に示すレーザ加工ヘッドにおいて、更に、CCDカメラ121とモニタリングファイバ(光ファイバ)122とを、半割れレンズ67の分割面67c側に配設して、MIG電極57に並設している。このため、CCDカメラ121とモニタリングファイバ122では、半割れレンズ67の光軸方向から(ワーク55の被溶接部55aの真上から)、ミラーなどを介すことなく直接受光して、前記被溶接部55aの画像抽出と発光抽出とを行うことができるようになっている。
【0037】なお、MIG電極57に限らず、図3に示すフィラワイヤ91や切断ガスノズル101などの他の加工手段を設ける場合にも、同様にCCDカメラ121やモニタリングファイバ122を半割れレンズ67の分割面67c側に配置することができる。
【0038】CCDカメラ121では被加工部55aの可視光(画像)をモニタ123へ伝送し、モニタ123では遠隔監視のために前記画像を画面に映し出す。モニタリングファイバ122では被加工部55aの発光(赤外光などの特定波長の光)を、発光ダイオードなどを用いた光電変換装置124へ伝送する。光電変換装置124では前記発光を光電変換してパーソナルコンピュータ125へ伝送し、パーソナルコンピュータ125では光電変換された前記発光の強度分布などを分析して加工品質の確認を行う。例えば溶接の場合には溶け込み深さの確認などをし、切断の場合には確実に切断されているか否かの確認などをする。
【0039】<作用・効果>以上のように、本実施の形態のレーザ加工ヘッド54によれば、半割れレンズ67を有し、この半割れレンズ67の光軸位置をコリメート光学系62の光軸位置に対してこれらの光軸と直交する方向へずらすことにより、コリメート光学系62を出たレーザ光52が全て半割れレンズ67に入射するようにして、この半割れレンズ67によりレーザ光52をワークに集光照射するように構成するとともに、MIG電極57や切断ガスノズル101などの加工手段を半割れレンズ67の分割面67c側に半割れレンズ67の光軸に沿って配設したため、次のような作用・効果が得られる。
【0040】即ち、MIG電極52や切断ガスノズル101などの加工手段とレーザ光52とが同軸状になるため、3次元加工に適するなど、従来の同軸レーザ加工ヘッドと同等の機能を有し、しかも、ヘッドのコンパクト化を図れるとともに収束のNAの制限を受けない高集光性と長焦点化(特に厚板切断に有効)が可能となる。しかも、本実施の形態ではレーザ光52が通過しない部分67a,67bを切断除去した半割れレンズ67を用いているため、単なる半割れレンズ(半円形状のレンズ)を用いる場合に比べて更にヘッドがコンパクトになっている。
【0041】また、半割れレンズとして大口径のレンズは用いるものの、これを2分割(2等分又はそれよりも少し小さく切断)し、その一方の分割片のみを用いてレーザ加工ヘッドを製造することができるため、1つのレンズで2組のレーザ加工ヘッドを製造することができ、コストの低減を図ることができる。
【0042】また、MIG電極57や切断ガスノズル102などの加工手段を、従来のように屈曲させることなくレーザ加工ヘッド54に設けることができるため、これらの供給が容易になり、MIG電極57を供給するために送給ローラ(プッシュプル装置)を設ける必要がなくて、従来のMIG溶接装置をそのまま使うことができ、また、切断ガス供給装置102の送出圧力を高めたりすることなども不要となる。
【0043】また、従来の同軸レーザ加工ヘッドのようにミラーを用いる必要がないため、光学系素子の低減やレーザ光の損失低減などを図ることができる。
【0044】また、細管状の切断ガスノズル101を設けてレーザ切断(穴あけも含む)を行うことができ、この場合にはレーザ光に制限されることなく切断ガスノズル101を所望の細さにして被切断部に効率良く切断ガス103を送り込むことができる。このため、切断速度の向上やカーフ幅の低減などを図ることができる。特に、切断ガスノズル101にダイバージェントノズルを採用した場合には、切断ガスを超音速にし、且つ、非常に細長いガス流動形状を実現することができるため、切断速度や切断品質(カーフ幅など)が大幅に向上する。
【0045】また、CCDカメラ121やモニタリングファイバ122を設ける場合には、これらを半割れレンズ67の分割面67c側に配置して光軸方向から(被加工部の真上から)、ミラーなどを介すことなく直接、被加工部からの光を受光することができるため、構成が簡易になり、光の損失が低減されて確実に画像抽出や発光抽出を行うことができる。また、従来のように側方からレーザ光を入射させてミラーで反射させる必要がなく、光軸方向にレーザ光52を入射することができるため、ヘッドがコンパクトになり、レーザ光52の損失低減を図ることもできる。
【0046】そして、上記のようなレーザ加工ヘッド54を備えたレーザ加工装置は、溶接や切断などの加工能力に優れ、複雑形状のワークにも適用可能な高性能のレーザ加工装置となる。
【0047】
【発明の効果】以上、発明の実施の形態とともに具体的に説明したように、第1発明のレーザ加工ヘッドによれば、レーザ光を平行にするコリメート光学系と、半割れレンズを有し、この半割れレンズの光軸位置を前記コリメート光学系の光軸位置に対してこれらの光軸と直交する方向へずらして前記コリメート光学系を出たレーザ光が全て半割れレンズに入射するようにし、この半割れレンズによって前記レーザ光をワークに集光照射する集光光学系と、前記半割れレンズの分割面側に半割れレンズの光軸に沿って配設された加工手段とを備えたことを特徴とする。
【0048】また、第2発明のレーザ加工ヘッドは、第1発明のレーザ加工ヘッドにおいて、前記加工手段は、MIG電極、TIG電極、フィラワイヤ、細管状の切断ガスノズル又は粉末ノズルであることを特徴とする。
【0049】従って、この第1又は第2発明のレーザ加工装置によれば、MIG電極や切断ガスノズルなどの加工手段とレーザ光とが同軸状になるため、3次元加工に適するなど、従来の同軸レーザ加工ヘッドと同等の機能を有し、しかも、ヘッドのコンパクト化を図れるとともに収束のNAの制限を受けない高集光性と長焦点化(特に厚板切断に有効)が可能となる。
【0050】また、レンズを2分割し、その一方の分割片のみを用いてレーザ加工ヘッドを製造することができるため、1つのレンズで2組のレーザ加工ヘッドを製造することができ、コストの低減を図ることができる。
【0051】また、MIG電極や切断ガスノズルなどの加工手段を、従来のように屈曲させることなくレーザ加工ヘッドに設けることができるため、これらの供給が容易になり、MIG電極を供給するために送給ローラ(プッシュプル装置)を設ける必要がなくて、従来のMIG溶接装置をそのまま使うことができ、また、切断ガス供給装置の送出圧力を高めたりすることなども不要となる。
【0052】また、従来の同軸レーザ加工ヘッドのようにミラーを用いる必要がないため、光学系素子の低減やレーザ光の損失低減などを図ることができる。
【0053】また、第3発明のレーザ加工ヘッドによれば、第1又は第2発明のレーザ加工ヘッドにおいて、前記半割れレンズは、レーザ光が通過しない部分を切断除去したものであるため、単なる半割れレンズ(半円形状レンズ)を用いる場合に比べて更にヘッドがコンパクトになる。
【0054】また、第4発明のレーザ加工ヘッドによれば、第1又は第2発明のレーザ加工ヘッドにおいて、前記加工手段は細管状の切断ガスノズルであり、且つ、この切断ガスノズルはダイバージェントノズルであるため、切断ガスを超音速にし、且つ、非常に細長いガス流動形状を実現することができるため、切断速度や切断品質(カーフ幅など)が大幅に向上する。
【0055】また、第5発明のレーザ加工ヘッドによれば、第1,第2,第3又は第4発明のレーザ加工ヘッドにおいて、前記ワークの被加工部を撮像してモニタへ画像を伝送するCCDカメラと、前記被加工部の発光を加工品質解析手段へと伝送するモニタリングファイバの何れか一方又は両方を、前記半割れレンズの分割面側に配設したことにより、光軸方向から(被加工部の真上から)、ミラーなどを介すことなく直接、被加工部からの光を受光することができるため、構成が簡易になり、光の損失が低減されて確実に画像抽出や発光抽出を行うことができる。また、従来のように側方からレーザ光を入射させてミラーで反射させる必要がなく、光軸方向にレーザ光を入射することができるため、ヘッドがコンパクトになり、レーザ光の損失低減も図ることができる。
【0056】また、第6発明のレーザ加工装置によれば、第1,第2,第3,第4又は第5発明のレーザ加工ヘッドと、レーザ光を出力するレーザ発振器と、このレーザ発振器から出力されたレーザ光を前記レーザ加工ヘッドへと伝送するレーザ光伝送手段と、前記レーザ加工ヘッドを移動して位置決めするヘッド移動手段とを備えたことにより、溶接や切断などの加工能力に優れ、複雑形状のワークにも適用可能な高性能のレーザ加工装置となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置のシステム構成図である。
【図2】前記レーザ加工装置に備えたレーザ加工ヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】図2のA−A線矢視断面拡大図である。
【図4】各種の加工手段を備えたレーザ加工ヘッドの構成図である。
【図5】CCDカメラ及びモニタリングファイバを備えたレーザ加工ヘッドの構成図である。
【図6】従来のレーザ加工ヘッドの構成図である。
【図7】従来のレーザ加工ヘッドの構成図である。
【図8】従来のレーザ加工ヘッドの構成図である。
【符号の説明】
51 YAGレーザ発振器
52 レーザ光
53 光ファイバ
54 レーザ加工ヘッド
55 ワーク
56 ワイヤ送り装置
57 MIG電極
58 溶接電源
59 ヘッド移動装置
60 制御系
61 ケース
62 コリメート光学系
63 集光光学系
64,65 保護ガラス
66 レンズ
67 半割れレンズ
67a,67b レーザ光が通過しない部分(切断除去部分)
67c 分割面
71,72 光軸
73 案内管
74 アーク放電
81 TIG電極
82 溶接電源
83 アーク放電
84 ワーク
91 フィラワイヤ
92 ワイヤ送り装置
93 案内管
94 ワーク
101 切断ガスノズル
102 切断ガス供給装置
103 切断ガス
104 ワーク
111 粉末ノズル
112 粉末供給装置
113 金属粉末
114 3次元形状物
121 CCDカメラ
122 モニタリングファイバ
123 モニタ
124 光電変換装置
125 パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 レーザ光を平行にするコリメート光学系と、半割れレンズを有し、この半割れレンズの光軸位置を前記コリメート光学系の光軸位置に対してこれらの光軸と直交する方向へずらして前記コリメート光学系を出たレーザ光が全て半割れレンズに入射するようにし、この半割れレンズによって前記レーザ光をワークに集光照射する集光光学系と、前記半割れレンズの分割面側に半割れレンズの光軸に沿って配設された加工手段とを備えたことを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】 請求項1に記載するレーザ加工ヘッドにおいて、前記加工手段は、MIG電極、TIG電極、フィラワイヤ、細管状の切断ガスノズル又は粉末ノズルであることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】 請求項1又は2に記載するレーザ加工ヘッドにおいて、前記半割れレンズは、レーザ光が通過しない部分を切断除去したものであることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項4】 請求項1又は2に記載するレーザ加工ヘッドにおいて、前記加工手段は細管状の切断ガスノズルであり、且つ、この切断ガスノズルはダイバージェントノズルであることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項5】 請求項1,2,3又は4に記載するレーザ加工ヘッドにおいて、前記ワークの被加工部を撮像してモニタへ画像を伝送するCCDカメラと、前記被加工部の発光を加工品質解析手段へと伝送するモニタリングファイバの何れか一方又は両方を、前記半割れレンズの分割面側に配設したことを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項6】 請求項1,2,3,4又は5に記載のレーザ加工ヘッドと、レーザ光を出力するレーザ発振器と、このレーザ発振器から出力されたレーザ光を前記レーザ加工ヘッドへと伝送するレーザ光伝送手段と、前記レーザ加工ヘッドを移動して位置決めするヘッド移動手段とを備えたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2002−307177(P2002−307177A)
【公開日】平成14年10月22日(2002.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−114837(P2001−114837)
【出願日】平成13年4月13日(2001.4.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】