説明

レーザ加工機

【課題】スケジュール運転中において実行できないスケジュールがあった場合に、当該スケジュールを後回しにして、それ以降の実行可能なスケジュールを実行した後で、再度当該スケジュールの実行を試みるレーザ加工機を提供する。
【解決手段】ワークWを支持する複数のパレットPを多段状に収納するストッカ1と、パレットPを載置してワークWにレーザ加工を施すためのパレット加工部41を有する加工ステーション4とを備え、記憶装置に記憶されたスケジュールリストに従って、前記ストッカ1からパレットPを一つずつ取り出し、前記加工ステーション4に搬送してレーザ加工を行うレーザ加工機であって、実行しようとするスケジュールで使用予定のパレットPに対して加工を行うことができるか否かを確認するチェック手段と、できない場合に前記スケジュールリストの実行順番からそのスケジュールを後回しにするスワップ手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットを収納するストッカを備え、定められたスケジュールに従って、ストッカからパレットを一つずつ取り出し、レーザ加工を行うレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の加工機において、複数のワークをストックしておき、定められたスケジュールに従って連続的に加工を行うスケジュール運転が行われている。このような加工機において、ワークの状態が不適切であったり、加工中に異常が発生したりして加工を行うことができなくなると、その時点でスケジュール運転が中止されていた。その場合、操作者が不適切な状態を復旧させる必要があるが、夜間など無人の場合には復旧させることができず、それ以降の加工が行われないので生産性が低下してしまうことが問題であった。そこで、特許文献1および2において、スケジュール運転中に異常が発生した場合には、そのスケジュールをスキップして次のスケジュールを実行する加工機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−258811号公報
【特許文献2】実開平4−67945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2の発明は、スキップしたスケジュールを残して運転を終了するものであるから、操作者が即座に不適切な状態を復旧させることができる場合であっても、一連のスケジュール運転の中で残ったスケジュールを実行させることはできず、スケジュール運転終了後に改めて残ったスケジュールについて実行させる必要があり、手間がかかっていた。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、スケジュール運転中において実行できないスケジュールがあった場合に、当該スケジュールを後回しにして、それ以降の実行可能なスケジュールを実行した後で、再度当該スケジュールの実行を試みるレーザ加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1の発明は、ワークを支持する複数のパレットを多段状に収納するストッカと、パレットを載置してワークにレーザ加工を施すためのパレット加工部を有する加工ステーションとを備え、記憶装置に記憶されたスケジュールリストに従って、前記ストッカからパレットを一つずつ取り出し、前記加工ステーションに搬送してレーザ加工を行うレーザ加工機であって、実行しようとするスケジュールで使用予定のパレットに対して加工を行うことができるか否かを確認するチェック手段と、できない場合に前記スケジュールリストの実行順番からそのスケジュールを後回しにするスワップ手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項2の発明は、前記スケジュールリストが、一行に一つのスケジュールを記載したもので、スケジュールの実行順を示すスケジュール番号に対して、対応する加工プログラムのプログラム番号と、加工対象となるパレットのパレット番号と、そのパレットに対して加工を行うことができるか否かの状態とを含むスケジュールデータが割り当てられており、実行しようとするスケジュール番号において、まず前記チェック手段がそのスケジュールデータを確認し、パレットが加工不可能な状態であれば、前記スワップ手段が以降のスケジュール番号に記載されたスケジュールデータをスケジュール順に確認し、最初に発見したパレット状態が加工可能なスケジュールデータを前記実行しようとするスケジュール番号の行に挿入するとともに、前記実行しようとするスケジュール番号の行の元のパレット状態が加工不可能なスケジュールデータからスケジュール順に連続するパレット状態が加工不可能なスケジュールデータを、前記実行しようとするスケジュール番号から次のスケジュール番号へ一行ずつ繰り下げることを特徴とする。
【0008】
本発明のうち請求項3の発明は、前記加工ステーションが、パレットに支持されたワークとは別のワークを載置してレーザ加工を施すための加工定盤を有し、前記パレット加工部に載置されたパレットのワークと、前記加工定盤に載置されたワークとを一連のスケジュールで加工するものであって、前記スケジュールリストが、一行に一つのスケジュールを記載したもので、スケジュールの実行順を示すスケジュール番号に対して、対応する加工プログラムのプログラム番号と、加工対象のパレット番号と、そのパレットに対して加工を行うことができるか否かの状態とを含むスケジュールデータが割り当てられており、パレットのワークを加工するスケジュールの場合、前記パレット番号として、使用されるパレットのパレット番号が割り当てられ、前記加工定盤のワークを加工するスケジュールの場合、前記パレット番号として、特定のパレット番号が割り当てられ、実行しようとするスケジュール番号において、まず前記チェック手段がそのスケジュールデータを確認し、パレットが加工不可能な状態であれば、前記スワップ手段が以降のスケジュール番号に記載されたスケジュールデータをスケジュール順に確認し、最初に発見したパレット状態が加工可能なスケジュールデータを前記実行しようとするスケジュール番号の行に挿入するとともに、前記実行しようとするスケジュール番号の行の元のパレット状態が加工不可能なスケジュールデータからスケジュール順に連続するパレット状態が加工不可能なスケジュールデータを、前記実行しようとするスケジュール番号から次のスケジュール番号へ一行ずつ繰り下げるようにし、前記チェック手段は、前記特定のパレット番号に対してはパレットが加工可能な状態であるとして認識することを特徴とする。ここで、加工定盤のワークを加工するスケジュールにおいて、パレット番号として、特定のパレット番号を割り当てるとは、例えば、パレットが十枚存在し、それらに“1”〜“10”までのパレット番号が割り当てられているときに、加工定盤の加工に対してパレットが存在しない“0”や“11”などの数字を割り当てることを示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1および2の発明によれば、レーザ加工機のスケジュール運転中において、ワークの状態が不適切であるなどして実行できないスケジュールがあった場合に、当該スケジュールを後回しにして、それ以降の実行可能なスケジュールを実行した後で、再度当該スケジュールの実行を試みる。よって、無人運転中であれば、実行できないスケジュールを残して実行可能なスケジュールをすべて処理できるので、生産性が向上する。さらに操作者がいる場合には、実行できないスケジュールが後回しにされ、それ以降のスケジュールが実行されている間に復旧作業を行い、再度当該スケジュールが実行されるので、一連のスケジュール運転の中ですべてのスケジュールを実行させることができ、手間がかからない。
【0010】
本発明のうち請求項3の発明によれば、ストッカから取り出したパレットをパレット加工部に載置してパレットに支持されたワークを加工する場合と、別途加工定盤に載置されたワークを加工する場合の二種類の加工があっても、加工定盤を使用する加工に対して特定のパレット番号を割り当てることで、一つのスケジュールリストにより各スケジュールの実行および後回しの処理を行うことができる。すなわち、加工定盤が存在せずパレットの加工のみを行う加工機と同じ方法で制御を行うことができ、加工定盤の有無によらず制御系を共通化できるので、操作の簡略化やコストダウンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】レーザ加工機の第一実施形態の動作前処理のフロー図。
【図2】第一実施形態のスケジュールスワップ処理のフロー図。
【図3】第一実施形態のスケジュールリストの説明図。
【図4】第一実施形態の斜視図。
【図5】レーザ加工機の第二実施形態の動作前処理のフロー図。
【図6】第二実施形態のスケジュールスワップ処理のフロー図。
【図7】第二実施形態のスケジュールリストの説明図。
【図8】第二実施形態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のレーザ加工機の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。図4に示すのは、本発明のレーザ加工機の第一実施形態の斜視図である。なお、以下の第一実施形態の説明において、前後左右とは図4中の表示に基づく。第一実施形態は、ストッカ1と、搬送ステーション2と、入出庫ステーション3と、加工ステーション4とを備える。ストッカ1は、箱型で右側面が開口しており、ワークWを支持するパレットPを多段状に収納するもので、リフタ11を備えている。リフタ11は、一つのパレットPを選択して取り出し、搬送ステーション2に載置し、また逆に搬送ステーション2に載置されたパレットPを把持してストッカ1に収納する。搬送ステーション2は、ストッカ1の右側(開口部側)に設置されており、上部に設けられたコンベア21によって、パレットPを前後に搬送する。入出庫ステーション3は、搬送ステーション2の後側に設置されており、上部にコンベア31を備える。加工ステーション4は、搬送ステーション2の前側に設置されており、テーブル状のパレット加工部41と、加工機本体42とを備え、加工機本体42は、パレット加工部41を左右に跨いで設けられたフレーム43と、フレーム43の上部に設けられた加工ヘッド44とを備える。パレット加工部41は前後に移動可能で、加工ヘッド44は左右に移動可能であり、加工ヘッド44から下向きにレーザ光が照射され、パレット加工部41上のワークWを加工する。また、この加工機は制御装置および記憶装置(図示省略)を有しており、制御装置は記憶装置に記憶されたスケジュールリストおよび加工プログラムを読み込み、各機器に対して動作命令信号を発信して加工を実行させる。
【0013】
このように構成されたレーザ加工機においては、ワークWを支持した複数のパレットPをストッカ1に収納しておき、このパレットPがリフタ11によって一つずつ取り出されて搬送ステーション2に載置され、パレットPが搬送ステーション2から加工ステーション4のパレット加工部41へと搬送されて、パレットPに支持されたワークWに対して加工機本体42によりレーザ加工が施される。そして、加工済みのワークWを支持するパレットPは、搬送ステーション2を経てリフタ11によりストッカ1へ戻される。また、操作者がパレットP上のワークWの脱着や、その他パレットPに対して作業を行う場合(以下、このような場合を「手動介入」という)には、パレットPが搬送ステーション2から入出庫ステーション3へと搬送され、そこで作業が行われた後、パレットPは搬送ステーション2を経てストッカ1または加工ステーション4へと搬送される。このような一つのパレットPの処理を一つのスケジュールとして、複数のスケジュールが連続して実行される。
【0014】
以上の動作は、記憶装置に記憶されたスケジュールリストに従って行われるものである。より詳しくは、スケジュールリストは一行に一つのスケジュールを記載したもので、スケジュールの実行順を示すスケジュール番号に対して、対応する加工プログラムのプログラム番号と、加工対象となるパレットのパレット番号と、そのパレットに対して加工を行うことができるか否かの状態とを含むスケジュールデータが割り当てられており、制御装置がスケジュールリストを読み込み、実行しようとするスケジュールに割り当てられた番号のパレットの状態を確認後、問題なければストッカからの取り出しおよび搬送を各機器に命令し、さらに当該スケジュール番号に対応する加工プログラムを読み込んで、加工機本体に加工させ、加工終了後、パレットのストッカまでの搬送を各機器に命令する。
【0015】
そして、本発明のレーザ加工機は、上記の一連の動作において、次に実行する予定のスケジュールが実行できない場合には、そのスケジュールを後回しにする(スケジュールスワップ)ものであり、その際の処理の流れについて説明する。なお、スケジュールが実行できない場合とは、加工予定のパレットに支持されたワークが、加工前の素材ではなく加工済みの製品または加工中に異常が生じたNG品である場合、および次に加工を行う予定のパレットが手動介入中(入出庫ステーションで作業中)である場合などがある。
【0016】
図1に示すのは、あるスケジュールの開始から、実際に各機器を動作させる直前までの、制御装置が行う処理(動作前処理)を示すフロー図である。処理開始後、まず初期処理としてデータを初期化し、次いで制御装置が記憶装置に記憶されたスケジュールリストを読み込む。そしてそこに記載された、次に実行する予定のスケジュールに割り当てられたスケジュールデータ(プログラム番号、パレット番号およびそのパレットの状態(「素材」、「製品」、「NG品」のいずれか))ならびに各機器の状態から、チェック手段が、スケジュールスワップを行うか否かのチェックを行う。このチェックの内容は、(1)スケジュールスワップ機能が有効であること(操作者が予め有効または無効を選択できる)、(2)次に加工を行うパレットが加工ステーションに未搬入であること、(3)手動介入中であることまたはパレットに支持されたワークが素材ではないこと、の三点であり、すべての条件を満たす場合、チェック手段はスケジュールスワップを行うと判断する。なお、「パレットに支持されたワークが素材であること」は、パレットにワークを取り付ける操作者が、取付完了後にその旨を制御装置に対して入力し、それがスケジュールリストに記載されるものであり、「パレットに支持されたワークが製品であること」および「パレットに支持されたワークがNG品であること」は、加工の記録がスケジュールリストに記載されるものである。
【0017】
上記の三条件を満たし、スケジュールスワップを行う場合、スワップ手段が図2のフロー図に示す処理を行う。すなわち、まず実行しようとするスケジュール(実行スケジュール)のスケジュール番号(S_No.)をセットする。そしてこれに対して1を加え、このスケジュール番号(実行スケジュールに対する次スケジュールの番号)がスケジュールリストの最終行のスケジュール番号を超えている場合、およびこのスケジュール番号に対応する加工プログラムが指定されていない場合、「NG」の返値「1」をセットする。さらに、このスケジュール番号に割り当てられたパレット番号のパレットの状態が素材である場合には、加工可能であるとして「OK」の返値「0」をセットし、素材以外である場合には、さらにスケジュール番号に1を加えて上記処理を繰り返す。「0」または「1」の返値がセットされると次の処理に進み、返値が「0」である場合には、そのときのスケジュール番号のスケジュールデータを元の実行しようとするスケジュール番号の行に挿入し、実行しようとするスケジュール番号の行の元のパレット状態が加工不可能なスケジュールデータからスケジュール順に連続するパレット状態が加工不可能なスケジュールデータを、実行しようとするスケジュール番号から次のスケジュール番号へ一行ずつ繰り下げる。
【0018】
図3は、このスケジュールリストの書き換えについての例を示す。ここでは、スケジュール番号“3”のスケジュールを実行しようとしているが、パレットの状態が「製品」であるため、以降のスケジュール番号に記載されたスケジュールデータを順に確認し、最初に発見した実行可能なスケジュールであるスケジュール番号“6”のスケジュールデータをスケジュール番号“3”の行に挿入し、元のスケジュール番号“3”〜“5”のスケジュールデータを一行ずつ繰り下げたものである。
【0019】
このようにスワップ手段がスケジュールスワップを行い、またはチェック手段がスケジュールスワップを行わないと判断した後、図1に示すように、制御手段は改めて実行しようとするスケジュールのパレットの状態を確認し、パレットに支持されたワークが素材以外である場合にはアラームを発するための命令信号をセットする。続いて、手動介入中であるか否かを確認し、手動介入中であれば、待機状態とするための命令信号をセットする。手動介入中でなければ、スケジュールどおりに加工を行うことができるので、実行しようとするスケジュールに割り当てられたパレットを加工ステーションへ搬送するための命令信号をセットする。以上で、一つのスケジュールにおける動作前処理は終了し、上記処理の結果に従って、アラームが発せられるか、待機状態となるか、パレットの搬送が開始されるかのいずれかとなる。なお、上記のチェック手段およびスワップ手段は、制御装置がチェック手段およびスワップ手段として機能するものである。
【0020】
このような処理を行う本発明のレーザ加工機の第一実施形態においては、スケジュール運転中において、ワークが素材ではないなどの理由により実行できないスケジュールがあった場合に、それ以降の行から実行可能なスケジュールを探し出し、そのスケジュールデータを、実行しようとする行に挿入して、元のスケジュールデータを繰り下げるので、実行可能なスケジュールが先に実行され、実行不可能なスケジュールが後回しにされる。よって、無人運転中であれば、実行できないスケジュールを残して実行可能なスケジュールをすべて処理できるので、生産性が向上する。さらに操作者がいる場合には、実行できないスケジュールが後回しにされ、それ以降のスケジュールが実行されている間に復旧作業を行い、再度当該スケジュールが実行されるので、一連のスケジュール運転の中ですべてのスケジュールを実行させることができ、手間がかからない。
【0021】
次に、図8に示すのは、本発明のレーザ加工機の第二実施形態の斜視図である。なお、以下の第二実施形態の説明において、前後左右とは図8中の表示に基づく。第二実施形態は、ストッカ1と、搬送ステーション2と、入出庫ステーション3と、加工ステーション4とを備える。ストッカ1は、箱型で後側面が開口しており、ワークWを支持するパレットPを多段状に収納するもので、リフタ11を備えている。リフタ11は、一つのパレットPを選択して取り出し、入出庫ステーション3に載置し、また逆に入出庫ステーション3に載置されたパレットPを把持してストッカ1に収納する。ストッカ1の下部は前後に開口しており、その開口部に搬送ステーション2が設置されており、上部に設けられたコンベア21によって、パレットPを前後に搬送する。入出庫ステーション3は、テーブル状で、ストッカ1および搬送ステーション2の後側に設置されている。加工ステーション4は、搬送ステーション2の前側に設置されたテーブル状のパレット加工部41と、さらにその前側に設置された加工定盤45と、加工機本体42とを備え、パレット加工部41および加工定盤45の左右両側にはレール46が設けられている。加工機本体42は、パレット加工部41および加工定盤45を左右に跨ぎ、レール46上を前後に移動するフレーム43と、フレーム43の上部に設けられた加工ヘッド44とを備える。加工ヘッド44は左右に移動可能であり、加工ヘッド44から下向きにレーザ光が照射され、パレット加工部41および加工定盤45上のワークWを加工する。また、この加工機は制御装置および記憶装置(図示省略)を有しており、制御装置は記憶装置に記憶されたスケジュールリストおよび加工プログラムを読み込み、各機器に対して動作命令信号を発信して加工を実行させる。
【0022】
このように構成されたレーザ加工機においては、ワークWを支持した複数のパレットPをストッカ1に収納しておき、このパレットPがリフタ11によって一つずつ取り出されて入出庫ステーション3に載置され、パレットPが入出庫ステーション3から搬送ステーション2を介して加工ステーション4のパレット加工部41へと搬送されて、パレットPに支持されたワークWに対して加工機本体42によりレーザ加工が施される。そして、加工済みのワークWを支持するパレットPは、搬送ステーション2および入出庫ステーション3を経てリフタ11によりストッカ1へ戻される。また、操作者がパレットP上のワークWの脱着や、その他パレットPに対して作業を行う場合には、パレットPが入出庫ステーション3に留まり、そこで作業が行われた後、パレットPはストッカ1または加工ステーション4へと搬送される。また、パレットPを使用する加工とは別に、加工定盤45にはクレーンなど他の手段によりワークWが載置され、パレット加工部41に載置されたパレットPのワークWと同様に、加工機本体42によりレーザ加工が施される。このような一つのパレットPを使用する加工または加工定盤45を使用する加工を一つのスケジュールとして、複数のスケジュールが連続して実行される。
【0023】
以上の動作は、記憶装置に記憶されたスケジュールリストに従って行われるものである。より詳しくは、スケジュールリストは一行に一つのスケジュールを記載したもので、スケジュールの実行順を示すスケジュール番号に対して、対応する加工プログラムのプログラム番号と、加工対象のパレット番号と、そのパレットに対して加工を行うことができるか否かの状態とを含むスケジュールデータが割り当てられており、パレットのワークを加工するスケジュールの場合、パレット番号として、使用されるパレットのパレット番号が割り当てられ、加工定盤のワークを加工するスケジュールの場合、パレット番号として、特定のパレット番号(ここではパレットが存在しない“0”とする)が割り当てられているものである。そして制御装置がスケジュールリストを読み込み、実行しようとするスケジュールに割り当てられたスケジュールデータを確認後、パレットを使用する加工であればストッカからの取り出しおよび搬送を各機器に命令し、さらに当該スケジュール番号に対応する加工プログラムを読み込んで、加工機本体に加工させ、加工終了後、パレットのストッカまでの搬送を各機器に命令する。加工定盤を使用する加工であれば、やはり当該スケジュール番号に対応する加工プログラムを読み込んで、加工機本体に加工させる。
【0024】
そして、本発明のレーザ加工機は、上記の一連の動作において、次に実行する予定のスケジュールが実行できない場合には、そのスケジュールを後回しにする(スケジュールスワップ)ものであり、その際の処理の流れについて説明する。
【0025】
図5に示すのは、あるスケジュールの開始から、実際に各機器を動作させる直前までの、制御装置が行う処理(動作前処理)を示すフロー図である。処理開始後、まず初期処理としてデータを初期化し、次いで制御装置が記憶装置に記憶されたスケジュールリストを読み込む。そしてそこに記載された、次に実行する予定のスケジュールに割り当てられたスケジュールデータ(プログラム番号、パレット番号およびそのパレットの状態(「素材」、「製品」、「NG品」のいずれか)、ただし、加工定盤を使用するスケジュールのスケジュールデータには状態の記載はない)ならびに各機器の状態から、チェック手段が、スケジュールスワップを行うか否かのチェックを行う。このチェックの内容は、(1)スケジュールスワップ機能が有効であること(操作者が予め有効または無効を選択できる)、(2)次のスケジュールがパレットを使用するものであること、(3)次に加工を行うパレットが加工ステーションに未搬入であること、(4)手動介入中であることまたはパレットに支持されたワークが素材ではないこと、の四点であり、すべての条件を満たす場合、チェック手段はスケジュールスワップを行うと判断する。
【0026】
上記の四条件を満たし、スケジュールスワップを行う場合、スワップ手段が図6のフロー図に示す処理を行う。すなわち、まず実行しようとするスケジュール(実行スケジュール)のスケジュール番号(S_No.)をセットする。そして手動介入中か否かを確認し、手動介入中でなければ、スケジュール番号に対して1を加え、このスケジュール番号(実行スケジュールに対する次スケジュールの番号)がスケジュールリストの最終行のスケジュール番号を超えている場合、およびこのスケジュール番号に対応する加工プログラムが指定されていない場合、「NG」の返値「1」をセットする。さらに、このスケジュール番号に割り当てられたパレット番号を確認し、これが“0”である場合、すなわち加工定盤を使用する場合には、パレットが加工可能な状態であると認識されて「OK」の返値「0」をセットする。また、パレット番号が“0”以外である場合、すなわちパレットを使用する場合には、さらにパレットの状態を確認し、これが素材である場合には、加工可能であるとして「OK」の返値「0」をセットし、素材以外である場合には、さらにスケジュール番号に1を加えて上記処理を繰り返す。一方、手動介入中であれば、スケジュール番号に対して1を加え、このスケジュール番号(実行スケジュールに対する次スケジュールの番号)がスケジュールリストの最終行のスケジュール番号を超えている場合、およびこのスケジュール番号に対応する加工プログラムが指定されていない場合、「待機」の返値「2」をセットする。さらに、このスケジュール番号に割り当てられたパレット番号を確認し、これが“0”である場合、すなわち加工定盤を使用する場合には、パレットが加工可能な状態であると認識されて「OK」の返値「0」をセットする。また、パレット番号が“0”以外である場合、すなわちパレットを使用する場合には、さらにスケジュール番号に1を加えて上記処理を繰り返す。「0」、「1」または「2」の返値がセットされると次の処理に進み、返値が「0」である場合には、そのときのスケジュール番号のスケジュールデータを元の実行しようとするスケジュール番号の行に挿入し、実行しようとするスケジュール番号の行の元のパレット状態が加工不可能なスケジュールデータからスケジュール順に連続するパレット状態が加工不可能なスケジュールデータを、実行しようとするスケジュール番号から次のスケジュール番号へ一行ずつ繰り下げる。
【0027】
図7は、このスケジュールリストの書き換えについての例を示す。ここでは、スケジュール番号“3”のスケジュールを実行しようとしているが、パレットの状態が「製品」であるため、以降のスケジュール番号に記載されたスケジュールデータを順に確認し、最初に発見した実行可能なスケジュールであるスケジュール番号“6”のスケジュールデータをスケジュール番号“3”の行に挿入し、元のスケジュール番号“3”〜“5”のスケジュールデータを一行ずつ繰り下げたものである。なお、元のスケジュール番号“6”のスケジュールデータには状態の記載がないが、パレット番号が“0”の場合、状態の確認をすることなく加工可能と判断される。
【0028】
このようにスワップ手段がスケジュールスワップを行い、またはチェック手段がスケジュールスワップを行わないと判断した後、図5に示すように、制御手段は改めて実行しようとするスケジュールのパレットの状態を確認し、パレットに支持されたワークが素材以外である場合にはアラームを発するための命令信号をセットする。続いて、加工定盤を使用する加工であるかパレットを使用する加工であるかを確認し、加工定盤を使用する加工であれば、パレットを搬送しないための命令信号をセットする。パレットを使用する加工であれば、さらに手動介入中であるか否かを確認し、手動介入中であれば、待機状態とするための命令信号をセットする。手動介入中でなければ、スケジュールどおりに加工を行うことができるので、実行しようとするスケジュールに割り当てられたパレットを加工ステーションへ搬送するための命令信号をセットする。以上で、一つのスケジュールにおける動作前処理は終了し、上記処理の結果に従って、アラームが発せられるか、待機状態となるか、パレットの搬送または加工定盤上のワークの加工が開始されるかのいずれかとなる。なお、上記のチェック手段およびスワップ手段は、制御装置がチェック手段およびスワップ手段として機能するものである。
【0029】
このような処理を行う本発明のレーザ加工機の第二実施形態においては、ストッカから取り出したパレットをパレット加工部に載置してパレットに支持されたワークを加工する場合と、別途加工定盤に載置されたワークを加工する場合の二種類の加工があっても、加工定盤を使用する加工に対して特定のパレット番号を割り当てることで、一つのスケジュールリストにより各スケジュールの実行および後回しの処理を行うことができる。すなわち、加工定盤が存在せずパレットの加工のみを行う第一実施形態のような加工機と同じ方法で制御を行うことができ、加工定盤の有無によらず制御系を共通化できるので、操作の簡略化やコストダウンを実現できる。
【0030】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。ストッカ、搬送ステーション、入出庫ステーションおよび加工ステーションは、上述の機能を備えるものであれば、構造や搬送手段などが異なっていても構わない。また、制御装置は、プログラムにより計算機がその機能を有するものであってもよいし、専用のハードウェアにより構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ストッカ
4 加工ステーション
41 パレット加工部
45 加工定盤
P パレット
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持する複数のパレットを多段状に収納するストッカと、パレットを載置してワークにレーザ加工を施すためのパレット加工部を有する加工ステーションとを備え、
記憶装置に記憶されたスケジュールリストに従って、前記ストッカからパレットを一つずつ取り出し、前記加工ステーションに搬送してレーザ加工を行うレーザ加工機であって、
実行しようとするスケジュールで使用予定のパレットに対して加工を行うことができるか否かを確認するチェック手段と、できない場合に前記スケジュールリストの実行順番からそのスケジュールを後回しにするスワップ手段とを備えることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記スケジュールリストが、一行に一つのスケジュールを記載したもので、スケジュールの実行順を示すスケジュール番号に対して、対応する加工プログラムのプログラム番号と、加工対象となるパレットのパレット番号と、そのパレットに対して加工を行うことができるか否かの状態とを含むスケジュールデータが割り当てられており、
実行しようとするスケジュール番号において、まず前記チェック手段がそのスケジュールデータを確認し、パレットが加工不可能な状態であれば、前記スワップ手段が以降のスケジュール番号に記載されたスケジュールデータをスケジュール順に確認し、最初に発見したパレット状態が加工可能なスケジュールデータを前記実行しようとするスケジュール番号の行に挿入するとともに、前記実行しようとするスケジュール番号の行の元のパレット状態が加工不可能なスケジュールデータからスケジュール順に連続するパレット状態が加工不可能なスケジュールデータを、前記実行しようとするスケジュール番号から次のスケジュール番号へ一行ずつ繰り下げることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記加工ステーションが、パレットに支持されたワークとは別のワークを載置してレーザ加工を施すための加工定盤を有し、前記パレット加工部に載置されたパレットのワークと、前記加工定盤に載置されたワークとを一連のスケジュールで加工するものであって、
前記スケジュールリストが、一行に一つのスケジュールを記載したもので、スケジュールの実行順を示すスケジュール番号に対して、対応する加工プログラムのプログラム番号と、加工対象のパレット番号と、そのパレットに対して加工を行うことができるか否かの状態とを含むスケジュールデータが割り当てられており、パレットのワークを加工するスケジュールの場合、前記パレット番号として、使用されるパレットのパレット番号が割り当てられ、前記加工定盤のワークを加工するスケジュールの場合、前記パレット番号として、特定のパレット番号が割り当てられ、
実行しようとするスケジュール番号において、まず前記チェック手段がそのスケジュールデータを確認し、パレットが加工不可能な状態であれば、前記スワップ手段が以降のスケジュール番号に記載されたスケジュールデータをスケジュール順に確認し、最初に発見したパレット状態が加工可能なスケジュールデータを前記実行しようとするスケジュール番号の行に挿入するとともに、前記実行しようとするスケジュール番号の行の元のパレット状態が加工不可能なスケジュールデータからスケジュール順に連続するパレット状態が加工不可能なスケジュールデータを、前記実行しようとするスケジュール番号から次のスケジュール番号へ一行ずつ繰り下げるようにし、
前記チェック手段は、前記特定のパレット番号に対してはパレットが加工可能な状態であるとして認識することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−260086(P2010−260086A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113846(P2009−113846)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000152675)コマツNTC株式会社 (218)
【Fターム(参考)】