レーザ加工方法
【課題】被加工物の内部に形成される改質領域の断面形状をより均一にすること。
【解決手段】レーザ光14が入射される被加工物1の上面1aに対してレーザ光14の光軸を傾けるようにした。それゆえ、改質領域19の長手方向を、被加工物の上面1aと垂直なz軸方向に対して傾けることができる。そして、改質領域19のz軸方向の長さを短くすることができる。そのため、例えば、被加工物1の内部に、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19からなる第1改質領域列と、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19からなる第2改質領域列とを形成した場合、第1改質領域列のx軸方向の幅と第2改質領域列のz軸方向の幅との差を低減できる。したがって、被加工物1の内部に形成される、複数の改質領域19からなる改質領域列の断面形状をより均一にすることができる。
【解決手段】レーザ光14が入射される被加工物1の上面1aに対してレーザ光14の光軸を傾けるようにした。それゆえ、改質領域19の長手方向を、被加工物の上面1aと垂直なz軸方向に対して傾けることができる。そして、改質領域19のz軸方向の長さを短くすることができる。そのため、例えば、被加工物1の内部に、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19からなる第1改質領域列と、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19からなる第2改質領域列とを形成した場合、第1改質領域列のx軸方向の幅と第2改質領域列のz軸方向の幅との差を低減できる。したがって、被加工物1の内部に形成される、複数の改質領域19からなる改質領域列の断面形状をより均一にすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の内部に改質領域を形成するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
この特許文献1に記載の技術では、まず、感光性ガラスの試料に、試料の外面と垂直な方向からレーザ光を出射する。そして、出射したレーザ光を試料の内部に集光し、集光したレーザ光を試料の内部で走査する。これにより、試料の内部に、レーザ光の走査方向に沿って多光子吸収による改質領域を形成する。ここで、レーザ光の走査方向としては、例えば、試料の外面と平行な方向や当該外面と垂直な方向を用いるようになっている。続いて、試料のうち改質領域を形成した部分をエッチングする。これにより、改質領域を形成した部分に空洞を形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−340579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、感光性ガラスの試料、つまり、被加工物の内部にレーザ光を集光する際に、被加工物の内部でレーザ光の集光性が低下して、レーザ光の集光領域が分散する。また、このレーザ光の集光領域が分散する範囲は、レーザ光進行方向と直交する方向よりもレーザ光進行方向のほうが広くなる。そのため、被加工物の外面と平行な方向にレーザ光を走査して得られる改質領域の幅に比べ、当該外面と垂直な方向にレーザ光を走査して得られる改質領域の幅は狭くなる。その結果、改質領域を形成した部分に空洞を形成した場合、被加工物の外面と平行な方向に延びる空洞の幅に比べ、当該外面と垂直な方向に延びる空洞の幅は狭くなる。
本発明の技術的課題は、上記のような点に着目し、被加工物の内部に形成される改質領域の断面形状をより均一にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本発明の各態様は、以下のような構成からなる。
本発明の第1の態様は、
被加工物に対して透過性を有するレーザ光を当該被加工物の内部に集光すると共に、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させることで、前記被加工物の内部に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向に沿って改質領域を順次形成するレーザ加工方法であって、前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記レーザ光が入射される前記被加工物の外面と垂直な方向に対して前記レーザ光の光軸を傾けることを特徴とする。
【0006】
このような態様によれば、改質領域の長手方向を、被加工物の外面と垂直な方向に対して傾けることができる。それゆえ、改質領域の、前記外面と垂直な方向の長さを短くすることができる。そのため、例えば、被加工物の内部に、前記外面と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質領域からなる第1改質領域列と、前記外面と平行な方向に沿って並ぶ複数の改質領域からなる第2改質領域列とを形成した場合、第1改質領域列における前記外面と平行な方向の幅と第2改質領域列における前記外面と垂直な方向の幅との差を低減できる。したがって、複数の改質領域からなる改質領域列の断面形状、つまり、被加工物の内部に形成される改質領域の断面形状をより均一にすることが可能となる。
【0007】
本発明の第2の態様は、
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記レーザ光の集光によって前記被加工物の内部に形成される改質領域における前記外面と垂直な方向の長さ、および当該改質領域における前記集光位置の移動方向の長さが互いに等しくなるように、前記被加工物の外面と垂直な方向に対して前記レーザ光の光軸を傾けることを特徴とする。
このような態様によれば、改質領域における、被加工物の外面と垂直な方向の長さと、レーザ光の集光位置の移動方向の長さとを等しくすることができる。そのため、例えば、被加工物の内部に、前記外面と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質領域からなる第1改質領域列と、前記外面と平行な方向に沿って並ぶ複数の改質領域からなる第2改質領域列とを形成した場合、第1改質領域列における前記外面と平行な方向の幅と第2改質領域列における前記外面と垂直な方向の幅とを等しくすることができる。
【0008】
本発明の第3の態様は、
被加工物に対して透過性を有するレーザ光を回折格子で複数の光束に分岐し、分岐した前記複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光すると共に、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させることで、前記被加工物の内部に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向に沿って、複数の改質領域からなる改質領域群を順次形成するレーザ加工方法であって、前記分岐した前記複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光する際に、前記複数の光束それぞれの集光によって前記被加工物の内部に形成される前記改質領域群が、前記レーザ光が入射される前記被加工物の外面と平行な面を有する直方体状の改質領域を形成するように、前記複数の光束それぞれの集光領域を設定し、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させる際に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向が前記直方体のいずれかの面の法線方向と平行となるように、前記相対位置の移動方向を設定することを特徴とする。
【0009】
このような態様によれば、一回のレーザ光の出射で改質領域が形成される範囲の、レーザ光の集光位置の移動方向と直交する方向の長さを長くすることができる。そのため、例えば、被加工物の内部に、前記外面と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質領域群からなる第1改質領域群列と、前記外面と平行な方向に沿って並ぶ複数の改質領域群からなる第2改質領域群列とを形成した場合、第1改質領域群列における前記外面と平行な方向の幅と第2改質領域群列における前記外面と垂直な方向の幅との差を低減できる。したがって、複数の改質領域からなる改質領域群列の断面形状、つまり、被加工物の内部に形成される改質領域の断面形状をより均一にすることが可能となる。
【0010】
本発明の第4の態様は、
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記改質領域群が形成する直方体状の改質領域の各辺の長さが互いに等しくなるように、前記分岐した複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光することを特徴とする。
このような態様によれば、改質領域群における、被加工物の外面と垂直な方向の長さと、当該外面と平行な方向の各辺の長さとを等しくすることができる。そのため、例えば、被加工物の内部に、前記外面と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質領域群からなる第1改質領域群列と、前記外面と平行な方向に沿って並ぶ複数の改質領域群からなる第2改質領域群列とを形成した場合、第1改質領域群列における前記外面と平行な方向の幅と第2改質領域群列における前記外面と垂直な方向の幅とを等しくすることができる。
【0011】
本発明の第5の態様は、
前記被加工物の内部に前記改質領域を形成した後に、前記被加工物における前記改質領域を形成した部分をエッチングして、前記改質領域を形成した部分に空洞を形成することを特徴とする。
このような態様によれば、被加工物のうちの改質領域を形成した部分に空洞を形成できる。そのため、被加工物の内部に、断面形状がより均一な空洞を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のレーザ加工方法で得られる被加工物1の斜視図である。
【図2】レーザ加工装置4の概略構成を示す概念図である。
【図3】第1の工程の説明に用いる模式図である。
【図4】第2の工程の説明に用いる模式図である。
【図5】被加工物1の上面1aからの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれに改質領域19を形成して得られる被加工物1の断面図である。
【図6】被加工物1の上面1aからの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれに改質領域19を形成した場合の各改質領域19の長さを示すグラフである。
【図7】第2実施形態のレーザ加工方法で得られる被加工物1の斜視図である。
【図8】第2実施形態のレーザ加工装置4の概略構成を示す概念図である。
【図9】集光レンズ12および回折格子21の構成を示す構成図である。
【図10】改質領域群22の説明に用いる模式図である。
【図11】第2実施形態の第1の工程の説明に用いる模式図である。
【図12】比較例の説明のための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態のレーザ加工方法では、まず、被加工物に対して透過性を有するレーザ光を当該被加工物の内部に集光すると共に、被加工物に対してレーザ光の集光位置を順次移動させることで、被加工物の内部に、集光位置の移動方向に沿って並ぶ複数の改質領域を形成する。その際、レーザ光が入射される被加工物の外面と垂直な方向に対してレーザ光の光軸を傾ける。続いて、改質領域を形成した部分をエッチングして、被加工物の内部に空洞を形成する。空洞としては、例えば、電極の通路や流路等を形成可能である。
【0014】
(実施形態1)
(被加工物の構成)
まず、第1実施形態のレーザ加工方法を実行することによって得られる、内部に空洞2が形成された被加工物1について説明する。
図1は、第1実施形態のレーザ加工方法で得られる被加工物1の斜視図である。
図1に示すように、被加工物1は、長方体状に形成された透明材料からなる。透明材料としては、例えば、石英やホウケイ酸ガラス等を利用できる。また、被加工物1には、図1に示すように被加工物1に正対した状態を基準に、上面1a、下面1b、左面1c、右面1d、前面1e、および背面1fが定義されている。上面1aは、図1の被加工物1の上側に位置する面である。同様に、下面1bは、被加工物1の下側に位置する面である。左面1cは、左側に位置する面である。右面1dは、右側に位置する面である。前面1eは、手前側に位置する面である。背面1fは、奥側に位置する面である。
さらに、被加工物1には、x軸方向、y軸方向およびz軸方向が定義されている。x軸方向は、被加工物1の左面1cの法線方向である。同様に、y軸方向は、被加工物1の背面1fの法線方向である。z軸方向は、被加工物1の上面1aの法線方向である。
【0015】
また、被加工物1の内部には、第1〜第5の加工基準線3a〜3eが定義されている。第1の加工基準線3aは、z軸方向に沿って延在し、一端を被加工物1の下面1bに有し、他端を被加工物1の内部に有する直線である。同様に、第2の加工基準線3bは、x軸方向に沿って延在し、一端を第1の加工基準線3aの前記他端の位置に有し、他端を被加工物1の内部に有する直線である。第3の加工基準線3cは、z軸方向に沿って延在し、一端を第2の加工基準線3bの前記他端の位置に有し、他端を被加工物1の内部に有する直線である。第4の加工基準線3dは、x軸方向に沿って延在し、一端を第3の加工基準線3cの前記他端の位置に有し、他端を被加工物1の内部に有する直線である。第5の加工基準線3eは、z軸方向に沿って延在し、一端を第4の加工基準線3dの前記他端の位置に有し、他端を被加工物1の上面1aに有する直線である。
さらに、被加工物1の内部には、空洞2が形成される。空洞2は、第1〜第5の加工基準線3a〜3eそれぞれに沿って形成される。また、空洞2は、被加工物1の上面1aおよび下面1bそれぞれに開口部を有し、それら開口部間を連通する。
【0016】
(レーザ加工装置の構成)
次に、第1実施形態のレーザ加工方法で使用するレーザ加工装置4について説明する。
図2は、レーザ加工装置4の概略構成を示す概念図である。
図2に示すように、レーザ加工装置4は、照射機構部5および制御部6を備える。
照射機構部5は、載置台7、X軸移動部8、Y軸移動部9、Z軸移動部10、レーザ光源11、集光レンズ12、および収差補正レンズ群13を備える。
載置台7は、被加工物1を載置可能な平面が上部に形成された台である。また、載置台7には、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向が定義されている。X軸方向は、載置台7上部の平面内に設定した一方向である。同様に、Y軸方向は、載置台7上部の平面内にあり且つ載置台7を上方から見た場合にX軸方向を時計回りに90°回転させた方向である。また、Z軸方向は、当該平面の法線方向である。
【0017】
X軸移動部8は、制御部6からの信号に応じて、載置台7をX軸方向に沿って移動させる。X軸移動部8としては、例えば、X軸方向に沿って並進運動を行うスライダと、スライダを駆動するサーボモータとからなるものを利用できる。また同様に、Y軸移動部9は、制御部6からの信号に応じて、載置台7をY軸方向に沿って移動させる。Z軸移動部10は、制御部6からの信号に応じて、載置台7をZ軸方向に沿って移動させる。
レーザ光源11は、載置台7の上方に配される。そして、レーザ光源11は、制御部6からの信号に応じて、被加工物1に対して透過性を有するレーザ光14を載置台7上部の平面に向けて出射する。レーザ光14出射方向は、X-Z平面と平行な面内にあり且つZ軸方向に対して傾いた方向に設定する。Z軸方向に対して傾いた方向としては、例えば、Z軸方向に対して0°より大きく且つ90°未満の範囲で傾いた方向が挙げられる。本実施形態では、一例として、Z軸方向に対して45°傾いた方向に設定する。
【0018】
なお、レーザ光源11としては、例えば、チタンサファイアを固体光源とし、チタンサファイアが発生するフェムト秒レーザ光を出射するものを利用できる。
集光レンズ12は、レーザ光源11と載置台7との間に配される。そして、集光レンズ12は、レーザ光源11から出射されるレーザ光14を集光する。集光レンズ12の光軸は、レーザ光源11が出射するレーザ光14との光軸と一致するように設定する。
収差補正レンズ群13は、制御部6からの信号に応じて、集光レンズ12の収差を調整する。そして、収差補正レンズ群13は、集光レンズ12で集光されたレーザ光14の集光領域の長さを制御する。収差補正レンズ群13としては、例えば、集光レンズ12の鏡筒に移動可能に収容された複数枚のレンズからなるものを利用できる。
制御部6は、入力部16、表示部17、および演算部18を備える。
【0019】
入力部16は、レーザ加工の際に用いる、X軸移動部8、Y軸移動部9、Z軸移動部10、レーザ光源11、および収差補正レンズ群13に出力する信号のデータを利用者に入力させる。入力部16としては、例えば、キーボードやマウスを利用できる。
表示部17は、レーザ加工の際の各種情報を表示する。表示部17としては、例えば、液晶ディスプレイやCRT(cathode ray tube)ディスプレイを利用できる。
演算部18は、入力部16から入力されたデータを演算処理し、その処理結果をもとに、X軸移動部8、Y軸移動部9、Z軸移動部10、レーザ光源11、および収差補正レンズ群13に信号を出力する。演算部18としては、例えば、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置、メモリ等から構成されたコンピュータを利用できる。
【0020】
(レーザ加工方法の説明)
次に、前述したレーザ加工装置4を用いて、被加工物1の内部に、設定した第1〜第5の加工基準線3a〜3eに沿って空洞2を形成するレーザ加工方法について説明する。
レーザ加工方法は、以下の第1および第2の工程からなる。
【0021】
(第1の工程)
第1の工程では、被加工物1の内部に、設定した第1〜第5の加工基準線3a〜3eに沿って多光子吸収による改質領域19を形成する。
図3は、第1の工程の説明に用いる模式図である。図3では、被加工物1は、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む面(図1のA面)で破断した断面図で表している。
具体的には、図3(a)に示すように、まず、被加工物1のz軸方向が照射機構部5のZ軸方向に向くように被加工物1を載置台7に載置する。また、被加工物1のx軸方向が照射機構部5のX軸方向に向くように被加工物1を位置決めする。これにより、第1、第3および第5の加工基準線3a、3c、3eが照射機構部5のZ軸方向と平行となり、第2および第4の加工基準線3b、3dが照射機構部5のX軸方向と平行となる。
【0022】
これによって、第1〜第5の加工基準線3a〜3eそれぞれは、集光レンズ12が集光するレーザ光14の進行方向と傾いた方向となる。
次に、演算部18により、X軸移動部8、Y軸移動部9およびZ軸移動部10を制御して、集光レンズ12が集光するレーザ光14の集光領域の中央部が、第1の加工基準線3aの下面1b側端部に一致するように載置台7を移動させる。そして、演算部18により、レーザ光源11を制御して、レーザ光14の出射を開始させる。これにより、第1の加工基準線3aの下面1b側端部を含む加工予定部分にレーザ光14が集光される。そして、被加工物1の内部には、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となった部分に、多光子吸収による改質領域19が形成される。
【0023】
ここで、レーザ光14出射方向は、Z軸方向に対して45°傾いた方向に設定されている。そのため、レーザ光14の集光によって被加工物1の内部に形成される改質領域19は、第1の加工基準線3aに対して長手方向が45°傾いた状態となる。それゆえ、改質領域19のz軸方向の長さとx軸方向の長さとが等しくなる。
次に、演算部18により、図3(b)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7をZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を同様に繰り返す。所定ピッチとしては、例えば、改質領域19のレーザ光14進行方向と直交する方向の幅を利用できる。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の下面1b側から上面1a側へ複数の改質領域19が順次形成される。
【0024】
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。
なお、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光時には、演算部18により、収差補正レンズ群13を制御して、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となる部分のレーザ光14進行方向の長さが一定となるように、集光レンズ12の収差を適宜調整する。集光レンズ12の収差の調整は、第2〜第5の加工基準線3b〜3eにレーザ光14を集光する際にも同様に行う。
【0025】
次に、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図3(c)に示すように、X軸移動部8を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のX軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分に、被加工物1のx軸方向に沿って当該被加工物1の右面1d側から左面1c側へ複数の改質領域19が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。これら複数の改質領域19からなる改質領域列のz軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0026】
次に、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図3(d)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の下面1b側から上面1a側へ複数の改質領域19が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。これら複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0027】
次に、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図3(e)に示すように、X軸移動部8を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のX軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分に、被加工物1のx軸方向に沿って当該被加工物1の右面1d側から左面1c側へ複数の改質領域19が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。これら複数の改質領域19からなる改質領域列のz軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0028】
次に、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図3(f)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第5の加工基準線3eを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第5の加工基準線3eを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の左面1c側から上面1a側へ複数の改質領域19が順次形成される。
【0029】
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。これら複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅と等しい長さとなる。
このように、第1の工程では、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む加工予定部分に複数の改質領域19が順次形成される。これにより、被加工物1の上面1aには、第1の加工基準線3a上の上面1a側端部の改質領域19が露出し、被加工物の下面1bには、第5の加工基準線3e上の下面1b側端部の改質領域19が露出する。
【0030】
(第2の行程)
第2の工程では、被加工物1の改質領域19をエッチング液20でエッチングする。
図4は、第2の工程の説明に用いる模式図である。図4では、被加工物1は、図1のA面で破断した断面図で表している。
具体的には、図4に示すように、被加工物1をエッチング液20に浸漬する。エッチング液20としては、例えば、フッ酸溶液HF5vol%を利用できる。そして、被加工物1の表面をエッチング液20でエッチングする。ここで、改質領域19は被加工物1のうちの他の部分よりもエッチングレートが速い。そのため、このエッチングレートの差により、被加工物1の上面1aに露出している改質領域19および下面1bに露出している改質領域19のそれぞれから、つまり、被加工物1の外面側から内部側に改質領域19のみ順次エッチングが進行する。その結果、改質領域19が形成された部分に、つまり、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む加工予定部分に空洞2が形成される。
【0031】
(本実施形態の効果)
このように、本実施形態では、レーザ光14を被加工物1の内部に集光する際に、レーザ光14が入射される被加工物1の上面1aに対してレーザ光14の光軸を傾けるようにした。それゆえ、改質領域19の長手方向を、被加工物の上面1aと垂直なz軸方向に対して傾けることができる。そして、改質領域19のz軸方向の長さを短くすることができる。そのため、例えば、被加工物1の内部に、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19からなる第1改質領域列と、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19からなる第2改質領域列とを形成した場合、第1改質領域列のx軸方向の幅と第2改質領域列のz軸方向の幅との差を低減できる。したがって、被加工物1の内部に形成される、複数の改質領域19からなる改質領域列の断面形状をより均一にすることができる。その結果、改質領域19を形成した部分に空洞2を形成した場合、x軸方向と平行な方向に延びる空洞2の幅と、z軸方向に延びる空洞2の幅とをより均一にすることができる。
【0032】
図12は、比較例の説明のための模式図である。図12(a)は比較例の第1の工程を示す模式図であり、図12(b)は比較例の第2の工程を示す模式図である。
ここで、レーザ光14の集光領域が分散する範囲は、レーザ光14進行方向よりも当該進行方向と直交する方向のほうが狭い。そのため、例えば、図12(a)(b)に示すように、被加工物1の上面1aに、被加工物1のz軸方向と平行な方向からレーザ光14を出射する方法では、被加工物1のx軸方向と平行に延びる空洞2の幅に比べ、被加工物1のz軸方向と平行に延びる空洞2の幅が狭くなってしまう。
【0033】
(応用例)
なお、第1実施形態では、収差補正レンズ群13により、レーザ光14の集光領域の長さを制御する例を示したが、他の構成も採用できる。例えば、レーザ光14のエネルギを制御することで、レーザ光14の集光領域の長さを制御する構成としてもよい。
図5は、被加工物1の上面1aからの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれに改質領域19を形成して得られる被加工物1の断面図である。この図5の被加工物1の改質領域19は、レーザ光14の集光領域の長さを制御せずに、被加工物1に上面1aと垂直な方向からレーザ光14を出射して形成したものである。図5(a)は、レーザ光14のエネルギを50μJとした場合に得られる被加工物1の断面図であり、図5(b)は、レーザ光14のエネルギを5μJとした場合に得られる被加工物1の断面図である。
【0034】
図6は、被加工物1の上面1aからの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれに改質領域19を形成した場合の各改質領域19の長さを示すグラフである。この図6の被加工物の改質領域19は、図5と同様に、レーザ光14の集光領域の長さを制御せずに、被加工物1に上面1aと垂直な方向からレーザ光14を出射して形成したものである。また、図6では、レーザ光14のエネルギを5μJ、10μJ、20μJ、および50μJとした場合それぞれの各改質領域19の長さを示すグラフを記載している。
【0035】
ここで、図5および図6に示すように、レーザ光14の集光領域の長さは、レーザ光14のエネルギが高いほど長くなる。そのため、レーザ光14のエネルギを増大することで、レーザ光14の集光領域を長くすることができる。また、レーザ光14のエネルギを低減することで、レーザ光14の集光領域を短くすることができる。これにより、被加工物1の上面1aからレーザ光14の集光位置までの距離に応じて、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となる部分のレーザ光14進行方向の長さが一定となるように、レーザ光14の集光領域の長さを適宜調整することができる。
【0036】
また、例えば、レーザ光14のエネルギを比較的低い一定値とすることで、レーザ光14の集光領域の長さを一定とする構成としてもよい。
ここで、図6に示すように、レーザ光14のエネルギが5μJ、10μJ、20μJ等の比較的低い値である場合には、レーザ光14の集光領域がレーザ光14進行方向に分散しても、分散先のエネルギ密度は改質領域19を形成可能なエネルギ密度よりも低くなる。それゆえ、被加工物1の上面1aからレーザ光14の集光位置までの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれで改質領域19の長さが一定となる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。
なお、前記第1実施形態と同様な構成等については、同一の符号を付して説明する。
本実施形態のレーザ加工方法の基本手順は、前記第1実施形態とほぼ同様である。ただし、空洞2の一部を被加工物1のy軸方向に沿って形成する点が異なっている。
【0038】
(被加工物の構成)
まず、第2実施形態のレーザ加工方法を実行することによって得られる、内部に空洞2が形成された被加工物1について説明する。
図7は、第2実施形態のレーザ加工方法で得られる被加工物1の斜視図である。
図7に示すように、第2実施形態では、被加工物1の第3の加工基準線3cは、y軸方向に沿って延在し、一端を第2の加工基準線3bの上面1a側端部の位置に有し、他端を第4の加工基準線3dの下面1c側端部の位置に有する直線となる。
【0039】
(レーザ加工装置の構成)
次に、第2実施形態のレーザ加工方法で使用するレーザ加工装置4について説明する。
図8は、第2実施形態のレーザ加工装置4の概略構成を示す概念図である。
図8に示すように、第2実施形態では、レーザ光源11のレーザ光14の出射方向は、照射機構部5のZ軸方向と平行な方向に設定する。
また、集光レンズ12は、レーザ光源11との間に回折格子21を有する。
図9は、集光レンズ12および回折格子21の構成を示す構成図である。
図10は、改質領域群22の説明に用いる模式図である。図10(a)は、レーザ光14進行方向と直交する方向から見た場合の改質領域群22の側面図であり、図10(b)は、レーザ光14の出射元から見た場合の改質領域群22の平面図である。
【0040】
図9に示すように、回折格子21は、レーザ光源11が出射するレーザ光14を複数の光束に分岐する。そして、集光レンズ12は、回折格子21が分岐した複数の光束それぞれを被加工物1の内部に集光する。これにより、一回のレーザ光14の出射で、被加工物1の内部に複数の改質領域19からなる改質領域群22を形成する。ここで、集光レンズ12は、分岐した複数の光束それぞれを被加工物1の内部に集光する際に、複数の光束それぞれの集光によって被加工物1の内部に形成される改質領域群22が、直方体状の改質領域を形成するように、複数の光束それぞれの集光領域を設定する。直方体状の改質領域の各辺は、X軸方向またはY軸方向と平行とする。また、各辺の長さは等しくする。すなわち、改質領域群22によって、上面1aと平行な面を有する立方体状の改質領域を形成する。複数の改質領域19それぞれの配置は、直方体の内部に改質領域19が隙間なく形成されるように設定する。本実施形態では、一例として、図10に示すように、複数の改質領域19がX軸方向およびY軸方向のそれぞれの方向に沿って並ぶように設定する。
また、収差補正レンズ群13は、被加工物1の内部に形成される改質領域19のZ軸方向の長さが一定となるように、集光レンズ12の収差を調整する。
【0041】
(レーザ加工方法の説明)
次に、第2実施形態のレーザ加工装置4を用いて、被加工物1の内部に、第1〜第5の加工基準線3a〜3eに沿って空洞2を形成するレーザ加工方法について説明する。
(第1の工程)
図11は、第2実施形態の第1の工程の説明に用いる模式図である。図11(a)〜図11(c)では、被加工物1は、第1、第2の加工基準線3a、3bを含む面(図7のB面)で破断した断面図で表している。図11(d)では、第3の加工基準線3cを含む面(図7のC面)で破断した断面図で表している。図11(e)、図11(f)では、第4、第5の加工基準線3d、3eを含む面(図7のD面)で破断した断面図で表している。
【0042】
具体的には、図11(a)に示すように、まず、被加工物1のz軸方向が照射機構部5のZ軸方向に向くように被加工物1を載置台7に載置する。また、被加工物1のx軸方向が照射機構部5のX軸方向に向くように被加工物1を位置決めする。これにより、第1および第5の加工基準線3a、3eが照射機構部5のZ軸方向と平行となり、第2および第4の加工基準線3b、3dが照射機構部5のX軸方向と平行となる。また、第3の加工基準線3cが照射機構部5のY軸方向と平行となる。
次に、演算部18により、X軸移動部8、Y軸移動部9およびZ軸移動部10を制御して、集光レンズ12が集光するレーザ光14の集光領域の中央部が、第1の加工基準線3aの下面1b側端部に一致するように載置台7を移動させる。そして、演算部18により、レーザ光源11を制御して、レーザ光14の出射を開始させる。これにより、第1の加工基準線3aの下面1b側端部を含む加工予定部分にレーザ光14が集光される。そして、被加工物1の内部には、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となった部分に、多光子吸収による改質領域19が形成される。
【0043】
ここで、レーザ光14は、回折格子21で複数の光束に分岐され、分岐された複数の光束それぞれは、集光レンズ12で被加工物1の内部に集光される。そして、被加工物1の内部に複数の改質領域19からなる改質領域群22が形成される。
次に、演算部18により、図11(b)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7をZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を同様に繰り返す。所定ピッチとしては、例えば、立方体状の改質領域の一辺の長さを利用できる。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の下面1b側から上面1a側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
【0044】
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。
なお、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光時には、演算部18により、収差補正レンズ群13を制御して、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となる部分のレーザ光14進行方向の長さが一定となるように、集光レンズ12の収差を適宜調整する。集光レンズ12の収差の調整は、第2〜第5の加工基準線3b〜3eにレーザ光14を集光する際にも同様に行う。
【0045】
次に、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図11(c)に示すように、X軸移動部8を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のX軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分に、被加工物1のx軸方向に沿って当該被加工物1の右面1d側から左面1c側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。これら複数の改質領域群22からなる改質領域群列のy、z軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0046】
次に、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図11(d)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の下面1b側から上面1a側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、y軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。これら複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、z軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0047】
次に、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図11(e)に示すように、Y軸移動部9を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のY軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分に、被加工物1のx軸方向に沿って当該被加工物1の右面1d側から左面1c側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。これら複数の改質領域群22からなる改質領域群列のy、z軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の長さと等しい長さとなる。
【0048】
次に、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図11(f)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第5の加工基準線3eを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第5の加工基準線3eを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の左面1c側から上面1a側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
【0049】
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。これら複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の長さと等しい長さとなる。
このように、第1の工程では、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む加工予定部分に、複数の改質領域群22からなる改質領域群列が形成される。
【0050】
(第2の行程)
第2の工程では、被加工物1の改質領域19をエッチング液20でエッチングする。これにより、改質領域19が形成された部分に、つまり、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む加工予定部分に空洞2が形成される。被加工物1の改質領域19をエッチングする方法としては、例えば、第1実施形態と同様の手順を利用できる。
【0051】
(本実施形態の効果)
このように、本実施形態では、レーザ光14を回折格子21で複数の光束に分岐し、分岐した複数の光束それぞれを被加工物1の内部に集光するようにした。そして、その際、それら複数の光束の集光によって被加工物1の内部に形成される改質領域群22が上面1aと平行な面を有する直方体状の改質領域を形成するようにした。それゆえ、一回のレーザ光14の出射で改質領域19が形成される範囲の、レーザ光14の集光位置の移動方向と直交する方向の長さを長くすることができる。そのため、例えば、被加工物1の内部に、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22からなる第1改質領域群列と、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22からなる第2改質領域群列とを形成した場合、第1改質領域群列のx、y軸方向の幅と第2改質領域群列のy、z軸方向の幅との差を低減できる。したがって、被加工物1の内部に形成される、複数の改質領域群19からなる改質領域群列の断面形状をより均一にすることができる。その結果、改質領域群22を形成した部分に空間2を形成した場合、x軸方向と平行な方向に延びる空洞2の幅と、z軸方向と平行な方向に延びる空洞2の幅とをより均一にすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1は被加工物、2は空洞、3aは加工基準線、3a〜3eは第1〜第5の加工基準線、4はレーザ加工装置、5は照射機構部、6は制御部、7は載置台、8はX軸移動部、9はY軸移動部、10はZ軸移動部、11はレーザ光源、12は集光レンズ、13は収差補正レンズ群、14はレーザ光、15は光軸、16は入力部、17は表示部、18は演算部、19は改質領域、20はエッチング液、21は回折格子
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の内部に改質領域を形成するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
この特許文献1に記載の技術では、まず、感光性ガラスの試料に、試料の外面と垂直な方向からレーザ光を出射する。そして、出射したレーザ光を試料の内部に集光し、集光したレーザ光を試料の内部で走査する。これにより、試料の内部に、レーザ光の走査方向に沿って多光子吸収による改質領域を形成する。ここで、レーザ光の走査方向としては、例えば、試料の外面と平行な方向や当該外面と垂直な方向を用いるようになっている。続いて、試料のうち改質領域を形成した部分をエッチングする。これにより、改質領域を形成した部分に空洞を形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−340579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、感光性ガラスの試料、つまり、被加工物の内部にレーザ光を集光する際に、被加工物の内部でレーザ光の集光性が低下して、レーザ光の集光領域が分散する。また、このレーザ光の集光領域が分散する範囲は、レーザ光進行方向と直交する方向よりもレーザ光進行方向のほうが広くなる。そのため、被加工物の外面と平行な方向にレーザ光を走査して得られる改質領域の幅に比べ、当該外面と垂直な方向にレーザ光を走査して得られる改質領域の幅は狭くなる。その結果、改質領域を形成した部分に空洞を形成した場合、被加工物の外面と平行な方向に延びる空洞の幅に比べ、当該外面と垂直な方向に延びる空洞の幅は狭くなる。
本発明の技術的課題は、上記のような点に着目し、被加工物の内部に形成される改質領域の断面形状をより均一にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本発明の各態様は、以下のような構成からなる。
本発明の第1の態様は、
被加工物に対して透過性を有するレーザ光を当該被加工物の内部に集光すると共に、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させることで、前記被加工物の内部に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向に沿って改質領域を順次形成するレーザ加工方法であって、前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記レーザ光が入射される前記被加工物の外面と垂直な方向に対して前記レーザ光の光軸を傾けることを特徴とする。
【0006】
このような態様によれば、改質領域の長手方向を、被加工物の外面と垂直な方向に対して傾けることができる。それゆえ、改質領域の、前記外面と垂直な方向の長さを短くすることができる。そのため、例えば、被加工物の内部に、前記外面と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質領域からなる第1改質領域列と、前記外面と平行な方向に沿って並ぶ複数の改質領域からなる第2改質領域列とを形成した場合、第1改質領域列における前記外面と平行な方向の幅と第2改質領域列における前記外面と垂直な方向の幅との差を低減できる。したがって、複数の改質領域からなる改質領域列の断面形状、つまり、被加工物の内部に形成される改質領域の断面形状をより均一にすることが可能となる。
【0007】
本発明の第2の態様は、
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記レーザ光の集光によって前記被加工物の内部に形成される改質領域における前記外面と垂直な方向の長さ、および当該改質領域における前記集光位置の移動方向の長さが互いに等しくなるように、前記被加工物の外面と垂直な方向に対して前記レーザ光の光軸を傾けることを特徴とする。
このような態様によれば、改質領域における、被加工物の外面と垂直な方向の長さと、レーザ光の集光位置の移動方向の長さとを等しくすることができる。そのため、例えば、被加工物の内部に、前記外面と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質領域からなる第1改質領域列と、前記外面と平行な方向に沿って並ぶ複数の改質領域からなる第2改質領域列とを形成した場合、第1改質領域列における前記外面と平行な方向の幅と第2改質領域列における前記外面と垂直な方向の幅とを等しくすることができる。
【0008】
本発明の第3の態様は、
被加工物に対して透過性を有するレーザ光を回折格子で複数の光束に分岐し、分岐した前記複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光すると共に、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させることで、前記被加工物の内部に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向に沿って、複数の改質領域からなる改質領域群を順次形成するレーザ加工方法であって、前記分岐した前記複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光する際に、前記複数の光束それぞれの集光によって前記被加工物の内部に形成される前記改質領域群が、前記レーザ光が入射される前記被加工物の外面と平行な面を有する直方体状の改質領域を形成するように、前記複数の光束それぞれの集光領域を設定し、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させる際に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向が前記直方体のいずれかの面の法線方向と平行となるように、前記相対位置の移動方向を設定することを特徴とする。
【0009】
このような態様によれば、一回のレーザ光の出射で改質領域が形成される範囲の、レーザ光の集光位置の移動方向と直交する方向の長さを長くすることができる。そのため、例えば、被加工物の内部に、前記外面と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質領域群からなる第1改質領域群列と、前記外面と平行な方向に沿って並ぶ複数の改質領域群からなる第2改質領域群列とを形成した場合、第1改質領域群列における前記外面と平行な方向の幅と第2改質領域群列における前記外面と垂直な方向の幅との差を低減できる。したがって、複数の改質領域からなる改質領域群列の断面形状、つまり、被加工物の内部に形成される改質領域の断面形状をより均一にすることが可能となる。
【0010】
本発明の第4の態様は、
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記改質領域群が形成する直方体状の改質領域の各辺の長さが互いに等しくなるように、前記分岐した複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光することを特徴とする。
このような態様によれば、改質領域群における、被加工物の外面と垂直な方向の長さと、当該外面と平行な方向の各辺の長さとを等しくすることができる。そのため、例えば、被加工物の内部に、前記外面と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質領域群からなる第1改質領域群列と、前記外面と平行な方向に沿って並ぶ複数の改質領域群からなる第2改質領域群列とを形成した場合、第1改質領域群列における前記外面と平行な方向の幅と第2改質領域群列における前記外面と垂直な方向の幅とを等しくすることができる。
【0011】
本発明の第5の態様は、
前記被加工物の内部に前記改質領域を形成した後に、前記被加工物における前記改質領域を形成した部分をエッチングして、前記改質領域を形成した部分に空洞を形成することを特徴とする。
このような態様によれば、被加工物のうちの改質領域を形成した部分に空洞を形成できる。そのため、被加工物の内部に、断面形状がより均一な空洞を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のレーザ加工方法で得られる被加工物1の斜視図である。
【図2】レーザ加工装置4の概略構成を示す概念図である。
【図3】第1の工程の説明に用いる模式図である。
【図4】第2の工程の説明に用いる模式図である。
【図5】被加工物1の上面1aからの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれに改質領域19を形成して得られる被加工物1の断面図である。
【図6】被加工物1の上面1aからの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれに改質領域19を形成した場合の各改質領域19の長さを示すグラフである。
【図7】第2実施形態のレーザ加工方法で得られる被加工物1の斜視図である。
【図8】第2実施形態のレーザ加工装置4の概略構成を示す概念図である。
【図9】集光レンズ12および回折格子21の構成を示す構成図である。
【図10】改質領域群22の説明に用いる模式図である。
【図11】第2実施形態の第1の工程の説明に用いる模式図である。
【図12】比較例の説明のための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態のレーザ加工方法では、まず、被加工物に対して透過性を有するレーザ光を当該被加工物の内部に集光すると共に、被加工物に対してレーザ光の集光位置を順次移動させることで、被加工物の内部に、集光位置の移動方向に沿って並ぶ複数の改質領域を形成する。その際、レーザ光が入射される被加工物の外面と垂直な方向に対してレーザ光の光軸を傾ける。続いて、改質領域を形成した部分をエッチングして、被加工物の内部に空洞を形成する。空洞としては、例えば、電極の通路や流路等を形成可能である。
【0014】
(実施形態1)
(被加工物の構成)
まず、第1実施形態のレーザ加工方法を実行することによって得られる、内部に空洞2が形成された被加工物1について説明する。
図1は、第1実施形態のレーザ加工方法で得られる被加工物1の斜視図である。
図1に示すように、被加工物1は、長方体状に形成された透明材料からなる。透明材料としては、例えば、石英やホウケイ酸ガラス等を利用できる。また、被加工物1には、図1に示すように被加工物1に正対した状態を基準に、上面1a、下面1b、左面1c、右面1d、前面1e、および背面1fが定義されている。上面1aは、図1の被加工物1の上側に位置する面である。同様に、下面1bは、被加工物1の下側に位置する面である。左面1cは、左側に位置する面である。右面1dは、右側に位置する面である。前面1eは、手前側に位置する面である。背面1fは、奥側に位置する面である。
さらに、被加工物1には、x軸方向、y軸方向およびz軸方向が定義されている。x軸方向は、被加工物1の左面1cの法線方向である。同様に、y軸方向は、被加工物1の背面1fの法線方向である。z軸方向は、被加工物1の上面1aの法線方向である。
【0015】
また、被加工物1の内部には、第1〜第5の加工基準線3a〜3eが定義されている。第1の加工基準線3aは、z軸方向に沿って延在し、一端を被加工物1の下面1bに有し、他端を被加工物1の内部に有する直線である。同様に、第2の加工基準線3bは、x軸方向に沿って延在し、一端を第1の加工基準線3aの前記他端の位置に有し、他端を被加工物1の内部に有する直線である。第3の加工基準線3cは、z軸方向に沿って延在し、一端を第2の加工基準線3bの前記他端の位置に有し、他端を被加工物1の内部に有する直線である。第4の加工基準線3dは、x軸方向に沿って延在し、一端を第3の加工基準線3cの前記他端の位置に有し、他端を被加工物1の内部に有する直線である。第5の加工基準線3eは、z軸方向に沿って延在し、一端を第4の加工基準線3dの前記他端の位置に有し、他端を被加工物1の上面1aに有する直線である。
さらに、被加工物1の内部には、空洞2が形成される。空洞2は、第1〜第5の加工基準線3a〜3eそれぞれに沿って形成される。また、空洞2は、被加工物1の上面1aおよび下面1bそれぞれに開口部を有し、それら開口部間を連通する。
【0016】
(レーザ加工装置の構成)
次に、第1実施形態のレーザ加工方法で使用するレーザ加工装置4について説明する。
図2は、レーザ加工装置4の概略構成を示す概念図である。
図2に示すように、レーザ加工装置4は、照射機構部5および制御部6を備える。
照射機構部5は、載置台7、X軸移動部8、Y軸移動部9、Z軸移動部10、レーザ光源11、集光レンズ12、および収差補正レンズ群13を備える。
載置台7は、被加工物1を載置可能な平面が上部に形成された台である。また、載置台7には、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向が定義されている。X軸方向は、載置台7上部の平面内に設定した一方向である。同様に、Y軸方向は、載置台7上部の平面内にあり且つ載置台7を上方から見た場合にX軸方向を時計回りに90°回転させた方向である。また、Z軸方向は、当該平面の法線方向である。
【0017】
X軸移動部8は、制御部6からの信号に応じて、載置台7をX軸方向に沿って移動させる。X軸移動部8としては、例えば、X軸方向に沿って並進運動を行うスライダと、スライダを駆動するサーボモータとからなるものを利用できる。また同様に、Y軸移動部9は、制御部6からの信号に応じて、載置台7をY軸方向に沿って移動させる。Z軸移動部10は、制御部6からの信号に応じて、載置台7をZ軸方向に沿って移動させる。
レーザ光源11は、載置台7の上方に配される。そして、レーザ光源11は、制御部6からの信号に応じて、被加工物1に対して透過性を有するレーザ光14を載置台7上部の平面に向けて出射する。レーザ光14出射方向は、X-Z平面と平行な面内にあり且つZ軸方向に対して傾いた方向に設定する。Z軸方向に対して傾いた方向としては、例えば、Z軸方向に対して0°より大きく且つ90°未満の範囲で傾いた方向が挙げられる。本実施形態では、一例として、Z軸方向に対して45°傾いた方向に設定する。
【0018】
なお、レーザ光源11としては、例えば、チタンサファイアを固体光源とし、チタンサファイアが発生するフェムト秒レーザ光を出射するものを利用できる。
集光レンズ12は、レーザ光源11と載置台7との間に配される。そして、集光レンズ12は、レーザ光源11から出射されるレーザ光14を集光する。集光レンズ12の光軸は、レーザ光源11が出射するレーザ光14との光軸と一致するように設定する。
収差補正レンズ群13は、制御部6からの信号に応じて、集光レンズ12の収差を調整する。そして、収差補正レンズ群13は、集光レンズ12で集光されたレーザ光14の集光領域の長さを制御する。収差補正レンズ群13としては、例えば、集光レンズ12の鏡筒に移動可能に収容された複数枚のレンズからなるものを利用できる。
制御部6は、入力部16、表示部17、および演算部18を備える。
【0019】
入力部16は、レーザ加工の際に用いる、X軸移動部8、Y軸移動部9、Z軸移動部10、レーザ光源11、および収差補正レンズ群13に出力する信号のデータを利用者に入力させる。入力部16としては、例えば、キーボードやマウスを利用できる。
表示部17は、レーザ加工の際の各種情報を表示する。表示部17としては、例えば、液晶ディスプレイやCRT(cathode ray tube)ディスプレイを利用できる。
演算部18は、入力部16から入力されたデータを演算処理し、その処理結果をもとに、X軸移動部8、Y軸移動部9、Z軸移動部10、レーザ光源11、および収差補正レンズ群13に信号を出力する。演算部18としては、例えば、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置、メモリ等から構成されたコンピュータを利用できる。
【0020】
(レーザ加工方法の説明)
次に、前述したレーザ加工装置4を用いて、被加工物1の内部に、設定した第1〜第5の加工基準線3a〜3eに沿って空洞2を形成するレーザ加工方法について説明する。
レーザ加工方法は、以下の第1および第2の工程からなる。
【0021】
(第1の工程)
第1の工程では、被加工物1の内部に、設定した第1〜第5の加工基準線3a〜3eに沿って多光子吸収による改質領域19を形成する。
図3は、第1の工程の説明に用いる模式図である。図3では、被加工物1は、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む面(図1のA面)で破断した断面図で表している。
具体的には、図3(a)に示すように、まず、被加工物1のz軸方向が照射機構部5のZ軸方向に向くように被加工物1を載置台7に載置する。また、被加工物1のx軸方向が照射機構部5のX軸方向に向くように被加工物1を位置決めする。これにより、第1、第3および第5の加工基準線3a、3c、3eが照射機構部5のZ軸方向と平行となり、第2および第4の加工基準線3b、3dが照射機構部5のX軸方向と平行となる。
【0022】
これによって、第1〜第5の加工基準線3a〜3eそれぞれは、集光レンズ12が集光するレーザ光14の進行方向と傾いた方向となる。
次に、演算部18により、X軸移動部8、Y軸移動部9およびZ軸移動部10を制御して、集光レンズ12が集光するレーザ光14の集光領域の中央部が、第1の加工基準線3aの下面1b側端部に一致するように載置台7を移動させる。そして、演算部18により、レーザ光源11を制御して、レーザ光14の出射を開始させる。これにより、第1の加工基準線3aの下面1b側端部を含む加工予定部分にレーザ光14が集光される。そして、被加工物1の内部には、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となった部分に、多光子吸収による改質領域19が形成される。
【0023】
ここで、レーザ光14出射方向は、Z軸方向に対して45°傾いた方向に設定されている。そのため、レーザ光14の集光によって被加工物1の内部に形成される改質領域19は、第1の加工基準線3aに対して長手方向が45°傾いた状態となる。それゆえ、改質領域19のz軸方向の長さとx軸方向の長さとが等しくなる。
次に、演算部18により、図3(b)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7をZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を同様に繰り返す。所定ピッチとしては、例えば、改質領域19のレーザ光14進行方向と直交する方向の幅を利用できる。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の下面1b側から上面1a側へ複数の改質領域19が順次形成される。
【0024】
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。
なお、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光時には、演算部18により、収差補正レンズ群13を制御して、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となる部分のレーザ光14進行方向の長さが一定となるように、集光レンズ12の収差を適宜調整する。集光レンズ12の収差の調整は、第2〜第5の加工基準線3b〜3eにレーザ光14を集光する際にも同様に行う。
【0025】
次に、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図3(c)に示すように、X軸移動部8を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のX軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分に、被加工物1のx軸方向に沿って当該被加工物1の右面1d側から左面1c側へ複数の改質領域19が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。これら複数の改質領域19からなる改質領域列のz軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0026】
次に、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図3(d)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の下面1b側から上面1a側へ複数の改質領域19が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。これら複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0027】
次に、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図3(e)に示すように、X軸移動部8を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のX軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分に、被加工物1のx軸方向に沿って当該被加工物1の右面1d側から左面1c側へ複数の改質領域19が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。これら複数の改質領域19からなる改質領域列のz軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0028】
次に、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図3(f)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第5の加工基準線3eを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第5の加工基準線3eを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の左面1c側から上面1a側へ複数の改質領域19が順次形成される。
【0029】
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19が形成される。これら複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域19からなる改質領域列のx軸方向の幅と等しい長さとなる。
このように、第1の工程では、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む加工予定部分に複数の改質領域19が順次形成される。これにより、被加工物1の上面1aには、第1の加工基準線3a上の上面1a側端部の改質領域19が露出し、被加工物の下面1bには、第5の加工基準線3e上の下面1b側端部の改質領域19が露出する。
【0030】
(第2の行程)
第2の工程では、被加工物1の改質領域19をエッチング液20でエッチングする。
図4は、第2の工程の説明に用いる模式図である。図4では、被加工物1は、図1のA面で破断した断面図で表している。
具体的には、図4に示すように、被加工物1をエッチング液20に浸漬する。エッチング液20としては、例えば、フッ酸溶液HF5vol%を利用できる。そして、被加工物1の表面をエッチング液20でエッチングする。ここで、改質領域19は被加工物1のうちの他の部分よりもエッチングレートが速い。そのため、このエッチングレートの差により、被加工物1の上面1aに露出している改質領域19および下面1bに露出している改質領域19のそれぞれから、つまり、被加工物1の外面側から内部側に改質領域19のみ順次エッチングが進行する。その結果、改質領域19が形成された部分に、つまり、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む加工予定部分に空洞2が形成される。
【0031】
(本実施形態の効果)
このように、本実施形態では、レーザ光14を被加工物1の内部に集光する際に、レーザ光14が入射される被加工物1の上面1aに対してレーザ光14の光軸を傾けるようにした。それゆえ、改質領域19の長手方向を、被加工物の上面1aと垂直なz軸方向に対して傾けることができる。そして、改質領域19のz軸方向の長さを短くすることができる。そのため、例えば、被加工物1の内部に、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19からなる第1改質領域列と、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域19からなる第2改質領域列とを形成した場合、第1改質領域列のx軸方向の幅と第2改質領域列のz軸方向の幅との差を低減できる。したがって、被加工物1の内部に形成される、複数の改質領域19からなる改質領域列の断面形状をより均一にすることができる。その結果、改質領域19を形成した部分に空洞2を形成した場合、x軸方向と平行な方向に延びる空洞2の幅と、z軸方向に延びる空洞2の幅とをより均一にすることができる。
【0032】
図12は、比較例の説明のための模式図である。図12(a)は比較例の第1の工程を示す模式図であり、図12(b)は比較例の第2の工程を示す模式図である。
ここで、レーザ光14の集光領域が分散する範囲は、レーザ光14進行方向よりも当該進行方向と直交する方向のほうが狭い。そのため、例えば、図12(a)(b)に示すように、被加工物1の上面1aに、被加工物1のz軸方向と平行な方向からレーザ光14を出射する方法では、被加工物1のx軸方向と平行に延びる空洞2の幅に比べ、被加工物1のz軸方向と平行に延びる空洞2の幅が狭くなってしまう。
【0033】
(応用例)
なお、第1実施形態では、収差補正レンズ群13により、レーザ光14の集光領域の長さを制御する例を示したが、他の構成も採用できる。例えば、レーザ光14のエネルギを制御することで、レーザ光14の集光領域の長さを制御する構成としてもよい。
図5は、被加工物1の上面1aからの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれに改質領域19を形成して得られる被加工物1の断面図である。この図5の被加工物1の改質領域19は、レーザ光14の集光領域の長さを制御せずに、被加工物1に上面1aと垂直な方向からレーザ光14を出射して形成したものである。図5(a)は、レーザ光14のエネルギを50μJとした場合に得られる被加工物1の断面図であり、図5(b)は、レーザ光14のエネルギを5μJとした場合に得られる被加工物1の断面図である。
【0034】
図6は、被加工物1の上面1aからの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれに改質領域19を形成した場合の各改質領域19の長さを示すグラフである。この図6の被加工物の改質領域19は、図5と同様に、レーザ光14の集光領域の長さを制御せずに、被加工物1に上面1aと垂直な方向からレーザ光14を出射して形成したものである。また、図6では、レーザ光14のエネルギを5μJ、10μJ、20μJ、および50μJとした場合それぞれの各改質領域19の長さを示すグラフを記載している。
【0035】
ここで、図5および図6に示すように、レーザ光14の集光領域の長さは、レーザ光14のエネルギが高いほど長くなる。そのため、レーザ光14のエネルギを増大することで、レーザ光14の集光領域を長くすることができる。また、レーザ光14のエネルギを低減することで、レーザ光14の集光領域を短くすることができる。これにより、被加工物1の上面1aからレーザ光14の集光位置までの距離に応じて、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となる部分のレーザ光14進行方向の長さが一定となるように、レーザ光14の集光領域の長さを適宜調整することができる。
【0036】
また、例えば、レーザ光14のエネルギを比較的低い一定値とすることで、レーザ光14の集光領域の長さを一定とする構成としてもよい。
ここで、図6に示すように、レーザ光14のエネルギが5μJ、10μJ、20μJ等の比較的低い値である場合には、レーザ光14の集光領域がレーザ光14進行方向に分散しても、分散先のエネルギ密度は改質領域19を形成可能なエネルギ密度よりも低くなる。それゆえ、被加工物1の上面1aからレーザ光14の集光位置までの距離が互いに異なる、複数の深さ位置それぞれで改質領域19の長さが一定となる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。
なお、前記第1実施形態と同様な構成等については、同一の符号を付して説明する。
本実施形態のレーザ加工方法の基本手順は、前記第1実施形態とほぼ同様である。ただし、空洞2の一部を被加工物1のy軸方向に沿って形成する点が異なっている。
【0038】
(被加工物の構成)
まず、第2実施形態のレーザ加工方法を実行することによって得られる、内部に空洞2が形成された被加工物1について説明する。
図7は、第2実施形態のレーザ加工方法で得られる被加工物1の斜視図である。
図7に示すように、第2実施形態では、被加工物1の第3の加工基準線3cは、y軸方向に沿って延在し、一端を第2の加工基準線3bの上面1a側端部の位置に有し、他端を第4の加工基準線3dの下面1c側端部の位置に有する直線となる。
【0039】
(レーザ加工装置の構成)
次に、第2実施形態のレーザ加工方法で使用するレーザ加工装置4について説明する。
図8は、第2実施形態のレーザ加工装置4の概略構成を示す概念図である。
図8に示すように、第2実施形態では、レーザ光源11のレーザ光14の出射方向は、照射機構部5のZ軸方向と平行な方向に設定する。
また、集光レンズ12は、レーザ光源11との間に回折格子21を有する。
図9は、集光レンズ12および回折格子21の構成を示す構成図である。
図10は、改質領域群22の説明に用いる模式図である。図10(a)は、レーザ光14進行方向と直交する方向から見た場合の改質領域群22の側面図であり、図10(b)は、レーザ光14の出射元から見た場合の改質領域群22の平面図である。
【0040】
図9に示すように、回折格子21は、レーザ光源11が出射するレーザ光14を複数の光束に分岐する。そして、集光レンズ12は、回折格子21が分岐した複数の光束それぞれを被加工物1の内部に集光する。これにより、一回のレーザ光14の出射で、被加工物1の内部に複数の改質領域19からなる改質領域群22を形成する。ここで、集光レンズ12は、分岐した複数の光束それぞれを被加工物1の内部に集光する際に、複数の光束それぞれの集光によって被加工物1の内部に形成される改質領域群22が、直方体状の改質領域を形成するように、複数の光束それぞれの集光領域を設定する。直方体状の改質領域の各辺は、X軸方向またはY軸方向と平行とする。また、各辺の長さは等しくする。すなわち、改質領域群22によって、上面1aと平行な面を有する立方体状の改質領域を形成する。複数の改質領域19それぞれの配置は、直方体の内部に改質領域19が隙間なく形成されるように設定する。本実施形態では、一例として、図10に示すように、複数の改質領域19がX軸方向およびY軸方向のそれぞれの方向に沿って並ぶように設定する。
また、収差補正レンズ群13は、被加工物1の内部に形成される改質領域19のZ軸方向の長さが一定となるように、集光レンズ12の収差を調整する。
【0041】
(レーザ加工方法の説明)
次に、第2実施形態のレーザ加工装置4を用いて、被加工物1の内部に、第1〜第5の加工基準線3a〜3eに沿って空洞2を形成するレーザ加工方法について説明する。
(第1の工程)
図11は、第2実施形態の第1の工程の説明に用いる模式図である。図11(a)〜図11(c)では、被加工物1は、第1、第2の加工基準線3a、3bを含む面(図7のB面)で破断した断面図で表している。図11(d)では、第3の加工基準線3cを含む面(図7のC面)で破断した断面図で表している。図11(e)、図11(f)では、第4、第5の加工基準線3d、3eを含む面(図7のD面)で破断した断面図で表している。
【0042】
具体的には、図11(a)に示すように、まず、被加工物1のz軸方向が照射機構部5のZ軸方向に向くように被加工物1を載置台7に載置する。また、被加工物1のx軸方向が照射機構部5のX軸方向に向くように被加工物1を位置決めする。これにより、第1および第5の加工基準線3a、3eが照射機構部5のZ軸方向と平行となり、第2および第4の加工基準線3b、3dが照射機構部5のX軸方向と平行となる。また、第3の加工基準線3cが照射機構部5のY軸方向と平行となる。
次に、演算部18により、X軸移動部8、Y軸移動部9およびZ軸移動部10を制御して、集光レンズ12が集光するレーザ光14の集光領域の中央部が、第1の加工基準線3aの下面1b側端部に一致するように載置台7を移動させる。そして、演算部18により、レーザ光源11を制御して、レーザ光14の出射を開始させる。これにより、第1の加工基準線3aの下面1b側端部を含む加工予定部分にレーザ光14が集光される。そして、被加工物1の内部には、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となった部分に、多光子吸収による改質領域19が形成される。
【0043】
ここで、レーザ光14は、回折格子21で複数の光束に分岐され、分岐された複数の光束それぞれは、集光レンズ12で被加工物1の内部に集光される。そして、被加工物1の内部に複数の改質領域19からなる改質領域群22が形成される。
次に、演算部18により、図11(b)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7をZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を同様に繰り返す。所定ピッチとしては、例えば、立方体状の改質領域の一辺の長さを利用できる。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の下面1b側から上面1a側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
【0044】
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。
なお、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光時には、演算部18により、収差補正レンズ群13を制御して、レーザ光14の集光によって改質領域19を形成可能なエネルギ密度となる部分のレーザ光14進行方向の長さが一定となるように、集光レンズ12の収差を適宜調整する。集光レンズ12の収差の調整は、第2〜第5の加工基準線3b〜3eにレーザ光14を集光する際にも同様に行う。
【0045】
次に、第1の加工基準線3aを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図11(c)に示すように、X軸移動部8を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のX軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分に、被加工物1のx軸方向に沿って当該被加工物1の右面1d側から左面1c側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。これら複数の改質領域群22からなる改質領域群列のy、z軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0046】
次に、第2の加工基準線3bを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図11(d)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の下面1b側から上面1a側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、y軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。これら複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、z軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の幅と等しい長さとなる。
【0047】
次に、第3の加工基準線3cを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図11(e)に示すように、Y軸移動部9を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のY軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分に、被加工物1のx軸方向に沿って当該被加工物1の右面1d側から左面1c側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。これら複数の改質領域群22からなる改質領域群列のy、z軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の長さと等しい長さとなる。
【0048】
次に、第4の加工基準線3dを含む加工予定部分への改質領域19の形成が終了すると、演算部18により、図11(f)に示すように、Z軸移動部10を制御して、集光レンズ12に対して載置台7を照射機構部5のZ軸方向と反対方向に所定ピッチずつ相対移動させながら、第5の加工基準線3eを含む加工予定部分へのレーザ光14の集光を繰り返す。これにより、被加工物1とレーザ光14の集光位置との相対位置が順次移動され、第5の加工基準線3eを含む加工予定部分に、被加工物1のz軸方向に沿って当該被加工物1の左面1c側から上面1a側へ複数の改質領域群22が順次形成される。
【0049】
これによって、被加工物1の内部に、被加工物1に対する集光位置の相対的な移動方向、つまり、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22が形成される。これら複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の幅は、第1の加工基準線3a上の複数の改質領域群22からなる改質領域群列のx、y軸方向の長さと等しい長さとなる。
このように、第1の工程では、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む加工予定部分に、複数の改質領域群22からなる改質領域群列が形成される。
【0050】
(第2の行程)
第2の工程では、被加工物1の改質領域19をエッチング液20でエッチングする。これにより、改質領域19が形成された部分に、つまり、第1〜第5の加工基準線3a〜3eを含む加工予定部分に空洞2が形成される。被加工物1の改質領域19をエッチングする方法としては、例えば、第1実施形態と同様の手順を利用できる。
【0051】
(本実施形態の効果)
このように、本実施形態では、レーザ光14を回折格子21で複数の光束に分岐し、分岐した複数の光束それぞれを被加工物1の内部に集光するようにした。そして、その際、それら複数の光束の集光によって被加工物1の内部に形成される改質領域群22が上面1aと平行な面を有する直方体状の改質領域を形成するようにした。それゆえ、一回のレーザ光14の出射で改質領域19が形成される範囲の、レーザ光14の集光位置の移動方向と直交する方向の長さを長くすることができる。そのため、例えば、被加工物1の内部に、z軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22からなる第1改質領域群列と、x軸方向に沿って並ぶ複数の改質領域群22からなる第2改質領域群列とを形成した場合、第1改質領域群列のx、y軸方向の幅と第2改質領域群列のy、z軸方向の幅との差を低減できる。したがって、被加工物1の内部に形成される、複数の改質領域群19からなる改質領域群列の断面形状をより均一にすることができる。その結果、改質領域群22を形成した部分に空間2を形成した場合、x軸方向と平行な方向に延びる空洞2の幅と、z軸方向と平行な方向に延びる空洞2の幅とをより均一にすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1は被加工物、2は空洞、3aは加工基準線、3a〜3eは第1〜第5の加工基準線、4はレーザ加工装置、5は照射機構部、6は制御部、7は載置台、8はX軸移動部、9はY軸移動部、10はZ軸移動部、11はレーザ光源、12は集光レンズ、13は収差補正レンズ群、14はレーザ光、15は光軸、16は入力部、17は表示部、18は演算部、19は改質領域、20はエッチング液、21は回折格子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対して透過性を有するレーザ光を当該被加工物の内部に集光すると共に、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させることで、前記被加工物の内部に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向に沿って改質領域を順次形成するレーザ加工方法であって、
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記レーザ光が入射される前記被加工物の外面と垂直な方向に対して前記レーザ光の光軸を傾けることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記レーザ光の集光によって前記被加工物の内部に形成される改質領域における前記外面と垂直な方向の長さ、および当該改質領域における前記集光位置の移動方向の長さが互いに等しくなるように、前記被加工物の外面と垂直な方向に対して前記レーザ光の光軸を傾けることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
被加工物に対して透過性を有するレーザ光を回折格子で複数の光束に分岐し、分岐した前記複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光すると共に、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させることで、前記被加工物の内部に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向に沿って、複数の改質領域からなる改質領域群を順次形成するレーザ加工方法であって、
前記分岐した前記複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光する際に、前記複数の光束それぞれの集光によって前記被加工物の内部に形成される前記改質領域群が、前記レーザ光が入射される前記被加工物の外面と平行な面を有する直方体状の改質領域を形成するように、前記複数の光束それぞれの集光領域を設定し、
前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させる際に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向が前記直方体のいずれかの面の法線方向と平行となるように、前記相対位置の移動方向を設定することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記改質領域群が形成する直方体状の改質領域の各辺の長さが互いに等しくなるように、前記分岐した複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光することを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記被加工物の内部に前記改質領域を形成した後に、前記被加工物における前記改質領域を形成した部分をエッチングして、前記改質領域を形成した部分に空洞を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項1】
被加工物に対して透過性を有するレーザ光を当該被加工物の内部に集光すると共に、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させることで、前記被加工物の内部に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向に沿って改質領域を順次形成するレーザ加工方法であって、
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記レーザ光が入射される前記被加工物の外面と垂直な方向に対して前記レーザ光の光軸を傾けることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記レーザ光の集光によって前記被加工物の内部に形成される改質領域における前記外面と垂直な方向の長さ、および当該改質領域における前記集光位置の移動方向の長さが互いに等しくなるように、前記被加工物の外面と垂直な方向に対して前記レーザ光の光軸を傾けることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
被加工物に対して透過性を有するレーザ光を回折格子で複数の光束に分岐し、分岐した前記複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光すると共に、前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させることで、前記被加工物の内部に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向に沿って、複数の改質領域からなる改質領域群を順次形成するレーザ加工方法であって、
前記分岐した前記複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光する際に、前記複数の光束それぞれの集光によって前記被加工物の内部に形成される前記改質領域群が、前記レーザ光が入射される前記被加工物の外面と平行な面を有する直方体状の改質領域を形成するように、前記複数の光束それぞれの集光領域を設定し、
前記被加工物と前記レーザ光の集光位置との相対位置を順次移動させる際に、前記被加工物に対する前記集光位置の相対的な移動方向が前記直方体のいずれかの面の法線方向と平行となるように、前記相対位置の移動方向を設定することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する際に、前記改質領域群が形成する直方体状の改質領域の各辺の長さが互いに等しくなるように、前記分岐した複数の光束それぞれを前記被加工物の内部に集光することを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記被加工物の内部に前記改質領域を形成した後に、前記被加工物における前記改質領域を形成した部分をエッチングして、前記改質領域を形成した部分に空洞を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−221286(P2010−221286A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73822(P2009−73822)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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