説明

レーザ加工方法および加工装置並びに被加工物

【課題】ワークへのレーザ光による穴加工時に、ワーク内の局所変形領域の変化量を検出してレーザ光の照射位置を補正し、良品率を向上させる。
【解決手段】平面形状が四角形の加工ワーク20の四隅に位置決めマーク21を配置形成しておき、レーザ加工に移る段階での位置決めマーク21の位置をCCDカメラ12で撮像
して位置データを検出し、加工ワーク20の回転角度やワーク全体の伸縮率などの変化量を求める。さらに、経験的に特定した加工ワーク20内の局所変形領域を取り囲むように配置形成されている位置決めマーク22の位置を同様に検出し、局所変形領域での変化量を求める。局所変形領域内では位置決めマーク22のデータを基に、他の領域では位置決めマーク21のデータに基づき、レーザ光を照射する加工位置データを補正して、加工ワーク20上の変化量に対応した位置に穴加工を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて多層プリント配線板にビアホールなどを形成するレーザ加工方法と、レーザ加工を行う加工装置、並びにレーザ加工が施された被加工物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルドアップ多層プリント配線板では、エポキシなどの樹脂からなる層間絶縁層と銅などの導体金属からなる導体回路層を交互に積層し、層間絶縁層に穴を形成して、この開口穴の壁面に導体膜を形成することで上層と下層を電気的に接続する。層間絶縁層の開口穴はビアホールと呼ばれ、レーザ加工により形成されることが多い。
【0003】
多層プリント配線板の配線密度を高密度化するためには、高い位置精度でビアホールを形成する必要があり、従来のレーザ加工装置では、XYテーブルに加工ワークを設置後、加工ワークの四隅に設けられたアライメントマークと呼ばれる位置決め用のマークをCCDカメラで読み取り、X方向のずれ量、Y方向のずれ量、基板の伸縮量、基板の回転量等の誤差を測定する。これを基に加工ワークのずれ量を補正する加工データを作成し、ガルバノスキャナ、XYテーブルを駆動させることでビアホールの加工位置精度を高める技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−150279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレーザ加工装置にあっては、加工ワークの四隅にのみ形成された位置決めマークを基に、加工ワークのずれをレーザ光照射位置を加工ワークの位置に合わせて補正する加工データを作成しているため、加工ワークの配線パターンやロットの違い、プリント配線板積層時の加圧力のばらつきなどにより、一つのワーク上に局所的な収縮や変形が発生した場合に加工位置精度が悪くなってしまうという問題点があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、被加工物となる加工ワークの加工時の局所的な変形等の変化量を検出して、その変化量も加味して加工位置データを補正することで、加工位置精度を向上させられるレーザ加工方法および加工装置と被加工物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わるレーザ加工方法は、被加工物上に分散して配置形成された複数個の第一の位置決めマークと、上記被加工物上の上記第一の位置決めマークとは異なる位置に分散して配置形成された複数個の第二の位置決めマークを撮像し、撮像データを得る工程、上記撮像データから検出される上記第一および第二の位置決めマークの位置に基づき、上記被加工物にレーザ加工を施す際に用いる加工位置データを補正する工程、補正した上記加工位置データに基づいて上記被加工物に対してレーザ加工を施す工程を含むものである。
【0008】
この発明に係わる加工装置は、上述のようなレーザ加工方法によって被加工物に対してレーザ加工を施す機能を備えたものである。
さらに、この発明に係わる被加工物は、上述のようなレーザ加工方法によって加工されたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明のレーザ加工方法によれば、被加工物上の第一の位置決めマークと第二の位置決めマークとの位置が異なるため、補正によって得られる加工位置データは、複数の第一の位置決めマーク間の変形量と複数の第二の位置決めマーク間の変形量とを反映させたデータとすることができ、一方の位置決めマークを局所変形領域を囲むように配置させることで、局所的な被加工物の変形にも対応した高い加工位置精度でのレーザ加工が可能となる。
【0010】
また、この発明の加工装置によれば、上述のような位置決めマークで囲まれた複数領域での変化量のデータを反映させて、高い加工位置精度でのレーザ加工を実施できる。
さらに、この発明の被加工物は、上述のようなレーザ加工方法によって加工されるため、高い加工位置精度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1における、レーザ加工装置を示す構成図である。
【図2】この発明の加工ワークの回転や変形を説明するための平面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の、レーザ加工方法を示すフロー図である。
【図4】この発明の実施の形態2における、レーザ加工装置を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3における、位置決めマークを示す基板断面図と、平面配置図である。
【図6】この発明の実施の形態3における、位置決めマークを示す基板断面図と平面配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1によるレーザ加工方法およびそのレーザ加工方法を使用する加工装置(被加工物の製造装置)、並びにそのレーザ加工方法で生産された被加工物について説明する。ここで、被加工物(加工ワーク)とは、例えば多層プリント配線板であり、加工装置とは、レーザ加工装置である。
図1は本発明の実施の形態1によるレーザ加工方法を使用する加工装置全体を示す説明
図である。レーザ加工装置は、まず、レーザ光1を発生させる発振器2と、発振器2から出射されたレーザ光1の発散角を調整させるコリメートレンズ3と、レーザ光1を反射により狙いの方向に導くためのベンドミラー4、レーザ光1を加工ワーク20上で任意のビームスポット径に設定するための絞り5とレーザ光1をY方向に偏向するY軸スキャンミラー6、X方向に偏向するX軸スキャンミラー7、回転角度の指令に従ってY軸スキャンミラー6、X軸スキャンミラー7を回転させ、レーザ光1の偏向角度を調整するY軸スキャ
ンミラー駆動装置8、X軸スキャンミラー駆動装置9、レーザ光1を加工ワーク20上に集光するfθレンズ10(集光レンズ)を構成要素として備えている。
【0013】
さらに、レーザ加工装置は、加工ワーク20を固定してXY平面上に駆動させるXYテーブル11、加工ワーク20上の設計された位置にあらかじめ配置形成された位置決めマーク21、22の確認や、レーザ光1の照射によって加工された加工穴16の検出を行うCCDカメラ12、加工ワーク20上の任意の位置を照らすことのできる照明装置13、CCDカメラ12により撮像した撮像データの画像処理を行う画像処理装置14、発振器2、Y軸スキャンミラー駆動装置8、X軸スキャンミラー駆動装置9、XYテーブル11、CCDカメラ12、照明装置13および画像処理装置14を駆動制御するとともに撮像した位置決めマーク21、22から得たデータに基づいてレーザ加工の際に用いる加工位置データを補正する制御装置15を備えている。
また、位置決めマーク21、22を撮像するための構成である照明装置13、CCDカメラ12等は撮像手段に相当し、制御装置15内の一機能が、加工位置データを補正する補正手段に相当している。
【0014】
ここで、上述のように、加工ワーク20の表面には、あらかじめ設計された位置に位置決めマーク(第一、第二の位置決めマーク)21、22が形成されており、位置決めマーク21は、例えば平面形状が四角形で、加工ワーク20の四隅に配置形成され、経験的に加工ワーク20内の局所的変形が観察される領域(局所変形領域)を囲むように位置決めマーク22が分散して配置形成されている。位置決めマーク21、22は、変化量を検出したい領域の境界部上(所定領域の境界線近傍であり、所定領域の外側または内側にも位置し得る。境界部におけるマークの配置は、ワーク加工上での条件に応じて決めることが
できる。)に分散して複数個が配置されており、例えば、図1に示す4個の位置決めマーク22(21)を、位置決めマーク群と称することができる。なお、位置決めマーク21と22で、複数個のうち何個かが共通のマークの役割を果たす場合もあるが、位置決めマーク21、22が囲む領域には違いがあり、そのため、それぞれの位置決めマーク群は異なる位置に配置された状態となる。
【0015】
上述したように、平面形状が四角形である加工ワーク20表面には、その四隅に位置決めマーク(第一の位置決めマーク)21が形成されており、加工ワーク20の全体としての回転や膨張収縮率等の変化量を、その位置決めマーク21を検出することによって把握可能となっている。一方、加工ワーク20上に形成された配線パターン、ロットの違いの影響を受け、局所的な収縮膨張等の変形が発生し得る局所変形領域(良品率が所定値以下となる領域。)の境界部上の四隅には、位置決めマーク(第二の位置決めマーク)22があらかじめ設けられており、この位置決めマーク22を検出することによって、局所変形領域における変化量を把握することができる。なお、局所変形領域は、経験的に不具合が発生する領域が加工ワーク20上の一部分に集中している場合に、その領域を指すものとして考える。
また、局所変形が見られない場合でも、加工上において要観察領域であり、変化量に注目したい領域を囲むように位置決めマークを分散配置して、変化量を検出することも可能であり、品質管理に役立てることができる。
【0016】
なお、図1や上述の説明では、位置決めマーク21、22は、それぞれ、加工ワーク20のほぼ全面を取り囲む四隅、加工ワーク20上の限定された一領域を指す局所変形領域を囲む四隅であることを例示したが、必ずしも四隅でなくても良く、最少で2個の位置決めマークを検出することで、マーク間に位置する領域における変形量を把握することができ、一個の位置決めマークを基準とした場合に、他方の位置決めマークの移動を検出することで、ワークの回転角度を検出することが可能である。なお、位置決めマーク21(または22)を3個以上配置した場合は、情報量も増え、それぞれのマーク間の変化量の比較から、仕掛かり中の加工ワーク20の状態把握(品質管理)等もでき、加工ワーク20内の位置決めマーク21(または22)で囲む領域内の変形率をより平均的な値として得ることも可能であるため、加工位置データをより適性値に近づけることが可能となり、加工品質を向上させることができる。
【0017】
前述の制御装置15は作業者からの起動指令や外部ホストからの起動信号により選択された加工プログラムに従って加工を実施する機能を持つ。この加工プログラムは、加工ワーク20上の位置決めマーク21、22の位置データならびに穴加工を行う際に用いられる加工位置データが入力されており、位置決めマーク21、22の位置データはXYテーブル11の座標に、加工位置データはXYテーブル11の座標とスキャンミラー6、7の回転角度に変換されている。
【0018】
加工ワーク20であるプリント基板への加工パターンは、プリント基板上の直交座標で示されるが、プリント基板を設置する際にプリント基板上の座標系を加工テーブル(XYテーブル11)の座標系にあわせて置くことは非常に困難で、実際には回転が生じてしまう。また、基板の温度変化により設計寸法に対して伸縮が生じることもある。このような場合に必要となるワーク補正(加工位置データの補正)は、XYテーブル11上に加工ワーク20を設置したままの状態でワークの移動なしに加工を施すためのものであり、加工ワーク20のXY平面内での回転や伸縮に伴う変化量を反映させて、設計時の加工位置データを補正して適正な位置にレーザ光1を照射して穴加工を行う方法で補正をする。
【0019】
次に、穴加工位置の補正方法について図2を用いて説明する。
図2(a)は、加工ワーク20の平面上での基準点(白丸大)と、設計上での加工位置
である加工狙い位置(白丸小)を示しており、ここでは簡単のために位置決めマーク(白丸大)21が加工ワーク20の四隅に設けられた場合のみを示しており、その座標は、点A(0,0)、点B(X1,0)、点C(X1,Y1)、点D(0,Y1)である。図2(b)は、加工ワーク20が回転角度θだけ回転した場合を示しており、図2(c)は、加工ワーク20が温度等の影響により膨張した場合を示している。
【0020】
なお、回転や膨張等によるワーク位置の変化は、基準点となる位置決めマーク21のうち、一点(点A(0,0))を原点として位置変化がないものとして考え、複数の位置決めマーク21間の相対位置関係を計算することで、変化量に応じて加工位置(レーザ光照射位置)を補正する。
【0021】
図2(b)のように、加工ワーク20に対して回転がかかった場合、点Bが点B´へ移動し、点A、点B、点B´の位置関係より回転角度θが算出される。回転角度θが決まると、黒丸小で示す補正位置X´(Xn´、Yn´)は、以下に示す行列式(数1)により計算される。
【数1】

【0022】
また、図2(c)に示すように、加工ワーク20が膨張した場合、位置決めマーク21は、点B´(X2,0)、点C´(X2,Y2)、点D´(0,Y2)に移動し、補正位置X´(Xn´、Yn´)は、それぞれ次式(数2)のように計算される。
【数2】

【0023】
図2(c)の例では、位置決めマーク21のみの例示であり、ワーク全体の伸縮率(変化率)を平均的な一つの値として算出できるが、上述したように、本願では、局所変形領域を囲むように位置決めマーク22を設けることで、その位置決めマーク22の位置データから局所変形領域におけるワーク伸縮率も得ることができる。その場合、局所変形領域においては局所変形領域におけるワーク伸縮率を優先させて、補正データに適用するものとし、位置決めマーク22により得られる変化量(または変形率)のデータは、位置決めマーク22で囲む局所変形領域内でのデータ補正にのみ適用し、位置決めマーク21による変化量は加味されないものとして考える。なお、局所変形領域においても、位置決めマーク21によって示されるワークの位置情報(回転角度等)は共通であることは言うまでもない。また、局所変形領域以外の領域においてはワーク全体の伸縮率を適用させる方向で補正を行うものとする。
このような補正により、加工ワーク20をXYテーブル11上に設置したままの状態で穴加工を施すことが可能となる。
【0024】
次に、本実施の形態1のレーザ加工方法によって、あらかじめ位置決めマーク21、22が形成されている加工ワーク20に、穴加工を施す際の手順について図3のフローチャートを用いて説明する。なお、位置決めマーク21、22は、レーザ加工までの工程において、配線等の形成時に同時に形成するなどして得ることが可能である。
まず、XYテーブル11上に加工ワーク20を設置(エアーにより吸着保持)し、照明
装置13により加工ワーク20を照らす。次にXYテーブル11を駆動させ、CCDカメラ12で撮像できる位置に位置決めマーク21、22を移動させる(S1)。CCDカメラ12により位置決めマーク21、22を撮像し、画像処理装置14により撮像データを画像処理(S2)し、位置決めマーク21、22の位置を検出する(S3)。すべての位置決めマーク21、22の位置を検出(S4)後、制御装置15により、位置決めマーク21、22の検出位置に基づき、加工ワーク20のX方向のずれ、Y方向のずれ、全体の伸縮、回転、局所的な領域での伸縮等の変化量を測定し、加工ワーク20上へのレーザ照射位置(加工位置)を補正し、加工位置データを作成する(S5)。そして補正された加工位置データ(加工データ)をXYテーブル11の座標とスキャンミラー6、7の回転角度に変換し、XYテーブル11、スキャンミラー駆動装置8、9に指令を与え、位置ずれを補正した加工位置データによりレーザ加工(穴加工)を行う(S6)。
【0025】
なお、スキャンミラー6、7の回転とfθレンズ10により一括照射可能な加工エリアの広さには限界があるため一つの加工エリアの加工が終わるとXYテーブル11の移動により次のエリアへの移動が行われる。例えば、加工ワーク20の大きさが500mm×500mm、一括照射可能な加工エリアが50mm×50mmであった場合、XYテーブル11は50mmのX方向の移動を10回、50mmのY方向の移動を10回(全部で10(X方向)×10(Y方向)の100回)行うことで加工が完了する。
【0026】
本実施の形態1で示したレーザ加工装置およびレーザ加工方法(被加工物の製造方法)では、例えば、最大の加工位置ずれが15μm以下であることが求められる配線パターンの加工ワーク20において、従来のレーザ加工装置ならびに四隅のみの位置決めマークを設けた加工ワークで加工位置の補正を行った場合には、90%程度であった歩留りが、当該配線パターンの加工ワーク20において、本実施の形態での工程である、局所変形領域での変化量データを補正時に反映させた穴加工工程を経た場合は、95%程度まで改善できるという加工精度向上の効果が得られた。
なお、位置決めマーク21、22は、図1等において示したように、例えば円形で、径が0.1〜2.0mm程度の大きさのものを用いることができ、CCDカメラ12により間違いなく認識することができる。なお、形状は円形以外とすることも可能であることは言うまでもない。
【0027】
さらになお、上述のレーザ加工方法を使用する加工装置は、レーザ発振器から出力されたレーザ光を、X軸方向およびY軸方向に設けられたそれぞれの回転軸による回転により偏向させるX軸およびY軸スキャンミラー、上記X軸およびY軸スキャンミラーが偏向した上記レーザ光を屈折させて、XYテーブル上に設置された被加工物上に集光させるレンズ、上記被加工物上に分散して配置形成された複数個の第一の位置決めマークと上記被加工物上の上記第一の位置決めマークとは異なる位置に分散して配置形成された複数個の第二の位置決めマークを撮像する撮像手段、上記撮像手段によって得た撮像データから上記第一および第二の位置決めマークの位置を検出し、上記第一および第二の位置決めマークの位置に基づき、上記被加工物にレーザ加工を施す際に用いる加工位置データを補正する補正手段を備えた構成であり、本発明のレーザ加工方法および加工装置によって得られる被加工物は、第一および第二の位置決めマークによって囲まれた領域毎に伸縮率等を反映させて加工位置データを補正できるため、レーザ加工精度を向上させることが可能となる。
【0028】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2によるレーザ加工方法を実施するためのレーザ加工装置全体を示す説明図である。上述の実施の形態1においては、加工ワーク20上の局所変形領域が一つである場合を想定していたが、この実施の形態2では、局所変形領域が一つの加工ワーク20上に複数箇所(例えば2ヶ所)ある場合を想定している。従って、図4に
示すように、加工ワーク20上の四隅には位置決めマーク21が、加工ワーク20の配線パターン、ロットの違いの影響を受け、局所的な伸縮、変形が発生し得る二つの領域を囲むように、それぞれ複数個の位置決めマーク22、23が、レーザ加工の前段階までに分散して配置形成されている。
本実施の形態2のレーザ加工方法で、加工ワーク20上への穴加工をする手順については、上述した実施の形態1と同様であり、本実施の形態2の場合には、位置決めマーク23が付加されたことにより、補正に反映させるデータが増え、より詳しい加工ワーク20上での局所変形の状態把握ができる。加工位置データへの位置決めマーク23のデータ反映を可能とするために、図3のフロー図でのステップ4(S4)で、位置決めマーク23についてもデータを検出する点などが、実施の形態1と異なっている。
【0029】
なお、位置決めマーク22で囲まれる局所変形領域と、別の位置決めマーク23で囲まれる別の局所変形領域とが、加工ワーク20上で重なりを持たない配置となる場合と、重なりを持つ配置となる場合がある。一方の局所変形領域内に他方の局所変形領域が納まる配置の場合は、重なり部において、他方(面積が小さい方)の局所変形領域での変化量を反映させた加工位置データの補正を行うものとする。また、二つの局所変形領域が一部分でのみ重なりを持つように配置される場合は、その重なり部において、いずれの変化量を適応させるか、または両方の変化量データを加味し、ワーク座標上での配置における影響の度合いから、加工位置データの補正を行うように処理することも可能であり、レーザ加工を行う被加工物の種類や構成等の条件によって適正に処理するものとする。
【0030】
本実施の形態2で示すように、局所的な伸縮、変形が発生する領域を二箇所以上に分け、それぞれの領域の四隅に位置決めマーク22、23他をあらかじめ設け、加工位置の補正を行った場合には、当該配線パターンの加工ワーク20において、従来では90%程度であった歩留まりを98%程度に改善でき、実施の形態1の場合より高い加工位置精度を達成することができた。なお、実施の形態1の場合と同様に、位置決めマーク21、22、23の数点の座標が共通となる場合もありうるが、囲まれる領域には違いがあることは言うまでもなく、それら位置決めマーク群は、異なる位置に配置されていると言える。
【0031】
実施の形態3.
上述の実施の形態1、2では、加工ワーク20の四隅と局所的な伸縮、変形が発生する領域の四隅に位置決めマーク21、22、23をあらかじめ設け、これを基に加工位置データの補正を行う方法を述べたが、この実施の形態3では、加工ワーク20に形成するランドやマスクのパターンを位置決めマークとして利用することを特徴としている。
図5(a)に加工ワークの断面図を、図5(b)に、ランド27の平面配置図を示すように、例えば、絶縁基板上24に配線パターンを形成していくアディティブ法で製作する多層プリント配線板においては、多数のランド27のうち、数個を位置決めマーク28として読み取り、これを基に前述の方法で加工位置を補正することで、加工位置精度が向上し、歩留まりが改善されるという効果が得られる。ランド27は、樹脂絶縁層25下の内装銅箔部26の加工穴の狙い位置となるものであり、表面実装部品を実装するためのはんだ付け用銅箔である。図5(b)の白丸と黒丸で示すマークは全てランド27に相当し、その中から選定された数個が位置決めマーク28となる。位置決めマーク28は、一括で変化量を検出してデータ補正したい局所変形領域(図5(b)中に破線で囲んで示す。)の境界部に分散され、該領域を取り囲むように加工ワーク20上において選定され、設定される。
【0032】
また図6(a)に加工ワークの断面図を示すように、全面に銅箔部29が貼られた基板から、不要な部分を取り除いて配線パターンを形成していくサブトラクティブ法で作製する多層プリント配線板においては、局所変形領域の周囲に位置するコンフォーマルマスク(抜きパターン)30の一部を、位置決めマーク31として読み取る。コンフォーマルマ
スク30は、穴加工したい位置(ランド27)の上方の開口部である。コンフォーマルマスク30の平面配置図を図6(b)に示すように、白丸と黒丸で示すマークは全てコンフォーマルマスク30に相当し、多数のコンフォーマルマスク30の中から、変化量を検出したい局所変形領域(破線により境界線を示す。)を囲むように、複数の位置決めマーク31を分散配置させるように設定する。これを基に前述の方法で加工位置を補正することで、加工位置精度が向上し、歩留まりが改善されるという効果が得られる。
【0033】
この実施の形態3で述べた、アディティブ法で作製する多層プリント配線板のランド27、またはサブトラクティブ法で作製する多層プリント配線板のコンフォーマルマスク30を位置決めマーク28または31として用いた場合、想定外の領域で局所的な伸縮、変形が発生した場合でも、改めて位置決めマークを設ける必要がなくなり、製造上の無駄を省けるという効果がある。
【符号の説明】
【0034】
1 レーザ光 2 発振器、
3 コリメートレンズ 4 ベンドミラー、
5 絞り 6 Y軸スキャンミラー、
7 X軸スキャンミラー 8 Y軸スキャンミラー駆動装置、
9 X軸スキャンミラー駆動装置 10 fθレンズ、
11 XYテーブル 12 CCDカメラ、
13 照明装置 14 画像処理装置、
15 制御装置 16 加工穴、
20 加工ワーク 21、22、23、28、31 位置決めマーク、
24 絶縁基板 25 樹脂絶縁層、
26 内装銅箔部 27 ランド、
29 銅箔部 30 コンフォーマルマスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物上に分散して配置形成された複数個の第一の位置決めマークと、上記被加工物上の上記第一の位置決めマークとは異なる位置に分散して配置形成された複数個の第二の位置決めマークを撮像し、撮像データを得る工程、上記撮像データから検出される上記第一および第二の位置決めマークの位置に基づき、上記被加工物にレーザ加工を施す際に用いる加工位置データを補正する工程、補正した上記加工位置データに基づいて上記被加工物に対してレーザ加工を施す工程を含むレーザ加工方法。
【請求項2】
上記第一の位置決めマークは、上記被加工物上の所定領域の境界部上に配置され、上記第二の位置決めマークは、上記所定領域内に位置し、上記被加工物の加工処理によって局所的な変形が生じる局所変形領域の境界部上に配置されたことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
上記第二の位置決めマークは、上記局所変形領域を囲むように3箇所以上に配置されたことを特徴とする請求項2記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
上記局所変形領域は、上記被加工物上の複数箇所に設定されたことを特徴とする請求項2または請求項3記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
上記第二の位置決めマークとして、上記被加工物上に形成されたランドまたはコンフォーマルマスクを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ加工方法を使用する加工装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ加工方法により生産された被加工物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−162559(P2010−162559A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5042(P2009−5042)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】